ゆめとわのblog

ホームページとは違った、より臨場感のある情報をお届けしたいと思っています。 また、テーマも整体の枠を飛び出してみたいと思います。 ホームページは以下です。 http://yumetowa.com/ お問い合わせはメッセージ欄でお送りください。

カテゴリ: 首・肩・背中

 頚椎(けいつい)は「首の骨」のことですが、それは背骨の一部であり、専門用語で脊椎(せきつい)と呼ばれる椎骨(ついこつ)の首の部分の名前です。脊椎には7個の頚椎の他に、胸椎(きょうつい)が12個、腰椎(ようつい)が5個あり、骨盤の中心ラインにある仙骨(せんこつ)及び尾骨(びこつ)と合わさって体幹の基礎を築いています。
 さて、肩こりや首のこりで悩まされている人はレントゲン撮影の診断などで「ストレートネック」と指摘されることが多いと思います。先日来店された女性の方から「ストレートネックは手術しないと治らないのですか?」と聞かれました。
 「ストレートネックで手術???」と私は思いました。「世間ではそんな情報も広まっているかぁ?」、まったくと言っていいほどテレビを見ない私は、お客さんとの会話の中によって情報番組などの情報を知るのですが、しばしばビックリしてしまいます。

 確かにストレートネック状態は、頚椎の角度から、頚椎から肩甲骨につながっています肩甲挙筋(けんこうきょきん)や頚椎から肋骨に繋がっています斜角筋(しゃかくきん)などを緊張状態にしますので、慢性的な「首肩のこり」状態を招きます。ですから「ストレートネックは慢性的な首肩こりの原因である」ということには私も賛同します。ところがストレートネックのほとんどは生まれつきのものでもありませんし、改善できないものでもありません。手術なんて、とても考えにくいことです。

上部頚椎
 このブログでも何度か登場しました専門用語に「上部頚椎」があります。それは頚椎1番と頚椎2番のことですが、この二つの頚椎が乱れていますと全身的に影響して不調状態になってしまうという話を聞きます。整体と類似の療法にカイロプラクティックがありますが、その専門家の中には上部頚椎のみ調整している方もいらっしゃいます。
 以前にも申し上げたことですが、上部頚椎は後頭部と後頭下筋群で直接繋がっています。今の私たちはパソコンを使ったりスマホをいじったりすることが多いのですが、その時は頭や首はやや下向きの角度になっています。首が前に出ていると言い換えてもよいと思いますが、その状態のまま顔を起こして前方を見る動作をしますと、それは後頭骨と頚椎1番の間にあります関節(環椎後頭関節)を使う動作になります。後頭下筋群を収縮させて環椎後頭関節をスライドさせているのですが、「下顎を前に突き出すような動作」と言った方が解りやすいかもしれません。そして、この動作は正しいものではありません。

後頭下筋群を使って前を見る動作

 本来、顔を起こしたり、首を起こしたりする動作は頚椎の一番下、頚椎7番あたりを支点にして首から肩に掛けての筋肉を使って行うのが自然ですが、現代人の多くは首が前に出ているために環椎後頭関節を主に使って動作を行っています。そして、これがストレートネックになってしまう原因の1番ではないかと私は考えています。


上部頚椎の図

上部頚椎と後頭下筋群の関係

 後頭下筋群の中で後頭骨と環椎(頚椎1番)を繋いでいる筋肉を小後頭直筋(しょうこうとうちょくきん)といいます。後頭部の「盆の窪」と呼ばれる凹みのすぐ両脇にある筋肉です。使いすぎなどによってこの筋肉がこわばった状態になりますと環椎の後結節を後方に引っ張り上げてしまいますので、環椎後頭関節(頚椎1番と後頭骨の関節)で後頭骨が前にスライドしてしまい、下顎が少し前にでた状態になります。そして環椎の後結節が上方に引っ張り上げられるということは前方の前結節が下を向いてしまうということですので、頚椎全体の前弯をなくしてしまうきっかけになります。
 また、後頭骨と軸椎(じくつい=頚椎2番)の棘突起をつなげている筋肉を大後頭直筋(だいこうとうちょくきん)と言いますが、この筋肉がこわばりますと軸椎の棘突起を上後方に引っ張り上げてしまいます。環椎同様、軸椎の前方は下を向きますので頚椎の前弯は崩れ、ストレートネックになってしまいます。
 軸椎の棘突起は大きいので触ることができます。盆の窪のすぐ下に触れることのできる骨性の突起がそれですが、ストレートネックではない人の軸椎棘突起は深いところにありますのでそれほど目立ちません。しかし、ストレートネックで軸椎棘突起が大きく上後方にずれている人は、盆の窪のすぐ下にありありと棘突起を感じられると思いますし、その周辺の筋肉が硬くなっているのが感じられると思います。

大小後頭直筋とストレートネック

ストレートネックと首筋のハリ
 ストレートネックの人の首は一般的にガチガチに硬くなっています。それは筋肉のコリ(凝り)というよりもハリが強くて首筋が棒のような状態になった感じです。
 首に関係する筋肉はいくつかありますが、その中で肩甲挙筋と斜角筋が硬くなっている主な筋肉です。

ストレートネックと首筋の硬さ

 肩甲挙筋は頚椎1番~4番の横突起から出発して肩甲骨の内縁上方に繋がっています。主な働きは首をすくめるように肩甲骨を持ち上げることですが、目の疲労などによってこわばりますので、スマホをたくさん見ている人はそれだけで首筋が張ってしまいます。頚椎1~4番に関係しているということは上部頚椎が歪みますと緊張状態になって張ってしまう可能性が高くなります。ですからストレートネックの人の肩甲挙筋は硬くなっているという理屈になります。
 斜角筋は頚椎と肋骨を繋いでいて、呼吸動作で息を吸うときに胸を持ち上げる働きをしますが、そしゃく筋と深い関係にあります。ですから噛みしめ癖や歯ぎしり癖などを持っている人の斜角筋は硬くこわばっています。首の側面~鎖骨の下にかけての部分が硬くなっていたり、触ると痛みを感じる場合は、斜角筋がこわばっている可能性があります。そして斜角筋には前斜角筋、中斜角筋、後斜角筋の3つがあり、それぞれに頚椎とのつながり方は異なりますが、ストレートネックの状態では、やはりすべての斜角筋がこわばって硬くなってしまいます。
 実際に、上後方にずれてしまった環椎の後結節や軸椎棘の突起を下前方に押し下げてストレートネック状態を一時的に解消しますと肩甲挙筋の硬さや斜角筋の硬さは少しゆるみますので、上部頚椎の状態を改善することで首肩のコリが軽減することがわかります。

上部頚椎の歪みの影響
 上部頚椎についてはたくさん語ることがありますが、今回は上部頚椎が歪んでいる場合の影響について幾つか取り上げてみます。
 例えば、顔は正面を向いたまま瞳だけ右に動かすとします。すると環椎(頚椎1番)は右側に動きます。このことは目の使い方が右側に偏っている人、つまり顔は正面をむいたままの状態で瞳を右に向けることは容易にできても左に向けることが苦手な人は環椎が右側に寄っている可能性が高いということです。また、右側の奥歯ばかりで噛んだり、噛みしめている人も同様に環椎が右側に寄っていることが予想できます。そうしますと反動として軸椎は左側、つまり環椎とは反対側に動きます。実際このような歪みを持った人が多いのですが、このような人は首を左に回して頭を左横に向ける動作で、動かし始めの時にちょっと引っ掛かりを感じると思います。動かし始めの時に着目してみてください。首を大きく向くことがしづらいとか、首筋が張って向けない、というのは筋肉のハリと関係しますので、あくまでも首を動かし始める最初の1㎝くらいの時です。

環椎と軸椎の回旋

 といいますのは、その段階では環椎が軸椎の歯突起を軸にして回旋することで頭を回旋する仕組みになっているからです。環椎と軸椎の関係に問題がなければ、右にも左にもスムーズに軸椎の歯突起を軸にして環椎を回旋することができます。ところが環椎が右側にずれ、軸椎が左側にずれている状態では、左を向くときには一度環椎の位置を左にずらして軸椎の歯突起に合わせてからでないと首を回旋することができませんので、動かし始めの時に「ちょっと引っ掛かる感じ」になるのです。
 普通は誰もが目の使い方や奥歯の使い方に偏りを持っていますので、どちらかに向きづらいという傾向をもっていますが、片噛み癖や噛みしめの癖、目の偏りなどの状態が激しい人は上部頚椎のずれも大きく頑固になっていますので、軸椎辺りのところに強い痛みを感じることがあります。

 また、ストレートネック状態になっていて上部頚椎の後側が上がって前側が下がっている人は、頬が下がっています。頬と言いますのは頬骨と上顎骨のことですが、それによっていつも顔が下がっているように感じたり、目元がこわばっていて瞼の開閉に違和感を感じたりすることがあります。そして舌も下がってしまいますので、喋りづらく感じたり、滑舌が悪いように感じたりするかもしれません。さらに下がった舌は下の歯列を押しますので、その痕が舌先についていたり、下顎が前に出ていたり、下唇がだらしないような状態になっているように感じるかもしれません。
 上部頚椎の問題だけがこれらの原因ではありませんが、上部頚椎を整えることで顔に関するかなりの問題が改善されることがあります。
 さらに、いつもどことなく落ち着かない、からだがしっくりこないと感じている人に対して上部頚椎を整えることで、それらの問題が消失したこともありました。
 施術者としてこのような経験をしますと、上部頚椎専門のカイロプラクティックがあるのも合点がいきます。

上部頚椎を整える
 私は上部頚椎専門のカイロプラクティックを訪れたことがありませんので、経験者された人の話を聞いて想像するだけですが、上部頚椎の矯正方法はとても瞬間的なものだということです。軽い力で直接上部頚椎を「コツン」とやるだけだそうです。
 私の施術では直接骨を動かすような矯正はしませんので、他の頚椎との関係や筋肉との関係を観察しながら、そしてお客さんの話を聞きながら「何が原因で上部頚椎がずれてしまったのだろう?」と原因を追求していきます。

頚椎と胸椎

 頚椎のことで申し上げれば、歪みやすいところは上部頚椎である環椎と軸椎、そして頚椎の真ん中である頚椎4番と頚椎の土台である頚椎7番や6番です。そして「どの頚椎を整えればその他の頚椎も整うのか?」という観点でいろいろと進めていきます。理屈で考えれば、後頭下筋群がこわばっていることによって上部頚椎が後頭部の方へ引き付けられていますので、後頭下筋群を整えることでその問題はほとんど片付けられることになりますが、それは理屈であって、実際にはそれだけでは事足りません。頚椎7番の捻れも関係しますし頚椎6番、7番、胸椎1番、2番あたりの上下の向きなども関係します。
 これらを整えるために肋骨を見たり、腕や手首の捻れを整えたり、手指先を施術したりと、いろいろな施術を行います。「これだけのことをしないと上部頚椎を整えることができないのに、カイロプラクティックでは本当にコツンとやるだけで整えることができてしまうのだろうか?」などと内心思うこともあります。
 そして、最後は腰椎の動きが柔らかくなるように整えることも重要です。

ストレートネックと腰椎との関係
 背骨はゆるやかな前弯と後弯を繰り返しながら、二足歩行の私たちを支える中心的な存在になっていますが、しばしば腰椎の前弯が適切な場所になくて、本来前弯すべきところが反対に後弯している人がいます。あるいはストレートネック同様に腰椎がストレート状態になっている人は多くいます。これらの原因は普段の座り方や座り姿勢によるものだと思われますが、このような人達は腰椎の前弯がないという理由でストレートネックになっているということもあります。
 といいますのは、いろんな施術を行ってもストレートネック状態が改善されない場合がありますが、そのようなときに腰椎を整えたり、腰椎を適切に使う運動をしていただきますとストレートネック状態が良くなることがあるからです。

脊椎の弯曲

 現在、定期的に来店されている印刷物デザイナーの人がいます。毎日長時間にわたってパソコンでデザインの仕事をしていますが、目がどんよりとして瞼が落ちてくるのが最大の悩みです。落ちてくる瞼を力を使って開けるようにしていますので、眉のところや額の筋肉はこわばってしまい、瞼は開かないのに額の部分は上に引っ張られているような状態になっています。(こういう状態だと「眼瞼下垂」と診断されてしまうかもしれません)
 隔週のペースで来店され、120分のコースを選ばれていますが、疲れ切っているのか、そのほとんどの時間眠っています。私は黙々と施術を行っていますが、目の疲労や頭の疲労と頭皮のこわばり、首の張りなどが特に強く、マウスを使いすぎているのか右手の手指がとてもこわばっていますので、それらを調整するだけで120分の時間がかかってしまいます。首は当然のごとくストレートネック状態です。
 施術が終わりに近づきますと声を掛けて目を覚ましていただくのですが、その後座っていただき目の開け具合などを確認しますと、座ったばかりの時はとても快調なのですが、しばらく座っていますと、また瞼が落ちてきてしまいます。当初は「何でなんだろう?」と理由が見当たらなくて私自身困っていましたが、最近は理由が分かるようになってきました。
 この人は仕事柄、一日中椅子に座り続けて作業をしています。座る姿勢にも問題はあるのだと思いますが、座り続けることによって骨盤周りや腹筋が硬くなっています。そんな影響もあってか腰椎の動きがとても悪いのです。腰椎の前弯は乏しくほとんどストレート状態ですが、それほど硬くなっているわけではありません。もっともっと状態の悪い人はいますが、それらの人達が「瞼がおちてくる現象」を持っているわけではありません。
 ところが、この人は座った状態で腰椎を動かすことができなかったのです。
 「臍や下腹を前に出すようにして、腰椎の部分を反るように動かしてみてください」とやってもらっても腰部を動かすことができないのです。腹筋が伸びないせいかもしれません。そこで私が腰椎に手をあてがって支えとし「これで少しずつ動かしてみてください」とやっていただきますと、「最初は1㎝くらい動かせるかな?」という感じで始まるのですが、次第に少しずつ大きく動かせるようになり、やがて腰椎下部のあたりを支点に動かせるようになりました。そうしますと、目がパッチリと大きく開けるようになりました。
 腰部が硬くて全身的に血流が悪く、目が開かなかったと考えることもできます。あるいは、硬く固定されていた腰椎が柔らかく使えるようになったので、連動して頚椎にも柔軟性が戻り、脳への血流量が増して脳神経の働きが良くなったので目が開くようになった、と考えることもできます。私は後者ではないかと思っていますが。

 このような経験もありましてストレートネックの人に対しては、日々のトレーニングとして腰椎を柔らかく使えるようになるための運動をアドバイスさせていただいています。
 腰椎が硬くなっている人はたくさんいます。腰椎については別の機会に説明させていただくつもりですが、腰椎が棒のように硬くなっている人はかかと重心の傾向にあります。ふくらはぎの裏側がいつも張っていると感じている人はかかと重心の可能性が高いのですが、おそらく腰椎がストレート状態か硬くなって動きが悪い状態になっていると思われます。そういう人は首もストレートネックの可能性が高いですから、首筋が慢性的に張っていて肩こりに苦しんでいるかもしれません。
 腰部が柔らかく動かせるようになりますと、かかと重心は改善され、立ち方が変わり、ストレートネックも良くなって肩こりの悩みは減ると思います。
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 今回はストレートネックを題材に上部頚椎についてお話しさせていただきました。上部頚椎の中でも環椎は直接触れることが難しいこともありまして、その状態を的確に捉えることは難しいのですが、背骨と頭の接点ですからとても重要な存在だと考えています。ですから、首周りや頚椎について違和感や不具合、不調を感じている人は整体的な手法で整えることも一つの方法だと思います。残念ながら整形外科で首の牽引をしたところでたいして意味はないと思います。
 但し、頚椎はとても重要なところですから、安易に整体院や治療院等を選ぶのではなく、慎重に慎重に検討を重ねた上で選んでください。


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 私たちのからだは加齢にともなって不調や不具合を抱えるようになりますが、その代表的な症状の一つに四十肩、五十肩と呼ばれる肩関節周囲炎があります。
 この症状は軽微なうちは、肩を回す(腕を回す)と音がしたり、引っ掛かりや違和感を感じる程度のものですが、状態が悪化しますと腕が上がらない、腕が後ろに回らないなど、腕の動作ができない状態になります。そして、さらに症状が重たくなりますと、じっとしていてもジンジン痛みを感じたり、腕を抱えていないと辛くて耐えられない、ただ寝ているだけでも痛くて眠れないなどの状態になってしまいます。
 腰痛や膝痛や他の症状も同様ですが、症状が軽微なうちに適切に対応しますと症状を悪化させることなく速やかに状態は改善しますが、症状があるにも関わらず無理に動かしたり、負荷を掛け続けたりしますと状態はどんどん悪化していきます。
 肩関節の不具合で犯しやすい過ちは、「なんとなく肩関節がずれているように感じてしっくりこないので、腕や肩甲骨を何度も回してしまった」というものです。気持ちはとても理解できますが、こうすることで筋肉に無理が掛かり、肩関節のずれが大きくなってしまう道を進んでしまいます。

肩関節の不具合は骨格の歪みから始まる
 私たち人間の肩関節は他の四つ足動物に比べると遙かに大きな可動域を持っています。そして股関節よりも肩関節の方がとても大きく動かすことができるわけですが、それは反面、腕(上肢)と体幹との接続があまくなっているということでもあります。実際、骨性の関節があるのは鎖骨と胸骨の関節(胸鎖関節)だけです。ですから肩甲骨の動きも含めて肩関節は歪んで不具合を生じる可能性が高いということになります。

肩関節の骨格


 さて、肩関節を形成している骨格は、肩甲骨と鎖骨と上腕骨です。ですから肩関節の不具合では、まずそれらの骨の状態を確認するところから作業が始まります。これは整形外科でレントゲン撮影をして「骨には異常がありません」というのとはまったく異なりまして、三つの骨がどのような歪み方をしているのかを確認する作業です。
 次に肩甲骨と体幹、鎖骨と体幹との関係を確認します。私たちが腕を挙上するとき、水平近くまでは肩関節の動きだけで可能ですが、それ以上高く、真上まで腕を上げようとしますと肩甲骨を大きく回旋させなければなりません。肩甲骨の動きが制限されているような状態では満足に腕を上げることや、腕を後ろに回すことはできなくなってしまいます。そして同様の意味で鎖骨の状態を観察します。

 ところで、これら上腕骨、肩甲骨、鎖骨を歪め、動きを制限している主な犯人は筋肉です。脱臼などの経験がある場合は靱帯の状態も気になるところです。
 上腕骨や肩甲骨や鎖骨に付着している筋肉がアンバランスな状態になっているのでこれらの骨格が歪んでしまい、肩関節本来の動きができなかったり、腕(上腕骨)をしっかり保持することができず、いわゆる四十肩や五十肩という状態になってしまいます。ですから肩関節の不具合を修正する施術では、手と腕、首、胸と背中の筋肉を整えるという作業が大半になります。

上腕骨と鎖骨の関係
 上腕骨を鎖骨につなげている筋肉には三角筋(前部線維と中部線維)と大胸筋(鎖骨部)があります。実際、肩関節の不具合や肩関節痛で気になるところは、鎖骨と上腕骨の間の距離です。三角筋前部線維の働きが悪くなっている場合、鎖骨と上腕骨の距離が離れた状態になっていますが、この状態では腕を上げる動作の初期の段階で痛みを感じ、腕を上げたり、腕を上げた状態を保持することができなくなります。大胸筋鎖骨部の働きが悪くなっても同じような状況になりますが、打撲をしたなどケガによるもの以外では、あまりそのようなことは目にしません。
 また、鎖骨自体が上にずれたり、反対側に引っ張られていて上腕骨と鎖骨の距離が離れていることもあります。

肩関節前面の大胸筋と三角筋

肩関節痛への考え方と対処
 肩関節に違和感や痛みを感じたときの対処はどうのようにするのが良いのか? 
 四十肩や五十肩になって3ヶ月以上経過している、肩関節の痛みが慢性化してるといった場合は除いて、肩関節に違和感や痛みを感じたときの対処法について説明します。

 まず肩関節痛になった原因が、肩を打撲した、腕を引っ張られた、脱臼や亜脱臼をしたなど、ケガによるものであるならば、すぐに対処をするのが適切です。救急処置としては冷却し、骨折の心配があるのなら速やかに整形外科を受診してください。
 ケガによるものではなく、きっかけもハッキリしないのに何となく肩関節周囲に違和感を感じ、「しっくりこない」と思われるような状況、あるいは肩(腕)をまわすとゴリゴリしたり、少々痛みを感じるようになったのであれば、とりあえず何もしないで1週間ほど様子を見ることをお勧めします。からだの骨格が歪んだことによって肩関節にそのシワ寄せが現れたのかもしれません。そうであれば、1週間ほど待っていればからだの歪みも自然に修正され、肩関節の状態も自ずと改善すると思います。但し、この状態の時に注意していただきたいことがあります。それは肩関節に違和感や不快感を感じたとしてもグルグル肩(腕)を回したり、ストレッチを度々行ったりしないことです。そのようなことをしますと状態が悪化する恐れがあります。「そのままじっとしていれば、元の異常のない状態に戻れたのに、激しく動かしたことによって炎症おこり、四十肩や五十肩状態に突入してしまった」ということが起こり得ます。そして実際、そういう人がけっこういます。

 きっかけも原因も覚えがないのに肩関節に違和感や不具合を感じ、1週間程放置していても状況が良くならないのであれば、それは何らかの理由で肩関節の歪みが固定化してしまったか、肩甲骨や鎖骨及び関係する筋肉の状態がおかしくなっている可能性があります。しかしながらまだ「慢性化している」という状態にはなっていませんので、適切に調整することですぐに状態は改善すると思われます。信頼のできる整体院や治療院にいかれることをお勧めします。(整形外科は微妙です。整形外科の薦めるリハビリは適切でない場合もあって、状態を悪化させることもあります。)

肩関節痛の3つの段階
 「五十肩(四十肩)になったら治るまでに1年半~2年くらい掛かる」というようなことを聞くことがあります。巷では定説のようになっているのかもしれません。しかしながら実際に業務に携わっている私は、全然そんなことは関係ないと考えています。
 肩関節に異常を感じたときにまず考えなければならないことは、何よりも「状態を悪化させない」ことです。私たちは日常生活の中で思いの外、手や腕や肩をたくさん使っています。肩関節に問題がないときは実感がありませんが、肩関節痛になって腕が動かしにくい状態になりますと、そのことが実感としてよく解ります。つまり肩関節をとても頻繁に動かしていますので「肩関節の異常は悪化しやすい」ということになります。
 膝や腰が痛くなったときは「しばらく立ち仕事や歩くことは控えておこう」などと対応することができますが、「しばらく手を使うのは止めておこう」ということはできないのが実状です。ですから繰り返しになりますが、肩関節の異常は悪化しやすいので、悪化させないように心がけることが大切です。
 こう申し上げた上で、肩関節の異常や痛みは3つの段階に分けられ、それぞれの段階で適当と思われる対処法を行ってください。

1.異常が軽微で、違和感や軽い痛みを感じる程度の段階
 なんとなく腕のつけ根(肩関節)に違和感や重苦しさを感じる。じっとしていると肩関節の収まりが悪いように感じるので、ちょいちょい動かしてしまう。可動域に問題はなく腕の動きにも問題はないのだけれど大きく動かすと痛みを感じる。あるいは、腕の動かし始めだけ痛みを感じる。これまでは背中で両手を触ることができたのに、どちらかの手が届かなくなってしまった。
 このような状態は、肩関節異常の軽微な段階、初期の段階です。
 例えば、日々業務でパソコン入力をたくさんしている、マウスをたくさん使っている、というような人は肘が捻れていて手指が疲労したりこわばっていますので、その影響が肩に及んでこのようになっている可能性があります。あるいは噛み合わせや歯ぎしりや片噛みの影響でからだが捻れ、その歪みが肩関節に及んでいるのかもしれません。
 このような状態は好ましいものではありませんが、(肩関節がおかしいことで)肩や首のコリを感じるかもしれませんが日常生活にそれほど支障がでませんので「放って置いても大丈夫だ」という段階ではあります。
 但し上述しましたように、肩関節の違和感が気になって、あるいは首や肩のコリが気になって一生懸命ストレッチをしてみたり、肩を頻繁に回したりしますと、状態を悪化させて次の段階(四十肩、五十肩)に進んでしまう危険性があります。
 「テレビで肩関節を快適にするための運動を紹介していて、それを毎日やっていたら痛みが増してきた」というような人もいます。
 違和感や軽い痛みは筋肉が発するものですが、それは肩関節が歪んでいて、ある筋肉に負担が掛かっているからです。その筋肉は肩関節を保持するために緊張状態にありながらも一生懸命耐えて頑張っているのですが、そこにさらに負荷をかけるようなストレッチや運動を強いますと、耐えきれなくなって損傷状態になってしまいます。すると肩関節はそれまでとは違ったバランスになってしまいますので、「動かすと痛い」「手が上がらない」などの症状が現れます。

 「痛み」は「それ以上伸ばさないで!」という筋肉からのサインです。ストレッチや肩の運動は痛みの出ない範囲で行ってください。そして、そのような運動よりも前腕(肘から先)の筋肉のストレッチや手指の筋肉を揉みほぐした方が効果的だと思います。

前腕のストレッチの要領


2.四十肩、五十肩と呼ばれる段階
 「腕が上がらない」「腕が後ろに回らない」「腕を動かすと、腕のつけ根や肩が痛くなる」など肩関節の運動制限や顕著な痛みを感じる段階は、いわゆる四十肩、五十肩と呼ばれる段階です。
 こうなりますと、自然治癒は難しくなります。巷でいわれる「1年半くらいすれば治る」というのは、実際には状態が治っているのはなく、関節や骨格は歪んだままなのですが、付着している筋肉が「耐性ができた状態になった」ということであり、それまでに1年以上の時間がかかるということです。もっと平たく申しますと「ずれてしまった肩関節や肩甲骨(=変化した体型)に筋肉が馴れるまでに1年以上かかりますが、それで痛みは消えます。」ということです。痛みは感じなくなりますし、日常生活での動作も大丈夫になりますが、肩甲骨や腕の動きは正しくありませんので、軽快で快適な動作は戻っていません。

肩関節(腋窩)の筋肉

 さて、このような状態を本来の快適な状態に戻すためには、整体的な手法が必要になると思います。整体的な手法といっても骨格をバキバキッ鳴らしながら直接動かすような方法ではありません。それはやってはならないことです。
 からだの使い方によって、筋肉には硬く固まってしまったような部分(こわばり)や使いすぎて疲弊し、腑抜けになって伸びきってしまったような部分ができますが、そのようなもので骨格は容易に歪みます。歪みはじめの頃であれば、上記の1.で説明しましたように休養することで筋肉の働きが元の状態に戻りますので、自ずと関節や骨格の歪みも解消されます。
 ところが歪んだ状態でさらに使い続けていますと筋肉に無理が掛かり続けることになりますが、それによって痛みが生じます。そして、痛み止めなどで痛みを感じないようにして、さらに同じように使い続けていますとやがて筋肉に耐性ができるようになって痛みを感じなくなりますが、この時の筋肉は本来の在り方とは違った状態になっています。それは半ば形状記憶のように頑固な状態であり、もはや「時間の経過とともに自然に元に戻る」といった状態ではありません。それは何十年経っても元の状態に戻ることはありません。ですからこのようになってしまった筋肉を元の本来の状態に戻すためには、積極的なアプローチが必要になります。そして、それが私の申し上げる「整体的手法」という意味です。
 つまり、「四十肩や五十肩になったとしても1年半くらい経てば痛みは消えますし、日常生活に支障のない状態には戻りますが、それで十分に治ったということではありません。肩関節周囲はアンバランスな状態のままですので、からだの他の部分(膝など)がおかしくなっているかもしれません。この状態を解消するためには肩関節周囲の筋肉を本来の在り方に回復させる必要がありますし、そのためには整体的手法が必要です。」と私は考えています。

3.じっとしていても耐えがたい‥‥重症な状態
 例えば肩関節で腕を脱臼しますと、(大人であれば)それはとても痛いものですし、その後、腕を抱え込んでいないと耐えられない状態になります。そして五十肩(四十肩)も状態が悪化しますと、これと同じような状態になってしまいます。
 「ただ座っているだけでも腕のつけ根あたりがジンジンしてきて耐えがたくなる」「反対の手で腕を抱え込んでいないと痛くて痛くて」「夜寝ているだけでも腕がジンジンしていまい目が覚めてしまう」などという状態になっているのであれば、それは重症です。

 ここまで症状が悪化しますと施術者として、とても慎重に対応しなければなりません。まずは痛みを感じない状態にすることが第1の目標です。夜ゆっくり眠ることができるようになることから始めます。そして次に普通に座っていられるようになること、腕を抱えていなくてもじっとしていられる状態になることを目指します。
 このようになってしまう一番の理由は、筋肉や靱帯が疲弊したり損傷した状態になってしまったために肩関節に上腕をしっかり保持しておくことができなくなってしまったからです。つまり、腕が肩からぶら下がったような状態になっているために、周囲の筋肉が全部強い緊張状態になってしまい、ジンジンしてしまうのです。肘や手先まで痛みを感じたり、シビレを感じたりすることもありますので、整形外科では「頚椎が‥‥」と診断されるかもしれません。しかし、過去の経験で申しますと、単に肩関節が亜脱臼状態になっているからだと言えます。そして、もっとも多い原因は肩甲骨と上腕を繋いでいます肩甲下筋(けんこうかきん)が伸びた状態になっていることです。野球の投手が「肩を壊す」ときに一番多いのが肩甲下筋の損傷ですが、腕を引っ張られたときに抵抗する筋肉であり、引っ張られる力が強いと損傷してしまう筋肉です。

肩甲下筋03

 五十肩状態なのに無理を重ねていますと肩甲下筋に負担がかかり疲弊した状態になりします。あるいは、犬との散歩などで、予期しないところで不意打ちをくらったように突然腕を強く引っ張られますと、一瞬にして肩甲下筋が伸びてしまうこともあります。
 この筋肉は肩関節の非常に深いところにあるインナーマッスルですが、施術でアプローチしようとする場合、ある程度腕を上げた状態にしないと触ることができません。ところが重症状態になってしまった人は、腕をちょっと動かしただけでも痛みを感じますので、とても肩甲下筋に触れる状況ではありません。それが施術者としてとても苦労するところです。
 肩関節の亜脱臼状態(=腕と肩の間が離れて腕がぶら下がった状態)を改善するためには肩甲下筋の状態を改善しなければなりませんが、その肩甲下筋には手が届かない、そんな苦労です。

 さて、このように重症化した肩関節痛の人に対しては、なんとか3回くらいの施術で、夜ゆっくり眠れるようになっていただければと考えています。そして、その状態にまでなりますと、ある程度腕は動かせますので肩甲下筋にも手が届き、いろいろな施術ができるようになります。そして、上記2.の段階まで戻して、着替えがある程度不自由なく出来るようになったり、洗濯物の干すのはまだ辛いしシャンプーやドライヤーも辛いけどその他の日常生活はできるようになった、といった順序で改善むけて進めていきたいと考えています。こうなるまで1ヶ月くらいの時間はかかるかもしれません。

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 以上が肩関節痛や肩関節周囲炎に対する当方での整体的考え方と施術の概要です。
 対応を間違えますと、上記の1.→2.→3.へと状態が悪化していきますの軽い肩関節の違和感であったとしても注意深く対応していただきたいと思います。そして、3.の状態になってしまった人は、まだまだ我慢と忍耐が必要ですが、3.→2.、そして2.→1.→改善と段階を一つずつ戻るように考えてください。改善を焦りますと注射とか不適切なリハビリ運動などを行うようになり、逆効果になる可能性もあります。
 そしてまた、1.の状態に戻ると痛みも感じなくなりますので、「これでいいや」と思ってしまう人がほとんどですが、肩関節の歪んだ状態は解消されていませんので、その歪みは必ず別の場所に不具合をもたらします。肩と膝は密接な関係がありますので、いつまでの膝の内側の痛みが残ってしまう可能性もあります。ですから、最後まで直していただきたいと考えます。

 また、この肩関節周囲炎の他に肩関節のトラブルとして石灰沈着性腱板炎や肩腱板断裂と診断される場合がありますが、これらは程度次第ですが、整体的手法で対応することもできます。私の考え方として、なるべく手術はしない方が良い、注射針を筋肉に刺すこともなるべく少ない方が良い、というのがあります。皮膚や筋膜や筋肉に傷をつけることは、それだけでハンデを背負った状態になりますので、避けられるなら避けていただきたいと思っています。
 過去に、何十回も腕に注射針を刺されたがために、それで筋肉の働きが悪くなり、当初は石灰沈着性腱板炎だったものが重度の四十肩に移行してしまった人がいました。ご自分のからだのことですから、十分に注意深くあってください。

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 花粉症の時期も終盤にさしかかりましたが、この時期(春先)は季節的な要因で胸に変化が起こりやすくなっています。
 花粉症に関係するからだの変化としては、胸(胸骨)が下がり、それに合わせて鼻(鼻骨)も下がってしまうことがあります。東洋医学では「鼻は肺の煙突」と表現されるほど、鼻と肺にはとても深い関係性があるとされています。アレルギー性の症状として鼻炎(花粉症)と気管支喘息がありますが、ともに肺と関係があると考えますと、肺―胸―胸腺―免疫という一連の関係性が浮かび上がってきます。そして実際、胸骨や胸郭を整えますと鼻骨が上がり、鼻の通りが良くなることがあります。

 花粉症の人も、そうでない人も、多くの人が春先は胸が下がり鼻が下がるわけですが、それは季節的な要因であり、季節の変わり目の影響であり、三寒四温など自然現象による“からだの変化”と捉えるのが妥当かもしれません。
 そして胸骨が下がるだけでなく、胸の筋肉(大胸筋と小胸筋)がこわばって胸郭が狭くり、肋骨の動きが悪くなっている人がたくさんいます。これらの変化は動悸や息切れ(浅い呼吸)などの症状をもたらすかもしれません。

“肋骨の帯”のように働く二つの後鋸筋
 さて、「胃の調子が冴えず、背中に辛さを感じる」という症状の原因の一つとして、背中の筋肉が張っていて肋骨の動きが制限されているというのがあります。これまでの投稿で、背中の辛さや痛みについて、肩甲骨の内側、胃の裏側、肋骨下部など場所別に説明してきましたが、今回はそれらに加えての説明になります。
 背中の深いところに後鋸筋(こうきょきん)と呼ばれる筋肉があります。肩~肩甲骨辺りの深部に上後鋸筋(じょうこうきょきん)があり、肋骨の下部に下後鋸筋(かこうきょきん)があって胸郭の背面を支える働きをしています。学問的には、その働きは「肋骨(胸郭)を上下に動かし、呼吸を補助する」とされていますが、実際は胸郭の上部と下部を“帯で縛る”ようにして安定させたり、動きを制限したりしているのではないかと私は感じています。

上後鋸筋と大胸筋(だいきょうきん)の関係
 強い肩こりや背中のこりを持っている人は左右の肩甲骨の間が盛り上がったように硬くなっている場合があります。肩甲骨周りには表層から僧帽筋(そうぼうきん)、菱形筋(りょうけいきん=大菱形筋と小菱形筋)という筋肉がありますが、通常の肩こりや背中のハリでは、この二つの筋肉が施術の対象となります。しかし、その奥が硬くなっていて指圧しても、揉みほぐしてもなかなかコリが解消しない場合があります。「難治性の肩こり」と表現している施術者もいるようですが、その筋肉が上後鋸筋です。

僧帽筋・広背筋・菱形筋・下後鋸筋

後鋸筋と脊柱起立筋

 この筋肉が硬く盛り上がっている人の多くは胸郭の厚みが増していますが、それは上後鋸筋のこわばりが肋骨を背骨の方に引きつけているからだと考えられます。
 からだの個性として、「胸板の厚い人」「丸っこい胴体の人」「胸が平たく薄い人」「鳩胸の人」「お腹は出ているのに胸は薄い人」等々、いろいろなタイプの人がいます。こういった個性が本来的なものか、それとも胸の変化による一時的なものかを判断しなければなりませんが、胸はいろいろな要素によって刻々変化します。そして、その変化をもたらすのは肋骨に関係する筋肉になるわけですが、上後鋸筋はその一つです。

大胸筋と小胸筋

 胸の骨格である胸郭は前面中央にあります胸骨と肋骨と背面中央にあります背骨(胸椎)でできています。胸部(前面)には大胸筋という力強い筋肉があります。大胸筋は鎖骨と胸骨と肋骨など胸郭前面の骨と腕のつけ根(上腕骨大結節稜)を繋いでいますので、胸骨や鎖骨が変化することで大胸筋の状態が変わったり、あるいは大胸筋の状態によって胸郭の状態が変わったりします。
 そしてこの時期(春先)は大胸筋がこわばっている人が大変多くなるのですが、それによって胸郭の前面が狭くなり、息苦しさや動悸などを招いてしまうことがあります。私の感覚では、このような状態の人の胸は「内側に落ち込んでいる」と感じます。
 両腕も肩のつけ根のところで内側に入り込んでいたり(内旋)、あるいは腕のつけ根の辺り(大胸筋停止部=上腕骨大結節稜)を強めに触ると痛みを感じたりしますが、それは大胸筋がこわばっているからです。

上後鋸筋のこわばり

 「春先は胸骨が下がり、胸郭が内側に落ち込んでいる人がたくさんいる」というのが私の率直な印象です。そして「背中や首のつけ根辺りにツッパリ感を感じる」という人も多くいます。
 そして、この背面上部の突っ張りは上後鋸筋のこわばりによるものだと考えられます。
 胸郭の前面にある大胸筋のこわばりによって肋骨が胸骨の方に引きつけられますが、それは胸骨が相対的に落ち込んだようになるのと同時に、肋骨が内向きに回旋しますので背面では背骨から肋骨が離れるような状態になります。それを阻止しようと上後鋸筋は収縮するわけですが、この状態が常態化して上後鋸筋の慢性的なこわばり状態を招くと考えることができます。

 そして、このこわばり状態が「すっきりしない背中の上部」「帯で締められたような感じ」「呼吸で息が深く入いらない」「仰向けで寝ると首のつけ根から背中にかけて嫌な感じがする」などといった症状をもたらすことになります。
 「強情な肩こりや背中のこり」だと思って、道具を使って一生懸命叩いてみたり、誰かに揉んでもらったりしても、一時的に解放されて気持ち良くなったと感じるかもしれませんが、スッキリ解決することはほとんどないと思います。なぜなら原因の多くは胸の前面にあるからです。

 さて、大胸筋や胸骨の問題で上後鋸筋がこわばっている場合の対処方法について考えてみます。
 繰り返しになりますが、この季節は誰もが、胸の状態が程度の差こそあれおかしくなります。胸はいろいろな事象に反応して変化しやすい部位です。季節の移り変わりを感じますし、精神的なことでももちろん変化します。そして「変化する」というのは、具体的には骨格の形が変化するということですが、それを行うのは筋肉であり、筋膜です。ですから、筋肉と筋膜を整えることで対応することができると考えることができます。
 実際、大胸筋のこわばっている人がたくさんいます。大胸筋は鎖骨の下から腕にかけての広い部分にありますが、その部分を少し強めにマッサージすると痛みを感じると思います。特に腕の近く、腋の下の部分は筋線維が集まっていますので、かなり痛く感じると思います。
 その痛みが軽減するまでマッサージしたり、筋束を掴んでゆるめたりしていただきたいと思います。そうしますと次第に胸が解放されるような感じになり、実際に胸が広がるわけですが、同時に背面の上後鋸筋のこわばりも改善しますので、呼吸が楽になるなどの変化が現れると思います。

大胸筋へのセルフケア

 また普段の顎の使い方として、顎先に力を入れて口を動かしている人も多くいますが、そういう人は顎先(オトガイ)から顎ラインに掛けて硬くなっています。オトガイが梅干しのようになっている人は確実にこの状態だと言えます。このような人は、指圧などでこれらの硬さを解消しますと、胸のこわばりも解消しやすくなり、セルフケアが効果的になると思います。

下後鋸筋のこわばりは背骨を整える
 肋骨の下部には「腹部の帯」のような感じの下後鋸筋があります。解剖学的には息を吐くときに働く呼吸筋、あるいは呼吸補助筋として取り扱われていますが、それよりも上後鋸筋同様、肋骨を安定させる意味合いの方が強いと思います。
 時々「背中の下の方が辛い」と訴える人がおりますが、下後鋸筋のある肋骨下部には腎臓があります。からだに疲れが溜まると腎臓が腫れてしまう人が少なからずおりますので、まずこの部位の「ハリ感」や「辛さ」は下後鋸筋のこわばりによるものか、腎臓の膨大によるものかを識別しなければなりません。
 その上で、下後鋸筋のこわばりによって「背中の下部が張って辛い」「寝ていても背中が反っているように感じる」などの場合は、背骨(下位胸椎と腰椎)を整えることが解決策だと私は考えています。

下後鋸筋のこわばり

 下後鋸筋がこわばっている人の多くは、腰部の背骨が「真っ直ぐ棒のような感じ」です。背骨は椎骨(頚椎7個、胸椎12個、腰椎5個)が椎間板をクッションにして連結してできていますので柔軟性があり、普通は一つ一つの椎骨を触り分けることができます。ところが時々、椎骨間が詰まっていて一本の棒のように感じることがあります。「背骨に余裕がない」と私は思ってしまうのですが、腰部の背骨がそのような状態の人は大抵、下後鋸筋がこわばっています。
 腰部の椎骨に関係する筋肉には大腰筋(だいようきん)と腰方形筋(ようほうけいきん)があります。背骨全体にわたって脊柱起立筋(せきちゅうきりつきん)は関係しますが、下後鋸筋の変調に関係するという意味では、大腰筋と腰方形筋に着目すべきではないかと私は考えています。
 そして腰方形筋は殿部の中殿筋(ちゅうでんきん)と連動しますので、中殿筋が硬くこわばってしまいますと腰方形筋もこわばり腰椎が詰まった感じになります。あるいは、中殿筋の働きが悪くなりますと、太股の骨(大腿骨大転子)が下がってしまうので、大腰筋が緊張して張ってしまい、腰部の背骨に余裕がなくなり、下後鋸筋がこわばって「お腹に帯が巻かれている」ように感じたりすることがあります。そして、実際はこちらの方が多いかもしれません。

 下後鋸筋のこわばりに対しては、脊椎、大腰筋、中殿筋、腰方形筋などの専門的な知識を要しますので、一口にセルフケアを説明することはできません。
 下後鋸筋がこわばっていたとしても、「腹部が帯で巻かれているように感じる」とか、「仰向けで寝ると反っているようで落ち着かない」といった程度の不快感を感じる症状ですから「大きな問題ではない」とも言えます。ですから、実際は無視している人がたくさんいると思います。気になる人は専門家へ相談されることをお勧めします。

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「腕を前に出そうとすると背中が痛む」「車のハンドルを握っていると腕~背中にかけて重たさを感じ、すぐに疲れる」など腕の動作を行うと背中にかけて重たさや痛みを感じる時は、菱形筋という肩甲骨内側の筋肉がこわばっている可能性が高いです。

菱形筋の「こ」と「ゆ」

 菱形筋は小菱形筋、大菱形筋に分けられますが、ともに背骨から出発(起始)し、肩甲骨の内側に付着(停止)しています。収縮することで肩甲骨を背骨の方へ引き寄せる働きをしますが、反対に伸びる(弛緩伸張)ことで肩甲骨の自由な動きを可能にする働きをしています。肩甲骨の動きと密接な関係がある筋肉の一つ(正確には二つ)です。

 二足歩行の私たちは他の四つ足哺乳動物たちとは違って、手や腕を歩いたり走ったりするためにではなく、いろいろな手作業のために使っています。そのために上肢(腕と肩)はとても大きな可動域を持っていますが、それは肩甲骨の動きがあるから可能になっています。

 からだの仕組みとして、もし肩甲骨が動くことができなければ私たちは最大限90°までしか腕を上げることが出来ません。肩(肩峰)と腕(上腕骨頭)がぶつかってしまうので、それ以上動かすことができなくなります。しかしながら実際には腕を真上まで上げることが出来ますが、それは肩甲骨が上方に回旋することによって可能になっています。(https://www.youtube.com/watch?v=CH3UZgg_lCM
 また反対に背中で手を組むなど、腕を背中側にグッと回し込むことができますが、それは肩甲骨が下方に回旋することができるので可能です。また、手の先にあるものを掴むために腕をグッと前に伸ばしますが、それは肩(肩甲骨)が前に出る(前方突出)ので可能です。
 ラジオ体操や準備体操やストレッチ運動は心地良いものですが、そこには普段あまり動かしていない筋肉を動かすことによる心地よさが含まれています。大きく腕を動かす動作は肩甲骨を最大限に動かす動作と言い換えることもできますが、肩甲骨を積極的に動かすことは心地良さをもたらす効果があると言うことができます。
 ところが時々、肩甲骨を動かすことを好まない人がいます。ラジオ体操は嫌いで、ストレッチや運動は面倒だと感じてしまう人は、怠惰という性格的なものもあるかもしれませんが、からだが運動を望んでいないという場合もあります。その理由の一つとして肩甲骨の動きをサポートする筋肉の状態が悪いことがありますが、今回はその中の菱形筋について考えてみます。

菱形筋のこわばりが背中に痛みをもたらすケース
 筋肉がこわばった状態とは、筋肉が収縮したままで上手く伸びることができない状態であると言い換えることができます。そして、こわばった筋線維は「硬くなって太くなる」という特徴もあります。例えば、日々パソコンを操作したり、重たいもの扱う仕事をしている人は手や腕の筋肉がこわばりますが、腕をグッと力強く掴んだり、押したりしますと深部に硬くなった筋肉を感じます。そして、さらに圧力を増やしますと痛みを感じると思います。つまり、こわばった筋肉は圧力を加えると痛みを発する(圧痛)という仕組みになっていますし、伸ばそうとしますと痛みを発する仕組みになっています。

 菱形筋は肩甲骨を背骨に近づける働きをしますので、菱形筋がこわばっていますと、常に、肩甲骨を背骨の方へ引きつける力が働き続けていることになります。そして菱形筋は硬くなり太くなりますので、肩甲骨の内側が厚ぼったくなり、布団に背中を付けることに違和感や不快感を感じるようになるかもしれません。「横向きでないと眠ることができない」理由の一つになります。
菱形筋と前鋸筋の「こ」による背中の痛み

 さらに、パソコン業務や腕を使う仕事を行っている人は前鋸筋がこわばって肩甲骨が外側に引っ張られる状態になっている場合が多いのですが、そうなりますと菱形筋のこわばりによって肩甲骨は背骨側に引きつけられているのに、一方で前鋸筋によって背骨から離れる方向に引っ張れるという状態になってしまいます。肩甲骨を介して菱形筋と前鋸筋が綱引きを行っているような状態です。こうなりますと菱形筋のこわばりは更に強くなりますので、肩甲骨が身動きのとれない状態になってしまったり、じっとしているだけでも背中(菱形筋)が重たく窮屈で、痛みを感じてしまう状態になってしまいます。

肩関節の屈曲動作

腕を前に出すと背中が痛む‥‥大菱形筋のこわばり
 「車を運転すると背中~腕にかけてだるくなり疲れる」「普通に座っているだけなら大丈夫なのに、食事をしたり、手作業をしたり、パソコンをすると腕や背中がつらくなる」といった場合は、二つある菱形筋の下方、大菱形筋がこわばっている可能性が高いと考えられます。
 車のハンドルを掴む姿勢、食事で茶碗を持ち上げたり、手作業で手を前に出すなどの動作では、肩甲骨が少し前に出て上方回旋する必要があります。そのためには大菱形筋が伸びなければなりませんが、筋肉がこわばっているために伸びにくかったり、縮む方向に力が働いていますと肩甲骨が上手く動いてくれなくなります。そのため、ハンドルを掴む姿勢は腕から背中にかけて負担が掛かり、茶碗を持つ姿勢は肩が前に出ないのでロボットの動作のような感じになってしまいます。手を前に出して行う作業は辛さをもたらすことでしょう。

大菱形筋がこわばる理由
 トレーニングジムなどで器具を使い、負荷をかけながら肩甲骨を引く(後方牽引)などの運動をしますと菱形筋がこわばる可能性はありますが、日常生活での動作で大菱形筋や小菱形筋自体がこわばることはほとんどないと思います。
 ですから大菱形筋がこわばっているのは、他の要素との関係や他の筋肉との連動関係でこわばっていることがほとんどであると言えます。そして筋肉の連動関係では、大菱形筋は大腰筋、大内転筋などと密接な関係があります。

大菱形筋と大内転筋と大腰筋

 大腰筋は腰痛に関係するインナーマッスルですが、普通の日常生活でこわばる可能性としては、骨盤(股関節)や脊椎がずれていることが挙げられます。大腰筋は腰椎の腹部側から始まり股関節の大腿骨(小転子)に繋がっていますので、大腿骨が下がったり、あるいは腰椎が上方へずれますと骨と骨の間が本来より遠くなりますので、筋肉が張ってこわばります。実際、大腿骨が股関節で下がってしまうことはよくあることです。(整体院で「脚の長さが違いますね~」などと言う時など)
 この場合は片側の大腰筋がこわばりますので、大菱形筋も片側がこわばり背中のどちらかが違和感や痛みを感じることになります。また、腰椎が上にずれる場合で多いケースは頚椎が捻れているときなどです。右眼ばかりを使っている人は、右眼を動かす外眼筋がこわばりますが、それは頚椎と肩甲骨をつなぐ肩甲挙筋のこわばりへと連動し、同時に頚椎7番を右側に引っ張ります。その影響で胸椎も腰椎も不安定になり、上にずれてしまうことがあります。この場合は両側の大腰筋がこわばりますので、両側の大菱形筋がこわばることになり、両方の肩甲骨の動きが制限されることになります。
 実際、大菱形筋のこわばりを解消するためにコメカミを持続指圧して外眼筋のこわばりをゆるめ、頚椎を戻す施術はよく行っています。

 時々大内転筋がこわばっている影響で大菱形筋がこわばっている人と出会います。内股の人にその傾向は強いかもしれません。内股の人は内転筋のほとんどがこわばった状態になっていることが多いのですが、その原因を探っていきますと、足の外側(小趾側)が硬くなっていることが挙げられます。歩くとき足が「ハ」の字になってしまうので、小趾側が前に出た状態で着地してしまうからだと思います。母趾を除いた4本の足趾を曲げる筋肉に長指屈筋がありますが、この筋肉が大変こわばっていることが内股の人の特徴でもあります。

足の第4骨間筋と大内転筋

 そして足裏の4趾と5趾の間の筋肉(骨間筋)がとても硬くこわばっていますが、それが大内転筋のこわばりの原因だと考えられます。内股でなくても小趾側に重心がかかっている人は同様です。
 ですから大内転筋がこわばっている人に対しては、足裏の4趾5趾間をよく揉みほぐすことと長指屈筋を弛めることが対策になります。

 また、小菱形筋と大菱形筋は拮抗する関係になることがあります。例えば肩に重いショルダーバックをかけることが多い人は、肩甲骨の上部が外側に引っ張られるよう力をかけ続けられているわけですが、すると僧帽筋の上部線維と小菱形筋は疲弊して伸びた状態になってしまうことがあります。小菱形筋が機能不全に陥った状況になるわけですが、そうなりますと大菱形筋は小菱形筋の分まで頑張って肩甲骨の位置を保つように働くことになります。つまり大菱形筋は収縮し続けこわばった状態になります。

菱形筋が収縮できずに痛みを発する場合
 菱形筋のこわばりが背中の痛みにつながるケースについて説明してきましたが、それとは反対に菱形筋がゆるんで収縮できないために背中に痛みを発することもあります。
 腕を真上に上げて大きく背伸びする動作や、胸を大きく開いて肩甲骨を後ろに引く動作では菱形筋が収縮します。肩を回したり、胸を閉じたり開いたりする運動では菱形筋が伸びたり縮んだりするわけですが、菱形筋に上手く収縮できない部分(筋線維)がありますと「余分な肉が余ったような状態」になってしまい、縮めない状態なのに無理やり縮めようとするので痛みを発するという状況になります。

菱形筋と僧帽筋の「ゆ」による背中の痛み

 先日、菱形筋を“寝違えた”ように損傷してしまった人が来店されました。損傷によりこのような状態でしたが、その他にも、過去に太股の裏側を肉離れして大内転がゆるんだままであったり、腰が悪くて大腰筋が上手く働かないために連動する大菱形筋が上手く収縮できない状態になっているなどということもあります。

 菱形筋の問題が原因で背中が痛くなるケースはそれほど割合が高いというものではありません。(肩甲骨の内側が痛いという場合は、前鋸筋の問題が原因しているケースが多い)
 しかしながら「腕を動かすと腕や背中が重い」、「手を前に出しているのがかったるい」という場合は菱形筋が原因となっている可能性が高いと思います。
 そして再度申し上げますが、菱形筋自体を使いすぎてこわばってしまうことは普通の日常生活の中ではほとんどないと起こらないと思います。菱形筋がこわばっている原因のほとんどは、足や股関節や腰などの問題だと考えられます。そうであるならば、腕や背中が辛いからといって腕や背中をマッサージしたところで解決にはつながりません。それよりも足裏やふくらはぎを念入りに揉みほぐしていたら背中の問題が解決するかもしれません。腕を動かすことがかったるいと思われる方は、足裏やふくらはぎのマッサージを試されてみてください。


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 肩甲骨の上部に棘上筋(キョクジョウキン)という筋肉があります。筋肉のガイド書などによりますと、肩関節を安定させる筋肉のひとつであり、腕を横に開く=肘を横に上げる(上腕骨の外転)働きをする筋肉と解説されています。
 “肩こり”は私たちにとって厄介な問題ですが、肩こりの根深い芯はこの棘上筋にあるのではないかと私は最近考えるようになっています。
 “肩こり”は幾つかのタイプに分かれます。
 
肩こりを感じる主な筋肉
 
 首の後側の首筋から肩甲骨にかけての“こり”は肩甲挙筋のこわばりが主な原因で、目の酷使や疲労、肩甲骨のズレなどによってもたらされます。
 皆さんが「肩が凝った!」と言って、ついつい手を当ててしまう肩上部は僧帽筋の“こり”であり、運動不足であったり、肩に力が入りやすい性格の人によく見られる症状です。
 首の横の深い部分、鎖骨の後ろにある凹みや、その奥から首の横にかけてガチガチに硬くなり首を動かすこともつらいと感じる場合は斜角筋や胸鎖乳突筋のこわばりであり、歯ぎしりや噛みしめの癖と深い関係があります。
 少し背中側の両肩甲骨の間や肩甲骨内縁に感じる違和感やハリや痛みは菱形筋のこわばりによるものですが、肩甲骨のズレが一番の原因ですので、それを直さない限り、いくら揉みほぐしても解決しません。

棘上筋01

 さて、棘上筋は肩甲骨の上の方の凹み(棘上窩)にありますが、絵で見るイメージより実際は太く強い筋肉です。「いつも肩に何かをしょっているように感じる」「いくらマッサージしても肩の芯の”こり”が取れない」と感じているのであれば、それはこの筋肉の凝りやこわばりによる可能性が高いと思います。
 棘上筋は角度的に、肩上部の方向から指圧するようにしてほぐすことが適していますので、通常のマッサージでは“表面を舐める”程度しか力を及ぼすことができません。マッサージを受けると“痛気持ちいい”と感じるかもしれませんが、“こり”を改善する効果は期待できないと思います。
 私は指圧によって棘上筋の凝りやこわばりに対応していますが、指圧を始めた最初の頃は「痛いけど気持ちいい」とほとんどの人が仰います。ところが指圧によって表面の凝りが取れ、深部に圧が及んで行きますと「痛~い!」となります。通常、だいたい3分程度は持続的な指圧を行っていますが、それでもなかなか芯まではほぐれません。人によっては10分くらい指圧し続けることもありますが、それでも満足にほぐれなかったりします。それくらいこの筋肉の凝りやこわばりは頑固です。私たちが肩こりと長く付き合っていかなければならない理由はここにあるのかな? などと感じています。

棘上筋の“こり”と“こわばり”
 まず最初に私が使い分けて表現している“こり”と”こわばり”について簡単に説明します。“こり”は筋肉内に含まれている血液や水分などの流れが滞ってしまい、内圧が高くなってコチコチに硬くなった状態を言っています。「中身が詰まりすぎた状態」とイメージしていただければと思います。“こわばり”は筋肉自体が収縮して硬くなっている状態、あるいは収縮する方向に力が働いていて“張っている状態”を言っています。筋肉を使いすぎると硬くなりますが、それは“こわばり”状態です。筋肉が何かの力で引っ張られますと、伸ばされたくないので縮む方向に力が作用します。この状態も“こわばり”です。ストレッチ運動をして筋肉を伸ばしていきますと、あり段階で痛みを感じ「これ以上伸ばすことは無理」と感じたりしますが、それは筋肉が弛緩伸張状態からこわばりに転じたということですので、それ以上伸ばし続けると筋肉を傷める可能性がありますので気をつけなければなりません。
 “こり”は内圧が高い状態、”こわばり”は縮んで伸びない状態、と大雑把にイメージしていただければよいと思います。

 さて、棘上筋のこわばりについて考えてみます。使い過ぎるとこわばり、余計なテンションがかかるとこわばりる、といった観点で考えてみましょう。
 棘上筋は肩甲骨と腕(上腕骨)をつないで肩関節の安定に貢献し、肘(腕)を横に上げる(上腕骨の外転)働きをすると説明されていますが、実は地味な働きをするインナーマッスルです。ですから、実際には肘を上げるという表だった動作よりも、上げた肘を降ろさないように保持する働きをしていると考えた方がよいと思います。
 例えば、本やノートに目を近づけてペンを使い続けている学生は、脇を開いた(肘を上げた)状態で字を書いているわけですが、この姿勢は棘上筋を使い続けている姿勢です。
 (以前に取り上げた)“首肩に力が入りやすいタイプ”の人は、親指と人差し指を中心に物を持つ傾向がありますが、そうしますと自然と脇が開いてしまいます。それはつまり、棘上筋を使っているということです。パソコンのキーボードを打つ時に肘が上がっている人は棘上筋を作動し続けているということです。

 また、棘上筋は腕を肩にしっかり結び付けて肩関節を安定させる大事な働きをしています。例えば重い荷物を持って腕が肩から引き離されるような負荷が掛かりますと、棘上筋が収縮して腕を肩にしっかり留めようとします。この時、引っ張る力が強すぎて棘上筋が耐えきれなくなりますと“腱板損傷”などを起こしやすい状態になり、四十肩や五十肩など肩関節周囲炎になることがあります。
 重い物を持つことの多い人、肩関節周囲炎の人や、かつてそうだった人、そういう人は棘上筋がこわばっているか、あるいは反対に疲弊して筋力が発揮できない状態である可能性が高いと思います。

棘上筋の“こり”
 棘上筋は“肩こりが辛くて思わず手を当ててしまうところ”より少し下の深部にあります。ほとんどの人は凝っていますので、その部分を指圧しますと心地良い痛さを感じます。ところが、この筋肉はイメージ以上に厚みがありますので、深部深部へと指圧をすることができます。そして深部は表層以上にこわばりが強くなっていますので、指圧を続けていますと“心地良い痛さ”から”とても痛い”に変わっていきます。
 また、長さも肩甲骨内縁(背骨側)から肩関節付近まで10㎝以上ありまして、内縁側の方が分厚くなっていますので、そのことを念頭に満遍なく指圧してほぐすことが効果的です。指圧をしている時は痛みを感じますが、少しでもほぐれますと肩から荷が降ろされたような感覚になると思います。
 肩の上面にある筋肉(僧帽筋)のこりはマッサージなどで揉みほぐすことができますが、棘上筋は深部にありますし、角度的に背中側からのマッサージではほぐすことが難しいですから、持続的な指圧でほぐすことをお勧めします。

棘上筋のこわばりはO脚やガニ股を招く可能性
 からだの骨格筋には連動しあう仲間の筋肉というものがあります。棘上筋は肩関節の一番深層にある外転筋ですが、股関節で同じ条件をあてはめますと小殿筋が該当します。そして、実際、棘上筋と小殿筋は連動しあっています。つまり、棘上筋がこわばっている人は小殿筋もこわばっているということです。小殿筋は股関節で大腿骨を外転させ、股関節を外に開く働きをしますので、棘上筋がこわばっている人は股関節が開いた状態になりやすく、股間が広がった体型、ガニ股、O脚になりやすいということになります。

ジャイアン

 ドラえもんのジャイアンは棘上筋と小殿筋がこわばった人を表しています。からだが太いか細いかは別にして、このような体型の人を見かけることがあると思いますが、それは改善できないものではなく、棘上筋や小殿筋を整えることによってスマートな状態になる可能性があります。

インナーマッスルとしての棘上筋
 インナーマッスルを文字通り解釈しますと、体表ではなく、体幹の骨格に最も近い、深部にある筋肉ということになります。ざっくり表現しますと、体表にある表層の筋肉は素速く大きな動作を行う働きをしていて、深層にある筋肉は骨格を支え、表層の筋肉が働きやすい状態を築く役割をしていると言うことができます。筋肉は骨格を足場に、自らを伸縮して骨格自体を動かし、からだの動作としています。ですから骨格がグラグラして不安定な状態ですと、上手に伸縮することができなくなり、からだの動作が不安定になります。インナーマッスルは、そうならないように骨格を安定させる働きをしています。
 棘上筋は肘を横方向に上げ、脇が開いた状態を保持するために働きます。例えば日曜大工で、ドライバー(ネジ回し)を使ってネジを回すとき、普通は肘を少し浮かせ状態で作業を行います。脇を閉じた状態では手先だけの動作になってしまい力を入れてネジを回すことができません。この、肘を浮かせた状態は棘上筋の働きによって保たれています。ですから、もし棘上筋が損傷して十分に働くことができなくなりますと、ネジ回しも思うようにできなくなってしまうということになります。

三角筋と棘上筋01

 棘上筋の表層には三角筋があります。肘を上げる動作では棘上筋とともに三角筋が使われますが、動作の主体は三角筋の方になります。三角筋の中部線維が収縮することによって肘を直角近くまで上げることができます。ところが上げた肘を、その状態で保持する場合は主役が三角筋から棘上筋に移ります。例えば肘を直角まで上げた状態を2分間くらい保つとします。最初の内は三角筋が使われていることが実感できますが、時間の経過とともに肩甲骨の上部が気になりだし、そこが疲労を感じるようになります。この状態が長くなりますと“肩こり”になりますが、それは棘上筋が”こわばった"ということです。
 
四十肩や五十肩(肩関節周囲炎)と棘上筋
 棘上筋は太くて丈夫ですから、そう簡単に疲弊して能力が極端に低下することはないと思います。ところが強い衝撃などによって損傷したり、他の筋肉との関係で酷使状態となって働きが悪くなったりすることはあります。
 肩関節が脱臼したり、あるいはそれに近い状態になった時、棘上筋が損傷することはあります。病名としては“腱板損傷”と診断されるかもしれません。(普段持ち馴れない重い荷物を持つ時は注意が必要です。)
 肩関節は棘上筋を含め、他の回旋筋腱板(肩甲下筋、棘下筋、小円筋)によって脱臼状態にならないように支えられていますが、これらの中のどれかの筋肉の働きが悪くなりますと、棘上筋にかかる負担が増えますので、棘上筋は酷使状態になります。その状態が長く続きますと、やがて負担に耐えられなくなって炎症を起こし、筋肉の能力が極端に低下する可能性があります。こうなりますと肩関節を正常に維持することができなくなり、いわゆる四十肩、五十肩と呼ばれる肩関節周囲炎となってしまいます。棘上筋は肩関節の安定に対して貢献度の高い筋肉ですから、棘上筋の損傷や疲弊による肩関節周囲炎は重症化します。腕が肩からぶら下がった感じになり、ただ立ったり座ったりしているだけでも痛みを感じ続けるようになってしまう可能性があります。
 ですから「棘上筋が損傷したかも」と感じた時には、なるべく安静にして筋肉の回復を待ってください。揉みほぐしたり、リハビリ運動などをしてしまいますと逆効果になって重症化への道を進んでしまいます。痛みをこらえながらの「関節が固まらないように動かさなければならない」は、この状態では全くの逆効果です。
 棘上筋の損傷や疲弊状態では、腕が肩関節から少し落ちた状態(上腕骨が肩甲骨から離れる)になりますので肩関節の動きが悪くなったり、他の筋肉に負担が掛かって痛みを感じたりします。そんな時の対処法としては、肩関節を安定させる意味で肩上部から上腕の外側面にキネシオテープを貼ることをお勧めします。それだけで働きの悪くなった棘上筋を補ってくれますので、肩関節は少し安定します。ストレッチや変な運動療法などをするよりも、テーピングをして1~2週間ほど余計な負荷ををかけることなく安静に過ごしていただいた方が筋肉の回復が速いと思います。2週間程度関節を動かさなくても固まってしまうことはありませんので、筋肉が回復してから運動を始めてください。

 私たちは、精神的にも肉体的にも“実は頑固な存在”だと、私は思っています。いろんな人を施術していますと、“こり”というのは肉体的頑固さの象徴なのかもしれないと思います。そして、もしかしたら肉体的頑固さの“根っこ”は棘上筋なのかもしれないと最近感じ始めています。棘上筋のこわばりや硬さはなかなか取れないのです。少し緩和したかな、と思っても2~3日後にはまた硬い状態に戻ってしまいます。
 棘上筋がコチコチに硬くなったとしても、それだけでは、“肩こり”として感じることはないかもしれません。「押されるとそんなに凝っているんだ! と感じるけど」というのがほとんどの人の反応です。
 しかし、「もし、棘上筋のこわばりや硬さが解決すれば、この上なく“肩が軽い”という感触を感じてもらえるのかもしれない」という思いの元、なんとか効率的なやり方はないかと模索している現在です。

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