夜の銀座で働いている女性が定期的に来店されています。普段はドレスを着て仕事をいしているとのことですが、冬の寒い時期は着物で接客する方がからだの負担が少ないということで、この時期は着物で仕事をしているとのことです。
先日プライベートで静岡県の久能山を訪れ、たくさんの階段を登り降りしたとのことです。普段運動をそれほどしていないので筋肉痛が激しかったようですが、その数日後になって副鼻腔が腫れぼったくなり発声することが困難になったということで来店されました。
来店されたときには声もかすれ、普通に会話することも困難でした。
状態としては、頬骨のところにある副鼻腔(上顎洞)も眉間のところの副鼻腔(前頭洞)も詰まった状態で腫れぼったくなっていました。病院での診察では副鼻腔の炎症ということで、抗生物質が処方されたようです。
筋肉は連動する仕組みを持っています。そして副鼻腔にも筋肉連動の影響は及びます。まだ正確に把握しているわけではありませんが、上顎洞は外肋間筋、前頭洞は内肋間筋と関係が深いようです。

例えば目の下の頬骨のあたりが硬くなっていたり腫れぼったいようですと、上顎洞の副鼻腔の働きに支障が生じるようです。顔の中心に力が入りやすい癖を持っている人は頬骨が中央に寄り、鼻翼から頬にかけて硬くなっていますが、すると上顎洞の副鼻腔に空気が通らなくなり、そこが詰まったり、炎症が生じる可能性が生じるようです。
あるいは、眉間に力が入る癖をもっている人は額の副鼻腔である前頭洞に空気が通らなくなり、そこが詰まったり炎症を起こす可能性が考えられます。
また、外肋間筋は外腹斜筋(上腕二頭筋長頭?三角筋前部線維?外腹斜筋?外側広筋?前脛骨筋という連動)と、内肋間筋は内腹斜筋(上腕筋?内腹斜筋?長内転筋?後脛骨筋という連動)とも関係が深いようです。

外肋間筋が収縮すると肋骨を引き上げますので、胸郭は上方に動き胸が広がります。つまり外肋間筋は息を吸う動作に直接関与します。ところで、息を吸うときだけ外肋間筋が収縮するなら問題はないのですが、常に収縮した状態=こわばった状態になっていますと、胸郭が下がらなくなりますので息を吐き出す効率が悪くなります。さらに臨床的に気になるのは、胸郭が上がって広がったまま(胸板が厚くなる)になっていますので、それ以上息を吸い込むことも難しくなります。いわゆる過呼吸状態に近い感じです。
一方、内肋間筋は収縮することで肋骨を下げますので、胸郭は下方に動き胸郭自体も薄く平たくなります。この作用によって肺から息を吐き出す動作がスムーズにいきます。しかしながら内肋間筋がこわばった状態になっていますと、息を吸う動作をしようとしても胸郭が上がって来ませんので、胸が広がらず息を肺に効率よく入れることが難しくなります。
私の観察によれば、上顎洞の副鼻腔への通りが悪い状態になっている人は外肋間筋がこわばっている傾向がありますし、前頭洞の副鼻腔の通りが悪い人は内肋間筋がこわばっている傾向があります。ですから、おでこ(前頭洞)にも頬(上顎洞)にも両方とも吸気が通らない人は、外肋間筋も内肋間筋もこわばった状態になっていて、胸郭は固まったようにガチガチの状態になっています。胸郭(肋骨)をマッサージすると嫌な痛みを感じると思いますが、この女性がそのような状態でした。
さて、このような状態を整体的に解決する方法を考えたときに、外肋間筋と内肋間筋を中心に、それぞれの変調を改善することで対応しようと考えました。
外肋間筋は「外腹斜筋―外側広筋―前脛骨筋の連動関係」と深い関係がありますので、例えば前脛骨筋がこわばっていますと外肋間筋がこわばってしまう可能性は高いと考えられます。
そこでヒントになったのが、久能山に行き、たくさんの階段を昇り降りしたことの影響と和装の草履や足袋と前脛骨筋の変調です。下り坂や階段を降りる動作では、中間広筋と外側広筋が酷使されます。登山などで上りはふうふうしながらも心地良く昇れるのに、下山した後で膝がガクガクしてしまう経験をしている人もいるかと思いますが、それは上りと下りでは主に使われる筋肉が異なることと、下りでは「筋肉の粘り」が必要になりますので、太もも筋肉が変調を起こしやすいからです。(中間広筋と外側広筋がかなり変調していましたが、外側広筋の変調は前脛骨筋の変調へとつながります。)
また、和装の草履の鼻緒はちょうど前脛骨筋の停止に近いところに当たりますので、前脛骨筋が変調を起こす可能性も考えられます。そして案の上、前脛骨筋の停止付近がとてもこわばっていて、揉みほぐすと強い痛みを感じました。

痛みはかなり激しかったですが、痛みに耐えていただきながら揉みほぐしていきました。3分程した後には痛みも和らぎましたし、目的であった外肋間筋のこわばりも解消されていきました。鼻の通りも少し良くなり声のかすれも良くなりつつありました。
次に内肋間筋のこわばりの変調に取り組みました。
この女性は元々眉間に力を入れてしまう癖を持っていますので、素地として前頭洞の通りが悪く、内肋間筋がこわばりやすい傾向があります。
それに加え、今回は中間広筋が疲弊状態にあったことの影響が内肋間筋のこわばりを強くしていました。
久能山に行く前は気にならなかったことで、その時気になっていることに足袋が母趾と2趾の間に「食い込んで痛い」という訴えがありました。
詳細を省いて結論だけ申しますと、たくさんの階段を降りたことで中間広筋が疲弊状態になっていましたが、それは短母趾伸筋がゆるむという形で連動します。そして、その影響で母趾と2趾の間の筋膜がこわばってしまい、そこに足袋の凹んだ生地が接触するので痛みを発していました。痛いので気になってそこに力が入るようになるので、さらに痛みが強くなるといった状況です。ですから短母趾伸筋のゆるみ過ぎの変調を解消することでこの症状は治まりますが、そのためには中間広筋の状態を回復させることが必要となります。
そして中間広筋の変調が、結論として眉間~額にかけてのこわばりをもたらしていて前頭洞の通りを悪くしている原因になっていました。
右足首はこれまで幾度となく捻挫をした経験があるようで、慢性的に短母趾伸筋(中間広筋―恥骨筋等々に連動)の働きが悪い状態なので右側の恥骨の位置も歪んでいて腹筋から喉元の筋肉まで少し変調していますが、それが眉間に力が入ってしまう要因の一つだと思われます。
今回の整体に対する結論としては、足指や足元の問題が、階段をたくさん昇り降りしたことで胸郭を硬くして副鼻腔の通りに影響をもたらしていたということです。そして一時的な副鼻腔炎となり、喉元まで影響を受けて声が出なくなったしまったという一連の繋がりが考えられます。
施術が終わりますと、本来の声まですっかり戻ったわけではありませんが、普通に会話ができるようになりました。仕事ができるようになったのでホッとしたようです。