ゆめとわのblog

ホームページとは違った、より臨場感のある情報をお届けしたいと思っています。 また、テーマも整体の枠を飛び出してみたいと思います。 ホームページは以下です。 http://yumetowa.com/ お問い合わせはメッセージ欄でお送りください。

カテゴリ: 顔面・頭部

 私は昭和35年生まれですが、私たちの世代のウインタースポーツの代表は「スキー」でした。ですから、骨盤が不安定な方(お客様)に対して「スキーなどで尻餅をつきませんでしたか?」などとついつい尋ねてしまうことがあります。硬い雪のところでドスンと尻餅をつきますと、尾骨周辺を打撲してしまい、その傷が影響して骨盤や背骨が不安定になることがあります。そして「猫背」「下腹が出る」「顔が下がる」等々、好ましくない症状につながることがあります。

 ところが私よりも若い世代以降はスキーではなくスノーボードがウインタースポーツのメインになっているようで、尻餅ではなく、後頭部の打撲がからだをおかしくしてしまう原因になっていることを知りました。
 私はスノーボードの経験はありませんので、お客さんから聞いた話で想像することだけしかできませんが、後頭部の打撲による影響で思い通りにからだを使うことができない人や姿勢を保つことができない人がこのところ何人も来店されています。

中殿筋、大内転筋、大腰筋の働きが悪くなる
 長距離走の選手が足底腱膜炎(という診断)と腓骨筋(長腓骨筋と短腓骨筋)の痛みで練習ができないと来店されています。じっとしているだけでも右足の土踏まずから母趾のつけ根にかけて常にジワジワ痛みを感じ続け、歩くこともままならない状況だということでした。左足首の方は踵の外側からふくらはぎの外側にかけて(腓骨筋のところ)筋肉のこわばりによる痛みを感じる状態でした。

腓骨筋_前面・側面

 その男性の体型的は、長距離ランナーに多い痩せ型で、下半身はO脚の状態です。O脚の人は重心が外側に行ってしまいますので、走ることによって腓骨筋が酷使されて問題を起こしやすいというのは理解しやすいところです。
 足底腱膜炎と診断されている右足土踏まずの痛みは、実際には短母趾屈筋が痛みを発していて、その原因は付着している骨である立方骨が本来の位置より後方にずれていることでした。

足底腱膜炎(短母趾屈筋)

 この青年の走り方を、故障する前の動画で見せていただきましたが、右脚はまずまずですが、左脚の方は自身で地面を蹴って走るというよりも右脚の動きのリズムにただ合わせるかのように後から左脚がくっついて動いているといった感じでした。つまり、極端に表現すれば「右脚だけで走っている」という感じです。これでは右脚の負担が大きくなって故障しやすくなるのは当然だと考えられますし、ましてO脚というハンデがあれば尚更だと思います。(O脚は長距離走にとってはマイナス要素です)

 「どうして左脚を(能動的に)使うことができないのだろう?」という素朴な疑問がまず湧いてきます。筋肉の状態を観察しますと、このブログでも幾度となく登場している大腰筋の働きが悪い状態でした。特に左側の働きがとても悪い状態でしたので、大腿骨は股関節から離れてしまい、それがO脚の原因になっていることに加え、腓骨筋の痛みにつながっていることがわかりました。
 大腰筋は太股の裏側と内側にあります大内転筋に連動しますので「内転筋を使って太股を引き上げることができないし、地面をしっかり蹴ることができない」(=大腰筋と大内転筋が悪い)ことがわかります。

大腰筋の前面と側面

 大腰筋は腰椎の椎体(前面)及び横突起と大腿骨(小転子)をつなぐ筋肉ですので腰椎(背骨)が不安定ですと筋肉の働きが悪くなります。そして実際、彼はそのような状態でした。背骨に沿って存在している脊柱起立筋(脊柱固有筋群)がゆるんだ状態になっているので背骨が全部下を向いた状態になっていて、大腰筋が上手く機能しない状態になっていました。
 「どうして脊柱起立筋がゆるんだ状態になっているのだろう?」というのが次の疑問です。そして、そんなことを考えながら骨盤から後頭部にかけて観察していきますと、後頭部にとても弱い場所(=筋膜のゆるんだところ)があって、それが根本的な原因であることがわかりました。そして「後頭部の、この部分が弱いのだけれど‥‥」と尋ねますと、「だいぶ前にスノボで後頭部を強打し、脳振とうを起こして気を失ったことがある」ということでした。

立位_中殿筋と大内転筋

 大腰筋、大内転筋の働きが悪い状態ですと走ることだけでなく“忍び足”のようにゆっくり歩くこともできません。軸脚でしっかり体重を支えることができませんので、すぐに反対側の脚を着きたくなってしまいます。(このことについてはこのブログで何回も取り上げています。)
 そして軸脚でしっかり立つことができるようになるためには中殿筋の働きも重要です。最低限、大腰筋と大内転筋と中殿筋の働きがしっかりしていないと、軸脚でしっかりからだを支えて立つことができませんので、歩き方も走り方も、そして立ち方もおかしくなってしまいます。
 しっかり立つことができない、しっかり地面を蹴ることができない、股関節内側の筋肉を使って太股を引き上げることができない、こんな状態であるにもかかわらず陸上選手として練習し続けなければならないわけで、「故障してしまうのは当然の流れかな?」と思えてしまいます。

姿勢が保てず顔が下がる
 若い女性が、「良い姿勢が保てず、すぐ猫背になってしまい、さらに顔も下がっている」ということで来店されました。
 このブログを読んでいただいていて「顔が下がっているのは、きっと後頭部が上がっているからではないかと思った。横顔の自分の写真を見ると他の人たちに比べて頭が尖っているように感じる」と仰いました。
 実際、座っていただいても骨盤を立てて座ることができません。「骨盤を立てる、という意味がわからない」と仰います。「では、背筋を伸ばして良い姿勢を作ってください」と申しますと、背中の中程を反らせて背筋を伸ばそうとしますが、動作に無理があってなかなか大変そうです。瞬間的にはできても、背筋を伸ばした状態を保つことはできそうもありません。
 これらの主な原因は背筋(脊柱起立筋)の働きが悪いことです。
 「ギックリ腰や尻餅をつくなどして、動けなくなったような経験はありますか?」と尋ねました。答えは「No」です。
 年齢的なこともあり、上記(陸上選手)のようなこともありますので、
 「では、スノボなどで後頭部を強打したことはありますか?」と尋ねてみました。すると「Yes」という返答でした。脳振とうを起こすほどひどくはなかったようですが、打撲の後はしばらく動くことができず、安静にしていなければならなかったくらい衝撃は強かったようです。
 そこで、座った状態のまま後頭部に私の手を当ててみました。すると20秒ほど経った頃から変化が現れ始め、次第に骨盤が立ち始めました。骨盤が立ってきますと自然と背筋は伸び、顎が引かれて猫背は改善し始めます。そして上がっていた後頭部も下がって本来の位置に近づきますので、顔も上がってきます。
 その後1分程度手を当て続けますと、明らかに視線が上がり、自然に無理なく目が大きく開くようになりました。それまで力の入っていた首・肩・顔周辺から力が抜け、重心が下がって下腹部で上半身を支えることができるようになったため、何の無理もなく良い姿勢を保つことが出来るようになりました。
 この女性の場合も、スノボで打撲して以来、猫背で顔が下がる症状に悩まされていたことになります。顔が下がり、目を開くのに額の筋肉を使わなければならない状況は、女性にとって心理的なストレスをもたらすことに繋がりますので、原因がハッキリし、対処法がわかって良かったと思っています。
 この方は遠くにお住まいの方で、私のところに通うことは叶いません。ですから日々行っていただきたいセルフケアをアドバイスさせていただきました。

 この仕事をしていますと、毎日いろいろな体型の人に出会います。一人一人の顔が違いますように体型もそれぞれ違いますが、そういう個性的なものとは別に、「からだのケアをすれば、もっと楽に生きられるようになるのになぁ」と思うこともしばしばあります。
 その一つが過去の打撲や捻挫による影響であり、前回投稿させていただきました手術痕の影響です。
 例えばロボットや機械の類は、部品が故障して機能しなくなりますと目的の仕事がまったくできなくなってしまいます。部品の修理か交換が解決策です。ところが私たちには自然治癒力が備わっていますので、ある程度の傷までは、休んでいれば次第に癒えて元の状態に戻ることができます。しかしながら傷のダメージが強いと、自然治癒力だけでは完全な状態に戻ることが難しい場合もあります。そしてダメージを受けた部分が完全に元の状態に戻らなくても、70~80%くらいまで改善すると目的の働きを行うことが出来るようになりますので、「それで良し」と考える傾向にあるようです。
 足首を捻挫しても、腫れが引いて痛みがなくなり、普通に歩くことが出来るようになれば「それで良し」。脳振とうを起こすほど後頭部を打撲しても、頭痛や吐き気がなくなり、普通に歩いて、普通に生活できるようになれば「それで良し」。医師も私たちもそのような暗黙の了解の中にあるのかもしれません。
 ところが、それら「過去の傷」は思わぬところに悪い影響をもたらしていたり、あるいは加齢によって体力が落ちてきた頃に「きっとあの時のケガの影響だ!」という感じで思い出され、「なんであの時しっかり治しておかなかったのだろう」と後悔の念を抱かせるかもしれません。
 しかし、例えそうだったとしても、諦めるものでもありません。私たちの細胞は日々新陳代謝を繰り返しています。加齢によって新陳代謝の力が衰えたとしても、ちゃんと血液が廻るように整えてあげることによって過去の傷によるダメージはかなり軽減できると思います。

 ここで筋肉的な観点を離れて東洋医学的な見解で少し考えてみます。
 前回は腹側の「任脈(ニンミャク)」について触れましたが、今回は後頭部であり、背側の「督脈(トクミャク)」に関連する話題でもあります。

督脈の傷の影響

 督脈は尾骨から始まり、仙骨~背骨~後頭部~人中(鼻下)まで続く背側の正中ラインですが、ここに傷やダメージがありますと姿勢を保つ、歩く、走る、感覚を鋭敏に保つといった、言わば動物的な機能に影響が現れる可能性が高くなります。
 美容整形などで鼻や人中などにメスを入れたり、中には頭蓋骨を削るなどの手術を行うこともあるようですが、「止めたほうが健康のためです」と私は断言します。そして私と同業者で「小顔整体」と称して頭蓋骨をガツンガツンいじったりする施術もありますが、警戒してください。
 これらを行った後の経過が悪く、苦労している人や後悔の念に苦しんでいる人を何人も知っています。私が施術で対処できる場合もありますが、「もはや難しい」と感じる場合もありますし、あるいは「何度も施術しないと戻せない」という場合もあります。



 今回取り上げました後頭部のダメージを改善する方法は限られています。そこにテープを貼ることができるのであれば対処法も簡単なのですが、後頭部には髪の毛があるので、それができません。ですから手を当てることだけが対処法です。「どのように手を当てれば良いのか?」については場所と深さが大切で、「目が開いて視界が明るくなることを目安に」というのが答えになります。これは来店されないと具体的には理解できないと思いますが、このセルフケアを繰り返しているうちにやがてダメージを受けてエネルギーの低下している部分が復活するようになり、問題が解決されていくことになります。

足つぼ・整体 ゆめとわ
電 話  0465-39-3827
メールアドレス info@yumetowa.com
ホームページ http://yumetowa.com
web予約 http://yumetowa.com/sp/reserve2.html    

 この地球上における“生物”あるいは”生命体”という見方をしたとき、私たち人類は脊椎動物であり、その中の哺乳動物であるということになります。脳の発達に伴って精神性が最も進化しているだろうとされている私たちは、地球上で最も進化した存在でありますが、肉体的には脊椎動物の中の哺乳動物であるという制限を日々強いられています。ですから肉体的な面で「からだの健康」を考えるときに最も基礎となるのは、“脊椎動物”、“哺乳動物”というキーワードであると言うことができます。

 おそらくほとんどの人が、カゼをひいたり健康を害して病気になったとして、病気の治癒について、あるいは健康の維持について考えたとしても、自分たちが実は脊椎動物であり、哺乳動物であるという視点から考えることはないことでしょう。現代医学においても、あるいは長い年月伝承されてきた伝統医学の分野においても、学術的な理論として考察されることはあっても、実際にそれを臨床の現場で有効に活かして治療にあたっているということはほとんどないと思います。
 ところが、実際に整体の分野で私たちのからだを眺めますと、私たちが実は脊椎動物であり、哺乳動物であるということがとても重要になってきます。それは、からだの機能の根本的なシステムが、脊椎動物として、哺乳動物として厳然と存在しているからです。

 ところで生物界は植物界と動物界に分けられますが、一番の違いは栄養摂取の方法です。植物は大地に根を生やし、大地からの養分と水分、空気中の窒素などを材料に太陽光線によって光合成を行い、自らの栄養として生長します。一方、動物は光合成を行うことができませんから、栄養を食物として口から摂取しなければなりません。食物を追い求めて移動するために手足を持っているわけですし、嗅覚・視覚・聴覚・触覚・味覚という感覚と感覚器官(鼻・目・耳・皮膚・舌)もまた、その根本的な必要性は「食物を追い求めるためである」と言えると思います。

 地球上の生命はおよそ38億年前の太古の海で誕生したと考えられていますが、5億年ほど前に脊椎動物が誕生したとされています。そして今から2億年ほど前に哺乳動物が脊椎動物の進化の形態として誕生したとされています。
 脊椎動物は単純に表現すれば背骨をもった動物ということになりますが、脊椎動物ではないものにはカニや昆虫があります。彼らは背骨という内骨格を持たず皮膚(殻)に相当する部分を硬くして自分の形を維持しています。ですから「大きくなることができない」という制限があります。大きくなると自分の皮膚(殻)の重さでつぶれてしまうからです。
 一方、骨格として背骨をからだの内部に持つように進化した脊椎動物は大きくなることができるようになりました。さらに、骨格に支えられているので強い筋肉をもって素速く動くことができるようになりました。海の中を縦横無尽に素速く動く魚を連想していただければ、カニの動きよりはよほど俊敏であることがわかります。その理由は筋肉の発達の違いによるものであると言えます。

 ところで脊椎動物の第一の革命は、歯と顎を持ったことだと言われています。それまでは、口はあったものの歯がなかったので海中のプランクトンなど小生物を流れに任せて口の中に流し込むだけの捕食でしたが、歯と顎を持ったことによって、より積極的に獲物を捕らえることができるようになりました。大きな魚が小さな魚をガブッと噛みついて捕らえる光景が生まれました。
 脊椎動物の第二の革命は、海からの上陸に関連する大きな変革です。
 まず呼吸が変わりました。それまでは水の中に含まれている酸素を海水ごと口の中に取り込み、エラ(鰓)で酸素を取り出し、不要な水はエラ孔から外に出すというエラ呼吸でしたが、陸上の世界では水中呼吸に対応するエラは役に立ちません。そこで空気呼吸に対応するために肺を持ち、肺呼吸を行うための筋肉(首から胸腹部)が発達しました。さらに、陸上では重力が水中の6倍にもなりますので、血圧を上げなければ血液が循環しなくなってしまいます。そこで血圧を上げるための仕組み、すなわち心臓を中心とする循環系が発達しました。その他にも重力に負けない骨格をつくるために、それまでは骨といっても軟骨だったものが硬い骨に変わりました。さらに陸上を移動する必要性が、ヒレを手足に進化させていきました。この上陸による大きな変容・進化のためにおよそ1億年の年月がかかったと考えられています。

 そして、哺乳動物に進化する第三の革命では、“そしゃく”するシステムを獲得したことが大きな変化です。
 私たちは食事に際して、食物を口の中で噛み砕き、唾液と混ぜてこねりながら柔らかい食塊にして食道~胃へと送り込みます。それをそしゃく(咀嚼)と嚥下と言いますが、それは私たちにとっては“ごく普通のこと”です。私たちと同じ哺乳動物である牛や馬も草を口の中でモグモグとそしゃくしています。ところが爬虫類である、例えばヘビは、獲物をそしゃくすることはありません。丸呑みです。ワニにしても、あの恐ろしい歯でかみ切ることはあっても、モグモグそしゃくすることはありません。

 哺乳動物というのは「乳を吸う動物」という意味でもあるわけですが、生まれたばかりで目も見えないうちであっても子は母親の乳首に吸いついて一心に乳を吸います。乳を吸うためには唇を使って口をすぼめなくてはなりません。また、舌も上手に使わなくてはなりません。頬の筋肉も上手く使わなくてはなりません。ですから哺乳動物は唇をもち、舌が細かく微妙に動き、頬を巧みに操れる顔を持つようになりました。さらに、歯も切歯・犬歯・臼歯の三種類を持つのが特徴です。そして私たち人間は臼歯が一番多いのですが、それは米や麦や雑穀などを奥歯と舌と頬を使ってこねるようにしてそしゃくするのに適応するためだと考えることができます。肉食である犬、猫、ライオンなどと、穀物を主食とする私たちとは歯の構成が異なるのはこのような理由であると考えることができます。

 また、私たち人間が他の動物たちと一番異なる点のひとつは言葉を話すことです。そのために人間は脳の働きが優れていて知性が発達しているということになりますが、それに加えて舌と頬と唇と顎を巧みに使えるようになっていると言えます。
 ですから、私たちのからだについて考えるとき、この口周辺を中心とした“顔の機能と在り方”は非常に重要なポイントであると言うことができます。

 以上、大雑把に脊椎動物~哺乳動物~人間までの流れを見てきましたが、機能と形態とは表裏の関係で、切っても切れない関係であるという見方があります。それは機能に適するように形態が変化するという意味でもあります。思考し、言葉を語り、手を自由に動かして行為をするのが、他の動物にはない私たち人間の機能の大きな特徴です。ですからこの機能に適するように哺乳動物から今日の私たちまで形態を変化・変革させてきたのが人類の進化であるとも言えます。
 重力に対抗して二足歩行ができるようになったことで手を自由に動かせるよう解放しました。知性を発達させ、考えるための大きな脳を入れるのに適した頭蓋骨を持つようになりました。言葉を話し、いろいろな物を食べられるように舌と唇と頬と顎を自在に微妙に使えるようになりました。
 これらを反対から考えますと、歩くこと、考えること、そしてそしゃくを中心とした口周りの機能を使い続けること、これらが私たち人間の機能を健全に保つための要であると言えるのではないでしょうか。

 特にそしゃくに関していえば、ほんの少し前(数十年前)まで「一口30回噛みましょう」と大人達や学校の先生は子供たちに指導していました。ところが、今では医療の現場でさえ、そしゃくについては軽視されているように感じます。実際、整体の現場では、そしゃく筋がゆるんでいたり、偏りがあることが原因でからだに不調を訴える人がたくさんいます。そのような人たちは、まず”よく噛む”ことから始めなければなりません。「早食い」はまったく良くありません。

 “呼吸”と“循環”と“栄養の消化吸収”と“不要物の排出”が生命維持の要です。これらの機能を象徴する肺・心臓・小腸・肝臓・腎臓‥‥といった、いわゆる五臓六腑は、動物が脊椎動物に進化する以前は、細かく分化していたわけではなく、一つの腸が全てを担当していたということです。腸の中に全ての機能が含まれていて、その中心はエラ呼吸の場所にあったと考えられています。
 つまり私たちのからだで言えば、顔~喉にかけてが中心であり、頭部が骨盤部と分かれて前方に伸びる(頭進)ことによって胴体(体幹)ができ、内臓の臓器や器官がそこに効率良く配置されたということです。
 頭と顔の骨のことを頭蓋骨と言いますが、解剖学的に顔の骨のことを内臓頭蓋と表現することがあります。つまり顔は内臓が表に露出したものであるということを示唆する表現です。胃腸の調子が悪いと顔色がさえない、ということからも顔の色艶や表情には自然と内臓の状態が反映されます。それは発生学的に顔が内臓(腸)の延長線上であるからです。さらに顔には心の状態や精神(脳の働き)の状態も重なるようにして反映されますので、顔をよく観察することで肉体的なことだけでなく、いろいろな情報を読み取ることができるのでしょう。
 このように顔~喉にかけてはとても重要なところですから、化粧や美容などによって容姿を整えれば「それで良い」というものではありません。顔は全身機能の要であるという観点で考えることが、本当はとても重要なことだと言えます。

そしゃくは命の要
 太古の昔、エラ呼吸を行うエラの筋肉の運動リズムが、その生命体のリズムでした。そしてそのリズムは海の寄せては返す波のリズムと同調しており、地球の、そして自然界のリズムと同調したものであると言ってもよいのかもしれません。
 つまり、自然界のリズムに則って腸の蠕動運動のリズムがもたらされ、そのリズムに合わせてエラが動いていたので、呼吸や血液循環のリズムも自ずと自然界のリズムに同調していたということになります。
 そのエラ呼吸の要であるエラ孔は太古の魚には6個ありました。それぞれのエラ孔には筋肉と軟骨が付属しているのですが、進化とともに、耳とその機能器官、扁桃腺、胸腺、副甲状腺、肺、そしゃく筋、顔面表情筋、嚥下筋、発声筋などに変化していきました。
 現在、私たちの顔にあります表情筋やそしゃく筋は、自然界のリズムに支配されていたエラ呼吸の頃の筋肉(内臓平滑筋)とは違って、自分の意思によって動かすことができる筋肉に変わっています。肺を中心にした呼吸運動もある程度意思でコントロールすることが可能なシステムに変わっています。ということは反面、自然界のリズムに“お任せ”しておけば良いというものではなくなってしまったということです。意図的にコントロールしなければからだのリズムに支障をきたすようになってしまうということです。
 私たちは食べ物を食べるとき、食物を口の中に入れてモグモグとそしゃくし、それが飲み込んでも大丈夫な状態になった後、ゴクンと飲み込んで食道~胃に送ります。この一連の動作では、そしゃく筋と嚥下筋が連動するわけですが、それ以外にも唾液腺から唾液が分泌され、頬の筋肉や舌が協働して働きます。唾液には酵素が含まれていて食物を分解する働きをするわけですが、それ以外にも発ガン物質の毒性を抑える働きがあることもわかってきています。この強い味方の唾液をたくさん分泌するためには、そしゃく筋を働かせなければなりません。たくさん噛めば噛むほど唾液が分泌されるのです。余談ですが、中国漢方の教えに、活力の「活」という字は「舌」が「水」を伴っている状態だというのがあります。舌が常に湿った状態、つまり、舌が唾液で潤っている状態が「活」であり、唾液の分泌は健康にとても重要だと考えられています。

 そしゃく筋には四つの筋肉があります。主に顎を上下に動かす咬筋(こうきん)と側頭筋(そくとうきん)。下顎を前後左右に動かす働きをする内側翼突筋(ないそくよくとつきん)、外側翼突筋(がいそくよくとつきん)です。私たちの奥歯は臼歯で、穀物をすりつぶすのに役立つ臼の形になっています。そして、このすりつぶす動作に翼突筋が深く関与します。つまり穀物を主食として食べるようなシステムに、歯もなっていますし、筋肉も用意されているということです。反対から考えますと、穀物を食べなければそしゃく筋はバランスを失い、筋力不足になってしまう可能性が高くなるということです。
 かつてのエラ呼吸に関係する腺や筋肉や軟骨が、今日の私たちの扁桃腺、胸腺、副甲状腺、肺の機能、表情筋、そしゃく筋、嚥下筋、発声筋、耳の機能などになっているわけですから、これらの働きは当然連動しますし、腸の蠕動運動、すなわち内臓の働きに影響を与えると考えることができます。
 「連動する」ということは、影響し合うということであり、どれか一つが駄目になると他のものにも不具合が生じるということです。あるいは、どこかに不調があったとしても、連動の仕組みを利用して不調を改善させる可能性があるということです。
 そして、これらの中で私たちが意図的にコントロールできるものは、そしゃくと呼吸と発声です。ですから健康法や芸や武術(スポーツ)などの分野で“正しい呼吸”が上達のための鍵であるといわれているわけですし、歌を歌って発声筋を動かすことが健康のために良いことだと考えられています。そして同様に、そしゃく筋をよく使うこと、つまり穀物をよく噛んで食べることも健康のためにはとても重要なことです。

 現在は、「一口30回噛みなさい」と指導する声は聞こえなくなってしまったかもしれません。そして噛むことは面倒で時間もかかるという考え方の上に、「飲む栄養」「かじる栄養」「ゼリーの様な栄養」が市販されているのかもしれません。「早食い」が要求されるほど時間に追われている私たちの社会、“食物さえ、栄養さえ、バランス良く摂っていれば大丈夫だ”とみんなが思い込んでいるのかもしれません。
 しかし原点を振り返って、私たちのからだは脊椎動物であり哺乳動物である、ということに着目しますと、“そしゃく”がこの肉体にとって“とても大切である”という結論が導き出されます。
 現に整体の現場では、そしゃく筋がゆるんでいること、あるいは片噛みの癖や噛みしめの癖によって顔が歪み、その歪みがからだにつながり、不具合になっていることがとてもたくさんあります。“噛めば解決してしまう”ということもたくさんあります。呼吸を整えることがあらゆる面での基礎であると同様に、そしゃく筋を鍛えることも健康のための必要条件であり基礎です。そのように意識を変えて、日々の食事の時間を大切に過ごしていただきたいと思います。

足つぼ・整体 ゆめとわ
電 話  0465-39-3827
メールアドレス info@yumetowa.com
ホームページ http://yumetowa.com
web予約 http://yumetowa.com/sp/reserve2.html  

 発達障害を疑われるお子さんがお母さんと一緒に時々来店されます。
 私は、このように診断される症状や病態のことをよく知りませんので、あくまでも整体的な観点でからだを観察し、修正すべきところを修正することで対応しています。それでもある程度改善が見られるのか、口コミで紹介されて来店される方がおられます。
 今回来店されたのは小学校高学年の男子です。多動性の発達障害と母親が仰ってましたが、椅子にじっと座っていることができず、いつもからだをくねらせていて、集中力が散漫、お母さんも困り果てているような感じでした。「2歳くらいから他の子と違っているように感じ、幼稚園の年中の頃からは完全に孤立した感じで、その状態が今も続いている」と仰っていました。
 
 施術ベッドの上に仰向けになってもらい、からだを観察しながら施術を始めました。後頭部と首との境界にあります後頭下筋群(こうとうかきんぐん)がとても硬くなっていました。
後頭下筋群と上部頚椎

 「乳児の頃、腹ばいになった状態で頭(首)を反らすことばかり好んでやっていた」ということでしたので、その影響で後頭下筋群や背面の筋肉が強くこわばってしまい、今日まで至っているのかもしれません。その他には足の小趾側の縁にウオノメになりそうなマメがありました。足の形から想像しますと、内側(親指側、踵の内側)を浮かせ、外側(小趾側)ばかりを使って立っているのかもしれません。つまり、“ちゃんと立つことができない”状態だということです。

 まず後頭下筋群のこわばりをゆるめることから施術を始めました。最初は少々痛がりましたが、気持ち良さも感じるようになったのか、ベッドの上でバタバタ動かしていたからだも静かになり、10分くらい続く同じ施術を静かに耐えていました。
 次に足の方の施術を行いました。小趾側で立つ癖があるということは、確実に長趾屈筋(ちょうしくっきん:この前の投稿記事)がこわばっていますので、それをゆるめ、足裏も揉みほぐしました。そして、この施術を行いながら息を吐き出す練習を行いました。
 「落ち着きがない」「頭がすっきりしない」「頭が詰まっている」等々、頭の働きに関する問題を持っている人は往々にして息が吐き出し切れない傾向があります。この男子のしゃべり方は言葉の最初の音は大きいのですが、最後の音が聞きとりにくいくらい小さい音です。ですから何を言っているのか理解できないと周りの人は思ってしまうでしょうし、それが周囲から孤立してしまった原因の一つであり、発達障害と診断された要因の一つなのかもしれないと私は思いました。
 「10秒間『ウー』と静かに声を出し続けてみて」と言ってやってもらいましたが、最初は3秒間も続きません。足を揉みほぐしながらこの練習を何度も何度も繰り返しました。そうしているうちに自然と集中力が出てきたのか、お母さんが「苦手だ」と言っていた仰向け寝の状態でも落ち着きが出てきて、「ウー」の発声時間が少しずつ長くなってきました。
 結局10秒間続けることができるようになりましたが、そうなりますと尻切れトンボだった言葉が、しっかり発せられるようになりました。

 息を吐き出す動作は腹筋を使う動作ですが、それによって、また、ふくらはぎや足を揉みほぐし、後頭部(後頭下筋群)のこわばりをゆるめたことなどによって全身の血流も良くなり、頭もスッキリしたのだと思います。眼差しに落ち着きが見られるようになり、椅子にしっかり座れるようになりました。まだ「姿勢が良くなった」とまではいきませんが、このような施術を何回か繰り返していけばかなり良くなるのではないかと感じました。

 発達障害という病態がどういうものであるのかはよく知りませんが、「じっとしていることができない」要因の中には、「骨盤で座り続けることができない」「しっかり足裏全体で立ち続けることができない」というものも含まれているのではないでしょうか。そうであるならば、発達の問題、頭の問題、精神的問題、性格的問題ということに焦点を当てるだけでなく、肉体的な面(骨盤や下半身、首や背中など)も視野に入れて対応することも必要だと思います。

 椅子に座ったとき、骨盤が安定していなければ”落ち着いて座る”ことができません。そこに大人も子供も区別はありません。ソワソワしたり、左右の殿部を往ったり来たりするように体重を乗せ換えたり、あるいは心地良くないのを我慢して座り続けたりと「座っているだけでストレス」となってしまう身体的状況というものがあります。本人はまったく気にしていないかもしれませんが、骨盤で体重を支えられないため、内股や首肩や背中に力を入れて座る癖になっている人はかなりいます。
 実際、左右の殿部に均等に体重を乗っけていられる人はそれほど多くはなく、多くの人がどちらかに偏っているという状況です。この状態が悪化しますと落ち着きがなくなりますが、更に悪化して、どちらの殿部(骨盤)にも体重を乗せることができない状態になれば、この男子のように「食事中も、好きなゲームをしている時も、一時もじっと座っていることができない」となってしまいます。

 また、この男子のように足の外側で立っている癖の人も結構います。椅子に座った時の足の状態、つまり足癖を観察しますと、つま先立ちのようにしている人、足を内返しして外くるぶしのところを伸ばすようにしている癖の人などがいます。そして、いわゆる“貧乏揺すり”の癖を持っている人もいますが、これらは腰部や骨盤などに問題がある可能性があります。そして、本人も周りの人も気がつきにくいかもしれませんが、こういう癖のある人は、しっかり安定して立つことができません。

 この男子に対しては骨盤を整えるための施術を行ったわけではありません。施術内容は上記に記したとおりです。しかし、施術を終えるとドカンと椅子に腰を下ろして座ることが出来るようになりました。また、あちらこちらに彷徨っていた視線もじっと私の顔を見続けることができるように変わりました。集中力が向上したのだと思います。
 私は、後頭部の硬くなった筋肉をゆるめ、呼吸がしやすく舌の動きが良くなるような状態にすることと、足の硬くなった筋肉をほぐして足裏でしっかり立てる状態になるよう施術を行っただけです。あとは息を長く吐き出す練習を行いましたが、これはとても重要だと思っています。

 昔から「動作は息を吐きながら行わなければならない」という教えがあります。からだの仕組みとして、息を吸っているときはスキだらけになってしまいますので、吸気の時に動作を行うとケガをしやすくなるからです。ギックリ腰などからだを壊すのも、吸気しながら動作を行ったり、あるいは息を吸い込んで止めた状態で動作を行う時が多いのですが、それは吸気時や息を止めたときは意識が通わず無防備状態になってしまうからです。
 抑圧を受けてストレスを感じるとき、緊張でからだが硬くなるとき、その時私たちは無意識に息を止めてしまいます。抑圧とストレスと緊張の溢れている現在の社会環境で暮らす私たちは、つまり息を止める傾向が強く、吐き出すことが苦手な状態になっているということです。実際、呼吸のリズムが「スー・ハー スー・ハー」ではなく「スー・フッ スー・フッ」となっている人がたくさんいます。吐くことがおろそかになっているのです。

 息を吐ききる動作は腹筋をしっかり使う動作です。ですから腹筋運動を何十回かするよりも、息をしっかり吐き出す癖をつけることの方がからだに無理なく腹筋を鍛えることになると思います。
 言葉を発することは、吐く息が声帯を通過することによって起こります。息を吸いながら言葉を発することは不可能ではありませんが、とても難しいことです。ですから、しっかり喋ることができない状態を改善するための第一は、息を吐き出すことがしっかりできるようになることだと私は考えています。

 この男子は多動性や発声の症状以外に、癇癪を起こしやすい、怒りやすい、漢字が苦手(形の認識が苦手)という症状があると母親から聞きました。私は後頭下筋群が強くこわばっていること、腕や首~腰部まで背面の筋肉がこわばっていること、下半身が硬くこわばっていることなどによって頭蓋骨がずれており、それによって脳の働きが不調なのではないかと考えています。それはこれからの施術によって明らかになっていくと思いますが、またお知らせしたいと思っています。
 お子さんが「発達障害かもしれない」と思われている親御さんは「息を吐き出す」ことに着目して観察してみてください。スマホやタブレットなどのゲームに熱中することは「息を止める動作」です。子供達が好むゲームの多くは「時間との競争」の類だと思います。息を止めて集中しないと負けてしまうので、息を止めてばかりいるのだと思います。
 大声を出して楽しそうにからだを動かして遊ぶ動作は「息を吐く動作」です。小さいお子様であれば、脇腹を擦るだけでとてもくすぐったがり、からだをよじらせて大声で騒ぐと思いますが、それによってからだはバランスを取り戻し、自然に息を吐き出すことを覚えます。
 ですから本人が好きだからと言ってゲームばかりさせるのではなく、面倒でも一緒になって、大声で騒ぐように遊んであげてください。
 私の子供時代は、外でからだを使って遊ぶことが日課でした。今の子供達はゲームや勉強など、からだではなく頭を使うことが日課になっているようです。それはそれで進歩なのかもしれませんが、ここに記しました通り、息を吐き出すこと、からだの筋肉をたくさん使うことは、からだや脳の働きにとって必須のことだと思います。
 「勉強やゲームばかりでなく、からだを動かし、大声を出すこともやって欲しいな」と一整体師として思います。
 

足つぼ・整体 ゆめとわ
電 話  0465-39-3827
メールアドレス info@yumetowa.com
ホームページ http://yumetowa.com
web予約 http://yumetowa.com/sp/reserve2.html 

 首を回旋したり横に倒したりすると肩上部が張って痛くなったり、じっとしていても常に肩上部に張
りを感じてしまうという場合、一番疑われるのは肩甲骨のズレです。
 首から肩甲骨につながっている筋肉には僧帽筋(上部線維)、肩甲挙筋、肩甲舌骨筋があります。肩甲舌骨筋は目立たない筋肉で、専門家の間でもあまり取り上げられない筋肉ですが、実際のところ、肩上部の張りや不具合にとても深く関与しています。
 これら3つの筋肉で、僧帽筋と肩甲挙筋は首の後面~肩甲骨にかけての張りをもたらしますが、肩甲舌骨筋は首の前側、喉仏の直上にある舌骨と肩甲骨の上面を結んでいますので、印象としては“首の真横”に張りをもたらし、首を回旋したり横に倒したときに“肩の真上”が痛むといった症状をもたらします。

僧帽筋上部線維と肩甲挙筋
 いわゆる“肩こり”で一番気になり、ついつい手がいってしまうのが、僧帽筋上部線維です。肩甲骨を持ち上げたり、腕を挙上したり、頭を後に倒すきに収縮する筋肉です。筋肉をたくさん鍛えているアスリートの首が短く見えてしまうのは、僧帽筋がとても発達しているからです。私のように肩の揉みほぐしを行っている施術者にとってこの筋肉が発達している人は、首肩の奥の方にある筋肉に手が届きにくくなるため、施術のしづらいタイプとなります。
 
首の運動制限に関わる筋01

 肩甲挙筋は頚椎の1~4番と肩甲骨の内側上面を結んでいますので、頚椎の歪みと関係する筋肉の一つです。その点が施術において重要なポイントとなります。また、目を動かす筋肉(外眼筋)と繋がりが深いので、“目が凝ってこめかみが張ると、肩甲挙筋が張ってしまう”という事象が臨床的に大切なポイントとなります。
 首を下方に向けたときに首の後面~肩甲骨の内側にかけて張りや痛みを感じる場合は肩甲挙筋の張りが疑われます。

肩甲舌骨筋
肩甲舌骨筋

 肩甲舌骨筋は一般的にマイナーな筋肉ですが、声楽家など発声に関係する人たちにとっては重要な筋肉であると考えられているようです。頚椎の3~4番の前面には宙に浮いた状態で舌骨があります。舌骨は舌(舌筋)の出発点ですから舌の動きや状態に関係します。舌骨が捻れていますと舌を噛みやすくなったり、滑舌が悪くなったり、無呼吸症候群になったりします。
 前述しましたとおり肩甲舌骨筋の張りは首の側面~肩上部の張りや痛みをもたらしますが、その原因として考えられるのは①舌骨がずれていること、②肩甲骨がずれていること、③発声によってこわばってしまったことなどが主なものです。一般の発声でこわばることは考えにくいですが、声楽家のように大きな声を連続して、かつ微妙な喉や舌の使い方を頻繁にされている人はこわばる可能性が高いかもしれません。大きな声を出すと肩に張りや凝りを感じるようでしたら、肩甲舌骨筋のこわばりが疑われます。

 舌骨がずれることでもたらされる肩甲舌骨筋のこわばりは、①頚椎の捻れ(舌骨が頚椎3~4番の前面にあるので)、②噛みしめや片噛み(噛みしめている方に舌骨はずれる)、③持ち上げる動作でこの筋肉を使ってしまう、などが考えられます。
 舌骨にはこの筋肉以外に顎二腹筋、頚突舌骨筋という筋肉がつながっています。噛みしめや片噛みによってこれらの筋肉がこわばりますと、そちらの方に舌骨が引き寄せられますので反対側の肩甲舌骨筋が張ってしまうということになります。右側ばかりで噛んでいる人は舌骨が右側にずれます。すると左側の肩甲骨と舌骨の距離が少し遠くなりますので、それを結んでいる肩甲舌骨筋が張ってしまうようになるという理屈です。
 また、例えば四十肩や五十肩になって、あるいは腕や肩に力が入らない状態になって肩関節が上手く使えない状態なのに重い物を持ち上げたり運んだりしなければならない状況になったとき、私たちのからだは肩関節の筋肉ではなく僧帽筋や肩甲挙筋や肩甲舌骨筋や菱形筋を使って肩甲骨そのものを挙げることで動作を行おうとしてしまいます。これは肩関節周囲炎の状態が悪化した人にとてもよく見られる現象ですが、「腕で持ち上げられないので肩で持ち上げてしまう」という表現があてはまるかもしれません。
 この状態が長く続きますと、僧帽筋、肩甲挙筋、肩甲舌骨筋、菱形筋はとてもこわばってしまいます。常に張りを感じるだけでなく、ちょっと触っただけでも痛みを感じたり、指圧などされたときには耐えられないくらいの痛みを感じるかもしれません。

肩甲骨のズレと首の動き
 肩甲骨と首を結んでいる僧帽筋、肩甲挙筋、肩甲舌骨筋は肩甲骨のズレによって影響を受けますので、肩甲骨のズレが原因で首の動きが制限されてしまうことが考えられます。
 肩甲骨のズレには幾つかのパターンがありますが、首の動きを制限する代表的なもの二つを取り上げてみます。
①肩甲骨が外側にずれると3つの筋肉は全部張ってしまう
 筋肉は骨と骨を結んでいますので、2つの骨の位置関係が本来の状態より遠くなりますとピーンと張ってしまいます。位置関係を元に戻そうとする力が働きますので筋肉はこわばります。反対に骨の位置関係で距離が短くなりますと筋肉はたるんでしまい上手く働けなくなります。
 これは電柱と電線の関係をイメージしていただければわかると思います。2つの電柱とそこに張られた電線は、ちょうどよい張りのバランスを保っています。ところが何かの影響で、たとえば地震で電柱の1本が倒れかけて電柱間の距離が遠くなったとします。すると、それまで良いバランスで張られていた電線には強い負荷がかかることになり、電線は頑張らなければならない状態になります。頑張りきれなくなりますと切断してしまいますが、これと同じような状態が骨と骨の間が離れたときの筋肉の状態にあてはまります。筋肉は頑張り続けなくてはいけませんので、身を縮めるようにこわばって硬くなってしまいます。頑張り続けることで一杯一杯になり、もはや柔軟性は期待できませんので、首の可動域がとても狭くなってしまいます。
 そしてこれまで幾度となく取り上げてきましたが、肩甲骨を外側にずらす原因の一番は前鋸筋です。前鋸筋は肩甲骨を外側や前方に出すときに働く筋肉ですが、パソコン操作をはじめ、私たちの現代の仕事は腕を前に出しっぱなしにすることが多いので、この筋肉がこわばっている人が大変多いです。自分は猫背だと感じている人はまず間違いありません。

②肩甲骨が下にずれると肩甲挙筋の張りが目立つ
 肩甲骨を下にずらす筋肉の代表は僧帽筋の下部線維です。同じ僧帽筋ですが、上部線維がこわばると肩甲骨が上に上がり、下部線維がこわばると下に下がります。またムチウチなどの影響で上部線維の働きが悪くなりますと肩甲骨は下がってしまいます。その他には菱形筋の働きが悪くなったり、胸にあります小胸筋の働きが悪くなっても肩甲骨は下がってしまいます。
 僧帽筋下部線維のこわばりに焦点を当てて考えますと、ポイントは胸椎下部の歪みです。僧帽筋は背骨の真ん中にあたる棘突起と肩甲骨を結んでいますので、棘突起が右側に歪んだり、胸椎自体が右側にずれますと左側の僧帽筋はこわばることになります。胸椎の最下部12番は腰椎との関節部分になりますが、腰椎や仙骨の影響を受けます。つまり下半身からの影響で歪みやすいポイントであるといえます。
 胸椎12番が下半身からの影響で右側にずれ(頭から見て反時計回りの捻れ)ますと左側の僧帽筋下部線維がこわばり左の肩甲骨を下げてしまい、左側の僧帽筋上部線維と肩甲挙筋がこわばり張ってしまいます。例えば(からだに歪みのない人が)椅子に座るとき左脚を上にするように脚を組みますと仙骨が右側に捻れ(頭から見て反時計回り)ますが、それに合わせて胸椎12番も同じようになり左肩が下がります。脚を反対にして右脚を上にしますと、これとは反対の現象がおこり右肩が下がります。これは骨盤の歪み~背骨の歪み~肩甲骨の歪みとつながる骨と筋肉の連動関係ですが、私たちのからだはこのようにして全身がつながっています。

 またムチウチで後頭部の首付根付近を伸ばしますと、それは間違いなく僧帽筋上部線維の働きを悪くします。それによって肩甲骨は下がってしまい常に肩甲挙筋など首筋が張ってしまうという状態を招きます。
 その他に肩甲骨が後方(背面方向)にずれても肩甲挙筋が張って下を向きづらくなりますが、これは骨盤の後傾、あるいは噛みしめや歯ぎしりによる胸鎖乳突筋のこわばりと関係します。
 右利きの多くの人は、左側の腰骨(腸骨)が後に傾いている傾向があります。すると肩甲骨も連動して左側が後に傾きます。そうなりますと頚椎と肩甲骨の距離が離れますので、肩甲挙筋や僧帽筋上部線維がこわばってしまい、下を向くと首の左側後部に張りを感じて動かしづらくなります。
 
胸鎖乳突筋と肩甲骨の関係

 また鎖骨につながっている胸鎖乳突筋がこわばって縮みますと、鎖骨を背面に引っ張ります。鎖骨は肩甲骨とつながっていますので、肩甲骨も背面方向にずれてしまうという理屈です。左右の鎖骨を触ったときにどちらかの鎖骨が「引っ込んでいる」と感じたときには、そちらの鎖骨が背面方向にずれていて、同様に肩甲骨もずれている状態であると判断することができます。
 こんな時には、首筋をいくら揉んだとしても張りはとれません。揉まれているときには気持ちよさを感じるかもしれませんが、揉み終えた瞬間からまた張りがやってきてしまいます。(筋肉の働きが戻らないほどに揉み倒してしまえば別ですが)

 以上、“肩甲骨のズレは首の動きを制限する”ということを説明してきましたが、肩甲骨の位置を本来の状態に戻して首の運動をスムーズにすためには次の項目をチェックして整える必要があります。

 1.手や腕からの影響の有無‥‥前鋸筋‥‥肩甲骨の外方、前方へのずれ
 2.舌骨の位置による影響の有無‥‥目・噛みしめ・片噛み‥‥肩甲舌骨筋のこわばり
 3.頭部や頸部の損傷による影響‥‥ムチウチ、寝違え、打撲‥‥僧帽筋上部線維、肩甲挙筋などの損傷によって肩甲骨が下がっていないか。
 4.胸椎の捻れや歪みによる影響の有無‥‥胸郭や骨盤の歪み‥‥僧帽筋下部線維や広背筋のこわばりにより肩甲骨が下がっていないか。
 5.骨盤の影響による肩甲骨の後傾の有無‥‥腰骨と肩甲骨の連動関係‥‥下半身からの影響で首筋が張っている可能性。
 6.噛みしめや片噛みにる肩甲骨のずれの有無‥‥鎖骨の歪み=肩甲骨の歪み‥‥胸鎖乳突筋のこわばりは肩甲骨を後にずらす。
 7.僧帽筋上部線維、肩甲挙筋、菱形筋、肩甲舌骨筋、小胸筋など筋肉自体の変調の有無‥‥肩関節の状態と関係‥‥腕で持ち上げられないので、これらの筋肉を使って作業を行っている可能性はないか。

 これらのことをチェックして整えれば、肩甲骨のズレによる首の動作制限や痛みの問題はほとんど解決します。ただし、時々手強いと感じる時もあります。
 代表的なのは、四十肩・五十肩を悪化させてしまい時間が経過した状態の時です。「7」のように筋肉自体が強くこわばってしまった場合は、それをゆるめる施術が痛いですし、これらの筋肉を使って腕を動かす癖が抜けないため1週間後にはまた強いこわばりの状態で来店されるようになってしまいます。五十肩(肩関節周囲炎)をこじらしてしまいますと肩関節を動かすための筋肉がほとんど働かない状態になりますが、それを補うように今回取り上げた肩甲骨を動かすための筋肉を代用してしまう癖がついてしまうのです。その癖を抜け出すまでに労力と時間がかかってしまうのが実際です。

 首の運動を制限して痛みをもたらす要因として、前回は“頚椎の歪み”を取り上げ、今回は“肩甲骨のズレ”を取り上げましたが、もう一つ大きな要因があります。それは胸郭(肋骨)の歪みとそれに関係する筋肉の変調です。これについては次回に説明させていただきます。

 首を回旋したり上下や左右に動かそうとした時に痛みを感じたり、途中までしか動かない場合、考え方は大きく二つに分かれます。一つは頚椎が捻れたり歪んだりして、骨の動きに制限がかかってしまうことです。もう一つは首や肩の筋肉が張っていて、首の動きを制限してしまうことです。
 ともに首の筋肉に張りやこわばりができますが、頚椎に近いところに触れたときピンポイント的に痛みが出る場合は頚椎の捻れ、首筋全体が張っていて押すと痛みを感じる場合は首に繋がる筋肉のこわばりが疑われます。
 今回は頚椎の捻れが原因となっている場合について取り上げます。

上部頚椎の捻れ‥‥頚椎1番と2番
 後頭部の真ん中の出っ張り(後頭隆起)に手をあて、まっすぐ下に降ろしてきて首のつけ根の凹んだ部分を通過して次にぶつかる骨の出っ張りは頚椎2番の棘突起です。首を下向き加減で、少し強めの力で圧しながら触ると棘突起がわかりやすいかもしれません。その棘突起は真っ直ぐのライン上にありますでしょうか。
 
頚椎の捻れ_C1右C2左

 頚椎に問題があるときに多く見られるのは、2番の棘突起が左側にずれていることです。この場合は首を左側に回旋することが苦手だったり、回旋し始めに違和感や痛みを感じると思います。
 頚椎2番が左に捻れる理由はいくつかかんがえられますが、一番手強いのはその上部の頚椎1番が右側に捻れ、その反動で2番が左に捻れることです。頚椎1番の捻れは後頭骨の歪みや片噛み癖、目を動かす筋肉のこわばりなどが関係します。右目ばかりを使っているか、右の方ばかりを見ていると頚椎1番は右にずれます。右側ばかりで噛んでいても同様です。
 首の動きが制限されて痛みが出るほどの状態であれば、噛む筋肉や目を動かす筋のこわばりがかなり強いことが考えられます。また、頚椎1番・2番は次に説明します頚椎7番の影響も受けますので、施術においては、目と咬筋と頚椎7番を歪ませている原因を改善しなければなりません。

 頚椎2番が左側に捻れ、その下の頚椎も左側にずれているような状態では、左側の首から肩にかけても張りが強い状態ですが、頚椎の右側の筋肉が引っ張られた状態になっていますので、自覚としては首のつけ根の右側がとても辛く感じるかもしれません。だからといって首の右側をいくら揉んでほぐしたとしても、解決には向かいません。上部頚椎を中心に、頚椎全体の歪みを改善することが何よりも優先すべき事だと思います。

頚椎7番の捻れ
 頚椎7番は首をガクンと下に向けたとき、首の最下部の一番出っ張るところです。この頚椎が右側にずれている人がとても多くいます。それは右利きの人がとても多いことと関係していると考えられます。右手ばかりを使っていると右側の肩甲骨が外側(右)にずれます。それに合わせるように鎖骨とともに頚椎7番が右側に引っ張られます。あるいは仙骨や後頭骨との関係でそうなっているかもしれません。
 頚椎7番がずれますと、肩甲挙筋への影響が症状として顕著になります。首を下に向けたり、倒したりすると首筋から背中(肩甲骨の内側あたり)に突っ張りが感じられます。あるいは、いつもそこが張っていて辛く感じます。その他には肩上部が張ったり、背中の上部に張りを感じたりします。

めまいに関係する頚椎4番
 めまいを起こす原因はいろいろ考えられますが、その一つに首の中間(頚椎4番くらい)が歪んでいることがあります。起き上がろうとしたり、首を動かそうとすると突然めまいに襲われ吐き気が伴うような場合は、頚椎4番あたりの歪みを疑ってみるのも一つの手だと思います。
頚椎の歪みに関係する主な筋肉

 頚椎の3番から6番までの歪みは斜角筋の変調を確認することが最初の方法だと私は考えています。
 斜角筋は前斜角筋・中斜角筋・後斜角筋と三本ありますが、それぞれ頚椎と肋骨を繋いでいますので、肋骨(胸郭)が捻れたり歪んだりしますと、頚椎に歪みをもたらします。また噛みしめや歯ぎしりの癖がありますと、あるいは一時的にでも強く食いしばったりしますと斜角筋がこわばってしまい胸郭を歪ませます。斜角筋以外では肩甲挙筋が頚椎の歪みに関係します。スマホなどの見過ぎで、目の筋肉が固まってしまいますと、肩甲挙筋がこわばって頚椎が歪みます。

ケガによる頚椎の歪み
 ムチウチ、打撲、それらは頚椎を歪ませる大きな原因となります。
 先日、スノーボードで転倒し頭部を強打して首を痛めた方が来店されました。一月経っても症状が改善されないということでした。
 
後頭下筋群

 からだを観ますと、普通のムチウチではほとんど損傷しないような一番深い筋肉が損傷を起こしているようでした。後頭下筋群と言いまして、後頭骨と頚椎1番、2番を繋いでいる最も深い筋肉です。30分近く、その筋肉だけを施術していましたが、スッキリ改善とはいきませんでした。かなりのダメージだったと思われます。施術の後は、首を緩やかに動かすことには痛みがそれほど感じられなくなったのですが、ちょっとした瞬間的な動きではまだ痛みを感じてしまうとのことでした。
 後頭下筋群も最も深い部分にある筋肉なので手が届きません。あと何回か来店していただくことになると思いますが、この筋肉群の状態が良くなるのを願うばかりです。

 以上、頚椎の捻れに関する説明を行ってきましたが、上部頚椎は後頭骨との境であり、その内部には触れることのできない筋肉や組織が複雑に存在します。手技でそれらを的確に捉えて状態を把握し、整えることはなかなかできないことですから、頚椎の問題は時にとても厄介だったりします。それでも、片噛み、噛みしめ、歯ぎしりなどによるそしゃく筋のこわばり、目の使い方によるこわばり、胸郭や肩甲骨の歪みなどを修整することで改善されるものも多くあります。ですから、いろいろ試したが症状の改善が見受けられないと感じていらっしゃる方は、一度ご来店いただければと思います。

↑このページのトップヘ