ゆめとわのblog

ホームページとは違った、より臨場感のある情報をお届けしたいと思っています。 また、テーマも整体の枠を飛び出してみたいと思います。 ホームページは以下です。 http://yumetowa.com/ お問い合わせはメッセージ欄でお送りください。

カテゴリ: 下半身

 足裏(足底)やカカト(踵)がとても硬くなっている人がたくさんいることは前にもお話ししました。私は、腰痛や下半身に症状を抱えた方はもちろん、頭痛や首・肩のこりの人であってもほとんどの場合、足裏やふくらはぎを施術します。そして、「どうしてこんなに硬くなってしまうのだろう?」と思うことがよくあります。
 そしてたどりついた一つの見解が、“カカト重心の人が多い”ことです。私たちが普段立ったり歩いたりしている地面が硬いコンクリートやアスファルトなので自ずと足底は硬くなってしまうということを以前に記しましたが、それに加え、カカトで立っているためにどうしてもカカトが硬くなってしまうのだと思います。

カカト重心の人の特徴
 カカト重心の人の外見上の特徴があります。(すべてがあてはまるわけではありませんが)

①反り腰
 本人は背筋を伸ばして良い姿勢を保とうとしているのだと思いますが、腰の上部を反らせてしまうとカカトの方に重心が移ってしまいます。

②首が前に出ている
 肩甲骨の位置はカカト重心を改善するための決め手の一つです。肩甲骨が後方にあるとカカト重心になってしまいますが、このような人はバランスを維持するために頭部を前に出すようになってしまいます。「肩甲骨が後ろにあるので顔が前に出る」と言った方が解りやすいかもしれません。肩甲骨は鎖骨と対になっていますので、肩甲骨が後にある人は正面から見た時に鎖骨が埋もれてしまってよく見えないか、存在感が乏しい状態になっていると思います。首が前に出ていて鎖骨がハッキリ見えないような人は、カカト重心である可能性が高いと言えます。

③ガニ股歩き
 立った状態で意図的にカカトに体重を乗せようとしますと(少し後に反ろうとしますと)、膝の内側に力が入らなくなり膝が少し開いた状態になります。この状態で歩きますと、必然的にガニ股歩きになってしまいます。
 カカト重心の人は、常に後方から何かに引っ張られているのと同じ状態ですから、どうしても膝が外に向かってしまうような歩き方になってしまいます。女性の方で、それが気になる人は意図的に膝を締めて歩こうとしますので内股歩きのようになりますが、それはからだに無理を強いることになりますので、カカト重心を是非改善していただきたいと思います。

カカト重心の弊害
 カカトに体重が乗っているということは、後から何かの力で引っ張り続けられているようなものです。ですから前に進むためには普通の状態以上に力が必要になります。それはからだに疲労を蓄積しますし、筋肉に無理を強いる結果を招きます。また、カカトで立っているので、からだはバランスをとるためにいろいろ不自然な状態になります。

カカト重心の人2

 下半身の方から見ていきますと、後に倒れないようにするために腰や下腹部を前に出すようになります(=腹が出る)。そしてその反動として背中を反らせますので腰部や背中の下部にハリや緊張を感じるようになります(=反り腰、慢性的腰痛)。そして肩甲骨が後に位置するようになりますので首や頭が前に出て猫背になってしまいます。(上述の通り)

 足底では、カカトで立っていることは不安定ですから、自然と足の指(足趾)を曲げて足趾に力を入れて、足趾で踏ん張ってからだを支えるようになります。それは足底の筋肉に緊張状態をもたらしますので、カカトだけでなく足底も硬くなってしまいます。また足趾の筋肉はふくらはぎにつながっていますので、ふくらはぎも硬く太くなり血流も悪くなります。この状態は、足の冷えやむくみの原因の一つであると考えられます。

 足趾が曲がる=足趾に力を入れて立ったり歩いたり、あるいは座ったりする状態は、腰痛の原因になります。O脚、外反母趾、内反小趾等々下半身の問題の原因になるだけでなく、顔や首から力が抜けない、呼吸が悪いなどの問題にも絡んできますので、カカト重心は是非改善していただきたいと思います。

カカト重心と、硬いカカト、曲がった足趾との関係性
 「扁平足はからだが疲れやすい」というようなこと聞いたことがある人も多いと思います。足底には縦と横にアーチがあって、立ったり歩いたりする時にクッションのように働いてくれます。この仕組みによって地面からの衝撃は和らぎ、私たちの重み(体重)は分散されるので足をはじめからだの骨格が護られるようになっています。扁平足の人はこのアーチの働きが乏しくなってしまうので、足腰に掛かる負担が増えてしまい、“疲れやすい”、”故障しやすい”となってしまいます。
 ところが、この原理は重心の位置が良いところにある人に通じる理屈だと言えます。カカトに重心のある人の場合、足底のアーチがちゃんとしていたとしてもクッションの役割があまり果たせなくなってしまいます。

足に掛かる重心と足底_1

 重心が良い位置(私は足首の前側、足の甲の出発点くらいだと思っています)にある人の場合、体重の重みによって縦アーチが沈みますが、それによって重みは爪先側とカカト側に分散されます。足底の筋肉は伸ばされ、合わせて足趾も伸びます。重みが掛かることによって足が平たく引き伸ばされるようになります。

足に掛かる重心と足底_2


 一方、カカトに重心がある人の場合、立った時に爪先側が少し浮いたような状態になります。この状態は不安定ですので、自ずとからだは足趾を曲げて立位の安定を保つようになります。誰かに前方から押されて後に倒れそうにバランスを失った時、私たちは足趾をギュッと曲げて倒れないように頑張りますが、これと同じようなことがカカト重心の人には起こっていると考えていただければ解りやすいかもしれません。足趾を曲げることは足底の筋肉を収縮させることと同じですので、足底は硬くこわばった状態になります。また、重心も足底の力もカカトに集まりますので、カカトはとても硬くなってしまいます。

 カカトが硬くなるとどうなるのか? という疑問に全部答えられるわけではありませんが、幾つかの不都合については確認しています。
 カカトの内側にはふくらはぎの深部にある後脛骨筋と長趾屈筋の腱が通っています。また足底の母趾外転筋の出発点でもあります。これらの筋肉は太股の内転筋(長内転筋)と連動関係にありますので、カカト重心の人は太股の内側がコチコチに硬くなるのと同時に骨盤が後に傾きます。腹部では内腹斜筋もこわばってしまいますので、お腹の伸びやかさが失われたり、時には便秘になったりするかもしれません。
 また、カカトの外側には股関節の外側に位置する筋肉(中殿筋、小殿筋、大腿筋膜張筋)と関係の深い部分がありますので、股関節で太股の骨が出っ張ったような体型になったり、股の間が広くなってしまったりすることが考えられます。骨盤から下肢が少しはみ出たような状態です。さらに小殿筋は肩の棘上筋と連動しますので、肩関節の動きが鈍く感じたり、脇が常に開いているような体型になったり、肩に何かをしょい続けているように感じたりするかもしれません。
 その他には、舌が硬くなっていて喋りづらさを感じたり、飲み込み(嚥下動作)が悪く感じたりしているかもしれません。

カカト重心を改善するために
 私が知っていることだけで申し上げれば、カカト重心を改善するための考え方は二つあります。(この先、もっと増えるかもしれませんが)
 一つ目の考え方は、“推進力のあるからだ”にすることです。カカト重心の人は後から何かの力に引かれているとか、向かい風の中に立ち続けているような状態ですから、前に進む力=推進力の乏しい状態です。骨盤は後傾し、お尻も垂れ気味になっています。この状態を克服して推進力のあるからだ、つまり歩いていても「自然に、前に前に脚が進んでいく」状態にするためには仙骨を前傾させて骨盤の後傾を改善することが必要です。
 仙骨の状態を整えることについてはだいぶ前に取り上げましたが、骨盤底の柔軟性やヒラメ筋、半膜様筋というハムストリングを整えることが必要になります。
 二つ目の考え方は、鎖骨を前に出すことです。鎖骨と肩甲骨は腕を動かす土台として一対になっていますが、合わせて上肢帯と呼ばれています。
 鎖骨を前に出すことは肩甲骨を前に出すという意味でもありますが、カカト重心の人のほとんどは肩甲骨あるいは鎖骨が本来の位置よりも後方にある状態ですので、これを改善する必要があります。

鎖骨を出すとかかと重心が改善_1
鎖骨を出すとかかと重心が改善_2

 パソコン作業が増えた今日、肩甲骨が外側に拡がり、肩が巻くように前に出て鎖骨が喉の下の方に埋もれてしまったような状態の人が増えています。猫背とも言えますし、胸が狭く閉じ込められたような状態であるとも言えます。このような状態はカカト重心になりやすい状態ですので、胸を開き(前鋸筋や大胸筋や小胸筋のこわばりを解消し)埋もれた鎖骨を表に出し、肩甲骨の位置を本来の状態に戻すことがカカト重心を改善するためには必要になります。

 普通は以上のように、仙骨のあり方を整え、鎖骨と肩甲骨の位置と状態を整えることで、多くのカカト重心を改善することは可能です。その他に、腰椎の在り方がおかしかったり、膝や足に故障を抱えていることによってカカト重心になっている場合などもありますが、基本としては仙骨と鎖骨・肩甲骨であると今の私は考えています。

 カカト重心にならないように意識的に体重を前に掛けて対応するという方法を思いつかれる方もいると思いますが、その状態はからだの何処かに力を入れて操作しているわけですから不自然な状態です。カカトの高い靴などを履いてもカカト重心を解消することができますが、それはそれで足の何処かに力が入ってしまいますのでやはり不自然な状態です。そうではなく、自然に立った時にカカト重心が克服されている状態になっていることが本道であり、大切です。
 以前に申し上げましたが、私たちが動作を行うということは“重心を移動させる”ことに他なりません。この重心移動がスムーズで上手な人が運動神経が良い人、バランス感覚の良い人であると言ってもよいと思います。
 そのためには、重心のホームポジションがカカトや爪先にあるのではなく、良い場所にくるようにからだを整えていただきたいと思います。ヨガやピラティスやいろんな健康運動によって、しなやかで健康的なからだを作り上げていくことは大切なことだと思いますが、その効率を高めるためにも重心の在り方を気に掛けていただきたいと思います。

 時々、小学生や中学性や高校生など若い人たちが来店されますが、椅子に座った状態でも、足底を床に着けるのではなく足趾を丸めている人たちをけっこう見かけます。これは単に“姿勢が悪い”とか”仕草がおかしい”という言葉で済ませてはいけないことだと思います。その状態が彼女や彼らにとっては自然であり、足裏を地面に着ける状態は不自然なわけですから、“貧乏揺すり”などと同じように、からだの何処かに狂いが生じているのだと考えられます。若い時分からそうであれば、将来的に不具合が表面化する可能性はとても高いと思います。
 ですから、若い人たちをもった親御さんは、“それくらいのことで‥‥”と見逃さないでいただきたいですし、スマホで酷使している親指などは原因になっているかもしれません。鎖骨を前に出す一つの方法は母指先を伸ばすことです。スマホ操作で酷使している指の第一関節はかなりこわばっています。それを伸ばすのはとても痛みを感じますが、それによってカカト重心が改善し、足趾が伸びて足裏で地面を捉えることが自然な状態になる可能性は高いと思います。

 先日、幼稚園児の男の子がお母さんに連れられてやって来ました。舌が引っ込んでしまって動きが悪く、言葉がしっかり喋れないという症状です。からだを見ますと、舌が硬くなって大きく出すことができない他、噛みしめがあり、腹筋が硬く、太股やふくらはぎが幼い子供さんとは思えないほど硬くなっていました。そして足底(足裏)もガチガチでした。
 「これは足裏の硬さが原因である可能性が高い」とすぐに思いました。足裏の硬さが太股の硬さにつながり、腹筋をこわばらせて舌の動きを制限していました。喉も下に引っ張られていたので、それに対抗するようにそしゃく筋が収縮して噛みしめ状態をつくっていると思いました。ですから対策は硬くなった足底やかかとを揉みほぐすことです。まだまだ小さなお子さんですから、揉みほぐしの痛みが強くなると嫌がると思いましたので、なるべく優しく、痛みを感じないようにと気を使いながらゆっくりほぐしていきました。ところが筋肉というのは、本当に硬いうちは感覚が鈍くなっているので痛みを感じないのですが、少し弛んできますと敏感になって痛みを感じやすくなってしまいます。一度痛い思いをしますと、もう触らせてくれません。お母さんが側でなだめても、バタバタ足やからだを動かして施術をさせてくれません。「どうすればいいか? ‥‥」とちょっと私も悩みましたが、ふとバランスクッションを使ってみようと思い浮かびました。「これを利用すれば上手くいくかも‥‥」、バランスクッションの上で足踏みをしてもらうことにしました。

バランスクッション 体幹クッション

 バランスクッションには中途半端な状態で空気が入っていて、踏むとグニョっと凹んで“不安定な足場”状態をつくってくれます。その上に立ってもらい、とりあえず「10回足踏みしてみて」とやってもらいますと、それまで口から出すことのできなかった舌を「べー」っと出すことができるようになりました。「今度は20回足踏みしてみて」とやってもらい、舌を出してもらうと、「こんなに出るの、これまで見たことない」とお母さんが感動するほど舌が出るようになりました。
 ふくらはぎも太股も柔らかくなり、お腹も弛んで噛みしめも軽減しました。「小さい子は、単純明快でいいなぁ!」と私は心の中で思いました。硬い足底を揉みほぐす手間が、バランスクッションに乗り20~30回足踏みしてもらうだけで省けてしまうのはきっと多くの人にとって朗報だと思います。
 「アマゾンで、1300円くらいで売ってますから」とお母さんに情報を提供し、「毎日、足踏みしてもらえば自然と良くなっていきますよ」と申し上げました。

 さて、硬くなった足底や足首に対してバランスクッションが効果的な理由について少し説明させていただきます。バランスクッションの表面にはイボイボの突起がついていますので、そこに座れば殿部を、立てば足底を突起で刺激するということもありますが、“平ではない”ことの方が大事ではないかと思います。そしてパンパンではなく、中途半端に空気を入れることによって乗った時に不安定な状態になります。不安定なところに座って動けば体幹の強化に繋がりますし、立てば足や足首の柔軟性を養うことができます。日常生活では“不安定なところ”に立ったり座ったりすることはほとんどありませんから、筋肉の使い方が一定してしまうため柔軟性を失うことにつながります。ところが不安定な場所でからだの平衡を維持するためには、筋肉同士が互いに連携して微妙に調整し合ってバランスを保つ必要があります。それが筋肉の柔軟性に寄与し、硬直を解除することにつながるのではないかと思います。たった20~30回足踏みしてもらうだけで筋肉の硬直は解除されるという現実は、からだの神秘を垣間見た思いです。

足趾(足指)の曲がった人、足底と踵の硬い人は改善の必要性あり
 いろいろな人たちを施術しながら、「どうしてこんなに足裏やかかとが硬いのだろう?」と思うことがしばしばあります。経験的に足趾が曲がった人、足底やかかとの硬い人は、血行不良、むくみ、腰痛、膝の歪みなどを伴い、からだ全体が不調傾向にあると考えています。
 若い中学生や高校生でも足趾を曲げていないと座った姿勢が保てなかったり、真すっぐ立っていられなかったりする人たちをしばしば見かけます。足に力を入れておかないとからだを保つことができないわけですが、首肩や顔に力が入ってしまうのと同様に現代人に多い傾向かもしれません。
 からだの中心は腰部(腹部)と骨盤部ですから、その辺りを中心に使って立ったり、座ったり、歩いたりしていれば自然と顔・首肩や足底・足趾からは力が抜けて行くのが私たちのからだの仕組みです。ですから、足趾や足底で頑張らざるを得なくなっている人は“からだの使い方に誤りがある”ということになります。あるいは、私たちの生活している環境が影響して足趾が曲がりや足底が硬くなってしまう人が多くなってしまったのかもしれません。
 先ほどのバランスクッションの例を参考に、環境的要因によって私たちの足底が硬くなってしまう理由について考えてみましょう。

砂利道、あぜ道、凸凹道を利用しよう
 二月ほど前、山登りは脳を活性化するのに有効である、というテレビ番組がありました。木の根っこが露出している細い山道はとても凸凹しているわけですが、そこを歩くことによって足裏は普段とは違う刺激をたくさん受けますし、凸凹道でも転ばないように脳が一生懸命働いてバランスを維持しますが、そういうことが脳の活性化につながり認知症防止の効果が期待できるという話でした。
 ところで、私たちの多くが日常浸っている生活環境は凸凹道とはほとんど無縁です。歩く道路や床はほとんど平に近い状態で、しかもコンクリートやアスファルトなど硬い場所です。山道を歩くためにはつまずいたり転んだりしないように気を使って繊細に歩かなければなりませんが、道路を歩く時にはそのように気を使うこともなく、半自動モードで、悪く言えば無造作に歩いても大丈夫です。無造作の歩き方、硬い地面、これらの要因が硬い足底や足首に繋がるのではないかと私は考えています。

 ある人の例で説明します。その人は腰が非常に弱く、それを改善するために通ってこられていますが、歩くと足首の外くるぶし辺りが痛くなってしまうとしばしば訴えます。痛みの直接的な原因はくるぶし(外果)がずれて下がっていることです。歩行時、下がったくるぶしが邪魔して足首の運動が上手くできなくなってしまうので変な歩き方になってしまいます。そしてくるぶしが下がってしまう理由は、歩くときに足趾や足底にたくさん力を入れてしまうためにふくらはぎに繋がっている足の筋肉が収縮して外果(=腓骨)を引き下げてしまうからです。足や足趾の力を抜いて歩いて欲しいといつも助言するのですが、腰に力がないと思い込んでいるために“足で踏ん張る”という深層心理が働いてしまうようです。「転ばないように足で踏ん張る」「ギックリ腰にならないように、なるべく腰に負担をかけないように足で頑張る」こういう思いは「逆効果ですよ」といつも申し上げるのですが、心の中に深く染み付いているギックリ腰に対する恐怖心はなかなか克服できないようです。
 この人の歩き方は前足を着地するときに足趾を曲げる、つまり足を着くときに「グー」をつくる歩き方です。以前は常に「グー」でしたが、少し進歩して足を前に出すときは足趾を伸ばして「パー」になるようになったのですが、着地の瞬間に「パー」から「グー」に足底を収縮してしまうので、結果的に歩き方は根本的な面で改善していないことになります。
 音で表現すると「パタッ パタッ パタッ」という歩き方ですが、歩き方の理屈を何度説明しても結局は改善されないので「それでは、少し上を向いて地面を見ないようにして歩いてみてください」と言いました。するとそれだけで歩き方が良くなりました。目で見て、地面が平であることが認識されると足裏のセンサー機能は使われなくなるようで“無造作な歩き方”になってしまいますが、視覚的に地面の状態を把握することができなくなりますと、足裏のセンサー機能が前面にでてくるようで、途端に歩き方が繊細になります。地面に何があるか足裏で慎重に探りながら歩くので、足を静かに下ろすようになります。決して「パタッ パタッ パタッ」と歩くようにはなりません。すると重心が軸脚に残っている時間が長くなりますので、軸脚で地面を蹴ることができるようになります。軸脚の膝裏が伸び、母趾が一番最後まで残りながらからだを前に押し出すようになります。
 次にこの人を砂利が敷き詰められている広めの駐車場に連れて行き、砂利の上を歩いてもらいました。すると、やはり足裏をセンサーとして機能させるためか、前足を繊細に着地させながら歩きました。この時には普通に目で地面を確認しながら歩いてもらいましたが、視覚で確認しながらも足裏をセンサーとして機能させていたということです。そして面白いことに、砂利の駐車場を歩いてもらいながら、そのままアスファルトの道路も歩いてもらったのですが、道路に出ますとすぐに「パタッ パタッ パタッ」という悪い歩き方に戻ってしまいました。何度か同じことを繰り返しながら、「どうして歩き方が変化するのか? 心理的なことなのか、それとも別の理由なのか」を本人に考えていただいたのですが、結局答えはわからないということでした。
 しかし私は希望を得た気持ちになりました。これまで多くの人に歩き方について説明してきましたが、良い歩き方を身につける人はそれほど多くありませんでした。「どう説明すれば、もっと理解しやすく、体得しやすくなるのだろうか?」とずっと思ってきました。それが砂利道や凸凹道を歩いてもらうことで「良い歩き方がどういうものなのか」を体験していただくことができ、“感じ”をつかんでもらうことができるのであれば、停滞を抜け出して先に進むことができるからです。

あぜ道

 私の住んでいるところは片田舎で、田んぼもたくさんあります。ですから砂利道もあれば、あぜ道もあります。柔らかく凸凹した場所はすぐ側にあります。真冬の朝はとても寒いですが清々しく気持ちが良いです。通勤には少し遠回りになりますが、毎朝、昇る太陽を見ながら、あぜ道と砂利道を歩いて店舗に通っています。あぜ道の凸凹を歩きますと足首はフニャフニャしながらもからだはバランスを保ちます。「これは足首の柔軟性には最適だ」と思います。あぜ道の先には砂利道がありますが、砂利以外にも大きめの石がそこらじゅうに埋まっていますので、足裏はいろんな刺激を受けます。「これは足裏のマッサージ効果も期待できるので足の感覚が敏感になる」と思います。

 私たちは足場が悪いところでは自然とバランス機能を発揮します。からだがバランス機能を発揮するということは、たくさんの筋肉が柔軟に協調し合って全身の平衡を維持するということです。つまり足場が悪く不安定なところに立つと、たくさんの筋肉が自ずと動き出す=収縮と伸張を繰り返すということですから、流れに任せておけば固まることはあり得ないわけです。しかし、足場の不安定さに対抗しようとして足首などを硬くしてしまうと、足底も足趾も緊張して硬くなりますので逆効果になってしまいます。これは気をつけなければいけない注意点です。

 今は生活道路のどこもが舗装されていますので、足場の悪い場所を歩く機会はなかなか得られません。硬い道路や床の上を歩くので足底は硬くなりますし、無造作に歩いても転ぶことがないので、足の筋肉は柔軟性や協調性が乏しくなり足裏の感覚も鈍るだと思います。そうであれば、4歳・5歳といった小さな子供さんでも足が硬くなってからだが硬くなってしまうのは仕方のないことかもしれません。赤ちゃんのからだは何処を触ってもプニャプニャ柔らかいのが特徴ですが、わずか数年で筋肉が硬くなってしまうのは残念な気がします。

足趾が曲がっている人は足底の硬い人
 足底側の筋肉は屈筋で足趾を曲げる働きをしますが、これらの筋肉がこわばっているために足趾が曲がっている人がたくさんいます。母趾も含めて全部の足趾が曲がっている人、母趾は伸びているがそれ以外の4趾が曲がっている人、外反母趾や内反小趾で母趾と小趾が捻れながら曲がっている人、このような人たちの足底は常に硬い状態であると考えていただければと思います。足底の柔らかい人の足趾は力が抜けてスーッと伸びています。

下腿深部の屈筋

 足趾につながっている筋肉には短い筋肉と長い筋肉があります。短い筋肉はかかとの骨を出発点として足趾の真ん中くらいに付着しています(短趾屈筋、短母指屈筋、小趾屈筋)。長い筋肉はふくらはぎの深い部分(脛骨と腓骨)から出発して足趾の先端に付着しています(長趾屈筋、長母趾屈筋)。
 足趾が曲がっている人は、立っている時に足趾に力を入れて頑張っている人と言えます。あるいは座っている時も足趾に力を入れている可能性があります。
 足趾を曲げた状態を保つことはそれだけで疲れるわけですが、どうしてこういう人たちはリラックスした状態でも足趾を収縮させてしまうのだろう? と考えた時に、三つぐらいの原因が思いつきます。
 一つはヒールの高い靴を履いていることで、重心が前掛かりになるのをこらえるために足趾に力を入れていることです。爪先が詰まってしまうので、外反母趾や内反小趾になる可能性も考えられます。

足趾が曲がり外反母趾・内反小趾

 二つ目はゴム長靴のように足先に空間が広く空いている重たい靴を履いている場合です。安全靴などもこれに含まれると思いますが、足趾を曲げた状態で操作しないと靴が思うように動かないので、足趾を曲げて歩く癖がついています。
 三つ目はかかと重心の場合です。立った時、かかとに体重が乗ってしまう人は足先が浮き気味なります。それは不安定な状態なので、足趾を曲げて立位を安定させようとします。おそらくこのような状態の人が大変多いのだと思いますが、足裏全体で地面を捉えることができないので足趾に頼って立ったり歩いたりしてしまう人です。

 靴の問題は何か対策を講じなければならないかもしれません。高いヒールやサイズの合わない靴などを履いても全然大丈夫な人もいるでしょうしから、一概に靴だけの問題ではないと思いますが、対策によって足趾が伸びていくならそれは良い方法だと思います。
 かかと重心の人はいろいろと問題を生む可能性があります。足趾が曲がること以外にかかとが硬くなってしまうのですが、このこともからだの負担につながります。
 からだの不調を訴える人に共通している下半身の兆候として、内転筋がこわばっている、ふくらはぎが張ってむくみがある、足首周辺が太く硬い、膝関節が少し歪んでいることなどがあります。どれも血行不良につながる兆候ですが、かかとと足底の硬さはこれらの原因になります。
 かかとの内側や外側を揉み始めますと、最初は気持ちよ良さを感じるかもしれません。ところが表層がほぐれていきますと次第に痛みを感じるようになり、そのうち深い部分に手が届くようになりますと「ものすごく痛い」となります。深いところにとても硬い部分ができていて、それが内転筋の硬さにつながっていたり、ふくらはぎ外側のハリの原因になっていたりします。また、かかと後側はアキレス腱の付着部ですが、そこの硬さが膝関節の歪みの原因の一つになっています。
 誰もが足趾や足底やかかとがこれほどまでに硬くなっているとは思っていませんので施術を経験しますとビックリしますが、こういう部分がからだの不調の根本的な原因になっていることはよくあることです。

正しく使えば筋肉はすぐに柔らかくなる
 硬くなった足底、足趾、かかとの筋膜や筋肉を揉みほぐしても、使い方が悪ければ一日も経たないうちにまた元の状態に戻ってしまう可能性があります。反対に、筋肉や筋膜が硬い状態であったとしても、良い使い方をすればすぐに柔軟性が甦る可能性もあります。
 歩くとくるぶしが痛くなると訴える人に、施術を一切することなく、先に紹介したバランスクッションに乗っていただき足踏みをしてもらったり、立位のまま足首を回すような運動をしてもらったことがあります。すると足首の動きが軽快になるとともに、5本の足趾全部と足底全体で地面(床)を捉えて立つ感覚が実感でき、歩いても痛みを感じなくなりました。バランスクッションの突起による刺激や足首をグニャグニャ動かした効用で足底や足首周りの筋肉・筋膜がほぐれ、くるぶしの位置が正しいところに戻ったからです。

 足に限らずからだの各部分は、間違った使い方をするとすぐに筋肉群のバランスが崩れ、骨格を歪めたり痛みを発したりするようになります。反対に、痛みを伴う状態であったとしても、からだの使い方が適正になれば歪みや痛みは瞬時に、あるいは徐々に消失していきます。使い方次第で良くも悪くもなるのです。
 ただ、筋肉には形状記憶的な能力があるようで、何十年も使い続けて出来上がった状態はそう容易く変化させることはできません。癖が染み付いているようなものです。今日、あぜ道を歩いたり、バランスクッションを使って痛みの出ない状態になったとしても、明日の朝歩くとまた痛みが出てしまうかもしれません。しかし明日もあぜ道を歩き足首を柔らかく使いますと再び痛みは消える状態になります。その繰り返しを何日か、あるいは何十日かしていますと筋肉の形状記憶が変化し、新しい足の使い方も十分に自分のものになり、完全に痛みから解放されるようになると思います。

正しく使えるように整えるのが私の仕事
 肩こり、首の痛み、腰痛、膝痛、頭痛、五十肩‥‥、こういったからだの痛みや不具合を調整するのが私の仕事ですし、皆さんが私に期待されるのもそういったことが主です。ところが私は施術をしながら「この人はどういったからだの使い方をしているのだろう? そしてそれは何故なんだろう?」と考えています。施術によって症状が軽減したり改善したりした後、皆さんから聞かれることは「何が原因で、自分はこうなったのか?」という類の質問と、「どういうことに気をつければ、症状が再発しないのか?」という質問です。
 「普段の姿勢が悪くて猫背になっているから首が前に出てしまい、首の後側に負担が掛かり首から肩にかけて凝りが強くなってしまう」「ですから、背筋を伸ばして顎を引くように心掛けてください。」といった説明でも納得してくれるかもしれませんが、「どうして猫背になってしまうのか?」とった根本的な原因に踏み込んで応えたいと思っています。「猫背になったしまうのは、骨盤(仙骨)が寝ている(後傾)ことが原因ですが、その理由は座っている時に骨盤の力ではなく内股に力をいれて頑張っているからです。内股の筋肉がこわばると骨盤が後に傾くようになってしまうので、毎日のケアとしては内股の筋肉をストレッチしてください。」「すると仙骨が立って坐骨で座ることができるようになるので猫背は自ずと改善されていきます。」
 この状況は座り続けて事務仕事をしている人にたくさん見られますが、足や足先が床についてしまうと内股に力が入ってしまうのです。足先が床に届かないような高い椅子、あるいは机やテーブルに座ると骨盤に頼るしかなくなりますので、それだけで仙骨が立ち猫背は改善します。
 それでは「足が床に着くとどうして内股に力が入ってしまうのか?」という問題が残りますが、それを改善するのが私の仕事の本質になろうかと思います。過去のケガが原因なのか、足や手の使い方の癖に問題があるのか、目の使い方に問題があるのか‥‥人それぞれだと思いますが、そこを指摘したり改善したりすることで、からだの使い方がそれまでとは変わるようになれば、もう同じ症状で悩むこともなくなるのではないかと思うのです。
 “症状が消えればそれでOK”という考えの人がほとんどですが、その先ももう少しお付き合いいただければ、もっと快適な日々を送っていただけるのに、と思ったりします。

 今年は9月に入ってから立て続けに台風がやってきて、天候がとても不安定です。台風が発生すると具合が悪くなる人、低気圧が通過する頃体調が悪くなる人、そんな人はたくさんいます。高齢者で膝や股関節など関節を病んでいる人にとってはとても辛い季節かもしれません。

変形性膝関節症01

 私の母は既に後期高齢者ですが、70歳になる手前の頃、リウマチを患い左側の膝関節が変形してしまいました。リウマチの方は投薬治療によって寛解したのですが、変形してしまった膝は元には戻りません。右脚の方は変形することもなく普通の状態ですので、写真(数年前)にありますように左右で脚の形が違っているため(左脚が短いので)歩き方が変わってしまいました。その影響で少しずつ左脚のO脚が悪化し、今では左脚を引きずるような歩き方になってしまいました。今は同居していますので毎朝出勤前にマッサージをしているのですが、この長引く悪天候はマッサージの効果も少なく、とても辛いようです。

O脚で膝の内側に痛みを感じたらしっかり対処してください
 私たち日本人にはO脚の人がたくさんいます。特に高齢の女性には大変多いです。それは、O脚は加齢とともに進行するという現実を現しているのだと思います。スタイルが悪くなるということだけであれば、私があえて問題視することでもないのですが、進行したO脚は変形性膝関節症になる危険性が高くなりますので、そうならないように対策をしっかりしてO脚を進行させないように、あるいはO脚自体を改善するようにしていただきたいと思います。

 O脚は脚の外側面に力がかかりますので、ふくらはぎ(下腿)は膝関節で外側にずれるようになります。そのような状態が長年続きますとやがて膝関節の内側半月板(クッション)が損傷して大腿骨とスネ(脛骨)が直に接触するようになったりして炎症が生じます。ここまで状態が悪化しますと変形性膝関節症と診断されますが、こうなってしまいますと改善はなかなか難しくなります。 膝が変形する前の段階でも膝の内側に痛みを感じることはよくあります。一番多いのは膝関節が一時的に、あるいは慢性的に歪んでいるため、膝内側の筋肉が緊張状態になってしまい、曲げたり動かしたりすると痛みを感じるケースです。O脚ではない人でも、手や足を酷使した後で膝が痛むことはしばしば見受けられます。(この仕組みについては過去のブログやホームページを参照してください。)ほとんどの場合、一時的なものですので手足の疲労やコリが回復すれば膝は元の状態に戻ります。
 他方、O脚の人は常に脚の外側に力が掛かっており脛骨が外側に歪んでいますので、膝内側の筋肉は引っ張られていて緊張状態にあります。また筋肉だけでなく、膝関節を包んで中に関節の動きを円滑にするための潤滑液を含んいる“関節包”にも偏った力が掛かったり、圧迫が加わったりしてしまいますので炎症が起こりやすくなっています。ですから少し長く歩いたり、重たい物を持ったり、正座をしたりしますと膝の内側に痛みを感じたり水が溜まったりしてしまうという状況になります。状態が悪くなりますと膝を曲げることが辛くなったり、椅子に座っているだけでもジンジンしたり、何もしていなくても苦痛を感じるようになってしまうこともあります。このような状態でも湿布を貼ったり、温めたり、痛み止めの薬を飲んだりしますと苦痛は軽減します。ですからそのようにして対処している人が多いのですが、この段階は要注意です。この段階ではヒアルロン酸の注射は効果があると思います。痛みも和らぎ、関節包の状態も良くなりますので関節の動きもスムーズになります。しかし、膝内側の筋肉が緊張状態であることには変わりがありません。「良くなったはずなのに‥‥。また痛くなってしまった。」となってしまうことでしょう。

変形性膝関節症(半月板損傷)

 半月板や軟骨の損傷が進んでいない状態であれば、それがひどい膝関節痛や不具合だったとしても回復の可能性は十分にあります。膝関節を取り巻く筋肉のバランス状態を改善することで膝は良好な状態に戻ることができます。しかし、進行したO脚状態では筋肉バランスを整えることは難しくなりますので、少しずつでもO脚を改善することに取り組んでいただきたいと思います。
 若くて筋肉に力があるうちは膝内側が緊張状態であっても筋肉は耐えることができます。半月板が減ってしまうこともないかもしれませんので膝は変形しないでいられます。ところが加齢とともに筋肉や組織の力が衰えますと筋肉は緊張状態に耐えきれなくなり、少しずつゆるみ始めて膝関節の歪みが進行していきます。O脚状態で膝の歪みが進行しますと、内側の半月板はダメージを受け機能が低下してしまいます。すると大腿骨と脛骨の軟骨部分が接触するようになったりして膝にいろいろな問題が生じるようになります。
 ここまで状態が進行してしまいますと、“膝が良好な状態”に戻すことは難しくなります。正座ができない、早歩きができない、湿布や貼り薬が手放せない、しばしば整形外科のリハビリ器具を利用したくなる、などの状況になりますが、生涯膝の不具合と付き合って行かなければならない可能性がたかくなります。

 ですから、ご自分やご家族の誰かがO脚で、膝の内側に痛みを感じるようであれば、早い段階で適切に対処することを是非実行してください。その症状が一月も続くようであれば、関節を整えることを考えてください。
 現代医学の領域では、ヒアルロン酸によって関節の動きがスムーズになること、痛み止めの注射や薬で炎症が治まり痛みを感じなくなること、関節の変形が酷くて機能を果たすことができなければ人工関節に取り替えること、もしかしたらそういうことを“適切な対処法”と考えているのかもしれませんが、それでは医学が進歩しているとは私には思えません。
 O脚の人は“将来の変形性膝関節症の予備軍”みたいなものですから、如何にO脚を改善するか、あるいは如何にO脚を悪化させないようにするか、そういったことに取り組むのが、本当の意味での進歩ではないかと思うのですが‥‥。

O脚の改善は股関節から
 スタイル重視を掲げている“O脚矯正”では両膝の間が狭くなり脚がなるようにすることを主体に矯正を行っているのかもしれません。それは“形”に重点を置いたやり方です。しかしそれでは今回の、将来変形性膝関節症にならないためにO脚を改善するという目的を叶えることにはつながらないかもしれません。

O脚と下肢の筋肉・骨格02

 私たちの標準的な骨骼では、大腿骨は骨盤の外側から膝に向かって内に入るように降りています。そして膝から足にかけての脛骨はほぼ垂直に降りています。骨格の在り方は力の方向性を示しますので、下肢は“骨盤から膝にかけて力が内側に集まっている状態が正しい”ということになります。つまり立った時、膝のやや内側に力が集中している感じが得られる状態が良い、ということです。立った時、膝の外側に力が逃げてしまったり、どこに力が集まっているのかハッキリしないのであれば、それは改善する必要があるということです。

 O脚を改善するための第一段階は、力が膝の内側に集まるようにすることだと私は考えています。そしてそのためには、股関節では大腿骨を外側に開く働きをする筋肉を整えなければなりません。その要は小殿筋です。
 更に、股関節で大腿骨を外側に回旋させる働きをする筋肉を整える必要があります。その要は短内転筋です。
 その他に筋膜の影響があります。そしてその影響力はかなり強いです。大腿部の筋膜が少し内側に捻れる感じで膝に向かっているのが良いのですが、触診に馴れていない人にとって筋膜の流れを感じることは難しいかもしれません。仮に、筋膜が理想とは反対に外側に流れているような状態では、力はその方向に向かってしまいますので、膝の内側に力が集まる状態にはなりません。そして膝蓋骨(膝のお皿)は筋膜の影響を受けますので、他者に比べて膝蓋骨が外側に位置しているように感じるかもしれません。それは筋膜が外側に捻れていることを現しています。
 尚、立った時に足が「ハの字型」になっているO脚や内股の人は膝蓋骨が内側に入り筋膜も内側に捻れている状態になっていますが、それが良いわけではありません。股関節で脚が内側に捻れているということですから、膝裏が外側を向いてしまうので反張膝になってしまいO脚を助長してしまいます。

 O脚の場合、膝関節で脛骨が外側にズレているわけですが、そのことばかりに注目して膝関節ばかり整えたとしても、股関節から膝関節にかけての力の掛かり方が改善されなければ、膝関節の矯正は極めて一時的なものになってしまいます。5分も歩けば元の状態に戻ってしまうかもしれません。
 ですから先ず第一に整えるべきところは股関節での大腿骨の角度であり、大腿部の筋膜の流れだと私は考えています。その上で、膝関節における大腿骨と脛骨の関係、足関節(足首)などを修正するのが順番になります。

 たとえ脚の形がすぐに真っ直ぐにならなかったとしても、立ったり、歩いたりするときの重心が太股と膝のやや内側に集まるような状態になっていれば、自ずと足の母趾側に力が入るようになります。このような状態でからだを使い続けていれば次第に骨格も筋肉のバランスもそのように変わっていきます。それまで負担の掛かっていた内側半月板も次第に偏った圧力から解放されるようになりますので、変形性膝関節症になる可能性は遠のいていきます。

O脚と骨密度
 高齢者、とくに女性の高齢者にとって骨密度は気になるところです。骨折しやすい状態かどうかは骨密度だけの問題ではないかもしれませんが、一つの目安として骨密度を気に掛けていることは良い方法かもしれません。
 また、私の母を例に出しますが、リウマチを患って少し経った頃骨密度を測定したことがあります。普通の状態である右脚の骨密度は年齢より若い値でした。一方、O脚である左脚は骨密度が芳しくなく投薬によって対処しなければならないレベルでした。
 これを一般の人はどう考えるのでしょうか? 骨密度が悪く、つまり骨が弱いのでO脚になってしまったと考えるのでしょうか?
 専門用語は忘れましたが、骨は重力の掛かり具合によって成長したり退化したりする傾向があります。重力のない宇宙では、じっとしていると筋肉だけでなく骨も細ってしまいますので、宇宙飛行士達は宇宙船の中でたくさんトレーニングをしています。それは骨や筋肉に重力をかけているということに他なりません。
 そう考えますと、普通の状態である母の右脚の骨にはしっかりと重力が掛かっていますが、O脚の左脚には重力があまり掛かっていないということになります。O脚が進行して左脚を引きずりながら歩いている現在であれば、「左脚をかばうために右脚ばかりに力をいれている」ということで骨密度の左右差の原因をイメージしやすいと思います。しかし、測定した頃は左脚で地面をしっかり踏めていた頃ですから、左右で大きな差があることは想像しにくいことでした。

変形性膝関節症01

 ここでもう一度母の写真を見ていただきたいのですが、O脚である左脚は股関節から膝のやや外側に重力が掛かっていて、膝から下は力の方向がすっかり外側に向かっています。この状態を見方を変えて観察しますと「右脚はからだの重み(重力)をしっかりと大腿骨と脛骨で受け止めているが、左脚は力が外側に流れて逃げてしまっている」となります。つまり骨に対する荷重が左側は弱くなっていますので骨が退化してしまう、となります。
 O脚(X脚も同様)の人は膝関節に対する負担が増えるので痛みや炎症を起こすのですが、骨そのものに対する負担は減るので骨密度が悪化するという結果になります。

 ホルモンの関係とも言われていますが、体質的に女性は骨密度が悪化しやすいと言います。高齢になって外出の機会、歩く距離も減りますと骨が弱くなってしまうのは仕方がないことではありますが、そこに膝関節の不具合、O脚が加わりますと尚さら骨の弱体化が加速します。ですから道理だけで考えますと、加齢に従いO脚は改善するようにしなければならないということになります。
「スタイルのことを考えていた若い頃はO脚を気にしていたけど、もうそんな歳でもないし、今更O脚を直そうとも思わない」というのは心情的には理解できますが、からだの健康を考え「いつまでも自分の脚で歩き続けていたい」と思われるのであれば、O脚を改善することを考えていただきたいと思います。
 O脚を改善することは重心をからだの中央に持っていき、動作を無理なく効率的に行うことにもつながりますので、単に脚だけの問題ではないことをつけ加えます。

 小学生の頃からダンスが好きで、現在高校のクラブ活動でもダンスを一生懸命している女子高生が時々来店されます。症状は股関節痛です。はじめて来店されたのは高校入学して間もなくの頃でした。ダンスで股関節を大きく動かすと痛みを発するというものでしたが、その時にはすでにO脚の状態でした。何回かの施術で股関節痛は良くなりましたが、「このO脚を直さないと痛みは再発するよ」と話しました。その後1~2度来店されましたが、本人はO脚のことを気にしながらも痛みが取れれば練習できるので、そちらが優先です。ところが最近になって「歩いているだけでも股関節が痛くなって‥‥」と来店されたのですが、股関節の痛みもさることながらO脚の状態が悪化していました。来店当初の時にO脚を改善しておけばこのような状態にならなかったと思うのですが、本人は整体に通うことよりクラブ活動を優先させる方を選びました。
 
 高齢者で膝が悪くなっている人の多くはO脚です。膝が悪くなったからO脚になったのか、O脚の状態が悪化して膝が悪くなったのか、多くの場合、O脚が悪化して膝が悪くなったのだと私は思います。私の母はこれとは違って関節リウマチで膝関節が変形したことによって左側だけO脚になってしまいましたが、こうなってしまうと、いろいろ考えても改善はなかなか難しいところです。
 若い人たちにもO脚の人は多くいます。O脚はスタイルが悪くなるということだけでなく、将来膝関節を悪くしないためにも是非改善していただきたいと考えます。そしてO脚の矯正は、形を矯正することだけに眼を奪われるのではなく、からだの使い方が正しくなるようにするという視点も加えてやっていただきたいと思っています。「O脚矯正」を前面に出して集客をしている整体院などでは、形のことばかりを強調して強引(理屈に合わない)な施術を行っているようですが、それでは“使い方”が変わらないので、一度矯正されたと思っても間もなくO脚の状態に戻ってしまうと考えられます。将来の膝関節痛を予防するという意味ではほとんど役に立たないと思います。

 からだの動作を効率的に行うためには重心(力の加わる方向)の位置が何処にあるかということがとても大切です。いわゆる“運動神経の良い人”は重心移動がとても上手です。こういう人は激しい運動を行ってもからだを故障することは少ないです。ところが重心移動が下手な人はしばしば何処かを傷めます。掃除機をかけるだけもで腰痛になったりします。
 O脚やガニ股の人は重心が外側に向かってしまいます。立った時に足の小指側で立ってしまい、土踏まずのところは半分宙に浮いたような状態で、その分親指を曲げて踏ん張った感じで立ってしまいます。
 理想的な重心の人は、立った時に下半身の力が一度膝の内側に集まり、そこから真下に重心が向かいますので、足裏全体でしっかり地面をとらえることができ、足の半分より内側(母趾と2趾)で全体重を支える感覚になります。このような人は、あるいはこのような時はO脚とは無縁になります。
 ですから本当の意味でO脚を矯正するということは、形を整えることに加えて重心の位置が理想的な状態になるように調整することだと私は考えています。
 また、「もうO脚を気にする歳でもないし」と思っている方も、立った時の重心の位置が外側にあるようでは膝関節を悪くする可能性が高まりますので、重心の位置が正しくなり、からだの使い方が理想に近づけるようにするべきだと思います。長寿になった私たちは、70歳になったとしても20年近く生きる可能性があります。その20年間を膝関節痛や車椅子とは無縁の人生にしたいと思われるなら、是非取り組んでいただきたいと思います。

重心と筋肉の関係
 O脚になる原因として考えられることはいくつかありますが、今回はO脚やガニ股の状態を改善するための考え方について説明いたします。

O脚と下肢の筋肉・骨格02

 O脚ではない人の脚は外見上は真っ直ぐに近い状態に見えますが、大腿骨は股関節から膝に向かってかなり内側に入っていきます。太ももの筋肉は大腿骨にくっついていますから、単純に考えると筋肉も“内側に向かっているのが自然”となります。ですから立った時に下半身の重心が一度膝の内側に集まる感じがします。
O脚と下肢の筋肉・骨格01

 ところが太ももの外側の筋肉(小殿筋、外側広筋、大腿筋膜張筋~腸脛靱帯)がこわばり(張り)ますと筋肉のバランスが崩れ膝の外側上部に力が溜まるようになってしまいます。特に小殿筋のこわばりは股関節で大腿骨を外側に引き上げます(外転させる)ので、本来股関節から膝にかけて内側に向かっていた大腿骨の角度を広げ、大腿骨が垂直に近い状態になってしまいます(O脚の始まり)。すると太ももの内側の筋肉(内側広筋や内転筋群)もその状態を本来の状態に引き戻そうとこわばります。筋肉にはこわばると起始部(筋肉の始まりの部分)が硬く太くなり、停止部(膝関節付近)がゆるんで細くなるという性質がありますので、股関節の内側(恥骨結節付近)は硬くなり(強く指圧すると痛みを感じる)ますが、膝の内側付近はフニュフニュした感じで頼りなくなります。この現象によって重心(力の加わる方向)はすっかり太ももの外側に移ってしまいます。
 膝から下はこの影響を受け、重心はふくらはぎの外側を通って小趾側に来てしまいますので、ふくらはぎの筋肉も骨(脛骨)より外側がたくましくなり、膝下が外側に出たような脚の形になってしまいます。この状態が長く続きますと、やがて膝関節の内側半月板が損傷して、膝関節で大腿骨と脛骨の関係がおかしくなり変形性膝関節症になってしまいます。

太もも外側のこわばりを解消することから始めるべき
 以上説明しましたとおり、太もも外側の筋肉(小殿筋、外側広筋、大腿筋膜張筋~腸脛靱帯)のこわばりがO脚の出発点ですので、それを解消することから始めることが矯正の本来のあり方だと考えています。これを無視して形にばかりとらわれ、両膝を矯正具などを使って強制的に近づけようとしたり、強引なストレッチをして外側の筋肉を伸ばして膝が内に入るよう試みたり、特殊な靴を履いて強制的にO脚を改善しようとしても、それはその場限りの効果しか期待できないと思います。あるいは、強制的に何かをすることはからだの使い方に無理を強いることですので、からだの他の部分に異常が現れる可能性も考えられます。

中殿筋と小殿筋

 小殿筋は股関節外側の一番深くにある筋肉です。働きは股関節の内旋(内に捻る)と外転(大腿骨を外側に引き上げる)と歩行時の安定です。ですからO脚の人に多い、つま先が内側に向いた内股歩きはこわばりの原因になります。また小殿筋の外側には中殿筋がありますが、歩行の時片足立ちの状態を安定させるためにこれら二つの筋肉が働いています。中殿筋の働きが悪い人は小殿筋にかなりの負担がかかりますので、小殿筋がこわばってしまいます。そして皮肉なことに重心が小趾にある人は筋肉連動の関係で中殿筋の働きが悪くなります。ですから外側重心の人はお尻が垂れ(中殿筋のゆるみ)、小殿筋がこわばることで内股歩きになりやすくさらにO脚になりやすい状態である、となってしまいます。
 ですから実際の施術で小殿筋のこわばりを解消するためには、中殿筋、小趾を含めて小殿筋にこわばりをもたらすであろう要素を探し出しては改善しなければなりません。
 他の太もも外側の筋肉(大腿筋膜張筋~腸脛靱帯、外側広筋)は多くの場合、腕や手と関係します。前鋸筋についてはこのブログでも幾度か取り上げていますが、腕を前に出し続けたり(腕を伸ばした状態でパソコンを操作し続ける、スーパーの商品揃えやピッキング作業で腕を伸ばして物を動かすなど)するとこわばってしまう脇の下の筋肉です。前鋸筋と腸脛靱帯は関係しています。前鋸筋がこわばると大腿筋膜張筋~腸脛靱帯もこわばります。外側広筋は手の母指を曲げる筋肉(短母趾屈筋)と連動しますので、字を書くときの筆圧が高いとか、その他の手の使い癖などによってこわばってしまいます。
 椅子に座った時、食事の時、パソコンを操作している時、肘がほぼ垂直に降りて脇が閉まった状態でリラックスできるなら大丈夫ですが、脇を開けていないと落ち着かないようであれば、それはからだ外側の筋肉が全体的にこわばっていると考えられます。O脚でこのような状態の人は、まずこれらを改善することから始める必要があるかもしれません。

重心が内側に入るようにすることがO脚を改善するための決め手
 “からだの使い方によって骨格は変化する”、これは私たち整体師が心掛ける一番大切なことかもしれません。一般の人は「姿勢が悪いから○○になったのかな?」とよく仰いますが、確かに姿勢と骨格の状態は密接な関係にあります。横を向いた状態でないと眠りに入ることができない、証明写真などの撮影の時いつも顔の向きを直される、これらは姿勢が悪いことの例ですが、実際は骨格が歪み筋肉のバランスが悪いので“そうなっている方が自然に感じられリラックスできる状態”ということです。そしてそうなってしまったのはからだの使い方の偏りの蓄積ですから、改善しようと思うなら“使い方を変える”ことから始める必要があります。いつも右ばかりを見ている人は眼が右に偏りますので、からだはそちらの方へ捻れ出します。いつも右ばかりで噛んでいる片噛み癖の人、いつもどちらか一方の脚を上にして脚を組んで座っている人(脚を交互に組み替えているならまだ良いが)、スマホ操作で右手の母指ばかりを酷使している人、こういう使い方の偏りは必ず骨格の歪みや筋肉のアンバランスにつながります。ですから自ずと姿勢は悪くなります。つまり、①使い方の偏り→②骨格の歪みと筋肉のアンバランス→③悪い姿勢の順番になりますので、使い方の偏りをなくすことが一番大切なこととなります。
 O脚の改善においても同様です。一時的な矯正で形を整えたとしても使い方が変わらなければ再びO脚に戻ってしまいます。これを反対に考えますと、今がO脚の状態であったとしても、下半身の使い方が良くなればやがて骨格や筋肉のバランスが整っていきO脚は改善されていきます。そしてこの“使い方の改善”が専門家として私が最も厳格に観察し修正にこだわる部分です。
 立った時の重心がどこにあるのか、片足立ちになった時股関節のどの筋肉を主に使っているのか、座った時膝が閉まるような方向に力が働いているか、歩行で脚を上げ始める時股関節のどの筋肉を使っているのか、着地の時足のどこから着いて、その後足の指をどのように使っているのか、そういった点を細かくチェックします。
 そして一つ一つを細かく修正するように施術を行っては、再び立ったり歩いたり座ったりしていただき確認し、また修正するというようなことを繰り返します。ですから施術はとても地味ですし、施術を受ける側は最初のうち何をやっているのかわからなかったりするかもしれません。

 からだを中心部(内側、正中)と外側部(体側)に分けたとき、どんな動作をしたとしても重心が中心部にあれば動作は効率よく行われ不調や不具合になる可能性は低いです。ところが重心が外側部に行ってしまうと疲れやすくなり、不具合になる可能性が高まります。からだの中心部というのは、上肢(手と腕)では小指側で、下半身では母趾側です。つまり股関節の内側~膝の内側~母趾にかけてのラインに重心があれば問題はありません。
O脚と股関節_片足立ち

 立った姿勢で、重心を左足に移し右足を少し浮かせたとき、左股関節の内側の筋肉が働いて頑張ることができていれば大丈夫ですが、股関節の中央から外側にかけての筋肉を主に使ってしまうようではO脚の改善にはつながりません。そして重心が外側に行かずに股関節内側の筋肉でからだを支えることができるようにするのは私の仕事です。

O脚と股関節_座位腿上げ

 椅子に座った時、膝が外側に開いて“股が開いた状態”にならないようにするのは私の仕事です。
 外側に重心が行ってしまうようなからだの状態で「歩くとき内側の筋肉を使い、膝が内に入るよう意識してください」みたいなアドバイスをすることはありません。それは意味がないですし、かえってからだの使い方をおかしくしてしまう可能性すらあります。(ですから特殊な靴を使い続けての矯正には疑問が生じます)
 下半身の使い方に関して私が要求することは、立つとき足先を内に向けた“ハの字”にならないよう気を付けてもらうことくらいです。「かかとをつけて足先を少し開き、お尻にエクボをつくるように殿部に力を入れて立つ癖をつけてください」と要求することはあります。

O脚の改善を成功させるためにはある程度継続した施術が必要
 これまでO脚改善を目的に来店された方々で成功した方々の特徴は“しつこい”ことです。両膝の隙間が狭くなれば“それで良し”と考える方々は2~3回来店されて、それが実現すると来なくなってしまいます。そしてまた忘れた頃にO脚の状態で来店されます。あるいは別のところに行くのでしょうか。
 ここで説明しましたとおり、形は使い方で変わりますので使い方がすっかり変わらなければやがて元の状態に戻ってしまいます。使い方=癖ですから、癖を直すことを考えますとそう容易いことではありません。手や腕の使い癖、噛み癖、眼の使い癖、スマホの使い癖、パソコンの使い癖‥‥、これらを改善することが実は大切だったりします。私は施術の度になるべく癖が直るようにとからだを整えますが、実際に癖を直すのは本人の自覚と努力です。ですから癖が抜けるまで“しつこく”努力して、来店していただきたいと願っています。
 
 冒頭に記しましたとおり、O脚は将来の膝関節痛の予備段階でもあります。膝関節が変形してしまってからでは完全な回復の可能性はとても低くなります。体型のことだけでなく、そのことを頭に入れていただきO脚は是非とも改善してください

 車や電車や飛行機などに長時間座り続けているとお尻の骨(坐骨付近)が次第にゴツゴツしだし辛くなったり痛くなったりする経験はどなたにでもあると思います。
 その原因は“お尻が疲れるから?”というのが一般的な見解だと思いますが、中には1~2分くらいしか座っていないのに坐骨付近が痛くなってしまう人がいます。ですから一概にお尻の疲労が原因であるとは言えません。今回はこのことについて考えてみたいと思います。

ハムストと坐骨の関係
 太ももの裏側の筋肉をハムストリング(略して“ハムスト”)と言います。ハムストリングは坐骨から始まって太ももの裏を通り膝下の裏側につながっている筋肉群です。
 
ハムスト「ゆ」で坐骨「こ」

 坐骨を起始としていますので、坐骨の状態に深く関係する筋肉です。筋肉の性質上、同じ筋肉の何処かに働きの悪い部分が生まれますと別の部分がこわばって硬くなるという仕組みがあります。例えばハムストリングの中間部分、ちょうど太ももの裏側、座面についているところにゆるんだ部分ができますと、起始部の坐骨に近いところにこわばりができてしまいます。筋肉はこわばると硬くなりますので、“坐骨が尖ってゴツゴツした感じ”というのが現れます。
 基本的に筋肉は同じ状態を長時間保つことが得意ではありません。特に伸ばされた状態で長時間耐えることは苦手です。椅子に座り続けるということはハムストリングが座面に接触し続けるわけですが、加えて太ももの重みがかかっていますので、筋肉・筋膜・皮膚からすると伸ばされ続けているのと同じです。時々立ったり歩いたりして筋肉を動かしてあげれば辛い状態はリセットされるのですが、それが叶わないと荷重に負けてしまいハムストリングに働きの悪い部分ができてしまいます。働きの悪い部分というのは、筋肉や筋膜の一部に“伸びきってしまったゴム”のような部分ができてしまった状況を連想していただくとよろしいかと思います。筋肉の中に縮むことができない部分が生まれてしまうのです。すると筋肉全体の働きが悪くなりますので、それを補うように同じ筋肉の別の部分にキュッと縮まって硬くなってしまうこわばりが生まれてしまいます。座り続けていると次第に坐骨部分が“妙にありありと感じられる”状況が生じるようになりますが、それはこのようにしてもたらされます。

 坐骨が痛くなる理由は他にもありますが、“座り続けていると痛くなる”といった場合はこのような仕組によるものが最も多いと思います。また、何らかの理由でハムストリングがゆるんでしまっている人は座ると間もなく坐骨が痛くなったり腰が痛くなったりしてしまいます。ハムストリングはスポーツで肉離れを起こしやすいところですが、肉離れを患っている人は座面に太ももをつけるだけでも耐えられなくなってしまうことでしょう。

 さて、映画館などで長時間座り続けていなければならないときに坐骨や腰が痛くなった場合などの対処法としては、太ももと座面の間に手を入れて温めたり擦ったりしてハムストリングのゆるみを改善するようにすることが良いと思います。お尻をモゾモゾ動かしたり、お尻の痛くなったところに手を当てたりするより効果的です。

ハムストリングがゆるんでしまう理由
 上記のように筋肉が何かに長時間接触していたり、荷重がかかり続けていたりしますと筋線維が伸びて収縮できない部分ができて働きが悪くなりますが、それ以外にも筋肉がゆるんで働きが悪くなってしまう理由はあります。
 一つは使いすぎによるものです。これは筋肉疲労のことであり、この場合は休養することによって機能を回復することができます。
 もう一つは血液循環不良によるものです。端的な例は“冷え”です。からだ全体が冷えたり、部分的に冷えたりしますと動脈の巡りが悪くなり、細胞に十分な酸素が届けられないため筋細胞の働きが悪くなって筋肉はゆるんだ状態になってしまいます。
 その他には神経の問題もあります。ハムストリングで言えば、坐骨神経がコントロールしている筋肉ですので、坐骨神経痛になりますと働きが悪くなります。
 また他の筋肉の影響によってゆるんでしまう場合もあります(これが一番多いかもしれません)。例えば腰や膝が悪くて歩いたり立ったりするときに下半身全体で踏ん張ることができないため、必要以上に足の指に力を入れて頑張らなければならない状況になりますと、足裏や足指の筋肉はカチカチにこわばったりします。その影響でハムストリングがゆるんでしまうというのはよくあることです。ふくらはぎはパツンパツンに張っているのに、お尻や太ももの裏はユルユル、といった状態です。高いヒールを履いている人、靴のサイズが合っていない人、かかと体重の人、歩き方の悪い人、背中の丸まった人、こういう人達の足指はこわばっていることが多いです。すると筋肉の連動関係、拮抗関係でハムストリングはゆるんでしまうのです。

筋肉は同じ状態を長く続けることが苦手
 今となってほとんど死語になりつつある“根性!”は、私の幼い頃、漫画「巨人の星」の時代にはごくごく一般的な言葉でした。姿勢を正しく保ち続けることができないのは忍耐力が足りないからだ、などと親に言われた記憶があります。今、この仕事についていろいろな方と接していますと、“耐えられる身体”と“耐えられない身体”という判別がつきますので、「今の状態では、それ(姿勢良く座り続けようとすることなど)は無理」などとしばしば思います。「精神論は精神論として、からだには無理。しごきになるばかりで余計にからだを悪くする」などとお客さんに言うこともあります。
 ところが現実の今の社会では、この“無理”を強いられている場面がけっこうあります。デパートなどの売り場で働いている人は、お客さんが居ても居なくても座ることは許されない、などと耳にします。接客が忙しくて動き回っているのであれば、からだは疲労しますが、筋肉は同じ状態をじっと耐え続けるといった状況にはなりませんので疲弊してゆるんでしまう可能性は少ないです。ところが暇で動くこともないのに座ることは許されず立ち続けていなければならないとなると、筋肉には無理を強いることになります。下半身の筋肉が徐々に働けない状態になるのに、それでも立ち続けていなければならないとなると、肩や背中に力を入れて頑張り続けるようになってしまいます。肩こりがきつくなったり、背中の張りに辛さを感じる原因の一つであると思います。
 また反対にPC作業などで一日中座り続けていなければならない、というのも筋肉には良くありません。姿勢が崩れていくのは当然のことだと思います。筋肉は、それ自身が伸びたり縮んだりするようにできています。つまり伸縮を繰り返すのが本来の在り方ですので、どちらか一方に偏るというのは間違っているということになります。
 職場環境改善を取りざたされている今日、整体的な観点で見れば企業側はこういうことにも配慮する必要があると思います。売り場の片隅、お客さんから見えないところにちょっとの時間座れる椅子を用意すことも職場環境の改善ではないでしょうか。
 座り続けることの多い仕事では、上司の方が積極的に声を掛けて時々立ったり歩いたりすることを促すことも大切なように思います。

 からだを壊してハムストリングのゆるみを改善するのに時間のかかる人もいます。このような人は座って動作をすることが苦手です。ハムストリングに荷重がかかると腕も上げられなくなったり、首を上げるのが辛くなったり、肩に力が入って呼吸が悪くなったりすることもあります。
 食卓に座って家族とゆっくり食事を楽しむことを嫌い、テーブルに肘をつかないと茶碗や箸を口元まで運べなかったり、息苦しいので食事をしながらしばしば溜め息をついたりしてしまうかもしれません。家族団らんの一時が、その人がいるために気まずい雰囲気になったりするかもしれません。しかし、それは忍耐力や性格など内面的なことに問題があるのではなく、単に“からだが耐えられない状態”なのかもしれません。

 今朝目にしたテレビショッピングでは、“座っても辛くならない座椅子”というものを紹介していました。坐骨結節が座面に当たらないように工夫されているもので、骨盤自体もサポートするものでした。確かに、それで坐骨は痛みを感じなくなるかもしれませんが、ハムストリングがゆるまないように工夫されたものではありませんので、必ず歪みは何処かに現れると思います。首や肩の凝りが増したり、背中が張ったりと、別な場所に不調が現れるのではないでしょうか。それならいっそのこと、15分くらい座り続けたら自動的にハムストリングをマッサージしてくれるような仕組みにしたものを作った方が効果的なのではないかと思いました。マッサージ器の適当な何かを代用して実験してみたいと思います。

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