ゆめとわのblog

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 これまでのブログで幾度となく古傷による影響を取り上げてきました。今回は、幼児期の骨折による影響で、30年間も苦しみ続けている人の話です。
 Aさんは現在たくさんの症状を抱えていますが、舌の落ち込みとそれに関連して口呼吸・無呼吸・浅い呼吸という点に的を絞って説明させていただきます。
 呼吸は私たちの命そのものとも言えるものですが、その善し悪しは体調や健康に大きな影響を及ぼしますし、実際、呼吸状態の悪い人がたくさんいます。

 Aさんは3歳頃、左肘近くを骨折した経験を持っています。そして幼少期、頻繁に中耳炎を患っていたということです。なかなか症状が治まらなかったので左耳にチューブを入れて固定し、後日チューブを抜くという手術したとのことです。そしてその時、同時にアデノイドも切除したとのことです。
 その後、大人になって睡眠時無呼吸症候群と診断され、その原因は舌が顎に収まりきれないので寝ているときに気道に落ち込んでしまっているからだと医師は説明されたとのことです。
 さらに数年前、下垂体腺腫を患い、成長ホルモンの分泌亢進となって、舌、下顎、肋骨が大きくなってしまったとのことです。
 元々は顎の小さいアデノイド顔貌のような感じだったものが、下顎の肥大化によって受け口のようになってしまい、それも悩みの種となっています。さらに、舌も大きくなったことから無呼吸症候群が悪化したとのことです。
 下垂体腺腫は手術により取り除くことができ、ホルモン分泌も改善されたので舌の大きさは元の状態近くに戻ったとのことですが、下顎の大きさは戻ることなく、噛み合わせに問題が残ったままだということです。

 現在も無呼吸症候群状態が続いていて、睡眠時が息苦しいためにシーパップを使用されているということです。
 また、舌が下がっているために滑舌が非常に悪く、他者と会話していても言葉がでなくなってしまうと仰っていました。
 呼吸では吐くことが苦手で、吸った空気を自然に吐き切れていないことが実感でき、最近では上顎が落ちてき細くなり、ガミースマイルのような状態に変化してきたとのことです。
 まだ30代半ばなのに、老化現象がどんどん進んでいるように感じられて非常に悲しい気分だと訴えられました。

 以上がAさんが大雑把な概略ですが、それを整理しますと以下のようになります。

  1. 3歳頃、左肘辺り(尺骨)を骨折した。
  2. その後、中耳炎を頻繁に発症し、それが慢性化したので左耳を手術した。そしてその時にアデノイドも切除した。
  3. 幼い頃から口呼吸であり、若い頃から無呼吸症候群の状態であり、現在もその状況。
  4. 数年前に下垂体腺腫を患い、無呼吸症候群が悪化して、息苦しくて眠れない状況になりシーパップを使うようになった。
  5. 脳下垂体からの成長ホルモンが分泌亢進状態となり、舌と下顎が肥大化した。手術後、舌の肥大化は改善されたが、下顎は大きくなったままで、受け口のような状態になってしまった。
  6. 舌が下がっているために滑舌はとても悪く、最近は上顎まで下がってきている。

 Aさんは、上記の舌と口呼吸に関係する症状以外に、慢性的な首肩の張りと、O脚および右股関節の痛みで10分以上歩き続けることができないという問題も抱えています。

施術の考え方と実際

 Aさんのいろいろな状況を伺って、私が最初に確認したのは左肘の骨折部位でした。もう30年以上前のことですし、本人も幼かった時のことなので、うろ覚え程度ではっきりとした骨折箇所は指摘できませんでした。ですから、私は手指の感触を頼りに骨折箇所を特定していきましたが、尺骨の肘関節付近に骨折痕があることを感じました。その場所に手指を当てますとAさんの舌が上がる気配を感じました。やはり私の予想は合っていたと思いました。
 おそらくAさんは、左肘を骨折した影響で舌が本来の位置より下がってしまったのだと思います。舌の上がり下がりに関しましては、以前に「上昇する力」という項目で説明させていただきましたが、体内に流れている上昇する力、つまり足元から頭部に向けて上がっていくエネルギーの流れが順調であれば舌が上がり、流れが弱まったり滞ったりしますと舌は下がってしまいます。
 左肘の骨折によって上昇する力が弱まってしまったために、舌が下がって口呼吸の状態になってしまったのだと考えられます。

 舌が下がりますと、自然と口は開いてしまいます。「口を閉じよう」と意識し続けていますと、舌の位置に関わらず口を閉じることはできますが、その場合はそしゃく筋を収縮させ続けることになりますので、いわゆる「噛みしめ状態」を継続することになり、顎関節の不具合や頭痛などの症状を招くことになります。(そして、そのような人はとてもたくさんいます)
 一方、舌が上がりますと、舌は口蓋(口の中の天井)を軽く押し上げる状態になりますが、その力で口を閉じ続けることができますので、顎(そしゃく筋)はリラックスした状態を保つことができます。つまり口は閉じていても奥歯は離れた状態を維持することができ、頬周辺や眉間からも力が抜けますので、副鼻腔を使った鼻呼吸ができるようになります。そして、それが普通の状態になります。

 Aさんの左肘、尺骨の骨折痕をしばらく手当てしていました。すると徐々にAさんの口の中で舌が上昇していくのが感じられました。そして、それまで全然できていなかった鼻呼吸が自然と少しずつ行われるようになっていきました。
 左肘を施術していた時間は10分ほどでしたが、じっとただ手指を当てていただけですのでAさんは何をされているのかわからず不思議に感じたかもしれません。

 「私は、この肘の問題で舌が下がってしまったと思っているのですが‥‥」
 「今、そこを施術しているのですが、舌は上がってきましたか?」と尋ねました。
 すると、これまでの記憶では経験したことのない体験ですから、戸惑いも混じりながら
 「確かに、(舌が)上がってきているかもしれない」と仰いました。

 「少しずつ鼻呼吸が始まってますけど、わかりますか?」と尋ねました。
 Aさんは不思議な世界に迷い込んだような感覚に襲われたのか
 「(左)肘と鼻呼吸と何か関係があるのですか?」と仰いました。

 鼻呼吸に関しては、私なりにこれまでいろいろ試行錯誤してきましたが、ベースになるのは「舌が上がっていること」だと思うようになりました。
 舌が下がった状態であっても、意識的に(あるいは無意識に)鼻呼吸を行うことはできます。”鼻づまり”の状態でなければ可能です。しかし、顎を脱力してリラックスした状態でありながら口を閉じ続けて鼻呼吸を続けるためには、舌が上がっている状態が必要です。
 口呼吸を克服するために、唇にテープを貼って強制的に口を閉じ、鼻呼吸を行うようにするような訓練もあります。私もかつて試したことがあります。しかし、寝ている間に無意識にテープを剥がしてしまうことも度々ありました。息苦しかったわけです。ですからこの方法は、今の私からしますと邪道ということになります。
 王道は舌が上がった状態を築き、そしゃく筋をリラックスさせた状態でも自ずと口が閉じる状態にすることです。そして舌が上がりますと鼻の通りが良くなりますので自然と鼻呼吸ができる状態になります。
 また、鼻骨は鼻の通りに密接に関係します。鼻骨が下がりますと鼻の通りは悪くなりますが、鼻骨は上顎骨と関節していますので、上顎骨が下がった状態では鼻骨も下がってしまいます。
 ですから理想としてましては、舌が上がって口蓋を軽く押し上げ、それによって上顎骨が高い位置を保つことができ、鼻骨も上がった状態を保てることです。

 また、鼻呼吸が重要である理由として副鼻腔に空気(吸気)を通すことがあります。副鼻腔は頬骨の深部に「上顎洞」、額(前頭骨)のところに「前頭洞」、鼻骨の奥に「篩骨洞」そしてさらに奥に「蝶形骨洞」があります。この副鼻腔に空気が通過することによって、空気はゴミを除去され、温度と湿度が調整されて気管や肺に入っても安全な状態に浄化されます。

 口呼吸が健康を害しやすい一つの理由は、口から空気を入れてしまうので副鼻腔における浄化作用を受けない不適切な空気が気管や肺に入ってしまうことです。途中、扁桃腺(ワルダイエル咽頭輪)などがあってバイ菌は除去される仕組みにはなってはいますが、冷たい空気や乾いたままの空気が気管に入ることになりますので、トラブルを招きやすくなります。

 Aさんの訴えには、口呼吸、舌の下がりによる無呼吸症候群、そして浅い呼吸がありましたが、舌が上がることによって口呼吸と無呼吸症候群の改善の道筋は見えました。あとは浅い呼吸について対応しなければなりません。
 呼吸が浅い状態を改善するためには、骨盤の可動性、胸郭の動き、副鼻腔、頭蓋骨の可動性というキーワードが登場します。
 胸郭(肋骨)の動きが悪い状態ですと、胸が広がらず胸式呼吸が十分にできませんので呼吸が浅くなってしまうのは想像しやすいと思います。それは主に肋骨と肋間筋や肋骨に関係する筋肉の状態に依存しますので、そちらを調整することになります。

 骨盤と頭蓋骨が呼吸の深さに関係することは、普通、連想できないかもしれません。しかし、実際は大いに関係します。
 息を吸ったとき、骨盤と頭蓋骨は(平たく言いますと)横に拡がります。そして息を吐き出すとき、拡がった骨盤と頭蓋骨は元の状態に戻ります。そっと耳上の側頭部に手のひらを当てて観察しますとそれが解ると思います。

 もし、頭皮や頭部の筋膜・筋肉が硬くなっていて頭蓋骨が広がらない状態だったとしますと、息は途中までしか吸うことができなくなってしまいます。頭を両手のひらでギュッと締め付けるように押さえた状態で息を吸ってみるとそのことがわかります。中途半端のところまでしか息は入ってきませんので、何となく息苦しさを感じると思います。

 噛みしめ癖、歯ぎしりの癖がある人は、側頭部の筋肉(側頭筋)が硬くなっていますので、頭痛を感じやすいのですが、同時に息が途中までしか入ってきませんので、呼吸にストレスを感じると思います。舌が下がっていて、そしゃく筋を使って口を閉じている人も同様です。
 Aさんの側頭部も非常に硬い状況でした。長年にわたる硬さですから、今、舌が上がったとしてもすぐに頭部の硬さが解消されるものではありません。ですから持続指圧によって側頭部の硬さをゆるめました。

 また、副鼻腔に息が入らないとやはり呼吸は中途半端な状態になってしまいます。
 四つある副鼻腔の中で頬の深部にあります上顎洞と、額にあります前頭洞に空気が通るかどうかを目安として施術を行います。

 上顎洞に空気が通りますと息を吸ったとき頬が涼しくなります。そうなるためには頬骨の間を拡げる必要があります。
 私たちはいろんな表情をしたり喋ったりしますが、それによって鼻周りの筋肉が硬くなってしまい頬骨間が狭くなってしまいます。ですから、軽い指圧などによって鼻周りの筋肉を和らげ、頬骨間を拡げるようにします。それによって上顎洞に息が通るようになります。(あるいは骨格が歪んでいて上顎洞に息が通らない場合もありますが、それは別の施術方法になります)

 ちょっと難しいのは額にあります前頭洞に息を通すことです。額の骨である前頭骨と鼻骨との関係が歪んでいますと前頭洞に空気を通すことは難しくなります。鼻骨が下がっていますと、まず前頭洞には息は通りません。
 眉間に縦皺が入りやすい人は、そこに力を入れる癖があるということですが、それも前頭洞に息が通るのを邪魔する要因です。息苦しいとか、辛いとか、目が見にくいとか、その他の理由で眉間に力が入ってしまう人はたくさんいますが、そのような人は眉間や眉のあたりを揉みほぐすなどしてしてみてください。

 Aさんの場合、30年にわたる辛さのためか、眉間に力を入れる癖がありました。そして舌が下がっていたことで上顎骨も下がり、鼻骨も下がっていましたので、前頭洞にはまったく息を通すことができませんでした。

 ちょっと話が飛びますが、Aさんは上記のこと以外に喉仏(甲状軟骨)から甲状腺のある部分が腫れているように硬くなっていました。
 「このあたりも腫れてますけど、甲状腺の問題はありませんか?」と尋ねました。
 「以前にバセドー病(甲状腺機能亢進症)だったのですが、今は治癒しているとの診断です」という返答でした。
 しかし、私の手には明らかに甲状腺が硬く腫れている感触が感じられましたので、やはり「おかしい」と思わざるを得ません。
 下垂体腺腫を患って、成長ホルモンの分泌が亢進したことに関連して甲状腺ホルモンが分泌過多になる状況になったのではないかとも考えられます。

 口呼吸、副鼻腔が使えない、アデノイド顔貌(アデノイド肥大)、下垂体腺腫による成長ホルモン分泌過多、バセドー病(甲状腺機能亢進)、これらは私の頭の中では一つに繋がってきます。そしてその大元は舌が下がってしまったことだと考えることができます。

 左肘の骨折の影響で舌が下がり、口呼吸となって副鼻腔を使わなくなります。それによりバイ菌が口から侵入しやすくなりますが、それを防御するためリンパ組織であるアデノイドが肥大します。さらに、(全くの憶測ですが)副鼻腔の一つである蝶形骨洞に空気が通過しないことで近接する脳下垂体の状態に何らかの変化が生じたかもしれません。成長ホルモンが分泌過多となり、それが甲状腺の活動に影響を与えてバセドー病を誘発し、薬物による治療で症状は改善されたものの名残は残っていて、それが甲状腺や喉の硬さになっているのではないかと、そう考えてみました。

 ですから、改善方法としましては副鼻腔にたくさん空気が通る状態を築くことになります。蝶形骨洞に空気が流れれば、その刺激を受けて脳下垂体は何らかの変化を起こし、ホルモンの分泌に変化が生じて、甲状腺の状態も変化するのではないかと考えました。
 さらに、長年の辛さのためか、眉間だけでなく喉元にも力を入れていたために甲状軟骨に関係する胸骨甲状筋と甲状舌骨筋がこわばっていました。

 これらの筋肉をゆるめる施術を行いました。そして前頭洞と上顎洞に息がよく通る状態にすることを行いました。さらに蝶形骨の状態を整えることで蝶形骨洞に空気が通るようにする施術をおこないました。
 そうしますと呼吸が深くなり、頭と胸が大きく動くようになりました。そして何分かそのような状態を保っていますと、硬く膨れていた甲状腺がスッキリしだし、喉元や首の緊張が取れていきましたが、「今、サッと肩の張りが取れました!」とAさんは仰いました。長年の辛さから解放された瞬間だと思います。
 
 おそらくAさんにとっては、今回の施術でこれまで経験したことのない体験を幾つかしたと思います。

  • 舌が上がることで上顎骨と鼻骨も上がり、(わざとでなく)自然と鼻呼吸ができるようになったこと。
  • そしゃく筋の力を使わずとも口を閉じていられるので、下顎が少し後退し、受け口の噛み合わせが少し変わったこと。
  • スーッと、鼻孔から吸った息が額(前頭洞)や頬(上顎洞)に拡がり、同時に胸が開いて深い呼吸ができること。

 これらの体験は新鮮だったと思います。

 また、Aさんは上記に記した症状以外に、O脚と股関節の痛みなども抱えていましたので、それらに対しても施術を行いました。

 ここから非常に遠くにお住まいのAさんは、新幹線に乗って何時間もかけて来店されました。
 そして4時間の施術を行いましたが、その中で、症状に対する施術と日々のケアについて教えて欲しいとのご希望でした。ですから3時間施術を行い、残りの1時間をセルフケアのやり方についての説明にあてました。 
 これまでのAさんの経過を考えますと、とても一度の施術で改善されるとは思いませんが、私にできることは精一杯させていただきました。当初から一回限りの施術でとお考えだったようです。「また来ることができるのは来年になってしまうかな」と仰り、また何時間も新幹線に乗って日帰りされるとのことでした。



 古傷による影響は、元気で体力があるときにはほとんど感じられないと思います。ところが体力が落ちたり、加齢によってからだの力が弱まりますと必ず何らかの症状を現すと思います。とい申しますか、そう断言できます。
 しかし、このことは現在の医療ではまったく無視されていると思います。30年前の骨折は骨が繋がっていれば治癒されていると医学は判断されるでしょう。
 数十年前の足首の捻挫が現在の骨盤の歪みの原因になっていたり、目がかすんでしまう原因になっているとは誰も思わないかもしれません。
 しかし、からだを順を追って丁寧に観察していきますと、必ずや治りきっていない古傷が大きな影響を及ぼしていることにたどり着きます。
 より快適なからだの状態を求めるのであれば、古傷をしっかり直すことが要になると思います。

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 無呼吸症候群を気にされている人は最近増えているようです。少し前まではいわゆる「中年」以降の男性に多い症状と考えられていましたが、今は30歳代の男性や、女性の人でも気になっている人が結構いらっしゃるようです。
 また、「しゃべり」に関して、滑舌が悪い、喋っていると息苦しくなってしまう、大きな声が出せない、発声が長く続けられない等々、困っている人もいらっしゃいます。

 今回は、舌に関係して、私が気になること、また最近発見したことなどを説明させていただきたいと思います。

舌のトレーニングは要注意

 無呼吸症候群に対する対処法として舌を大きく出したり、回したりするトレーニング方法が有効であるという情報があるようです。
 そのトレーニング法について、「どう思いますか?」と度々聞かれます。
 そして、この問いに対する私の応えは一貫して「止めてください」です。

 無呼吸症候群の原因の一つとしまして、舌(舌筋)がたるんでいるので、寝ている間にそのたるみが気道に落ちてきて、気道を塞いでしまうために無呼吸状態になってしまうというのがあります。
 ですから対策として、舌筋を鍛えてたるみを解消する必要がある、という理屈のようです。

 そして、その情報通り、真面目に、一年間毎日トレーニングを続けている人(女性)が来店されました。
 この女性の来店の目的は、頭痛と顎周りを中心とした顔面のこわばりと、首肩の張りの解消でした。現在は精神的ストレスもかなり強いとのことで、知らず知らずのうちに噛みしめてしまっているとも仰いました。
 そして、顔のこわばりに対する施術行いながら喉周辺を触ったときに、かなり硬くなっていましたので、「喉周辺が硬いのですが、何かありましたか?」と尋ねたところ、舌のトレーニングの事を話してくださいました。
 「一年間、毎日舌のトレーニングをしていたのでは、喉周辺がこれだけ硬くなるのもわかる」と内心思いました。そして、喉元~舌骨周辺~オトガイ(顎先)にかけのこわばりをじっくりゆるめていきました。
 すると次第に顎周辺~喉元にかけてのこわばりはゆるんでいき、顔のこわばりも解消されて、顔の表情が豊かになりました。首や肩からも力が抜けて「あぁ、ゆるんだあ~!」と仰いました。

 この女性は60歳代ですが、テレビの情報番組を見て「無呼吸症候群にはならないぞ」ということで、舌を大きく出すトレーニングを毎晩数分行っているとのことでした。

 情報番組の情報は、良いような、悪いような、どちらもあると思いますが、気をつける必要があるのだろうと思います。
 普通の人にとって、情報番組の情報が正しいか誤りかを識別することは非常に難しいことです。テレビなどでは、その情報は「正しい」というのを前提としていますし、「テレビが言うのだから、まず間違い」と私たちの多くは思っていますので、つい信じてしまうのは仕方のないことかもしれません。
 ですから、私は、「とりあえず2週間やってみてください」、そして2週間続けても良い効果や変化が感じられないなら、それは止めたほうがいいです、と申し上げたいです。
 からだに対して適切なトレーニングであれば、2週間も続けていれば必ず変化が現れると思います。そして、不適切なトレーニングであれば、速ければその場で、遅くても2週間で、悪い影響が現れると思います。
 今回の舌のトレーニングは、後者(2週間)の方だと思いますが、喉元や顎周辺や顔が硬くなったり、首や肩にコリを感じるようになると思います。

 さて、舌(舌筋)はからだの中でも非常に複雑な筋肉の一つです。
 筋肉には腕や足の筋肉などのように骨格を動かして動作を生み出す「骨格筋」と、食道や胃や小腸・大腸といった内臓系の「平滑筋」があります。
 カエルやカメレオンは舌を長く伸ばして獲物を捕獲しますので、その舌は私たちの手と同じような働きをしています。ですから、舌は骨格筋の側面を持っていると考えることができます。私たちは喋るときに舌を操りますが、それも骨格筋としての性格を現しています。ところが、食べ物を口に入れた後、そしゃくにともなって舌を巧みに使います。そして食塊を嚥下して食道~胃に送りますので、その意味では、舌は消化系の内臓の働きも担っています。ですから舌筋は内臓系の筋肉としての側面も持っています。
 
 ちょっと話は難しくなりますが、手や足を動かす骨格筋は、意志によってコントロールできる随意神経によって支配されています。一方、内臓系の筋肉は意志に影響されない自律神経によって支配されています。ですから舌筋は、随意神経と自律神経の両方の支配を受けている筋肉になります。
 舌筋を鍛えるためのトレーニングで舌を動かし続けたとします。それは随意神経のコントロールですが、舌からしますと普通とは違う種類の随意神経系です。普通は発声したり、喋ったりする種類の神経信号ですが、大きく舌を出し、その状態で大きく動かすのは舌からしますと不自然な神経信号であり行為です。
 このようなトレーニングを続けていますと、やがて舌はその運動を「普通の行為」にするために少し変質するようになります。舌先でいろいろな技をする人がいますが、舌には順応性と可能性があるのだと思いますが、舌筋は変化する可能性に富んでいる筋肉であるとも言えます。

舌を大きく出す行為は舌筋を強く収縮させる行為です。

 舌のトレーニングによる舌筋の強い収縮行為が1回、1日、1週間、あるいは2週間であれば、まだ大きな問題を起こすようなことにはならないかもしれません。ところが、半年、1年と続けていますと、それはある種の変化を固定化してしまう危険性があります。形状記憶に似た状態をもたらしてしまうとも考えられます。
 毎日のようにトレーニングを継続していますと、舌筋はこわばった状態になり、それがやがて固定化してしまいます。そして、そのこわばりはやがて周囲の組織に影響を及ぼすようになり、喉(甲状軟骨、甲状腺)や顎関節周辺や顔面の筋肉にこわばりをもたらすことになります。そして、それがからだのいろいろな不快感や不調を招いてしまう可能性があります。
 舌が強くこわばったり、あるいは反対にゆるんだりして働きが悪くなりますと、それは当然、自律神経経にも影響を及ぼします。スムーズな嚥下ができなくなったり、呼吸が不調になったりする可能性も考えられます。(現に、舌の問題で呼吸が悪くなっている人はたくさんいます)

 わざわざ無理なトレーニングをしなくても、普通に食べて、普通に喋っているだけで舌はたくさん動きますので、それで十分だと私は思います。本来、私たちのからだはそのようにできているはずです。
 誰とも会話することなく、食事でのそしゃくも不足しているのであれば、舌のトレーニングは或る程度必要かもしれませんが、そうでないのであれば全く必要ないと、私は考えています。

舌のトレーニングより、舌の位置が大切

 無呼吸症候群に関して、舌が気道を塞がないようにするためには、舌の位置とむくみの無い状態の方がよほど大切であると私は考えています。そして、現に、そのような結果がもたらされています。
 以前に取り上げたことですが、舌の位置は呼吸と喋りにとって重要です。舌が正しい位置にある人は、口を閉じてリラックスした状態でも口蓋(口の中の天井)を少し押し上げるような状態になっています。それは上顎骨を微力ながら持ち上げている状態ですので、鼻骨も上がり副鼻腔に空気を通しやすい状態にします。また、そしゃく筋など顎に関係する筋肉を作動させなくても口を閉じていられますので、頭部もゆるんだ状態なり、呼吸に合わせて頭蓋骨が拡がることを可能にします。つまり、静かでゆったりとした呼吸が可能な状態になります。

 これとは反対に舌の位置が下がって下の歯を押してしまうような場合(低位舌)は、そしゃく筋を脱力させた状態では、口が開いてしまいますので口呼吸になってしまいます。口呼吸を避けるために口を閉じようとしますと、顎先やそしゃく筋を収縮させることになりますが、それは顔に力が入った状態であり、頭部も硬くなります。上顎骨も下がり鼻骨も下がりますので、副鼻腔には空気が入らず、ゆったりリラックスした良質の呼吸は望めなくなります。
 また、舌の位置が下がっていることは、舌に締まりがなく、ゆるんでいることでもあり、そのゆるんだ舌筋が気道に落ちて無呼吸になる可能性も考えられますし、イビキをかく可能性も高まります。

 さらに、無呼吸症候群を考えるときに、舌のむくみも気になるところです。
 東洋医学では「舌の大きさ」を体質を診断するときの尺度の一つとしています。舌は心臓と関連性のある器官とされていますが、体質が弱くなりますと舌が腫れて大きくなり、口からはみ出すようになると考えられています。そしてその目安が「歯痕(しこん)」と言いまして、舌が歯を押してしまうために舌の縁に歯型がついてしまう状況です。鏡の前でご自分の舌をだして観察したときに、歯型があるようでしたら注意が必要です。
 舌がむくんで大きくなった状態は、当然気道を塞ぎやすくなりますので無呼吸症候群やイビキの原因になります。
 ですから、舌のむくみを解消しなればなりませんが、舌だけのむくみを改善することは不可能です。東洋医学では舌と心臓が密接な関係にあると申し上げましたが、即ち、心臓の働きも含めて全身的にむくみを改善する必要があります。
 (参照 循環のポイント‥‥鎖骨下静脈と鼡径部
 あるいは、口の中で「舌が邪魔」なほどに余っているように感じるのであれば、心臓の状態についても確認する必要があるかもしれません。

舌や周辺の動きに関して大切な首の筋肉

 何年も舌の動きと喋りに関して苦しんでいる青年がいます。まともに喋ることができなくなってしまったきっかけは、英語の発音練習をしていて、かなり舌に無理を強いてしまったことだと本人は仰っていますが、確実なところはわかりません。
 喋ることができなくなって、病院(言語聴覚士)やボイストレーニングのところなどを頼ったそうですが、何の改善も見られなかったようです。
 現在は、舌の動きも戻って言葉は普通に喋ることができるのですが、喋りながらのブレス(息継ぎ)ができないので、息苦しくなって喋れなくなるといった状態です。
 この青年は、長年の苦労によってか、あるいはトラブルを起こしたときのトラウマによるものか、舌や喉を動かすときに、どうしても口先から喉元にかけての部位しか動かさない癖になっています。

 ここで構造的な話題になりますが、学問的な見解として、舌と喉を動かす筋肉は舌骨を境にして二つの群に分かれています。舌骨は喉仏(甲状軟骨)のすぐ上にありますが、舌骨から頭蓋骨の下顎にかけての筋肉群を舌骨上筋群、舌骨から胸にかけて筋肉群を舌骨下筋群と言います。



 顎を開いて開口する場合、顎を閉じる働きをするそしゃく筋がゆるんで伸びますが、同時に、舌骨から下顎骨に繋がっている顎二腹筋(前腹)と顎舌骨筋、そしてオトガイ舌骨筋が収縮して下顎を舌骨の方に引き寄せます。
 また、食物を嚥下して食道に送る際は、食塊を飲み込む最初の段階で一度喉仏(甲状軟骨)が上にあがり、そして下がって「ゴクン」という嚥下動作が完了します。
 この嚥下動作では舌骨上筋群と舌骨下筋群が協働して舌骨と喉仏(甲状軟骨)を動かすことになります。そして唾を飲み込んだり、発声で声帯を動かしたりするときにも、同じように舌骨上筋群と舌骨下筋群が協働して甲状軟骨を動かします。(声楽家の喉仏が大きく上下に動くのはビックリしますが、これらの筋肉の働きによるものです)
 ですから、舌骨上筋群と舌骨下筋群、そして口を閉じる働きをするそしゃく筋の状態が良ければ、舌に関係する動作は滞りなく行えるという理屈が成り立ちます。
 ところが、実際は、それだけでは事足りません。

 舌と喉を動かすためには、僧帽筋や頭板状筋など首の背面の筋肉がしっかり働ける状態にあることが必要になります。

 頚部(首)を前後二つに分けたとき、舌や舌骨や喉、舌骨上筋群や舌骨下筋群は前側にあります。そして僧帽筋や頭板状筋、肩甲挙筋は後側に属しています。(胸鎖乳突筋も後側に属している筋肉と考えます)
 舌や舌骨、甲状軟骨に直接繋がっている筋肉のすべては前側にありますので、前側の筋肉の働きだけで、そしゃく、しゃべり、嚥下などの動作は完了できると理屈ではそうなります。しかし、実際は後側の筋肉が働かないと前側の筋肉がスムーズに働くことはできません。

 話を青年に戻しますが、彼は現在、毎日そしゃく筋や舌骨上筋群や舌骨下筋群を意識的に動かすように努力しています。顎の使い方を工夫したり、息の吸い方や吐き方を自分なりに調整しながら、昨日より今日、今日より明日、ちょっとずつでも前進しようと努力し続けていますが、どうしても首の前側だけに意識を向かわせてしまいます。
 「もっと首の後側を意識して顎を動かしてみて」とアドバイスするのですが、首の後側の感覚が乏しいので、使い方がまったく解らないと言います。

 通常、口を開いて下顎を下げるとき、鼻から息が入ってきますが、この時に同時に僧帽筋がゆるんで肩甲骨が少し下がります。そして頭板状筋は収縮して首の後面をしっかり支える働きをします。もし、頭板状筋が収縮できなかったり、あるいは僧帽筋(上部線維)がゆるまず肩甲骨が下がらない状態になりますと、顎を上手くゆるめることができず、顎を開いても鼻から息を取り入れることができません。

 この状態をそしゃく動作で説明しますと、一般的にそしゃくは「モグ・モグ」ですから、口を閉じた状態のままで顎だけ上下左右に動かしています。
 例えば「モグ」の「モ」のときに顎を開いて、「グ」の時に顎を閉じたとします。普通であれば、「モ」のときに鼻から息が入り、「グ」の時に鼻から息が出ていきます。このような仕組みになっていますので、口を閉じたまま「モグ・モグ」していても息苦しさを感じません。
 しかし、これができない状態ですと、「モグ・モグ」していると苦しくなってしまいますので、口を開けて「クチャ・クチャ」そしゃくするようになってしまいます。

 喋るときも同様です。私たちは喋りながら(=息を吐きながら)、無意識に、合間合間で瞬間的に吸気を行っています。それをブレスと言いますが、効率よいブレスを可能にするためには、首の後側の筋肉の働きが不可欠になります。その他に舌や鼻が下がっていないこと、舌骨筋群の状態が良いこと、頭皮や頭部の筋筋膜が硬すぎないことなどが条件になりますが、僧帽筋をはじめとして、後頚部の筋肉の状態が隠れた要となります。

 この青年が、どうアドバイスしても上手くブレスができず、すぐに息苦しくなってしまい、喉元の動きばかりを気にするようになってしまいますので、究極の策としまして、ベッドにうつ伏せになった状態で顔だけ上げた状態になってもらいました。普通に見ますと姿勢の悪い格好ですから、良いことだと思われませんが、後頚部の筋肉を収縮した状態にしたかったので、あえてこの格好をしてもらいました。

 すると、これまで長い間の苦しみが何処かに行ってしまったかのように、ごく普通に喋ることができるようになりました。後頚部の筋肉を収縮したままの状態にしたわけですが、それによって前頚部の舌骨上筋群、舌骨下筋群、舌筋がリラックスして使えるようになり、ブレスもごく普通にできるようになりました。そして長い時間喋り続けることが可能になりました。
 後頚部の筋肉を収縮させたことで、頭部と頚部をしっかり支えることができる状態になったのですが、それによって鼻腔が拡がり、自然と顎から力が抜くことができるようになったことも要因の一つだと思います。そしておそらく、頭板状筋を収縮させたことで僧帽筋をゆるめることが可能になり、開口と同時に息が吸える状態になったのだと思います。

 「この首の後側の使い方を、からだで覚えて‥‥!。これまでとは全く違った感覚だと思うけど、今までの使い方の癖を脱するために、うつ伏せになり、声を出して本を朗読するなどして、首全体を使って舌を動かす感覚を覚えて欲しい。」と申し上げました。

 その後、うつ伏せ状態を解除して、座った状態になりますと、やはり上手く使えなくなり、息苦しさが戻ってしまいました。しかし、また一つ、前進のための光明が見えました。
 後頚部の状態がこんなにも舌やその周辺の動作に影響を与えるとは私自身思っていませんでした。良い発見ができたと思っています。



 これまで舌についても何度か取り上げてきましたが、私はやはり、とても重要なものだと考えていますし、舌の重要性を益々感じるようになっています。
 舌は味を感じる感覚器官の一つであると同時に、喋りやそしゃくや嚥下の要ともなる大切な行為器官でもあります。
 ですから、大切に、大切にしてください。
 妙なトレーニングなどして舌を壊さないでください。

足つぼ・整体 ゆめとわ
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 これまで「舌」の重要性について、幾度となく取り上げてきました。私は実際に施術を通して舌が持つ強い力と神秘性について体験していますので、その重要性を、おそらく皆さんよりもよく認識していると思います。
 感覚器官としての舌は味を感じるという役割があります。食べ物が「美味しい」とか「まずい」とか私たちは感じて判断しますが、本来、舌が味を感じるのは、食べて良い物と食べてはいけない物を選別するためです。私たちの感覚を満たすことよりも、それ以前に、生命を守るという大変重要で、根源的な役割が舌にあることを私たちはもっと認識する必要があるのかもしれません。
 行為器官としての舌は、「しゃべる」という役割を担っています。例えば泥酔して舌が回らなくなりますと、何を言っているのか聞き取れなくなりますが、このことだけを取り上げましても「舌は発音や発声の要である」と言うことができます。そして発声に関して考えますと、舌の他に、声帯(喉)、気管(呼吸)、唇と頬なども絡んできますが、これらを整えることも舌の状態を整える上で重要な項目になります。
 また、生活習慣病の中で舌と関わる病態として有名なのは無呼吸症候群ですが、実際には、噛み合わせ(反対咬合含む)、噛みしめ癖、口呼吸、緊張(リラックスできない)などの症状とも舌は深く関わっています。
 今回は、舌の状態とからだの緊張との関係を中心に、舌の状態を整えることの重要性について取り上げてみます。

口を閉じてもリラックス状態でいられるために

 たとえば整体的な、あるいは解剖学的な観点で「口を閉じる」ことについて考えますと、一般的にはそしゃく筋と口輪筋(表情筋)の話が中心になるかと思います。
 解剖学関連の書物によりますと、そしゃく筋は下顎を引き上げて顎を閉じる働きをする筋肉だと解説されています。食物を噛み砕き、口の中でモグモグするときに中心になって働く筋肉です。
 顎を閉じるための筋肉ですから、口を閉じる時には当然働き続けていると考えることができます。ですから、寝ているときにポカーンと口を開けてしまったり、昼間でも力を抜いた状態や何かに夢中になった状態になると口が開いてしまうのは「そしゃく筋の働きが悪いのかもしれない」という考えに方に行き着くかもしれません。
 また、顔面神経麻痺などになって表情筋が働かない状態になりますと、口輪筋が収縮できなくなりますので「口笛を吹く」動作のように唇を閉じることができなくなります。子供達の中には「よだれ(涎)」を垂らしてしまう子がいるかもしれませんが、それは唇の締まりが悪いことの現れでもありますので「口輪筋の働きが悪い」という考えに行き着くかもしれません。

 私もこの仕事に携わってしばらくは、そのような考え方をしていました。しかし、「寝ている間も(口呼吸にならないよう)、口を閉じ続けるためにそしゃく筋を働かせ続けるのは疲れはしないだろうか?」、「口をポカーンと開いた、間抜け顔にならないよう、唇を結び続けるのは疲れはしないだろうか?」というとても素朴な疑問を抱き続けていました。
 そして最近になって、口を閉じながらも、唇が開かない状態を保ちながらも、リラックスして、さらにそしゃく筋や口輪筋から力が抜ける状態が存在することを、理屈とともにしっかり認識することが出来るようになりました。
 それは「舌の力によって口を閉じる」というものです。
 良い状態になりますと、自然と舌が上がってきて、口蓋(口の中の天井)にピタッと貼り付くような感じになるのですが、それによって口が閉じるようになります。そして同時にそしゃく筋や口輪筋からは力が抜けて、それらがゆるんでいく感じがするようになります。

 一般の人は、舌の上がり、下がりと言われても何のことかピンとこないかもしれません。そこで、ちょっと試していただきたいのですが、首のつけ根(第7頚椎)を中心に、ガクッと頭をさげるように首を前に傾けますと、相対的に舌が上がって口蓋を押しつけるような状態になるかと思います。下を向いていますので当然、顎(そしゃく筋)に力を入れなくても口は閉じた状態になっています。

 次に、今度は首のつけ根を中心に首を後方に倒して上を向くような状態にします。すると舌が下がって口の底の方に沈んだようになります。そして口も開き気味になりますので、この状態で口をしっかり閉じた状態を維持するためには顎関節の筋肉(そしゃく筋)を働かすことになります。
 首の角度によって舌が上がったり下がったりするのを実感していただけたと思いますが、これと同じような状況が通常の立位や座位の姿勢の時にも起きています。そして、通常は舌が上がっている方が「良い状態である」と言うことができます。

 舌が上がりますと、舌の力を利用して口を閉じた状態を苦もなく維持することができます。そしてさらに良いことは、舌が口を閉じてくれていますので、そしゃく筋をゆるめることができます。すると口を閉じていても上下の奥歯は離れた状態になりますし、口輪筋に力を入れなくても唇も閉じた状態になりますので、口呼吸にならないばかりか、表情もゆるやかになります。つまり、口は閉じていても顎周辺からは力が抜け、表情も緩やかになりますので、とてもリラックスした状態を維持することができます。

噛みしめ癖と舌

 心理的ストレスなど精神的要因で食いしばったり、噛みしめたり、歯ぎしり癖になったりすることはあると思いますが、ここではそれらを抜きにして、あくまでも肉体的なことだけで説明させていただきます。

 噛みしめ癖にしても歯ぎしり癖にしても、その本質はそしゃく筋を収縮させる行為です。
 ですから、そしゃく筋を収縮状態にしないことが対策となります。巷の情報として、あるいは「ためしてガッテン」でも取り上げていましたが、「(意図的に)噛みしめないようにする」「気がついたら奥歯を離す」などが対策として有効だとされているようですが、賢い方法ではないと私は思っています。
 まず、眠っているときに「噛みしめないようにする」ことは、普通に考えて無理です。意志の強さで可能になる場合もあるかもしれませんが、このようなことを思いながら寝たのでは「快適な睡眠」は不可能でしょうし、それによる弊害も現れるのではないかと思います。

 さて、これまでにも説明してきたことですが、筋肉が収縮してしまう=こわばってしまう理由は二つです。一つは筋肉の使い過ぎであり、もう一つは骨格が歪んでいたり、何かに引っ張られているので、その力に対抗するために収縮してしまうという筋肉の条件反射のような状態です。
 スルメや硬い物などを噛み続けますと、そしゃく筋はこわばってしまいます。あるいは、片側ばかりで噛んでいますと、そちら側のそしゃく筋がこわばります。これは筋肉の使い過ぎによって筋線維がこわばってしまった(収縮したままゆるまない)状況ですが、形状記憶に似ているしつこさがあります。
 また、たとえば右側ばかりで噛んでしまう片噛みの癖を持った人は顎先が右側に寄りますが(=下顎が右側に捻れる)、すると下顎骨が左の顎関節で(側頭骨から)少し離れた状況になります。この状況は骨格が歪んだ状況ですが、それによって左側のそしゃく筋はこわばってしまいます。

 また、そしゃく筋は下顎を引き上げる働きをする筋肉ですが、反対の働きをする筋肉=下顎骨を引き下げる働きをする筋肉(舌骨上筋群や舌骨下筋群など)がこわばって常に下顎骨が下方に引っ張られている状態になりますと、そしゃく筋はその力に対抗して顎関節を閉じようとしますので、通常より収縮力を高めた状態になります。そしてこの状態が長引きますとそしゃく筋がこわばった状態、つまり噛みしめた状態と同じになってしまいます。

 そして、さらに今回話題にしておりますように、舌が下がった状態になっておりますと、口を閉じた状態を維持するためにはそしゃく筋を収縮し続けなければなりません。ですから、そしゃく筋がこわばり、噛みしめ状態になってしまいます。

 口を閉じたときに、顎先(オトガイ)が梅干しのようになってしまう状態は、口先や顎先の筋肉を収縮させて口を閉じているということですから、舌が下がっている可能性が高いと言えます。そして、このような人はとてもたくさんいますが、単純に考えて、口を閉じる時に顔に力が入っているということですから、本人の自覚に関係なく、顔の表情筋やそしゃく筋は緊張状態になっています。頭痛を感じたり、首肩のコリを感じたりするのは当然のことと言えます。

舌の位置を整えるために

 「出っ尻・出っ腹」についての投稿で、第6頚椎と第4腰椎の在り方が重要だという説明をさせていただきましたが、舌の位置には第7頚椎と第5腰椎の在り方が関係しているようです。
 これまで、舌の位置を上げるためには「内在する上昇する力」が必要であり、そのためには腹筋の在り方や鼡径部が下がっていないこと、小趾側のアーチが崩れていないことが大切であると説明させていただきました。これらの項目は、舌の位置のことだけでなく、からだを快適な状態に保つうえで大切なことですから是非実現していただきたいのですが、今回は、更に最終的な要として第7頚椎の在り方が重要であるという内容です。つまり、小趾側のアーチがしっかりしていて鼡径部の状態が良く、腹筋の状態が良かったとしても第7頚椎の状態が悪い場合は、残念ながら舌の位置を良い状態に保つことができません。

 専門家ではない一般の人に頚椎の細かいことを云々させていただいてもピンとこないと思いますし、内容が難しいと思いますので、こうして説明させていただいても心苦しいところではあります。
 そこで、先ほど試していただきましたように、第7頚椎を中心に首を前に倒しますと舌が上がって口蓋を押し上げるような状態になることを再度確認していただきたく思います。そして、首を真っ直ぐに戻していただき、第7頚椎の棘突起を上方に引き上げてみてください(=第7頚椎の椎体は下を向く)。この時に同じように舌が上がって口蓋にくっつくような状況になるのであれば、それは元々の状態として、第7頚椎が上を向いていた影響で舌が下がっていたということです。

 私は施術において‥‥、ベッドに仰向けになっていただいた状態の時に第7頚椎を直接操作して、舌がどうなるかを確認します。第7頚椎の椎体を下向き(棘突起は上向き)にしたときに舌が上がって、そしゃく筋や口周辺から力が抜けることが確認できましたら、いかにして第7頚椎をその状態にもっていくかを考え、実行します。
 第2頚椎や第4頚椎が捻れていて第7頚椎が上向きになっていることもあります。あるいは、斜角筋がこわばって第6頚椎が下向きになっていることが影響している場合もあります。その他にも胸郭や胸椎との関係や鎖骨との関係でそうなっている場合もあります。
 そして、この第7頚椎の修正に加えて、鼡径部が下がっていないこと、腹筋がこわばって胸郭を下げていないこと、小趾アーチが崩れていないことなどを確認していき、必要に応じて修正していきます。

舌と直筋系と任脈

 ここで「舌」という筋肉の塊について、皆さんに知っていただきたいことを説明させていただきます。

 解剖学者の三木成夫先生(故人)によりますと、私たちの体幹(胴体)の前面には、骨盤底(会陰)を出発点として正中線に沿って左右二本の筋肉(直筋系)が頚部まで走っているということです。それは外陰部の筋肉であり、腹直筋につながり、胸郭(胸骨)で消えたようになりますが頚部前面で頚直筋(胸骨舌骨筋など)として現れます。そしてその終末が「舌」になるということです。途中にあります横隔膜は呼吸運動の要ですが、それはこの直筋系が体内に落ち込んでできたものであるということです。
 ですから、舌、前頚部(喉)、胸骨(の筋膜)、横隔膜、腹直筋、骨盤底は生物学的に一続きのものであると考えることができ、それぞれが密接に関係し合っているということになります。
 これを東洋医学的な面で捉えますと任脈(ニンミャク)のことであり、生命維持にとって非常に重要なライン、急所のたくさんある場所ということになります。

 舌は、締まりがなくなったり働きが悪くなって弛みますと下がり(沈み)ますが、すると気道を狭くしますので呼吸に悪影響を及ぼす可能性があります。そして、それは単に気道を狭くすることだけでなく、同じ系列である横隔膜の働きも弱まりますので無呼吸症候群になる可能性も生じます。さらに連動して骨盤底の筋肉も働きが悪くなりますので、内臓下垂や泌尿系のトラブル、失禁などの症状を招く可能性もでてきます。
 あるいは反対に、お腹の冷えなどの影響で腹直筋の働きが悪くなりますと、横隔膜の働きが悪くなり、喉の調子も今一で、舌が下がって喋りづらくなるといった不調を招く可能性もでてきます。

リラックスして暮らすために‥‥舌との関係で

 単純な話ですが、奥歯を噛みしめた状態でリラックスすることは無理だと言えます。何故なら、そしゃく筋は全身筋肉の司令塔のような役割を担っているからです。そしゃく筋が収縮しますと自律神経の交感神経が優位な状態になると言ってもいいのかもしれません。
 例えば、そしゃく筋の一つである側頭筋が収縮しますと頭を締め付ける状態になります。頭が締め付けられた状態で、あるいは、しばしば頭の筋肉が緊張した状態で、芯からリラックスすることはとても難しいことです。
 ですから、リラックスした状態で快適な睡眠を得たいと望むのであれば、そしゃく筋がこわばった状態にならないように、噛みしめた状態にならないようにすることを考えなければなりません。そして、そのための望ましい状況が、舌の力で口が閉じ、そしゃく筋がゆるんだ状態でも口を閉じ続けていられる状態を実現することです。

 口が開いた状態で眠りますと口呼吸になります。口呼吸は汚れた空気を気管や肺に入れることになりますので、からだに負担を掛けることになります。免疫系が酷使されて抵抗力が弱まる可能性が生じると思います。
 口呼吸を避けるために「口を閉じて寝よう」と心に決めて寝ますと、そしゃく筋を収縮し続けることになりますが、それはリラックスを遠ざけてしまいます。さらに下がった舌は下の前歯を押し続けますので、噛み合わせに影響が現れ、それも不調や不快の原因になる可能性があります。

 精神的ストレスの多い現在、私たちは知らず知らずのうちに緊張しながら生きています。それは大人に限ったことではないと思います。小さな子供たちも、たくさんの情報を浴びて、頭の中が一杯一杯になっているかもしれません。ですから、せめて肉体的な面だけでも緊張の少ない状態、リラックスできる状態を保ちたいものです。
 私はこれまで、歯ぎしりや噛みしめ癖、手を握ってしまう癖などについていろいろと考えてきましたが、今回取り上げました「舌の在り方」は問題解決のための要になるような気がしています。ですから今は、施術時間に余裕のあるときは、皆さんの舌の状態を整えるようにしています。

足つぼ・整体 ゆめとわ
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 先日、朝、目が覚めますと、左頬から左顎にかけて腫れと痛みを感じ、左下の歯列が前に出ていて、思わず舌を噛んでしまう状況になっていました。その他に、鼻が下がり、おでこも下がっていました。
 私自身としまして「この状態は久々だなぁ」と思いました。暑さで寝苦しく「寝方が悪かったのかなぁ?」、それとも「体調不良になったのかなぁ?」などと半分まどろみ状態の中で考えていました。

 似たような症状を訴えるお客さんはしばしば来店されますが、下の歯列が前に出てしまい、上歯と下歯が当たってしまう状況はやはり不快です。
 「どうしようかなぁ」などと思いながらもベッドの上で自分のからだをあちらこちら触りながら、起床(6時頃)するまでの間(30分間くらい)にからだを整えようと試みました。

 まず、舌を噛みやすい状態を「いつもより舌が下がってしまっている」と感じました。私の舌の定位置(ホームポジション)は通常、舌先が上の歯と歯茎の境辺りにあって、さらに舌の上面前方が口蓋(口の中の天井)を軽く上に押し上げているような感じにあります。ところが、舌の位置が全体に下がってしまったので、舌先が上の歯と下の歯の間くらいになってしまい、歯の間に挟まりやすい状況になっていました。
 そして同時に、左顎の状態がおかしくなっていて、左顎が前方に捻れ出ている感じになっていました。「この状態で、さらに噛みしめていたので左頬から顎に掛けて腫れぼったくなってしまったのかな」と分析しました。

「舌が下がって(沈んで)、顎が捻れて、噛みしめていた。」

「どれが大元の犯人だろうか?」

 そんなことを思いながら、胸を触り、お腹を触り、股関節をさわり‥‥後頭部や額を触っていくうちに、「どうも胸が怪しい」‥‥という結論になりました。
 肋間筋(内肋間筋)がこわばってしまい、胸が閉じて、更に下がっていました。
 「どうして肋間筋がこわばっているのだろう?」と思いながら、前日の仕事内容を思い返してみました。
 「そういえば、(筋肉の)硬い人がいて、揉みほぐすのにずいぶん力を使ったな‥‥」
 「きっと手が原因だ。親指と人差し指を使いすぎてバランスが悪くなってしまったのかもしれない」と思いました。
 それで左手の「合谷(ごうこく)」というツボ周辺を指圧しますと、コリコリに硬くなっていました。
 その後、しばらくの間(5分くらい)合谷やその周辺を指圧し続けました。すると沈んでいた舌が少しずつ上に持ち上がってきます。前に突出していた左の歯列も後退していきます。噛み合わせが改善されていきました。
 そして、右手も同じところを指圧し続けてみましたが、するとすっかり舌も顎も良い状態に戻り、胸の状態も良くなって、下がっていた鼻や額も良い状態になりました。
 あれやこれやと20分以上かかったと思いますが、いつも通りの状態で起床することができました。

気になる舌の位置
 顎の開け方と顔の下がりの関係、舌のポジションとしゃべり方や首肩のコリとの関係などについて、過去に投稿させていただきましたが、その後も「舌の状態は気になる」という思いを持ち続けながら施術を行っています。
 そして一つの方向性として「舌の下がった状態は改善が必要で、舌が上がるようにからだを整える必要がある。」という結論的なものを感じています。

舌の位置2

 以前にも記しましたが、顔が下がるのを防ぐために舌が口蓋(口の中の天井)を軽く押し上げる働きをします。そのためには舌の定位置が上がった状態でなければなりません。舌が下がった状態では、ほぼ間違いなく鼻や額が下がった状態になってしまいますので、顔が重力に負けた状態になりやすいと言えます。
 女性にとっては気になることですが、加齢とともに筋・筋膜の働きが弱くなりますので、重力に負けた状態になり、頬が垂れ、目尻も口角も下がり、からだの肉にしまりがなくなってしまう‥‥という自然現象があります。自然の流れなので「仕方がない」ことではあるかもしれません。ところが、例外的な人がいるのも事実です。加齢による変化が少ない人です。
 エステなどに頻繁に通って素肌の手入れをしたり、あるいはジムなどでトレーニングをして筋肉を鍛え、柔軟性を維持して引き締まった状態を維持する努力をしている人もいます。ところが、そんなこととは全く無縁な生活を送っているのに重力に負けない状態を保っている人がいます。その理由はどこにあるのでしょう、気になるところです。

上昇する力
 ところで、鳥は地球の重力に逆らって空に昇っていきます。最初は羽を羽ばたかせて上昇するかもしれませんが、上昇気流に乗ってしまえば省エネでもどんどん上昇していきます。
 “上昇気流”は自然現象ですから、自然の中に重力に逆らう力と原理が存在していることがわかります。
 そしてもう一つ、“毛細管現象”という重力に逆らう自然現象があります。「細い管の中の液体は上昇していく」というのが毛細管現象の意味です。
 植物は地中に根を張って養分や水分を吸収しているわけですが、ポンプで吸い上げるような動力を使っているわけではありません。根という細い管の中に水分が入りますと、それは毛細管現象の原理によって根の中を上昇していきます。そしてその水分は地上を越えてどんどん上昇していき、高いところにある葉に届きます。葉は地中から届いた水分と空気中の炭酸ガス(二酸化炭素)と太陽の光を利用して光合成を行い、自らを養う栄養と大気中に放出する酸素を生み出します。
 私たちのからだの中にも「細い管」である毛細血管が隅々まで隈無く存在しています。ですから毛細管現象が体内で起こっています。
 頭の天辺まで毛細血管は張り巡らされていますので、血液は確実に天辺まで登っていきますが、それは心臓のポンプ力(=血圧)によるものではありません。それは毛細管現象の原理によって届いています。ですから、私たちのからだの中にも重力に逆らって“上昇する力”が内在していることがわかります。

 また、自然界にはまったく重力を無視して、上昇しかしない物質があります。それは“火”です。ロウソクの炎は下に向かうことも、横に向かうこともありません。無風状態であれば、ただただ真上にだけ向かいます。
 ここからはイメージ的な話になりますが‥‥もし私たちのからだの細胞の一つ一つの中に火の原理がたくさんあれば、私たちの細胞は重力に負けることなく存在することができるという理屈になります。
 火は燃やすことによって生じますが、私たちのすべての細胞の中にはミトコンドリアがいて、酸素を使って燃焼の仕事を行っています。ミトコンドリアは私たちが呼吸によって取り入れた酸素を燃やして(酸化反応)有機物(糖質や脂質)から細胞の活動に必要なエネルギー物質をつくり出しています。ですから、常に酸素を必要としている私たちの細胞は、常に燃焼し続けていることになり、常に火の原理を生み出していると考えることもできます。
 大人になって、高齢になりますと食が細くなりますが、それは、もうそれほどエネルギーを必要としないという意味でもあります。育ち盛りの子供達や若い人たちは食べてもすぐにお腹が空き、いくらでも食べられそうな感じですが、それは新陳代謝を活発にして成長しなければならないため、多くのエネルギーを必要としているからです。ミトコンドリアが多くのエネルギー物質を生み出すために酸素と水とたくさんの有機物を必要としているからです。
 ですから、子供達は大人や高齢者に比べて体内に火の原理を、つまり上昇する力をたくさん持っていることになります。それが頬や皮膚や筋肉が重力に負けない理由であり、ピチピチと締まった細胞を維持している理由であると考えることもできるのではないでしょうか。

舌の位置と上昇する力の関係
 さて、「顔が下がらないようにするためには、舌の位置が下がらないようにする必要がある」という考え方をしますと、「それでは、舌の位置を良い状態に保つためにはどうすればよいのか?」という疑問がやってきます。

 まず、からだの歪みが原因で舌の位置が下がってしまうという現象があります。
 例えばお腹が冷えますと、腹筋がこわばってしまい、収縮したまま伸びない状態になってしまうことがあります。そうなりますと、胸を骨盤の方に引っ張り、喉を引き下げ、同時に舌も引き下げてしまいます。そして、鼻も、額も引き下げられて頭痛がしたりします。この場合の解決策は、腹筋を本来の状態に戻すことです。お腹を温めることは有効ですし、ストレッチして腹筋を伸ばすことも少しは効果があります。腹筋の状態が戻れば胸の位置も、喉の位置も、舌も、みな本来の状態に戻りますので問題は解決します。そして、このような状態、つまりからだの歪みにより顔が下がるなどのトラブルはよくあることです。
 次に、からだの歪みが原因ではなく、その他の要因で舌が下がってしまうことでは、東洋医学の経絡(けいらく)やツボといった“気の流れ”系のことでも考えられます。このたび私が手のツボである“合谷”やその周辺を指圧したことによって舌の位置が戻ったのは、この部類に入るかもしれません。
 その他には、心理的な問題といった精神的要因で舌の位置がおかしくなってしまうことも考えられます。舌は“喋り”に深く関係する器官ですから、「内向的で喋りが苦手」「会話がストレス」といったことは舌の状態に影響を与えます。無呼吸症候群やイビキがストレスの問題だと感じているのであれば、それもまた精神的な問題が舌の状態に影響していることになります。

 これまで私が舌の問題に対して施術してきた経験で申し上げれば、問題の大多数はからだの歪み、つまり筋・骨格系の問題が原因です。ところが、時々その他の問題が原因になっていたり、からだの歪みを修整しても問題がスッキリ解決しないこともあります。「なかなか舌の位置が戻らない」と感じながら手間取ることもありました。
 そんな時は、いろいろと考えを巡らすのですが、その中で浮かび上がってきた一つの思考が「上昇する力が不足しているのかもしれない」というものです。

 子供時代の体温は大人の今より高いものでした。それを単純に考えますと、大人よりも子供の方が「火の要素が強い」という見方ができます。
 食欲が旺盛で、たくさん食べて消化の火をたくさん燃やしていた若かった頃は、頬や口角が下がることも、ほうれい線が気になることもありませんでした。しかし、いつの頃からか「顔の感じが変わりはじめ、目元がスッキリしなくなり、ほうれい線が気になるようになった」という人も多いかもしれません。

 からだに内在する“上昇する力”が、顔やお腹や背中の肉が下がることを防いでいる、という考え方はほとんどないかもしれません。そして、そのバロメーターとなるのが舌の状態であると私は考えていますが、現在のところ、まだそれが「確定的である」と言える段階ではありません。
 しかし、例えば椅子に座った状態で骨盤を後方に寝かせるようにして背中を丸めますと、舌先は下の歯のところに落ちてしまい鼻も顔も下がりますが、骨盤を立たせて(仙骨の前傾)背筋が自然に伸びるようにしますと、舌の位置が上がって本来の場所に戻り、鼻と額(顔)も上がるという現象が起こります。
 私事ですが、骨盤を立たせた状態を継続しながらパソコン操作をするのは疲れますので、しばしば骨盤を寝かせて背中を丸めたくなります。しかし、しばらく背中を丸めた状態でいますと息苦しくなってしまいますので、ちょくちょく骨盤を立たせて舌が上がった状態になりたくなります。すると一気に空気が入ってきて呼吸が楽になり、気が休まります。
(但し、からだが歪んでいる人は、このような反応にならないかもしれません)

 このような現象をどう捉えたらよいでしょうか?

 私は、骨盤を立たせて座る姿勢によって“上昇する力”が発動するのかもしれないと考えています。つまり、言い換えますと、毛細血管における毛細管現象が活発化し、細胞内でのミトコンドリアの活動が活発化するようになるではないかと、そのように考えています。

“オトガイが梅干し”の人は舌が下がっている
 整体の仕事において呼吸を整えることは非常に重要なことです。呼吸が楽にならなければ、肩こりや腰痛が解消したところで、芯からリラックスすることはできないからです。ですから、施術中は常にお客さんの呼吸を観察し続けています。
 そして、呼吸が楽になった状態の目安として「オトガイ(顎先)から力が抜けているかどうか」を観察します。顔(下顎)の下がっている人は口を閉じるときにオトガイ周辺の筋肉を収縮させるようになります(オトガイが梅干しのようになる)。つまり、口や顎周辺に力を入れないと口が閉じられない状態です。
 ところが、舌の位置が上にある人は、力を使わずとも自然と口を閉じることができます。舌先あたりが口蓋を軽く押し上げているような状態になっていますと、その動きに乗じて自然と口が閉じる感じです。ですから、このような状態にある人のオトガイには梅干しはできません。
 舌が下がっていますと息苦しさを感じます。舌が上がりますと呼吸がリラックスします。ですから舌を上げて顔を上げ、呼吸を楽にするために、お客さんのオトガイを観察しながら、梅干しがなくなるように施術を行っているというのが現状です。
 ついついポカ~ンと口を開いてしまう人は、おそらく舌が下がっているのだと思います。その状態がみっともないと感じるので、無意識に力を使って口を結ぶような感じになっていると思います。

 実際のところ、下がっている舌が上がるように調整することは可能です。それほど難しいことではありません。ところが、日常生活を送り続ける中で、その良い状態を維持することは「難しいようだ」と私は感じています。
 生活習慣の中に舌を下げてしまう要素がある、あるいは体質的な要因で舌が下がってしまう、という弱点を克服するために生活の在り方を“矯正する”という方法もあると思います。
 そのように指導するトレーナーや医師やあるいは整体師がいると思います。ところが私は、そういうやり方はどうも合点がいきません。
 舌の上がった良い状態を維持できないのは、力が足りない、つまり内在する上昇する力のが不足していることが根本的な問題だと考えてしまいます。その力が充実している状態であれば、少々からだが歪んでいたり、過去の古傷がマイナスの影響力を持っていたとしても、それらの影響を悠々とはねのけて快適な状態を維持できるようになると考えています。

 “上昇する力”については、私の認識はまだまだ不確定な段階ですし、「○○すれば確実に上昇する力が増強する」というものを掴みきっているわけではありません。
 今はまだ途中の段階ですが、また進捗状況を報告させていただきたいと考えています。

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 そしゃく筋は全身筋肉の司令塔のような役割をしているので、食事をよく噛んで食べることがとても重要であるという話はたくさんしてきました。それはその通りなのですが、もう一つ、とても潜在力を秘めた存在を発見したような気持ちになりました。それは“舌”です。
 舌やその周辺のトラブルで来店される方は時々いらっしゃいますが、このたびの方の場合は私もビックリしました。舌が強固にこわばってしまったのですが、そのこわばりを少しずつ弛めていく過程でからだが驚くべき反応をしました。現在、その驚くべき反応は通り越した段階ですが、それでも施術する度にいろいろな反応が現れています。今回はこのことを取り上げて改めて“舌の力”について考えてみます。

 その方が初めて来店されたのは3ヶ月ほど前です。今から7年半ほど前に、英語の発音練習をしていて、素速く舌を動かす訓練をしていたときに突然、発声やそしゃくや嚥下に異変が現れたということです。その後、顔の筋肉を動かすことができなくなり、呼吸も普通にはできない状態に陥ったとのことですが、7年半の間、あらゆる病院や治療院などを巡ったようです。ところが症状はほとんど改善さることもなく、改善の兆しも見つからなかったようです。おそらく私のところにもそれほど期待を持って来られたわけではないと思います。
 最初にお会いしたときは、会話することもままならない状態で、顔の筋肉はほとんど動かすことができない状態でした。顔の表情をつくる筋肉(表情筋)を動かす顔面神経は機能していませんでしたが、顎を動かしてそしゃくする筋肉(そしゃく筋)も動かせませんでした。そしゃく筋をコントロールしている三叉神経の働きも悪い状態だと見受けられました。また横隔膜も動きませんでしたので呼吸も大変浅く、「どうやって生きてきたのだろう?」と思わず思ってしまったほどです。
 非常に強くこわばっていた舌でしたが、その舌を上下に動かすことで顎を閉じたり開いたりして食物を噛み、舌の上下運動を使ってなんとか食塊を飲み込んで食事を行っていたということです。私たちのからだは“結構しぶとく”できているようです。顔の筋肉が全滅の状態でも舌の動きだけは確保できて、それで食べ物を食べて命を維持することができるのですね。
 会話することもままならない状態ですから、なるべく他人と会話をしない仕事を選び、夜間働いて昼間に来店されるという生活パターンで、最初の2ヶ月間はほとんど毎日来店されました。

 舌の硬結、顔面神経、三叉神経、横隔神経という四つの問題が先ず私の頭の中に浮かびました。この中でも一番最初に解決しなければならないと考えたのは横隔神経に関連して呼吸の問題でした。極端に表現すればこの方の呼吸は”口先呼吸”でした。肺まで空気を入れることができず口の中入れた空気を喉の力を使ってやっと肺に届かせるといった状態でした。「まず肺で呼吸できる状態にしなければ‥‥」と考えました。以前にも説明しましたが、舌と横隔膜は密接な関係があると私は考えています。舌が硬ければ横隔も硬くなっているはずです。また、横隔膜をコントロールしている横隔神経は首(頚神経)から出ていますので、頚椎の状態は横隔膜の働きに影響を与えます。
舌のつよいこわばり
(来店から2週間ほどしての画像、呼吸はまずまずできる状態になっている)

 この方は喉仏(喉頭隆起)がかなり上にあって、更に顎先(オトガイ)と喉仏の間隔が狭い状態でした。舌(舌筋)が不自然に巻くように硬くこわばっているため、舌骨と共に喉頭隆起を引き上げ、オトガイを引きつけていました。舌骨は頚椎3~4番の前方に位置していますが、それが舌筋や舌骨舌筋の強いこわばりによってオトガイの方に引っ張られているため、頚椎3~4番も前方に変位していました。これによって横隔神経の働きも鈍くなっているのではないかと考えました。ですから、まずは舌骨の位置が少しでも後退して、頚椎の並びが自然な状態に近づけるようにと施術を行いました。2~3回くらい施術しますと、次第に横隔膜が動かせるようになりました。まだまだ不十分な状態ですが、肺に空気が入るようになり浅いながらも胸呼吸はできる状態になりました。

 顔の表情筋を動かす神経は顔面神経です。顔の皮膚感覚を支配しているのは三叉神経で、そしゃく筋を動かす神経は三叉神経です。この方の表情筋は動かせないばかりか皮膚感覚も鈍くなっていましたので、そしゃく筋が動かせないことも合わせて考えますと、やはり顔面神経、三叉神経ともに状態が悪いと考えられました。顔面神経は頭蓋骨の表面上に現れていますので施術も可能ですが、三叉神経は深部にありますので直接触れることはできません。
顔面神経02
(顔面神経:耳のすぐ下から現れ、耳下腺の中を通って顔表面の表情筋をコントロールする)

 「どうやったらいいのだろう?」と思いながらも顔面神経の働きが良くなるようにすることから始めることにしました。とても硬くなっている耳下腺(顔面神経がその中を通っている)をゆるめ、すかっりゆるみきっている表情筋やそしゃく筋への施術を行いました。変化が現れるまで数回の施術を要しましたが、そのうち表情筋を動かせる部分が現れ、皮膚感覚もはっきりするところと鈍いところが混在するような状態になりました。少しの変化も本人には希望の光です。当初の2週間くらいはちょっとずつ変化が現れるという経過でした。毎回の施術はほとんど同じ内容でした。硬くなっている舌や周辺の筋肉をゆるめ、耳下腺をゆるめ、表情筋やそしゃく筋を施術するといった内容でした。

 すると突然大きな変化が現れました。舌をゆるめているときに、口の中で急に舌が暴れ出したのです。“暴れる”という表現がぴったりの現象です。そしてそんな状況が2~3日続いたと思いますが、舌の暴れ方がいきなり強くなり、それはからだ全体を大きく揺らすほどの力でした。首が激しく振れだし、肩が激しく前後に動きだし、腹部や足までがドタンバタンと動きだしました。その力があまりにも強いので、舌を施術している私の手が何度もはじかれてしまいました。すると、それまで顎の奥の方に引き込まれていた喉が前に出てきました。「喉が本来の位置に戻ろうと動いている」と施術をしながら私は感じました。そしてこの時に「舌にはこんなに強い力が内在しているんだ!」と私は驚くとともに新たな発見をした気分なりました。普段は喋ったり食べたりするときに動いているだけの舌ですが、その内在している力はからだ全体を激しく揺り動かしてしまうほどの力です。
 施術を終えると、明らかに喉仏の位置が下に下がっていることがわかりました。普通の人と比べるとまだまだコチコチに硬くなっている状態でしたが、私も本人も改善に向けて希望の光が大きくなったと感じた瞬間でした。

 この大きな変化によって、それまでは口先だけで言葉を発していた状態が、口を動かして会話ができる状態になったと私は感じました。ただそしゃく筋の働きは戻っていませんので、口を開けたり閉めたりするのはやはり舌で行っている状態でした。ですから舌にはものすごい負担がかかり続けています。私たちが「オ」を発音するときのように唇と舌を使って口を開き、舌を口蓋(口の天井)に押しつけるようにして口を閉じる動作を行っていました。表情筋が動かないので「イー」と口角を横に広げることはできません。「アー」と顎を開くこともできません。この状態で言葉を喋るのはとても疲れることです。
 せっかく舌や喉に大きな変化が現れたわけですから、この変化をバネに確実に前進していかなければならないと私は感じました。そのためには舌の負担を減らさなければなりません。酷使する状況が続けば舌がゆるむのを期待することはできません。
 本来、口を閉じる働きを担っているのはそしゃく筋です。そして口を開くのは頬の筋肉や喉周辺の筋肉(舌骨上筋・舌骨下筋)の役割です。ですからそれらの筋肉が働きを回復すれば舌にかかっていた余計な負担は減ることになります。
 そしゃく筋が動くように! 喉が上下に動くように! これが次の段階の課題です。

 普通の状態の人はそしゃく筋を使って食べているので、そしゃく筋が動かない状態で食物を噛むということがどういうものか私には想像できませんでした。
 そこで「どうやって食事しているの?」と尋ねますと、「口も開けないので、口先に食物を入れ、舌を上に押しつけるようにして下顎を動かして噛んでいる」ということでした。
 施術を続けていくうちに喉の方は少し動くようになり、下顎を引き下げる動作ができるようになってきました。「それでもやはり舌の力が主体となって顎を下げて口を開いている。もっと大きく開こうとすると、舌の奥の方が盛り上がってしまい、それ以上下げることができない」という状態がしばらく続きました。「咬筋(そしゃく筋)は少し動いているように感じる日もあれば、やはり動いていないと感じる日あるけど、少しずつは前進しているように感じる」とのことでした。

 7年半前に数日間発音練習(本人の弁では「吹き上げるように舌を使い続けた」ということです)をしたら突然舌が反乱を起こしたようにおかしくなり、顔がおかしくなってしまったわけですが、7年半という長い年月、舌を酷使し続けた結果このような状態になってしまったのだと私は感じました。
 それでも最初の来店から2ヶ月が経過する頃からは会話もかなりできるようになり、食事では「万全ではないけどそしゃく筋を使って噛んでいるように感じる」というほどになりました。
 2ヶ月間、毎日のように60分間ベッドに寝て、舌をゆるめ、耳下腺、表情筋、そしゃく筋をじっと施術することを繰り返しただけですが、外見上は普通の人と変わらないように感じるほどになりました。しかしその頃から、起き上がることができず施術時間に間に合わなくて来店できなくなる日が現れるようになりました。舌の回復とともに体調に大きな変化が現れ「ぐったり寝入ってしまい目覚まし時計が鳴っても起きることができない」ということでした。
 「舌はこんなにもからだに影響力が強いのか!」というのが私の感想です。
 現在、3ヶ月が経過しましたが、週に3日程度の来店ペースになっています。それでも確実に回復に向かって進んでいますし、来店される度に顔つきや顔色にも変化が感じられますので、私自身「なんとか役に立てている」と実感しています。

 これまでも舌や喉、発声や滑舌などに問題を抱えている人達が来店されました。その中には声楽家や声優さんや声を仕事にしているプロの人もいます。その人達は微妙な違和感にも敏感です。ですからとても繊細に相対してきましたが、ここまで重症の方は私にとって未知の領域でした。
 この方は目を動かすこともできませんでした。今でも「大きく動かそうとすると舌に引っ張られてしまう」という状態です。舌の奥の方に硬結部分がまだ残っているからです。私が勉強した領域、つまり現代科学の見解では目を動かす筋肉(外眼筋)を働かせる神経は脳神経の中の滑車神経と動眼神経です。前述した表情筋を動かす顔面神経、顔面の皮膚感覚とそしゃく筋を動かす三叉神経もまた脳神経です。そして舌の運動に関わる神経は舌下神経(脳神経)ですから、勉強した知識で考えますと「脳神経がおかしい」という結論が導き出されます。
 しかし実際には、横隔神経と顔面神経を除いて、神経の問題ではなく、舌そのものの異常がいろいろな不調や不具合の根本原因になっていると感じています。何故なら三叉神経は触れることができないので施術していませんし、目を動かす神経も触れることができません。私が行ってきたことは、そしゃく筋そのもの、表情筋そのもの、舌そのものへの施術であって、三叉神経、舌下神経を触ったわけではないからです。それでも、舌の硬結がゆるんでくると“神経異常が原因”と診断されそうな症状が改善してくるからです。
 以前に激しい頭痛に襲われ、病院で三叉神経痛と診断されて、手術しか解決法はないと告げられた方が来店されました。しかし、単に頭蓋骨の歪みと強い噛みしめによる頭部筋膜のこわばりが原因でした。一回の施術ですっかり頭痛は改善しましたが、もし手術など選択していたら大変なことになったな、と思ったことがあります。現代医学ではまだまだよく解っていないことがあるという一面です。

舌と舌骨
 普段、舌は口の中で歯列の内部におとなしく収まっていますので、イメージ的には単純な構造のように思えるかもしれません。しかしその筋繊維の走行はとても複雑で、舌はたくさんの筋肉が一塊になったような存在です。
 ほとんどの骨格筋は骨に付着していて、その骨を足場として伸びたり縮んだりして動作を生み出します。胃や心臓や腸といった内臓の筋肉は骨とは関係なく動いていますが、舌は両方の性質を併せ持った存在のようです。そして骨格筋として側面では舌骨が舌の動きの足場であると考えることができます。
 舌の状態が少しおかしいと思われる方に対して「舌を大きく出してみてください」とやってもらうことがありますが、その出し方、出す方向、舌先の状態などを観察します。本人は真っ直ぐ出しているつもりでも、舌骨の捻れている人は真っ直ぐに出すことができません。また、舌が強くこわばっている人は舌を出すことができなかったり、出してもすぐに引っ込めてしまったり(出した状態を保持できない)、舌先を鼻の方(上方)に向けることができなかったりします。つまり、舌の筋肉に伸びることのできない硬い部分があるため自由に動かすことができません。また、舌全体がゆるんでいる人は、舌を動かす力が足りなくて大きく前に出すことができません。舌足らずの喋り方になったり、イビキや無呼吸症候群を招く可能性があります。 
 反対に舌が大きく出すぎる人は、舌全体がこわばっている傾向にあって、舌を引っ込める動作がやりづらいです。このような人は舌が口の中で余った状態になってしまうため下の前歯を押してしまいます。ですから放置しておくと噛み合わせに影響が出て反対咬合になってしまう可能性があります。
 
顎二腹筋と茎突舌骨筋と舌骨
 舌は舌骨を基盤に動いていますので舌骨の状態の影響を受けますが、同時に、舌骨もまた舌の状態の影響を受けます。
 耳の下の内側から喉の奥(舌骨)に掛けてのライン、ちょうど首が絞まるラインが突っ張って辛い思いをしている人が時々来店されます。そこには茎突舌骨筋、顎二腹筋がありますが、それらがこわばっているために首が常に絞めつけられているように感じてしまうのです。
 舌が強くこわばってしまいますと舌骨を顎先(オトガイ)の方に引き寄せてしまうことがあります。オトガイのすぐ側に喉仏が硬くなって感じられる人、つまり他の人に比べて顎先からすぐに喉になっているような人はこのような状態の人です。舌骨が本来の位置よりも前方にあるため、茎突舌骨筋も顎二腹筋も張ってしまいこわばります。
 反対咬合の人も下顎が前方に出ている分、舌骨が前方に移動している可能性がありますので、このような傾向にあると思います。
 このような、首を絞められているように感じている状態の人は、何処に行っても良くならないのか、あるいは何処に相談に行けば良いかわからないのか、心痛で不安気な顔をして来店されます。
 大概は硬くなっている舌をゆるめ側頭骨の位置を修正すること、つまり茎突舌骨筋、顎二腹筋の緊張を解消するだけで状態は大幅に改善します。首を絞められているような状況は恐怖心を誘発しますので「大変なこと」のように感じると思いますが、施術はとてもシンプルです。

気をつけたい舌のトレーニング
 イビキや無呼吸症候群の改善方法として、あるいは顔の引き締め効果を狙ったトレーニングとして舌を動かすトレーニングが最近話題になっているようです。
 トレーニング自体は良いことだと思いますし、舌の働きを高めることは健康を維持する上でも有効な手段だと思います。ところがトラブルもあるようです。それはトレーニング自体に問題があるのではなく、トレーニングする側の認識不足が原因のようです。
 「半日、集中して舌のトレーニングをしていたら耳の下から喉元にかけて突っ張りが生じ、首が絞められているようになってしまった」という若い方が来店されました。普段とは違う使い方で舌を酷使した結果です。例えば一日に3~5分くらいでトレーニングを行っていればこのようなことにはならなかったと思います。上記の人もそうですが、一生懸命になりすぎて、休むことなく1時間、2時間、舌を酷使していれば舌がこわばってしまうのは当然のことと言えます。
 パソコン、IT社会の今日、若い人から高齢者まで不調を抱えた人が多くなり、いろいろなトレーニングが流行っていますが、どのトレーニングも適切な範囲で行わないとトラブルを招いてしまいます。
 ドライアイ対策に眼綸筋を鍛えるトレーニング、無呼吸対策に舌のトレーニング、有名サッカー選手がCMしていた首を振るトレーニング、これらには落とし穴があります。特に首から上のトレーニングは感覚器官に影響が出る可能性がありますので、注意事項を厳守して適切な範囲で行ってください。

骨格筋としての舌、内臓としての舌
 カエルがハエを捕食するとき、とても素速く舌を長く伸ばしてハエを瞬く間に口に入れてしまいます。ですからカエルにとっての舌は、私たちの手と同じ役割をしています。この意味で舌は骨格筋であると言えますし、私たちも自分の意志で舌を動かすことができますので、随意筋であり骨格筋の性質を持っていると言えます。一方で、舌は味覚を感じる感覚器官であり、そしゃくや嚥下(食物を飲み込む)の過程では喉の筋肉と連携して“食べる”という行為を行いますので、内臓であると言うこともできます。
 そしゃく筋もそうですが、舌は私たちが自己表現したり日常生活を営む役割(=骨格筋)と生命を維持する役割(=内臓)の二つを担っていますので、とても大切で、私たちの「存在としての要」であると考えることもできます。

舌の潜在力
 何もなく静かにしていれば、口の中にひっそりと控えめに収まっている舌ですが、私は今回の施術経験で、その潜在力の強さを思い知らされました。
 今回取り上げた方が、表情筋もそしゃく筋も眼も動かすことができなくなり呼吸も満足にできない状態になってしまったのは、神経がどうのこうのとか、それぞれの筋肉がどうのこうのというよりも、単に舌が異様に固まってしまったことが原因なのかもしれないとも思えます。強く固まってしまった舌はブラックホールのように引力が増大し、周りの筋肉の力を奪ってしまったのかもしれない、そんなふうにも感じます。
 そうでなければ、舌がおかしくなったことと顔の皮膚感覚が鈍くなったこと、そしゃくができなくなったこと、眼球を動かすことができなくなったこと、それらの因果関係を説明することが難しいと思います。現代医学における“神経と筋肉”、東洋医学における“経絡やツボ”、それらの理屈では筋の通った説明ができません。

 以前に「舌は神秘的」という表現をしたことがありますが、仙骨を中心にした骨盤力がからだ全体の中心であるとすれば、舌は感覚器官をはじめとする顔や頭の働きに強い影響力を持っていますので“舌は首から上の中心”ということができると思います。
 私自身の舌もこわばっています。舌を出して鼻先に向ける動作は舌を伸ばす動作ですが、すると右耳の耳鳴りが顕著になります。つまり舌と耳鳴りは関係性があるということですが、このことについては今後さらに追求していきたいと考えています。

舌の変調によるトラブル
 舌がこわばっていたり、反対にゆるんでいる場合のトラブルについて幾つか挙げてみます。

①顔、首、肩から力が抜けない
 顔・首・肩から力が抜けず、いつも肩が上がってしまうような人は、舌がこわばっている可能性が高いです。ご自分を振り返ってみて「胸から上で生きている」と感じるのであれば、息苦しく生きている人であって、舌のこわばりよる影響が大きいかもしれません。

②滑舌が悪い、発声の調子が悪い、歌唱力が落ちた
 声帯は喉にありますが、喉仏(後頭隆起)は舌骨と一体になっているようなものですから、舌の影響を大きく受けます。喉がこわばっても舌はこわばり、舌がこわばっても喉がこわばるという関係がありますので、声帯の動きが悪くなったり、声の出が悪くなったと感じる時は舌の状態を確認する必要があると思います。舌の状態が大丈夫であれば、舌を出して下方(顎先の方)にも上方(鼻の方)にも同じようにスムーズに動きます。上方に動かすことが苦手なときは舌がこわばっていると考えられます。
 また、舌がゆるんでいますと「舌足らず」の喋り方になってしまうでしょうし、舌がこわばっていますと舌を噛んでしまうような「舌余り」の喋り方になってしまいます。

③噛み合わせが不調、反対咬合
 噛み合わせが合わなくなる理由はいくつかありますが、舌がこわばっていますと舌先で下の歯を押してしまいます(舌先に歯型がついている)ので、下顎が前方に移動して噛み合わせが狂うほか、反対咬合(受け口)になってしまう可能性があります。

④そしゃく・嚥下の不調、飲み込みがスムーズにいかない
 顎を動かして食物を噛む筋肉の主体はそしゃく筋ですが、食物は噛み砕いただけでは喉を通っていきません。口の中で唾液と混ぜてドロッとした塊になるまでそしゃくしなければなりません。この時、舌と頬(の内壁)を絶妙に使いますので、舌の状態が悪いとしっかりそしゃくできないということになります。舌や頬に口内炎が生じますと途端に食べられなくなりますが、それは食塊をつくる作業がスムーズにできなくなるからです。
 また飲み込むことができる状態になった食塊は、実際に飲み込んで食道に送り込む(嚥下)とき、舌を口の天井(口蓋)にペタッとくっつけて空気の入らない状態(陰圧)にならないと喉を通っていきません。舌がゆるんでいて働きが悪い状態では陰圧をつくるのに時間がかかってしまうため、嚥下がスムーズにできなくなってしまいます。

⑤無呼吸症候群やイビキ
 舌がゆるんでいてハリがなくなりますと、仰向けで寝た時、舌が喉の方に落ちてしまい気道を塞いでしまいます。これが無呼吸症候群の一つの原因であり、イビキの原因でもあります。元々口呼吸の人はこの傾向がありますが、それは仰向けになって口を閉じた状態から口を開くと舌が気道の方に落ち込む現象をみればわかるかと思います。
 
⑥その他
 舌がこわばっている時の症状は認識しやすいのですが、舌がゆるんでいる時の症状はなかなかわかりにくいものです。舌がゆるんでいると活力が乏しくなりますが、単にからだ疲労しているだけでも活力は失われるからです。しかし「休養も十分取ったはずなのになかなか活力が戻らない」というような場合は、内臓の病気も疑われますが、舌がゆるんでいるからなのかもしれません。舌のトレーニングを幾日か行ってみてください。舌がしっかりすれば活力が戻ってくるかもしれません。
 また、東洋医学では舌と心臓は密接な関係にあると考えられています。舌の状態がなかなか良くならないと感じる場合は、一度循環器系の診察を受けてみることをお奨めします。

足つぼ・整体 ゆめとわ
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