ゆめとわのblog

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カテゴリ: 腹部

 「胃がもたれる」「胃がピリピリする」などの訴えがあった場合、胸郭の柔軟性が失われていたり、胸郭が胃の動きを阻害していたり、腹筋のこわばりが胃を圧迫している可能性なども考えられます。
 胸郭は胸椎と12本の肋骨でできた籠のようなものですが、その中に肺と心臓と食道が収まり、胸郭の底には横隔膜があります。そして横隔膜に接するように肝臓(右側)と胃(左側)があり、そのすぐ下に大腸の横行結腸が通っています。

体の前面

 呼吸で息を吸いますと肺が広がりますが、実は肺自体が自ら弛緩して拡がっているのではありません。肋骨が拡がり、籠の底(横隔膜)が下がることによって胸郭全体が拡がる仕組みを利用して、肺が拡がり空気が入るようになっています。ですから肋骨が拡がらなければ、また、横隔膜が収縮しなければ、息を吸っても空気は入ってきてくれません。
 そして、”胃もたれ”や”胃のつかえ”を感じるときは、胸郭が拡がりにくく横隔膜の運動が不十分である場合が多いようです。

胃と肝臓と骨格との位置関係

 さて、胸郭は下部では腹筋と背筋などによって骨盤につながっています。ですから、腹筋や背筋などがこわばって伸びにくい状態ですと、息を吸うとき上に上がってきてくれなくなります。さらに腹筋の中の外腹斜筋は胸郭を内側下方に動かす働きをしますので、外腹斜筋がこわばった状態ですと、胸郭は(正面から見て)幅が狭くなります。胸郭のゆとりが失われ、胸の厚みは増し、しかし細く絞られたような感じになります。見るからに息苦しそうです。
 その他にも肋骨の動きを制限してしまう筋肉がありますが、それらによって胸郭が身動きできない状態になってしまうことがあります。そうなりますと、狭い胸郭の中で心臓は動かなければなりませんし、胸郭の下部に接している胃や肝臓も窮屈な状態になってしまいます。
 この状況で、腹直筋のみぞおちの部分に硬いこわばりができていしまいますと、それによって胃はさらに圧迫を受けますので不調が増大した状態になってしまいますが、実際、胃もたれなどの症状を訴える時はそのような状況になっていることがとても多いです。

腹直筋のこわばりによる胃もたれ、圧迫感
 みぞおちのところが硬くなって胃の不調を訴えることがあります。「胃が炎症して張ってしまったのか?」と考えることもできますが、胃は張ると背中側に膨らむようですので、私は腹筋がこわばって硬くなり、その硬結が胃を圧迫していると考えて施術を行っています。実際、みぞおちのところがこわばっているのは腹直筋のこわばりです。

臍の「ゆ」によって胸郭が下がり胃を圧迫

 「どうして腹直筋のみぞおちのところがこわばるのか?」よく聞かれる質問ですが、お腹の冷えが原因であることが多いです。お腹が冷えている人はみぞおち部分に限らず、腹筋の深部が硬くなっています。手を深いところに押し込んでいきますと”まるで板のよう”と感じることもあります。腹直筋の表層は脂肪もあって柔らかいのですが、2㎝、3㎝‥‥と手を入れていきますと、とても硬くなっている部分につきあたることがあります。このような場合は、ほとんど冷えが原因だと思いますので、お風呂でゆっくり温まるだけで胃もたれは少し良くなるかもしれません。
 「お腹が冷えると腹筋の働きが悪くなって硬くなるのはわかるけど、どうして胃のあるみぞおちの部分が圧迫されるのか?」という素朴な疑問が沸くと思いますが、それを説明しだしますと長くなってしまいますのでここでは省略させていただきます。

手や腕の問題からくる胃の不調‥‥前鋸筋と腹斜筋のこわばり
 胃の問題を整体的に考えますと、胸郭の在り方はとても重要なポイントです。胸郭が狭い、胸郭が動かない、胸郭が硬い、胸郭が閉じている、これらの状態は胃の不調と浅い呼吸状態の原因になります。胸郭は背骨(胸椎)と12本の肋骨でできていますが、まず「それはとてもフレキシブルで、しょっちゅう動いてますし、いろんな要素で状態が変わるものである」と申し上げます。ほとんどの人は「骨なので動かない」というイメージを持たれていますが、それはまったく間違いです。
 息を吸うとき胸郭は拡がりながら持ち上がるのが普通の状態ですが、それは胸郭の上の方で筋肉が収縮して胸郭自体を持ち上げるのと同時に、肋骨と肋骨の間にあります外肋間筋が収縮し、胸郭の下方にあります腹直筋や腹斜筋が緩んで胸郭が持ち上がることを許すことを同時に行っているからです。ですから、肋骨でできている胸郭は関連する筋肉によって動いていることをまずイメージしてください。

身体前面胃の不調

 さて、腹筋の中には外腹斜筋と内腹斜筋があって、両方とも上半身を斜め方向に動かしますが、互いに反対方向に作用しあっています。例えば右側の外腹斜筋が収縮したり、こわばった状態になりますと、胸郭を右上外側から左下内側に向けて動かした状態になります。ですから両側の外腹斜筋がこわばりますと、胸郭は下に向かうほど内側に入りますので、胃や肝臓のある上腹部は狭い状態になってしまいます。この状態を正面から見ますと、上半身が細くなってゆとりがなくなっているように感じます。外腹斜筋のこわばりによって肋骨の動きは制限されていますので、呼吸は、腹部がペコペコ動いているくらいの状態になってしまいます。
 ところで、外腹斜筋のこわばり状態の要因はいろいろ考えられますが、実際のところ、最も多い原因は手の使い方であり、親指の状態と密接に関係しています。そして親指の状態と密接に関係している筋肉がもう一つありますが、それは前鋸筋です。前鋸筋は肩甲骨と胸郭を結び付けている大きく強力な筋肉です。パソコン業務など腕や肩を前に出している状態が長いと前鋸筋がこわばります。そして親指を使いすぎると前鋸筋はこわばります。デスクワークの仕事に従事している人たちのほとんどは前鋸筋がこわばっていますが、そうなりますと胸郭の動きはとても制限された状態になります。息を吸っても吐いても肋骨が動かなくなってしまいます。
 外腹斜筋がこわばり、前鋸筋がこわばった状態では、満足な腹式呼吸ができないため胸郭や横隔膜の動きは悪くなります。さらに胃や肝臓の居場所も窮屈ですので、「狭い場所でじっとしていなければならない」状態になってしまいます。私たち自身、どこか狭い場所に閉じ込められて身動きできなければ、気分は落ち込み体調も悪くなってしまいます。そう考えれば、胃や肝臓が不調になってしまうのは当然と思われます。胃は不調になれば不快さや痛みというサインをくれますが、肝臓は無言のままです。こんな状態のときは、胃も心配ですが肝臓も心配ですね。
 正面から見ると上半身が細く、しかし横から見ると胸に厚みがあって、呼吸をしても胸はほとんど動かず、胃の調子が悪いと感じているならこんな状態かもしれません。

座りすぎと胃の不調‥‥腸骨筋のこわばり
 先日、チェロを演奏されていらっしゃる女性が来店されました。「楽器を脚の間に挟んで椅子に座り続けるので、それがけっこうきつくて‥‥」と仰っていましたが、股関節の筋肉がかなりこわばっていることが予想できました。

座り続ける弊害_腸骨筋のこわばり

 腸骨筋という筋肉が骨盤の内側にあります。大腿骨を骨盤につなぎとめて股関節を安定させ、太もも引き上げる働きをしていますが、座る姿勢を保つためにも働いています。また長内転筋という筋肉があります。椅子に座りながら脚に力が入っている人はこの筋肉がこわばってしまいます。足を組まずに、意識的に背筋を伸ばして姿勢良く座っている人のは、その姿勢を維持するために知らず知らずのうちに内股に力が入ってしまうのですが、それによって長内転筋や恥骨筋がこわばってしまいます。
 ここで筋肉連動の話になりますが、腸骨筋は太ももの内転筋である薄筋と連動関係にありますので、腸骨筋のこわばっている人は薄筋もこわばっています。あるいは反対に薄筋のこわばっている人は腸骨筋もこわばっています。
 つまり、デスクワークやその他のことで長く座り続けている人は、腸骨筋、恥骨筋、薄筋、長内転筋がこわばりやいと言えます。そしてこれらの筋肉は隙間の狭い鼡径部に影響をもたらします。筋肉はこわばると硬く太くなりますので、これらの筋肉がこわばりますと、狭い鼡径部の隙間が益々狭くなり、その中を通っている動脈、静脈、神経を圧迫することになります。これは下半身にむくみをもたらす原因の第一ですが、血流が悪くなることによって腹筋の働きが悪くなり、また内臓の働きに影響がでるということも考えられます。
 「呼吸が浅いし、胃がピリピリする」という方の薄筋と長内転筋がこわばっていましたので、「ちょっと痛いですが」と申し上げて、直にそれら内転筋を引き延ばしてストレッチしたところ、その場で呼吸と胃の問題が改善したことがあります。

 ですから、長時間デスクワークで座り続けているような人は、内転筋をゆるめるストレッチを毎日行ってみてください。きっと早々に効果が感じられると思います。
 チェロの奏者の方は、実際のところ無理な姿勢で我慢しながら座り続けているわけで、内転筋というより腸骨筋自体がとてもこわばっていました。そこで、腸骨筋をゆるめるストレッチを左右10秒間ずつやっていただきました。すると、途中までしか回らなかった首が、十分に最後まで回るようになりました。一つは股関節の動きが良くなったことに連動して首の動きも良くなったと考えることができます。もう一つは、腸骨筋が緩んだことで腹筋のこわばりがゆるみ、下がっていた胸郭が本来の位置に戻ったので首の筋肉に余裕が生まれ、動きがスムーズになったと考えることができます。

 前回は”背中側から見た胃の不調”について取り上げました。そういう観点で、今回は”お腹側から見た胃の不調”について説明させていただきました。
 繰り返しになりますが、胃の調子の悪い人を、お腹側から観察しますと以下のような特徴を見ることができます。
①胸が下がっている‥‥腹直筋と腸骨筋のこわばり
②上腹部が窮屈そうで胸郭の動きが悪い‥‥腹斜筋のこわばり
③呼吸が浅く、息を大きく吸うことができない‥‥胸郭が動かない
 ですから、これら3点を改善することが整体的なアプローチになります。そして、これらは生活習慣(湯船に浸からずお腹が冷えている、お腹を冷やすものを好んで食べている等々)、普段の姿勢やからだの使い癖によってもたらされる状態ですので、それらを改めないと根本的な解決にはなりません。

 これまでの経験で申し上げますと、施術によって胃の不調はかなり改善すると思います。しかし、日が経つとまた胃の不調に悩まされるようになってしまう人が多くいます。私は施術の時に、症状をもたらしている直接的な原因と思われることや、再びそのような状態にならないために気をつけてほしいことなどを申し上げるようにしています。

 Aさん:「9年前、長男を出産してから噛みしめるようになってしまい、朝起きると手まで握っていることが多くなり、しょっちゅう頭痛と顎の不調に悩まされているんです。」
 私:「自然分娩だったのですか?」
 Aさん:「最初の出産は帝王切開でした。二人目は、お腹を切ることは良くないと聞かされたので、無理して普通分娩にしたんですけど。」

 Aさんの方の今回の来店の主目的は、噛みしめによる顎の不調、後頭部の頭痛、左が向きづらい首の不具合を解消して欲しいというものでした。その他に、下の歯茎が年々薄くなって後退しているので、将来歯が取れてしまうのではないかという不安を抱えています。彼女は子供の頃から顎が小さく、歯並びが悪かったので抜歯による歯科矯正をしています。そして弱い側弯症でもあります。
 歯茎の後退は歯列矯正の影響が大きいと私は思います。抜歯を伴う矯正によって歯茎がゆるんでしまったままになっていることはよくあることですが、それによって噛みしめ癖になってしまったり、舌が硬くなって動きが悪くなるなどの不調がもたらされているケースは多いです。

 頭痛と噛みしめはセットになっているといっても過言ではありません。ですから噛みしめ状態と噛みしめてしまう癖の両方を何とかしないと本質的な問題の解決には向かいません。
 噛みしめ状態に対する考え方は二通りです。一つはこれまでの噛みしめが蓄積してそしゃく筋がコチコチに硬くなっていることです。これは単純な肩こりと一緒で、指圧によってほぐすことで対応し、改善することができます。
 もう一つは、自分では力を使っていないのに筋肉が勝手に収縮して噛みしめ状態になってしまうことです。からだの他の部分からの影響で自然とそうなってしまうので、その原因を解決しなければなりません。
 そして、その原因の一つとして歯科矯正による歯茎の弱さがあります。Aさんの場合、下の両側の小臼歯部分の歯茎がとても弱く、そこがしっかりするように施術しますと噛みしめ状態を起こしている咬筋の一部がゆるんで収縮から解放されました。
 しかし、歯茎への施術だけでは全部が解決するわけではなく、収縮状態が残ってしまいますので他にも原因があるということになります。そこで、もう少しお話しを聞いてみますと、冒頭の「9年前、長男を出産(帝王切開)してから噛みしめるようになってしまい、朝起きると手まで握っていることが多くなり、しょっちゅう頭痛と顎の不調に悩まされているんです。」という話しがでました。
 “帝王切開”、幸い縦方向にメスを入れているとのことでしたので、まだケアが楽です。帝王切開に限らず手術痕の影響でからだが不調になることはよくあることです。
 「では、私は隠れていますので、このテープをメスが入ったところ(縫合されている)に貼ってください。」と言って、ニチバンの最も粘着力の弱い絆創膏を貼ってもらいました。その後でそしゃく筋の状態を確認しますと、収縮状態はすっかり解消されて、顎のエラ部分(下顎骨)が少し下がった感じになりました。
 あとはこれまでの噛みしめで蓄積された強い凝りをほぐす施術を行いました。それで頭痛はすっかり解消し、首のコリも含めてからだ全体からこわばりによる緊張感が取れました。

帝王切開のテープケア

 少し前の投稿で、噛みしめ癖になる原因にエネルギーの循環不良があると記しましたが、帝王切開に限らず手術痕はエネルギー循環を弱めてしまう可能性が高いです。からだには微弱な電流が流れています。神経の働きは電気信号の伝達ですから、電流の流れが悪いところがありますと筋肉の働きは弱まります。ギックリ腰は仙骨尾骨部分に傷がついて(肉離れなど)しまうことですが、からだの中心部分の筋肉が働かなくなりますと腰だけでなく、からだ全体が動かなくなってしまいます。ギックリ腰で身動きが取れなくなってしまうのは、このような原理によるものです。

任脈と帝王切開

 下腹部は骨盤臓器や内臓の働きにとって重要なところですから、そこの電流の流れ悪くなりますとからだ全体の生理機能が低下すると考えられます。基礎代謝も落ちますから太りやすくなりますし、冷えやむくみという問題も出てくるようになるのではないかと思います。メスを入れるということは少なくとも皮膚とその下にあります筋膜は切断されるということです。その後、メスの傷はくっつきますが、それは元の状態に戻るというより“接着する”に近いのだと思います。ですから、どうしても流れが弱くなってしまいます。その部分が手や足などからだの中心から遠い部分であればそれほど大きな問題にはなりませんが、帝王切開のようにからだの正中線上であれば、やはり影響が強く出ると考えた方が良いと思います。
 このような場合ので施術としては、「電流の流れがよくなりますように」という意識を込めて傷になっている部分に手を当てることです。(こういうことを言いますと宗教的な何か、と受け止める人もいますが、全然そんなことではありません。実際これが一番効果あるのです)手を当てて“補う”ことを何度も何度も続けているうちに、やがてその必要がなくなる状態が訪れます。それまではケアを続けて欲しいと思います。
 しかし実際問題として、長さ10㎝の傷だった場合、手を当てるのも難しいのでテープ(絆創膏)を貼ることも手段の一つです。その原理の詳細はわかりませんが、テープを貼ることによって電流の流れが良くなるのかもしれません。

絆創膏

 以前に両方の膝を人工関節にした後、腰痛を発症して苦しんでいる人が来店されました。一通り施術した後、手術でメスを入れたところ全部にテープを貼り、「毎日、このようにテープを貼ってみてください。」とアドバイスしました。すると次に来店された時、「腰痛がかなり良くなった」ということでした。そして、その後来店されることはありませんでした。
 このような事例はたくさんあります。手術痕だけでなく、転んで膝を打撲して深めの傷痕が残っている、擦り傷や切り傷が残っている、そんな時にテープを貼ることは有効だと思います。

 現代医学ではたいして重きを置かないかもしれませんが、伝統医学的にはからだの正中線上は大切にしなければならないと考えます。東洋医学では腹側の正中線は任脈と言いまして、急所がたくさんある場所とされているため大切に扱うよう指導されます。
 
 ところで、帝王切開された方全員が噛みしめの癖を持つわけではないと思います。Aさんの場合は、その他に歯茎の問題や軽い側弯症がありますので、からだが疲労しますと噛みしめるだけでなく手まで握りしめてしまうほど全身に力を入れてしまう症状になってしまうのだと思います。
 しかしながら、帝王切開は正に任脈上を切開するわけですから、やはりからだには大なり小なり負担が掛かることになります。分娩方法の選択について考えている方がいらっしゃるなら、この辺りのリスクについても考慮していただきたいと思います。

 私たちの頭の中には脳があります。肉体面での脳の主な働きは、感覚器官(目・鼻・耳・舌・皮膚)を通して得られた情報を処理して自分の意図するとおりに体を動かすこと(随意神経)と、体が順調に生理機能を維持できるようにコントロールすること(自律神経)です。それ以外に、精神活動における感情や思考の中枢でもあります。しかし、ここでは精神活動の件は横に置き、肉体面についてのみ考えてみます。

 私たちの多くが、肉体をコントロールしている中枢は頭の中の脳であると思っています。ところが内臓の働きをコントロールしている中枢は骨盤の近くにもあります。これを”仙髄”と言いますが、大腸、直腸、膀胱、生殖器は仙髄の副交感神経によってコントロールされています。
 
自律神経01
 発生学的に見ますと、私たちの祖先である太古の動物は頭とお尻が分かれていませんでした。それが海の中で波に任せて漂っているうちに、水の流れの力による影響で次第に体が長くなり、やがて魚の形(脊椎動物)になると、頭部と腹部と殿部という区分がはっきりできるようになったということです。さらに太古の海では天敵というのもなかったようで、食べて、寝て、出して、体を休めるための神経(副交感神経)しかなかったそうです。ですから、その名残として私たちの副交感神経は頭(脳幹)と尻(仙髄)にしかなく、天敵から逃げるために発達した交感神経は後に発達した胴体(胸髄・腰髄)から出ているということです。

 さて、生物が命を維持するために一番必要な器官は”腸”だという考え方があります。脳も顔も食道も胃などの消化器官や小腸、大腸といった別々に存在すると考えられている内臓器官はすべて腸から分化してできました。ですから元々は体を調整する中枢は腸にあったと考えられています。私たちの感覚は感覚器官を通して得られるものしか基本的に感じることができませんので、のど元をすぎると食物がどのように変化するのか感じることはできません。臓器に異常が現れると、それが深部感覚を通して不快感や異常として感じられる場合がありますが、それ以外は中で何が行われているかは感覚の特に鋭敏な人を除いて知ることはできません。しかし、私たちの意識が知るか知らないかに関わらず、消化・吸収・栄養化という作業は日々順調に行われています。これをすべて頭の脳でコントロールしているという考え方も成り立つかもしれませんが、発生学の研究者の中には腸の中に脳に匹敵する中枢があってコントロールされていると結論づけている人もいます。
 エサを見つけて食べ、呼吸を行う脳を口脳(鰓脳)と言い、消化吸収のための脳を腸脳、排泄と生殖のための脳を肛脳(排脳)と呼ぶ研究者もいます。

 “内臓には内臓の働きをコントロールする中枢がある”と考えますと、異物が体内に侵入したとき免疫力を発揮して対抗したり、嘔吐によって拒絶や体外排出したりするのは腸脳の働きとなります。
 現代科学に基礎をおく現代医学(西洋医学)は頭の脳が生理機能の全てを司る中枢だと考えるのを好んでいるようですが、伝統医学である中医学(東洋医学)では、“三焦”と言って、体を胸部(上焦)と腹部(中焦)と下腹部(下焦)に分け、それぞれが体内エネルギーの循環において重要な役割を担っていると考えています。“丹田呼吸”という呼吸法で重要とされている下丹田(臍下三寸)は下腹部のエネルギー中枢を指しており、副交感神経の中枢である仙髄に対応しています。
 
三焦

 エネルギー(気、プラーナ)というのは実体が目に見えませんし科学機器では測定できませんので現代科学ではほとんど無視している状況ですが、中医学やヨガ、アーユルヴェーダといったインド伝統医学では、物質的要素よりも重要に考えています。
 ところで、中医学には経絡・経穴(ツボ)という概念がありますが、三焦の経絡は手の薬指に対応しています。私は施術において薬指に力が入るかどうかをとても重要視していまが、体の虚弱な人、体内エネルギーの巡りの悪い人は薬指に全然力が入りません。このような人は歯ぎしりや噛みしめの癖を持っていることがほとんどで、手のひらや足裏の汗とも関係があります。

母指と示指・環指の対立筋検査

 “腸の脳”といっても、その実体は見えませんので、ほとんどの人は信じないかもしれません。しかし、お腹が冷える(低体温)と体の生理機能が大幅に低下しますし、傷んだ食物食べると嘔吐や激しい下痢になったりします。それは内臓(腸管)が食した物に反応しているということです。“食べたものに○○菌があって炎症を起こした”と科学的には解釈するかもしれませんが、腸はもっと単純に、それが体に有害であると判断すれば下痢で流してしまったり、嘔吐で吐き出してしまったりするだけなのかもしれません。犬を散歩に連れて行き、飼い主の目を盗んでは道ばたの雑草をパクりとした後で、オエッ、オエッと吐き出すのは、このことの端的な現れだと思います。
 現代医学的には、こういうことも頭の脳が処理していると考えるのかもしれませんが、真実はもっと単純で、腸自体が取捨選択し、不必要な物は体外に放出するように命令をだしているのではないかと思うのです。

 昔の人は肉や魚を選ぶ際に臭いをとても重要視していたように思います。つまり自分の感覚(鼻が生物にとって一番古い感覚器官)で食べられるものか、食べられないものかを判断していたわけです。言ってみれば自分を含め家族の健康は自己責任でした。現在、私たちは“消費期限”をとても重要視しています。ですから自己責任ではなくなったわけです。これによって私たちの鼻の能力は次第に低下していきます。解剖学的に顔は内臓が露出したものですから、内臓の能力が低下していくという考え方できるようになります。

 ちょっと余談になりますが、昨日20代の女性がきました。頭の回転があまり良くありませんでした。ところがお腹を温める施術をすると頭の回転が速くなりました。それは九九を暗算してもらうとすぐにわかることです。お腹が温まり腸管の働きが良くなると脳の働きも良くなるのだと私は考えています。
 常にお腹が温まっている状態にしていれば、腸(内臓)の働きが良くなるだけでなく、脳の機能も良くなるため精神的にも余裕が生まれます。するとこんなにストレスの多い社会ですが、自分らしく渡っていくことができるようになるのではないかと、そんなふうに思います。

 信じるか信じないかは別にして、腸管は単に食物を消化吸収するだけの存在ではなく、生命体としての根幹であり、腸も頭と同じように生命や健康を維持するために中枢器官として働いているという考え方もあるのだなぁ、と思っていただければ幸いです。

 10日ほど前に「目の下のくま」を改善したいと顔の整体を受けに女性が来ました。くすみは比較的簡単に改善しますが、目の下のくまは内臓からの影響もありますので、そう簡単には改善しない場合が多いです。
 この方は、噛みしめの癖もあって首や肩もガチガチに凝っていました。腰も痛く仰向けで寝ることができません。さらに、お腹がパンパンに張っていて呼吸も良くありません。施術はまず本人の希望通り、顔の整体から始めました。
 噛みしめを取って、顔の骨格を整え、特に目の下のゆるんでいる部分はしっかりするようにしました。施術をしながらいろいろお話しを伺っていくと、もう長い間お腹の調子が良くないとのことです。3~4年前からは消化器科の病院を頻繁に訪れるようになり、それでも胃腸の調子が良くならないので漢方薬やいろいろなサプリメントを試しているとのことです。そしていつも体全体が冷えていて血行が悪いと言っていました。
 目の下のくまは、きっとこのお腹の調子や血行不良と関係しているはずです。お腹の状態は腹筋がとても硬くなっていて、本当はそれほど太っているわけでもないのに、お腹全体が腫れたようになっているので本人も太ってしまったと思っていました。食事を摂ってもすぐに胃が張ってしまい一人前を満足に食べることができないということです。
 私としては“目の下のくま”のことよりも先にお腹の問題を改善するべきだと考え、そのように施術しながら話しました。初回は多くの時間、顔の施術に時間を費やし、お腹への施術は少ししかできませんでしたが、「まずお腹を良い状態にしましょう。そうすれば目の下のくまの問題はだんだん改善されていくはずです。次回はそのつもりで来てください。」と言いました。
 それから3日して「胃と腸が痛くなり、吐き気もしたので病院に行ってきたが、それでも施術はできますか」と連絡が入りました。私は「こちらに来た方が、その痛みや吐き気はすぐによくなると思いますよ」と返事を返して来店していただきました。来店時は胃と下腹部(小腸)のところを手で押さえた状態で、体が真っ直ぐに伸ばせませんでした。胃腸に痛みが出たのは気候が急に寒くなったことが関係あったのかもしれません。とりあえずベッドに仰向けで寝ていただきお腹への施術を始めました。みぞおちのところの腹筋がコチコチに硬くなっていました。この硬さによって胃が圧迫をうけ痛みにつながっているのだと思いました。さらに下腹部全体がパンパンに張っていて呼吸も満足にできない状態です。ともかく痛みと吐き気を取るのが先決です。腹筋への施術を10分くらい続けていると、痛みも取れ体が少し温かくなってきたということです。その後、ホットパックでお腹を温めながら足裏と手のひらの胃と小腸の反射区を揉みほぐしました。それから後はずっとお腹への施術のみを行いました。施術時間は60分でしたが、胃に痛みは少しは感じるが、その他はだいぶ楽になったということで帰られました。
 そして一昨日の朝電話が入り「胃腸の調子はよくなって食事も普通にちかく摂れるようになったが、体がすごく冷たく感じてしまい、喉の調子が悪く咳が出てしまう。」と来店されました。今回の施術もお腹が中心です。相変わらずお腹は張った状態で呼吸の状態も良くありません。施術を始めて15分くらいすると「体が温まってきた」と言い、それから「今まで血行不良が原因で体が冷たく胃腸が悪いのだと思っていましたが、お腹が原因なのですか?」と質問されました。
 私は「だいたいそうです。お腹というより腹筋がこわばってしまい、それによって腕や脚の筋肉もこわばり、肩関節や股関節が詰まってしまい血液循環が悪くなっているのでしょう。こうして腹筋が少し伸びると関節での血行も改善するので全身の血液循環が良くなり体が温まるのだと思います。そして腹筋が伸びやかになると、腹筋の下にある胃や腸の動きもよくなり、そうなることでさらに体が温まるのだと思います。腰の筋肉がガチガチに硬くなってしまうのは腹筋の働きが悪いからで、腹筋の状態が良くなれば自ずと腰の筋肉もゆるんで痛みはなくなります。」と答えました。実際、腹筋の働きが悪いと、体を支えるために腰の筋肉が本来以上に頑張るためとてもこわばります。仰向けで寝られないというのは腹筋に原因がある場合が多いです。

 ところで、筋肉は冷えにとても弱い性質を持っています。今の時期、朝の寒さの中では手先に力が入らず思うように動かせなくなりますが、それは筋肉が冷えに弱いからです。胃や腸といった内臓も筋肉でできています。ですから、お腹が冷えますと当然内臓の働きも悪くなります。さらに腹筋の働きも低下しますが、すると多くの場合、みぞおちの辺りがこわばります。そのこわばりが胃を圧迫し肝臓の働きにも影響を与えると考えられます。胃は痛みや気持ち悪さ、膨満感などで私たちの感覚に訴えますが、肝臓は沈黙の臓器ですので何も訴えてきません。しかしその位置が胃の右側にあることを考えると、みぞおちの硬さは肝臓にも影響を与えていると考えるのが自然です。
 
腹直筋施術

 腹筋の調整方法を言葉にするのは難しいですが、だいたい臍を中心とした部分の少し深めのところに手を当てます。お腹が冷えているときの腹筋は、表面は柔らかいのですが、少し手を深く入れた行きますと、硬い板状のものに突き当たります。それが硬くなって動きの悪くなった腹筋です。施術をしばらく継続していますと腹筋の働きが少しずつ回復してきます。すると、なんとなくお腹が伸びたよう感じになります。そこで止めずにさらに施術を続けていますと徐々にみぞおちのこわばりがゆるんできます。そうなることで胃が動ける状態になり、やがて胃の不調は改善していきます。

 冷え症は手や足の冷えが主な部位ですが、体がガクガクするような寒気や、ふるえるような寒さを感じるのは低体温による冷えです。体が芯から冷えています。この場合、体が普通の状態の人であれば、運動をしたり、暖をとったり、湯船に浸かったりすれば症状はやがて消えていきます。ところが慢性的にお腹が冷えている人は、外から温めたり、温かい食べ物を摂ってもその場限りで、すぐに冷たくなってしまいます。一般的に冷えは体質であったり、血行不良が原因であると考えられているかもしれません。しかし私が施術を通して経験したところでは、腹筋の状態と呼吸の状態が悪いことが原因である場合が多いと思います。どう表現すればよいかわかりませんが、呼吸は大きな波であり、うねりです。呼吸の状態が良い場合は、呼吸のリズムに合わせて体全体がゆったりとしたひとつの波で調和します。ところが呼吸の悪い場合は、お腹だけペコペコ上下に動くだけだったり、あるいは胸だけがハッハッと動くだけだったりで、波にはなりません。そんな場合でも腹筋の状態と胸郭の状態を改善すると、それまでペコペコだったものが、いきなり息が大きく入るようになって呼吸の波が生まれるようになります。するとどんどん血液が回りだすのか顔色も良くなり体が温まってきます。そしてこわばっていた腕や脚の筋肉もゆるんできて、私から見れば「ああ、ちゃんとした体になったな」と感じられるようになります。

 体の冷えや血行不良に対しては、体を温める食物やサプリメントや漢方薬が有効であると思われているようです。それはそれとして大事かもしれませんが、腹筋の働きを良くすることと呼吸で胸郭がちゃんと可動するようにすることの方がよっぽど早く効果が現れると私は考えています。
 冷え対策にテレビや雑誌などで紹介されている方法を試しても、たいして効果が感じられない人は、是非腹筋の働きが良くなるよう調整してみてください。

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