ゆめとわのblog

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カテゴリ: 腰痛

 今回は筋肉の話です。
 私たちが通常「腹筋」と呼んでいる筋肉は腹直筋を指すことがほとんどですが、腹筋には4つの筋肉があります。腹直筋と外腹斜筋と内腹斜筋、そして腹横筋です。これに内臓を保護するための腹壁をつくるという意味で腰方形筋をその仲間に入れることもあります。今回はこの中で内腹斜筋について取り上げてみます。

腹筋群_側面
 
 私のところに時々声楽家の方がいらっしゃいます。声楽家ですから腹式呼吸は得意とするところです。ところが内腹斜筋の働きが悪いと息を最後まで吐き出すことがスムーズにできなくなります。そして、どことなく声を出すにも背筋に力が入りきらないとおっしゃいます。
 私たちは普段、内腹斜筋を意識することはほとんどありません。普通に息をしているくらいではほとんど働いていないかもしれません。しかし、私たちが下腹部に重心を持っていくためには、つまり「下っ腹に力を入れる」ためにはとても大切な筋肉です。
 息を最後までフーーっと吐き出し続けます。すると横っ腹の骨盤に近い部分がジーンとするような筋肉の収縮感が得られます。その筋肉が内腹斜筋です。

内腹斜筋01


腰痛と内腹斜筋との関係
 内腹斜筋の働きが悪いと骨盤と胸郭の間が広くなり、胸が上がって体幹が不安定になります。腰部に痛みをもたらす筋肉は主に脊柱起立筋ですが、肋骨と骨盤の間が離れるので脊柱起立筋は張ってしまいます。仰向けで眠ることができない、横向きでないとリラックスできないという場合は、内腹斜筋の働きが悪く脊柱起立筋がパーンと張ってしまうからかもしれません。息を最後まで吐き出しきることができないで腰部や背中にいつも張り感がある場合は、内腹斜筋の働きを疑う必要があります。
 また、内腹斜筋の働きが悪いと胸腹部と骨盤部の一体感が失われますので、歩く時でもなんとなく骨盤がフニャフニャした感じになり、下半身に体重を乗せて歩くことができなくなります。重心の位置が胸に近くなってしまいます。この傾向は現代の人に多いと思います。
 下半身の安定感にとぼしく背中や腰がいつも張っているように感じる時は内腹斜筋が関係していると考えられます。

呼吸と内腹斜筋の関係
 息を吸うとき胸は拡がり胸郭は上がります。腹式呼吸では、これに加えてお腹が前に膨らみます。この時、腹筋は伸びてゆるんだ状態になります。腹筋がゆるまないと息を深く吸うことはできません。
 息を吐く時は、これとは反対に腹筋が収縮して胸郭を引き下げます。腹筋の働きが悪いと息を吐く動作が不十分で途中までしか息を吐き出せないため呼吸が浅くなります。
 さて、内腹斜筋の働きが悪く収縮する能力が弱くなりますと、自然な腹式呼吸ができなくなります。自然な腹式呼吸とは、意識せずともゆったりしていて、腹部が滑らかに寄せては返す波のように動いている状態です。しかし、現代の多くの人たちがハアハアと胸を動かすだけの呼吸だったり、お腹がペコペコするだけの呼吸だったりしています。何かに集中することが多かったり、精神的な緊張状態が続いたりすると私たちは呼吸を止めて息を吐き出すことを忘れてしまい、しばらくして溜め息をつくように息を吐き出すわけですが、ストレスの多い現代社会ではそれも仕方のないことなのかもしれません。しかしそれでは内腹斜筋はほとんど働きませんので、筋肉としての能力は落ちてしまいます。浅い呼吸が内腹斜筋の働きを弱め、働きの弱った筋肉はさらに呼吸を浅くしてしまうという悪循環になってしまいますので、一日に何回かは意図的に息を最後まで吐き出して内腹斜筋を鍛えるような時間をつくる必要があると思います。

重心と内腹斜筋の関係
 私のところに来られる方々はほとんどが体に不調や不具合を抱えていますが、そのような方々に共通しているのは重心の位置が高いことです。ここで”重心”と表現しているのは、体を動かすときの中心部という意味です。体のどこを支えにして歩いたり、手を動かしたり、呼吸をしたりしているかということです。
 理想的な重心の位置は下腹部だと思います。臍から骨盤にかけての部分が支点となってあらゆる動作が行えるのが効率的ですし、体を壊さない秘訣かもしれません。しかし、その重心がお腹の上部から胸、つまりみぞおち付近にある人がたくさんいます。そこが硬くこわばっているのです。胃の調子が悪い人が多い理由はここにあるのではないかと思っています。硬くなったみぞおち(腹直筋の上部)が常に胃を圧迫していますし、胃のすぐ下を通っている大腸の横行結腸の動きも悪くなりますので、便秘や下痢といった不調を招いているのではないかと考えています。
 安定していて、楽に立ったり、歩いたりするためには重心の位置が下腹部に来る必要があります。立っていても、座っていても、息を抜いて楽に骨盤に上半身を乗せることができることが正しい姿勢をつくるためのポイントですが、そのためには重心が下腹部になければなりません。重心の位置が高いと骨盤で上半身を支えることができませんので、すぐに背もたれに寄りかかりたくなったり、あるいは座ることが苦痛なのですぐに横になったりしてしまいます。体がこんな状態なのに、「姿勢良くしなさい!」などと強要したところで、本人にとっては苦痛以外の何物でもなく、反発を招くだけの結果に終わってしまうでしょう。
 そして、重心を下腹部に下げるためには内腹斜筋の働きを良くすることが欠かせません。姿勢を正して、ともかく骨盤にしびれを感じるくらい最後まで息を吐き出し続けます。それを何回か繰り返していると、腹筋の下の方が硬くしまっていく感じがつかめると思います。肛門も自然と締まってくることでしょう。内腹斜筋に限らず腹筋の全部が最大限に力を発揮している状態です。
 このようなトレーニングをしていると、これまで体験したことのないような力が自分の内にあるのが体感できるようになると思います。これは筋トレの腹筋運動では得ることのできない、腹筋の鍛え方です。

 先日、大学の陸上競技部の選手が腰痛の改善に来られました。立派でしなやかな体型をしているのですが、「腰が痛くて仰向けで寝ることができない」ということでした。いろいろ体を調整しましたが、私がとても気になったのは、重心の位置が胸にあることでした。ハイジャンプの選手ですが、筋トレでベンチプレスをはじめ上半身を鍛えることをかなりやっているとのことです。この選手に「ともかく息を吐いて重心を降ろしてください」と言っても、本人はその感覚がなかなかつかめません。ベンチプレスなどで腕の筋肉や胸筋や前鋸筋を鍛えすぎているため重心が上がってしまい、さらに体の内側ではなく外側に重心が分散してしまっているのだろうと私は思いました。もっと効率の良い体の使い方ができるはずですし、そうなれば記録も上がっていくだろうと感じました。

 運動選手や特殊な仕事に従事する人は別として、普通の人が内腹斜筋を鍛えるために何かのトレーニングをする必要はないと思います。ともかく、一日に何回か、息を吐き出しきって骨盤がジーンとなるような呼吸を1~2分行ってもらえれば、それで十分だと思います。そうすることで呼吸も改善し、重心の位置も改善し、「横向きでないと眠れない」という状態も改善するかもしれません。

 専門的に、内腹斜筋の状態を整える方法はいくつかあります。内腹斜筋は下半身では長内転筋、後脛骨筋、母趾内転筋と、腕では上腕筋、母指内転筋などと連動しますので、それらの筋肉の状態を整えることによって調整します。 

 内腹斜筋はあまり語られることのない地味な筋肉ですが、体の芯を支えるインナーマッスルであると私は考えています。ここに取り上げた、腰痛、呼吸、重心、という項目では必ず状態を調整しなければならない筋肉です。 

 「椅子から立ち上がるときが痛い」「ベッドから起き上がるときが痛い」「歩き始めのときが痛い」「寝返りがうてない」というのはギックリ腰もしくは、それ同様の症状です。あるいは過去のギックリ腰や殿部の損傷が完全に治っていないということです。
 ギックリ腰にも程度がありまして、ひどいものであれば衝撃とともに「やってしまった」という感覚が湧き上がりますが、程度の非常に軽い場合は、私が質問しても「覚えがない」という返答になります。あるいは「このままだとギックリになりそうで」と思われて来店された場合は、ほとんどが既にギックリになった状態です。
「電車を待つ間5分くらい冷たいベンチに腰掛けていたら次の朝起き上がれなくて」というのもギックリの類です。
 私が“ギックリ”という言葉を使うのは、施術する場所が何処かということで決めています。通常の腰痛は、腰や殿部をケガや打撲をしたわけでもないのにもたらされるので、体のいろいろな歪みのしわ寄せが腰に集中して痛みを発していると考えることができます。ですから、腰痛のための施術ですが、腰や殿部を直接施術することはほとんどありません。
 ところが、ギックリ(急性腰痛)は腰や殿部を損傷してしまったり、スジ(筋肉や筋膜)を伸ばしてしまったためにもたらされますので、直接腰や殿部(ほとんどが仙骨・尾骨部)を施術します。

 腰や殿部を損傷しますと、力が入らなくなります。程度がひどければ全身の力が入りません。ですから、固まったまましばらくは体をまったく動かせなくなったりします。程度が軽ければ、ある特定の動作で力が入らなくなります。寝返りが打てない。起き上がれない。立ち上がれない。前屈ができない。腰を伸ばせない。等々いろいろありますが、力が入らないというのがその特徴です。それでも歩き続けたりしていますと血液の循環が良くなって、それなりに筋肉が働くようになりますので痛みが軽減します。ところが歩いた後、少しの間椅子に座って休み、その後立ち上がろうとすると再び痛みに襲われたりします。
 こういう場合は患部を揉んでもまったく良くなりません。損傷した部分を修復する以外に方法はありません。

 ギックリになってしまうのは、それなりに原因があります。体の歪みや筋肉の張りに、筋肉はそれでも耐え続けていたものが急に冷えて耐えられなくなったとか、限界状態で耐えていたところに重たい物をもったり強い運動をしたために限界をこえてしまった場合など、つまり肉離れに似た状態です。尻もちをついたとか尾てい骨を打撲して損傷してしまったというのもあります。あるいは過去のギックリ腰の傷が完全には治っていなくて、何かの拍子にそこに傷が入ってしまったというのもけっこうあります。

 私はギックリの施術を行うときは、まずふくらはぎから下と手への施術から始めます。ギックリになってしまうほど体が頑張っていたということは、よく使う手足の筋肉もハリハリになっているということです。ですからそれらを施術することによって体全体をニュートラルな状態に戻し、腰部や殿部に負荷が掛からない状態にしておいてから、傷ついた部分を修復する施術を行っています。
 私の施術は手だけで行い機械や道具は一切使用しませんが、損傷部分の修復に際しては最後にマグレインという小さな玉を損傷部分に貼ります。ピッタリ損傷部分に当たれば、それまでの腰痛が嘘のように軽減して体が思うように動かせるようになります。皆さんは「摩法のようだ」と言いますが、摩法でも特殊技術でもなく、単に、損傷して働かなくなった点のような部分を何かで補うと働けるようになるというだけのことです。あとは何日かマグレインを貼り続けていれば損傷部分が回復しますので、ギックリ腰が改善するという理屈です。ただ、この損傷部分はミリ単位の小さな部分であり、体表からは観察できませんので、その場所を特定するのは技術と経験が必要ではありますが。

 もう何年も、寝返りで痛みが出るとか、ある特定の動作ができないという人が時々来ます。もしその人が過去にギックリ腰を経験したことがあるのであれば、その傷が治りきっていないためかもしれません。捻挫もそうですが、こういう損傷は何十年経っても治らない場合があります。そのような場合も、きちんと損傷部分を修復すれば状態は改善します。ですから腰痛治療のために、あるいは痛みを軽減するためにマッサージや湿布に頼っている方は、一度損傷部分修復の施術を受けられることをおすすめします。

 座り続けることで一番負荷を受けるのは骨盤です。ですから骨盤がしっかりしていないと、長く座り続けるのができない状態になります。下半身がだるくなったり、シビレが生じたり、腰に痛みを感じるようになるでしょう。
 骨盤が安定しない理由として考えられることは幾つもありますが、代表的なものを取り上げてみます。

①ギックリ腰や骨盤の打撲・損傷
 これまでの経験で言いますと、ギックリ腰で一番損傷の受けやすい部分は仙骨と尾骨の境目付近です。そして尾骨のすぐ右側を損傷してしまったケースが圧倒的に多いです。その理由についてははっきりしませんが、右足重心の人が非常に多いからかもしれません。(重心のある方の筋肉が伸びているという報告がある)
 この場合に多い骨盤の状態は、仙骨が時計回りに歪み、左の腰骨(腸骨)が後に傾き、右の腸骨は前に傾きながら右側に歪んでいます。仙骨と腰骨(腸骨)との関節を仙腸関節と言いますが、その関節がゆるんでしまうため骨盤全体が不安定になります。骨盤が言わばグラグラ不安定なので、骨盤につながっている腰部の筋肉や殿部の筋肉は緊張してパンパンに張ってしまいます。これがギックリ腰の典型的な状態です。
 ギックリ腰以外にも尻もちをついて尾てい骨が痛くなったとか、殿部を打撲して一時歩くこともままならなかった、という経験をしているようであれば、その損傷部分がきちんと回復していないかぎり、骨盤はずっと不安定のままです。それがたとえ10年前、20年前の損傷であったとしても、きちんと治っていなければ骨盤は不安定のままです。
一時の強い痛みが消えたからといって治ったわけではありません。このことを私は大きな声で言いたいのです。捻挫も同様です。ちゃんと治っていなければ、必ず体の何処かに歪みが行き、様々な症状として現れると思います。
骨盤の安定

②仙骨が歪んでいる場合
 骨盤の中心は仙骨です。仙骨が歪むと骨盤全体が歪みます。特に骨盤を損傷したわけでもないのに仙骨が歪んでしまうのは、手や足の状態による場合がほとんどです。
 仙骨の状態は背筋(脊柱起立筋群)のなかで背骨に一番近いところを通っている固有筋群の状態に影響されます。そしてこの筋肉群は手の小指側と足の親指側の筋肉と連動しますので、手と足の使い方が問題になってきます。手でなんかを強く握る動作は小指外転筋という掌の一番外側の筋肉を使うのですが、この筋肉がこわばってしまいますと背中の固有筋群もこわばります。例えば、右手で何かを握る動作を多くしていますと、背骨のすぐ右側にある固有筋群がこわばり、仙骨の右側を引っ張り上げるように作用します。仙骨の右側が上に引き上げられると左側は下がり、仙骨が反時計回りに少しだけ回転した状態になってしまいます。これによって骨盤は歪みます。
 
③腰骨(腸骨)が歪んでいる場合
 右足体重(重心)の人がとても多いのですが、“体は重心の偏っている側の筋肉が伸びる”という法則があるようです。つまり多くの人が、右半身が弛んで左半身がこわばっているということになります。もちろん日常作業での筋肉の使い方の方が体に与える影響は強いですから「右肩の方が凝っている」という人がいて当然です。
 この法則は施術をしているとうなずけることばかりです。腰痛の人に対する施術では、最初はベッドにうつ伏せで寝ていただくことがほとんどです。すると多くの人が左殿部の方が右に比べて浮いています。左の股関節が右側に比べて硬く伸びが悪いからです。腰骨(腸骨)は左側が後に傾き、それに合わせて左の肩甲骨も後に傾いている人が多いです。腰も左側が張っている人が多く、右の肩甲骨は右(外)にずれていますので右肩から首にかけて張りがあり、それが強いコリだと感じているのかもしれません。
 話を腰に戻して、左の腸骨が後に傾いている影響で仙骨の上部が右(時計回り)に歪んでいる人が多いのですが、その状態が進みますと先ほど記した仙腸関節が不安定になります。それによって長く座り続けると痛みや違和感を感じるようになります。

④重心が体の外側にある場合
 たびたびこのブログに登場する“前鋸筋のこわばり”ですが、それによって重心が体の中心ではなく外側に行ってしまいます。こういう人は足の小指側を使って歩くようになりますが、下半身も股関節も外側が張ってしまいます。厳密に言うと骨盤ではなく股関節の問題になりますが、このような場合も長く座り続けることが苦になってしまいます。太もも(大腿骨)が外側にずれるため殿部の筋肉が張ってしまい、そこが椅子の座面に着いていることがつらくなってしまうのです。座りながら、しょっちゅう重心を左と右のお尻に交互に移動させている人はこのような人かもしれません。

 以上の四つが、じっと座り続けていられない理由のほとんどです。その他、坐骨神経痛のとき、股関節の状態が悪いとき、首や肩周辺の状態が悪いときなどもこのような状態になることがあります。      

 朝洗面するとき少し前屈みになりますが、それができなくて辛い。掃除機を掛けると腰が痛くなる。椅子から立ち上がるとき、膝や椅子に手を置いて支えないと立ち上がることができない。これらの症状は前屈みや中腰ができない状態であるからです。
 前屈みができない状態を単純に考えますと、腰や背中の筋肉がこわばっていて伸びてくれない状態であるという答えになります。確かにこれも原因の一つです。ふくらはぎや太ももの裏の筋肉が張ってしまい、その張りが殿部や背中につながり、伸びが悪くなれば前に屈むことができづらくなります。そして坐骨神経痛でも同じような状態になることはよくあります。これは床に長座をして前屈運動をしてみればわかります。
 ところが長座での前屈は問題ないけど、立った状態では前屈みができない、中腰もできないという状態があります。この理由の一つはギックリ腰のように骨盤付近の筋肉を伸ばしたり損傷してしまった場合です。これは骨盤自体に力が入らなくなるので、前屈みで上半身を支えることができなくなったということです。
 理由のもう一つは膝や足首に問題があることです。私は施術の結果を確認するために、最初は椅子に座った状態で前屈みをしてもらい、次に立った状態で前屈みをしてもらっています。座った状態では大丈夫だったのに立った状態では腰に張りができたり、なんとなく心もとない様子のときは、最初に膝の状態を確認します。座った状態では膝に体重は掛かりませんが、立ち上がると膝に負荷がかかります。その負荷に膝が十分に耐えられる状態であれば、腰に負担はきませんが、膝が耐えられない状態ですと負担が腰に掛かってしまうため腰痛になってしまいます。そしてこういうことはとてもよくあることです。本人は膝に痛みを感じないので膝が悪いとは全然思っていませんが、実際は膝が悪くて前屈みや中腰ができない状態だということです。
 理由の三つ目は、少し専門的になりますが、ある角度の時だけ背筋が上半身を支えることができない状態であることです。例えば洗面時の前屈みの角度だけ駄目で、それを過ぎてもっと屈んだときは大丈夫だとか、反対に洗面は大丈夫だけど、深く体を曲げて床の物を拾おうとすると痛くてできない、などといった場合です。
 
前屈での力点の移動

 体を前屈する動作では、背中の筋肉が自動的に上半身がそれ以上倒れないように調整してくれています。つまり、上体を前屈するとき背筋はただ伸びているだけでなく、上体の角度によって対応する背筋の部分を収縮させて体がガクンと前に落ちないように調整しています。体が直立に近い上体では、骨盤に近い部分の背筋が頑張り、もう少し曲げて洗面やお辞儀の姿勢では背中のところが頑張り、もっと曲げて90°くらいになると肩のところ、もっと曲げると首や頭のつけ根のところが頑張って体を支えている仕組みになっています。仮に、背筋の背中の部分がうまく働けない状態だったとすると、洗面やお辞儀の角度を保つことができなくなり痛みを発します。膝を曲げて脚をすぼめたり、何かに寄っかかったりして、その弱点を補おうと私たちは自然にいろいろなことを行います。首のところの筋肉が働けない状態であれば、物を拾うことができなかったり、椅子から立ち上がる最初の動作がロボットのように首を立たしたまま行わなければできなくなったりします。(椅子から立ち上がるとき、最初に首を曲げるのが自然な動作ですが、それができないため)背骨の一部(脊椎)が捻れていたりするとこのようなことが起こります。あるいはムチウチなどで首の筋肉を伸ばしてしまった場合や首を寝違えてしまった場合などにも。
 私たちは手を使うことが大変多いのですが、使いすぎや使い方の偏りによって頚椎が歪んでしまい、それによって前屈がつらくなってしまうということは大変多いことです。

 その他にも骨盤が歪んでしまい前屈や中腰がつらくなることもあります。この場合は、前屈だけでなくその他の動作でも、あるいはじっと座っているだけでも腰が痛くなったりすでしょう。また歩き方や立ち方が悪く、いつも足の指先に強く力が入っているため指先が硬くこわばってしまい、それによって中腰の姿勢がつらくなることもよくあることです。股関節の状態が影響して中腰ができなくなることもあります。
 その他の症状と同様、腰に痛みが出るからといって腰自体に問題があるとはかぎりません。割合としては非常に少ないです。ですから、腰をマッサージしたところで問題が解決することはほとんどないと思います。

 腰が伸びなくて真っ直ぐ立てなかったり、歩く動作で前屈みになってしまう理由はいくつかありますが、その多くは次の3つに絞られます。
①背骨(腰椎)が上にずれてしまっている。
②背筋がうまく収縮してくれない。
③腹筋がこわばっていて伸びてくれない。
 その他には骨盤が大きく前傾していたり、高齢になって背中が丸まってしまったためというのもありますが、施術に来られる方々のほとんどは上記三つの理由によるものに集約されます。

①背骨(腰椎)が上にずれている場合
 表現が難しいので“背骨が上にずれている”としましたが、実際に施術する立場で表現しますと脊椎が“上を向いている”、あるいは“上に動揺している”と言った方がしっくりします。
 以前にも記しましたが、背骨は一本の骨ではなく24個の椎骨が連なってできています。頚椎が7個、胸椎が12個、腰椎が5個です。まっすぐ立っている時を基準にしますと、前に屈む動作では脊椎が動作に合わせて上に動いていきます。反対に反る動作では脊椎が下を向いていきます。この脊椎の一つ一つの動きがなければ体を滑らかに屈めたり反ったりすることはできません。ロボットのようになってしまいます。(強い腰痛になるとロボットのような動作になってしまうのは、このためですが。)
 
脊柱の動き

 腰椎全体やあるいはその中の一つの椎骨が何らかの理由で上に動いてしまっていて下を向くことができない状態になりますと、体を反らそうとしても椎骨が下を向いてくれないため動作がそこでブロックされてしまいます。腰椎がそのような状態であれば、真っ直ぐに立つことができなくなります。もっと上の方、肩甲骨の辺りの椎骨がこのような状態であれば、真っ直ぐ立つことはできますが肩甲骨から首にかけての部分は真っ直ぐできなくて、いつも猫背で下を向いているような姿勢になってしまうでしょう。
 
 さて、脊椎がこのような状態になってしまう理由として最も多いのは、仙骨が下や後にずれていることです。骨盤が後に傾いている状態であると考えてもよいと思います。下半身の筋肉が疲労して変調するとこのような状態になりやすいです。ギックリ腰や尾骨付近の打撲や殿部の損傷によってこうなることもよくあります。ギックリ腰をしたとき体を真っ直ぐにできなくなるのは、まさにこの状態です。

②背筋がうまく収縮してくれない
 体を真っ直ぐに保つことを筋肉の働きで考えますと、腹筋と背筋のバランスがうまくとれている状態であると言うことができます。仮に背筋の働きが悪くなりますと、バランスが崩れるため重心が腹筋側に傾きます。平たく表現すれば、背筋が使い物にならないので腹筋が背筋の分まで頑張って体を支えている状態になります。すると自然に体は前屈みの状態になってしまいます。背筋に力を入れて無理に体を起こそうとしても、背筋が上手く働けない、つまり収縮できないので、体はなかなか真っ直ぐになってくれません。それでも無理して背筋を伸ばそうとすると、後頭部や首の筋肉に余計な負担をかけますので頭痛や肩こりになったりします。
 電車に乗ると、だらしない恰好で脚を投げ出し、背中で座っているような人を稀に見ることがあります。性格や人柄は別にして、その人は背筋が働けなくて座位の姿勢を保つことができないのかもしれません。常にどこかに寄っかかっていないと落ち着かない人は、背筋の働きが悪いのかもしれません。

 背筋の働きが悪ければ、①の背骨が上にずれてしまう状態にもなります。後頭部も上にずれますので、顔面は下がります。「加齢とともに顔が下がってきた」と感じる人は、ご自分の姿勢をチェックしてみてください。いつも何かに寄りかかっていたいようであれば、それは背筋の働きが悪いのかもしれません。

 また「働きが悪い」と表現すると、ほとんどの人は「筋肉を鍛えれば良いのか?」とお尋ねになります。筋力が弱ければ鍛えて強くする必要がありますが、働きが悪い場合は“働けるようにする”というのが正解です。疲労しすぎれば筋肉の働きは悪くなります。それは多くの人が経験していることでしょう。この場合は、筋肉を休ませ疲労を回復することです。そうすることで働きが良くなります。あるいは、寒い中にいると筋肉の働きは悪くなります。冬の朝は手先がかじかんで、思うように動かせなくなったりします。これも働きが悪くなった状況です。この場合は筋肉や全身を温めれば筋肉の機能は回復します。
 ですから、ご自分は“もしかしたら背筋の働きが悪いのかもしれない”と感じたとしても、背筋運動をして筋肉を鍛えようなどと考えて欲しくはないです。背筋が働ける状態ではないのに、強制的に働かせようとすると筋肉を傷める恐れもあります。
 ではどうすればいいのか? と思われるのは当然ですが、答えは人それぞれです。何かの原因で働きが悪くなっているので、その原因を特定し、その原因を改善しなければなりません。歩き方が悪いのかもしれませんし、食べ物をあまり噛んでいないせいかもしれませんし、過去の捻挫や突き指のせいかもしれません。それは体をみないと何とも言えないというのが私の答えになってしまいます。

③腹筋がこわばっていて伸びてくれない
 腰痛なのに、腹筋の方に原因がある場合もしばしばあります。そしてこのような人もけっこう多いです。
 背もたれのない椅子に座ったとき、現代人のほとんどは多かれ少なかれ背中が丸くなります。背筋をピンと伸ばして姿勢良く座っていらっしゃる方はあまり見かけません。ところが「姿勢良く座ってみてください」と言いますと、普通の人は腰を立て背筋をスッと伸ばして座ることができます。正座したときのような座り方です。しかし、それができない人が多くいます。「どう座って良いかわからない」と言うのです。
 骨盤には坐骨と呼ばれる部分があります。正座して腰を立て背筋を伸ばすと、ちょうど踵付近に当たる骨です。文字通り、座る時に使う骨です。ところが多くの人はそこで座らず、骨盤を少し後に倒して仙骨尾骨部とその周辺を座面につけて座っています。骨盤が後に傾いてしまう要因でもありますし背中が丸くなってしまう根本的な原因でもあります。

 背中を丸めて座るということは、お腹を縮めて座るということです。つまり腹筋を縮ませ続けることになります。すると腹筋がこわばってきます。この腹筋のこわばりが定着してしまったことによって、背筋を伸ばして座る、坐骨で座ることができなくなっています。ところがこのような人でも、腹筋が伸びるように調整しますと途端に良い姿勢で座ることができるようになりますし、そうなりますと面白いことに背中を丸めて座る姿勢に違和感を感じるようになります。それまで背中を丸めることが普通だったものが、苦痛に感じられるようになるのです。

 さて、街中で歩いている人を見ていますと、腹筋が伸びないため上半身が前に倒れ気味で歩いている人がたくさんいます。どことなく腰が引けて首や顎が前に出て歩いている人です。腹筋・背筋の状態の良い人は、歩く動作で腰が前に押し出されるように地面を蹴って歩いています。さっそうとしている感じです。腹筋が強くこわばっている人は、極端に表現すればペンギンのような歩き方になってしまいます。上半身が前に前に出て、下半身(脚)が後からついてくるような歩き方になっています。
 このような歩き方をしている人は腰や背筋に問題がある以外に腹筋にもこわばりがあります。
 腰が痛く真っ直ぐ立つことができないので腰部のマッサージや整体施術を受けたとしても、腹筋の問題を解決しないかぎり腰痛や姿勢の問題を解決することはできません。
 そしてこのような状態の人は早く腹筋を調整して直した方が良いと思います。歩き方が良くならないと腹筋のこわばりは徐々に強くなっていきます。そして高齢になり体の筋肉が弱まってくると、腰の曲がったおばあちゃんやおじいちゃんになってしまう危険性があるからです。

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