ゆめとわのblog

ホームページとは違った、より臨場感のある情報をお届けしたいと思っています。 また、テーマも整体の枠を飛び出してみたいと思います。 ホームページは以下です。 http://yumetowa.com/ お問い合わせはメッセージ欄でお送りください。

筋・筋膜・骨

 肩甲骨の下部から腰部の上までの、「背中の真ん中あたり」と表現される部分の張りや不快感や痛みは筋骨格系の不具合によるものと、体調に関係して内臓や循環の不調によるものがあります。

 この部分の不調を訴えられる人に対しては、施術方針を決定するまでに少し時間がかかる場合があります。
 何が症状を発しているかを見極めることが施術の第一段階になりますが、以下の3つを念頭にからだを観察して施術方針を決めることにしています。

  1. 脊柱起立筋や広背筋、肋間筋など筋骨格系
  2. 循環不良による静脈血やリンパの停滞‥‥むくみ
  3. 胃や腎臓など内臓器官の腫れや硬直など

 上記の3つの項目が単独で症状をもたらしている場合もありますが、2つが混ざっていることもあります。

(1)筋骨格系の不具合

・脊柱起立筋(せきちゅうきりつきん)の張りと痛み

 背中の最も深い層には骨盤から頭部にかけて、縦方向に連続的に繋がっている筋肉群があります。その筋肉群を専門的に脊柱起立筋群と呼んでいます。

 この筋肉群は背骨からの離れ方で3群に分けて考えることができます。
 背骨に最も近く、脊椎に付着している脊柱固有筋群(側線1)は背骨を安定させる働きをしています。
 そのすぐ外側には最長筋群とその流れの筋肉群があります(側線2)。これらの筋肉群は主に背骨の前後運動に関係します。
 そしてさらに外側には腸肋筋群とその流れの筋肉群があります(側線3)。肋骨を動かす働きをしますが、上半身を捻る動作に深く関係します。

 これら脊柱起立筋群は背骨と肋骨に付着していますので、猫背など姿勢が悪い状態が続いたり、あるいは背骨が曲がったりしますと変調してこわばったり、ゆるんだりします。

 背中で、縦方向に棒のような状態で硬くなった筋肉が感じられ、それが痛みを発するようであれば、それは脊柱起立筋群のこわばりによる痛みです。
 脊柱起立筋群は下半身ではふくらはぎの筋肉、上半身では頭部や手指の筋肉から連動関係で繋がっています。ですから症状が脊柱起立筋群の張りや痛みである場合は、姿勢のことも含めて、全身的に整えることが必要になっていきます。

・広背筋と肋間筋の張り

 広背筋は背中全体を覆うように存在している大きな筋肉です。その大きな筋肉が一つの束にまとまり腕に繋がっていますので、腕を動かすとき強い力を発揮することができます。

 そして、広背筋の出発点(起始)は骨盤(腸骨陵)、背骨、肋骨と広い範囲になっていますが、それ故に肋骨がグラグラした状態になるだけでも筋肉が変調するようになります。
 また、腕の使いすぎで背中が痛くなることがありますが、それは広背筋のこわばりによるものです。

 そして、ときどき肋骨がぐらぐらしている人が来店されます。肋骨がグラグラしている状況というのは普通の人にはわかりにくいと思いますが、胴体の骨格的締まりが乏しい状態で、本来肋骨はウエストラインに近づいて行くに従い幅が少しずつ狭くなっていくものなのですが、胸郭下部の方が拡がっているように見えるかもしれません。
 このような状態の人は、肋骨がぐらついていますので上半身を触った感触では柔らかく(不安定に)感じるのですが、本人の内的感覚では背中や脇の下あたりがこわばって動きが悪いと感じるかもしれません。
 肋骨のぐらつきは肋間筋と広背筋にこわばりをもたらします。



(2)循環不良によるむくみ

 「背中に鉄板が入っているように感じる」と訴える人が時々来店されます。あるいは「背中全体が重苦しい」と訴える人も時々来店されます。このような状態は、背中に水分(静脈血やリンパ液)が溜まっていて流れ出ていかない状況が考えられます。

 体液(血液とリンパ液)の循環は二つに大別できます。
 一つは心臓の力と血管(動脈)の搏動を主とした動脈血の循環です。「心疾患」「動脈硬化」など医療機関が専門にしている循環系です。
 もう一つは静脈血とリンパ液の循環です。こちらの循環系は心臓や血管の力というより、血管やリンパ管の周囲に存在している筋肉の働きが重要な要素になります。
 そして動脈は深層に、静脈は深層と浅層(皮静脈)にありますが、静脈系は深層と浅層が繋がっていたり(吻合)、何処かが詰まるなどしても別のルートを通って血液が心臓に戻れる構造になっています。

 静脈系の循環に注目しますと、全身的に見て、2ヶ所流れが滞りやすいところがあります。
 それは鎖骨と第1肋骨の隙間を通過している鎖骨下静脈の部分と、骨盤の前面にあります鼡径部の所です。(詳しくはこちらを参照してください)

 鎖骨下静脈は心臓の上から静脈血が心臓に還るルート(上大静脈)ですが、鼡径部の静脈(大腿静脈)は心臓の下から心臓に還るルート(下大静脈)です。
 例えば鎖骨と第1肋骨の関係が歪んでしまい鎖骨下静脈の流れが悪くなったとします。すると本来は鎖骨下静脈を通って心臓に還るはずだった腕の静脈血は、鎖骨下静脈が通行止めになっている状況なので、他のルートを通って心臓に還ろうとします。つまりそのルートははるばるお腹を下って伏在静脈~大腿静脈~下大静脈に合流しようとします。
 このような状況になりますと、鼡径部に静脈血が集中して渋滞状態になりますので、下半身の静脈の流れも悪くなり、下半身がむくむようになってしまいます。
 そして、このような状態は日常的にたくさん見ることができます。
 つまり下半身にむくみを感じている人の多くはこのような状況です。
 施術で鎖骨下静脈の流れを改善しますと、実際に足の方から流れが良くなりむくみが改善します。そしてしばらく施術を継続していますと上半身の流れが良くなりだし、手のむくみが取れ、頭の中がスッキリしはじめるという現象が起こります。

 さて、背中の停滞に話を戻しますが、背中側がむくんだような状態になるということは、同じように考えますと、お腹側の静脈やリンパの流れが悪くなっている可能性があることになります。
 あるいは鎖骨下静脈も鼡径部の流れも両方悪く、浅層の静脈血やリンパ液がほとんど心臓に還ることができない状況になっているのかもしれません。


 ですから、この状況を改善するための方法は、お腹側の筋肉や筋膜を整えて腹壁の浅層静脈の流れを良くすることと、鎖骨下静脈の流れを整えることと、鼡径部の流れを整えることの三つを行うことになります。

 背中に水分が停滞して、背中がカチカチになっているので揉みほぐしをたくさん行ったとしても、それはなかなか改善しません。水分の抜け道が塞がったままでは無理なのです。
 それよりも、上記の三つを行うことの方が、スマートに、スムーズに辛い状況を改善することができます。

(3)内臓の影響による背中の張りと痛み

・胃の不調における背中の張り

 だいぶ前になりますが、NHKの「ためしてガッテン」で、胃の不調についてのテーマでしたが、胃が腫れる様子をX線撮影した映像を見ました。そこには胃が腫れると背中側に膨れる様子が映し出されていました。
 「胃の裏側が苦しい」とか「痛い」と表現される人が時々いますが、それは正しく正確で、背中側に膨れた胃が背骨や肋骨を圧迫している症状です。
 ですから、場所的に「みぞおち」の裏側辺りの背中が硬くなって辛い状況では、「胃が不調で硬く腫れている」可能性が高いと思われます。
 そしてこのような状況が考えられるときの施術では、「胃の調子はいかがですか?」と必ず尋ねまして、ご本人がうなずかれるようでしたら、胃に着目した施術を行うようにしています。

 胃の不調に対して私が持っている対処法は二つです。一つは呼吸を整えることで、もう一つは胃の反射区やツボを利用することです。

 胃は横隔膜のすぐ下にあります。ですから横隔膜の状況は胃の状態に影響を及ぼすと考えられます。息を吸ったときに横隔膜が下がり胃を上から圧迫しますが、同時に胸郭が拡がりますので、胃は横に拡がることができます。そして息を吐く段階では、横隔膜が上がって腹部が拡がりますので、胃は圧迫から解放され、本来の状況に戻ることができます。
 横隔膜と胸郭の動きが正常であれば、呼吸の度に胃は圧迫されながら横に拡がったり、本来の状況に戻ったりと適度な運動を行うことができますので、快適な状態を保つことができるのではないかと思います。
 もし、横隔膜が上手く収縮することができなかったり、胸郭が拡がることができなかったりしますと胃の運動は不適切な状態になってしまうと考えられます。あるいは息を吸ったままの状態で吐くことが上手くできなければ、横隔膜はゆるむことができずに胃は圧迫を受け続ける状況になってしまいます。
 これらによって胃の消化能力が落ちてしまうことは十分に考えられますし、それによって不調を感じるようになることは十分に考えられることです。
 ですから、胃の不調を改善しようとするならば、先ずは呼吸状態を整えて横隔膜と胸郭の運動を正常な状態に保つことが必要なことだと私は考えます。

 その上で、それでも胃の不調や背中の硬さが取れない場合は、手と足にあります胃の反射区に対する刺激を行います。
 場合によってはさらに足三里や中?(ちゅうかん)といった東洋医学のツボ(経穴)を刺激することもあります。

 胃の不調は背中の苦しさだけでなく、時に非常に重苦しい肩こりをもたらすことがあります。原因もよく解らないのに、急に肩こりが強くなって非常に辛い状況になる場合がありますが、胃の不調と関連している場合があります。
 そんな場合も含めて、呼吸を整えることと、反射区やツボに対する刺激を適切に行うことで、病的状態ではない限り、大概の胃の不調は改善します。

・腎臓の腫れによる背中の辛さ

 胃の不調による背中の張りは、鳩尾(みぞおち)の裏側あたりになりますが、その下の胸郭下部から腰部にかけての部分の辛さは腎臓の膨らみによる可能性があります。

 腎臓が膨らんで硬くなり、それが肋骨や後腹壁を圧迫して痛みをだしたり辛さを感じるようになるのですが、場所的に腰痛と間違ってしまうかもしれません。
 「腎臓が膨らむ(あるいは腫れる)」と申しますと、病気を疑ってしまうかもしれませんが、私たちのからだは疲労が強くなると腎臓が膨らむ傾向にあるのかもしれません。
 また、腎臓は東洋医学によりますと耳と深い関係にありますので、耳の状態が悪くなりますと腎臓が膨らむ傾向もあります。そして反対に腎臓の状態が悪くなりますと耳に不調や不具合が起こる可能性も考えられます。
 実際の施術経験上、私は耳と腎臓の関連性は明らかに存在すると知りましたし、耳鳴り、難聴、中耳炎など耳の不調に対しては必ず腎臓の状態を整えるようにしています。

 さて、腎臓の膨らみを改善するための施術では、胸郭を整えること、耳のある側頭骨を含めた頭蓋骨を整えること、そして腎臓の反射区を刺激することを行います。
 腎臓の反射区では手のひらの反射区と足裏の反射区を利用しますが、足裏の反射区の方が効果が高いような印象を持っています。

 「腎臓の不調」と言いますと「むくみ」が連想されます。心臓や肝臓もむくみに関係する臓器ですが、私は「むくみ」と聞きますと、血液循環と腎臓をまず思い浮かべて考えるようになっています。
 私が行う整体の施術では、特別な理由がない限り先ずベッドにうつ伏せ(伏臥位)になっていただいた状態から施術を始めます。そして最初は全身を軽く擦ったり揺らしながら大まかな状態を把握してくのですが、背中の状態を見るときには胃と腎臓の場所に注目します。
 程度の差は様々ですが、腎臓が膨らんで肋骨を圧迫している人はたくさんいます。みなさん、お疲れなのですね。

 ところで、もう何年も隔週で来店されている人が「右足が着けないほどに右脇腹~腰~太股~ふくらはぎにかけて強烈に痛む!」と言って来店されました。私が少し脇腹に触れますと、それだけ「痛い!」と嫌がりました。
 「触ることもできないのに、どうやって施術しようか?」と少し悩んだのですが、なんとかベッドに寝ていただき、慎重に施術を始めていきました。
 そして解ったことは、結局のところ右側の腎臓の腫れが問題を引き起こしていたことでした。その状態がかなり悪かったために、放散痛が右半身全体に及んでいたのです。
 全身的に骨格を整え、その上で20分近く右足裏の腎臓反射区に集中して施術を行いました。
 足裏もカチカチに硬くなっていて、腎臓の反射区は足裏の深いところにあるのですが、私の指がなかなかそこまで届かない状態でした。私も負けずに頑張って指圧をつづけていましたが、さすがに、私の指もほとんど力が入らないほどに疲れ切ってしまいまして、これ以上手指ので施術はできない旨を話して、足つぼ用の棒を使って反射区に対する施術を続けていきました。
 20分くらい施術を続けていましたら、ようやく足裏の反射区に変化が現れ始め、同時にカチカチに膨らんでいた腎臓周辺も柔らかくなり始めました。そして、それからは浮き袋から次第に空気が抜けていくような感じで柔らかさが戻ってきました。もう触っても痛がりませんし、少し強めに圧迫しても痛がらない状態になりました。
 その後、座っていただいて上半身を捻ったり、立って歩いたりしていただきましたが、痛みは感じない状態になっていました。
 私自身、そうとうに体力を使った施術でしたし、受け手のご本人も施術の途中からは反射区への刺激がかなり痛かったと思いますが、耐えていただいた甲斐あって、状態はすっかり良くなりました。
 念のために、翌週に来店していただきましたが、その間も状態は良好だったということでした。

 私自身、長い施術経験の中でも、腎臓の膨らみでここまで痛みを感じる状況に対峙したのは初めてでした。そして腎臓の膨らみだけで、脇腹~ふくらはぎまで痛くなり、足が着けなくなることを知りました。


 以上、今回は背中の真ん中から下部にかけての張りや痛みについて取り上げてきました。
 なかなか背中の張りや痛み、重苦しさが取れないと感じている人にとって、参考になれば幸いです。

足つぼ・整体 ゆめとわ
電 話  0465-39-3827
メールアドレス info@yumetowa.com
ホームページ http://yumetowa.com
web予約 http://yumetowa.com/sp/reserve2.html

 肩こりを訴える人の中には「肩甲骨の内側も張って痛い」という人もいます。
 今回は肩甲骨を中心とした背中の上部の張りと痛みについて説明させていただきます。

 “張り”とか“痛み”というのは、ほとんどの場合、筋肉の緊張やこわばりによる症状です。
 そして、緊張やこわばりにが生じる理由は大きく二つに分けることができます。

 一つは、筋肉を酷使するなど筋線維を収縮し続けていたり、たくさん収縮する状況を続けてしまった結果、筋肉がこわばって縮んだ状態になっている場合です。
 つい顔や首や肩に力が入ってしまうような人、あるいはからだの何処かに力を入れることでからだを支えているような人は、顔や首や肩や上背部の筋肉を収縮させ続けている可能性があります。
 このような場合、筋肉は縮む方向に働いていますので、引き伸ばされると痛みを発するようになります。
 例えばストレッチ運動などで気持ちよく筋肉が伸びているうちは心地良いのですが、限界まで伸ばした後、さらに伸ばそうとしますと痛みを感じます。それは、それ以上筋肉は伸ばされたくないので拒否反応を起こし、伸びる方向ではなく縮む方向に働き方を変えたからです。
 それ以上伸ばされると筋線維を傷める危険性があるので、筋肉の自己防御反応として反射的に筋線維は収縮して伸ばす力に対抗しますし、「これ以上は危険だよ」というサインとして痛みを発します。

 二つ目は、筋肉が繋がっている骨と骨の間隔が本来の在り方より拡がってしまった場合です。
 筋肉は骨と別の骨を繋いで、自身を収縮したり伸張したりすることで骨を動かします。
 そして、からだの動作とは骨格の動き、骨の動きのことですから、筋肉が働くことによって骨が動き、動作が行われるという理屈になります。
 例えば、からだの動作が行われていない状態、つまりからだがリラックスしている時、二つの骨を繋いでいる筋肉の適正な張り具合によって骨格の位置は決まります。そして、この状態が骨と骨の本来の在り方であるとしたとき、何か理由で骨と骨の間が離れますと、間をつないでいる筋肉は骨に引っ張られる状況になりますので、緊張状態になります。
 これが筋肉の緊張であり、こわばり状態です。

 私は、この骨格の歪みと筋肉の変調の関係を説明するときに、電柱と電線の関係を引き合いに出してイメージしていただいています。骨と骨の間が拡がると筋肉はこわばり、反対に骨と骨の間が狭くなりますと筋肉はたるんで収縮力を発揮できない、ゆるんだ状態になります。

 仮に、左右の肩甲骨の間が本来よりも拡がったとしますと、背骨と肩甲骨を繋いでいる筋肉(小菱形筋と大菱形筋と僧帽筋)は緊張してこわばります。そして、この筋肉のこわばりが痛みや不快感や違和感を発するようになります。

 以上の二つが、筋肉が張ったりこわばったりする大きな理由ですが、肩甲骨周辺の痛みや不快感では、二つ目の骨と骨の関係が歪んでしまったことが原因になっている場合が多く見受けられます。

肩甲骨内側の張りと痛み

 肩甲骨周辺の上背部で、多くの人が不快感や痛みを訴える場所は肩甲骨と背骨の間です。
 痛みや不快感のほとんどは筋肉の変調がもたらす深部感覚ですが、この部位の表層には僧帽筋(そうぼうきん)があり、その深部に二つの菱形筋(りょうけいきん)=小菱形筋(しょうりょうけいきん)と大菱形筋(だいりょうけいきん)があり、更に深部に上後鋸筋(じょうこうきょきん)があります。

 そして実際のところ、肩甲骨内側の不快感と痛みの場合は小菱形筋と大菱形筋のこわばりによるものが最も多いと言えます。
 この二つの筋肉の最大の特徴は、背骨と肩甲骨内縁を繋いで肩甲骨の動きに深く関係することですから、肩甲骨の歪みによって筋肉はすぐに変調を起こします。
 ですから、「肩甲骨内側が痛い・張っている・気持ち悪い」という訴えに対しては、まず小菱形筋と大菱形筋の状態を確認することから施術を始めることになります。
 そして次に、二つの菱形筋に変調をもたらす原因として肩甲骨と背骨の在り方を確認するようになりますが、肩甲骨と背骨の間を拡げる要因として、まず前鋸筋(ぜんきょきん)を確認することになります。




前鋸筋のこわばりによる肩甲骨間の拡がり

 肩甲骨を外(腕の方)にずらす筋肉の代表は前鋸筋(ぜんきょきん)です。
 日常動作で前鋸筋がもっとも働く状況は、腕を伸ばした状態から更に腕を伸ばすようなときです。手を伸ばして物を取るとか、物を遠くに置くようなときに、腕を伸ばし肩を前に出して動作を行いますが、このように肩を前や外に突き出すときに前鋸筋が働きます。
 ボクササイズという人気のトレーニングがありますが、ストレートパンチを打つ動作は前鋸筋を力強く使いますので、それによる弊害もあります。トレーニングの後は、しっかりと前鋸筋のストレッチをして、肩甲骨の位置を本来のところに戻すようにしていただきたいと思っています。

 そして、肘を浮かせた状態で腕を前方に保持する動作の時も前鋸筋は作動します。つまりパソコン業務です。
 パソコン業務を行う時、肘を下ろした状態でキーボードを叩いているのであれば前鋸筋は働きませんが、肘を浮かせますと、その状態を保つために前鋸筋は緊張状態になります。

 また、パソコン操作に限らず、肘を浮かせた状態を保つ姿勢は前鋸筋が収縮する可能性が高まります。
 脇が開いて、肘を張った姿勢で文字を書いたり、物を持ったり、箸を使ったりすることでも前鋸筋はこわばります。

 ですから、実際のところ多くの人の前鋸筋はこわばっています。そして、そのこわばり状態が悪化しますと、肩甲骨を大きく外側や前方に歪ませることになります。肩が前に出て猫背のようになっている人は大抵このような状態です。



前鋸筋のこわばり以外の理由で肩甲骨と背骨の間が拡がる理由

 専門的な言葉ですが、肩甲骨のことを別の呼び方として上肢帯(じょうしたい)と呼ぶことがあります。その意味は腕(=上肢)を体幹(=胴体)に繋げる帯の役割をしている骨格ということです。つまり肩甲骨は腕と胴体を結び付けて動作を円滑に行うための骨格であるということです。
 ですから、肩甲骨の位置を考えるとき、背骨(体幹)と肩甲骨の関係だけでなく、腕と肩甲骨の関係も考える必要があります。
 腕と肩甲骨を繋いでいる筋肉には三角筋(さんかくきん)があります。また、上腕二頭筋(じょうわんにとうきん)や上腕三頭筋(じょうわんさんとうきん)、烏口腕筋(うこうわんきん)も腕と肩甲骨を繋いでいますので、それらの筋肉のどれかがこわばった状態になりますと、肩甲骨を腕の方に引っ張ってしまう可能性も出てきます。
 そうなりますと、肩甲骨は腕の方に引っ張られ外側に歪みますので、背骨との間が拡がり、小菱形筋、大菱形筋がこわばる可能性も出てきます。

 そしてここでは省略しますが、上記以外にも肩甲骨が外側に歪んでしまうからだの仕組み(構造的原理)はあります。

菱形筋のこわばりが発する不快感や痛みへの対応

 上述しましたが、背骨と肩甲骨を繋いでいる菱形筋がこわばる理由の多くは肩甲骨が外側方向に歪んでいることですから、肩甲骨の位置を本来の状態に戻す作業が必要になります。
 そして肩甲骨が外側に歪んでいる理由の一番は前鋸筋のこわばりですが、脇の下や脇腹に直接手を当てて縮んでしまっている筋肉を伸ばすような施術が効果的です。但し、かなり痛みを伴います。

 また、筋連動の仕組みで前鋸筋がこわばっている場合もあります。
 手の親指の筋肉(短母指外転筋、長母指外転筋)の使いすぎ、例えばスマホゲームのやり過ぎなどで前鋸筋がこわばり肩甲骨が外側に歪んでしまうことがあります。その他、パソコン業務や親指と人差し指をたくさん使う作業で手首や肘の状態が歪み、それが前鋸筋のこわばりに繋がってしまうこともあります。

 足の方では、小趾側に重心がある人、O脚の人などは下半身の外側に負担が掛かり、外側の筋肉がこわばりますが、それが連動して前鋸筋がこわばってしまいます。
 ですから整体の施術としましては、手の使い方が変わるようにする、立った時の体重の乗り方が小趾側に偏らないようにする、なども行う必要があります。

 また、肩甲骨が歪んでいることで菱形筋がこわばる以外に、菱形筋自体がこわばっていて肩甲骨内側の不快感や運動制限を感じる場合があります。
 この場合は、肩甲骨が背骨の方に引きつけられますので、肩が後方に歪んでいる可能性があります。洋服を着たときに「肩のラインが合わず、しっくりしない」と感じるかもしれません。

 そして、前鋸筋がこわばって肩甲骨を外側に引っ張っている状況にプラスして、菱形筋自体がこわばって肩甲骨を背骨の方に引き寄せる力が働いているような場合は、最悪の状況に近く、じっとしているだけでも肩甲骨の内側にたまらない痛さを感じることになります。

 肩甲骨の内側のこわばりが強い場合、「肩甲骨の内側には手が届かないので、柱の角にこすりつけて辛さをごまかしている」などと仰る人がいますが、その場合は、前鋸筋と菱形筋の両方がこわばっている可能性が高いと考えられます。

 このような場合は、前鋸筋のこわばりを解消する施術に加えて、菱形筋のこわばりも解消する施術を行うことになります。

上後鋸筋が発する痛みと対策

 肩甲骨の内側には違いないのですが、表層(菱形筋や僧帽筋)ではなく、もっと深い部分が辛く、場合によっては常に締めつけられているような不快感を感じる状況があります。
 いくらマッサージしても解決することはなく、内臓系に問題があるのかと考えてしまう場合もありますが、それは上後鋸筋(じょうこうきょきん)のこわばりである可能性があります。
 上後鋸筋は菱形筋の下層にありますが、肩甲骨とは直接的な関係はありません。背骨と肋骨を繋いでいますので、胸郭の状態に関係します。

 胸郭は、背面の背骨(胸椎)と12本の肋骨と前面中央の胸骨で成り立っていますが、呼吸によって膨らんだり縮んだりしなければなりませんし、上半身の動きに合わせて柔軟に対応しなければなりませんので、骨盤や頭蓋骨とは違って自由度の高い骨格であると同時に、歪みやすい骨格でもあります。
 胸郭の状態を現す表現の一つに「鳩胸」があります。鳩胸と呼ばれる状態は胸郭の厚みが増している状態ですが、それは息を吸ったままの状態であると考えることができます。あるいは息を吐き出すことのできない状態であるとも言えます。

 上後鋸筋は背骨と肋骨を繋いでいますので、背骨から肋骨が離れてしまうような力が掛かっていたり、肋骨が離れているような状況になりますと変調してこわばります。
 そしてこのような状態が多く見受けられるのは、腹側の大胸筋がこわばっていて肋骨を胸骨の方に引っ張っていたり、胸骨の状態がおかしくてやはり肋骨を腹側に引っ張っている場合などです。
 あるいは、外肋間筋が強くこわばっていて、鳩胸のように胸郭が膨らんでいる場合もあります。
 つまり、胸側(前面)に力が偏って硬くなっていたり、縮こまっていたりしている時に上後鋸筋がこわばって、上背部を締めつけるような辛さを感じることが多いと言えます。

 ですから実際の施術では、一応背面から肩こりを揉みほぐすように上後鋸筋にアプローチしますが、それでらちがあかなければ前面の胸周辺を施術することになります。そして大概は、胸をゆるめることでリラックスしますと上後鋸筋のこわばりも解消します。
 上後鋸筋は背面の辛さですが、揉みほぐしや施術を行う場所は胸周辺になることが多いと言えます。

肩甲骨の表面に痛みや不快感を感じる場合

 肩甲骨の背面には、腕に繋がる幾つかの筋肉がありますが、その中で棘下筋(きょくかきん)がこわばって不快感や運動制限を感じる場合があります。

 棘下筋は肩関節を安定させて腕を外側に捻る働きをしますが、この筋肉自体がおかしくなることはあまりなく、腕や首や背筋や下半身の筋肉の影響を受けておかしくなる場合がほとんどです。
 ですから、棘下筋の変調を改善して肩甲骨背面の不快感を解消するためには全身を観察して対処する必要があります。
 棘下筋が張っているからといって、そこを揉みほぐしても痛いばかりで効果を期待することはできないと思います。

 また、同じ肩甲骨背面には棘上筋(きょくじょうきん)がありますが、よほど凝っていたり変調していない限り、この筋肉を辛いと感じたり、不快感を感じることはないと思います。
 しかし、肩こりの芯になる可能性のある筋肉でもあります。私は個人的見解として、人生の重荷は棘上筋が背負っているのはないかと感じています。
 指圧でゆるめることがこの筋肉に対する施術になりますが、指圧で指が深く入るに従って痛みが増しますが、同時に何かから解放されるような感覚も感じると思います。


足つぼ・整体 ゆめとわ
電 話  0465-39-3827
メールアドレス info@yumetowa.com
ホームページ http://yumetowa.com
web予約 http://yumetowa.com/sp/reserve2.html

 今回は私の話です。
 私は50年以上前、小学校一年生の時にブロック塀と衝突して、右目の眉のところを数針縫う深い傷を負いました。それによって右瞼を開く筋肉の働きが悪くなり、右瞼の開き方が中途半端な状態になっています。何十年もその状態で過ごしていますので、右目を開くときに無意識に額の筋肉を使うようになっているようです。
 私は仕事柄、接したお客さんのからだで気になることがありますと、その理由や原理を知りたくなり、自分のからだを使っていろいろ試してみる癖があります。

 最近の来店されたお客さんの額の中央部分に、硬く尖ったように感じる筋肉のこわばりがありました。いろいろな考え事で、その部分に力を入れてしまうことが多いのだと思うのですが、その尖ったこわばりをゆるめますと、全身から力みがとれて楽な状態になりました。
 ですから、どのような感じに変化をするのかを知りたくなりまして、自分の額で、硬い部分を見つけては指圧によって直接ゆるめてみました。
 自分の額ですから、お客さまに行う施術ほど丁寧ではなく、半ば力任せにゆるめたのですが、それが良くなかったようです。

 就寝前に布団に入りながら指圧を行っていたのですが、一段落したところで大きく激しいクシャミが何回かでました。すると、頭の右半分に強烈な頭痛が襲ってきました。
 頭痛は30分ほど続きましたが、少しずつ落ち着いてきましたので睡眠に入ることはできましたが、次の朝目覚めますと右手人差し指に筋肉が縮んで硬直したような痛みを感じました。
 おそらく前日の額への施術が原因で、からだのバランスがかなり崩れたのだろうと思いました。

 しかし仕事を休むわけにはいかず、夜まで仕事を続けましたが、すると人差し指の指先が裂けてしまいました。
 おそらく指先の筋肉や筋膜の収縮(引っ張り)に皮膚が耐えきれなくなって裂けてしまったのだと思います。
 すると指先はジンジンとして、指を曲げることだけで激しい苦痛を感じるようになってしまいました。

 また、指先の皮膚が裂けた痛みだけでなく、筋肉や筋膜の強く収縮した緊張が手から腕を超え、右の首筋、右肩にも及びましたので、「まいったなぁ~」と率直に思いました。翌日の仕事に影響が出るかもしれないからです。

 その夜は普段よりもゆっくり湯船に浸かり、ともかく温まって緊張がほぐれるようにと願いました。ところが風呂から出ますと、からだ全体がどんより重くなってしまい、起きているだけでさえ辛く感じるようになってしまいました。普段は入浴後はゆっくりくつろぐ時間を持つのですが、その時は気分が優れずすぐに布団に入ってしまいました。

 翌日も朝から夜まで予約が埋まっていましたので、「なんとか今晩中に良くなりたい!」と思いまして、からだ中に重みを感じながらも布団の中であれこれ考えてみました。
 「額の硬結を取っただけなのにこんなにバランスが崩れてしまって‥‥、何処が間違っていただろうか?」等々悶々としながら、手を額に当てながら思いを巡らせていました。

 すると不意に、50年以上前、小学校一年生の時にブロック塀に衝突して深い傷を負ったことを思い出しました。私は衝突の衝撃で気を失ってしまいましたが、両親は「失明したかもしれない」と思ったというほどの大きなケガでした。
 右眉の端の方を切ったのですが、病院で数針縫いました。その損傷の影響によって50年以上経った今も右上瞼の開き方が中途半端な感じになっていますが、そのことと関係があるような気がしてきました。

 普通は眼瞼挙筋(がんけんきょきん)が働いて上瞼が開きます。ところが私はケガによって眼瞼挙筋の一部が働かない状態になっているのだろうと思います。しかし、物を見るためには眼を開く必要がありますので、無意識に額の筋肉を収縮させて眼を開いていたのだろうと思います。そんな状況が50年以上も続いているわけですから、額の筋肉は部分的に非常にこわばった状態になっていたのだろうと思います。
 あるいは、上瞼に関係する筋肉や筋膜が損傷したことの影響で全身のバランスが崩れないようにと、額の筋肉の一部を硬くして、なんとか全身のバランスを保とうと頑張っていたのかもしれません。
 それなのに私は、その頑張っている部分を指圧によってゆるめてしまったために、バランスが崩れてしまい、右首筋が張り、右肩が重くなり、そして右腕から人差し指にかけてのラインが強く収縮してしまったのかもしれません。おそらくその可能性が高いと思います。

 ですから、布団の中で、今度は損傷してゆるみきっている瞼や眉や額の傷の部分に手を当てるケアを行いました。
 手を当てていますと、あのジンジンとした辛い苦痛感は軽減していきました。指先は裂けていますので、その傷の痛みはありますが、筋の強い緊張による重苦しさは消えました。指先も思い通りに曲げることができるようになりました。
 「ああ、そうだったか~」という感じです。やはりこれも古傷の影響です。
 一箇所崩れただけなのに、それで全身的にガタガタになってしまいました。加齢による体力の衰えを感じもしました。(若く体力があれば、他のところが迅速にカバーしてくれたと思います。)

 そして、そのような手当てを30分くらい続けていますと、からだの重苦しさも消えて布団から出る元気が出ました。そして、裂けた傷はあるものの、翌日の仕事に対する心配もなくなりました。

 ところで、先日、何年かぶりに来店されたお客さん(その時は肩関節の損傷)に「最初の時は、ただ手を当てているだけの施術だったので、“まひかりさん”かと思った」と言われました。
 私はま“ひかりさん”がどんなものなのか詳しくは知りません。
 純粋に、施術の技術として、損傷してゆるんでしまった筋肉や筋膜や皮膚を修復させるためには、“手当て”が最も適していると私は考えています。
 手指を当てていますと、そこに血液やエネルギー(気)が集まってきて細胞の働きが活発になります。それは、その疲弊した部分が脈動を発するようになりますので解ります。
 そして、このような手当てによる施術を繰り返すことで損傷部分が次第に回復していきます。私たちのからだ(細胞)はそのようにできています。ですから、思い込みや偏見を除外してちゃんと考えますと、手当ては適切な施術方法であることが理解できると思います。

 その後4日ほど経ちましたが、朝布団から出る前と夜布団に入ったときに、傷を負ったところや関連して弱くなっている部分に、心を込めて手当てをしています。
 まだ、裂けてしまった傷は残っていますが、仕事は普通にできています。裂けてしまった指先に絆創膏など貼ることもなく、普通に揉みほぐしの施術も行っています。

 単純な肩こりは別にして、腰痛や肩の張り、関節痛を訴える人のほとんどは、揉んでほぐせば症状が改善するだろうと思われているようです。
 ところが腰痛なども含め、からだの途中(手や足を除いたところ)にある硬結(こわばり)を直接ゆるめることに関しては、私は慎重です。
 硬くなって痛みを出している腰を揉んだ欲しいという気持ちは良くわかります。ところが、その硬さは、上記のように何処かにある弱い部分を補うために硬くなって頑張っている部分なのかもしれません。そうであれば、その頑張っている部分をゆるめてしまうことはバンランスを崩して更なる症状の悪化を招く可能性があります。
 接骨院で低周波や光などの電気治療を行ったあとで症状が悪化してしまったなどの経験あれば、それは、このような状態である可能性が考えられます。
 ですから施術の原則は、症状のあるところはいじることなく、別の場所を施術して、症状がなくなるようにすることであると、そのように考えています。
 この原則を外しますと、今回の私のような状態になってしまいます。 


 何日間か過去の傷痕を手当てしていますと、すっかり忘れていたブロック塀への衝突場面がおぼろげに思い出されてきました。塀の角に頭をぶつけ、それが骨に届くほどの傷だったことも思い出されてきました。
 そして、傷痕の残っている部分の骨を触ってみますと、今尚、少し凹んでいる様子を感じることができます。きっと骨膜の傷が治りきっていないために、その部分の骨の新陳代謝が上手くいっていないのかもしれません。あるいは、骨とはそういう性質をもっていて、傷は傷としてずっと残ってしまう仕組みになっているのかもしれません。
 ですから額の左側と右側で骨の様子が異なるわけですが、凹んだ部分が手当てを続けることで膨らんで平らになり、左側と同じようになるかどうかを観察していきたいと考えています。
 そして、この骨の傷と筋膜の損傷が回復したときには上瞼の開き方や様子が変化すると思うのですが、それも観察してみたいと思っています。

足つぼ・整体 ゆめとわ
電 話  0465-39-3827
メールアドレス info@yumetowa.com
ホームページ http://yumetowa.com
web予約 http://yumetowa.com/sp/reserve2.html

 いつも背中の張りや不快感を訴える人がいます。胃の調子も悪く、呼吸も中途半端な感じで、息苦しさを感じやすいと訴えます。
 肋骨(胸郭)に関係する筋肉(肋間筋、大胸筋、上後鋸筋)や背中の筋肉(脊柱起立筋群、広背筋)がこわばった状態で、息を吸いたくても胸が思うように開いてくれないような状態です。
 施術を行ってこれらの筋肉をゆるめますと、胃の調子や呼吸も改善し、ご本人は楽な状態になります。しかし何日かすると、また背中が辛くなり、呼吸も中途半端な状態に戻ってしまっていました。

 「どうしてなのかなぁ?」と熟考していたところ、「もしかしたらお腹の筋肉が使えないので、背中側の筋肉だけで頑張って生きているのかもしれない」という思いが浮かんできました。
 そして、お腹の筋肉が使えるようにからだを調整しますと、背中の辛さが和らぎ、呼吸も楽になった状態が長持ちするようになりました。

 今回は、お腹に力が入らない、つまり腹筋が上手く使えないために背中に大きな負担が掛かってしまい、からだに不調を感じてしまう話題です。


腹筋が働けない状態とは?

 椅子に座った状態(できれば足を浮かした状態)で、上半身を前傾していきます。30°程度曲げた状態で保持したときに、どこに力を入れて上半身を支えているかを観察します。
 この時、腰部や背中(背骨)の筋肉を主に使ってしまい、しばらくそのままの状態を保ったときに腰や背中が辛くなるようであれば、それは腹筋を働かすことが上手くできない状態です。そして、このような人は、意外に多いです。
 腹筋が使える人は、真っ直ぐ座った状態から上半身を前傾していくときに、背中ではなく下腹に力を入れながら上半身を支えています。このような状態であれば、腰部は辛さを観じることもありません。

 私たちは日々の暮らしの中でたくさん上半身を前傾させています。立った状態から座る時にも、座った状態から立ち上がる時にも上半身を前傾させて頭を沈めるようにしなければ動作をスムーズに行うことはできません。もし上半身を前傾することができなければ、ドスンと尻餅をつくように座らなければなりませんし、ギックリ腰のときに椅子から立ち上がるように背中をまっすぐにしたまま立ち上がらなければなりません。
 物を拾うとき、座りながら会釈をするとき、掃除機を掛けるとき‥‥、中腰になったり上半身を屈んだりする動作は日常生活の中でとても多いのですが、もし腹筋が働けない状態であれば、背骨を支えるために背筋や腰筋のみで頑張らなければなりません。
 そして、このような人は常に背筋に力が入っている状態ですから、腰部はこわばり、背中は常に張っている状態になってしまいます。

腹筋が弱いことと、腹筋が働けないことは違う

 「腹筋が働けない」状態を改善するためには「どうすれば良いのか?」ということに関して、多くの人は「腹筋を鍛える必要がある」と考えかもしれません。それは素直で純粋な考え方です。しかし、正解ではありません。
 腹筋が「弱い」のであれば、鍛えて強くする必要があります。ところが「筋肉が働けない」ことと「筋力が弱い」ことは観点が違いますので、同じカテゴリーで考えることはできません。(但し「筋力が弱すぎて働けない」という状態は存在します)
 筋肉が働けない状態を解決するための正解は「働ける状態にする」ことです。
 そして、そのためのキーワードは「重心移動」です。

働く筋肉の受け渡しと重心移動

 私は学問的専門家ではありません。ですから、言い方が正解かどうかはわかりませんが、「すべての運動の秘訣は重心移動に他ならない」と考えています。

 先ほど例として挙げました、座った状態で上半身を前傾していく運動を例にして説明してみます。

 骨盤の坐骨に重心があって真っ直ぐに座った状態のときに、背骨がしっかりと骨盤に乗っている状態ですと、腹筋にも背筋にも大して負荷は掛かっていません。骨盤が骨と骨の関係で上半身を受け止めています(骨盤に背骨が乗っている状態)ので、周りの筋肉はリラックスできます。ただし、坐骨に荷重がかかっていますので、長時間その状態を維持しますとお尻が痛くなります。ですから椅子に座っている場合は、背もたれに寄りかかるなどしてお尻(坐骨)の負担を軽減するようになります。
 この時、重心は坐骨から後に移動して骨盤を少し倒す姿勢になりますが、腰部や殿部の筋肉に負担が掛かるようになります。するとお尻や腰が疲れを感じますので、普通は倒れた骨盤を立てて、再び坐骨で座るようになります。私たちには無意識にこのような動作を繰り返し、重心の掛かる場所を少しずつ移動しながら、一箇所に負担が掛かり続けないようにしています。

 ところで、坐骨に掛かっていた重心を後方に移動して、お尻と腰で座る状態にしたとき、腰とお尻の筋肉、つまり背面の筋肉に負担が掛かるようになりました。すなわち、重心の後方移動によって背面の筋肉が作動した(作動させられた)状態になったわけです。
 これを同じ理屈で前面に当てはめて考えてみます。座った状態で上半身を前傾させるときに重心を坐骨から前方に移動させて恥骨に掛かるようにしますと、恥骨や鼡径部に繋がっています腹筋が作動するようになります。つまり、重心が前方に移動したことによって腹筋が働くようになったわけです。
 以上をまとめますと、私たちのからだは、骨盤を後方に倒して重心を後方に移動したときに背面の筋肉(腰部や殿部)の筋肉で頑張るようになり、重心を前方に移動(骨盤を前傾)したときに腹筋で頑張るようになる仕組みになっているということです。
 ですから、重心の移動によって頑張る(主体となって収縮する)筋肉が変わっていくということでありまして、バケツリレーのように働く筋肉がスムーズに受け渡されていく姿がそこにはあります。
 この仕組みによって筋肉はスイッチのオンとオフのように、頑張ったり、休んだりを繰り返すことができますので、疲労の蓄積が緩和できるようになっています。
 いつも重心が後方に固定されている人は、背筋や腰筋ばかりを使い、腹筋はほとんど使われない状態になりますので、背中や腰が辛くなりやすいと言えます。


重心移動がスムーズになるためには

 私たちのからだにはポイントとなる関節があります。そして、これらの大切な関節は関連性があります。
 以下のどの関節も重要ですが、立位で土台となる足関節(足首)とその要である距骨(きょこつ)の在り方は、「扇の要」のような役割を担っているのかもしれません。
 整体業の仕事として、膝関節を整えたり、骨盤や股関節を整えたり、肩関節や頚椎を整えたりすることが多いのですが、足関節における距骨、足のアーチなどを整えることはとても重要だと実感しています。

環椎後頭関節
 頭部と頚部との境には環椎後頭関節(かんついこうとうかんせつ)がありますが、頚椎の頭蓋骨がスッと乗っておさまっている状態が理想です。しかし実際には、首が前に出ている人が多いので、首と頭部を繋いでいる筋肉はいつも緊張状態になってしまいます。これが首・肩のコリや張りの主な原因だと考えられます。

第7頚椎と第1胸椎の関節
 首を胴体に繋ぐ所には第7頚椎と第1胸椎の関節があります。
 頚椎はゆるやかに前弯していますが、胸椎は反対にゆるやかに後弯しています。この接点である第1胸椎の関節面にバランス良く頚椎が乗っている状態が理想です。バランスが良ければ、第1胸椎が受ける頭部と頚部の重さはほとんど負担になりませんので、頚部と胴体を繋いでいる筋肉はリラックスできます。そしていつでも自由自在に首や頭を動かすことができるようになります。

腰仙関節
 背骨と骨盤の境には第5腰椎と仙骨を繋いでいる腰仙関節があります。立位の時、この腰仙関節には頭部・頚部を含めて上半身の重みがすべて乗っかるようになります。 背骨全体の状態が良く、骨盤もしっかりした状態であれば、苦もなく腰仙関節は上半身の重みを受け止めることができるようになっています。座った状態でも同様です。
 この腰仙関節が安定した状態の時には、重心移動は容易にできますので、今回話題になっています「お腹に力が入らない」という状況にはなりません。

膝関節
 膝関節は立ったり、しゃがんだり、中腰になったりと、下半身の運動においてとても大切な働きを担っていますし、非常に負荷が掛かるところでもあります。
 膝関節が不安定な状態ですと、普通に力を抜いて立っていることが難しくなります。立ち続けていますと膝が痛くなる場合もありますが、足首や股関節、腰、背中に痛みが現れることもあります。ですから、膝関節を安定させるためにも、大腿骨が脛骨の上にしっかりと乗っておさまっている状態を保つことが大切です。しかしながら、膝関節が歪んでいる人は多いです。

足関節
 足首(足関節)は全身の重みを受け、さらに足が地面から受ける諸々に刺激や負担に対応するために重要な働きを担っています。
 足首を挫いて捻挫状態になりますと、立っていることが辛くなりますし、歩行などで地面からやってくる刺激や圧力に耐えられなくなってしまいます。
 ですから、足関節は非常に重要です。頭と首の関係、首と胴体の関係、上半身と骨盤の関係、これらが正しく膝関節が安定していたとしても、足関節が歪んで機能不全の状態になっていますと、私たちは満足な立ち仕事ができなくなってしまいます。

 そして、これまで何度も説明してきましたが、足関節において距骨(きょこつ)は非常に重要です。距骨が正しい状態にありますと、前にも後にも、左にも右にも、重心の移動がいとも簡単に行えるようになります。距骨が捻れていたり、倒れていたりしますと、安定した立位を保つことができませんし、重心移動に手間取ってしまいますので、運動における「筋肉の受け渡し」がスムーズに行えません。ですから、からだに不調や不具合を生じたり、「運動が苦手」という状況になったりしてしまうでしょう。

参照: 距骨(きょこつ)‥‥足関節の安定と歩行と重心移動


 帝王切開やお腹を手術した経験のある人は、腹筋の働きが今一つしっかりしていない状態になっている可能性があります。
 ですから、そのような人達は尚更「スムーズな重心移動」が大切です。腹筋の働きが今一つの状態は、自ずと重心の前方移動を避ける傾向になっていると考えられます。それによって手術前と術後では体型やからだの使い方が変わってしまい、いろいろな不調を感じるようになってしまうかもしれません。
 そのように感じている人は、是非、足関節や膝関節を整えて、骨盤を良い状態にし、重心移動がスムーズに行えるからだを目指していただきたいと思います。そうすれば、最初は弱いながらも腹筋が使えるようになり、やがて腹筋が鍛えられて、手術の傷を補いながら普通の人のような状態になれるのではないかと思います。
 1年先、3年先、5年先の自分の在り方を改善するためには、「お腹に力が入る」ことは重要だと考えています。

足つぼ・整体 ゆめとわ
電 話  0465-39-3827
メールアドレス info@yumetowa.com
ホームページ http://yumetowa.com
web予約 http://yumetowa.com/sp/reserve2.html


(過去に投稿した記事を修正加筆したものです)

 踵(かかと)が痛くなる足底筋膜炎という症状があります。歩くと踵が痛くなったり、ひどい場合には軽く触れるだけでも痛みを感じますので、立ったり歩くことができなくなったりします。
 整形外科を受診しますと足底筋膜炎と診断されたり、あるいは踵の骨に棘ができて筋肉や筋膜を刺激するので痛みを発すると診断される場合もあります。その他には踵骨後部やアキレス腱皮下、踵骨下の滑液包炎などという診断もあります。
 しかし、診断はされても即効性のある有効な治療手段はないようで、「そのうち良くなる」みたいな感じで痛み止めと湿布薬で診察が終わってしまうようにも聞きます。

 地面に踵を着けたり、何かで踵を刺激しない限り、寝ている状態では痛みを感じないのであれば、それは筋肉や筋膜の問題であると考えることができます。



ふくらはぎの筋肉と踵の痛み

 さて、刺激を受けると痛みをだすということは、筋肉や筋膜がこわばっていると考えるのが原則です。
 足裏の皮膚の直下には足底筋膜があります。そしてその下には、小趾外転筋、短趾屈筋、母趾外転筋があります。これらの中のどれかが強くこわばっているので圧力や刺激を受けると痛みを出すと、まず考えてみます。
 筋肉や筋膜がこわばるということは、“縮んでいる”あるいは“縮みたがっている”ということですから、伸ばされたくない状態になっています。この状態の時に体重が掛かったり、刺激や圧力を受けますと、筋・筋膜は強制的に伸ばされる状況になりますので拒否反応として痛みを発します。

 踵の問題は足底(足裏)の筋肉や筋膜との関係もありますが、ふくらはぎの筋肉がこわばっていることによってもたらされている場合が多くあります。
 足底筋膜の中央部と短趾屈筋はふくらはぎの外側の筋肉(腓腹筋外側頭)と関連性があります。腓腹筋外側頭のこわばる理由はいくつかありますが、骨盤や膝関節の問題による影響を受けている場合もあります。踵の痛みを同時に膝関節の内側も時々痛むといった場合は、膝関節の歪みが原因になっている可能性が高いと思います。

足の骨格の歪みと踵の痛み

 「アキレス腱」と呼ばれています踵骨腱は腓腹筋(外側頭と内側頭)とヒラメ筋が足首近くで一緒になって踵の後側につながっていますので、教科書的に考えますと、ふくらはぎの裏側のほぼ中央を通って踵骨の中央部に付着しているのがバランスの良い状態です。

 ところが、腓腹筋の外側頭と内側頭のバランスが悪かったり、足の骨格が歪んでいて踵骨が内側か外側のどちらかに偏っていたりしますと、アキレス腱の付着部も偏った状態になります。
 アキレス腱の付着部が偏って歪んだ状態になりますと、それに合わせるように足底筋膜や短趾屈筋が変調状態になりますので、炎症を起こしやすい状態になってしまうと考えることができます。つまり、かかと重心でいつも踵に余計な荷重掛かっていたり、履き物が合わなくて踵に負担が掛かったりしますと、炎症を起こしてしまう可能性が高くなります。

 実際、足の骨格は踵骨だけでなく、距骨と脛骨や腓骨の関係も含めて歪んでいる人が多いのですが、踵の炎症によって痛みを発している人に対しては、足の骨格を整え、アキレス腱付着部の偏りを除去することは有効です。

血行不良と踵の痛み

 私は症状の原因を「老化現象」や「加齢による影響」と結論づけることにとても抵抗感を感じています。病院に罹ると、医師が「歳だから‥‥」とすぐに言い出すと、高齢者の人はよく訴えますが、確かに、失礼な話だと思います。
 しかしながら一方で、老化現象や加齢による影響は確かに存在します。その一つが寝ている間の血行不良です。
 朝、起きがけ、ベッドから降りようと床に足を着けたときに踵が痛み、何歩かあるいていると痛みが消える、というのであれば、血行不良が第1の原因だと考えることができます。
 筋肉が正常に働くための必要条件の中に、血流と温度があります。血流が不足していますと、筋肉はうまく伸びることができなくなりますので、踵を着けたときに足底筋膜や足底の筋肉、あるいはふくらはぎの筋肉やアキレス腱が痛みを発することは考えられることです。体温が足りなくても同じ事が言えます。
 このような場合は、何歩か歩くなどして、運動による血液循環が開始されますと自然と痛みは消失します。あるいは、高齢者などで寝ている間に熱をつくり出すことができない人は、起床後1時間ほどしますと、筋肉が正常に働き出しますので痛みが消失すると思います。

炎症が酷くなったら整形外科に

 筋肉だけでなく、私たちの体組織は炎症に弱いものです。風邪をはじめとする内臓系の炎症は発熱と機能低下を招きますが、筋骨格系の炎症は発熱に加え痛みも伴います。
 炎症に対しての対処は、まず冷やして、そして安静にすることです。ですから湿布薬は有効です。そして炎症が治まるまで安静にして刺激を与えないことが望ましいのですが、立つだけで踵は地面からの刺激と体重による圧力を受けますので、安静状態を保持することができません。
 立ち仕事をしないで済むことができる環境であるならば、それほど炎症は酷くなりませんので、上記に挙げたように筋肉や筋膜を整えたり、足の骨格を調整することで、症状は改善に向かうと思います。
 しかしながら、立ったり、歩いたりしなければ仕事にならないというのであれば、刺激や圧力を受け続けることになりますので炎症が悪化する可能性が高まります。

 運動が大変好きな人が踵の炎症による強い痛みの状態になりました。私は施術者として、筋肉を整え、骨格を整えることで対応していました。すると施術後は症状が少し緩和します。本当はそのまま安静を保っていただきたいのですが、仕事もありますし歩行しないわけにはいきません。それでも2~3度施術を行いますと、症状も大分緩和し、歩行ではそれほど痛みを観じない状態になりました。ところが運動が好きなその人はランニングを行ってしまいました。すると、その後、強い痛み襲われると伴に炎症がかなり悪化してしまいました。
 もうまともに歩行もできない状態になってしまいましたので、その人は整形外科を受診して痛み止めの注射を行いました。その後炎症は速やかに治まり、普通に暮らせるようになりました。
 その状態は私も確認しました。踵にあった筋肉のこわばり状態も良くなっていて炎症の腫れもだいぶ治まっていました。「注射ってすごいなぁ」と内心思いました。
 ところが、その人はその後テニスをしてしまい再び炎症状態になってしまいました。そして、その後二回、痛み止め注射を行いました。そして今は「もう大丈夫」という状態になってます。

 踵の炎症に対して、整形外科では「踵骨の棘が筋膜を刺激して炎症をおこしている」という見解が多いようです。これに対しては私は懐疑的です。なぜなら棘があっても大丈夫な人はたくさんいるからです。
 しかしながら「踵」という立つと刺激を受け続ける場所ですから、炎症を緩和するための注射は有効だと思います。この人のようにランニングやテニスなどをすることがなければ一度の注射で済んだのだと思いますが、そうであれば、それはとても良いことだと思います。

 今回のテーマである「踵の痛み」に関しては、炎症を取り除く意味で整形外科を受診されることは良いことだと思います。ただし、血行不良による痛みの場合は、炎症とは違いますので、効果は期待できないと思います。

足つぼ・整体 ゆめとわ
電 話  0465-39-3827
メールアドレス info@yumetowa.com
ホームページ http://yumetowa.com
web予約 http://yumetowa.com/sp/reserve2.html

↑このページのトップヘ