座る姿勢が悪い、姿勢を正そうとしてもすぐに骨盤が倒れて猫背になってしまう、というような相談をよく受けます。
このような人の場合、背筋を伸ばして座るためには意識的に背筋に力をいれて姿勢を保つか、あるいは癖として常に背中に力が入った状態(=首や肩にも力が入っている)になっている可能性があります。いわゆる「反り腰」もこの類です。
このような人の場合、腰椎の構造に問題がある場合が多いのですが、その他に下腹部の腹筋が使えない状態になっている場合もあります。
腰椎の構造的な面、つまり腰椎の歪みという面では、頚椎のストレートネック同様に、腰椎の前弯が消失している場合が多いです。


腰椎の前弯は、上図のように第3、第4、第5腰椎のところが要です。3つのなかで中心となる第4腰椎がほぼ地面と平行な状態になっているとき、第3腰椎は上を向き、第5腰椎は下を向いている状態が理想的です。腰椎がこのようになっているのであれば、特に意識することもなく自然と背筋が伸びが正しい姿勢を築いて保つことができます。
図の右側のように腰椎がストレートな状態になっていますと、腰椎より上の部分で後ろに反らさないと上半身が前に倒れてしまいますので、バランスを撮るために腰椎と胸椎の境辺りで背骨を後ろに反らせるようになります。するとその反動として胸椎の上の方で背骨のバランスをとるために後弯をおこないますので、肩甲骨辺りが後ろに飛び出すような猫背の状態となってしまいます。
下腹部の腹筋が使えないために正しい姿勢が保てない状態
腰椎がストレートというわけでもないのに、座位や立位で心地良い姿勢を保つことができない状況もあります。
実例をあげます。大学生の若い男性は、座位で正しい姿勢を保つことができなくてすぐに後ろに寄り掛かるように(つまり骨盤を寝かせて)座ってしまう癖があります。骨盤を立たせようと意識するとそれは可能で背筋をのばすこともできますが、すぐに疲れてしまったその状態を保つことができなくなります。立位では、出っ尻出っ腹のいわゆる「おじさん体型」となってしまい、スーッと気持ちよく立っていることができません。つまり、骨盤に寄り掛かるようにして立ってしまうので反動として首が前に出た立ち方になってしまいます。
ベッドにうつ伏せの状態になってもらったときに私が感じた第一印象は、「腰部が使えない」「腰部が腑抜けのような状態」だと感じました。そして殿部も下がっているのでとても若者のからだとは言えない印象でした。
腰椎を観察していきますと、本来下向きになっているはずの第5腰椎が上を向いていました。そして第1腰椎が下向きの状態になっていました。その第1腰椎を私の手で修正しますと、第5腰椎は下向くの状態になり、たれていたお尻の筋肉やハムストリングもしっかりした状態になり、頼りなかった腰部にも力感が戻りました。
ですから、第1腰椎が直るように考えていけば良いわけですが、そのヒントを得るために背骨のさらに上部、胸椎を確認していきました。すると胸椎に限らず肋骨(胸郭)にも何か損傷のようなものを感じました。
そこで質問をしました。「過去に背中を強打したことがありますか?」
すると「高校生の時に2階のような高いところから落ちて背中全体をドスンと地面に強打したことがある」とのことでした。
下腹部の腹筋が使える状態か否かを確認する簡単な方法は、座った状態で上半身を後ろに傾けたときにどこに力を入れてその姿勢を支えるかで知ることができます。

腹筋が働かない状態の人は、骨盤の背面や腰部に力を入れて姿勢を支えるようになります。下腹部の腹筋が働ける状態の人は、下腹部や恥骨結合の近辺に力が入ってこの姿勢を支えるようになります。そして、腹筋が働ける状態の人は、この上半身を後方に傾けた状態を前に戻そうとするときに腹筋を使ってその動作を行うようになりますが、それはとても自然で速やかな動作として行うことができます。
そして、この下腹部の腹筋が働ける状態というのがとても重要です。私たちの骨格筋の大きな特徴として、同じ状態を長く保つことが苦手なことがあります。長い時間収縮し続けたり、弛緩し続けたりすることが苦手です。骨格筋は収縮したり、弛緩したりすることを交互に行っていたいのです。
ですから、同じ座った状態を保つにも、重心の位置をいろいろと変えながら特定の部位だけに負担が行かないように私たちは無意識の微妙な動作を行っています。
もっと簡単に言いますと、座り続けるにも重心を骨盤(坐骨)の後側に掛けたり、前側(恥骨結合)に移動したりと何度も何度も繰り返しています。そして、骨盤の後側に重心が掛かったときには腰部(背面)の筋肉を使い、骨盤の前側に重心が掛かったときには腹筋を使う仕組みになっていて、腹筋と背筋がバランス良く使われるようになっています。
ところが下腹部の腹筋が働かない状態=使えない状態では、重心を骨盤の前側に移すことができなくなりますので、骨盤の背面ばかりで姿勢を支えなければならなくなります。ですから、お尻や腰部の筋肉に負担が強いられるようになってしまいます。そして、この状況は正しい姿勢を保つことができないだけでなく、腰痛の原因ともなります。
この男性に対しては、背面を強打した名残として背骨(脊椎)がおかしくなっているところを調整しました。3箇所くらい修正しなければならないところがありましたが、それを済ませると本人もビックリ、自然に恥骨側に重心が乗った状態で座ることが可能になりました。反り腰の状態ではなくなりましたので、本人がきにしていた「首が前に出る」状態も自ずと改善しました。
要になる第1腰椎と第5腰椎
その他にも第5腰椎の向きが本来とは反対(上向き)の状態であることが理由で、腰部がおろそかな感じになり、お尻が下がり、ハムストリングが力ないのに下半身がむくんでいるという状況の人がいました。まだ20歳代前半の若い女性でしたが、仕事上、とてもストレスが多いようです。
この女性も上記同様、第1腰椎は下向きの状態になっていましたが、とても気になったのは第5胸椎の硬さでした。第5胸椎やその周辺が盛り上がるように硬くなっていて、肋骨の動きも悪い状態になっていて呼吸も浅い状態でした。(横隔膜の動きが悪いので腹式呼吸が不完全)
「胸はセンサー」です。そしてその中心は第5胸椎と考えられています。第5胸椎は背骨(脊椎)ですが、その腹側の胸骨上には?中という大切なツボがあります。あるいは、ハートチャクラでもあります。
強いストレスは胸を締め付けたり、あるいはストレスを体内に取り入れないようにするために胸を締めたりしますが、その中心が?中であり第5胸椎です。
私は硬くなってしまった第5胸椎及びその周辺をゆるめるために?中を中心に軽く揉みほぐしを行いました。あるいは、大胸筋がゆるむように施術を行いました。すると次第に横隔膜が動くようになって腹式呼吸が始まりました。そして第1腰椎と第5腰椎を確認しますと、それは良い状態に戻っていて、腰部の筋肉も使える状態になりました。
まだ、「絶対にそうだ」とは言いきれませんが、第1腰椎と第5腰椎、そして第5胸椎には体幹のバランスを取るための大切な関連性があるのだと考えています。
腹筋が使えないその他の理由
今回は下腹部の腹筋と腰椎との関連性の話題でしたが、下腹部の腹筋が使えない理由はいくつかあります。
鼡径部が硬くて恥骨結合の状態が良くない。股関節で大腿骨と骨盤の関係が良くない(O脚や内股など)。舌の位置が悪い。噛みしめている。顎関節の状態が悪い。鎖骨の状態が悪い。
もっと他にもあるかもしれませんが、私たちのからだは腹側(陰)と背側(陽)のバランスが大切です。それは姿勢のことだけでなく、生理機能にも影響すると思われます。
ジムやトレーニングやストレッチなどでからだをケアすることは好ましいことですが、どうぞ陰と陽のバランスを考えて行ってください。
たとえば腰痛だからといって腰部の筋肉ばかり鍛えても、腹筋の働きが悪ければ症状は改善しません。整形外科のリハビリでよく指導されるようですが、たとえば膝関節の問題に対して大腿四頭筋ばかり鍛えても、的外れです。
バランスはとても重要です。
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