ゆめとわのblog

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むくみ

 今回は肘関節に関係する話題です。
 肘はぶつけやすいところですから、机やテーブルにコツン、壁にゴツン、とぶつけていながら、そのことをすっかり忘れてしまっている人も多いと思います。
 ところが、肘の打撲や捻挫、あるいは筋膜や皮膚の損傷が原因になって下半身や全身がむくんでしまっていたり、筋肉が張ってしまい、全身がいつもパツンパツンの状態になっている人もいます。

 肘周辺の損傷は、痛みがなくなりますとすっかり頭から離れてしまうくらいの目立たない出来事ですが、私たちの思いも掛けないところで不調や不具合の原因になっています。
 今回はそんな話題です。

肘の損傷と不具合

前腕の筋肉が常に張っていて硬い

 手指を操作する筋には手から指につながっている短い筋肉と、肘関節や前腕(肘と手首の間)から始まり手首を超えて手指につながっている長い筋肉があります。
 今回のテーマは肘関節ですから、前腕にある長い筋肉と肘関節との関係が主な題材です。

 ご自分の前腕を触ったときに「硬いなぁ」とか「コリコリだなぁ」「張っているなぁ」と感じる人は前腕に筋肉がこわばった状態になっているわけですが、それが手指の使い過ぎによるものであれば、手や手指をよくマッサージすることでこわばり状態は改善して前腕は軟らかくなるはずです。
 ところが、たいして手を使っていわけでもなく、重い物を持っているわけでもないのに前腕や手の筋肉が硬くなっている人がいます。あるいは、マッサージしてもほとんど効果を感じられない人がいます。
 「パソコンをちょっと使だけでも、親指のつけ根がコリコリと硬くなってしまう」というような人もこの類いだと思います。
 このような人は肘関節が歪んでいる可能性が高いのですが、その原因としてかつての肘関節の打撲や捻れがあるかもしれません。

 YさんはデスクワークでたくさんノートPCを使っています。
 PC操作では、キーボードの上に手のひらを乗せた状態でキーボードを叩くのが本来の在り方だと思います。このことはきっと誰もが「そうだ」と同意すると思いますが、問題は、肘を下ろした状態で手のひらを真っ直ぐに、どこにも力をいれることなくキーボードに置くことができるかどうかです。

 そのためには、肘関節で確実に腕の向きが変わることができなければなりません。肘関節で前腕をしっかり内側に捻ることができなくて方向変換が中途半端な状態ですと、手首でさらに手を内側に捻る動作を加えなければキーボードに手のひらを置くことができません。親指のつけ根がすんなり自然に着くような手の置き方はできません。
 たとえば腕立て伏せをするように肘をしっかりと曲げたとき、すんなり肘を曲げきることができなかったり、あるいは手のひらが前を向くのではなく内側を向いて小指側が前になるようでは、それは肘関節が好ましい状態ではないと判断することができます。

 さて、Yさんは肘関節で前腕を十分に内側に捻る(回内動作)ことができませので、キーボードに手を置くためには手首を捻らなければならない状況でした。そして、この状況は特に親指のつけ根が浮いた状態になりますので、例えば親指でスペースキーを叩くときには親指を普通の人以上に強く曲げて使わなくてはなりません。ですから、そのための筋肉(短母指外転筋)が使い過ぎの状態になりこわばってしまいます。
 「ちょっとパソコンを操作すると、親指のつけ根がすぐに張ってしまい辛くなる」としばしば訴えます。

 以前に「前腕を捻る‥‥円回内筋と回外筋」で説明しましたが、肘関節を内側に捻る動作は回内筋が主体になった行われなければなりません。諸々の理由で回内筋がしっかり働けない状況ですと手首の方形回内筋を使って前腕を内側に捻るようになりますが、本来それは不自然な状態です。そしてこの不自然な状態で親指を使うようになりますので、それは親指つけ根の酷使状態となりますので、すぐに筋肉はこわばってしまい辛くなってしまうと考えることができます。

 回内筋が上手く働けない理由はいくつか考えられますが、Yさんの場合は肘関節で上腕骨と尺骨の関係が歪んでいたことが原因でした。
 「付着している骨が不安定なので筋肉の働きが悪い」という項目に該当します。そして肘関節が不安定な理由は、かつて肘を打撲したことでした。

 肘のところには神経(尺骨神経)が通っていますので、肘をどこかにぶつけますと、小指の先にかけてジーンと強烈な痛みを感じることがありますが、ちょうど肘頭の神経の通っているあたりに損傷がありました。靱帯なのか筋膜なのか判別が難しいのですが、その損傷によって肘関節が少しグラつく状態になっているために肘関節に関係する筋肉(上腕三頭筋長頭と内側頭、上腕筋、回外筋など)が変調状態になってしまい、「前腕の筋肉がコリコリに硬くなっている」状態を招いていました。そして、その影響で回内筋がしっかり働けない状況でした。
 その損傷してゆるんでいる部分をじっくりと施術し、いつも使っている(摩法の石ような)ダイオードを貼りますと、肘廻りの変調していた筋肉は状態が良くなり、前腕の硬さは速やかに改善し、そして自然と親指のつけ根のこわばりと張りも解消されました。

 Yさんは、かつての肘の打撲により肘関節が不安定になったために前腕や上腕の筋肉がこわばって張ってしまい硬くなっていました。さらにその影響で前腕を内側にしっかり捻ることができないのにパソコンを操作しなければならない状況でしたから親指を酷使する状態となり、いつもそこに辛さを感じていたという状況でした。
 ですから肘関節の損傷部位を整えることで、この問題を改善することができました。
 そして、肘をぶつけている人はたくさんいると思いますので、そのような人は肘関節を整えてみてください。きっとからだの状態が良い方向に変わると思います。




肘の内側の損傷で全身のむくみ

 上記では肘関節の回内動作(前腕を内側に捻る)が上手くできな症例を取り上げましたが、今度は反対に肘関節で前腕を外側に捻る動作(=回外動作)が上手くできない状況が原因で全身的にむくんだ状態になってしまっている症例を取り上げます。

 Aさんは現在、週3日勤務の事務の仕事をしています。仕事内容はそれほどハードではありませんし、たくさん歩いていることもないのですが、常に下半身がパンパンの状態で、腕もパンパンしています。全身がむくんでいる状態ですが、水分が溜まった単なるむくみとは違って筋肉も全身的にこわばっていますので、からだ全体が硬く腫れているような状態です。

 Aさんは30歳代前半ですが、しばしば首の調子が悪くなりますし、毎日のように頭痛に悩まされているとのことです。Aさんは高校時代まで新体操をやっていて開脚なども大きくできますし、からだが硬いわけではありません。ところが筋肉はこわばった状態なのです。
 これらの状況から推察しますと、Aさんは本来、からだは軟らかく筋肉も軟らかいのですが、何かの理由によって全身的に筋肉がこわばった状態になっており、それによって静脈やリンパの流れが停滞して全身がパンパンした状態になってしまっていると考えられます。
 ですから、その「何かの理由」を探し出して特定し、それを修正する必要があります。

 Aさんは過去に大きなケガや故障は経験した記憶が無いとのことです。新体操の練習においてもケガは無かったとのことです。
 ですから、手首や肘や肩の関節、股関節、膝関節、足首などの状態を確認する作業から始めました。関節の状態を初めに確認するのは、むくみは関節の歪みに密接に関係しているからです。
 すると右の肘関節が不安定になっているのがとても気になりました。そこで肘関節を90°に曲げた状態で回内動作と回外動作を行ってもらいました。内側に捻る回内動作はそれほど問題はありませんでしたが、外側に捻る回外動作では、肘関節で回外を行うことができずに手首のところで外側に捻っている状態でした。つまり、肘関節の回外がまともにできない状態です。
 「右肘が歪んでいて力が入らないけど、何かこころ当たりはありますか?」と尋ねましたが特に思い当たることはないとのことです。
 そこで新体操の競技について尋ねながら、からだの使い方などを連想していきました。肘を打撲したり酷使したりすることはないだろうか? ボール競技で肘でボールを受けたりして筋肉を傷めたりしないだろうか? リボンやその他の競技で肘を傷めるようなことはないだろうか?
 よく解りませんでしたが、改めて詳しく肘周辺を観察しますと上腕二頭筋(じょうわんにとうきん)が前腕の橈骨に付着している部分(腱)周辺がゆるんだ状態になっているのがわかりました。そしてその部分に手を当てて、ゆるんだ状態を補い、そして再度回外動作をしたもらいますと、今度はしっかりと回外動作を行うことができました。

 ここに問題があったのです。その後、ゆるんでいる部部にしばらく手を当て続けていました。すると2分くらい経過した頃から、太股や鼡径部の硬い膨らみがやわらいでいきまして、筋肉からも力が抜け出し、その流れが次第に全身に及ぶようになりました。
 頭も首周りも楽になり、呼吸も大きく深くできる状態になっていきました。肉厚だった手の親指つけ根(母指球)も中身が消えたように薄くなり、全身がリラックスした状態になっていきました。
 さらに10分、15分と手当ての状態を続けていきました。パンパンだったジーンズはスカスカな状態になり、ウエストも細くなっていきました。
 右肘だけの問題で、これほどまで全身に影響が及んでいたということですが、改めて人体の不思議さ、人体に隠されている秘密を知ることになりました。


 ここで簡単に回外動作と筋肉の関係について説明します。
 肘関節で回外動作を行う代表的な筋肉は2つあります。ひとつは回外筋(かいがいきん)です。そしてもうひとつは今回取り上げました上腕二頭筋です。
 回外筋と上腕二頭筋は解説書などによりますと、ともに「回外に働く筋肉」となっていますが、肘を伸ばした状態で前腕を回外する動作では回外筋が収縮し、肘を曲げた状態では上腕二頭筋が収縮して回外動作が行われるという違いがあります。
 Aさんの場合、上腕二頭筋に問題がありましたので、肘を曲げた状態で回外動作を行うことが苦手な状況でした。このような状態の時にドアノブを握って外側に捻るような動作をしますと、手首を捻って動作を行うようになりますので、それはそれで別な不具合を招く恐れがあります。

つい忘れてしまう肘の打撲

 冒頭に、肘をコツンとぶつけても日常生活への影響が感じられなければ、それは一時的なことであり痛みが消えてしまえば、皆さんすぐにそのことを忘れてしまうようです。それはそれでOKなのですが、肘関節が不安定になるような影響が残っていますと、「手に力が入らない」「腕の筋肉がいつも硬い」「親指のつけ根が太くて硬い」などの症状が現れます。そして既に取り上げましたように全身がむくむなどの症状の原因になる可能性もあります。そして、それ以外にもいろいろと症状が現れますが、それらをいくつか簡単に紹介します。

坐骨神経痛の原因が肘の歪みだった

 常に坐骨神経痛を感じている状態は治まったのですが、横になってリラックスしていたりすると症状が現れると訴える人がいます。座っていても大丈夫、立っていても歩いていても大丈夫、それなのにからだを楽にしていると症状が現れるというのは、坐骨神経痛の現れ方としては異例の部類に入ると思います。そして結局、その原因は肘の歪みによる影響でした。その人は昔、頬杖をたくさん着いていたし、今も自宅で転がりながらテレビを見るときには肘で頭を支える(片側の頬杖状態)姿勢をするとのことです。つまり頬杖によって肘関節が歪み、その肘に荷重がかかる状況になると頚椎や背骨や股関節が歪み、坐骨神経痛の症状が現れるのではないかと私は考えました。

ヨガのブリッジができない

 仰向けの状態で背中を浮かせ、手と足でからだを支えるブリッジの状態をつくるためには、手首を最大限に背屈して掌を地面に着ける必要があります。
 掌が真っ直ぐ着地できるかどうかは重要な要素になります。

 そして、そのためには肘関節での回内が十分に行える状態でなければなりません。回内が不十分な状態ですと、小指側は着くけど親指側は浮いてしまいますが、それを補うために手首を捻るようになります。するとその捻れはからだの別の部分にも及びますので、正しいブリッジの姿勢を築くことができなくなってしまいます。

片側の足の着地感がいつも気に入らない

 肘関節を曲げて、そこに買い物袋やバッグを引っ掛ける癖を持っている人は肘関節内側の筋膜が損傷していたり、あるいは筋肉がゆるみ過ぎの状態になっていて肘関節で前腕がすこし離れた状態になり不安定になっている場合もあります。そして肘関節の不安定さは肩関節、股関節、膝関節、足首へと連動し、下半身が不安定で足の着地感がいつも気になる状況を招くこともあります。
 手で重たいバッグを持ち続けることは苦痛なので、つい肘に引っ掛けてしまう人もいるかと思いますが、それはそれでリスクもあります。
 「極力、持ち歩くバッグは軽くしてほしい」と私は思っています。


 今回は肘関節について取り上げましたが、からだにある大きな関節‥‥肩関節、肘関節、手首、股関節、膝関節、足首は、どれも大切です。
 その他にも小さな関節はたくさんありますが、大きな関節が歪みますと全身的にバランスが変化しますし、循環に影響が生じます。ですから、まず大きな関節がしっかり整うようにと私は施術を心がけています。

 膝関節は変形しやすい関節ですが、骨と骨の関係が歪んでいる状態であれば、筋肉や靱帯を整えることで関節を良い状態に整えることはできます。ところが、軟骨やその他の大事な組織が消耗して無くなってしまうなど器質的に変化してしまいますと、手術によって人工関節に置換しなければならなくなったりします。股関節も肩関節も同様です。

 ですから、大きな関節に問題が生じたと感じたのであれば、速やかに対処されることをおすすめします。ただし、適切に対処できる専門家に相談してください。すべての整形外科がそうであるとは思っていませんが、レントゲンを撮って経過観察だけ行い、痛みに対しては湿布や痛み止めだけで対応するようなところは避けた方が賢明だと思います。結局のところ症状は徐々に進行し、やがて手術しなければならない状況になってしまう可能性があるからです。

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 血液やリンパ(体液)の循環を考える時、まず動脈系と静脈系とに分けて考えることになります。動脈系は心臓の拍動によるポンプ力と血管の弾力性、毛細管現象を利用して大きな動脈や、そこから枝分かれしていく細い動脈、そして末端の毛細血管まで動脈血を届けます。一方、静脈系(リンパを含む)は全身の細胞で消費された血液、炭酸ガス(二酸化炭素)、新陳代謝で死骸となった細胞など老廃物が体液の中に混じったものですが、血管(静脈)とリンパ管の中に取り込んで心臓に還る道を進みます。
 血管が脈を打っているのは動脈ですが、それは心臓の拍動と連動して血管の筋肉が収縮したり弛緩したりしながら酸素と栄養豊かな動脈血を全身の細胞まで運んでいます。動脈と静脈系の一番の違いは、(心臓から離れた)静脈系は心臓や血管の力で血液やリンパ液を運ぶことができませんので、周りの筋肉の力を借りて進まなければならないことです。ふくらはぎや足首周辺の体表には静脈瘤や青紫色のうっ血状態ができやすいのですが、それは静脈が体表にあり、心臓から遠く離れたところは静脈の流れが停滞しやすいことを現しています。
 足やふくらはぎが「第2の心臓」と呼ばれることがあります。それは歩くことによって足やふくらはぎの筋肉が収縮・弛緩を繰り返しますが、それが「乳搾り」のような作用をもたらして静脈やリンパの流れを生み出しますので、心臓の働きに似た作用をしていると考えるからです。

静脈系の大切さ
 医学の世界で循環系と言えば、心臓と動脈に主眼がおかれているのかもしれません。よく耳にする「血圧」「動脈硬化」という言葉はこのことを象徴しています。心臓の働きが弱いと血液を血管(動脈)に送り出す力が乏しくなりますので動脈血がからだの隅々まで十分には行き渡らないかもしれません。たくさん酸素を消費するのは脳ですが、血圧が低かったり、他の要因で脳に動脈血が十分に行き渡らなければ酸欠状態になってしまい頭の回転が鈍ったり、ボーッとしたりしてしまいます。低血圧の人は理解できるのではないでしょうか。
 また、心臓には十分な力がありますが、動脈硬化によって血管の弾力性が失われたり、血管の中が狭くなってしまい、十分な量の血液が細胞に届かなくなってしまうかもしれません。すると心臓はますますポンプ力を高めてからだの隅々まで血液を届けようと対応することになります。これは心臓に余計な負担を掛けることにですし、高血圧の原因になります。

 さて、これら動脈系の問題以外に静脈系の問題で循環が悪くなってしまうことがあります。そして、こちらの方がよほど日常的で身近な問題だと私は思っています。
 例え話になりますが、高速道路が渋滞してしまう状況をイメージしてみてください。その場所は長く続く緩い下り坂が上り坂に変わった辺りが多いと言います。緩い下り坂では、それほどアクセルを踏まなくても車は順調な速度を保ってくれますが、その状態で上り坂に変わりますと自然と速度が低下してしまいます。すると後を走っている車は、下り坂を走っているにもかかわらず前の車の速度が低下したためにブレーキに足を掛ける状態になってしまいます。さらにその後を走行している車は、前の車のブレーキランプが点灯したので警戒してブレーキを踏み速度を落としますが、その連鎖が後続車に次々と続いてしまい、結局長い渋滞となってしまいます。渋滞箇所には特別何事もないわけですが、そこを抜けるとき「一体何が原因だったんだろう?」と思われた経験のある人はたくさんいると思います。つまり、前が詰まったために後から押し寄せてくるものの速度が低下し、やがてさらに後続が身動きの取れない状態になってしまう状況です。
 心臓も血管も何の問題もないのに静脈の流れる速度がが低下したために、動脈血が前に進めなくなる状況があります。
 血液を消費する細胞の様子を観察しますと、動脈血が細胞内に入る入口と、動脈血が消費され静脈血となって出て行く出口があります。「入口には後から後から動脈血がたくさんやって来るのですが、出口が詰まっているので細胞内に入っていけない、前に進めない」といったことが起こります。これが静脈系の問題により血液循環が停滞してしまう例です。
 そして、病気と診断されるわけでもないのに、血行不良にともなう体調不良やむくみや”頭がスッキリしない”などの症状に悩まされることがありますが、それは、静脈系の停滞が原因になっていることが多いのだと思います。

静脈とリンパの還り方
 心臓はポンプ力の圧で動脈血を勢いよく大動脈に送り出すわけですが、一方で大静脈の側は陰圧(心臓に吸い込む力が働く)になります。ですから心臓に近い大静脈や静脈の血液は心臓に吸い込まれるようにして還ることになります。ところがこの陰圧の力は心臓から遠く離れたところや細い血管には及びませんので、別の仕組みを利用して静脈血やリンパ液は心臓への還り道を進まなければなりません。

 心臓から離れている四肢(腕や脚)の静脈には弁があって、静脈血が心臓に向かう一方通行になる仕組みになっています。静脈の血管やリンパ管は自身が収縮したり弛緩したりする力は大してありませんので、周りの筋肉の力を借りて血液を運ぶ仕組みになっています。筋肉は収縮しますと太くなります。すると静脈の血管は圧迫されることになります。それは血管が搾られる状態になりますので中の血液は押し出されるわけですが、弁がありますので心臓に向かう方向にだけ押し出されます。次に筋肉が弛緩しますと血管が拡がるわけですが、すると弁と弁で区切られた血管の部屋に後からの血液が入ることになります。そしてまた筋肉の収縮に合わせてその血液が前に進むわけですが、このような仕組みを利用して四肢の静脈血は心臓の陰圧が及ぶ太い静脈まで進み、最終的に心臓に還ります。
 細胞から放出された体液で、静脈に取り込まれなかったものはリンパ液としてリンパ管に入り、心臓に戻る道を進みます。リンパ管も静脈同様、周りの筋肉の力を借りてリンパ液を進めますが、やはり弁があって逆流しない仕組みになっています。

細胞内の動脈・静脈・リンパ

・静脈もリンパも、流れ方の特徴を簡単に言い表しますと以下の通りです。
①自身の力ではなく、周りの筋肉の働きを利用して流れている。
②弁があって逆流しない仕組みになっている。
 ですから、筋肉の働きが悪くなりますと静脈とリンパの流れが悪くなりますので血液を含んだ体液全体の流れが悪くなってしまうことになります。

鎖骨下静脈と鼡径部
 四肢ではなく体幹の太い静脈は心臓の吸い込む力によって心臓に還りますが、その流れが悪くなりやすいところが二箇所あります。一つは、鎖骨と第1肋骨の隙間を通っている鎖骨下静脈です。もう一つは、骨盤の鼡径部を通っている大腿静脈です。

鎖骨下静脈と鼡径部

 鎖骨下静脈が通っている鎖骨と第1肋骨の間は狭い隙間ですが、さらに鎖骨も肋骨も歪みやすいので、狭い隙間がなお一層狭くなってしまい血管が圧迫され鎖骨下静脈が悪くなってしまうことがしばしば起こります。

 そして、全身のリンパ液が合流して心臓に還るリンパ管も最終的に鎖骨下静脈に合流しますので、鎖骨下静脈の流れが悪くなりますと静脈だけでなくリンパの流れも停滞することになります。(詳しくは、https://www.kango-roo.com/sn/k/view/1844 参照してください)
 顔や手や膝下から足にかけてはむくみやすいところですが、それらばかりでなく実際は全身がむくんでしまうことになります。
 上記の図を見ていただきたいのですが、点線で示されている大腿静脈~下大静脈はからだの深部を通って心臓の下方から還りますが、それ以外の手~腕、体表の静脈は下半身の大伏在静脈も含めてすべて鎖骨下静脈となって心臓の上方から還りますので、鎖骨下静脈の停滞は全身に影響を与えることになります。実際、施術で鎖骨と第1肋骨を整えて鎖骨下静脈がよく流れるようにしますと、足趾や足首の方からむくみが取れていったりします。頭部がパンパンになっている状態も鎖骨下静脈を整えることでかなりスッキリします。

鎖骨下静脈の通り道

 下半身ばかりがむくんでしまう人がしばしばおります。あるいは下半身の血行が悪く、下肢の冷えが辛く感じる場合があります。このような場合は鼡径部の大腿動脈と大腿静脈の流れを考える必要があります。そして鼡径部の問題は、多くの場合、股関節の問題が絡んでいると考えてもよいと思います。

鼡径部

 鼡径部は余裕がある隙間ではありません。そこに大腰筋、腸骨筋、恥骨筋があります。ここで大原則を是非覚えて欲しいのですが、それは「筋肉はこわばると太くなる」という性質です。“こわばる”というのは収縮しっぱなしになって硬くなっている状態のことですが、「筋肉が張る」というのも同じようなものです。
 例えば一日中座り仕事で椅子に座っている時間が長いとします。座る姿勢は股関節を90°に曲げるわけですが、その状態を続けますと腸骨筋がこわばった状態になります。すると狭い鼡径部の隙間の中で腸骨筋が太くなりますので、大腿静脈も大腿動脈も大腿神経も圧迫され続ける状態になります。大腿動脈は心臓の拍動と連動する血管の力で圧迫された中でも血液を流すことができるかもしれません。しかし大腿静脈とリンパ管にはそのような力はありませんので、静脈系は流れが弱くなります。ですから、仕事が終わった頃には下半身がむくみ、足首のところには靴下の痕がバッチリ付いてしまいます。

鼡径部のリンパ

 また股関節が歪んで、例えば大腿骨が少し骨盤から離れた状態になりますと腸骨筋も大腰筋も恥骨筋も緊張してこわばり、太くなってしまいます。すると上記と同じように静脈系は流れが悪くなります。そして実際のところ、股関節の歪みは動脈の流れにも影響しますので、「股関節がおかしいとエネルギー全体の流れが悪くなる」という状態になります。これは歯ぎしりの原因になりますし、手汗や足裏の汗の原因になります。

循環を改善するために必要なこと
 上記で説明してきたことを簡略してまとめますと以下の通りです。
・病気ではない日常的な循環不良は、静脈とリンパの流れを主体に考えて対処した方がよい
・静脈もリンパも管自体の力で血液やリンパ液を送ることは難しいので、周りの筋肉を利用している。
・全身的な循環を考えるときには鎖骨下静脈と鼡径部をチェックすることが大切。

 こんなことがあります。
 膝の調子が悪く、あるいはむくみが常態化し、膝周りがこちこち硬くなっている人に対し、膝小僧(膝蓋骨)を動かして膝の関節包をストレッチしますと滞っていた血流やリンパの流れが急に回復して、たちまち膝周りが細くなり柔らかくなったりします。
 捻挫して後、何年経っても腫れぼったさが取れない足首。捻挫で損傷した靱帯に手指をあてて靱帯の回復促していますと間もなく水膨れが消失しだし足首がスッキリし始めることがあります。それは溜まっていたリンパ液が靱帯機能の回復に伴って流れ出したからです。

 先ほどまで、静脈系の流れ方は周りの筋肉を収縮させたり弛緩させたりすることで「乳搾り」のように血管やリンパ管を圧迫することで血液やリンパが前に進むと説明しました。しかし、これだけしか方法がないのであれば、むくんだ状態にならないためには、あるいは下肢静脈瘤を防ぐためには「いつも筋肉を使っていなければならないのか?」という疑問が生じます。
 実際、この考え方に基づいて開発されたのが着圧靴下とか着圧ストッキングの類ではないかと思います。常に圧を加え続けることで静脈に余計な血液が溜まらないようにする、リンパ管にリンパ液が停滞しないようにする、そんな考え方ではないかと想像します。しかし、これは本来の在り方ではありません。
 筋肉を動かしていなくても、靱帯や筋肉や筋膜の状態を整えることで、静脈もリンパも流れるという現実があります。これを私は「筋肉などがしっかりしていれば」という表現で皆さんには説明していますが、この観点はとても重要だと思います。
 その現れが膝関節包のストレッチや捻挫で損傷した靱帯機能の回復によって停滞していた静脈やリンパが流れ出すという現象です。
 昼間座り続けて夕方パンパンにむくんでしまった下半身も、一晩寝て朝起きるとむくみが改善しているのは、こわばっていた腸骨筋が寝ることで伸ばされこわばりが取れたため鼡径部の流れが改善したからだと考えることができます。
 ですから、確かに静脈もリンパも周りの手助けによって血液やリンパを流しているわけですが、その「手助け」を得るためには、筋肉を動かして収縮と弛緩を繰り返すこと以外に、筋肉、筋膜、靱帯など軟部組織を整えることが重要です。さらに関節に歪みがあって流れが悪くなっていることもありますので、関節の歪みを整えることも重要です。

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 19歳の女性が来店されました。「ともかく下半身全体がいつもだるく、腰痛もあって、息苦しさもある。パソコン作業の座り仕のに、夕方になると下半身がパンパンにむくんでしまう。」という訴えでした。
 話を聞いただけで神経痛が疑われることがわかりましたが、19歳という年齢のこともあり、一応、頭をニュートラルにして体を観察することからはじめました。最初にうつ伏せで寝ていただいたのですが、お尻が二つの尖った山のようになっていました。神経痛に関係する殿部の梨状筋がこわばっているからです。もう90%の確率で神経痛だと思いました。
 片方ではなく両脚にだるさがあるということなので、原因は背骨の方にある可能性が高いです。そして腰椎を観察しますと、フワフワと不安定で、胸(肋骨)が頭の方へ上がって(ずれて)いました。これが呼吸が浅く息苦しいことの原因だと考えられます。
 幾度となくお話ししてきましたが、胸と下半身をつなぐ主な筋肉は腹筋です。胸が上がっているということは、骨盤と胸郭の間が本来の位置より離れているということであり、その原因は腹筋の働きが悪いからです。そして、これが腰痛の原因であり、神経痛の原因であり、息苦しさの原因であると考えることができます。

胸と骨盤の間隔比較

 「いつから脚のだるさを感じていましたか?」と尋ねますと、「中学生の頃は既にだるさを感じていて、腰も痛かった。」ということでした。中学生の時は卓球部に所属していたとのことですが、特にケガをした覚えはないということです。そうであれば小学生以前の何かが原因となっている可能性がありますが、本人には記憶がないということでした。
 体を観察していきますと右側の肩関節がゆるんでいました。「体育で懸垂運動はできなかったでしょう?」と尋ねますと、小学生の頃からとても苦手だったということです。幼い頃に脱臼をしたか、それに近い状況になったのかもしれません。その他には局所的に特別おかしいというような状態のところはありませんでした。肩関節のゆるみは股関節のゆるみに繋がりますので、それが腰痛や下半身のむくみの原因の一つであることは間違いありません。しかしこの方の場合は、腹筋のゆるみ、その中でも特に内腹斜筋のゆるんだ状態が症状の一番大きな原因だと考えられますので、その腹筋がゆるんでいる原因を探し出す必要があります。
 もともと呼吸が浅く、胸だけで呼吸を行っていたために、腹筋を使わずにいたので腹筋がゆるんでしまったのかもしれません。「息を長く吐き出してみてください」とやってもらったのですが、それができません。途中で吐き出せなくなります。脇腹に手を置いてもらい「そこの筋肉が収縮するように息を吐いてみてください」とやってもらいましたが、フーッと力に乏しく、口先で息を吐けるだけで、少しも腹筋は使われません。どうやら予想は当たっているようです。
 その後、呼吸に関係する筋肉や骨格を整え、腹筋を使って息を吐き出す練習を10回くらいやっていただきました。すると上がっていた胸が骨盤の方に近づき、まだまだ不十分ではありますが腹筋にも張り感がでてきました。下半身のだるさの状態を確認すると、かなり軽快したようです。胸と骨盤が近づいたことによって腰部のハリも改善しましたので、腰痛も楽になっています。腹筋を使ったことの副産物として、こわばっていた首の筋肉がゆるみましたので肩こりも改善しました。
 この方の場合、以上の他に“下半身のむくみ”という問題も抱えたいましたが、それは股関節の鼡径部のところで血行が悪くなっていたからです。その主な原因は長内転筋のこわばりでしたが、それは普段の椅子の座り方に問題があるのかもしれません。ですから“仕事で座り続けているだけなのに夕方になると下半身がパンパンにむくんでしまう”という状況を招いたのかもしれません。その他いろいろ微調整をして、一番の訴えであった“下半身のだるさとむくみ”を改善して施術を終えましたが、最後に、毎日腹筋を使って息を吐き出す練習をしてもらうようアドバイスをしました。

腹筋を整えるためのトレーニング

 “呼吸が浅い”、“腰が痛い”、”脚がだるい”という一つ一つの症状は、普通に考えると別々の問題であると思われるかもしれません。しかし整体的な観点では、これらは深く関連し合っている症状であり、それぞれが“腹筋の働きの悪さ”というキーワードで繋がります。
 腹筋の働きが悪いことによって肋骨と骨盤の間が離れ、それによって腰椎が不安定になり、それが骨盤の不安定さにもつながって大腿神経と坐骨神経に常に弱く刺激が入っているので神経痛の軽い症状(=だるさ)が常に出ている状況になっている、というのが私の見解です。
 ですから、この神経痛症状に対するリハビリは電気をかけることでも、マッサージをすることでもなく、腹筋を十分に使って息を吐き出す練習を毎日行うこと、となります。

 最近は腹筋に関することばかり投稿している感がありますが、それだけ腹筋に問題を抱えている人が多いということです。
 私たちの手と足は解剖学的には肩と骨盤から出ていますが、筋肉をたどっていくとお腹から始まっていることがわかります。ですから、手や足を軽快に、思いのままに動かせるよう保っておくためには“腹筋が要”であるという結論にたどり着きます。
 お腹を冷やさないようにしてください。これからの時期、夜中にエアコンを入れっぱなしで寝ると朝方冷えて、ギックリ腰になる人が多く出ます。
 腹筋を鍛えてください。普通人にとっては、腹筋運動をするよりも、息を腹筋を使って吐き出すことに集中した方が良いように思います。その方が内腹斜筋も含め、すべての腹筋がバランスの良く鍛えられるのではないかと思います。

 本人はずっと“むくみ”だと思っていたのに、実は坐骨神経痛だった、あるいは“むくみ”と坐骨神経痛の両方が重なっていたということがしばしばあります。内臓の病気からくるものは別として、夕方になると膝下がむくんでかったるくなり、夜は足を高くしないとなかなか寝付けないなど、血行不良によるむくみも辛いことですが、それは急を要して改善しなければ状態があっかするというものでもありません。しかし、坐骨神経痛による“足のだるさ”は状態が悪化しますと、しびれや痛みに変わったり、足が動かせなくなるほどになる危険性もありますので、早急に改善していただきたいと思います。
 血行不良のむくみによる足のだるさの特徴は、やはり夕方にかけて症状が重くなるといった点です。朝方はむくんでいないが、仕事が終わる頃になるとふくらはぎがパンパンにむくみ、ブーツや靴を履くのがきつくなるというのが一つのの傾向です。
 一方坐骨神経痛による足のだるさは、時間帯はほとんど関係ありません。そして活動しているとき、動いているときは症状を感じませんが、じっと座っていたり、横になったりして静かにしているときに症状を感じやすくなるという特徴があります。ですから、「だるいと言えば、いつもだるい」というような感想を持つようになります。

 数日前に来店された30歳代のお母さんです。その方の自覚症状は「日中動いているときは特別症状も苦痛も感じないが、夜布団に入って眠りにつくと脚全体がなんとなく痛みを感じ、朝起きると足がむくんでいる。」そして「背中が痛くて仰向けで寝ることができない。」というものでした。
 “動いていると他のことに紛れて気にならないが、じっとしていると症状が目立ってくる”というのは、ある種の耳鳴りもそうですが、常に軽微の症状があり続けているということかもしれません。まず軽度の坐骨神経痛か、あるいは大腿神経痛の疑いがあります。“朝起きると足がむくんでいる”というのは、一般的によくある“仕事後のむくみ”、”夕方のむくみ”とは違って、何処かで血行不良になっているのか、腎臓の機能が弱っているからかもしれません。
 背中の痛みは肩甲骨の辺りとその下の肋骨下部の両方にありました。肩甲骨周辺の痛みは、肩甲骨の位置がおかしいことが原因ですが、その下の痛みは腎臓が少し腫れていて肋骨からの圧迫を受けているからだと考えられます。「仰向けで寝ると背中が痛い」というのがその兆候です。ですから“坐骨神経痛と腎臓”というのが、今回の施術のキーワードになります。
 
 腎臓が少し腫れることはよくあることです。それで腎機能がおかしいとか、腎臓が病的であるということではないと思いますが、疲れが溜まると腫れてしまうのかもしれません。“耳の調子が少しおかしい”というが腎臓が腫れているときによくある症状です。これに対しては、私は専ら足裏や手のひらの腎臓反射区を利用して施術を行います。けっこう痛みを感じるかもしれませんが、反射区を強めの指圧で刺激し続けます。するとそのうち硬かったり粘っこかったりしていた反射区の部分が柔らかくなります。これで大概の腎臓の腫れは改善されますので背中下部の痛みは良くなりますが、もし反射区への施術だけで改善しない場合は耳のズレを修正するため顔の整体を行います。腎臓の状態はむくみに大きく関わりますので、当然むくみ対策の施術でもあります。
 予想していた通り、反射区への施術を終えますと肋骨下部の腫れはおさまり、「仰向けで寝ていても痛みを感じなくなった」とおっしゃいました。おそらくこれで起床時の足のむくみも良くなるだろうと思われます。

 次に坐骨神経痛の方ですが、以前にも記しましたように坐骨神経痛は神経が腰椎の椎間板で圧迫される(ヘルニア)か、殿部の梨状筋がこわばって圧迫されるかのどちらかが多いのですが、どちらの場合も右側か左側のどちらか片方に症状がでることが多いです。今回のように両脚に同じような症状がでるというのは、別の理由で両側の梨状筋が同時にこわばってしまった可能性が考えられます。
 背骨(腰椎)を一つ一つ確認していきますと、腰椎2・3・4番の棘突起が上の方を向いていました。私の手でそれらを下に向けますと殿部の梨状筋のこわばりが改善します。ですからこの方の場合、何らかの理由で腰椎が本来の状態ではなくなったために、常に梨状筋が少しこわばった状態にあり、それが坐骨神経を軽く圧迫し続けているので軽度の坐骨神経痛になったのだと思われます。結局、仙骨が歪んでいたことがその原因でしたので、それを調整して施術を終えました。

下半身の皮神経

 尚、下半身のしびれやだるさに関係する神経には坐骨神経と大腿神経があります。大腿神経は概ね内転筋や太ももの前面と外側面に関係しますが、それは腰神経叢であり腰椎の2~4番に関係します。坐骨神経は太ももの裏側と膝から下、足先までに関係しますが、仙骨神経叢であり腰椎4・5番と仙骨に関係します。
 この方の場合「脚全体が痛みを感じた」と訴えていましたので、坐骨神経痛のみならず大腿神経痛(大腿外側皮神経痛)も併発していたと思われます。

 “むくみ”か“神経痛”かの判別は、普通の人にはなかなか難しいところです。ふくらはぎから下のむくみであれば、足リフレ(足つぼマッサージ)でだるさがスッキリしてしまうことも多いのですが、坐骨神経痛が絡んでいる場合はそれでは解決しません。足リフレの効果は、その時だけ心地良く感じても半日ももたないでしょう。夜に足リフレをやって久々に気持ちよく眠れたとしても「翌朝起きたら、まただるさを感じる」というようになってしまいます。
 坐骨神経痛は症状が軽微なうちに改善してしまいましょう。「何となく気になるけど‥‥」と放っておくと症状が徐々に進み、ある日突然足が動かせなくなることもあります。
 慢性的に脚にだるさやかったるさを感じている人は、「私のふくらはぎのだるさは、むくみのせい」と決めつけない方が良いと思います。

 その方は91歳の女性です。ふくらはぎの下部から足にかけてむくみが強く、歩くとき足がなかなか前に出ないという訴えでした。これほど高齢になりますと、体のどこかに不調があるのは仕方のないことかもしれません。しかし、いつまでも自分の足で歩き続けたいと思うのは、私たちの切なる願いでもあります。
 むくみを起こす原因はいくつかありますが、この方の場合、腎臓機能の低下によるむくみかもしれません。と言いますのは、耳もかなり弱くなっていて補聴器がなければ日常生活ができない状態であると聞かされたからです。現代医学では耳と腎臓の関係性は特に指摘されませんが、東洋医学では耳と腎の働きは密接に関係し合っていると考えられています。

足裏の反射区で効果がある「腎臓」と「小腸」
 以前にも取り上げましたが、私の経験上、足裏や手の反射区で素速い効果が期待できるものに“
腎臓”と“小腸”があります。その他にも消化器系などの反射区も期待できますが、今回の”むくみ”というテーマではこの二つの反射区を利用することにしました。
 腎臓反射区は、まさしく腎機能をアップしむくみの改善を目指すためと、耳に対する効果を期待して用います。小腸反射区は血液循環の改善と体の芯を温める目的で用います。(この反射区については以前に取り上げました。)血液循環と体熱はもちろん”むくみ”に関係します。

腎と小腸反射区

 高齢になりますと筋肉量は落ちます。さらに運動量も落ちます。体熱は筋肉の働きと肝臓の働きに負うところが大きいので、高齢者になって運動量が落ち、食欲も落ちますと自ずと体は冷えた状態になってしまいます。そして、その状態はしっかりと小腸反射区に現れます。その部分の奥の方へ指をあてていきますと、板のように硬くなってしまったところに突き当たります。これが体の芯が冷えていることの証であると私は考えています。
 腎臓反射区の方は、これとは少し様子が異なります。奥の方へ指を沈めていきますと硬めのコリのようなものが見つかります。大きさはその時々によってまちまちです。直径2㎝くらいのときもあれば、5㎜程度の小さいときもあります。このコリのようなものがなくなるまで指圧し続けることが施術方法です。また、腎臓反射区のすぐ上に副腎の反射区がありますが、ここは東洋医学の腎の経絡で湧泉というツボにあたります。ここも強めに刺激するとよいと思います。

 施術前は足首の上部から足にかけて非常に硬く、指で押すとすっかり沈み込んでしまうほどむくみがひどかったのですが、40分程度の施術後は足裏はかなり柔らかくなりました。足の甲や足首の上部に硬さやむくみがすっかり良くなったわけではありませんが、かなり改善されました。
 これまで週に1回のペースで3回施術を行いましたが、歩く速度もかなり速くなり、普通の人が歩くのと大差がなくなりました。本人は「足が軽くなって、とても快適になった」と言っていました。

 今回、このことをご紹介したのは、この施術はとても簡単で、どなたでもすぐに覚えられ実践することができると考えたからです。自宅に高齢者が居て足がむくんでいたり、歩くのがおぼつかなかったりするようであれば毎日でなくとも週に二度三度して差し上げてみてください。あるいは、ご自分がむくみで不快な思いをされているようであれば、是非試してみてください。
 私のところでは足のリフレクソロジー(足つぼマッサージ)もやっていますが、むくみをとるという目的に絞れば、腎臓と小腸に集中したこのやり方の方が足リフレより効果が高いです。以下に、実際の手順を記します。ポイントは満遍なく一通り行うのではなく、腎臓反射区と小腸反射区に集中して”感じが変わる”まで粘り強く行うことです。溜まっていた物が”流れる”、という感じをつかみ取ってから次に進んでください。

実際の施術
 時間は両足でだいたい40分間です。
①準備段階‥‥そんなに本気を出さなくても大丈夫です。
 まず最初は足裏全体に対する指圧です。縦方向に5本のラインをつくり、中心線からはじめます。一つのラインに対し5箇所ほど少し強めにゆっくりと指圧をしていきます。
 その次は指先を揉みほぐします。強く揉むとかなり痛みを感じるかもしれませんので、様子をみながら少し痛みを感じるくらいの力でほぐします。ここまでが準備体操のようなものです。
 
膝下から足のむくみに対するマッサージ01

②本番‥‥心を集中して行ってください。
 小腸反射区への粘り強い施術。肝腎なことは血液や体液の流れを感じ取り、全身の筋肉が次第にリラックスしていく様を感じ取ることです。
 この反射区は両手の母指を使ってかなりの強さで指圧します。硬くなっている部分は厚みがありますし面積も広いですが、根負けすることのないくらいの覚悟で深く深くと圧していきます。私はこの部分だけで5分ほど使う場合もありますが、そうしているうちに何となく血液が流れ出し、むくんで溜まっていたものが動き出す雰囲気が感じられるようになります。それまでカチカチだった足の骨格もゆるんできます。そうなりますと、指圧が痛気持ちよく感じられるようになります。ここまでやらなければ大きな効果は期待できません。
 腎臓(及び副腎の)反射区への施術。小腸反射区と同じような感じの施術になりますが、小腸区の方は指圧一辺倒だったものが、この反射区へは”コリの揉みほぐし”的要素が加わります。奥の方で少し指先を動かして揉みほぐすとも含めるといった感じです。
 この反射区への施術も時間をかけてゆっくりと行います。そうしていますと、コリが消えて指圧している部分を中心に周囲がフニャッとゆるんだ感じになります。停滞していたリンパが流れ出し、分厚く硬かった足裏が薄く柔らかくなっていきます。

膝下から足のむくみに対するマッサージ02

③仕上げの段階‥‥足裏全体がゆるんで、停滞していたものが流れやすい状態になっていますので、ここからは、流すことを中心に施術をします。
 足の甲側、足趾と足趾の間をほぐします。そこに停滞しているリンパを流すイメージです。
 ふくらはぎへの施術。これはいわゆるリンパマッサージのごとく行います。筋肉と筋肉の間に溜まっているリンパを分離するといった感じです。マッサージの方向にこだわる人もいますが、私はそれほどこだわっていません。やりやすいようにやっています。ふくらはぎの裏側を、膝裏のリンパ節に流すことばかりにこだわるより、ともかく溜まって筋肉とか筋膜にこびりついているものを流し離すといった感じでやっています。力は少し強めです。

足三里

 足三里への指圧。これはかなり重要だと考えています。このツボへの指圧は要領が必要かもしれません。
ツボの位置に正確に当たって、指圧の深さも適切なところにいきますと「流れ」が感じられます。

 来店された91歳の方はしばらく週一回のペースで通われるようです。玄関を出て駐車場まで歩く姿を拝見していますが、少し猫背ではあるもののスタスタと足が動いている様子を見ますと、私も嬉しく思います。
 また、高齢者が歩きづらくなるのは”むくみ”ばかりとは限りません。お腹の力が足りなくて足が動かなくなってしまうこともよくあることです。それについてはまた取り上げたいと考えています。

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