ゆめとわのblog

ホームページとは違った、より臨場感のある情報をお届けしたいと思っています。 また、テーマも整体の枠を飛び出してみたいと思います。 ホームページは以下です。 http://yumetowa.com/ お問い合わせはメッセージ欄でお送りください。

カテゴリ: 背部・腰部

 私たちは自然界に誕生しましたので、からだは自然界そのものであり、当然自然界からの様々な影響を受けて変化しています。
 「台風や低気圧が近づくと体調が悪くなる」
 「気温の高低差が激しいと、からだがついて行かない」
 当院に来店される人達がよく口にされることですが、ある程度年齢を重ねますと、私たちは自然界からの影響に俊敏に適応できなくなり、このような感想を持つようになるのかもしれません。

 今、季節は春ですが、この時期は花粉症で苦しむ人も多いように私たちのからだが自然界との関係でいろいろな変化を経験する時期でもあります。自然界も冬から新しい季節に向けて変化をし始めている時期であり、「春一番」「春の嵐」「三寒四温」など、私たちの体調にとって厄介な時期でもあります。
 さて、今回の話題は「春先は呼吸系の働きが低下し、その影響で腰もスッキリしなくなる」というものです。呼吸系と腰とは関係が薄いように思われると思いますが、実はかなり関係が深いというお話しです。

 呼吸系と申しますと、それは鼻であり、気管支や肺になりますので、花粉症のこの時期「春先に呼吸系が不調になる」というのはイメージしやすいことだと思います。

 ここで呼吸運動に関係する諸器官について説明させていただきます。
 呼吸で息を吸うとき、通常(口呼吸の人は別)は鼻の穴を通して空気を取り入れますが、正常であればその空気は頬と額にあります副鼻腔を通過した後、気管を通って肺に入っていきます。外気は春先であればまだ冷たいですし、乾燥もしていますので、鼻の穴を通しただけで肺に送られますと気管や肺を冷やすことになってしまいます。それはからだに負担を掛けることになりますので、そうならないように私たちのからだには副鼻腔があります。副鼻腔は鼻から取り入れた外気の温度と湿度を調整し、さらに汚れを除去する働きをしています。副鼻腔を通過した外気は瞬時に理想的な状態に調整されるということですが、そうすることで肺はガス交換を効率よく行うことができるようになるとのことです。ですから、鼻が詰まって鼻呼吸ができなかったり、あるいは鼻呼吸はしていても副鼻腔に空気が入らないような状態では、ガス交換の効率も悪くなりますし、肺や気管支に余計な負担を掛けてしまうことになってしまいます。
 また、肺は呼吸運動とガス交換の要となる大切な器官ですが、肺自体は筋肉ではありませんので、自らの能力で膨らんだり縮んだりすることはできません。肺は袋のようなもので、それが収まっている胸郭が膨らんだり縮んだりすることを利用して空気を出し入れする仕組みになっています。ですから、胸郭が十分に膨らんだり縮んだりすることができなければ、呼吸運動は不完全なものになってしまいます。

 胸郭は12本の肋骨でできている籠のよなものですが、その底にあります横隔膜(筋肉)が伸縮することで胸腔が拡がったり狭まったりします。この原理を利用して肺が膨らんだり(吸気)縮んだり(呼気)しますが、この呼吸を腹式呼吸と呼びます。
 また胸郭を形成しています肋骨と肋骨の間には外肋間筋と内肋間筋の二種類の肋間筋があります。外肋間筋は吸気の時に収縮しますが、それによって下の肋骨を引き上げます。見た目には、肋骨が持ち上がって胸の厚みが増す状態になります。内肋間筋はこれとは反対に、息を吐き出す(呼気)時に収縮しますが、それによって上の肋骨を引き下げます。見た目には、肋骨が下がって胸の厚みが減る状態になります。つまり二つの肋間筋が働くことによって胸郭が持ち上がり息を吸い込むことができ、胸が下がって息を吐き出すことができるわけですが、この呼吸を胸式呼吸と呼びます。
 つまり呼吸運動には横隔膜主体による腹式呼吸と肋間筋主体による胸式呼吸があるわけですが、両方の呼吸方法が機能していて、且つ、それらがリズミカルに関連しあっている状態が理想的な呼吸状態であると言うことができます。
 風潮として、腹式呼吸ばかりが強調される傾向があるようですが、お腹ばかりが出っ張ったり凹んだりして胸郭がほとんど動かないような状態は決して良いことではありません。
 例えば、言葉を続けるのが苦手だったり、カラオケのテンポの速い歌でブレス(息継ぎ)が上手くできなかったりするのは、瞬間的な胸式呼吸ができないからですが、その理由は肋間筋の働きが悪くて胸郭が動かないからだと考えることができます。

 さて、今の時期、多くの人の胸郭は下がっています。その理由の多くは内肋間筋がこわばっているからですが、それは副鼻腔の状態と関係が深いように私は感じています。
 副鼻腔はいくつかありますが、その中で頬骨の下にあります上顎洞と額にあります前頭洞が状態を把握しやすいものです。

 上顎洞は鼻の真横に位置していますが、そこは上顎骨と頬骨の関節部分に近いところです。そしてその部分の表層は眼輪筋の下端や上唇鼻翼筋、上唇挙筋といった表情筋に覆われていますので、本来は指圧すると「筋肉」とわかるところなのですが、この時期はカチカチに硬くなっていて、骨と間違って感じてしまう人も多くいます。そして、そんな人は副鼻腔(上顎洞)の状態も芳しくなく、鼻から息を吸っても副鼻腔の中に空気が入りにくい状態になっています。私はこのような状態の時は内肋間筋もこわばっていて上手く吸気ができないと認識していますので、持続的な表情筋への指圧によって硬さを除去し、副鼻腔に空気が通るように施術を行います。だいたい5分間くらい指圧し続ける感じですが、そうしますと次第に鼻呼吸が大きくなり、併せて胸郭も動き出すようになります。胸式呼吸が復活しますので、全体的に呼吸状態が改善してからだも楽になります。

副鼻腔と腰との関係

 今の時期に目立つことですが、後ろ姿で、右肩甲骨と左肩甲骨の間が大きく拡がっている人がいます。その理由は、背骨と肩甲骨を繋いでいます大菱形筋(だいりょうけいきん)がゆるんで伸びた状態になっているからです。そして、大菱形筋は筋肉の連動として腰部の大腰筋と連関しますので大腰筋の働きも悪い状態になっています。

 大腰筋は腰部の状態に大きな影響力を持つ筋肉です。腰椎の椎体から骨盤の前面を経由して大腿骨(小転子)に繋がっていますが、腰椎をグイッと前に引っ張り、腰椎の前弯を実現しています。大腰筋の働きが悪くなりますと、腰椎の前弯が乏しくなったり、あるいは腰椎が後方に出っ張るようになってしまうかもしれません。いつも骨盤を含めて背中を丸めて座っている人は、腰椎が後方に出っ張った状態になっていると思いますが、そのような人は大腰筋の働きが悪くなっています。

 「姿勢を正すように背中を軽く反ってみてください」と座った状態でやっていただいたときに、何処を支点にして背骨を反っているかが私にとっての注目ポイントです。大腰筋がしっかり働いている人は、腰椎下部を支点にして仙骨を前傾させるようにして背骨を反るようになります。このような人は骨盤の状態も良くて、座り姿勢も立ち姿勢もスッキリしています。ところが大腰筋の働きが悪い人は腰椎部分を反らすことができませんので、背骨の上の方を支点にして反るようになってしまいます。このような人は背中を反る、あるいは背筋を伸ばすことが苦手ですから、正しい姿勢を保つことが辛く感じます。立ち姿も「出っ尻出っ腹」に近い感じになってしまいます。

 ですから、大腰筋の働きを高めて骨盤や腰部の状態を改善しようとするのであれば、連動する大菱形筋の働きを高めて拡がってしまった肩甲骨間を本来の位置にもどるようにする必要があります。そしてこの時の重要なポイントとして下位頚椎の在り方があります。

 頚椎は7個ありますが、3つの斜角筋(しゃかくきん=前斜角筋、中斜角筋、後斜角筋)が第1肋骨、第2肋骨と頚椎を繋いでいます。そして斜角筋がこわばった状態になりますと頚椎を肋骨の方に引っ張るようになります。
 ここからはかなり専門的な内容ですが、特に後斜角筋がこわばりますと第5頚椎、第6頚椎が下を向くようになりまが、それによって大菱形筋がゆるんだ状態になってしまいます。(同時に脇の下の大円筋と小菱形筋はこわばります)
 第5、第6頚椎が下を向いた状態は、立位で、背筋を伸ばして首も真っ直ぐにしようとしても、何となく首のつけ根のところで頚椎が前に落ちてしまい、首が真っ直ぐにならない状態として感じ取ることができると思います。
 このような状態の時に、第5、第6頚椎の後側にあります出っ張り(棘突起)を下方に引き下げる(頚椎自体は上を向く)ようにしますと、首も自然と真っ直ぐになり、大腰筋の働きも良くなりますので腰部も伸びる感じがすると思います。

 話を副鼻腔と内肋間筋と大菱形筋と大腰筋の関係に戻しますが、顔面の筋肉が硬くなったり季節的な理由で副鼻腔の働きが悪くなりますと、同時に内肋間筋がこわばってしまい胸郭(肋骨)が下がったままの状態になってしまいます。
 肋骨が下がった状態になりますと後斜角筋がこわばってしまい、第5、第6頚椎を下向きの状態にしてしまいます。すると大菱形筋の働きが悪くなって肩甲骨間が広がった状態になりますが、同時に連動する大腰筋の働きも悪くなりますので、腰椎の前弯が乏しくなって腰部の状態も悪くなってしまいます。
 立った状態でも、歩いている時でも、なんとなく上半身を腰に乗せることができなくて「出っ腹出っ尻」になっているように感じたり、あるいは座った状態で背筋を伸ばす動作をした時に、不自然さや疲れを感じたりするようであれば、それは大腰筋の働きが悪いからかもしれません。
 そして大腰筋の働きが悪くなる理由の一つとして大菱形の働きが悪くなっていることがありますが、季節的な要因として、花粉症のこの時期は副鼻腔の状態が悪くなっていることが原因になっている可能性が高いと考えられます。
 実際、この時期に来店されるほとんどの人に副鼻腔を機能的な状態に戻す施術を行っています。

 また、副鼻腔以外の原因で第5、第6頚椎が下を向いてしまうこともありますが、それは今回のテーマから外れてしまいますので、またの機会にしたいと思います。

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 2年前に頚椎ヘルニアの手術を行った後から肩こりが辛くなり、慢性的な腰痛に悩まされている50代の女性が来店されました。お仕事は和菓子の販売で、長い時間立ちっぱなしで動くこと(歩き回るなど)もあまりないということです。
 
 からだを観察しますと、背面の首~背中~骨盤にかけてピーンと張り詰めた太い筋がありました。強い脊柱起立筋のこわばりなのですが、これが原因で腰を動かすと痛みを発することが一目瞭然です。また、仕事で立ち続けてことだけも腰痛を感じるとのことでしたから、他にも問題があることが予想されました。

手術痕の影響_頚椎ヘルニア

 頚椎ヘルニアの場所は頚椎5番と6番の間で、手術は首の前面を切開して行われていました。
「横に切っているのか‥‥」というのが私の最初の印象でした。手術については全く知りませんので、頚椎ヘルニアでは横に切るしかないのかもしれません。ところが、このブログで何度か説明してきましたとおり、からだの中のエネルギーの流れは原則として縦方向です。横方向にメスを入れることは、大きな幅でエネルギーの流れを弱めてしまうことになります。
 「ちょっと厄介かな」と思いながらも、手術でメスを入れたところを人差し指の腹で隠すように手を当てました。1分くらい手を当ててますと、強く張っていた首筋がゆるみはじめました。そして背中や腰部を確認しますと、同じように最初の時の強いこわばりに変化が起こっておりまして、筋を強く圧してもそれほど痛みを感じなくなっていました。
 それで、手術でメスが入った部分に粘着力の弱い1㎝幅の絆創膏を貼りまして皮膚を補い、エネルギーが少しでも多く流れる状態にしまして、残りの「じっと立ち続けるだけでも腰が痛くなる」問題に取り組みました。

 前回のO脚に関する投稿で「次回は膝関節で膝窩筋がこわばっていることについて」という主旨の予告をさせていただきましたが、この方の膝窩筋もこわばっていまして、その影響が腰痛に反映されていました。

膝窩筋

 私たちのからだには、姿勢のそれぞれで、より効率良く、より楽な状態になれるような仕組みがあります。座った時には骨盤(坐骨)にからだを乗っけることが座った姿勢を楽に保つ仕組みです。そして立った姿勢を楽に保つための仕組みの一つとして“膝がロックしてからだの重さを骨で受け止める”というのがあります。本来、脚(下肢)の骨格は大腿骨と脛骨・腓骨に膝関節で分かれていますが、それを膝関節をロックすることで、あたかも一本の骨のような状態にして、太股やふくらはぎの筋肉の負担を軽減するようにしています。
 例えば床の上に長座して膝関節をを90°くらい曲げた状態にします。そこからゆっくり膝を伸ばしていきますと、床と一直線になる手前で膝下(脛骨)少し外側に廻ります。この脛骨の外旋によって膝がロックされ、大腿骨と脛骨が一直線のようになります。今度は床の上にすっかり伸びた状態の膝関節を浮かすようにして膝を曲げ始めますが、その曲げはじめの最初の段階で脛骨が僅かに内側に捻れます。このちょっとした脛骨の内旋によって膝関節のロックが外れ、膝を曲げることができるようになります。
 そして、この時にロックを外すために働く筋肉が膝窩筋です。膝窩筋は膝を真っ直ぐ伸ばした立位の時には少しゆるんで膝関節のロックを可能にし、膝を曲げるときに収縮して脛骨を内旋させて膝のロックを外し膝関節がスムーズに動くことを可能にしています。歩く動作では、膝が伸びたり曲がったりする度に弛緩したり収縮したりを繰り返しているわけです。
 さて、この膝窩筋がこわばって弛緩しない状態になったとします。すると膝関節がロックされませんので、立位で大腿骨と脛骨の一体化はおこなわれません。見かけ上は膝が真っ直ぐになっているように見えても、実は少し曲がった状態で立っています。太股の筋肉もふくらはぎの筋肉も楽な状態にはなりません。ですから、立ち続けていることは非常に辛いことです。そしてそれが腰痛となって現れたりします。

 この女性が、長時間の立ち仕事が腰痛を招いていしまう原因はここにあります。
 膝窩筋がこわばる理由については小殿筋、棘上筋、肘筋との連動なども考えられますし、他の要因かもしれません。それをじっくり探っている時間はありませんでしたが、足裏の母趾と2趾の間の踵近くがひどくこわばっていまして、それを指圧でゆるめますと膝窩筋もゆるみましたので、立ち続ける動作をそこに力を入れて支えていたのかもしれません。
 
 膝窩筋のことは近いうちに投稿しようと原稿を書き始めています。その中で詳しく説明したいと考えています。
 今回は頚椎ヘルニアの手術を受けて慢性腰痛になってしまった方が来店されましたので、一つの情報としてお知らせしようと思い、臨時的に投稿させていただきました。
 頚椎ヘルニアに限らず、手術をしようかどうかと考えられている人の参考になればと思います。
 また外科の先生の目にとまるのであれば、医学界が無視しているように見受けられる予後の問題の一つとして、「手術痕がからだに及ぼす影響」があることを知っていただき、患者さんの予後についてもっと考えていただきたいと、そう思います。

 花粉症の時期も終盤にさしかかりましたが、この時期(春先)は季節的な要因で胸に変化が起こりやすくなっています。
 花粉症に関係するからだの変化としては、胸(胸骨)が下がり、それに合わせて鼻(鼻骨)も下がってしまうことがあります。東洋医学では「鼻は肺の煙突」と表現されるほど、鼻と肺にはとても深い関係性があるとされています。アレルギー性の症状として鼻炎(花粉症)と気管支喘息がありますが、ともに肺と関係があると考えますと、肺―胸―胸腺―免疫という一連の関係性が浮かび上がってきます。そして実際、胸骨や胸郭を整えますと鼻骨が上がり、鼻の通りが良くなることがあります。

 花粉症の人も、そうでない人も、多くの人が春先は胸が下がり鼻が下がるわけですが、それは季節的な要因であり、季節の変わり目の影響であり、三寒四温など自然現象による“からだの変化”と捉えるのが妥当かもしれません。
 そして胸骨が下がるだけでなく、胸の筋肉(大胸筋と小胸筋)がこわばって胸郭が狭くり、肋骨の動きが悪くなっている人がたくさんいます。これらの変化は動悸や息切れ(浅い呼吸)などの症状をもたらすかもしれません。

“肋骨の帯”のように働く二つの後鋸筋
 さて、「胃の調子が冴えず、背中に辛さを感じる」という症状の原因の一つとして、背中の筋肉が張っていて肋骨の動きが制限されているというのがあります。これまでの投稿で、背中の辛さや痛みについて、肩甲骨の内側、胃の裏側、肋骨下部など場所別に説明してきましたが、今回はそれらに加えての説明になります。
 背中の深いところに後鋸筋(こうきょきん)と呼ばれる筋肉があります。肩~肩甲骨辺りの深部に上後鋸筋(じょうこうきょきん)があり、肋骨の下部に下後鋸筋(かこうきょきん)があって胸郭の背面を支える働きをしています。学問的には、その働きは「肋骨(胸郭)を上下に動かし、呼吸を補助する」とされていますが、実際は胸郭の上部と下部を“帯で縛る”ようにして安定させたり、動きを制限したりしているのではないかと私は感じています。

上後鋸筋と大胸筋(だいきょうきん)の関係
 強い肩こりや背中のこりを持っている人は左右の肩甲骨の間が盛り上がったように硬くなっている場合があります。肩甲骨周りには表層から僧帽筋(そうぼうきん)、菱形筋(りょうけいきん=大菱形筋と小菱形筋)という筋肉がありますが、通常の肩こりや背中のハリでは、この二つの筋肉が施術の対象となります。しかし、その奥が硬くなっていて指圧しても、揉みほぐしてもなかなかコリが解消しない場合があります。「難治性の肩こり」と表現している施術者もいるようですが、その筋肉が上後鋸筋です。

僧帽筋・広背筋・菱形筋・下後鋸筋

後鋸筋と脊柱起立筋

 この筋肉が硬く盛り上がっている人の多くは胸郭の厚みが増していますが、それは上後鋸筋のこわばりが肋骨を背骨の方に引きつけているからだと考えられます。
 からだの個性として、「胸板の厚い人」「丸っこい胴体の人」「胸が平たく薄い人」「鳩胸の人」「お腹は出ているのに胸は薄い人」等々、いろいろなタイプの人がいます。こういった個性が本来的なものか、それとも胸の変化による一時的なものかを判断しなければなりませんが、胸はいろいろな要素によって刻々変化します。そして、その変化をもたらすのは肋骨に関係する筋肉になるわけですが、上後鋸筋はその一つです。

大胸筋と小胸筋

 胸の骨格である胸郭は前面中央にあります胸骨と肋骨と背面中央にあります背骨(胸椎)でできています。胸部(前面)には大胸筋という力強い筋肉があります。大胸筋は鎖骨と胸骨と肋骨など胸郭前面の骨と腕のつけ根(上腕骨大結節稜)を繋いでいますので、胸骨や鎖骨が変化することで大胸筋の状態が変わったり、あるいは大胸筋の状態によって胸郭の状態が変わったりします。
 そしてこの時期(春先)は大胸筋がこわばっている人が大変多くなるのですが、それによって胸郭の前面が狭くなり、息苦しさや動悸などを招いてしまうことがあります。私の感覚では、このような状態の人の胸は「内側に落ち込んでいる」と感じます。
 両腕も肩のつけ根のところで内側に入り込んでいたり(内旋)、あるいは腕のつけ根の辺り(大胸筋停止部=上腕骨大結節稜)を強めに触ると痛みを感じたりしますが、それは大胸筋がこわばっているからです。

上後鋸筋のこわばり

 「春先は胸骨が下がり、胸郭が内側に落ち込んでいる人がたくさんいる」というのが私の率直な印象です。そして「背中や首のつけ根辺りにツッパリ感を感じる」という人も多くいます。
 そして、この背面上部の突っ張りは上後鋸筋のこわばりによるものだと考えられます。
 胸郭の前面にある大胸筋のこわばりによって肋骨が胸骨の方に引きつけられますが、それは胸骨が相対的に落ち込んだようになるのと同時に、肋骨が内向きに回旋しますので背面では背骨から肋骨が離れるような状態になります。それを阻止しようと上後鋸筋は収縮するわけですが、この状態が常態化して上後鋸筋の慢性的なこわばり状態を招くと考えることができます。

 そして、このこわばり状態が「すっきりしない背中の上部」「帯で締められたような感じ」「呼吸で息が深く入いらない」「仰向けで寝ると首のつけ根から背中にかけて嫌な感じがする」などといった症状をもたらすことになります。
 「強情な肩こりや背中のこり」だと思って、道具を使って一生懸命叩いてみたり、誰かに揉んでもらったりしても、一時的に解放されて気持ち良くなったと感じるかもしれませんが、スッキリ解決することはほとんどないと思います。なぜなら原因の多くは胸の前面にあるからです。

 さて、大胸筋や胸骨の問題で上後鋸筋がこわばっている場合の対処方法について考えてみます。
 繰り返しになりますが、この季節は誰もが、胸の状態が程度の差こそあれおかしくなります。胸はいろいろな事象に反応して変化しやすい部位です。季節の移り変わりを感じますし、精神的なことでももちろん変化します。そして「変化する」というのは、具体的には骨格の形が変化するということですが、それを行うのは筋肉であり、筋膜です。ですから、筋肉と筋膜を整えることで対応することができると考えることができます。
 実際、大胸筋のこわばっている人がたくさんいます。大胸筋は鎖骨の下から腕にかけての広い部分にありますが、その部分を少し強めにマッサージすると痛みを感じると思います。特に腕の近く、腋の下の部分は筋線維が集まっていますので、かなり痛く感じると思います。
 その痛みが軽減するまでマッサージしたり、筋束を掴んでゆるめたりしていただきたいと思います。そうしますと次第に胸が解放されるような感じになり、実際に胸が広がるわけですが、同時に背面の上後鋸筋のこわばりも改善しますので、呼吸が楽になるなどの変化が現れると思います。

大胸筋へのセルフケア

 また普段の顎の使い方として、顎先に力を入れて口を動かしている人も多くいますが、そういう人は顎先(オトガイ)から顎ラインに掛けて硬くなっています。オトガイが梅干しのようになっている人は確実にこの状態だと言えます。このような人は、指圧などでこれらの硬さを解消しますと、胸のこわばりも解消しやすくなり、セルフケアが効果的になると思います。

下後鋸筋のこわばりは背骨を整える
 肋骨の下部には「腹部の帯」のような感じの下後鋸筋があります。解剖学的には息を吐くときに働く呼吸筋、あるいは呼吸補助筋として取り扱われていますが、それよりも上後鋸筋同様、肋骨を安定させる意味合いの方が強いと思います。
 時々「背中の下の方が辛い」と訴える人がおりますが、下後鋸筋のある肋骨下部には腎臓があります。からだに疲れが溜まると腎臓が腫れてしまう人が少なからずおりますので、まずこの部位の「ハリ感」や「辛さ」は下後鋸筋のこわばりによるものか、腎臓の膨大によるものかを識別しなければなりません。
 その上で、下後鋸筋のこわばりによって「背中の下部が張って辛い」「寝ていても背中が反っているように感じる」などの場合は、背骨(下位胸椎と腰椎)を整えることが解決策だと私は考えています。

下後鋸筋のこわばり

 下後鋸筋がこわばっている人の多くは、腰部の背骨が「真っ直ぐ棒のような感じ」です。背骨は椎骨(頚椎7個、胸椎12個、腰椎5個)が椎間板をクッションにして連結してできていますので柔軟性があり、普通は一つ一つの椎骨を触り分けることができます。ところが時々、椎骨間が詰まっていて一本の棒のように感じることがあります。「背骨に余裕がない」と私は思ってしまうのですが、腰部の背骨がそのような状態の人は大抵、下後鋸筋がこわばっています。
 腰部の椎骨に関係する筋肉には大腰筋(だいようきん)と腰方形筋(ようほうけいきん)があります。背骨全体にわたって脊柱起立筋(せきちゅうきりつきん)は関係しますが、下後鋸筋の変調に関係するという意味では、大腰筋と腰方形筋に着目すべきではないかと私は考えています。
 そして腰方形筋は殿部の中殿筋(ちゅうでんきん)と連動しますので、中殿筋が硬くこわばってしまいますと腰方形筋もこわばり腰椎が詰まった感じになります。あるいは、中殿筋の働きが悪くなりますと、太股の骨(大腿骨大転子)が下がってしまうので、大腰筋が緊張して張ってしまい、腰部の背骨に余裕がなくなり、下後鋸筋がこわばって「お腹に帯が巻かれている」ように感じたりすることがあります。そして、実際はこちらの方が多いかもしれません。

 下後鋸筋のこわばりに対しては、脊椎、大腰筋、中殿筋、腰方形筋などの専門的な知識を要しますので、一口にセルフケアを説明することはできません。
 下後鋸筋がこわばっていたとしても、「腹部が帯で巻かれているように感じる」とか、「仰向けで寝ると反っているようで落ち着かない」といった程度の不快感を感じる症状ですから「大きな問題ではない」とも言えます。ですから、実際は無視している人がたくさんいると思います。気になる人は専門家へ相談されることをお勧めします。

足つぼ・整体 ゆめとわ
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 その男性は30代半ばの体格の良い人です。10年ほど前に腰椎ヘルニアを患い、その後、慢性的な腰痛と背中痛と首の痛みに悩まされているとのことです。学生時代は弓道をやっていたということで、その後はからだの痛みもあって特に運動はしていないとことです。仕事は営業で、立っていることが多く、かなり重たいカバンを右手で持ち歩いているとのことです。
 今回来店された目的は腰痛と首の痛みを軽減したいということでした。ヘルニアに関しては10年前に坐骨神経痛(下肢のシビレ)でかなり苦しんだとのことですが、その後症状の再発はないとのことです。

 施術前に私が簡単に観察したところ、左目の周りがピクピク痙攣していて、顔や首がこわばっているように見えました。痙攣のことを尋ねますと、常態的に顔面左側にこわばりと痙攣があるとのことでした。

 ベッドにうつ伏せになっていただき施術を始めますと、足裏、ふくらはぎ、太股、殿部、腰部、背中、首、後頭部、つまり全部がとてもこわばっていてバリバリでした。その他には、右肩(肩甲骨)が大きく外側にズレていました。
 「腰痛、首痛というよりも‥‥、背面全部が駄目な状態だ!」と感じました。そして、「何か厄介な状況でなければいいのだが」と思いながら、うつ伏せでの施術を終え、仰向けになっていただきました。
 仰向けでからだの前面を観察しますと、やはり全部がこわばった状態でした。腕も、手も、顔も含めてです。「これは、やっぱりおかしい! 通常の不具合とは違う」と直観しまして、「どうしたものか?」と施術方法について思考を巡らせながら細かく観察していきました。「パーキンソン病などの初期症状とかでなければいいけど」
ゆるみ
 筋肉やからだの仕組みの一つとして「何処かにゆるんで機能できない部分があると、それを補おうとして他の部分がこわばる」という性質があります。この仕組みによる全身のこわばりであれば、からだの中心部分に機能できない部分がある可能性が高いです。「中心が頼りないので周りが頑張って(緊張して)何とか今の状態を維持している」というようなイメージです。

大胸筋の損傷

 まずは腹部から胸にかけて探っていきました。すると胸郭の上の方、胸骨のやや右側、第3~第4肋骨のつけ根辺りに凹んで落ち込んでいる部分がありました。しばらくそこに手を当てていますと、バリバリに硬くなっていた太股や腕の筋肉が少し柔らかくなりました。腹筋も少し伸びたような感じです。
 さらにその部分の肋骨が右側にずれていましたので「ここが少し凹んでいますが、何かありましたか?」と尋ねますと、「就職して間もなくの頃、痛くなったので病院に行ったらヒビが入っていると診断された。打撲した記憶もないのに不思議に思った。」ということでした。さらに、「考えられるとしたら、いつもかなり重たいカバンを右手で持っていたので、それでかなぁ」という大きなヒントが返ってきました。

 右側の肩甲骨が外側にずれていること、重たいカバン(5~6㎏)を持っていたこと、そして肋骨にヒビが入ったこと、これらから連想できることはカバンの重たさにからだが負けて、肋骨が損傷し、肩甲骨が右側に落ちてしまった状況です。

前鋸筋_起始停止

 重たいものを持ち続けることでこわばる筋肉は前鋸筋と手や腕の筋肉です。前鋸筋は肋骨と肩甲骨をつないでいますが、この筋肉がこわばりますと肩甲骨が外側にずれて肋骨の動きが制限されるといった状況を招きます。

大胸筋_ 起始停止

 また反対に、重たいものを持ち続けることで疲弊する可能性のある筋肉が幾つかあります。その中の一つに大胸筋がありますが、大胸筋は胸骨や肋骨を起始(筋肉の始まり部分)にしていますので、重たいカバンを持ち続けていることに耐えきれなくなって胸骨と肋骨の境辺り(起始部)が損傷し、その影響で肋骨が外側にずれてしまったと考えることもできます。そしてこの損傷により胸郭の一部筋肉あるいは筋膜が機能できなくなり、それを補うように全身の筋肉がこわばってしまった、という可能性は十分に考えられることです。
 ですから胸の損傷部分のケアを行い、前鋸筋のこわばりを取って胸郭を歪みの無い状態に戻すことを行いました。すると、バリバリにこわばっていた腕や太股やお腹や背中の筋肉がゆるみはじめました。前鋸筋の強いこわばりによって制限されていた胸郭の動きも良くなったため呼吸が楽に行えるようになりましたが、それも筋肉のこわばりを解消するために不可欠なことです。

 さて、あとは左目の周りを中心にピクンピクンしていた痙攣状態がどうなったかですが、顔面左側のこわばりは残ったままでした。
 「左半身か左手などにケガした記憶はありますか?」と尋ねました。しばらく記憶をたどられた後、「弓道をしていた頃、強いバネ指になってしまい、今も中指はバネ指状態です。」と仰いました。確認しますと左肘関節が捻れた状態でした。(前腕が橈側にずれ、さらに回内位に捻れた状態)
 ここで、前回の記事で取り上げました中間広筋のテストをしてみました。何も操作しない、肘が捻れたままの状態でテストをしますと、手を握った状態、奥歯を噛みしめた状態では膝に力が入り、手を広げ、奥歯を離した状態では力が弱くなってしまいました。次に私が手動で操作して肘の捻れを正しい位置に戻すようにしてテストを行いますと、手を広げ、奥歯を離した方が力強くなりました。つまり、左肘の捻れがエネルギーの流れを悪くしているということがわかりました。
 ですからこの人は、弓道をしていてバネ指になってしまった大学生の頃から、手を握る癖、噛みしめる癖、もっと言えば首肩に力が入ってしまう癖を持っていた可能性があると考えることができます。これだけでも全身が緊張状態になって筋肉がこわばる傾向になりますが、その後の胸の損傷や肩甲骨のずれにが加わったことによって全身の筋肉がバリバリになるほど強くこわばってしまったと考えることができます。
 左肘の歪みと捻れの原因は左手と左手指の強いこわばりでした。弓道をしていたころの名残かもしれません。「力を抜いて弓を操作するように指導されたけど、なかなかそれができなくて、ついつい力が入ってしまったからかなぁ」と仰っていました。

 左手のこわばりはかなり強く、たくさん揉みほぐしましたが「すっかりほぐれた」という状態には至りませんでした。しかし、肘の歪みと捻れはだいぶ良くなり、中指のバネ指状態もほとんど解消しました。
 その後、また筋力テストを行いましたが、今度は何の操作をしなくても手を開いた状態、顎を弛めた状態で中間広筋にしっかり力が入るようになりました。こわばっていた顔面左側もゆるみ、痙攣の兆候も消えました。

 これで概ね施術は終了ですが、細かい部分を確認するため座位になっていただきました。座った状態での腰痛や背中の張り、首の痛みなどがどうなったかを確認していただき、さらに立っていただき、からだの動きなどを確認していただきました。
 ご本人は来店された目的が果たされ満足されたようですが、私は気になることが少し残っていました。右の肩甲骨がまだ少し外側に動いてしまいます。リラックスした状態で、からだはしっかり保てるようになってはいたのですが、十分にしかっりした状態ではないと判断しました。そしてそれはきっと右肩甲骨に不安定さが少し残っているからだと思いましたので、細かく確認していきました。

菱形筋の「ゆ」による肩甲骨の「ド」

 すると背骨と肩甲骨を結んでいる小菱形筋と大菱形筋にゆるんでいる部分がありました。「重たいカバンは二つの菱形筋までも疲弊させてしまったのか」と思いながら、その部分にはダイオードを貼って筋肉の修復を促しました。
 これで施術は終了しました。左肘の捻れと胸の損傷が「すっかり良くなった」とは言い切れない状況でしたが、来店時の全身バリバリのからだはすっかり変わり、左目周辺の痙攣も解消されていましたので「まずまず」といった感じです。苦しそうな感じで来店された雰囲気が、すっかり変わり、楽しそうな雰囲気なって帰られる姿を見るのはいつも私を心地良い気分にさせてくれます。

 時系列的にこの方の症状を整理してみますと、以下のように考えることができます。

①大学生時代の弓道で左手に必要以上に力が入り、それによって肘が捻れを起こし、バネ指になってしまった。さらに左手のこわばりと肘の捻れは顔面に痙攣をもたらし、エネルギーの流れを悪くしたために手を握る癖、歯を噛みしめる癖をもたらした。からだから力を抜いてリラックスすることがなかなかできない状態になってしまった。

②そんな慢性的緊張状態のまま就職し、営業職でかなり重たいカバンを持って歩き続けなければならない状況になった。すると間もなくからだが耐えられなくなり腰椎ヘルニアを患い、さらに右腕と肩が荷物に引っ張られ続けたために肋骨にヒビが入る状態になった。そのことの影響で全身の筋肉がバリバリ状態になって①の状態を悪化させた。

 「腰痛なのに腰は施術しないのですね」と施術後尋ねてきました。
 「腰痛というより、全身の筋肉がバリバリに張っていた症状でした。背筋の強いこわばりが腰椎を圧迫するなどして痛みをもたらしていたし、背骨の状態が悪かったのでからだを反ることが出来なかった。筋肉がゆるんでしまえば腰痛や反ることのできない症状はなくなると思ったので。」と回答し、「最初は何かの病気の可能性も考えられると思ったけど、原因がはっきりして、病気ではないことがわかったこともよかったと思います。」と申し上げました。

足つぼ・整体 ゆめとわ
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 今回は筋肉の話です。
 私たちが通常「腹筋」と呼んでいる筋肉は腹直筋を指すことがほとんどですが、腹筋には4つの筋肉があります。腹直筋と外腹斜筋と内腹斜筋、そして腹横筋です。これに内臓を保護するための腹壁をつくるという意味で腰方形筋をその仲間に入れることもあります。今回はこの中で内腹斜筋について取り上げてみます。

腹筋群_側面
 
 私のところに時々声楽家の方がいらっしゃいます。声楽家ですから腹式呼吸は得意とするところです。ところが内腹斜筋の働きが悪いと息を最後まで吐き出すことがスムーズにできなくなります。そして、どことなく声を出すにも背筋に力が入りきらないとおっしゃいます。
 私たちは普段、内腹斜筋を意識することはほとんどありません。普通に息をしているくらいではほとんど働いていないかもしれません。しかし、私たちが下腹部に重心を持っていくためには、つまり「下っ腹に力を入れる」ためにはとても大切な筋肉です。
 息を最後までフーーっと吐き出し続けます。すると横っ腹の骨盤に近い部分がジーンとするような筋肉の収縮感が得られます。その筋肉が内腹斜筋です。

内腹斜筋01


腰痛と内腹斜筋との関係
 内腹斜筋の働きが悪いと骨盤と胸郭の間が広くなり、胸が上がって体幹が不安定になります。腰部に痛みをもたらす筋肉は主に脊柱起立筋ですが、肋骨と骨盤の間が離れるので脊柱起立筋は張ってしまいます。仰向けで眠ることができない、横向きでないとリラックスできないという場合は、内腹斜筋の働きが悪く脊柱起立筋がパーンと張ってしまうからかもしれません。息を最後まで吐き出しきることができないで腰部や背中にいつも張り感がある場合は、内腹斜筋の働きを疑う必要があります。
 また、内腹斜筋の働きが悪いと胸腹部と骨盤部の一体感が失われますので、歩く時でもなんとなく骨盤がフニャフニャした感じになり、下半身に体重を乗せて歩くことができなくなります。重心の位置が胸に近くなってしまいます。この傾向は現代の人に多いと思います。
 下半身の安定感にとぼしく背中や腰がいつも張っているように感じる時は内腹斜筋が関係していると考えられます。

呼吸と内腹斜筋の関係
 息を吸うとき胸は拡がり胸郭は上がります。腹式呼吸では、これに加えてお腹が前に膨らみます。この時、腹筋は伸びてゆるんだ状態になります。腹筋がゆるまないと息を深く吸うことはできません。
 息を吐く時は、これとは反対に腹筋が収縮して胸郭を引き下げます。腹筋の働きが悪いと息を吐く動作が不十分で途中までしか息を吐き出せないため呼吸が浅くなります。
 さて、内腹斜筋の働きが悪く収縮する能力が弱くなりますと、自然な腹式呼吸ができなくなります。自然な腹式呼吸とは、意識せずともゆったりしていて、腹部が滑らかに寄せては返す波のように動いている状態です。しかし、現代の多くの人たちがハアハアと胸を動かすだけの呼吸だったり、お腹がペコペコするだけの呼吸だったりしています。何かに集中することが多かったり、精神的な緊張状態が続いたりすると私たちは呼吸を止めて息を吐き出すことを忘れてしまい、しばらくして溜め息をつくように息を吐き出すわけですが、ストレスの多い現代社会ではそれも仕方のないことなのかもしれません。しかしそれでは内腹斜筋はほとんど働きませんので、筋肉としての能力は落ちてしまいます。浅い呼吸が内腹斜筋の働きを弱め、働きの弱った筋肉はさらに呼吸を浅くしてしまうという悪循環になってしまいますので、一日に何回かは意図的に息を最後まで吐き出して内腹斜筋を鍛えるような時間をつくる必要があると思います。

重心と内腹斜筋の関係
 私のところに来られる方々はほとんどが体に不調や不具合を抱えていますが、そのような方々に共通しているのは重心の位置が高いことです。ここで”重心”と表現しているのは、体を動かすときの中心部という意味です。体のどこを支えにして歩いたり、手を動かしたり、呼吸をしたりしているかということです。
 理想的な重心の位置は下腹部だと思います。臍から骨盤にかけての部分が支点となってあらゆる動作が行えるのが効率的ですし、体を壊さない秘訣かもしれません。しかし、その重心がお腹の上部から胸、つまりみぞおち付近にある人がたくさんいます。そこが硬くこわばっているのです。胃の調子が悪い人が多い理由はここにあるのではないかと思っています。硬くなったみぞおち(腹直筋の上部)が常に胃を圧迫していますし、胃のすぐ下を通っている大腸の横行結腸の動きも悪くなりますので、便秘や下痢といった不調を招いているのではないかと考えています。
 安定していて、楽に立ったり、歩いたりするためには重心の位置が下腹部に来る必要があります。立っていても、座っていても、息を抜いて楽に骨盤に上半身を乗せることができることが正しい姿勢をつくるためのポイントですが、そのためには重心が下腹部になければなりません。重心の位置が高いと骨盤で上半身を支えることができませんので、すぐに背もたれに寄りかかりたくなったり、あるいは座ることが苦痛なのですぐに横になったりしてしまいます。体がこんな状態なのに、「姿勢良くしなさい!」などと強要したところで、本人にとっては苦痛以外の何物でもなく、反発を招くだけの結果に終わってしまうでしょう。
 そして、重心を下腹部に下げるためには内腹斜筋の働きを良くすることが欠かせません。姿勢を正して、ともかく骨盤にしびれを感じるくらい最後まで息を吐き出し続けます。それを何回か繰り返していると、腹筋の下の方が硬くしまっていく感じがつかめると思います。肛門も自然と締まってくることでしょう。内腹斜筋に限らず腹筋の全部が最大限に力を発揮している状態です。
 このようなトレーニングをしていると、これまで体験したことのないような力が自分の内にあるのが体感できるようになると思います。これは筋トレの腹筋運動では得ることのできない、腹筋の鍛え方です。

 先日、大学の陸上競技部の選手が腰痛の改善に来られました。立派でしなやかな体型をしているのですが、「腰が痛くて仰向けで寝ることができない」ということでした。いろいろ体を調整しましたが、私がとても気になったのは、重心の位置が胸にあることでした。ハイジャンプの選手ですが、筋トレでベンチプレスをはじめ上半身を鍛えることをかなりやっているとのことです。この選手に「ともかく息を吐いて重心を降ろしてください」と言っても、本人はその感覚がなかなかつかめません。ベンチプレスなどで腕の筋肉や胸筋や前鋸筋を鍛えすぎているため重心が上がってしまい、さらに体の内側ではなく外側に重心が分散してしまっているのだろうと私は思いました。もっと効率の良い体の使い方ができるはずですし、そうなれば記録も上がっていくだろうと感じました。

 運動選手や特殊な仕事に従事する人は別として、普通の人が内腹斜筋を鍛えるために何かのトレーニングをする必要はないと思います。ともかく、一日に何回か、息を吐き出しきって骨盤がジーンとなるような呼吸を1~2分行ってもらえれば、それで十分だと思います。そうすることで呼吸も改善し、重心の位置も改善し、「横向きでないと眠れない」という状態も改善するかもしれません。

 専門的に、内腹斜筋の状態を整える方法はいくつかあります。内腹斜筋は下半身では長内転筋、後脛骨筋、母趾内転筋と、腕では上腕筋、母指内転筋などと連動しますので、それらの筋肉の状態を整えることによって調整します。 

 内腹斜筋はあまり語られることのない地味な筋肉ですが、体の芯を支えるインナーマッスルであると私は考えています。ここに取り上げた、腰痛、呼吸、重心、という項目では必ず状態を調整しなければならない筋肉です。 

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