ゆめとわのblog

ホームページとは違った、より臨場感のある情報をお届けしたいと思っています。 また、テーマも整体の枠を飛び出してみたいと思います。 ホームページは以下です。 http://yumetowa.com/ お問い合わせはメッセージ欄でお送りください。

カテゴリ: 筋・筋膜・骨

 今回は“からだの痛み”について考えてみたいと思います。虫歯、打撲、創傷、炎症、捻挫、肩こり、腰痛、関節痛、神経痛、腹痛、頭痛‥‥、からだの痛みには様々なものがあります。そして現代科学は痛みを発するのメカニズムについて研究を進めています。そして解ってきたことは、とても大雑把に言えば、からだの細胞が放出する化学物質が神経を通じて脳に送られ信号として痛みを感じる、といった感じでしょうか。ですから痛みを緩和するためには、痛みにつながる化学物質をどうにかしようということで薬が開発されています。
 ところが現実として”飲み続けると効かなくなる”といった現象や“痛み止めの効かない痛み”もあり、なんとなく科学的進歩が停滞気味になっているのかもしれません。

 私のところに来られる方々の多くは“痛み止めが効かなくなった”あるいは“痛み止めが効かない”頭痛や腰痛などからだに痛みを感じている方々です。からだに痛みが発すると多くの人は整形外科や内科や脳外科など痛みを発している部位の専門科を受診されると思いますが、本来“痛み”は生理学の分野です。ですから例えば「神経が圧迫されているので痛みを出している可能性が考えられる」とか「脳はきれいなので頭痛は肩こりからきているのかもしれない。」などというどこか核心を得ていないような医師からの診断が返ってきてモヤモヤしてしまうのかもしれません。しかし、これらの医師は“痛みの専門医”ではないので仕方がないのかもしれません。

 さて、私も当然“痛みの専門家”ではありませんので、痛みのメカニズムを取り扱ったりはしませんが、「痛みのほとんどは筋肉(及び結合組織など軟部組織)が関係している」と考えています。心因性の、心理的な要因による痛みは脳内で生み出される化学物質による場合がほとんどだと思いますので、それは除外しての話ですが。
 多くの専門家が“神経”について着目していますし、実際レントゲンやMRIなどの画像診断を受けた方々は医師から「神経が‥‥」という説明を聞いていると思います。しかし“痛み=神経”みたいな見方に偏りますと問題の本質にたどり着けないのではないかと思います。神経は確かに化学物質(痛み物質)の刺激情報を脳に伝達する役割をしていいますが、歯科治療で神経を殺したり抜いたりしたはずなのにやはり歯が痛んだり、ヘルニアの手術をして神経の圧迫を取り除いたはずなのにシビレや痛みがスッキリしなかったりする現実を考えますと、どこか的外れな感じがしてしまいます。

筋肉が発する痛み
 私のところに来店される方々のからだの痛みは、ほとんどが筋肉が発する痛みです。おそらく胃痛や生理痛などの多くも筋肉が発する痛みだと思います。なぜなら胃や生殖系の臓器も全部筋肉でできているからです。偏頭痛など頭部の血管が強く脈打つような痛みも、血管に関係する痛みですから、やはり血管を形成している筋肉が発するいたみだと私は考えています。
 科学的には、痛みを誘発する化学物質を細胞が放出して云々、という見解かもしれませんが、その化学物質を放出する細胞はやはり筋細胞とその類似細胞ですので、からだのほとんどの痛みは筋肉や筋膜・腱・靱帯などの結合組織が発する痛みではないでしょうか。私はそのように単純に考えていろいろな痛みに対処していますが、それで胃痛などの内臓痛も生理痛も軽くなります。

 さて、腰痛は筋肉の痛みであることは想像が難しくないと思います。からだを捻ろうとすると腰に痛みが走るのは、腰部の筋肉が伸びてくれないからです。膝関節痛や肩関節痛(四十肩・五十肩)などの関節痛もつきつめればやはり筋肉やその兄弟である結合組織が発する痛みに行きつきます。
 そこで今回は、“からだが発する痛みのほとんどは筋肉の痛み”という前提で説明を行っていきます。もちろん私は痛みの専門家ではありませんので、学術的な科学的見解からすると“不足”や“不正確”な部分もあろうかと思いますが、実際に手技だけで痛みを改善している現場からの見方の一つとして参考にしていただければと思います。

筋肉の状態を四つに分ける
 私の整体は、筋肉や筋膜の状態を①正常(変調のない状態)、②こわばり状態、③働きの悪い(ゆるみ過ぎた)状態、④内圧の高まった状態の4つに分けて対処することにしています。
 さらに“筋肉は必ず連動している”ことと“骨格の位置や状態は筋肉や筋膜が決めている”ことを基本にしてすべての症状に対応しています。

 今回は筋肉が痛みを発する理由として(1)の筋肉の状態について説明したいと思います。

筋肉の4つの状態

 ①筋肉が正常な状態とは、思いのままに、あるいは状況に合わせて筋肉が伸びたり縮んだりすることが十分にできる状態、筋肉の収縮と伸張を邪魔する要素がない状態のことです。

 ②こわばり状態とは、筋肉の中に収縮したまま伸びることができない部分ができてしまったために、その筋肉全体として伸びにくくなっている状態のことであり、つまり筋肉から力が抜けずにゆるめようとしてもゆるまない状態のことです。筋肉の“はり”とは、この“こわばり状態”であると考えてもよいと思います。
 ストレッチ運動をしたとき、”どうしても一部分だけ気持ちよく伸びてくれない”と感じるときは、その部分がこわばり状態であると言えます。伸びないのに無理をして伸ばそうとしますと、筋肉は痛みを発し「それ以上伸ばさないで!」と信号をだしますが、それを無視して強引に伸ばし続けていますとやがて“ピリッ”となって損傷してしまう可能性があります。肩関節痛の初期段階で、肩関節の動きに何となく違和感を感じるので痛みを我慢しながらグイグイ肩を回し続けたりしていますと、関節は動くようになったもののある日突然腕が痺れ出したり、重たく感じられるようになったりして、いわゆる五十肩に向かって進んでいくようになってしまうかもしれません。

 ③働きの悪い状態、ゆるみ過ぎた状態とは筋肉の一部に収縮することができない部分ができてしまったためにその筋肉全体として収縮しにくい状態になっていることです。筋肉は収縮することによって力を発揮しますので、このような状態では「力が入らない」となってしまいます。階段を降りるときに、普通に両足を交互に使って降りるのではなく、一段ずつ一度足を揃えないと痛んで降りることができないときがあります。これは一時的にあるいは慢性的に膝関節が悪い状態であるいえますが、筋肉的にみると片側の膝を支える筋肉の働きが悪いため体重を支えるだけの力が発揮できない状態です。長く走り続けたり、歩き続けたりしますとだんだんと脚やからだが重く感じられるようになります。それは疲労によるものですが、見方を変えますと、筋肉の能力を超えて使いすぎたために筋肉が疲弊してゆるみ過ぎの状態になり、筋力が十分に発揮できない状態になったということです。

 ④内圧の高まった状態というのは、単純な肩こりや膝下のむくみなどに代表される状態で、筋肉の内部に水分や老廃物が溜まってしまいコチコチに硬くなってしまったような状態のことです。よほどひどい状態にならない限り、この状態が直接強い痛みにつながることはほとんどありません。どちらかというと「重い」「スッキリしない」などという感覚に関係すると思います。マッサージや揉みほぐしで状態を改善できるものといえますが、首肩こりの場合、この状態と②こわばり状態を併せ持っていることがほとんどですので、「マッサージだけではスッキリしない」という感想になってしまうかもしれません。

“こわばり”は伸ばそうとすると痛み、“ゆるみ過ぎ”は収縮しようとすると痛む
 さて、筋肉が収縮したままの状態で伸びることができない状態(=こわばり状態)はその筋肉が縮む方向に力が働いているということです。こういうときにストレッチや指圧などで筋肉を伸ばそうとしますと、筋肉に働いている力と逆行することになりますので筋肉は痛みを発します。例えば背部の筋肉がこわばっている腰痛や背中痛、つまり腰や背中に強い張りを感じている状態では前に屈んで背中側の筋肉を伸ばそうとしますと痛みを感じます。首の背面がこわばっている状態では、下を向こうとすると首から背中にかけての背面に痛みがでます。単純な例ですが、痛みを出す原理はこのようなものです。
 反対に筋肉が収縮できない状態(=ゆるみ過ぎ状態、働きの悪い状態)では、そのゆるみ過ぎの部分は縮むことができませんので、無理して縮めようとすると痛みがでます。あるいは力が発揮できない状態ですので、力を発揮しようとすると痛みがでます。からだを背面に反ろうとすると(背面の筋肉を収縮させる)背部や腰部に痛みがでるときはこのような状態です。膝関節は十分に曲げることができるのに階段の昇り降りや歩行で膝に痛みを感じるのは、動作に関係する筋肉のどこかにゆるみ過ぎの状態があり筋力が発揮できないからです。また、首を後に大きく倒して上を向こうとすると首の後側にこぶのような塊を感じて十分に上を向けないようなときは、そのこぶのようなところは筋肉がゆるみすぎた状態で収縮できないため、周りは収縮しているのにその部分だけ置き去りにされたような状態だということです。(余計な肉や脂肪が邪魔している場合もありますが)

 以上は原理を理解していただくために単純な例をあげましたが、実際には一つの筋肉の中に“こわばり部分”も“ゆるみ過ぎ部分”も混在していて、総体としてこわばった状態、ゆるんだ状態になっています。また、それらのこわばりやゆるみ過ぎの原因がその筋肉自体にあるのか、他からの影響(筋肉の連動関係)でそうなっているのか、といったことも見極めて施術をしなければなりません。

“こわばり”と”ゆるみ過ぎ”の関係‥‥骨格の歪み
 筋肉(骨格筋)の働きの一つは、収縮したり伸張したりすることで骨を動かしからだを動作させることです。(その他の大きな働きとして、骨格を正しい位置に保ち安定させること、体熱を生み出すことがある)
 ですから(表情筋など一部の筋肉を除いて)骨格筋は骨と骨を結ぶようにつながっています。そしてからだの動作は単純に伸ばしたり曲げたりするだけでなく、捻ったり微妙に動かしたりする動きも加わりますので、一つの骨には幾つもの筋肉が付着しています。
 
3つの筋肉と骨格

 ここで仮に骨と骨の間が3本の筋肉でつながっていたとします。そしてその中の一つの筋肉が打撲によりダメージを受け働きの悪い状態になったとします。すると、それまで3本の筋肉が正常に働いていることによって骨と骨の関係は安定して動作がスムーズにできていたものが、実質2本の筋肉で骨格と動作を支えなければならなくなりました。2本の筋肉が前と同じように働いていたのでは、骨と骨の間は離れていってしまいますので、骨が離れていかないように2本の筋肉はこれまで以上に収縮力を強めなければなりません。つまり1本ダメージを受けたので、その負担を他の2本が強いられるということです。よく皆さんが口にする「かばっていたので痛くなってしまったのかも‥‥」に近い状態です。2本の筋肉は骨格を維持するために常に収縮し続けなければならなくなったため“こわばりの状態”になってしまいます。膝関節痛や五十肩では、こんな状態が常に起こっています。
 筋肉がこわばった状態ですから関節の動きは悪くなります。膝を曲げることができなくなったり、腕が途中までしか上がらなかったりします。こんなときに“関節が硬くなっているから”という理由で頑張っている2本の筋肉を揉みほぐしてこわばりを取ってしまいますと、骨と骨をつないでいる筋肉が全滅状態になってしまいますので骨格は大きく乱れますし、動作がほとんどできない状態になってしまいます。膝関節痛は悪化し、五十肩は重症化してしまいます。症状を“こじらせた”状態です。

 上記の例では骨と筋肉の関係で説明をしましたが、実際には一つの筋肉の中で同じようなことが起こっています。筋肉線維のある部分に働きの悪い状態ができてしまいますと、それをカバーするように同じ筋肉の別のところにこわばった部分が発生します。あるいは使いすぎなどでこわばった部分ができますと別のところにゆるみ過ぎの部分が生まれます。こうなりますと筋肉を伸ばしても縮めても痛みを感じてしまうということになります。ギックリ腰などになって骨盤近くの腰部が働きの悪い状態になりますと、背筋のその上部がこわばって張ったりします。すると真っ直ぐ立ったりからだを反ろうとすると骨盤近くの筋肉が痛み(収縮できないので)、前に屈もうとするとそれより上部の背中に近い部分が痛くなります(伸びないので)。そしてこの場合は、骨盤近くにできた働きの悪い部分をケアして収縮できるようにすることが改善方法です。その部分の筋肉の働きが回復すれば自然と上部の張り(こわばり)は解消するからです。この時、間違って上部の張っている部分を揉みほぐしてしまいますと、ベッドに寝て施術を受けているときはこわばりも痛みも薄らいでいきますので改善に向かっているかのように感じますが、施術が終わって起き上がろうとしたとき、筋肉が作動してくれませんのでまったく腰が動かせない状態になったりします。施術する側としては、その見極めを慎重に行うことがとても重要になってきます。

強いこわばり、こわばりの連続は、それだけで痛みを発する
 ある程度高齢になりますと、寝ているとき朝方近くにふくらはぎが攣ったりすることを経験します。またテレビでしばしば目にする光景ですが、サッカー選手が試合の途中に脚が攣りグランドの中に座り込んでふくらはぎを伸ばしたりしています。
 体験した方はよくわかると思いますが、“攣る”というのは筋肉にこわばりが連続して発生することです。グッグッグッグッと筋肉が強くこわばって強い痛みを感じます。部分的な脱水状態とか血行不良だとか、原因についていろいろ言われていますが「陰極まれば陽と為す」の喩えどおり“ゆるみ過ぎの状態”が行きすぎて筋肉が耐えられなくなったために、筋肉が自ら収縮して機能を回復させようとする反応のように思います。いずれにせよ強いこわばり状態や筋肉が連続して収縮を繰り返しているような状態は、じっとしていてもそれだけで痛みを感じます。断続的に訪れる胃を締めつけられるような痛みもこの部類に入るのではないでしょうか。
 こわばりの奥にゆるみ過ぎ状態が隠れていると考えるなら、温めたり緩やかなマッサージをするなど休息とともに筋肉の働きを回復させるような手段を用いるのが良いように思います。

 今回は骨格筋の痛みについてとりあげました。簡単にまとめますと次の3つに集約できます。
①縮む方向に作動している(ベクトルが向いている)筋肉を伸ばそうとすると痛む
②縮むことのできない状態の筋肉を収縮させようとしたりすると痛む
③連続する収縮や強い収縮状態はそれだけ痛む

 生理学的な見方では、“痛みと感じる”化学物質の電気的刺激が脳に伝わって起こる脳やからだの反応ということのようです。ですからその化学物質に対する脳の反応が抑制されるように、あるいは化学物質の刺激が脳に伝わらないように薬物(化学物質)を用いて対応する方法が考えられています。鎮静剤や痛み止めの類はそのようなもののようです。心因性の痛み、つまり心理的な要因で脳が生み出す化学物質がもたらす痛みについても同じような考え方で対処しているのでしょうか、いわゆる精神疾患、心療内科で処方される薬剤があります。それはそれで科学の進歩であり、文明の発展かもしれませんが、薬剤への依存度が増していくことには大きな懸念を感じます。
 ここに記したことで、痛みに対して整体でもかなりのことができると言っているのではありません。対応する手段が整体にもあるということを知っていただき、選択肢の一つとして記憶していただきたいと思っています。日常生活の中で“痛みと感じる化学物質”がなるべく生まれないようにすることが整体の仕事の一つであると考えています。

追記:
 余談ですが、ヨガをなさっている人も増えてきた現在、ストレッチについてちょっとだけ言わせて頂きます。 
 ストレッチで筋肉を伸ばそうとするとき、限界までは気持ちよく伸ばすことができますが、それを超えると痛みを感じだし呼吸が乱れてきます。息をゆっくり吐き出しながら筋肉を伸ばしているのですが、途中から吐き出せなくなったりします。本当はそこで伸ばすのを止めなければなりません。というのは筋肉はそれ以上伸ばして欲しくないので痛みという信号を発し呼吸を乱すからです。しかし皆さんの話を聞いていますと、多くの人が何かに闘いを挑むように限界点を超えてストレッチを続行しています。
 視点を筋肉の側に移して考えますと、それ以上伸ばして欲しくないのでこわばりをつくって限界だと知らせているのに、さらに伸ばされると益々こわばりが強くなり、筋肉を縮ます方向の力が強くなってしまいます。数回なら大丈夫かもしれませんが毎日毎日同じことを繰り返していますと、こわばりが定着してしまいますので、ある日から「ストレッチ運動を続けるほどに筋肉が硬くなっていくような気がする」というようなことになってしまうかもしれません。健康のために行うストレッチもその他の運動も筋肉とよく会話しながら“心地良く”やっていただきたいと思います。

 転んだり、どこかに体をぶつけたりした直後や、あるいはしばらくしてから不調や不具合が現れることがあります。今回は打撲による筋筋膜のダメージが原因で不調や不具合になってしまった例を取り上げます。

頭を打撲した後しばらくしてから胸が痛くなり、呼吸がつらくなった
 この方は後期高齢者になったばかりの人です。2週間ほど前に部屋の中で転んでしまい、テーブルに額の右側を強くぶつけてしまいました。直後は激しい頭部の痛みと腫れに襲われましたが、「ぶつけたのだから、それは仕方がない」ということで痛みと腫れが治まるのをじっと耐えていました。だいたい1週間ほどでそれらの症状は消えたのですが、その後、胸が痛くなりだし、息を深く吸うことができず、腕を前に伸ばすこともできなくなりました。「別に、胸を打撲したわけでもないのに、おかしいなぁ~」と重いながらも一向に症状が改善する気配がないため、私のところに来られました。
 この方とは長年のお付き合いですから、私の施術のことはよくご存じで、また整形外科での診察や治療のこともよくご存じで、「整形外科に行く前にみてもらおうと思って」と来店されました。
 本人は”胸(肋骨)の痛み”という訴えで来られましたが、胸には打撲による外傷(青くなるとか)もなく打撲した記憶もないということでしたので、頭の打撲が原因である可能性が高いと考えました。
 
腹直筋と外腹斜筋

 仰向けで寝ていただき体をみますと、胸から腹部にかけて大きく左側(反時計回り)に捻れていました。外腹斜筋が強くこわばってしまい、胸郭を捻らせるとともに肋骨の動きを制限しているため、息を吸う動作がしにくい状態であることがすぐにわかりました。そして胸郭の捻れと外腹斜筋の強いこわばりの影響で腕を前方に出す筋肉(前鋸筋)がうまく作動しないため、棚の上に手を伸ばすとか、物を拾うという動作ができなくなっていることもわかりました。
 頭部をみますと打撲した額の右側から右側頭部にかけて耳のすぐ側まで頭皮(筋膜)がフニャフニャにゆるんでいました。このゆるみによって鎖骨や上部の肋骨が右側に大きくずれ、それによって前鋸筋がゆるんでしまい、その反動で外腹斜筋がこわばってしまったのだと判断しましたので、施術としてはひたすら頭部のゆるみを改善することだけに絞りました。30分くらいずっと頭部のゆるんでいるところに手を当てていました。それだけで徐々に筋膜がしっかりしてきましたが、それとともに胸郭の捻れも改善し外腹斜筋のこわばりもとれてきました。それから寝た状態で大きく深呼吸をしていただき、胸の痛みがないのを確認すると、腕を前方に突き出してもらいました。肩甲骨が十分に前に出せる状態であることを確認すると座ったり立ったりしていただき、いろいろな動作をしていただきました。
 呼吸も動作もすべて大丈夫ということで施術を終えましたが、頭部の打撲が治まった後から胸に痛みが出だしたことを考えてみました。
 頭部の打撲直後の状態をみたわけではないので予測になりますが、おそらく打撲による炎症で、打撲直後の筋膜はこわばっていたと思います。その後、日が経つに従って炎症が治まると筋膜のこわばりも解消したのですが、打撲によるダメージは残ったままですので、打撲箇所やその周辺の筋膜が強くゆるんだ状態に転じたのだと思います。それが胸の痛みの根本原因ですが、こういう経緯で「頭の痛みがよくなってから胸が痛み出した。」
という時間差的な状態になったのだと思います。
 高齢者がよく口にする「歳をとると後から痛みがやってくる」という文句に通ずるものがあるのかもしれません。

打撲によって四十肩(五十肩)のようになってしまった
 この方は4ヶ月ほど前に転びそうになって洗面台の縁に右肩前面を強く打撲したということです。その直後から腕が上がらなくなり整形外科を受診されました。レントゲンによる診断で、「骨に異常はありません。打撲がよくなれば‥‥」と言われたそうです。しかし、打撲がよくなっても腕が上がらない状態は改善されず、「洗髪で右手が使えない」ということで来店されました。
 話を聞いただけで、肩(肩甲骨)に腕をくっつけている腱板や腕の挙上に働く大胸筋や上腕二頭筋や三角筋がダメージを受けていて機能が回復していないことだろうと予測できました。
 この場合の施術は、ダメージを受けて機能が低下している筋肉を回復させるために、ただひたすら手を当てるだけです。肩関節の一番深いところに回旋筋群(腱板)があります。まずはそこから手当てしますので、深いところに指先を当てていき、ゆるんでフニャフニャしているところを探しては筋細胞の働きが良くなるように願い続けます。その次は少し浅めの筋肉=大胸筋や上腕二頭筋の腱の部分、最後に三角筋のゆるんでいる部分を施術していきます。まったく力は使いませんので、施術を受けている側は何をしているのかもどかしく感じるかもしれません。
 「今、何をしているのですか?」「四十肩(五十肩)になって腕が上がらないのですか?」と質問されました。
 施術を続けながら、「打撲によってダメージを受け、機能が回復していないところに手を当てて回復させているんです。この場合は、これしか方法がないのです。腕が上がらないからといって無理やり腕を上げようとか、揉みほぐそうとかするとダメージを受けたところが更にダメージを受けるかもしれないので、そういう施術はしません。」
 「四十肩は骨格が歪んで関節に違和感を感じることから始まるのですが、何となく関節がしっくりしないので、多くの人が腕や肩を回したりしますが、すると筋肉に無理な力が掛かるためやがて腕が上がらなくなったりします。それでも同じようなことを繰り返していますと筋肉がダメージを受けて伸びてしまいます。すると肩関節で肩甲骨と腕の間が拡がってしまうので、やがて腕が肩からぶら下がったような状態になります。そこまで状態が進んでしまうと腕の重みだけでもつらく感じるようになってしまいます。寝ているだけでも関節がジンジンしだすようになり、腕を抱えていたくなりますが、そこまでなってしまうと重症です。」
 「今回の場合、四十肩の重症状態と同じような感じですが、ただ、打撲による筋肉のダメージだけが原因なので、それさえ回復すれば症状は改善されると思います。四十肩の場合は骨格の歪みという問題が絡んでいますが、それがない分、施術はいたって単純です。」と説明しました。
 この方は遠くにお住まいで度々来店されることは無理だろう思いましたので、なんとか1回で洗髪ができ、日常生活に支障のないところまで改善したいと思いましたので、80分の施術時間の内60分近く、ただただ手を当てているだけの施術を続けました。その後座っていただき、腕を上げていただいたりして頚椎の歪みなども微調整し、実際に洗髪の仕草をしていただいたり、いろんな動作をしていただきました。真上まですっかり腕が上がる状態まではなりませんでしたが、腕を上げてもしっかりと右手に力が入り通常の日常生活では支障のない状態までにはなりました。

 これまで幾度となく申し上げてきましたが、症状を改善するためには何よりもそうなったきっかけ(原因)を知ることが一番です。そして状態をこじらせないことも大切です。
 原因がはっきりしていれば、ただそれを修正するだけですみます。
 一人目の方は胸が痛くなって呼吸がつらい状態でしたが、その原因は頭部の打撲ということがはっきりしていました。もし本人が“頭と胸とは関係ない”と思い、頭部の打撲について私に話してくれなかったら、私は胸からいろいろと原因を探る手間をかけなければならなくなっていたことでしょう。時間もかかるし、効率の良い施術にはならなかったと思います。
 お二人目の方は注意深い方でした。整形外科や接骨院を受診していましたが、そこでのリハビリや治療を信用して、腕をぐるぐる回すようなことをしていましたら症状が悪化するばかりでなく状態がこじれ、体のいろんなところに不調が及んだかもしれません。骨格も歪んでしまい、一度の施術でここまで改善することは難しかったように思います。注意深さによって自分の体が嫌がることはしなかったことが功を奏したのだと思います。

 軽い打撲や軽微な損傷は、自然治癒力によって回復することがほとんどだと思います。しかしすっかり筋肉や筋膜がダメージを受けてしまったようなものは、多くの場合積極的に改善を試みた方が良いように思います。そしてダメージを回復させるためには手当てが一番だと、私はそう考えています。 

 「どんな枕も合わなくて、いったいどんな枕にすればいいのか?」という質問をよく受けます。テレビショッピングなどを通じて枕をいくつも買ったり、独自に枕をあつらえたりしてみても、どうしてもしっくりと合うものに巡り会えないという話をしばしば耳にします。
 私はもう何年も枕を使用していません。スポーツタオルを四つ折りにして、そのうえに頭を置いて寝ています。普通はそれで大丈夫なのですが、時折もう少し高さがほしくなることがあります。そんな時はきっと体が歪んでいるのだろうと考えていますが、それでも睡魔に負けてすっかり寝入ってしまいます。
 体型的に申せば、首が前にでいる人は枕の高さがある程度必要だということになります。低い枕だと顎が上がってしまい、上を向いたような感じになってしまうので口呼吸になりやすくなってしまいます。しかし枕が高すぎると首の後ろ側が伸ばされた状態になりますので、首を痛める可能性も高くなりますし、肩こりの原因もなると思います。

 さて、枕の高さや材質に関係なく、首の後ろ側や後頭部に何かが当たること自体が不快に感じる状態というのがあります。時々「襟の高い服を着ると肩がこる」という人がいますが、このような場合も同じ状況だと考えられます。
 筋肉や筋膜(筋筋膜)が正常な状態ではなく、変調してゆるんだ状態になりますと、そこに物が当たることが不快で耐えられなくなり、別な場所にこわばりをつくってしまいます。ハイネックの服を着て筋筋膜がゆるんでいる首の部分に生地があたると肩につながっている筋肉がこわばってしまうため「肩がこってしまう」となります。筋筋膜がゆるんでいる首や後頭部に枕があたることによって喉や胸の筋筋膜がこわばってしまうと、呼吸がしづらくなってしまうことも考えられることです。床に入って“さあ寝よう”と思ってもなかなか寝付けない場合は、このことが原因なのかもしれません。
 筋筋膜がこのような状態の時には、どんな枕でも“合わない”と感じられるでしょう。それは枕の問題ではなく、筋筋膜の変調が原因です。反対に、筋筋膜の状態がしっかりしていれば、どんな素材の枕でも違和感は感じないと思います。(枕の高さは別にして)
 
筋筋膜の変調

 話は変わりますが、椅子にすわると腰が張ってきて痛くなってしまう場合があります。太ももを座面につけないように浅く座っていると大丈夫ですが、深く座ると腰痛や坐骨神経痛になり耐えられなくなったりします。こういう場合は、太もも裏側の筋筋膜が変調してゆるんでいるからだと考えることができます。
 その他にも、“仰向けで眠ることができない”、“うつ伏せで寝た方が朝が楽”というような場合は、背中の筋筋膜に変調があるため、その部分を床につけたくないということなのかもしれません。

変調‥こわばり=あたると痛い、ゆるみ=あたると他のところに痛みが出る
 筋筋膜が収縮したままの状態で伸びない状態を“こわばり”、反対に伸びきった状態で収縮することができないのを”ゆるみ”と私は表現しています。
 “こわばり”は筋肉が硬く太くなるのが特徴ですが、伸びない状態ですので、何か物が当たるとその部分が痛みを発します。歩きすぎたり、走り込んだ後などにふくらはぎの筋肉がパンパンに張ってしまい、マッサージなどをすると痛みを感じることがありますが、それは筋肉がこわばってしまっているからです。マッサージをしばらく続けていますとこわばりの状態が緩和していきますので、その後は揉まれることが気持ちよくなったりします。
 “ゆるみ”は筋筋膜が伸びきってしまい中抜けしたような状態で、頑張ることができないのが特徴です。物が当たったり、重みが掛かったりするとそれらに負けて耐えられなくなりますので、その部分ではなく他のところがこわばり痛みを出したりします。こういう場合は刺激の強いマッサージは禁物です。擦ったり、そっと手をあてて筋筋膜の状態を回復させるようにするのが原則です。但し、別なところに原因があって、その部分がゆるんでしまっている場合が多いので、根本的な原因を探し出してケアしなければ効果は期待できません。ある方は太ももの裏側がゆるんでいるため椅子に深く座ることができませんでしたが、その原因は背骨(胸椎12番)がぐらぐらしていて不安定だからでした。背骨を安定させると太もも裏側のゆるみが解消するため深く座ることができるようになりますが、背骨が不安定である原因を探し出し、それを整えるという施術が必要になります。

 枕が合わない、寝て起きると背中が張っている、なかなか眠りにつくことができない‥‥これらの原因を枕や寝具にしたがる傾向の人がけっこういますが、私から見ますと「そうではなく、体が整っていないから」と言いたくなってしまいます。そして高いお金を出して枕をあつらえたり、高級寝具を買うのではなく、体を整えるだけで全部解決してしまうのに、と思うこともしばしばあります。

 私が整体を勉強しはじめたとき、最初に先生に教えてもらってことは筋肉がちゃんと働くために必要な条件についてでした。それは以下の通りです。

 ・筋肉と筋膜に損傷がないこと
 ・筋肉と筋膜に変調がないこと
 ・付着する骨にぐらつきがないこと
 ・神経に問題がないこと
 ・動脈と静脈の流れに滞りがないこと
 ・エネルギーがあること、流れていること(熱エネルギー、電気エネルギーなど)
 ・共働して働く筋肉に問題がないこと

 これらの条件のうち一つでも不合格の状態であれば筋肉は正常に機能してくれないので、これらのことをいつも念頭に施術に取り組むよう教えられました。だいぶ前に教えられたことですが、今でもこれらを頭に入れながら日々の施術を行っています。
 今回は、これらのことについて少し説明させていただきます。

・筋肉と筋膜に損傷がないこと
 当然と言えば当然のことです。ケガによる創傷、打撲、筋違いや捻挫、肉離れなどによって損傷を受けた部分の筋肉は働けなくなります。ギックリ腰や寝ちがいなどはこの分類に入ります。体は上手くできていて、ある部分が働けなくなると、その働きを補うように周りの筋肉や筋膜が頑張ります。するとそこがこわばって痛みを出すようになります。よく言われる「かばって動いていたので痛くなってしまった」とはこのことです。
 ですから損傷したときは、なるべく安静にして筋肉に負担を掛けないことを第一に考えましょう。

・筋肉と筋膜に変調がないこと
 筋肉の変調とは、こわばって(収縮する方向に力が働いて)いて伸ばそうとすると痛みを感じる状態と、反対にゆるんでいて収縮できない、つまり働くことができない状態のことです。
 筋肉は筋肉線維が集まって一つの膜に包まれています。そしてそれがもっと集まり、やはり膜に包まれて太い筋肉ができています。この筋線維や筋肉を包む膜と筋膜(被包筋膜)と言います。皮膚の下にも筋膜(皮下筋膜)があって体全体を一枚のシート状に包んでいます。
 そして筋膜は日常的にゆるんだり、こわばったり、変調しやすい性質のものです。時々、別にそこをケガしたわけでもないのに急に痛くなったりすることがあります。そして手で擦ると痛みが消えることがあります。これは筋膜に変調ができたために痛みが現れ、擦ることで変調が解消され痛みが消えたということです。
 筋膜の内部には体液やこの後に説明する電気エネルギー、まだ未知の物質などが流れていますので、筋膜の変調は筋肉の働きに影響を与えると考えることができます。

・付着する骨にぐらつきがないこと
 筋肉は骨を足場として自らを伸ばしたり縮めたりして体の動作を可能にしています。
 ここで足場の悪い、例えば海や湖に浮かべた小さなボートの上に立ち続けることを連想してみてください。馴れていない人はバランスを取るために神経を使い、足の指に力を入れて踏ん張ろうとします。同様に筋肉も足場である骨が不安定であると緊張してこわばってしまいます。そうしますと筋肉本来の働きがしづらくなります。ですから筋肉の能力を十分に発揮するためには骨格がしっかり安定している必要があります。
 骨盤や背骨が歪んだりゆるんだりしていると腰痛になってしまう理由はここにあります。足首や足趾の骨がグラグラしていますと歩く動作も不自然になってしまいます。

・神経に問題がないこと
 私たちの体は意志したとおりに動くわけですが、それは脳・脊髄から末梢神経を通じて電気的な神経信号を筋肉に伝えて筋肉を働かせているという仕組みがあるからです。ですから、どこかで神経信号の伝達が途絶えますと、その先の筋肉が働かなくなってしまいます。交通事故などで脊髄損傷になりますと半身不随で下半身が動かなくなってしまったり、脳梗塞を患って右半身の働きが悪くなったりするのは、神経の働きに問題が生じたためです。
 ですから筋肉の働きにとって、神経の正常な働きはなくてはならないものと言えます。

・動脈と静脈の流れに滞りがないこと
 動脈は酸素と栄養を全身の細胞に届けています。細胞は酸素を燃焼させて栄養をエネルギーに換えて活動しています。ですから動脈血が届かなければ細胞は力を発揮することができません。筋肉は細胞の集まりですから、動脈が届かなければ筋肉も働けなくなるという理屈になります。
 また、細胞で燃焼した酸素は炭酸ガス(二酸化炭素)になり、消費した栄養のカスは老廃物として静脈やリンパ液に入って細胞から出て行きますが、静脈の流れが悪いとその場に停滞してしまいます。そうなりますと動脈血が入ってきたくても細胞の中に入れない状況になります。ですから静脈の流れも大切です。

・エネルギー(熱や電気、その他のエネルギー)
 冬の朝など気温が低くなりますと、手がかじかんで指が思うように動かなかったり、指先に力が入らなかったりすることは皆さん経験のあることです。それは熱エネルギーが足りないからだと考えることができます。お腹が冷えると内臓の働きが悪くなりますが、それも熱エネルギーが足りないからです。
 また、ピップエレキバンや磁気ネックレスなどは磁気によって電気エネルギーを調整して筋肉の状態を良くしようとするものです。整形外科や接骨院で行っている低周波や高周波による治療も同様です。体内には電圧の微弱な電気エネルギーが絶えず流れています。何故なら私たちが食事で摂取するミネラルは水に溶けるとカルシウムイオンやナトリウムイオンなどになりますが、それによって電気が生み出されるからです。神経信号も電気的なものですが、私たちの体内の水も電気的なものです。
 その他にも重力エネルギーや東洋医学で言う「気」、アーユルベーダ(インドの伝統医学)の「プラーナ」などのエネルギーも筋肉の働きに影響を与えています。

・共働して働く筋肉に問題がないこと
 私たちの体の筋肉は決して単体で働くことはありません。例えば肘を曲げる時、主として働く(主動筋)のは二の腕(上腕)にある屈筋(上腕二頭筋や上腕筋)ですが、前腕(肘から先)の屈筋も手の屈筋も同時に働くようにできています。これらの筋肉を主動筋に対する言葉として共働筋と呼びますが、共働筋の働きが悪いと主動筋の働きも鈍くなってしまう仕組みになっています。

 以上、整体を仕事とする者に対する専門的な知識なので、わかりづらい点も多かったと思いますが、筋肉に関連する症状や病態を改善するためには、上記の7つの点をチェックし調整する必要があるということを理解していただければと思います。
 しばしば「磁気ネックレスは効くのかね?」とか「電気(低周波)治療は効くの?」とか「グルコサミンは?」とか聞かれます。それぞれに意味のあることだと思いますが、“それだけでは改善しない。なぜなら他にも必要条件があるから”というのが答えになります。
 今回はちょっと難しいお話しでした。

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