ゆめとわのblog

ホームページとは違った、より臨場感のある情報をお届けしたいと思っています。 また、テーマも整体の枠を飛び出してみたいと思います。 ホームページは以下です。 http://yumetowa.com/ お問い合わせはメッセージ欄でお送りください。

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 そしゃく筋は全身筋肉の司令塔のような役割をしているので、食事をよく噛んで食べることがとても重要であるという話はたくさんしてきました。それはその通りなのですが、もう一つ、とても潜在力を秘めた存在を発見したような気持ちになりました。それは“舌”です。
 舌やその周辺のトラブルで来店される方は時々いらっしゃいますが、このたびの方の場合は私もビックリしました。舌が強固にこわばってしまったのですが、そのこわばりを少しずつ弛めていく過程でからだが驚くべき反応をしました。現在、その驚くべき反応は通り越した段階ですが、それでも施術する度にいろいろな反応が現れています。今回はこのことを取り上げて改めて“舌の力”について考えてみます。

 その方が初めて来店されたのは3ヶ月ほど前です。今から7年半ほど前に、英語の発音練習をしていて、素速く舌を動かす訓練をしていたときに突然、発声やそしゃくや嚥下に異変が現れたということです。その後、顔の筋肉を動かすことができなくなり、呼吸も普通にはできない状態に陥ったとのことですが、7年半の間、あらゆる病院や治療院などを巡ったようです。ところが症状はほとんど改善さることもなく、改善の兆しも見つからなかったようです。おそらく私のところにもそれほど期待を持って来られたわけではないと思います。
 最初にお会いしたときは、会話することもままならない状態で、顔の筋肉はほとんど動かすことができない状態でした。顔の表情をつくる筋肉(表情筋)を動かす顔面神経は機能していませんでしたが、顎を動かしてそしゃくする筋肉(そしゃく筋)も動かせませんでした。そしゃく筋をコントロールしている三叉神経の働きも悪い状態だと見受けられました。また横隔膜も動きませんでしたので呼吸も大変浅く、「どうやって生きてきたのだろう?」と思わず思ってしまったほどです。
 非常に強くこわばっていた舌でしたが、その舌を上下に動かすことで顎を閉じたり開いたりして食物を噛み、舌の上下運動を使ってなんとか食塊を飲み込んで食事を行っていたということです。私たちのからだは“結構しぶとく”できているようです。顔の筋肉が全滅の状態でも舌の動きだけは確保できて、それで食べ物を食べて命を維持することができるのですね。
 会話することもままならない状態ですから、なるべく他人と会話をしない仕事を選び、夜間働いて昼間に来店されるという生活パターンで、最初の2ヶ月間はほとんど毎日来店されました。

 舌の硬結、顔面神経、三叉神経、横隔神経という四つの問題が先ず私の頭の中に浮かびました。この中でも一番最初に解決しなければならないと考えたのは横隔神経に関連して呼吸の問題でした。極端に表現すればこの方の呼吸は”口先呼吸”でした。肺まで空気を入れることができず口の中入れた空気を喉の力を使ってやっと肺に届かせるといった状態でした。「まず肺で呼吸できる状態にしなければ‥‥」と考えました。以前にも説明しましたが、舌と横隔膜は密接な関係があると私は考えています。舌が硬ければ横隔も硬くなっているはずです。また、横隔膜をコントロールしている横隔神経は首(頚神経)から出ていますので、頚椎の状態は横隔膜の働きに影響を与えます。
舌のつよいこわばり
(来店から2週間ほどしての画像、呼吸はまずまずできる状態になっている)

 この方は喉仏(喉頭隆起)がかなり上にあって、更に顎先(オトガイ)と喉仏の間隔が狭い状態でした。舌(舌筋)が不自然に巻くように硬くこわばっているため、舌骨と共に喉頭隆起を引き上げ、オトガイを引きつけていました。舌骨は頚椎3~4番の前方に位置していますが、それが舌筋や舌骨舌筋の強いこわばりによってオトガイの方に引っ張られているため、頚椎3~4番も前方に変位していました。これによって横隔神経の働きも鈍くなっているのではないかと考えました。ですから、まずは舌骨の位置が少しでも後退して、頚椎の並びが自然な状態に近づけるようにと施術を行いました。2~3回くらい施術しますと、次第に横隔膜が動かせるようになりました。まだまだ不十分な状態ですが、肺に空気が入るようになり浅いながらも胸呼吸はできる状態になりました。

 顔の表情筋を動かす神経は顔面神経です。顔の皮膚感覚を支配しているのは三叉神経で、そしゃく筋を動かす神経は三叉神経です。この方の表情筋は動かせないばかりか皮膚感覚も鈍くなっていましたので、そしゃく筋が動かせないことも合わせて考えますと、やはり顔面神経、三叉神経ともに状態が悪いと考えられました。顔面神経は頭蓋骨の表面上に現れていますので施術も可能ですが、三叉神経は深部にありますので直接触れることはできません。
顔面神経02
(顔面神経:耳のすぐ下から現れ、耳下腺の中を通って顔表面の表情筋をコントロールする)

 「どうやったらいいのだろう?」と思いながらも顔面神経の働きが良くなるようにすることから始めることにしました。とても硬くなっている耳下腺(顔面神経がその中を通っている)をゆるめ、すかっりゆるみきっている表情筋やそしゃく筋への施術を行いました。変化が現れるまで数回の施術を要しましたが、そのうち表情筋を動かせる部分が現れ、皮膚感覚もはっきりするところと鈍いところが混在するような状態になりました。少しの変化も本人には希望の光です。当初の2週間くらいはちょっとずつ変化が現れるという経過でした。毎回の施術はほとんど同じ内容でした。硬くなっている舌や周辺の筋肉をゆるめ、耳下腺をゆるめ、表情筋やそしゃく筋を施術するといった内容でした。

 すると突然大きな変化が現れました。舌をゆるめているときに、口の中で急に舌が暴れ出したのです。“暴れる”という表現がぴったりの現象です。そしてそんな状況が2~3日続いたと思いますが、舌の暴れ方がいきなり強くなり、それはからだ全体を大きく揺らすほどの力でした。首が激しく振れだし、肩が激しく前後に動きだし、腹部や足までがドタンバタンと動きだしました。その力があまりにも強いので、舌を施術している私の手が何度もはじかれてしまいました。すると、それまで顎の奥の方に引き込まれていた喉が前に出てきました。「喉が本来の位置に戻ろうと動いている」と施術をしながら私は感じました。そしてこの時に「舌にはこんなに強い力が内在しているんだ!」と私は驚くとともに新たな発見をした気分なりました。普段は喋ったり食べたりするときに動いているだけの舌ですが、その内在している力はからだ全体を激しく揺り動かしてしまうほどの力です。
 施術を終えると、明らかに喉仏の位置が下に下がっていることがわかりました。普通の人と比べるとまだまだコチコチに硬くなっている状態でしたが、私も本人も改善に向けて希望の光が大きくなったと感じた瞬間でした。

 この大きな変化によって、それまでは口先だけで言葉を発していた状態が、口を動かして会話ができる状態になったと私は感じました。ただそしゃく筋の働きは戻っていませんので、口を開けたり閉めたりするのはやはり舌で行っている状態でした。ですから舌にはものすごい負担がかかり続けています。私たちが「オ」を発音するときのように唇と舌を使って口を開き、舌を口蓋(口の天井)に押しつけるようにして口を閉じる動作を行っていました。表情筋が動かないので「イー」と口角を横に広げることはできません。「アー」と顎を開くこともできません。この状態で言葉を喋るのはとても疲れることです。
 せっかく舌や喉に大きな変化が現れたわけですから、この変化をバネに確実に前進していかなければならないと私は感じました。そのためには舌の負担を減らさなければなりません。酷使する状況が続けば舌がゆるむのを期待することはできません。
 本来、口を閉じる働きを担っているのはそしゃく筋です。そして口を開くのは頬の筋肉や喉周辺の筋肉(舌骨上筋・舌骨下筋)の役割です。ですからそれらの筋肉が働きを回復すれば舌にかかっていた余計な負担は減ることになります。
 そしゃく筋が動くように! 喉が上下に動くように! これが次の段階の課題です。

 普通の状態の人はそしゃく筋を使って食べているので、そしゃく筋が動かない状態で食物を噛むということがどういうものか私には想像できませんでした。
 そこで「どうやって食事しているの?」と尋ねますと、「口も開けないので、口先に食物を入れ、舌を上に押しつけるようにして下顎を動かして噛んでいる」ということでした。
 施術を続けていくうちに喉の方は少し動くようになり、下顎を引き下げる動作ができるようになってきました。「それでもやはり舌の力が主体となって顎を下げて口を開いている。もっと大きく開こうとすると、舌の奥の方が盛り上がってしまい、それ以上下げることができない」という状態がしばらく続きました。「咬筋(そしゃく筋)は少し動いているように感じる日もあれば、やはり動いていないと感じる日あるけど、少しずつは前進しているように感じる」とのことでした。

 7年半前に数日間発音練習(本人の弁では「吹き上げるように舌を使い続けた」ということです)をしたら突然舌が反乱を起こしたようにおかしくなり、顔がおかしくなってしまったわけですが、7年半という長い年月、舌を酷使し続けた結果このような状態になってしまったのだと私は感じました。
 それでも最初の来店から2ヶ月が経過する頃からは会話もかなりできるようになり、食事では「万全ではないけどそしゃく筋を使って噛んでいるように感じる」というほどになりました。
 2ヶ月間、毎日のように60分間ベッドに寝て、舌をゆるめ、耳下腺、表情筋、そしゃく筋をじっと施術することを繰り返しただけですが、外見上は普通の人と変わらないように感じるほどになりました。しかしその頃から、起き上がることができず施術時間に間に合わなくて来店できなくなる日が現れるようになりました。舌の回復とともに体調に大きな変化が現れ「ぐったり寝入ってしまい目覚まし時計が鳴っても起きることができない」ということでした。
 「舌はこんなにもからだに影響力が強いのか!」というのが私の感想です。
 現在、3ヶ月が経過しましたが、週に3日程度の来店ペースになっています。それでも確実に回復に向かって進んでいますし、来店される度に顔つきや顔色にも変化が感じられますので、私自身「なんとか役に立てている」と実感しています。

 これまでも舌や喉、発声や滑舌などに問題を抱えている人達が来店されました。その中には声楽家や声優さんや声を仕事にしているプロの人もいます。その人達は微妙な違和感にも敏感です。ですからとても繊細に相対してきましたが、ここまで重症の方は私にとって未知の領域でした。
 この方は目を動かすこともできませんでした。今でも「大きく動かそうとすると舌に引っ張られてしまう」という状態です。舌の奥の方に硬結部分がまだ残っているからです。私が勉強した領域、つまり現代科学の見解では目を動かす筋肉(外眼筋)を働かせる神経は脳神経の中の滑車神経と動眼神経です。前述した表情筋を動かす顔面神経、顔面の皮膚感覚とそしゃく筋を動かす三叉神経もまた脳神経です。そして舌の運動に関わる神経は舌下神経(脳神経)ですから、勉強した知識で考えますと「脳神経がおかしい」という結論が導き出されます。
 しかし実際には、横隔神経と顔面神経を除いて、神経の問題ではなく、舌そのものの異常がいろいろな不調や不具合の根本原因になっていると感じています。何故なら三叉神経は触れることができないので施術していませんし、目を動かす神経も触れることができません。私が行ってきたことは、そしゃく筋そのもの、表情筋そのもの、舌そのものへの施術であって、三叉神経、舌下神経を触ったわけではないからです。それでも、舌の硬結がゆるんでくると“神経異常が原因”と診断されそうな症状が改善してくるからです。
 以前に激しい頭痛に襲われ、病院で三叉神経痛と診断されて、手術しか解決法はないと告げられた方が来店されました。しかし、単に頭蓋骨の歪みと強い噛みしめによる頭部筋膜のこわばりが原因でした。一回の施術ですっかり頭痛は改善しましたが、もし手術など選択していたら大変なことになったな、と思ったことがあります。現代医学ではまだまだよく解っていないことがあるという一面です。

舌と舌骨
 普段、舌は口の中で歯列の内部におとなしく収まっていますので、イメージ的には単純な構造のように思えるかもしれません。しかしその筋繊維の走行はとても複雑で、舌はたくさんの筋肉が一塊になったような存在です。
 ほとんどの骨格筋は骨に付着していて、その骨を足場として伸びたり縮んだりして動作を生み出します。胃や心臓や腸といった内臓の筋肉は骨とは関係なく動いていますが、舌は両方の性質を併せ持った存在のようです。そして骨格筋として側面では舌骨が舌の動きの足場であると考えることができます。
 舌の状態が少しおかしいと思われる方に対して「舌を大きく出してみてください」とやってもらうことがありますが、その出し方、出す方向、舌先の状態などを観察します。本人は真っ直ぐ出しているつもりでも、舌骨の捻れている人は真っ直ぐに出すことができません。また、舌が強くこわばっている人は舌を出すことができなかったり、出してもすぐに引っ込めてしまったり(出した状態を保持できない)、舌先を鼻の方(上方)に向けることができなかったりします。つまり、舌の筋肉に伸びることのできない硬い部分があるため自由に動かすことができません。また、舌全体がゆるんでいる人は、舌を動かす力が足りなくて大きく前に出すことができません。舌足らずの喋り方になったり、イビキや無呼吸症候群を招く可能性があります。 
 反対に舌が大きく出すぎる人は、舌全体がこわばっている傾向にあって、舌を引っ込める動作がやりづらいです。このような人は舌が口の中で余った状態になってしまうため下の前歯を押してしまいます。ですから放置しておくと噛み合わせに影響が出て反対咬合になってしまう可能性があります。
 
顎二腹筋と茎突舌骨筋と舌骨
 舌は舌骨を基盤に動いていますので舌骨の状態の影響を受けますが、同時に、舌骨もまた舌の状態の影響を受けます。
 耳の下の内側から喉の奥(舌骨)に掛けてのライン、ちょうど首が絞まるラインが突っ張って辛い思いをしている人が時々来店されます。そこには茎突舌骨筋、顎二腹筋がありますが、それらがこわばっているために首が常に絞めつけられているように感じてしまうのです。
 舌が強くこわばってしまいますと舌骨を顎先(オトガイ)の方に引き寄せてしまうことがあります。オトガイのすぐ側に喉仏が硬くなって感じられる人、つまり他の人に比べて顎先からすぐに喉になっているような人はこのような状態の人です。舌骨が本来の位置よりも前方にあるため、茎突舌骨筋も顎二腹筋も張ってしまいこわばります。
 反対咬合の人も下顎が前方に出ている分、舌骨が前方に移動している可能性がありますので、このような傾向にあると思います。
 このような、首を絞められているように感じている状態の人は、何処に行っても良くならないのか、あるいは何処に相談に行けば良いかわからないのか、心痛で不安気な顔をして来店されます。
 大概は硬くなっている舌をゆるめ側頭骨の位置を修正すること、つまり茎突舌骨筋、顎二腹筋の緊張を解消するだけで状態は大幅に改善します。首を絞められているような状況は恐怖心を誘発しますので「大変なこと」のように感じると思いますが、施術はとてもシンプルです。

気をつけたい舌のトレーニング
 イビキや無呼吸症候群の改善方法として、あるいは顔の引き締め効果を狙ったトレーニングとして舌を動かすトレーニングが最近話題になっているようです。
 トレーニング自体は良いことだと思いますし、舌の働きを高めることは健康を維持する上でも有効な手段だと思います。ところがトラブルもあるようです。それはトレーニング自体に問題があるのではなく、トレーニングする側の認識不足が原因のようです。
 「半日、集中して舌のトレーニングをしていたら耳の下から喉元にかけて突っ張りが生じ、首が絞められているようになってしまった」という若い方が来店されました。普段とは違う使い方で舌を酷使した結果です。例えば一日に3~5分くらいでトレーニングを行っていればこのようなことにはならなかったと思います。上記の人もそうですが、一生懸命になりすぎて、休むことなく1時間、2時間、舌を酷使していれば舌がこわばってしまうのは当然のことと言えます。
 パソコン、IT社会の今日、若い人から高齢者まで不調を抱えた人が多くなり、いろいろなトレーニングが流行っていますが、どのトレーニングも適切な範囲で行わないとトラブルを招いてしまいます。
 ドライアイ対策に眼綸筋を鍛えるトレーニング、無呼吸対策に舌のトレーニング、有名サッカー選手がCMしていた首を振るトレーニング、これらには落とし穴があります。特に首から上のトレーニングは感覚器官に影響が出る可能性がありますので、注意事項を厳守して適切な範囲で行ってください。

骨格筋としての舌、内臓としての舌
 カエルがハエを捕食するとき、とても素速く舌を長く伸ばしてハエを瞬く間に口に入れてしまいます。ですからカエルにとっての舌は、私たちの手と同じ役割をしています。この意味で舌は骨格筋であると言えますし、私たちも自分の意志で舌を動かすことができますので、随意筋であり骨格筋の性質を持っていると言えます。一方で、舌は味覚を感じる感覚器官であり、そしゃくや嚥下(食物を飲み込む)の過程では喉の筋肉と連携して“食べる”という行為を行いますので、内臓であると言うこともできます。
 そしゃく筋もそうですが、舌は私たちが自己表現したり日常生活を営む役割(=骨格筋)と生命を維持する役割(=内臓)の二つを担っていますので、とても大切で、私たちの「存在としての要」であると考えることもできます。

舌の潜在力
 何もなく静かにしていれば、口の中にひっそりと控えめに収まっている舌ですが、私は今回の施術経験で、その潜在力の強さを思い知らされました。
 今回取り上げた方が、表情筋もそしゃく筋も眼も動かすことができなくなり呼吸も満足にできない状態になってしまったのは、神経がどうのこうのとか、それぞれの筋肉がどうのこうのというよりも、単に舌が異様に固まってしまったことが原因なのかもしれないとも思えます。強く固まってしまった舌はブラックホールのように引力が増大し、周りの筋肉の力を奪ってしまったのかもしれない、そんなふうにも感じます。
 そうでなければ、舌がおかしくなったことと顔の皮膚感覚が鈍くなったこと、そしゃくができなくなったこと、眼球を動かすことができなくなったこと、それらの因果関係を説明することが難しいと思います。現代医学における“神経と筋肉”、東洋医学における“経絡やツボ”、それらの理屈では筋の通った説明ができません。

 以前に「舌は神秘的」という表現をしたことがありますが、仙骨を中心にした骨盤力がからだ全体の中心であるとすれば、舌は感覚器官をはじめとする顔や頭の働きに強い影響力を持っていますので“舌は首から上の中心”ということができると思います。
 私自身の舌もこわばっています。舌を出して鼻先に向ける動作は舌を伸ばす動作ですが、すると右耳の耳鳴りが顕著になります。つまり舌と耳鳴りは関係性があるということですが、このことについては今後さらに追求していきたいと考えています。

舌の変調によるトラブル
 舌がこわばっていたり、反対にゆるんでいる場合のトラブルについて幾つか挙げてみます。

①顔、首、肩から力が抜けない
 顔・首・肩から力が抜けず、いつも肩が上がってしまうような人は、舌がこわばっている可能性が高いです。ご自分を振り返ってみて「胸から上で生きている」と感じるのであれば、息苦しく生きている人であって、舌のこわばりよる影響が大きいかもしれません。

②滑舌が悪い、発声の調子が悪い、歌唱力が落ちた
 声帯は喉にありますが、喉仏(後頭隆起)は舌骨と一体になっているようなものですから、舌の影響を大きく受けます。喉がこわばっても舌はこわばり、舌がこわばっても喉がこわばるという関係がありますので、声帯の動きが悪くなったり、声の出が悪くなったと感じる時は舌の状態を確認する必要があると思います。舌の状態が大丈夫であれば、舌を出して下方(顎先の方)にも上方(鼻の方)にも同じようにスムーズに動きます。上方に動かすことが苦手なときは舌がこわばっていると考えられます。
 また、舌がゆるんでいますと「舌足らず」の喋り方になってしまうでしょうし、舌がこわばっていますと舌を噛んでしまうような「舌余り」の喋り方になってしまいます。

③噛み合わせが不調、反対咬合
 噛み合わせが合わなくなる理由はいくつかありますが、舌がこわばっていますと舌先で下の歯を押してしまいます(舌先に歯型がついている)ので、下顎が前方に移動して噛み合わせが狂うほか、反対咬合(受け口)になってしまう可能性があります。

④そしゃく・嚥下の不調、飲み込みがスムーズにいかない
 顎を動かして食物を噛む筋肉の主体はそしゃく筋ですが、食物は噛み砕いただけでは喉を通っていきません。口の中で唾液と混ぜてドロッとした塊になるまでそしゃくしなければなりません。この時、舌と頬(の内壁)を絶妙に使いますので、舌の状態が悪いとしっかりそしゃくできないということになります。舌や頬に口内炎が生じますと途端に食べられなくなりますが、それは食塊をつくる作業がスムーズにできなくなるからです。
 また飲み込むことができる状態になった食塊は、実際に飲み込んで食道に送り込む(嚥下)とき、舌を口の天井(口蓋)にペタッとくっつけて空気の入らない状態(陰圧)にならないと喉を通っていきません。舌がゆるんでいて働きが悪い状態では陰圧をつくるのに時間がかかってしまうため、嚥下がスムーズにできなくなってしまいます。

⑤無呼吸症候群やイビキ
 舌がゆるんでいてハリがなくなりますと、仰向けで寝た時、舌が喉の方に落ちてしまい気道を塞いでしまいます。これが無呼吸症候群の一つの原因であり、イビキの原因でもあります。元々口呼吸の人はこの傾向がありますが、それは仰向けになって口を閉じた状態から口を開くと舌が気道の方に落ち込む現象をみればわかるかと思います。
 
⑥その他
 舌がこわばっている時の症状は認識しやすいのですが、舌がゆるんでいる時の症状はなかなかわかりにくいものです。舌がゆるんでいると活力が乏しくなりますが、単にからだ疲労しているだけでも活力は失われるからです。しかし「休養も十分取ったはずなのになかなか活力が戻らない」というような場合は、内臓の病気も疑われますが、舌がゆるんでいるからなのかもしれません。舌のトレーニングを幾日か行ってみてください。舌がしっかりすれば活力が戻ってくるかもしれません。
 また、東洋医学では舌と心臓は密接な関係にあると考えられています。舌の状態がなかなか良くならないと感じる場合は、一度循環器系の診察を受けてみることをお奨めします。

足つぼ・整体 ゆめとわ
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 口呼吸がからだに悪影響を及ぼすことはだいぶ知られるようになったかもしれません。しかし舌の位置と口呼吸とに関連性があることはあまり知られていないと思います。無呼吸症候群やイビキと舌の状態は深い関係性があります。その他にも滑舌の善し悪しや発声、嚥下(食物の飲み込み)にも舌の状態は関係します。
 舌は主に筋肉ですが、舌骨(喉のところにある宙に浮いた状態の骨)や口の中のいろいろな場所につながっていて支えられ、思い通りに動かすことができます。また、舌は味を感じる大切な感覚器官でもあります。
 今回は、味覚を除いた舌の状態がからだに及ぼす影響について考えてみたいと思います。

好ましい舌の定位置
 普通にリラックスしている時、舌先が上歯のすぐ後のスポットと呼ばれるところにくっついている状態が望ましい舌の定位置です。軽く上顎骨を押し上げる力が働きますので、顔は下がりにくくなり、上顎を広げるようになりますので鼻の通りもよくなり鼻呼吸がしやすくなります。
 もし普通にしている状態で舌先が下の歯を押しているような状態であれば、反対咬合(受け口)になる可能性が出てきます。もし普通にしている状態で舌先が上の歯を押しているような状態であれば、出っ歯になる可能性が出てきます。(参考までにhttp://hanoblog.com/tongue-position-9212
舌の位置

 また、例えば座った状態で重心を前に出すように前傾しますと舌先が上顎を押す力が強まり(舌も前に出ようとする)、重心を後ろに移動するようにからだを反りますと、それまで上顎に接していた舌先が下に移動することがわかります(舌が引っ込む)。ですから重心の位置と舌先の位置には関係性があることがわかります。

 滑舌が悪いとか、舌足らずや舌余りの話し方になってしまう、ラ行やサ行が話しづらいなどと舌の動きに対する問題を抱えている人がいます。イビキや無呼吸症候群なども舌との関連性を無視することはできません。
 いつも喉元に力をいれている人、つまり緊張しているような人は舌骨の動きが制限されてしまうため舌足らずや舌余りの状態になっていると考えられます。猫背で首や顎先を前に出してパソコン作業をしている人は舌先が下がっていますので、鼻呼吸では苦しくなってしまうため口呼吸になり慢性的な体調不良を抱えているかもしれません。腹筋の働きが悪い人は舌筋の働きも悪くなりますので、寝ると舌筋が気管をふさぐ状態になりやすいのと考えられます。つまり無呼吸症候群になってしまう可能性が高まります。

舌のホームポジションと骨格・筋肉の関係
 好ましい舌のホームポジションがスポットと呼ばれる上歯のすぐ後の天井部分だからといって故意にそこにおさめようとしてみても、それは不自然ですし、別の筋肉に余計な力が入ってしまいますので良いことではありません。首や喉の筋肉が緊張状態になってしまいます。また、普段はそこにおさめておくことができても喋りだすと舌のホームポジションを正しくキープすることができなくなってしまいます。
 舌を鍛えるトレーニング情報などには、このホームポジションについての記述もあると思いますが、私は、あくまでもからだがリラックスした自然な状態のときに舌先がどこにあるかが重要だと考えています。

①頚椎が後にあると舌が引っ込む‥‥ホームポジションに届かない
 舌(舌筋)は舌骨から出ているとして考えるのがわかりやすいと思います。ですから舌骨の位置によって舌の状態は左右されると考えられます。そして舌骨は頚椎3~4番の前にありますので、頚椎3~4番が後に下がっている人は舌骨の位置が後方にある、つまり舌が後にあると言うことができます。このような状態の人は舌が前に出てこなくなってしまいますが、つまり舌足らずの状態です。
 首肩の凝りが強くて整形外科を受診した人は“ストレートネック”と診断されることが多いのですが、それは頚椎の弯曲(前弯)が無いような状態、つまり頚椎3~5番くらいが後にずれているような状態です。ですからストレートネックと診断されている人は、舌足らずに近い状態だと考えられます。
後頭下筋群と上部頚椎

 頭蓋骨の後頭部(後頭骨)と首の境には後頭下筋群と呼ばれる筋肉があります。この筋肉群は後頭骨と上部頚椎(頚椎1~2番)につながっていますので、筋肉がこわばっていますと上部頚椎の動きが制限されるとともに後に引きつけられますのでストレートネックの状態になってしまいます。あるいは下を向いている時間が長い人は後頭部から肩甲骨につながっている僧帽筋がこわばってしまい頚椎全体を後方に引っ張ってしまうためストレートネックになってしまう可能性が高まります。
 舌足らずの状態になりますと舌は正しいホームポジションの位置をとることができず下歯のところに舌先がきてしまうと考えることができます。

②喉のこわばっている人はホームポジションが下の歯にきていしまう
 いつも緊張していたり、首肩から力が抜けないような人は喉の筋肉もこわばって硬くなっています。するとやはり舌先は正しいホームポジションではななく、下歯のところにきてしまいます。そしてこのような人は同時に後頭下筋群もこわばっていますが、首を触っても筋肉が筋張って硬くなっていることが多く見受けられます。
 このような人はからだを使う時の中心が下腹部や腰部ではなく首や肩や胸にありますので、当然噛みしめの癖をもっていますし、呼吸は浅くなり、リラックスとは程遠い状態と言えます。以前にも記しましたが、首肩から力が抜けるようにからだを改善していただきたいと思います。
 しかしながら、知らず知らずのうちに首・肩に力が入ってしまう人が、一時的に首肩から力を抜くことはできたとしても、力が抜けた状態を長く保つことはなかなか大変です。
普段どこを中心にしてからだ全体を使っているかという問題ですので、その人の意識の場がどこにあるか、思考の中心が何なのかという問題とも絡みあうことでもあります。ですから、時にはすっかり思い込みや性格を変えてしまうくらいの取り組みであると言えるかもしれません。
 そしてそれは残念ながら“肩から力を抜くぞ!”という意志や“気をつける”ことだけではまったく無理です。からだを使う中心を下腹部の方に移動しなければなりません。
 私たちのからだは意識を置いたところを中心に動くようにできていますので、首肩から“力を抜こうと意識を置く”よりも、下腹部を使って動作をするように意識を置いた方が結果として首肩から力が抜けるようになります。健やかに楽に生きるためには首肩から力が抜けた状態で生活できるようにしなければなりません。
 頭ばかり使っている現代の私たちは自然に首肩に力が入ってしまうけいこうにあります。そしてその影響により喉元はこわばって硬くり、舌の状態に影響を与えていると考えられます。

③横隔膜と舌と呼吸
 私たちが呼吸を行うとき様々な筋肉が働きますが、その中で要となるのは横隔膜です。横隔膜は胸部と腹部を分ける境ですが、お椀を伏せたような、あるいは傘のような形をしています。息を吸う動作では横隔膜が収縮して逆さにしたお椀の天井が下がります。この働きによって肺は膨らみ空気が入ってきますが、同時に腹部が押し下げられお腹が前に膨らむようになります。息を吐き出すときは横隔膜がゆるんで腹部が広がり胸部が狭まります。肺自体には筋肉はほとんどありませんので、肺が膨らんだり縮んだりするのは横隔膜の運動=収縮・弛緩によるものだと考えてよいでしょう。息を吸うとき、つまり横隔膜が収縮するとき舌を観察しますと、舌が引っ込むのがわかります。反対に息を吐き出すとき横隔膜はゆるむのですが、この時舌は前にでて普通の人なら正しいホームポジションに戻ります。
 つまり横隔膜が収縮しているとき、舌は短くなるということです。これを反対に考えますと、舌が短い状態=舌先が下の歯のところにある状態は横隔膜が収縮した状態であり、それは緊張状態であるとも考えられます。横隔膜がゆるんでくれませんので息を最後まで吐き出すことが困難です。精神的緊張状態も含めて、息が上がったり、息を止めてしまうとき、横隔膜とともに舌の筋肉も緊張し、呼吸が浅くなって言葉がしゃべりづらくなってしまいます。
 このように考察しますと、舌と横隔膜と呼吸の善し悪しは密接に関係し合っていることがわかります。

④かかと体重
 先ほどからだを反る(重心を後ろに移動する)と舌が下がり引っ込むと記しましたが、重心の位置と舌の位置にも関係性があります。
 立位で少し前傾してつま先の方に体重を掛けますと舌が前方に動くのが実感できると思います。そして反対にかかとの方に重心をかけますと舌が後退するのも実感できると思います。ですから、かかと体重の人は自ずと舌が引っ込んでしまい、それによる弊害(=浅い呼吸、しゃべりづらい等)を抱えていることになります。また、反対に前のめりのように重心がつま先にある人の場合は、舌が前にでてしまいますので、舌を噛みやすい、上歯と下歯の間に舌が出てしまう、上歯を押してしまうので出っ歯になりやすいという弊害を招きます。
 好ましいホームポジションを維持するためには重心の位置も重要になりますが、それだけでなく、身体全体の動きや機能を快適に保つために重心の位置が正しい状態にあるよう整えることは大切なことです。

⑤噛みしめと舌
 たびたび登場する噛みしめや歯ぎしりの影響ですが、舌にも影響をもたらします。咬筋をはじめそしゃく筋がこわばりますと後頭下筋群もこわばります。すると上部頚椎が歪みますが、同時に舌も下がってホームポジションが下歯の方に移ります。
 噛みしめや歯ぎしりの癖はからだのいろいろなところに影響を与えますのでどうにか改善したいものです。

舌を好ましい位置にキープするために
 舌の位置が良くなかったとして、それを調整してきたこれまでの経験で言いますと、精神的にも肉体的にもリラックスできる状態になったとき、舌は自然と正しいホームポジションをとることができます。
 ここで私が大切だと思うことは、意図的に舌をスポットの位置に置こうとしても、それではほとんど意味がないということです。舌は意識していれば意図的にスポットの位置に保つことはでき、一時的に呼吸を改善することはできます。ところがそれではからだのどこかに力を入れ続けていなければなりません。リラックスした状態から離れてしまいますので、からだには別の緊張が生じます。そして、何か別のことに神経をとられて意識が舌のことからはずれてしまいますとホームポジションはスポットから外れてしまいます。ですから自然にリラックスしている状態の時のホームポジションをスポットの位置に保てるようにすることが大切です。そのためには先に挙げた五つの項目を中心にからだを整える必要があります。

 ベッドの上に仰向けになっていただき「からだから力を抜いてリラックスしてみてください」と申し上げますと、皆さんそれぞれ自分なりのやり方でリラックスした状態を試みてくださいます。しかし、いろいろなところに力が入ったままの人がほとんどです。ご自分ではそれが“いつもの普通の状態”ですから筋肉に緊張があるとは思っていないかもしれません。しかし、実際は緊張だらけの人がたくさんいます。(だから私のところに来られるのでしょうけど)
 そしてここからが私の仕事になりますが、肩こりや腰痛といった症状を改善することと同時に、私はからだから余計な緊張が取れて“真にリラックスして快適になるとはどういう状態か”を体験していただきたいと思いながら施術を行っています。その過程の中で、上記の後頭部と頚椎、噛みしめ、重心などが整うように施術を展開していきます。そして深くゆったりとした呼吸と全身の筋肉から緊張が取れた深くリラックスした状態の実現を目指しますが、その中での確認事項の一つとして舌のホームポジションがあります。からだ全体が整ったときに舌は自ずと正しい位置におさまる、と私は考えているからです。

舌の状態とからだの不調の関係性
 舌を長く出せる人と、舌があまり出せない人がいます。それは舌の状態を判断する一つの要素ではありますが、舌の長さよりも「出し切れた感じがするかどうか=しっかりだせるか、どこか中途半端な感じか」の方を私は重要視しています。また反対に舌を引っ込める力はどうかも参考にします。舌は筋肉ですが、舌がこわばった状態の時は舌を大きく出すことができても、引っ込める力は弱く上手く引っ込めることができません。舌の問題で滑舌が悪い、舌がたるんでいてイビキや無呼吸の原因になっているかどうかを判断する参考にしています。

 また、舌は口の中にありますから当然食物のそしゃくと飲み込み(嚥下)に関わります。私たちは食物をそしゃくすることをほとんど無意識に行っていますが、そしゃくは噛み砕いて、唾液と混ぜて、こねて飲み込みやすい状態にする一連の動作です。これらの作を、歯(と歯茎)、頬、口蓋、舌、そしゃく筋の共同作業によって実に上手く行っています。ですから舌先に傷や口内炎ができてしまうと途端にそしゃくが上手くできなくなってしまいます。
 またそしゃくして飲み込みやすい状態になった食物(食塊)は喉の方に送られ、喉の筋肉群の働きによって正確に食道に入っていきます(=嚥下)。この時舌は口の天井(口蓋)にピタリとへばりついて喉の中を陰圧にしますが、それと同時に気管が塞がれ食道への通り道が開きますので、食塊は間違いなく気管ではなく食道の方に入っていきます。
 私たちは時々むせることがあります。それは唾液の一部などが気管の方に入ってしまい、それを強制的に排除して表に出そうとする気管の反応ですが、お年寄りが餅を気管に詰まらせてしまい呼吸ができなくなってしまうことがあります。それは舌と絶妙に連動して行われる嚥下動作にずれが生じたからだと考えることができます。
 もし、しばしばむせてしまうのであれば、それは舌と嚥下動作の連動性に微妙なずれが生じているからなのかもしれません。舌の状態が悪く、嚥下のときに自然(自動的)に喉を陰圧にすることができなければ舌を意図的に口蓋に押しあてて陰圧を作らなければなりません。その動作によって嚥下のタイミングが微妙にずれ、気管と食道の切り替えがスムーズに行えないと考えることもできます。

無呼吸症の疑い_ガッテン

 イビキや無呼吸症候群に対しては、私は一番先に舌の状態を確認します。舌は、私たちが通常イメージしている表層部のよく動く部分だけではなく、実際は口の底まである厚い筋肉です。いわゆる“二重顎”や“顎がたるんでいる”の本態は“舌筋がたるんでいる”と考えてもよいと思います。仰向けで寝た時、この舌筋のたるみが喉の方に落ちてしまい気道を狭めたり塞いだりしてしまうのでイビキや無呼吸状態を起こしてしまうと考えますと、対策は舌筋のたるみ(=ゆるみ)を改善することになります。このことにつきましては別途取り上げますが、舌のホームポジションを正しい状態にすることはイビキや無呼吸症候群問題の改善策の一つになります。

 東洋医学(伝統中医学)には“舌診”という、舌を細かく観察して全身の状態を把握しようとする診断方法が重要項目としてあります。また、舌は心臓と関係が深い(=舌は心臓の状態を表している)と考えられており、舌が大きくなると虚弱の現れ(舌が大きくなって所定の場所に収まりきたなくなると歯形が舌先についてしまう)という考え方もあります。また同じ伝統医学であるインドのアーユルヴェーダは、舌の表層を掃除して健康を維持増進するというセルフケアを推奨します。毎朝の歯磨き同様、舌もきれいにする習慣が良いと考えられています。
 私はこれらの医学を深く勉強したことがありませんので、その根本的な考え方やメカニズムについては知りませんが、どちらの伝統医学も舌を大切に考えるという点は注目に値します。また解剖学的には、舌は内臓筋と骨格筋の両方の性質を併せ持ったものであるとの見解もあります。四つ足の爬虫類の動物にはまるで手と同じように舌を大きく伸ばしてハエなど獲物を捕獲するものがあるからです。
 これらのことを頭に入れながら舌の問題に接していますが、舌と横隔膜(=呼吸)と骨盤底(=からだの底力)と足底は密接に関係し合っていると私は考えています。
 同じところでじっと立ち続けて作業をしている人は足底が硬くなったりゆるんだりしますが、それは骨盤底を同じ状態にして腰痛を招き、さらに横隔膜の働きも悪くなって呼吸が浅くなり、イビキを招く可能性がある。あるいは、しゃべるのが好きで舌の使いすぎのため舌筋がゆるんでしまうと呼吸がハァハァと浅くなり、お尻も下がって歩くと足裏が疲れてしまう、などという状態を招くかもしれません。

 昔、中国の医学者から「“活”きるという言葉は舌が水で潤っている状態を表している」という話を聞かされたことがあります。また、霊性修行を行っている人にとって感覚器官のコントロールは大切なことですが、舌には言葉を発する仕事と味を感じる仕事の二つの役割があるので、舌をコントロールすることが一番難しく、しかし「舌を制することができれば他の感覚器官を制するのは容易なことだ」という話を聞いたことがあります。
 “舌”は私たちが認識して思い描いているよりももっと奥深い存在なのかもしれません。目・鼻・耳・皮膚という他の四つの感覚器官は体表に出ていて環境からの情報を処理していますが、唯一舌だけが口の中という内部に収まっていて護られています。そう考えますと“舌”は私たちの想像以上に重要な存在であり、からだの神秘が秘められているのかもしれません。また違った角度から舌について取り上げてみたいと思います。

 定期的に来店されているお客さんが、「口内炎ができてしまった」と舌を見せました。舌の右側の縁に口内炎ができていました。
 インターネットの情報を見ますと「口内炎にはアフタ性口内炎、カルタ性口内炎、ヘルペス性口内炎、カンジダ性口内炎と様々な種類がありますが、舌にはそのほとんどが発症する可能性があります。」とありました。確かに口の中には沢山のばい菌がいますので、それらが炎症を起こしてしまった原因であることは間違いのないことです。
 ところがここで疑問が生じます。口の中にはいつもばい菌があるのに、口内炎が出来る時と出来ない時があるのは何故? です。
 「疲れが溜まって免疫力が落ちたため発症した」というのは理屈として正しいかもしれません。しかし、それだけでは納得できないと私は考えてしまいます。「何か発症のきっかけになることがきっとあるはずだ」と思うのです。  この方は、舌の右側の縁の部分だけが炎症をおこしていましたので、「おそらく舌が歯に接触していて、その部分が弱くなってしまったのではないか」と考えました。そしてさっそく口周りや頭頚部全体を確認しました。
 すると案の定、舌骨が右側に寄っていました。耳の下の筋肉がこわばっていましたが、それらの筋肉が舌骨を右側に引き寄せていたのです。何もしない状態で会話をしますと、やはり舌が歯に当たると言っていました。そこで、手動で舌骨を左側に少し押した状態で会話をしてみました。すると舌が歯に当たることはなく、痛みも感じないということでした。
 その後、舌骨を右側に引き寄せている筋肉のこわばりがなくなるように調整してこの問題を終了しました。
 ちなみに、こわばっていた筋肉は茎突舌骨筋、肩甲舌骨筋、斜角筋などですが、それらは肩甲骨の位置、側頭骨の位置、噛みしめの癖などと関係します。この方は少しめまいの気もありましたので、耳の付いている側頭骨がずれていました。

追記(2014/11/25):
 1週間後にこの方が来て、「施術の翌日には口内炎は治っていた」ということでした。
 
舌と舌骨の関係

 ところで、時々舌やほっぺを噛みやすいという状態の人が来ます。舌を噛みやすい場合は、まず舌骨の位置を確認します。ほっぺを噛みやすい場合は、顎関節での噛み合わせをまず確認します。
 舌骨は舌(舌筋)の出発点ですが、宙に浮いていますのでとても動きやすい骨です。また、いくつかの筋肉が付いていますが、それらの筋肉が変調を起こすと容易にずれてしまいます。それ以外にも頚椎の3番、4番あたりがずれたり捻れたりしますと、その影響で上から見て時計回りや反時計回りにずれてしまうこともあります。すると舌を噛みやすくなってしまいます。言葉もしゃべりにくくなるはずです。
 また、噛み合わせが良くない状態ですと、上の歯列と下の歯列がずれているため食物を噛んだりこねたりしているときに舌を噛んだり、ほっぺを噛んだりしやすくなってしまいます。それもまた口内炎の原因になりますので、しばしば舌やほっぺを噛んでしまう人は、舌骨の位置と噛み合わせを調整した方が良いと思います。

 少し話がずれますが、ヘルペスがなかなか治らなくて苦しんでいる人もいます。「薬を使ってある程度は良くなったが、その先が進まなくてなかなか完治しない」と言いうこともあります。こういう場合は、筋膜が捻れている可能性があります。
 ヘルペスだけを改善するために私のところに来られる方はこれまでおりません。ですから施術時間60分のうちせいぜい10分くらいをヘルペスに対応したりしています。私の感じる印象では筋膜の捻れが完治を妨害している可能性があるということです。脇腹のヘルペスの場合は肋骨の歪み、足であれば足首の歪み、という感じで骨格が歪んでいることによって筋膜も捻れます。するとその部分の血液の流れが悪くなりますので部分的に免疫力が上がらず薬の効果が発揮できないのではないかと思います。

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