ゆめとわのblog

ホームページとは違った、より臨場感のある情報をお届けしたいと思っています。 また、テーマも整体の枠を飛び出してみたいと思います。 ホームページは以下です。 http://yumetowa.com/ お問い合わせはメッセージ欄でお送りください。

カテゴリ: 体力・免疫力

 2年前に頚椎ヘルニアの手術を行った後から肩こりが辛くなり、慢性的な腰痛に悩まされている50代の女性が来店されました。お仕事は和菓子の販売で、長い時間立ちっぱなしで動くこと(歩き回るなど)もあまりないということです。
 
 からだを観察しますと、背面の首~背中~骨盤にかけてピーンと張り詰めた太い筋がありました。強い脊柱起立筋のこわばりなのですが、これが原因で腰を動かすと痛みを発することが一目瞭然です。また、仕事で立ち続けてことだけも腰痛を感じるとのことでしたから、他にも問題があることが予想されました。

手術痕の影響_頚椎ヘルニア

 頚椎ヘルニアの場所は頚椎5番と6番の間で、手術は首の前面を切開して行われていました。
「横に切っているのか‥‥」というのが私の最初の印象でした。手術については全く知りませんので、頚椎ヘルニアでは横に切るしかないのかもしれません。ところが、このブログで何度か説明してきましたとおり、からだの中のエネルギーの流れは原則として縦方向です。横方向にメスを入れることは、大きな幅でエネルギーの流れを弱めてしまうことになります。
 「ちょっと厄介かな」と思いながらも、手術でメスを入れたところを人差し指の腹で隠すように手を当てました。1分くらい手を当ててますと、強く張っていた首筋がゆるみはじめました。そして背中や腰部を確認しますと、同じように最初の時の強いこわばりに変化が起こっておりまして、筋を強く圧してもそれほど痛みを感じなくなっていました。
 それで、手術でメスが入った部分に粘着力の弱い1㎝幅の絆創膏を貼りまして皮膚を補い、エネルギーが少しでも多く流れる状態にしまして、残りの「じっと立ち続けるだけでも腰が痛くなる」問題に取り組みました。

 前回のO脚に関する投稿で「次回は膝関節で膝窩筋がこわばっていることについて」という主旨の予告をさせていただきましたが、この方の膝窩筋もこわばっていまして、その影響が腰痛に反映されていました。

膝窩筋

 私たちのからだには、姿勢のそれぞれで、より効率良く、より楽な状態になれるような仕組みがあります。座った時には骨盤(坐骨)にからだを乗っけることが座った姿勢を楽に保つ仕組みです。そして立った姿勢を楽に保つための仕組みの一つとして“膝がロックしてからだの重さを骨で受け止める”というのがあります。本来、脚(下肢)の骨格は大腿骨と脛骨・腓骨に膝関節で分かれていますが、それを膝関節をロックすることで、あたかも一本の骨のような状態にして、太股やふくらはぎの筋肉の負担を軽減するようにしています。
 例えば床の上に長座して膝関節をを90°くらい曲げた状態にします。そこからゆっくり膝を伸ばしていきますと、床と一直線になる手前で膝下(脛骨)少し外側に廻ります。この脛骨の外旋によって膝がロックされ、大腿骨と脛骨が一直線のようになります。今度は床の上にすっかり伸びた状態の膝関節を浮かすようにして膝を曲げ始めますが、その曲げはじめの最初の段階で脛骨が僅かに内側に捻れます。このちょっとした脛骨の内旋によって膝関節のロックが外れ、膝を曲げることができるようになります。
 そして、この時にロックを外すために働く筋肉が膝窩筋です。膝窩筋は膝を真っ直ぐ伸ばした立位の時には少しゆるんで膝関節のロックを可能にし、膝を曲げるときに収縮して脛骨を内旋させて膝のロックを外し膝関節がスムーズに動くことを可能にしています。歩く動作では、膝が伸びたり曲がったりする度に弛緩したり収縮したりを繰り返しているわけです。
 さて、この膝窩筋がこわばって弛緩しない状態になったとします。すると膝関節がロックされませんので、立位で大腿骨と脛骨の一体化はおこなわれません。見かけ上は膝が真っ直ぐになっているように見えても、実は少し曲がった状態で立っています。太股の筋肉もふくらはぎの筋肉も楽な状態にはなりません。ですから、立ち続けていることは非常に辛いことです。そしてそれが腰痛となって現れたりします。

 この女性が、長時間の立ち仕事が腰痛を招いていしまう原因はここにあります。
 膝窩筋がこわばる理由については小殿筋、棘上筋、肘筋との連動なども考えられますし、他の要因かもしれません。それをじっくり探っている時間はありませんでしたが、足裏の母趾と2趾の間の踵近くがひどくこわばっていまして、それを指圧でゆるめますと膝窩筋もゆるみましたので、立ち続ける動作をそこに力を入れて支えていたのかもしれません。
 
 膝窩筋のことは近いうちに投稿しようと原稿を書き始めています。その中で詳しく説明したいと考えています。
 今回は頚椎ヘルニアの手術を受けて慢性腰痛になってしまった方が来店されましたので、一つの情報としてお知らせしようと思い、臨時的に投稿させていただきました。
 頚椎ヘルニアに限らず、手術をしようかどうかと考えられている人の参考になればと思います。
 また外科の先生の目にとまるのであれば、医学界が無視しているように見受けられる予後の問題の一つとして、「手術痕がからだに及ぼす影響」があることを知っていただき、患者さんの予後についてもっと考えていただきたいと、そう思います。

 太股やふくらはぎなどの静脈が膨れあがってミミズが這っているように見えてしまったり、足首周辺の静脈までも膨れて紫色になってしまうのが下肢静脈瘤が進んだときの特徴です。着圧の靴下やサポーターが症状の進行を防ぐために「効果的かもしれない」ということで、病院などでも使用を薦められているようです。ところが進行してしまった下肢静脈瘤に対しては効果は期待できないのが実態かもしれません。
 下肢静脈瘤は、症状が悪化しますと手術を薦められ、あるいは見栄えを良くするための手段として手術を選択する人もいます。ところが「なぜ下肢静脈瘤になってしまったのか?」という根本的な原因が解決されなければ再び症状が発症してしまう可能性は残されたままになってしまいます。

 「手術を行った後は、予防措置として着圧靴下などでふくらはぎや足首などを圧迫しておけば症状の再発は防ぐことができる」という考え方もできるかもしれませんが、この方法では圧迫し続けることによる弊害という別の問題が生じます。

 ところで、「どうして下肢静脈瘤になる人と、ならない人がいるのか?」
 この極めて素朴な疑問に医学はどう答えるのでしょうか? 医学は原因を追及して下肢静脈瘤になる人が少なくなるように知らしめる必要があると私は思うのですが、どの病院のホームページを見ても、手術や処置のことばかりで、私たちが知りたい「肝心なこと」に対する対応は見受けられないようです。

 現在、下肢静脈瘤の症状をもった人が数人来店されています。中でも印象的な人が3人いらっしゃいます。高齢者でかなり症状が進んでいますがその他のこともあって手術が受けられない人、すでに手術を受けて表向きは静脈瘤が改善されているように見える人、妊娠してから静脈瘤と脱腸と下肢の痛みを発症した妊婦さんです。 

下肢静脈瘤と皮下筋膜の関係

骨と筋肉と筋膜と皮膚の構造イメージ

 筋肉など軟部組織と骨格の構造を簡単に申しますと、一番表層に皮膚があり、その下層に筋膜(皮下筋膜)があって、その下層に浅層筋や深層筋に分類される筋肉があります。そして、一番奥に骨膜にくるまれた骨があります。
 下肢静脈瘤で問題になる静脈は大伏在静脈や小伏在静脈など皮膚と皮下筋膜との間を走行している表層の静脈です。静脈というのは血管ですから、下肢静脈瘤は直接的には血管自体の問題です。しかし、その血管が皮膚と皮下筋膜の間に存在しているということは、静脈と皮下筋膜とには深い関係が存在すると、整体的にはそう考えます。

下肢静脈瘤に関係する主な静脈

 骨格と筋肉と皮下筋膜の関係を簡単に説明することは難しいのですが、一つの在り方として、皮下筋膜は筋肉の働きを支えるサポーター的な役割をしています。
 例えば足首を捻ってしまい軽い捻挫状態になったとします。この状態では足首を安定させる靱帯が伸びてしまったために足首がグラグラして不安定になります。すると足首周辺の筋肉が上手く機能しなくなりますので、普通に歩くことが困難になってしまったり、痛みを感じるようになってしまったりします。こんな時にはテーピングをしたり、サポーターをして足首の不安定な状態を補助することがありますが、それによって足の筋肉が働ける状態になって歩くことができるようになります。つまりこの時使用するサポーターなどは筋肉の働きを手助けする役割をしているわけです。
 皮下筋膜はこのサポーターのような働きもしています。皮下筋膜がしっかりしていることで、内部の筋肉と骨はその位置を正しく保持することができますし、筋肉は持てる力を発揮することができて動作をスムーズに行うことができるようになります。
筋膜がゆるんで筋肉が緊張

 太股の筋肉は骨盤から大腿骨に繋がっています。そして骨盤と大腿骨と筋肉全体を覆うように皮下筋膜がサポーター的な働きをしていますが、この皮下筋膜がゆるゆるな状態になってしまいますと筋肉の働きをサポートすることができなくなります。すると筋肉は通常よりも収縮力を強めて骨格を支えなければならなくなります。それは太股筋肉の慢性的な緊張状態を招き、慢性的に痛みを伴う状態を招きます。立っているだけで太股が辛くなったりします。
 ふくらはぎの皮下筋膜がゆるんだ状態では、椅子に座っているだけでふくらはぎが辛くなります。重力から解放される寝た状態が、唯一辛さを感じない状態になるかもしれません。

 下肢静脈瘤の人に対する対処法として着圧の靴下やサポーターを履く方法がありますが、その効果の一つは、ゆるんで働きの悪くなってしまった皮下筋膜に替わって筋肉と骨格を支える役割だと思います。“着圧”は血行を悪くするという意味で“就寝時は止めたほうがいい”と私はアドバイスしていますが、皮下筋膜の働きを補うという意味で昼間の活動時間帯は履いた方が良いと私も思います。

 もし、素足でいるよりも靴下やストッキングやスパッツを履いている方が“落ち着く”という感じになるのであれば、それは皮膚や皮下筋膜がゆるんでいて働きが悪いのかもしれません。今は下肢静脈瘤とは無縁だと考えているかもしれませんが、皮膚や皮下筋膜のゆるんだ状態が長引きますとやがて下肢静脈瘤になる可能性は高いと思います。
 もし、太股やふくらはぎを何かで軽く締め付けた状態の方が解放されている状態よりも“安心する”と感じるのであればそれは悪い兆候だと考えられます。対処することをおすすめします。
 (但し、冷え対策のために温めるものを履いている方が心地良い、というのは別です)

皮下筋膜の調整
 整体の一つの手法として「筋膜リリース」があります。これは筋膜を直接操作してからだを整えるという整体法のようです。私は今回「筋膜」について取り上げていますが、それは筋膜リリース法とは全く関係がありません。「筋膜」という耳慣れない専門用語が同じということで混同される人が多くいますが、内容は全く異なります。

 さて、筋膜には骨や筋線維や筋肉などを包む膜(骨膜、被包筋膜)と内臓を包む膜(胸膜、腹膜)と皮膚の下層にあって全身をシート状に包む膜(皮下筋膜)があります。下肢静脈瘤に関係するのは主に皮下筋膜になりますが、何故なら皮膚と皮下筋膜の間に下肢静脈瘤で問題になる静脈があるからです。(大伏在静脈・小伏在静脈など)
 ふくらはぎや足は心臓から遠く離れていることから、静脈の還りが悪くなりやすく停滞しやすいという見解があります。それも理由の一つかもしれませんが、静脈自体「自身の力では血液を流すことができない」という理由の方が影響力が強いと私は考えています。静脈の血管は、自ら収縮する力は非常に弱いので、血液を流すためには周囲の筋肉の働きを利用しなければなりません。それは“乳搾り(=ミルキングアクション)”のような原理です。下肢の静脈には血液の逆流を阻止するための弁があります。例えば歩くことによって足首が動き、ふくらはぎの筋肉が収縮と弛緩を繰り返しますが、すると静脈は圧迫されたり、解放されたりする状態になります。それはミルキングアクションの仕組みであり、それによって中の血液が前に前にと進むことになります。

ミルキングアクション

 ですから事務仕事などで一日何時間も座り続けているようですと、あるいはずっと立ちっぱなしの仕事ですと、このミルキングアクションがおろそかになりますので、次第にふくらはぎや足周辺に静脈血やリンパが溜まってしまい、夕方にはむくみのひどい状態になってしまったりします。
 さて、下肢静脈瘤の原因として「静脈弁が壊れてしまって血液の逆流が起こり血管が膨れあがる」という見解があるようですが、私は素直に同意できません。
 「果たして静脈弁が壊れるだろうか?」 「壊れる」のではなく「機能が低下している」ということなのではないかと私は思います。「機能が低下している」と考えるのであれば、「機能を向上させる」という考え方につながります。
 そして私は皮下筋膜の働きや状態が悪いことによって皮膚も含めて静脈の血管がゆるんでしまい、静脈弁が上手く機能できない状態になってしまうのではないかと考えています。
 筋膜は骨格や筋肉の位置を本来の状態に保持し、腹膜は内臓の位置を本来の状態に保持するために働いている申し上げましたが、同様に皮下筋膜は静脈の位置と在り方を本来の状態に保持する働きもしていると考えています。

 ここで、実際にどういう考え方と方法で皮下筋膜を整え静脈瘤に対応しているかについて説明します。

 まず50歳くらいの女性で少し前に静脈瘤の手術を受けた人です。この女性は子供の頃に右膝を脱臼した経験を持っています。膝から下が真横に曲がってしまうほどのひどい脱臼だったようです。小児喘息だった経験もあって常に呼吸状態が悪く、加えて右眼が光に弱く「涙目」で悩まされている状態です。下肢静脈瘤の症状も右脚の方が強かったとのことで、当然、右下肢の皮下筋膜はゆるんだ状態です。呼吸の悪い人に多いのですが、舌が下がっていて舌先は下の歯についている状態です。
 これらの症状や状態をもたらせている大元の原因は右膝脱臼により膝関節が少しずれていることです。ふくらはぎが太股の骨に対して外側やや後方にずれていて、さらに足首に向かってふくらはぎが内側に捻れています。この原因は子供の頃に経験した脱臼によるものですが、右膝内側の筋肉や靱帯が伸びてしまっているためにこのような状態になってしまったと私は考えています。そしてその損傷によるダメージがかなり強く、なかなか良い状態に回復してくれません。
 この女性は大腿部の皮下筋膜もふくらはぎの皮下筋膜もゆるんだ状態ですが、膝関節の状態を良い感じに戻しますと、つまり、ふくらはぎの骨を内側やや前方に移動して足首近くを外側に少し捻りますと、皮下筋膜の状態はすっかり改善しますし、舌も上がって呼吸と喋りが良くなり、涙目も改善します。ですから、なんとか膝関節が良い状態になるように、ダメージの残っているところを施術し続けるようにしています。最初に来店されてからそろそろ1年になりますが、今は静脈瘤の兆候は全くありません。来店当初は着圧靴下なども使用していましたが、今は使用しなくても大丈夫の状態です。

 次に30歳代で妊娠中の女性です。妊娠6ヶ月で来店されましたが、当初の目的は「脱腸をどうにかしたい」というものでした。左の鼡径部の辺りが脱腸状態でしたが、左ふくらはぎの内側と左足首の内側はかなり激しい静脈瘤を発症しています。その他には噛みしめる癖と手を握ってしまう癖が強く、毎朝起きると強い頭痛に悩まされるという症状を持っていました。妊娠中でお腹も大きくなっていますので、揉みほぐすなどの手技はできませんから、調整だけで何とかしなければなりません。
 脱腸状態(本当に脱腸だったかどうかは知りません)の主な原因は左側大内転筋がゆるんでいたことでした。大内転筋はお尻のすぐ下にある太股内側の筋肉ですが、この筋肉の働きが悪いことにで左鼡径部が下がってしまい、大きくなったお腹が鼡径部から少しはみ出るような状態になっていました。ですから立ち上がるとお腹の一部が左鼡径部のところではみ出てしまい、不快さと痛みを感じていたのだと思います。しかしながら大内転筋のゆるんだ状態は下肢内側筋膜(皮下筋膜)のゆるんだ状態に繋がりますので、ふくらはぎ内側と足首内側の静脈瘤の原因の一つにもなります。

 ところで、妊娠は下肢静脈瘤を発症するきっかけになりやすいとのことですが、ベースには“皮下筋膜のゆるみ”があると思います。妊娠によって、それまで自分のためだけにあった血液は胎児を育てるためにも供給されなければならないので、当然全身の血液循環は変わります。もし妊娠が下肢静脈瘤の発症原因であるとするならば、左右両側に下肢静脈瘤の兆候が現れると思いますが、この女性は左下肢だけですので、妊娠が原因であるとは私は考えにくいところです。元々左下肢の血液循環に問題があって、それが妊娠によって静脈瘤という形で表に現れたと考えるのであれば、やはり改善すべきは“妊娠による影響”よりも“元々の血液循環”の方だと思います。
 さて、この方は現在妊娠中で休んでいますが、弓道をやっています。そこで弓道の練習におけるいろいろを尋ねてみました。すると左手が上手く使えないこと、左腕を挙げるのが辛いことなどの訴えがありました。その他には子供の頃(2歳の時)、前歯の左側を強打したことがあることなども聞きました。そこで、左肩から左手にかけて観察していきますと左肘に問題があることがわかりました。さらに左肘の問題で左手が上手く使えない状態なのに弓を操作しなければならないので、左手を不自然に使っていたこともわかりました。そしてこれらの問題は左膝の不安定さにつながり、問題の左大内転筋および左下肢内側筋膜のゆるみの原因となっていました。
 さらに2歳の時の前歯を強打したことによる影響もずっと残っていて、それが噛みしめてしまう原因の一つになっていて頭痛をもたらし、その他にも影響をもたらしていることがわかりました。
 これまで8回ほど来店していただきましたが、脱腸、噛みしめ、頭痛の問題はすっかり解消し、ふくらはぎの静脈瘤も良くなり、今は足首内側の静脈瘤が残っているだけの状態になっています。それも見た目には静脈瘤が残っているものの、痛みもだるさもほとんど感じない状態になったとのことです。
 妊娠するかどうかは別にして、女性は男性より(妊娠に備えるためか)複雑な構造と仕組みになっていると思います。ですから人生のいろいろで、影響を受けることも男性より多いと思います。ですからくれぐれも「からだを大切にして欲しいなぁ」と思います。余計なことですが、安易に美容整形の手術や、抜歯を伴う歯列矯正や、小顔矯正などに惹かれていって欲しくないと私は個人的に思います。

 3人目の両下肢が静脈瘤状態の後期高齢者の女性は、その他にいろいろな症状を持っています。今、最も悩んでいる症状は坐骨神経痛になりやすく、脚が棒のようになってしまい満足に歩くことができないことです。さらに立ち上がるとふらついてしまい、さらに歩きづらくなってしまうことも悩みです。
 ですから下肢静脈瘤については時々話題にのぼる程度ですが、両ふくらはぎとも血管がかなり浮き出ていますので、気になっていて「手術しなければいけないのかしら」と仰います。
 例えば腕と手について、子供や若い人たちと、高齢者の、見た目の違いを観察しますと、若い人たちの血管(静脈)はほとんど浮いていませんので、素肌が白ければブルーの血管が透けて見える感じです。夏など陽に焼けますと血管がすっかり隠れてしまうと思います。ところが高齢者では、手の甲の血管は太くて浮き上がり、腕の血管も太くなっていて浮き上がっている人が多くいます。
 この違いは、私は好きな言葉ではありませんが、「加齢によるもの」「老化現象」と言わざるを得ないのかもしれません。子供達や若い人たちの筋肉や筋膜は、それ自体がやはり若々しく締まっていますので、静脈の状態も同様であると考えることできます。ですから血管は“浮かない”のでしょう。一方、加齢に伴って筋肉も筋膜もゆるみやすくなりますが、血管も同様で、血管を形成している筋層がゆるんでしまうために弾力性が乏しくなり太くなってしまうと考えられます。さらに周囲の皮下筋膜や皮膚もゆるんでしまうので、「太くなった血管が浮いてしまう」という現象となり、「やけに血管が目立つ=老化」という事態になってしまいます。
 ふくらはぎも同様だと考えることができます。もし、ふくらはぎの血管が紫色であるならば、それは対処しなければならないと思いますが、そうでないのであれば、血管が太く浮き上がっている状態だったとしても、あまり気にされない方が良いのではないかと思います。血管がゆるんで太くなったことから静脈弁が機能できない場所がいくつかでき、そこの色が濃いブルーや多少紫色になるかもしれませんが、それは頻繁に擦ったりすることで血を流すなどして対処することができます。その程度が良いのではないかと思います。
 この女性の場合、ふくらはぎ全体の血管が太く浮き上がっていますので、手術しようにも「どの血管を焼いたり抜いたりすればいいのだろうか?」という問題と、からだに手術という負担を掛けてまで対処すべきことなのか、という疑問が浮かび上がってきます。私は手術による2次的影響のことを考えてしまいます。
 それよりも、今は坐骨神経痛を解消することを優先して、たくさん歩けるようになること、歩くことによってふくらはぎや足首の筋肉をたくさん使えば、ミルキングアクションによって静脈の流れも良くなり、皮下筋膜もしっかりするので静脈瘤のこともさほど気にならなくなるのではないかと思っています。

 下肢静脈瘤は外見的な憂鬱さをもたらすかもしれませんが、症状が進みますとだるさや痛みを感じることもあるようです。皮下筋膜がゆるむことで骨格を支える力が弱まりますので、筋肉はそれを補うために常に収縮した状態になります。つまり慢性的なこわばり状態、慢性的な緊張状態です。すると何かに触れただけで強い痛みを感じたり、立っていたり、座っていたりするだけで辛くなるので、ついつい横になってしまい、家庭内で「なまけもの」のような目で見られると、憂鬱になってしまう人もいます。
 また、お医者さんの指導に真面目に従って、寝るときも含めて常に着圧をつけていることで血行が悪くなっている人もいました。呼吸は肺だけで行っているのではありません。ふくらはぎや足先の細胞も呼吸を行っています。それが常に圧迫を受けているのであれば満足な呼吸ができない状態になっています。すると自律神経の働きにも影響が現れて眠りが浅くなったり、便通が悪くなったりするかもしれません。せめて夜、活動していないときだけでも着圧は外していただきたいと、そう思います。それが理にかなっていることだと思います。


足つぼ・整体 ゆめとわ
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 先日、朝、目が覚めますと、左頬から左顎にかけて腫れと痛みを感じ、左下の歯列が前に出ていて、思わず舌を噛んでしまう状況になっていました。その他に、鼻が下がり、おでこも下がっていました。
 私自身としまして「この状態は久々だなぁ」と思いました。暑さで寝苦しく「寝方が悪かったのかなぁ?」、それとも「体調不良になったのかなぁ?」などと半分まどろみ状態の中で考えていました。

 似たような症状を訴えるお客さんはしばしば来店されますが、下の歯列が前に出てしまい、上歯と下歯が当たってしまう状況はやはり不快です。
 「どうしようかなぁ」などと思いながらもベッドの上で自分のからだをあちらこちら触りながら、起床(6時頃)するまでの間(30分間くらい)にからだを整えようと試みました。

 まず、舌を噛みやすい状態を「いつもより舌が下がってしまっている」と感じました。私の舌の定位置(ホームポジション)は通常、舌先が上の歯と歯茎の境辺りにあって、さらに舌の上面前方が口蓋(口の中の天井)を軽く上に押し上げているような感じにあります。ところが、舌の位置が全体に下がってしまったので、舌先が上の歯と下の歯の間くらいになってしまい、歯の間に挟まりやすい状況になっていました。
 そして同時に、左顎の状態がおかしくなっていて、左顎が前方に捻れ出ている感じになっていました。「この状態で、さらに噛みしめていたので左頬から顎に掛けて腫れぼったくなってしまったのかな」と分析しました。

「舌が下がって(沈んで)、顎が捻れて、噛みしめていた。」

「どれが大元の犯人だろうか?」

 そんなことを思いながら、胸を触り、お腹を触り、股関節をさわり‥‥後頭部や額を触っていくうちに、「どうも胸が怪しい」‥‥という結論になりました。
 肋間筋(内肋間筋)がこわばってしまい、胸が閉じて、更に下がっていました。
 「どうして肋間筋がこわばっているのだろう?」と思いながら、前日の仕事内容を思い返してみました。
 「そういえば、(筋肉の)硬い人がいて、揉みほぐすのにずいぶん力を使ったな‥‥」
 「きっと手が原因だ。親指と人差し指を使いすぎてバランスが悪くなってしまったのかもしれない」と思いました。
 それで左手の「合谷(ごうこく)」というツボ周辺を指圧しますと、コリコリに硬くなっていました。
 その後、しばらくの間(5分くらい)合谷やその周辺を指圧し続けました。すると沈んでいた舌が少しずつ上に持ち上がってきます。前に突出していた左の歯列も後退していきます。噛み合わせが改善されていきました。
 そして、右手も同じところを指圧し続けてみましたが、するとすっかり舌も顎も良い状態に戻り、胸の状態も良くなって、下がっていた鼻や額も良い状態になりました。
 あれやこれやと20分以上かかったと思いますが、いつも通りの状態で起床することができました。

気になる舌の位置
 顎の開け方と顔の下がりの関係、舌のポジションとしゃべり方や首肩のコリとの関係などについて、過去に投稿させていただきましたが、その後も「舌の状態は気になる」という思いを持ち続けながら施術を行っています。
 そして一つの方向性として「舌の下がった状態は改善が必要で、舌が上がるようにからだを整える必要がある。」という結論的なものを感じています。

舌の位置2

 以前にも記しましたが、顔が下がるのを防ぐために舌が口蓋(口の中の天井)を軽く押し上げる働きをします。そのためには舌の定位置が上がった状態でなければなりません。舌が下がった状態では、ほぼ間違いなく鼻や額が下がった状態になってしまいますので、顔が重力に負けた状態になりやすいと言えます。
 女性にとっては気になることですが、加齢とともに筋・筋膜の働きが弱くなりますので、重力に負けた状態になり、頬が垂れ、目尻も口角も下がり、からだの肉にしまりがなくなってしまう‥‥という自然現象があります。自然の流れなので「仕方がない」ことではあるかもしれません。ところが、例外的な人がいるのも事実です。加齢による変化が少ない人です。
 エステなどに頻繁に通って素肌の手入れをしたり、あるいはジムなどでトレーニングをして筋肉を鍛え、柔軟性を維持して引き締まった状態を維持する努力をしている人もいます。ところが、そんなこととは全く無縁な生活を送っているのに重力に負けない状態を保っている人がいます。その理由はどこにあるのでしょう、気になるところです。

上昇する力
 ところで、鳥は地球の重力に逆らって空に昇っていきます。最初は羽を羽ばたかせて上昇するかもしれませんが、上昇気流に乗ってしまえば省エネでもどんどん上昇していきます。
 “上昇気流”は自然現象ですから、自然の中に重力に逆らう力と原理が存在していることがわかります。
 そしてもう一つ、“毛細管現象”という重力に逆らう自然現象があります。「細い管の中の液体は上昇していく」というのが毛細管現象の意味です。
 植物は地中に根を張って養分や水分を吸収しているわけですが、ポンプで吸い上げるような動力を使っているわけではありません。根という細い管の中に水分が入りますと、それは毛細管現象の原理によって根の中を上昇していきます。そしてその水分は地上を越えてどんどん上昇していき、高いところにある葉に届きます。葉は地中から届いた水分と空気中の炭酸ガス(二酸化炭素)と太陽の光を利用して光合成を行い、自らを養う栄養と大気中に放出する酸素を生み出します。
 私たちのからだの中にも「細い管」である毛細血管が隅々まで隈無く存在しています。ですから毛細管現象が体内で起こっています。
 頭の天辺まで毛細血管は張り巡らされていますので、血液は確実に天辺まで登っていきますが、それは心臓のポンプ力(=血圧)によるものではありません。それは毛細管現象の原理によって届いています。ですから、私たちのからだの中にも重力に逆らって“上昇する力”が内在していることがわかります。

 また、自然界にはまったく重力を無視して、上昇しかしない物質があります。それは“火”です。ロウソクの炎は下に向かうことも、横に向かうこともありません。無風状態であれば、ただただ真上にだけ向かいます。
 ここからはイメージ的な話になりますが‥‥もし私たちのからだの細胞の一つ一つの中に火の原理がたくさんあれば、私たちの細胞は重力に負けることなく存在することができるという理屈になります。
 火は燃やすことによって生じますが、私たちのすべての細胞の中にはミトコンドリアがいて、酸素を使って燃焼の仕事を行っています。ミトコンドリアは私たちが呼吸によって取り入れた酸素を燃やして(酸化反応)有機物(糖質や脂質)から細胞の活動に必要なエネルギー物質をつくり出しています。ですから、常に酸素を必要としている私たちの細胞は、常に燃焼し続けていることになり、常に火の原理を生み出していると考えることもできます。
 大人になって、高齢になりますと食が細くなりますが、それは、もうそれほどエネルギーを必要としないという意味でもあります。育ち盛りの子供達や若い人たちは食べてもすぐにお腹が空き、いくらでも食べられそうな感じですが、それは新陳代謝を活発にして成長しなければならないため、多くのエネルギーを必要としているからです。ミトコンドリアが多くのエネルギー物質を生み出すために酸素と水とたくさんの有機物を必要としているからです。
 ですから、子供達は大人や高齢者に比べて体内に火の原理を、つまり上昇する力をたくさん持っていることになります。それが頬や皮膚や筋肉が重力に負けない理由であり、ピチピチと締まった細胞を維持している理由であると考えることもできるのではないでしょうか。

舌の位置と上昇する力の関係
 さて、「顔が下がらないようにするためには、舌の位置が下がらないようにする必要がある」という考え方をしますと、「それでは、舌の位置を良い状態に保つためにはどうすればよいのか?」という疑問がやってきます。

 まず、からだの歪みが原因で舌の位置が下がってしまうという現象があります。
 例えばお腹が冷えますと、腹筋がこわばってしまい、収縮したまま伸びない状態になってしまうことがあります。そうなりますと、胸を骨盤の方に引っ張り、喉を引き下げ、同時に舌も引き下げてしまいます。そして、鼻も、額も引き下げられて頭痛がしたりします。この場合の解決策は、腹筋を本来の状態に戻すことです。お腹を温めることは有効ですし、ストレッチして腹筋を伸ばすことも少しは効果があります。腹筋の状態が戻れば胸の位置も、喉の位置も、舌も、みな本来の状態に戻りますので問題は解決します。そして、このような状態、つまりからだの歪みにより顔が下がるなどのトラブルはよくあることです。
 次に、からだの歪みが原因ではなく、その他の要因で舌が下がってしまうことでは、東洋医学の経絡(けいらく)やツボといった“気の流れ”系のことでも考えられます。このたび私が手のツボである“合谷”やその周辺を指圧したことによって舌の位置が戻ったのは、この部類に入るかもしれません。
 その他には、心理的な問題といった精神的要因で舌の位置がおかしくなってしまうことも考えられます。舌は“喋り”に深く関係する器官ですから、「内向的で喋りが苦手」「会話がストレス」といったことは舌の状態に影響を与えます。無呼吸症候群やイビキがストレスの問題だと感じているのであれば、それもまた精神的な問題が舌の状態に影響していることになります。

 これまで私が舌の問題に対して施術してきた経験で申し上げれば、問題の大多数はからだの歪み、つまり筋・骨格系の問題が原因です。ところが、時々その他の問題が原因になっていたり、からだの歪みを修整しても問題がスッキリ解決しないこともあります。「なかなか舌の位置が戻らない」と感じながら手間取ることもありました。
 そんな時は、いろいろと考えを巡らすのですが、その中で浮かび上がってきた一つの思考が「上昇する力が不足しているのかもしれない」というものです。

 子供時代の体温は大人の今より高いものでした。それを単純に考えますと、大人よりも子供の方が「火の要素が強い」という見方ができます。
 食欲が旺盛で、たくさん食べて消化の火をたくさん燃やしていた若かった頃は、頬や口角が下がることも、ほうれい線が気になることもありませんでした。しかし、いつの頃からか「顔の感じが変わりはじめ、目元がスッキリしなくなり、ほうれい線が気になるようになった」という人も多いかもしれません。

 からだに内在する“上昇する力”が、顔やお腹や背中の肉が下がることを防いでいる、という考え方はほとんどないかもしれません。そして、そのバロメーターとなるのが舌の状態であると私は考えていますが、現在のところ、まだそれが「確定的である」と言える段階ではありません。
 しかし、例えば椅子に座った状態で骨盤を後方に寝かせるようにして背中を丸めますと、舌先は下の歯のところに落ちてしまい鼻も顔も下がりますが、骨盤を立たせて(仙骨の前傾)背筋が自然に伸びるようにしますと、舌の位置が上がって本来の場所に戻り、鼻と額(顔)も上がるという現象が起こります。
 私事ですが、骨盤を立たせた状態を継続しながらパソコン操作をするのは疲れますので、しばしば骨盤を寝かせて背中を丸めたくなります。しかし、しばらく背中を丸めた状態でいますと息苦しくなってしまいますので、ちょくちょく骨盤を立たせて舌が上がった状態になりたくなります。すると一気に空気が入ってきて呼吸が楽になり、気が休まります。
(但し、からだが歪んでいる人は、このような反応にならないかもしれません)

 このような現象をどう捉えたらよいでしょうか?

 私は、骨盤を立たせて座る姿勢によって“上昇する力”が発動するのかもしれないと考えています。つまり、言い換えますと、毛細血管における毛細管現象が活発化し、細胞内でのミトコンドリアの活動が活発化するようになるではないかと、そのように考えています。

“オトガイが梅干し”の人は舌が下がっている
 整体の仕事において呼吸を整えることは非常に重要なことです。呼吸が楽にならなければ、肩こりや腰痛が解消したところで、芯からリラックスすることはできないからです。ですから、施術中は常にお客さんの呼吸を観察し続けています。
 そして、呼吸が楽になった状態の目安として「オトガイ(顎先)から力が抜けているかどうか」を観察します。顔(下顎)の下がっている人は口を閉じるときにオトガイ周辺の筋肉を収縮させるようになります(オトガイが梅干しのようになる)。つまり、口や顎周辺に力を入れないと口が閉じられない状態です。
 ところが、舌の位置が上にある人は、力を使わずとも自然と口を閉じることができます。舌先あたりが口蓋を軽く押し上げているような状態になっていますと、その動きに乗じて自然と口が閉じる感じです。ですから、このような状態にある人のオトガイには梅干しはできません。
 舌が下がっていますと息苦しさを感じます。舌が上がりますと呼吸がリラックスします。ですから舌を上げて顔を上げ、呼吸を楽にするために、お客さんのオトガイを観察しながら、梅干しがなくなるように施術を行っているというのが現状です。
 ついついポカ~ンと口を開いてしまう人は、おそらく舌が下がっているのだと思います。その状態がみっともないと感じるので、無意識に力を使って口を結ぶような感じになっていると思います。

 実際のところ、下がっている舌が上がるように調整することは可能です。それほど難しいことではありません。ところが、日常生活を送り続ける中で、その良い状態を維持することは「難しいようだ」と私は感じています。
 生活習慣の中に舌を下げてしまう要素がある、あるいは体質的な要因で舌が下がってしまう、という弱点を克服するために生活の在り方を“矯正する”という方法もあると思います。
 そのように指導するトレーナーや医師やあるいは整体師がいると思います。ところが私は、そういうやり方はどうも合点がいきません。
 舌の上がった良い状態を維持できないのは、力が足りない、つまり内在する上昇する力のが不足していることが根本的な問題だと考えてしまいます。その力が充実している状態であれば、少々からだが歪んでいたり、過去の古傷がマイナスの影響力を持っていたとしても、それらの影響を悠々とはねのけて快適な状態を維持できるようになると考えています。

 “上昇する力”については、私の認識はまだまだ不確定な段階ですし、「○○すれば確実に上昇する力が増強する」というものを掴みきっているわけではありません。
 今はまだ途中の段階ですが、また進捗状況を報告させていただきたいと考えています。

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 手術痕が整体的な面でからだに影響を及ぼしていることは「必ずある」と私は考えています。
 帝王切開による出産の影響については以前に取り上げたことがありますが、一般的に、からだに負担が少ないとされている内視鏡による手術も、実際は少なからず影響をもたらすことがこの度わかりました。
 そして「こんなちいさな傷も影響があるの?」ということも実際にありますので、今回はそのことについて説明させていただきます。

内視鏡手術による負担
 外科的手術の技術も進歩し、内視鏡手術が盛んに行われるようになって入院日数はかなり短縮されていると聞きます。メスで切開する面積が減ったことで縫合範囲が大幅に狭まったことが大きな要因なのかもしれません。
 私は「それは良いことだ」と単純に思っていますが、しかし同時に「油断はできない」とも思っています。

 からだケアのために定期的に来店されている方が内視鏡による手術を受けました。お腹に3箇所穴を開けての手術だったようですが、入院日数は一週間程度で、予定通り順調に退院されました。手術の工程で、ガスを体内に注入したとのことです。術後しばらくの間はそのガスが体内に残っていることによる痛みを感じていましたが、その他には特に問題も生じていないとこのことでした。ガスによる影響も1ヶ月くらいでなくなり、「順調に回復しているのかなぁ」と思っていましたが、手術後2ヶ月ほど経った頃から手術による影響が現れ始めました。
 下腹部の病巣部分を切除して取り除いたのですが、その辺りが周辺部に比べてヘニョヘニョと腑抜け状態に感じられました。手術直後はからだも”緊急事態”と判断したのか、血液を手術したところに集め、筋肉の働きを強めていました。やがて、からだの状態も回復してきたので緊急事態モードから通常モードに移行したのですが、病巣を切除した箇所はまだまだ力が弱いために、触ると腑抜け状態が目立った感じに残ってしまっている、ということだと思います。

内視鏡手術による影響

 この腑抜け状態は、筋肉の働きに置きかえて表現しますと“収縮力や張りの弱い状態=働きの悪い状態”ですから、その影響で股関節が不安定になってしまいました。ご本人の自覚では「足首が硬くなって動きが悪い」ということでしたが、股関節が不安定なために足首周りの筋肉がこわばってしまい足首の動きを制限している状態です。
 このようなときに行う施術は、腑抜け状態に感じる部分に手を当てて、血液を呼び込むようにして筋肉や組織の回復を促すことです。10分くらい手を当て続けていますと次第に腑抜け部分に張りが戻ってきて股関節がしっかりしてきました。そして足首を動かしてもらうと、動きも回復し、左右の足首の動きが同じような状態になりました。
 しかしながら10分間の施術を1回行うだけでは、また時間の経過と元の腑抜け状態に戻ってしまいますので、このような施術を何回か行う必要があります。

 内視鏡手術を選択することで切開部分が少なくなるため、表面的な回復(傷も痛みも解消する)時間は明らかに短縮されます。しかしながら表面的には回復しても“筋肉や組織の機能”という“見えない傷”が回復したわけではありません。そのことをもっと知っていただきたいと思っています。

カテーテル治療による負担
 私事ですが、2016年10月に40日間ほど入院する病を患いました。その時、カテーテルによる治療を一回受けました。右鼡径部の大腿動脈からカテーテルを挿入していく治療でした。退院後、普通の生活に戻り、仕事も普通に行っていますが、2017年の秋頃から時々皮膚に湿疹が出ては冬場にかけて症状が少しずつ悪化していきました。これまでの人生で皮膚に湿疹が現れるようなことはありませんでしたから、「やはり入院がきっかけだろうか?」などと思っていました。
 カテーテル治療を受けたとき、医師から「カテーテルを挿入したところが痛くなるかもしれませんが、やがて痛みは治まるので気にしないでください。」と言われました。実際のところ、特に痛みは感じませんでしたので、ほとんど気にすることもありませんでした。
 秋口から症状が出始めた皮膚の湿疹も「温かくなれば良くなるのかなぁ」などと思いながら春を迎えましたが、症状が改善する兆候はでてきません。そこで、ふと、カテーテル治療のことを思い出しました。そして鼡径部を左右で触り比べてみました。すると明らかに左右で違いがあり、カテーテルを挿入した右鼡径部が大腿動脈の辺りを中心に全体的にゆるんで腑抜けのような状態でした。

カテーテル挿入による「ゆ」

 「やはり血管がゆるんでしまったんだ」と思いました。治療後の痛みは殆どありませんでしたから気にしていませんでしたが、カテーテルを挿入した部分の血管壁や、もしかしたら他の場所も、血管の筋肉層が弱い状態になってしまい、それで血液の流れが変わって皮膚に湿疹がでるようになったのかもしれない、と思いました。(このあたりの見解はあくまでも私感ですので、間違っているかもしれませんが。)
 それから毎朝ベッドから起きる前に15分間くらい自分でセルフケアをしていますが、不思議なことになかなか腑抜け状態は改善されません。血管そのもののゆるんだ状態も、その場では良くなるのですが、翌朝はまたゆるんだ状態になっているという状況がもう3ヶ月ほど続いています。

 私の母(80歳)は昨年の8月に心臓のカテーテル検査を受けました。その後、何かの症状が現れたということはありません。しかし、最近になってお腹が太ってきました。どちらかというと痩せ型の体型でしたが、この2~3ヶ月の間に「けっこう太ったなぁ」という印象です。
 母は10年ほど前にリウマチを患い左膝が変形してしまいました。その影響でこの2年ほどは杖を使って歩いていたのですが、いよいよ痛みがきつくなり、昨年10月に膝の人工関節置換手術を受けました。その後の経過は良好で、今は杖に頼ることもなく毎日よく歩いています。ですから運動量は以前より確実に増えました。食事の量が増えたわけでもないのに体型が太ったこと、それも退院直後から少しずつ変化してきということではなく、半年ほど経過した頃から、カテーテル検査から8~9ヶ月ほど経った頃から変化が現れてきたことを考えますと、私の場合と同じように、「もしかして血液の流れ方が変わり、その影響が表面化し始めたのが最近のことなのかな?」などとも思えます。

 カテーテルによる治療や検査と、私の皮膚湿疹、母の体型変化に直接的な因果関係があると思っているわけではありません。ただ、私のことで申し上げれば、カテーテルを挿入した場所の血管(右側大腿動脈)はゆるんだ状態になっています。そして不思議なことなのですが、同側の右側ではなく左側の頚動脈や橈骨動脈の血管がゆるんだ状態になっています。(橈骨動脈は、手首のところで“脈を測る”血管ところです。)そして右側はややこわばった状態になっています。
 血管の状態は自律神経の交感神経によってコントロールされますので、血管がこわばったり弛緩したりするのは自律神経の影響によるものと一般的には受け止められるかもしれません。しかし血管も筋肉でできていますから、神経支配とは関係なく筋肉自体の性質としてこわばった状態になったり、ゆるんだ状態になったりすることがあります。そして血管の状態は当然血圧にも影響を及ぼしますので、“血液の流れ”に変化をもたらします。私の場合は、右下半身と左上半身の動脈がゆるんだ状態で、左下半身と右上半身の動脈が少しこわばった状態ですので、全身の血流が“一様な状態”というわけではないと考えることができます。その状態が半年、1年と続いたために、皮膚に湿疹という形で歪みが現れたのかもしれません。
 実際、この3ヶ月ほどセルフケアを続けていますが、大腿動脈のゆるんだ状態はなかなか思うように改善しません。「ちょっとずつ、ちょっとずつ回復している」という感じでしょうか。単にカテーテルを挿入したところの問題なのか、あるいは薬剤を用いたのであれば、その影響によるものなのか、そのあたりはよく解りませんが、実感としては「血管の変調はそう簡単に改善するものではないのかなぁ」という感じです。

メスを入れた部分とメスの入れ方と
 再び私事ですが、18歳の時に臍のすぐ下、ベルトのバックルが当たる部分に“おでき”ができました。当時は野球を真剣にしていましたので、バックルに当たってしまう“おでき”は痛いので、とても邪魔な存在でした。
 我が家の家庭の医学では、“おでき”ができたときには、ある程度熟すのを待って膿を吸い出す薬( 「たこの吸出し」)を塗って、手指を使って膿を絞り出していました。ところが、その時には周りの人たちの勧めもあって聖路加国際病院に行きました。すると医師は何の躊躇もなく、巾2㎝くらいメスで切開して“おでき”の中身を出してしまう治療を行いました。アッという間の出来事でしたが、まだ若かったこともあってか回復も大変速く、バックルが気にならなくなったのも早かったように記憶しています。
 今の仕事に携わっていなければ、その時のことは全く気にならないことだったと思いますが、この仕事に携わってしまった今では「からだに悪いことをしたなぁ!」と思ってしまいます。たった2㎝程度の浅いメスの傷ですが、からだの正中線上を横に切ってしまったためにエネルギーの流れが弱くなってしまい、腹直筋の働きが今ひとつパシッとしない状態になっています。私の仕事の姿勢は前屈みが多いこともあってか、慢性的な軽い腰痛状態なのですが、「もしあの時メスを入れなければもっと楽だったかもしれない」と思っています。

任脈と切開

 東洋医学の見解では、からだの腹側正中線上を「任脈」と言いまして、生命力に密接に関係する大切なところとされています。「急所」がたくさんあるライン、と考えてもよいと思います。ですから、そこを傷つけてしまうことは“からだを弱めてしまう行為”と考えられます。あるいは、そこを大切にすれば「活力が高まる」と考えることもできます。インドの人が額の真ん中に赤いクムクムを塗ったり、アフリカの人が鼻輪をしたり、臍を飾ったりする伝統的な習慣は、おそらく活力を高めるための行為なのだと思います。ペンダントヘッドが首や胸の正中線上にくるように工夫されているのも、そのような意味があるのだと思います。
 最近は、ファッションとして臍ピアスをするために臍下に穴を開けている人もいますが、時々それが悪影響を及ぼしているのを見ることもあります。「ちゃんと理解した上でやってほしいな」と思ってしまいます。

 さて、以前にも申し上げましたが、からだのエネルギーの流れは基本的に縦方向です。ですから、メスを入れなければならないときは“縦に入れる”べきです。縦に切開するのであればエネルギーの流れを阻害する部分はとても小さくなります。私のように、たとえ2㎝であったとしても横方向にメスを入れてしまいますと、その2㎝巾でエネルギーの流れが切断されます。
 以前に、肝臓手術のために腹部を大きく横切るように切開された人が来店されたことがあります。腹筋をすっかり横切るように切開したこともあって、“まったく”と言っていいほど腹筋が働かない状態になっていました。そのシワ寄せが背筋の方にかかり、背中が盛り上がるほどガチガチになっていました。「ともかく切開したところにテーピングをして、少しでもエネルギーが流れるように工夫するしかない」そんな風にアドバイスしたと思います。
 薬局などで販売されているキネシオテープはエネルギーの流れを補助する意味で役に立ちます。テープかぶれの対策は考えなければなりませんが、もし腹部や背部、あるいは他のところでも、メスを入れた後が残っているようでしたらテープを縦方向に貼ってみてください。(メスの傷が横方向だからといって横方向に貼っても意味はないと思います。)それは筋肉の働きや機能を高めてくれると思います。



 私たちの通常の感覚では、細胞は新陳代謝によって再生されますので、ケガをしたとしても時間が経過すればすっかり元の状態に戻ると認識していると思います。おそらく90%以上は、その通りではないかと感覚的に思います。ところが、放って置いただけでは元に戻らないケガなどもあります。それは全体的に見ると数%かもしれません。その一つがメスによってできた手術痕です。その他には骨折によって傷ついてしまった骨膜、激しい捻挫によって伸びてしまった靱帯、産後のケアが悪く伸びたまま戻っていない骨盤底、ギックリ腰を繰り返したことによって働きがすっかり悪くなってしまった尾骨仙骨周辺の筋膜などがあります。これまでの私の経験で申し上げれば、それらは何十年経っても機能の悪いまま残り続けます。
 「10年前に出産して以来、ずっと腰痛」というのは骨盤底が戻る時期を逸してしまい骨盤が不安定なまま放置されているという意味です。
 また、40年前の捻挫、20年前の手術が、「これまで何ともなかったのに今頃になって影響が現れるの?」と質問を受けることがありますが、「若く体力のあるときは、そこの働きが悪くても他の部分がその働きを補ってくれていたのですが、体力の低下によって自分の仕事で精一杯になり、補う力がなくなってしまったために、昔の古傷の影響が急に表面化してきたのでは‥‥」と考えることができます。

 これらのマイナス面に対しては、積極的に改善を促さなければなりません。じっと待っていても自然治癒しません。つまりケガの90%以上は自然治癒力で改善しますが、数%は自然治癒しない可能性があるということです。
 これまでたくさんの人たちを施術してきての率直な見解です。
 反面、「この不調は一生ものかな」と感じていたとしても、古傷をしっかり改善することで不調が消失してしまうこともあります。
 一般的に病院等では、傷が癒えて痛みが消えれば、それで「治癒した」と判断されるのかもしれません。足首をねん挫したとしても、腫れが引いて、足首を動かしても、歩いても、走っても痛みを感じなくなれば、それで完治ということになってしまうと思います。ところが「機能が不十分な状態」で治療が終わってしまっていることはよくあることです。そして、それが原因で歯ぎしり癖になってしまった、というのもよくあることです。伸びてしまった靭帯をしっかりさせて足がカシッとした状態に戻すことで歯ぎしり癖がなくなったりすることもあります。

 今回は手術痕をメインに話をさせていただきましたが、ケガやギックリ腰や産後の不調などにも共通事項があります。何か心当たりのある方は、是非、専門家に相談されて積極的に対処されることをおすすめします。

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 普段は海外で暮らされている方が次のような質問をされました。
 「向こう(西欧)で週3回ほどのペースでジムに通っているのだけれど、コーチに指導されて、お尻を突き出して中腰になり、膝を90°曲げたような姿勢をつくろうとするのだけど、太股の裏がきつくてきつくて。どうしてできないのだろう?」
 さらに、「いつも猫背を指摘されるだけれど、どうやったら猫背を直すことができるの?」

中腰


 外国の人たちに比べると我が国の人たちの姿勢は猫背が多く、お尻が下がっている人が多いと言えるかもしれません。私は外国の人では、中国人、韓国人、ブラジル人、フィリピン人のほんの少数しか施術したことがありませんので、もしかしたら間違った見解かもしれませんが、韓国人以外の他の国の人たちは明らかに日本人の体型とは違う印象を持っています。韓国の人も似ているようでやはり少し違うかもしれません。
 そして街で見かけたり、テレビなどを通じて目にするアメリカやアフリカの人たちは、やはり私たちとは体型的にまったく違うことがわかりますが、一番の違いは“骨盤の在り方”なのかもしれないと思っています。
 俗な言い方で表現しますと「外国人はお尻がプリッと上がって大きく、脚が長い」となると思いますし、それに比べて私たちは「お尻が下がって胴長で、ジーンズ姿も今ひとつ冴えない」となるのかもしれません。しかし、反対に着物姿は「やはり日本人が最高」だと思いますし、それは私たちの民族的な体型によるものかもしれません。お尻がプリッと大きな外国人の後ろ姿には帯は似合わないように思います。

お尻が下がるのは仙骨が後傾しているため
 一般的に、日本人は骨盤が後に傾きやすい(後傾)傾向にあると言われています。実際施術をしている実感からしても骨盤が後傾している人が多いですし、それがお尻が下がって見える一番の理由だと思います。

骨盤基礎01

骨盤基礎02

 骨盤は、真ん中に仙骨と尾骨があり、その両側に完骨がつながったものです。後面には仙腸関節があり、前面は恥骨結合があります。
 完骨は、その昔バラバラであった腸骨と恥骨と坐骨が癒合して一つになったものですので、骨盤の話題になったときには仙骨と腸骨の関節である「仙腸関節」、座った時に骨盤が座面にあたる「坐骨」という言葉がしばしば登場します。そして骨盤の底にあって、子宮や膀胱など骨盤内臓物や小腸など内臓が下垂しないように支える強力な筋肉や筋膜がありますが、それらを総称して「骨盤底筋」と呼んでいます。そして、その代表的な存在として「会陰」があります。

会陰01

 骨盤の特徴の一つとして、仙骨が前傾すると骨盤底(坐骨結節間)が拡がるという仕組みがあります。反対に仙骨が後傾すると骨盤底が狭くなり、骨盤底が狭くなると仙骨が後傾するという仕組みです。実感として表現しますと、仙骨が前傾している人はお尻の形が「ハの字」であり、仙骨が後傾している人はお尻の形が「逆ハの字」になっています。

呼吸と骨盤との関係

 普通の状態であれば、骨盤は呼吸に合わせて少し動きます。息を吸うとき、仙骨は下がり(後傾する)ますが、同時に骨盤上部が拡がって骨盤底が狭くなりますので、左右の坐骨間の距離は短くなります。息を吐くときはこれとは反対に動きますので、骨盤底が拡がって仙骨が前傾するように動きます。
 つまり筋肉の状態がおかしくなければ、仙骨が前傾した状態では骨盤底が拡がり、仙骨が後傾した状態では骨盤底が縮んだ状態になります。あるいは、骨盤底が硬くなって縮むと仙骨は後傾し、骨盤底が広がった状態になれば仙骨は前傾しやすくなるということになります。

骨盤の前傾と後傾比較

 この骨盤の仕組みを元に、私たち日本人が外国の人たちに比べて骨盤が後傾し、お尻が下がっている理由を考えますと、「息を吸うことばかりしていて息を吐くことが上手くない=緊張度が高い、交感神経の働きが優位」あるいは「生活様式として会陰を収縮することが多くて骨盤底を硬くしやすい」、「民族性として元来骨盤が後傾している」などが思い浮かびます。
 昔の日本人の生活様式は正座を中心とした着物の生活でしたでしょうから、女性は内股になりやすいので骨盤が後傾しやすいことは理解できます。(O脚と内股の状態は骨盤が後傾してしまうという仕組みがあります)しかし、正座は骨盤底を伸ばす座り方ですので、正座の習慣によって骨盤底が硬くなるというのは考えにくいことです。
 私たちは他の国の人たちに比べて勤勉で真面目だと言われていますが、それは反面、緊張気味で、交感神経が優位の状態で日々を暮らしているということに繋がります。ですから息を吸った状態=骨盤底が狭い状態で生きている傾向がある、と考えることもできます。
 そして民族性として「本来の体型が骨盤が後傾気味」だという考え方に立てば、そのことによって息を吐くのが苦手で、交感神経が優位になりやすいので緊張気味の人生となり、体型的にも内股やO脚になりやすい、と考えることができます。反面、着物姿が「様になる」なるわけですが。

姿勢を正すことは背筋を伸ばすこと?
 普段の自分の姿勢が悪いと感じている人は、姿勢を正そうとするとき「背筋を伸ばす」ことをするようです。それは‥‥つまり、背中に力を入れて背筋を収縮させることなのですが‥‥無理のある不自然な動作と言えます。意図的に背筋を伸ばして座り続けるのは体操疲れますし、自ずと首や肩や顔に力が入ってしまいますの良いことではありません。
 パソコンやスマホやタブレットの操作、その他手作業を主体としている人はどうしても首と肩が前に出た猫背の姿勢になりやすいのですが、気をつけて欲しいことの一つに「骨盤が寝た状態にならない」ことがあります。「骨盤が寝る」というのは仙骨を含めて骨盤が後傾することなのですが、必然的に腰椎も丸くなって後弯するようになります。

 本来、仙骨近くの腰椎は前弯しています。普通の状態の人は座った状態で上半身を後に反らす動作をしますと、この仙骨近くの腰椎下部のところを支点として上半身が後方に倒れるようになります。こういう人は、姿勢を正そうとするときには、背筋を伸ばすのでは無く、骨盤を立てる、つまり仙骨を前傾させるようにします。すると腰椎下部で前弯が起こりますので、自ずと背筋は真っ直ぐになりますし、前に出ていた首も戻り、顎が自然と引かれた状態になります。「下腹部がしっかりして腰に上半身を乗せることができる」あるいは「骨盤に上半身を委ねることができる」状態になりますので、背中には力が入りません。顎もゆるみ首の力も抜けます。
 ですから、正しい姿勢に戻す(=姿勢を正す)とは仙骨を前傾させて骨盤を立たせ、坐骨結節部で座る状態になることだと言えます。ところが、猫背+背中(腰椎も)の丸くなった人は腰椎の前弯が失われていますので、骨盤を立てて座ることが辛くなります。座った状態で上半身を反らそうとしますと、背中の中間地点くらいでやっと脊椎を反らすことができる感じで、骨盤近くの腰部はなかなか動かせません。

 さて、このような状態の人でも、お尻の横(外側)から座面と坐骨の間に手を入れて坐骨を外側に引っ張り、左右の坐骨結節間の距離を拡げますと(=骨盤底を拡げる)、骨盤を立てることが比較的容易になり、腰椎下部で前弯が生まれるので背中に力をいれなくても背筋が伸びるような感覚を味わうことができると思います。
 つまり、骨盤底に柔軟性が戻れば骨盤を立てて座ることが容易になり、仙骨が前傾して下腹部に力が集まるので首や肩から力が抜けるようになります。そして自ずと背筋が伸びて姿勢が良くなります。
 ですから姿勢を正す動作とは背筋を伸ばすのではなく、仙骨を前傾させて骨盤を立たし、骨盤底が拡がるようにすることだと言えます。
 骨盤底の硬い人は最初のうちはなかなか思うようにはできないと思いますが、練習してどうにか“感じ”をつかんでいただきたいと思いますし、併せて骨盤底に柔軟性と力を取り戻す運動をしていただきたいと思います。

骨盤底の柔軟性を取り戻すために
 骨盤底が硬くて骨盤が後傾している人に対して、骨盤底をほぐすような施術を行うことがあります。すると、骨盤底をゆるめているにもかかわらず「頬や肩から力が抜けていく」という反応を得ることがあります。つまり、顔や肩に力が入ってしまう原因の一つとして骨盤底の硬さ(=こわばり)があるということです。
 以前にも紹介しましたが、私は骨盤底のトレーニングとしてバランスクッションを使うことを勧めています。骨盤底には骨盤底筋と呼ばれる幾つかの筋肉があります。そしてそれらの筋肉と筋膜は総体として会陰を形成していますが、会陰は顎関節と対称する関係になっているようです。
 「会陰がゆるむと顎関節もゆるむ」「顎関節がゆるむと会陰がゆるむ」「会陰がしっかりすればそしゃく筋もしっかりし、全身の筋肉がしっかりする」。反対に「噛みしめや歯ぎしりの癖などで顎関節がおかしな状態になると会陰も硬くなって柔軟性を失い、骨盤はさらに後傾する」という仕組みのようなものがあります。

 会陰の働きが悪い人は、例えば両足とも床から浮いてしまう高い椅子などに座って、骨盤の力を主体に右のお尻に重心を移したり左のお尻に重心を移動したりして片方のお尻にすっかり体重を乗っけて座る動作を繰り返すことが苦手です。つまり会陰の筋肉(=骨盤底筋)をつかって自分の重心を移動させることが上手くできません。この動作ができないので首を振ってみたり、骨盤より先に肩や腕を動かして重心移動させようとしてしまいます。そして、実際このような人は大変多いです。「会陰の筋肉が働いている実感」が味わえません。
 筋肉を鍛えるためには「使っている実感」が必要です。その実感を味わうために、バランスクッションを使用することを勧めています。バランスクッションは座ると不安定な反面、重心移動が容易です。簡単に右のお尻から左のお尻に重心を移すことができますが、この時の会陰の動きを感じて欲しいのです。

バランスクッション 体幹クッション

 注意事項も含めて使い方を説明しますと
 「骨盤の動きに上半身が抵抗しないようにしてください。バランスが崩れて倒れそうになったら手をついてもいいですから、上半身をくねらせて抵抗して欲しくないのです(右に倒れそうになったとき、首や肩を左に曲げて倒れないように抵抗するなどの動作をすると会陰が動いて要る実感が薄れてしまうので)。クッションの動きにすっかり身を委ねて欲しいのです。そして会陰がどのように働くかを観察してください。」と言っています。

会陰トレーニング

 最初は不安定でバランスが取れないので上手くできませんが、すぐに、何分もしないうちにできるようになると思います。そして、何分間か左右に重心を移す動作をしたり、あるいは回転させて会陰が上下左右に働くことを感じていますと、会陰は柔軟性を取り戻します。バランスクッションを外して、普通に座りますと、それまで座っていた感覚とは明らかに違った感じになると思います。会陰が拡がったため「逆ハの字」だった骨盤は「ハの字」に近くなり座面が拡がったように感じると思います。そして仙骨を前傾させることが容易になるため自然と背筋は伸びた状態になると思います。

 尚、バランスクッションを使わずとも上記のような運動はできます。ただ先ほども申し上げましたが、間違えやすい点は、自分では会陰を使って重心移動させているつもりでも、実際は頭や首や肩や腕を動かすことによって右から左へ、左から右へ上半身を動かしているだけになってしまうのでは、会陰の動きが取り残されて後から付いてくるような感じになってしまいます。これではトレーニングの意味はありません。
 その他の運動としては、「外人さんのようにお尻をプリプリさせながら歩く」というのも会陰を鍛えることになります。お尻をプリプリさせながら左右の骨盤や下半身に、交互に体重をすっかり乗せきって歩くのは、会陰の働きがなければ可能になりません。
 「お尻の穴をしめる」というのは骨盤底筋の一つ肛門括約筋を収縮させることなのですが、それも会陰を鍛える手段の一つです。街を歩いている人をよく観察しますが、会陰を働かせながら=お尻をキュッ、キュッとさせながら地面を軸脚で蹴って進んでいる人はとても少ないです。多くの人が、上半身が前に行くの合わせて脚が後からついてくるような歩き方をしています。これでは、骨盤底はまったく鍛えられないと思います。

 私はよく「モデルさんのように一本のラインの上を腰を捻りながらゆっくり歩いてみてください」と言って、お客さんにやってもらいますが、思いの外、皆さん上手くできません。
 極端に表現しますと、膝から下ばかりで歩いている人は、腰を使って歩いているわけではありませんので(内股歩きが良い例)、腰部の柔軟性に欠けますし、会陰を鍛えることとは無縁の歩き方になっています。“モデル歩き”は、腰を捻って(実際は脇腹に捻りが生まれる)軸脚(後ろ脚)に重心を残したまましっかり立っていられる状態でないと前脚を一本ラインの上に乗せることができません(綱渡りような状態)。この時軸脚のお尻と会陰は収縮しますので、骨盤底を鍛える訓練になります。



 さて、冒頭の外国暮らしの方ですが、この方の骨盤底がこわばっていた主な理由は幼い頃から股関節の状態が悪く内股であったことと、腰椎の4番が捻れていたことでした。そして腰椎の捻れの原因は右手の小指と薬指にあって、一歳の頃の写真を見せていただいたところ、乳母車の取っ手を握る右手が少しおかしかいことから本当に小さいときの出来事が原因だったと思われます。
 いろいろなところを調整して、右手を念入りに調整したところ腰椎の捻れが軽減し、例の苦手のポーズが楽にできるようになりました。あわせて噛みしめの癖も改善し、ひどかったドライアイも改善しました。
 腰椎の捻れが良くなったことで会陰のこわばり状態が改善したため、からだが楽な状態になったのだと思います。
 骨盤も骨盤底も大切です。

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