ゆめとわのblog

ホームページとは違った、より臨場感のある情報をお届けしたいと思っています。 また、テーマも整体の枠を飛び出してみたいと思います。 ホームページは以下です。 http://yumetowa.com/ お問い合わせはメッセージ欄でお送りください。

カテゴリ: 内臓の働き

 あるところから寄稿の依頼を受けました。
 これからの季節、女性にとって気になるダイエットと日焼けトラブルについて、日常生活でできるケアについて書いて欲しいとのことでした。以下がその原稿ですが、参考になればと思いブログに投稿します。

 ダイエットや日焼けによるトラブルを考える時、“新陳代謝”と“細胞の修復”というキーワードが登場します。新陳代謝は古い細胞が新しい細胞に入れ替わる変わることですが、それによって若々しいからだを保つことができます。単に体重を落とすとか、痩せるということではなく、健康的なダイエットを目指すなら活発な新陳代謝を維持することが必要になります。細胞が古いままでは脂肪を燃焼させる力も弱いですから体脂肪を落とすことが難しくなります。
 また紫外線は皮膚のメラニンを黒色に変化させますが、それは表皮で起こります。表皮は28日周期で入れ替わります(ターンオーバー)ので、理屈の上では日焼けしたとしても28日後には元の皮膚に戻るということになります。しかし実際は表皮のターンオーバーができない部分が皮膚に残るため“日焼け後のシミ”が所々にできてしまい、女性を悩ますことになります。
 紫外線はメラニンを黒色に変化させるだけでなく、細胞そのものを傷つけます。表皮やその下の真皮細胞が傷つきますと、その部分のターンオーバー機能は失われてしまいます。ですから傷ついた細胞を修復されなければなりません。そして、新陳代謝と細胞の修復を順調に機能させるためには、肝臓、核酸、タンパク質、血液循環というキーワードが現れます。
 新陳代謝は古い細胞が新しい細胞に入れ替わることですが、それは細胞分裂という方法によって行われます。細胞は自身の寿命が訪れますと自分と全く同じ情報を持った細胞、つまり自分自身のコピー(分身)を作ります。一時的に自分自身が二つになるわけですが、その後自分自身は死んで新しい細胞をその場に残します。これを生涯繰り返しているわけですが、この時に必要な物質が核酸でありタンパク質です。

 ところで、私たちが食べる食べ物は消化器官を通過したながら分解されて、小腸で吸収されて血液の中に栄養物質として入ります。その後その栄養豊かな血液は肝臓にそのまま送られ、肝臓でからだの細胞が必要とする様々な物質に合成されます。肝臓はからだの中の「化学工場」に喩えられますが、そこでは分解、合成、解毒など、様々な処理が行われています。新陳代謝に必要な核酸やタンパク質は肝臓で合成されますし、細胞の修復に必要なタンパク質も肝臓で作られます。またアルコールや有害物を解毒して血液を無害の状態に保つのもの肝臓の働きです。ですから健康で若々しいからだを維持するためには、肝臓を万全の状態に保つ必要があるということになります。
 たとえばアルコールを飲み過ぎて、肝臓が解毒作業ばかりに力を取られるようになりますと、新陳代謝や細胞の修復に必要な物質を合成する能力が低下してしまうと考えられますので、皮膚は荒れたままになったり、ダイエット食品をたくさん摂ったところで何の効果も現れないという結果を招いてしまいます。新陳代謝も鈍くなりますので若々しさが失われ老化が進んでしまいます。
 そして肝臓の働きを弱める要素はアルコールだけではありません。毎日飲み続けている合成薬や摂り続けているサプリメントが肝臓の働きを弱めているかもしれません。また、東洋医学では肝臓と目は関連性が深いと考えられていますが、眼精疲労は肝臓の疲労に直結しているかもしれません。さらにある種の感情(怒り)は肝臓の働きを弱めてしまうと考えられています。
五行色体表

 スマホ、パソコン、テレビなど、私たちが毎日多くの時間接しているものは目に疲労をもたらすものばかりです。同じ場所をずっと見続けることは目を動かす筋肉や焦点を調整する筋肉を硬直させます。ですから、画面に集中しすぎないように、しょっちゅう目を左右上下に動かしたり、遠くを見たりして目に関係する筋肉が偏らないようにしていただきたいと思います。さらに一日の終わりには、コメカミを強めの力で持続的に指圧したり、目のすぐ下、でっぱっている頬骨の下際の硬くなった筋肉を指圧してゆるめていただきたいと思います。また目を動かす筋肉をストレッチする意味で非常にゆっくりと大きく、瞳で八の字を描くような“目の運動”をしてケアしていただきたいと思います。筋肉が硬くなっていますとストレッチ運動を始めた最初のうちは少し痛みを感じるかもしれませんが、時間とともに筋肉がゆるみだし心地よさがやってくると思います。そこまでやってください。
 
目のストレッチ

 新陳代謝と細胞の修復のために肝臓でつくられたタンパク質やアミノ酸など、即戦力としての物質は心臓に戻り、酸素を含んだ血液(動脈血)となって全身を巡り目的の細胞に届けられるわけですが、血液循環が悪いとからだの隅々まで到達することができなくなってしまいます。動脈血は心臓(ポンプ力)と血管の働き(搏動)で全身を巡るわけですが、末端の毛細血管まではその力は及びません。
 実際に細胞が血液から必要な物質を受け取るのは毛細血管からになるわけですが、ここでの循環で重要になってくるのは静脈の流れです。新陳代謝を終えて死んだ細胞や二酸化炭素や老廃物は静脈やリンパの流れによってその場から去って行くのですが、静脈もリンパも自身の力で流れることはできません。周りの筋肉の働きによってゆっくりと流れていきます。ですから筋肉の働きが悪いと流れが停滞してしまいます。これがデスクワークや立ち仕事の多い人が夕方になると膝下のむくみが悪化する主な原因です。時々歩くなどして足やふくらはぎの筋肉を動かすことが静脈とリンパの流れにとって重要な理由です。
 細胞レベルでの循環は“動脈血が入り静脈血が出て行く”ことに他なりませんが、静脈血がそこから去って行かなければ動脈血が入っていく余地ができません。有酸素運動やいろいろな体操をして筋肉を鍛え、心肺機能を高めて動脈の働きが良くなるようにしてみたところで静脈が停滞してしまっていては努力が無駄になってしまいます。ですから全身の血液循環を考えるときには多くの場合、静脈とリンパの流れを改善することを優先させて対処する方が効率的です。私は血液循環を整えようとするときには、まず静脈の流れを整える作業からはじめます。その上で不十分であれば、心臓の働きを考えながら胸郭を整えたりして、動脈系の循環に対応するようにしていますが、多くの場合、静脈系を整えるだけで事足りてしまいます。

 静脈とリンパの流れを良くするために整えるポイントはいくつかありますが、普通の人が日常の生活で行うセルフケアとしてやっていただきたいのは、足と手の指の間をマッサージしてゆるめることです。手も足も表に出ている指は骨格としての指の一部ですが、マッサージしていただきたい筋肉は手の中や足の中にあります。パソコンでキーボードをたくさん使っている人は、手のこの筋肉(骨間筋)がとても硬くなっています。一日中立っているような人や歩き方の悪い人は足の骨間筋が非常に硬くなっています。
 手のひらを上に向けて手を大きくストレッチするように広げていますと手の骨間筋が引き伸ばされ、やがてジワーッとしだし気持ちよい開放感が感じられるようになります。30秒くらい続けていますと足の指がムズムズしだし、からだの血液が回り出すのが感じられるようになると思います。
 
足の骨間筋ストレッチ

 足の中にある足の指を一つずつ掴んで広げていますと足がジワーッとしてきませんでしょうか。特に足の親指と人差し指(2趾)の間と小指と薬指(4趾)の間を念入りにやっていただきたいと思います。
 このようなことでからだの血液循環は良くなります。それは検査の数値とかではなく、体感として感じられると思います。

 冒頭に申し上げましたとおり、活発な新陳代謝と細胞の修復のためには肝臓の働きと血液循環と食物としてはタンパク質と核酸が必要です。サプリメントを利用すると考えるなら、是非核酸を摂っていただきたいと思います。また大豆をはじめ良質なタンパク質を摂取することが良いと思いますし、白子など高核酸食を積極的に摂取するのも良いと思います。そして肝臓の健康を維持する意味で、アルコールや薬を飲み過ぎないようにすること、目の疲れを蓄積しないこと、ストレスを溜め込んで感情の起伏が大きくならないようにすることなどに注意していただきたいと思います。さらに全身の血液循環を順調に行うためにセルフケアとして手と足へのマッサージや指圧をおすすめします。

以下は、以前に中国の伝統中医学の先生に教えていただいたことです。「寒性・熱性」という言葉が出てきますが、それは体質をあらわしています。

【目は肝臓の窓】
 中国の諺に「目から心を洞察する」があります。
 黄帝内経にも「五臓六腑の精気はすべて目に注がれ、目の精となる」という言葉があります。漢方においては、これらの考え方からもわかる通り、目の観察はとても重要であります。
 まず目の結膜部。我々は暑い部屋の中に長くいると目が赤くなります。なぜならば身体が外からの熱によって「受熱」した状態になったからです。逆に云うならば、目の結膜部が赤いということは熱の体質であるということになります。
 また、直接熱を受ける「受熱」ばかりでなく、例えば夜勤・疲労・情緒の波動などによって目が赤くなることがあります。これらも熱の体質と考えなければなりません。
 以上の反対、結膜部が清く澄み切っている状態は寒の体質と考えられます。臨床においては熱性の目より寒性を判断することは難しく、かなりの経験を要します。
 以上のようなことから、熱性の場合は「目赤(モクセキ)」、寒性の場合は「目白(モクハク)」と云いますが、ここでいう目とは、目の全体ではなく結膜部のことです。
 例えば「目赤」の場合、熱性の生薬や食物を即時に止めなければなりません。また、仕事の疲労や徹夜のために目が赤くなったのならば注意を要します。それは内臓から訴えられた赤信号とも考えられるからです。もしもそれを無視して続けているならば、身体に何かが起こる危険性は十分にあることでしょう。
 飲酒についても当然考えなければなりません。酒は大熱という性質です。つまり、飲酒には身体を温めたり熱くしたりする効能があります。しかし、飲酒によって目が赤くなるということに関しては、それほど恐れることではありませんが、通常の場合、翌日ないしは2・3日で赤みが取れなければなりません。もしその赤みが消えないならば飲酒を中止してください。なぜならば体内にその熱が蓄積されているからです。そうしなければ目の問題だけではなく、肝臓が侵されることになります。
 「目は肝臓の窓」です。「目赤」という信号は無視してはなりません。

 また、「目の色」以外、目の分泌物も寒熱を探知する情報のひとつです。例えば、朝起きた時きに目が乾燥していて開けようと思ってもなかなか開けられなく、ネバネバした粘液ができた経験は多くの人がもっているでしょう。これは熱の症候です。この場合は寒性である緑茶やウーロン茶を飲んだりして、その熱を抑えなければなりません。漢方療法で行われることに、緑茶や菊花茶の汁で目を洗うことがあります。
 これらの反対に、何のきっかけもなくして涙を流すならば、それは寒性として考えることになります。

 「朝、目が覚めたとき、からだがべとーっと布団にへばりついているようで、なかなか起き上がることができない。」「朝、目が覚めたときが一日の中で一番疲れを感じ、起き上がってから1~2時間しないとからだの重みが取れない」というような症状をお持ちの方が時々来店されます。
 「その原因は何?」と問われたときに、私は応えに躊躇するときがあります。冷えや寝ている間の血行不良が原因であると考えられるのですが、「冷えや血行不良だと思います。」という応えがあまりにも一般論的で空々しく思えてしまうからです。テレビやインターネットには情報が溢れていますので、皆さんは実際は知識をお持ちだと思います。それを私を通して再確認したいのかもしれません。しかし、一般的な情報はどこか肝心なところが抜けているように思えてなりませんので、なんとなく躊躇してしまいます。
 「冷えが原因」と応えれば「腹巻きをすればいいのか?」などという言葉が返ってきたり、「血行不良が原因」と応えれば「運動すればいいのか?」などという言葉が返ってきます。もちろん、それらのことをしていただければ症状は多少なりとも緩和するでしょう。しかし、ほとんどの場合、決定的な解決策にはなりません。
 とは言え、根本的な原因として考えられるのはやはり“寝ている間の血行不良”です。

 さて、寝ている間の血行、つまり夜中の血液循環について考えるとき、キーワードとなるのは“内臓の働きと副交感神経”です。(正確ではありませんが)非常に大雑把に申しますと、昼間私たちが行動している時には交感神経が優位で、心臓が活発に働き、血管は締まっています。そして血液は脳と筋肉(骨格筋)に集まり大量の酸素を消費します。反対に夜中寝ている間は副交感神経が優位になって血管や筋肉はゆるみ、血液は脳ではなく内臓に集まり、その日食べたものを吸収して栄養化し、肝臓でさまざまに処理されます。つまり夜中は小腸と肝臓が活躍する時間帯です。
 昼間血液が脳や骨格筋に集まるのは酸素を燃焼して細胞を活動させるためのエネルギーを得ることが主目的ですが、夜中に小腸や肝臓に血液が集まるのは、血液の中に含まれている有効成分(=栄養)を得て、次の日にからだがフレッシュな状態で活動できるように細胞を修復し新陳代謝を行うためです。これも大雑把ですが、そう考えても良いと思います。
 ですから、朝フレッシュな気分で爽快に目覚めたいのであれば、夜中に血液が小腸や肝臓に集まり、さらに小腸や肝臓が大いに活躍できる状態が必要です。そこで出てくるのが自律神経の問題です。胃や十二指腸、小腸、大腸、肝臓、膵臓、腎臓といった内臓は副交感神経の働きによって機能します。心臓は見方を変えれば血管が膨らんでポンプの働きをするものになったと考えることもできますが、血管の働きを支配する神経と同じ交感神経によって機能しています。
 ですから、寝ている間に小腸や肝臓の活動を高めたいと考えるなら、寝ている間は副交感神経が優位に働いている状態になっていなければなりません。眠りが浅く、寝ている間も脳が活動しつづけているような状態は交感神経が働いているということですから内臓の働きは弱まります。一般に言われる「ストレスで自律神経失調状態になる」状況の一つです。

食物の消化吸収と血液循環の流れ

 また、内臓が十分に働ける状態になるためには“熱”が必要です。
 私たちが食べたものは胃で消化され、十二指腸で更に消化され分解されて小腸に送られます。そして小腸で栄養が吸収されて血液の中に入ります。その栄養豊かな血液は肝臓に真っ直ぐ送られ、肝臓で解毒され、からだを健康に維持するために必要な物質(ペプチド、タンパク質など)に合成されます。つまり究極的には、食べた物質がからだを維持するために必要な物質に変換され場所は肝臓であると考えることができます。肝臓の入口から入る血液は栄養で満たされ、肝臓の出口から出る血液は即戦力に満たされた状態です。その後血液は心臓に戻り、肺に送られてガス交換がなされ酸素を含んだ新鮮な動脈血として全身の細胞に行き渡ることになります。
 (副交感神経にコントロールされている)内臓の働きの柱の一つは食べたものを消化・吸収・栄養化し、からだを維持するために必要な物質に変換することですが、その作業を実際に行っているのは各器官や細胞内にに存在している“酵素”です。“酵素入り洗剤”というCMで、どなたも“酵素”という名前はご存じだと思いますが、酵素は物質をまったく違った物質に換えてしまう職人であり、魔法使いのような存在です。赤ちゃんを産んだお母さんからは母乳がでますが、母乳の元は血液です。血液が乳腺を通過した瞬間、あっと言う間にそれは血液とはまったく違う白いミルクに変わるわけですが、その技を行っているのは酵素です。タンパク質をアミノ酸にまで分解したり、炭水化物をブドウ糖にまで分解するのは酵素の働きによるものです。そして肝臓や細胞内でアミノ酸をタンパク質に合成するのも酵素です。脳から分泌されてからだの各部分に働き促すホルモンも酵素の働きによってつくられます。ですから体内の酵素がしっかりと働いてくれることが、からだを健康に保つための秘訣になりますが、酵素は温度(体温)がないと十分に働くことができません。
 私たちの平熱は36~36.5℃かもしれませんが、お腹の中や脳内の温度は37℃に厳密に管理されているといいます。37℃が酵素の働きに最適だからです。このことを私たちはもっともっと重く受け止める必要があると思います。学校教育の現場でももっとしっかり教えて欲しいと思います。今は、お腹を冷やすことを平気で行っている人たちがたくさんいます。その一方で、若い年代から成人病のような症状になったり、婦人科系の病気に悩まされたり、うつ症状が現れる人が増えています。内臓や脳の働きが機能不全に陥っていると考えることもできますが、その原因は「酵素の働きが悪いのかもしれない」という視点に立つなら「お腹を冷やしてはいけない」という“教え”がもっともっと浸透しなければならないと思います。
 お子さんやお孫さんがアイスクリームが好きだからといって頻繁に食べるのを許してしまうのは間違いです。冷たいビールが好きだからといってガボガボ飲んで直接胃を冷やしてしまうのは間違いです。

 “朝スッキリと目覚める”ためにはどうすれば良いか? という話題に戻ってもう一度考えてみます。
 仮に睡眠時間が6時間だったとして、目覚めたときから眠りにつくまでの18時間を私たちのからだ(骨格筋)や頭(脳)は何らかの活動を行っていることになります。すると骨格筋の筋細胞や脳細胞や血液細胞は疲労します。その疲労を翌日に持ち越さないために、6時間の睡眠時間の間に私たちのからだは傷ついた細胞を修復したり、新しい細胞と交換(新陳代謝)する作業を行っています。そしてその作業で必要な原材料は、その日や前日に食べたものから得た栄養やそれを肝臓で加工した物質(ほとんどはタンパク質)です。
 もし交感神経系に抑圧されて副交感神経系の働きが悪かったとしますと、小腸は栄養を十分に吸収できず、肝臓は修復や新陳代謝に必要な材料を十分につくり出すことができません。お腹が冷えていても同様です。そうなりますと次の朝は古いからだ、傷ついたままのからだで目覚めなければなりません。これが根本的な原理であると私は考えています。
 副交感神経の働きと内臓の適切な温度という必要条件を外したままで、いろいろなサプリメントなどを摂取したところで大きな効果は期待できないと思います。何故なら、そのサプリの有効成分を小腸が吸収できなければ本当の意味で体内に入っていかないからです。
 もちろん私たちのからだは、0か、100か、という感じで機能しているわけではありませんので、副交感神経の働きが悪かったとしても、お腹が冷えていたとしても、20とか30、あるいは50とかの効果はあるかもしれません。それは個人差の領域です。(100%近く効き目がある“薬”というのはどういう仕組みなのでしょう? それはそれで怖い気もしますが)

 ストレスは交感神経系の働きを亢進させる、つまり副交感神経系の働きを抑圧することがわかっています。ですからストレスをどう処理するかは“心地良い目覚め”に関係するでしょう。また、交感神経系は基本的に血管や血流をコントロールする神経ですので“からだの冷え”にも関わってきます。血液を体表の血管にまわして熱を放出するか、深部の血管にまわして体表は冷えても深部の熱が奪われないようにするかは交感神経系の働きなのかもしれません。(自律神経の働きについては改めて考察したいと思います。)

 マッサージなどでリラックスすることは副交感神経系の働きが高まったことを意味しますが、私は呼吸が整うことの方が効果が高いと感じています。
 “呼吸”については幾度となく取り上げ説明してきましたが、理想に近い呼吸状態を実現することは、思いの外難しいことでもあります。それが多くの人たちにアドバイスしてきた実感です。呼吸が整うと即座にからだは温まり出します。なんとか自宅でも良い呼吸をしていただきたいと思い、時々、一切からだに触れることなく言葉を掛けるだけでリードし、自分の力で呼吸を調整していただくことがありますが、「ここ(ゆめとわのベッド)では出来ても、何故か自宅では出来ない」とほとんどの方が仰います。
 自律神経系は私たちの思いや意志とは関係なく勝手に働いていますので、自律神経の調整を意図的に行うことなかなか難しいことです。しかしながら一番手軽な手段として“呼吸を調整して自律神経のバランスを回復させる”ことができると考えています。ただし、“その時”だけでなく、“いつも”良い呼吸ができていなければなりません。ゆっくりと息を吐き出す過程(解放)は副交感神経系、息を止めてしまう(息詰まり)のは交感神経系です。そんな風に感じています。

 日々のストレスをなくすことはほとんど無理でしょう。ですから頭をすっかり切り換えられる何かを持っていただきたいと思います。音楽を聴くだけではなく、実際に楽器を弾いてみてはいかがでしょうか。
 お腹が冷えていると感じている人は、あるいはそう感じていなくても目覚めが悪いと感じている人は、ゆっくり歩いてみてはいかがでしょうか。地面に立つ自分をたくさん感じながら、足裏が地面を踏みしめていることを実感しながら歩くことは開放感につながると思います。するとお腹が温まってくるかもしれません。
 自律神経系は私たちの意図、思考とは関係なく動いています。「そんなことで良くなるはずはない!」と私たちの頭が思ったとしても、それとはまったく関係なく、バランスが良くなるかもしれません。

 今回のテーマ「寝起きが調子悪い」につきましては、確実な解決策や「施術によって改善される」という結論的な説明にはなりませんでした。
 しかしながら私がこれまで携わってきた経験で申し上げますと、ここに記しましたとおり改善のためのキーワードは副交感神経とお腹の熱だと感じています。この問題で悩まれている方がいらっしゃいましたら、一度考えてみていただければと思います。

 「背中が痛くて辛い」「背中が痛くて仰向けで寝ることができない」と訴えてこられた方を施術するに際して最初に確認することは、背中のどの部分が張っていて辛いのかということです。そして実際にどの筋肉が張りや痛みの原因となっているのかを細かく正確に把握することが重要です。“だいたいこの辺り”のような大雑把なとらえ方では、施術を行ってもまったくかいぜんされないという結果に陥ってしまうことがあります。

背中の張りや痛みの区分

 肩甲骨の内側を中心に、肩甲骨から肩にかけて張りや痛みであれば、それはたいがい肩甲骨のずれによる筋肉の張りが原因となっています。
 肩甲骨の下部から肋骨の下部にかけて腫れや張りや硬さが見られる時は、胃・膵臓などの消化器系や腎臓など内臓の不調が原因となっていることが多いですが、猫背や背骨の弯曲が強いことなどが原因となっていることもあります。
 そして、その下、肋骨の下縁から骨盤にかけての部分に張りや痛みがある場合は腰痛として対応しますが、施術者として一番気を使うのは、図に示した②の“肩甲骨下部の張りや痛み”に対する対応です。

内臓の影響による背中の張りと痛み
 肩甲骨下部から肋骨下部にかけての張りや痛みの場合、胃などの消化器系の不調や腎臓の腫れが原因となっている場合があります。実体験として実感している人も多いと思いますが、胃の調子が悪くなるとなんとなく背中が張ってしまったり重くなって息苦しさを感じたりすることがあります。
 胃、膵臓、十二指腸、小腸、大腸など内臓器官も筋肉でできていますので、収縮したり伸張したりすることはもちろん、硬くなったり柔らかくなったりします。筋肉はこわばると太くなりますので、例えば何らかの理由で胃の筋肉がこわばりますと硬くなって太くなるため背中側の胸郭(肋骨)を圧迫することになります。胸郭が内側から圧迫されますと胸郭の外側にある骨格筋はその圧迫に抵抗するように緊張しますが、これが背中の筋肉がこわばりであり、背中の筋肉が張ってしまう理屈ではないかと思います。
 こうなりますと胸郭の内側では胃が硬くなって動きも悪いので消化機能が不十分な状態になり、胃もたれや逆流性食道炎などの症状をもたらすかもしれません。胸郭の外側では一つ一つの肋骨を結び付ける筋肉(外肋間筋、内肋間筋)や肋骨に付いている脊柱起立筋などがこわばるため張りと痛みを伴うようになります。するとこれら骨格筋のこわばりは肋骨の動きをさらに制限しますので、胃は益々動かなくなるし呼吸もしづらくなります。このような悪循環に陥りますと、この状態が慢性化してしまうため、“辛くて夜も眠れない”などという状態になるのではないかと思います。
 背中をマッサージして骨格筋の張りやこわばりを改善することで、一時的に楽な状態になることはできますが、元々が内臓の不調から始まった症状であれば、内臓の不調が改善しない限り同じ状態を繰り返すことが考えられます。ですから胃の不調が原因で背中に張りができたと考えられるのであれば、一時的に断食をして胃を休ませるようにした方が良いのかもしれません。

 本日、まさにこのような方が来店されました。肩甲骨下部の背筋(脊柱起立筋など)はゴリゴリにこわばって太くなっていました。肋骨に張り付いているような深層にある筋肉はコリコリでした。すぐに胃の不調を疑いましたので、本人に胃の調子を尋ねますと、逆流性食道炎でかなり調子が悪いとのことでした。「病院の薬では背中の張りと痛みは取れない」ということで私のところにきたのだということです。
 こういった場合、整体の施術でできることは限られます。東洋医学的な“ツボ”や手と足裏にある内臓の反射区を利用することが主な対応策になります。その他には腹筋の状態を整え、胸郭の動きを制限する筋肉の状態を整えることが施術内容になります。

反射区と内臓
 いわゆる“足つぼマッサージ=足リフレ”では、足裏にある反射区を刺激することで内臓の働きを整え体調を改善するという理屈がよく説明されます。私のところでも30分くらいの足リフレをやっていますが、正直なところ、この施術を単発に行ったところで内臓の働きが良くなるとは思えません。むくみを取って足をスッキリさせるには足リフレはとても良い施術だと思いますが、単発的な施術ではそれ以上は望めないと考えています。例えば週に一度、あるいは二週に一度くらいのペースで定期的に繰り返すのであれば、それは内臓の働きを全体的に整える効果は多いに期待できますが。
 ただし、反射区の一つ一つは確かに効果があると考えています。このブログでも幾度か紹介させていただきましたが、腎臓の反射区、小腸の反射区、そして今回対象となる胃・膵臓・十二指腸など消化器系の反射区は私もよく施術に取り入れています。そして、その施術方法は学校で習ったとおりではありません。学校では一つの反射区を数回指圧して刺激するように教えられましたが、私が現在実際に行っているのは、反射区にある“凝り”や”しこりのようなもの”が改善するまで入念に刺激し続けることです。一箇所の反射区を1~3分くらい指圧し続けることもよくありますが、そうしていると、ある瞬間にしこりがフワッと緩み始めるようになります。この状態にもっていくことが反射区の効果を実際の内臓に期待できる段階だと考えています。
 今回来店された方の胃・膵臓・十二指腸の反射区は本当に硬かったです。腎臓の反射区もかなり硬かったです。手と足裏のこれらの反射区をかなり入念に施術しまして、ふくらはぎにある足三里(胃経のツボ)も入念に指圧しました。それによって背中の張りは緩んできて、呼吸に合わせて胸郭が動ける状態にまではなりました。その後は、お腹側で胃と呼吸の動きを制限する腹筋の変調を改善して施術(60分)を終えました。
 ご本人は「楽になった!」と仰ってましたが、私としてはもう少し時間があれば、もっと楽にできたのではないかと感じました。
 内臓の不調に由来する今回のような背中の張りや痛みは、内臓が絡んでいるだけに「必ず改善する」とは言い切れません。しかし、病院の治療では顕著な改善が感じられないと思われている人も多いと思います。そんな場合は整体でも“やりよう”はあるということをお知らせしたいと思います。

内臓の不調以外の肩甲骨下部から肋骨にかけての背中の張り
 単純に骨格と骨格筋の関係でこの部分に張りができるもありますが、それは姿勢による影響が一番多いかもしれません。いわゆる“猫背”も度合いが強くなりますと、萬年「背中の張りがとれない」となってしまいます。
 背骨は横から見ますとゆるやかなS字のカーブ描いていて、ちょうど肩甲骨の下部が後弯の頂点になっています。猫背の姿勢では、この頂点部分に重みが強く掛かるため、それに対抗するように背中の筋肉がこわばって頑張るようになります。それが背中の張りとなり、痛みや辛さを招くことになるのだろうと思います。
 この場合も、マッサージなどで背中の筋肉の張りを改善すれば状態は一時的に良くなりますが、しかしそれは、あくまでも一時的な効果しか期待できません。根本的に改善するためには“猫背の改善”が不可欠になりますが、それについてはまた後日触れたいと思います。

 胃が不調になるから背中が張るのか? 背中が張るから胃の調子が悪くなるのか?
 それは、どちらもあり得ると思いますし、消化器系の調子と背中のこの部分の張りとは互いに関係し合っていると考えた方が良いと思います。
 「病院で胃の治療を行い調子が良くなってきたら、自然と背中の張りも取れてきた」ということもあるでしょうし、「背中の張りが取れてきたら胃の調子も良くなった」ということもあり得ます。
 もし、慢性胃炎などで長く病院での治療や薬に頼ってきたがなかなか状態が改善しないということであれば、一度整体の施術などを試みることをお奨めします。

 今回は医学的・学術的根拠に基づいた見解ではなく、あくまでも私の感触と経験に即しての話になります。それを最初におことわりします。

 心臓の働きに関して、ごく一般的に観察できるのは血圧と脈に限られるかもしれません。しかし、その変化だけでも心臓が楽に働いているのか、窮屈そうに、苦しそうに働いているのかをうかがい知ることがある程度はできると考えています。以下に、心臓の問題や血圧に関してこれまでに私が経験した中から二つの例をあげてみます。

激しい不整脈で医師からはペースメーカー以外に方法はないと言われた人
 その方は心臓の病気で半年ほど入院していました。退院してからも週に一度は通院しなければならない状況で、月に一度、脈の状態を24時監視する計器を付けていました。歳は60歳で、医師からは強くペースメーカーの装着を薦められていましたが、本人はどうしても付けたくないという思いを持っていました。
 私のところには心臓の問題ではなく、強い肩こりを解消したいということで来店されました。心臓に問題があると肩が強く凝ってしまうことがありますので、私はそんなことも頭に描きながら施術を行いました。不整脈が激しいとそれだけで息苦しくなりますが、その方もハァハァととても息苦しそうな息をしていました。
 心臓の働きが悪いから息苦しいのか? それとも他に要因があって息苦しいのか?
 つまり、心臓自体が悪いのか、それとも、何かの要因で心臓が働きにくい状況になっているのか、というのが私が最初に思ったことです。心臓自体の問題であれば、私の力では何もできないかもしれません。しかし骨格系の何かの影響で心臓の動きに余計な負荷が掛かっているために調子が悪いのであれば、それは整体施術で何とかなるかもしれません。そう思いました。
 
心臓と肺と横隔膜と大胸筋jpg

 その方の胸は右側に捻れていました。そして左側の大胸筋がこわばっていました。この二つのことは心臓のあるスペースを狭めることと、左胸が大胸筋によって締めつけられている状態ですから、心臓が窮屈な状態で働かなければならないことを連想させます。それで、私のできることとして、胸郭を正しい状態に戻し、大胸筋やその他胸郭の動きを制限するような筋肉の状態を改善することを行いました。
 はじめのうちは週に1度くらいのペースで、一月を過ぎた頃から2週に1度くらいのペースで来店していただきました。2度目の施術が終わった頃から肩の凝り方も改善し、息も楽にできるようになったと言うことです。一月が経過した頃からは不整脈はあるものの、その状態も改善し始めたということでした。そして半年が過ぎる頃からは医師がペースメーカーの装着を薦めることもなくなりました。この頃には月に1度くらいの来店頻度でした。
 一年が経過すると仕事(塗装業)を再開し、今は二年が経過しましたが、来店も3ヶ月に一度くらいです。完全に心臓の状態が良くなったとは言い切れない状態かもしれませんが、心臓の調子をそれほど気にすることもない日々を送っているとのことです。
 施術に際して私がいつも心がけていたことは、左胸に余裕を持たせるようにすることでした。そうすることで心臓が動きやすい状態になって欲しいと願っていました。

低血圧の若い女性
 高血圧に対する薬はたくさんあります。しかし、低血圧を改善することはなかなか難しいと聞きます。
 20代の女性が来店されました。来店の主目的は受け口の改善とO脚の改善です。その他にこの方の自分に対するストレスとして、頭の回転が鈍く、普通の人のようには素速く受け答えができず、物忘れも激しいというのがありました。低血圧でもあるということでしたので、施術前に血圧を測定してみました。すると上が100位でした。(手首に巻く測定器を使用)
 脳の働きが鈍いことの原因として低血圧は十分考えられることです。心臓の力が弱いため血圧も上がらず、脳に血液が行き渡るのに時間がかかってしまうと考えることができるからです。その他には受け口であることも含めて頭蓋骨が歪んでいることも脳の血流が悪い理由にもなります。
 この方の場合、呼吸も悪い状態でした。呼吸、心臓の力、と考えますと、やはり“胸郭の状態”というキーワードが私には浮かんできます。
 施術では、左胸の中で心臓が動きやすい状態になるように胸郭を整え、併せて頭蓋骨を調整しました。その他に重心が体の中央に集まるようにしてO脚を改善しようとしました。施術を終えるとき再度血圧を測定しましたが、上が117に上がっていました。
 2週間後に再び来店していただき、施術前に血圧を測定しましたが、値は118でした。頭の回転や物忘れの状態などを質問しましたが、受け答えも速くなり、それらの状態も良くなっているとのことでした。
 2度目の施術では、脳の使い方についていろいろ話をしながら体を整えていきました。脳の使い方についてはまたお話ししたいと思いますが、本当に皆さんそれぞれに癖があって、観察する立場としては興味深いことが多いです。
 施術が終わって血圧を測定すると121でした。この数値は理想に近いものですが、脈の数が1分間に60未満であり、まだ少し心臓の働きが弱いのかなぁ、という感じを持ちました。
 
心臓と胸郭の関係

 心臓は肋骨でつくられた籠(胸郭)の中央部やや左側にあります。その左右には肺があり、下には横隔膜がありますので、呼吸運動と心臓の働きは密接に関わりあっていると考えることができます。と言いますか、整体的に見れば、呼吸運動と切り離して心臓の運動を考えることはできません。血圧、動悸、不整脈、これらの問題を考えるときは、呼吸運動の主体である肺と横隔膜、つまり胸郭の状態をいつも念頭におく必要があると考えます。心臓がその中で働きやすい状態になるよう、胸郭自体(肋骨)や胸郭を取り巻く筋肉(大胸筋、小胸筋、肋間筋、腹筋など)を整えることが一つの要になるのではないかと思っています。

 冒頭に申しましたとおり、今回の話は医学的根拠に基づくものではありません。また、心臓や血圧の問題を整体で改善できると断言しているわけでもありません。あくまでも参考としてお読みいただけたら幸いです。そして、いろいろな治療を試みたがうまく改善できないと言う方がいらっしゃったら、一つの方法として考えたいただければと考えます。

 私たちの頭の中には脳があります。肉体面での脳の主な働きは、感覚器官(目・鼻・耳・舌・皮膚)を通して得られた情報を処理して自分の意図するとおりに体を動かすこと(随意神経)と、体が順調に生理機能を維持できるようにコントロールすること(自律神経)です。それ以外に、精神活動における感情や思考の中枢でもあります。しかし、ここでは精神活動の件は横に置き、肉体面についてのみ考えてみます。

 私たちの多くが、肉体をコントロールしている中枢は頭の中の脳であると思っています。ところが内臓の働きをコントロールしている中枢は骨盤の近くにもあります。これを”仙髄”と言いますが、大腸、直腸、膀胱、生殖器は仙髄の副交感神経によってコントロールされています。
 
自律神経01
 発生学的に見ますと、私たちの祖先である太古の動物は頭とお尻が分かれていませんでした。それが海の中で波に任せて漂っているうちに、水の流れの力による影響で次第に体が長くなり、やがて魚の形(脊椎動物)になると、頭部と腹部と殿部という区分がはっきりできるようになったということです。さらに太古の海では天敵というのもなかったようで、食べて、寝て、出して、体を休めるための神経(副交感神経)しかなかったそうです。ですから、その名残として私たちの副交感神経は頭(脳幹)と尻(仙髄)にしかなく、天敵から逃げるために発達した交感神経は後に発達した胴体(胸髄・腰髄)から出ているということです。

 さて、生物が命を維持するために一番必要な器官は”腸”だという考え方があります。脳も顔も食道も胃などの消化器官や小腸、大腸といった別々に存在すると考えられている内臓器官はすべて腸から分化してできました。ですから元々は体を調整する中枢は腸にあったと考えられています。私たちの感覚は感覚器官を通して得られるものしか基本的に感じることができませんので、のど元をすぎると食物がどのように変化するのか感じることはできません。臓器に異常が現れると、それが深部感覚を通して不快感や異常として感じられる場合がありますが、それ以外は中で何が行われているかは感覚の特に鋭敏な人を除いて知ることはできません。しかし、私たちの意識が知るか知らないかに関わらず、消化・吸収・栄養化という作業は日々順調に行われています。これをすべて頭の脳でコントロールしているという考え方も成り立つかもしれませんが、発生学の研究者の中には腸の中に脳に匹敵する中枢があってコントロールされていると結論づけている人もいます。
 エサを見つけて食べ、呼吸を行う脳を口脳(鰓脳)と言い、消化吸収のための脳を腸脳、排泄と生殖のための脳を肛脳(排脳)と呼ぶ研究者もいます。

 “内臓には内臓の働きをコントロールする中枢がある”と考えますと、異物が体内に侵入したとき免疫力を発揮して対抗したり、嘔吐によって拒絶や体外排出したりするのは腸脳の働きとなります。
 現代科学に基礎をおく現代医学(西洋医学)は頭の脳が生理機能の全てを司る中枢だと考えるのを好んでいるようですが、伝統医学である中医学(東洋医学)では、“三焦”と言って、体を胸部(上焦)と腹部(中焦)と下腹部(下焦)に分け、それぞれが体内エネルギーの循環において重要な役割を担っていると考えています。“丹田呼吸”という呼吸法で重要とされている下丹田(臍下三寸)は下腹部のエネルギー中枢を指しており、副交感神経の中枢である仙髄に対応しています。
 
三焦

 エネルギー(気、プラーナ)というのは実体が目に見えませんし科学機器では測定できませんので現代科学ではほとんど無視している状況ですが、中医学やヨガ、アーユルヴェーダといったインド伝統医学では、物質的要素よりも重要に考えています。
 ところで、中医学には経絡・経穴(ツボ)という概念がありますが、三焦の経絡は手の薬指に対応しています。私は施術において薬指に力が入るかどうかをとても重要視していまが、体の虚弱な人、体内エネルギーの巡りの悪い人は薬指に全然力が入りません。このような人は歯ぎしりや噛みしめの癖を持っていることがほとんどで、手のひらや足裏の汗とも関係があります。

母指と示指・環指の対立筋検査

 “腸の脳”といっても、その実体は見えませんので、ほとんどの人は信じないかもしれません。しかし、お腹が冷える(低体温)と体の生理機能が大幅に低下しますし、傷んだ食物食べると嘔吐や激しい下痢になったりします。それは内臓(腸管)が食した物に反応しているということです。“食べたものに○○菌があって炎症を起こした”と科学的には解釈するかもしれませんが、腸はもっと単純に、それが体に有害であると判断すれば下痢で流してしまったり、嘔吐で吐き出してしまったりするだけなのかもしれません。犬を散歩に連れて行き、飼い主の目を盗んでは道ばたの雑草をパクりとした後で、オエッ、オエッと吐き出すのは、このことの端的な現れだと思います。
 現代医学的には、こういうことも頭の脳が処理していると考えるのかもしれませんが、真実はもっと単純で、腸自体が取捨選択し、不必要な物は体外に放出するように命令をだしているのではないかと思うのです。

 昔の人は肉や魚を選ぶ際に臭いをとても重要視していたように思います。つまり自分の感覚(鼻が生物にとって一番古い感覚器官)で食べられるものか、食べられないものかを判断していたわけです。言ってみれば自分を含め家族の健康は自己責任でした。現在、私たちは“消費期限”をとても重要視しています。ですから自己責任ではなくなったわけです。これによって私たちの鼻の能力は次第に低下していきます。解剖学的に顔は内臓が露出したものですから、内臓の能力が低下していくという考え方できるようになります。

 ちょっと余談になりますが、昨日20代の女性がきました。頭の回転があまり良くありませんでした。ところがお腹を温める施術をすると頭の回転が速くなりました。それは九九を暗算してもらうとすぐにわかることです。お腹が温まり腸管の働きが良くなると脳の働きも良くなるのだと私は考えています。
 常にお腹が温まっている状態にしていれば、腸(内臓)の働きが良くなるだけでなく、脳の機能も良くなるため精神的にも余裕が生まれます。するとこんなにストレスの多い社会ですが、自分らしく渡っていくことができるようになるのではないかと、そんなふうに思います。

 信じるか信じないかは別にして、腸管は単に食物を消化吸収するだけの存在ではなく、生命体としての根幹であり、腸も頭と同じように生命や健康を維持するために中枢器官として働いているという考え方もあるのだなぁ、と思っていただければ幸いです。

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