ゆめとわのblog

ホームページとは違った、より臨場感のある情報をお届けしたいと思っています。 また、テーマも整体の枠を飛び出してみたいと思います。 ホームページは以下です。 http://yumetowa.com/ お問い合わせはメッセージ欄でお送りください。

下半身

 バレエ(踊り)をされている50歳代の女性の方ですが、左側股関節の安定と力感が乏しく、プリマが心地良くできなくて不安定だと言います。
 その直接的な原因は大腿骨を外旋する働きをする筋肉の一つ、大腿方形筋の働きが悪いことです。

大腿方形筋の働き

 大腿方形筋は手首を内側に捻る方形回内筋と連動関係にありますが、左側の方形回内筋も働きが悪い状態で、その働きを回復させるように操作しますと大腿方形筋の働きも良くなり、プリマが安定してできるようになります。

大腿方形筋と連動する筋
  「どうして方形回内筋の働きが悪くなったのか?」が解ると根本的な対策ができます。
 前腕→上腕→腋窩(脇の下)と観察していきますと、腋窩のところで上腕二頭筋(短頭)がゆるんでいてタルタルな状態でした。そして脇を絞って上腕を体幹に引き寄せる動作が上手くできませんでした。そしてその原因は大胸筋肋骨部(腹部)線維が損傷状態になっていて収縮できないからでした。
 
 「ここが損傷しているようですが、過去に何かありましたか?」と尋ねますと、乳がん検査で細胞を採取するために乳房脇から太い注射針を刺したことがあると仰いました。……結局、それが根本原因でした。
 注射針を刺したところは今でも圧痛がありました。大胸筋の損傷部位が回復していないのです。
 ピップエレキバンの「80」を損傷節に貼りました。しばらく貼り続けることで損傷部位が少しずつ回復していくこと促しました。
 
〇今、左肩~腕にかけて力が入らなかったり、違和感を感じたり、腕が上がらなかったりする症状が続出しています。
 それはワクチン注射による三角筋の損傷によるものです。筋肉に注射針をブスッと刺すことは丁寧に行わなければ、筋線維を傷めます。

 私たちのからだは体幹と四肢で成り立っています。体幹は骨盤~背骨~頭部という骨格と関連する筋肉のことであり、四肢は上肢2つ(左右の腕~手)と下肢2つ(脚~足)です。
 整体的な観点で言いますと、体幹が歪んだりおかしくなりますと全身的に機能が低下します。腰痛や首・肩の痛み、頭痛などの症状はこの一部ですが、体幹が歪んだりおかしくなる原因の多くは四肢の問題によるものです。平たく言いますと、手先や腕、足などの使い方やそれらの筋肉や骨格に生じたのいろいろな問題が体幹のさまざまな問題の原因になっていることが場合が多いのです。
 その他には感覚器官がある顔面部の問題、つまり目の使い方や酷使、噛み方、歯ぎしり、口呼吸などの問題が体幹に影響を及ぼしていることも多々あります。
 ギックリ腰や打撲、肉離れ、手術等々、体幹に直接的損傷が生じた場合は別として、体幹の多くの問題の原因の殆どは四肢か顔面部(感覚とそしゃく)の問題が引き起こしていると言えます。

 さて、今回はその一つの例を取り上げます。そして、とてもたくさん見られる状況です。

 私たちのからだの中心は骨盤ですが、その次くらいに中心的な存在は背骨(脊椎)です。脊椎は首の頚椎、肋骨のある胸椎、そして腰部の腰椎に分けられます。
 腰椎は5つありますが、この在り方が全身的にかなり重要です。

 腰椎は前弯しているのが本来の在り方です。第1腰椎、第2腰椎、第3腰椎は後ろに反った形状になっていますが、つまり椎骨(椎体)は上向きの状態になっています。第4腰椎はほぼ正面(地面と平行)を向いていて、第5腰椎は下向きの状態になっています。そして、第3~第5腰椎のところの曲がり(前弯)がとても重要で、その在り方が背骨全体の状態に大きな影響を与えていると言っても過言ではありません。


頚椎と腰椎の関係01

第3腰椎の在り方と下半身のエネルギーの流れ

 第3腰椎はその椎体が少し上を向いている状態が望ましいのですが、時々正面や下を向いた状態になっている人がいます。

第3腰椎と下肢のエネルギーの流れ

 結論的に言いますと、第3腰椎が上を向いた状態にある人は、下肢の内側をエネルギーが足から骨盤(お尻の内側)に向けて上昇するように流れています。そして下肢の外側は反対に骨盤から足に向かって流れている循環になっています。(他の脊椎の関係で、そうでない場合もあると思います。)
 つまり、エネルギー的に見ますと、大地(地球)からのエネルギーをからだのセンターラインが吸い上げ、そして体内から排出すげきエネルギーはからだの外側を通って排出されている、と解釈することができます。

 そして第3腰椎の椎体が下を向いている状態の人は、この循環が反対になっています。このような人を観察したり触りますと、太ももの内側の筋肉がたるんでいて十分に機能していないように感じます。
 「内転筋を鍛えた方が良い」などと理学療法士やトレーナーの方々に指導されたりアドバイスされたりする方も多いようですが、エネルギーの流れ方が良くなければ、せっかく筋肉を鍛えても、その能力を発揮することができませんので、結果的に日々の生活において「トレーニングの効果はあまり感じられない」と感じてしまうと思います。

靴擦れと第3腰椎の関係

 第3腰椎が下向きになっている原因はいくつかあります。
 ストレートネックは頚椎の前弯が失われてしまっている状態ですが、同じようにストレート腰椎もあります。背中を丸めて座る癖を長年している人は腰椎の前弯が失われしまいますが、それも一つの原因です。
 他の腰椎に歪みなどがあることの影響を受けている場合もあります。
 そして、今回お話ししたいのは靴擦れが原因している場合のことです。

 第3腰椎が下を向いてしまう直接的な理由の一つに広背筋がこわばっている状態があります。バンザイをしたときに脇の下の背中側筋肉に張りを感じて心地良いバンザイが出来ない人は、広背筋がこわばっている可能性があります。
 そして、広背筋にこわばりをもたらす原因の一つに踵のアキレス腱付着部に靴擦れによる塊が関係していることがあります。踵の真後ろよりちょっと外側は腓腹筋外側頭の延長がアキレス腱となって踵に付着している部分ですが、そこに問題がある場合です。
 靴擦れを何度もしますと、その部分が硬くなり塊のような物ができますが、そのちょっと下のところは塊とは反対に腑抜けのような感じになります。

靴擦れ

 結論を言いますと、その腑抜けのようになっている部分が根本的な原因となって腓腹筋外側頭がゆるんだ状態となり、その影響によって広背筋がこわばり、そして第3腰椎が下向きになってしまうという流れとなります。
 ですから、踵にできた塊を指圧や揉みほぐしなどでゆるめることに併せて、腑抜けになっている部分にエネルギーを与えてしっかりさせる施術を行うことをします。
 また、マグレインやピップエレキバン(80)などでその腑抜け部分を補うことも有効です。

「まさか靴擦れが影響しているなんて?」と皆さん思われますが、そんな些細だとおもわれるようなことの影響でからだのエネルギーの流れが変わってしまうことはよくあることです。

からだのセンターラインにエネルギーが集まるようにしたい

 長年整体の仕事をしていますと、筋肉や骨格のことだけでなく、体内を流れているエネルギーに着目することが多くなります。
 からだが楽になる、からだを楽に使う、という状態を築いて保つためには、からだを効率よく使える状態に整えるわけですが、そのためにはエネルギーの流れがキーポイントであるように感じます。

からだのエネルギーの流れ(背面)

 私たちは人間ですが、それは脊椎動物でもあります。元々は骨盤しかないような動物が、海の中で泳ぐために進化しました。それは頭進といって、骨盤の顔(口)に相当する部位が頭として骨盤から分離するように離れて魚のような状態になったのですが、その間に背骨ができたのが脊椎動物です。
 ですから、私たちは骨盤から力をもらって活動をしている生命体であると考えることができます。手先を動かすのも骨盤は関係しています。ギックリ腰などで骨盤を損傷しますと、とたんに力が使えなくなってしまい椅子から立ち上がることもままならなくなります。
 たとえばペットボトルを開けるために両手を捻るとき、骨盤からの力がもらえなければ、手や腕の筋肉だけでその動作をしなければならなくなります。それまで無意識に簡単にできていたものが、手に意識的に力を入れて頑張らないと蓋も開けられない状態に鳴ってしまいます。そして、そんな状態が続きますと手の筋肉がおかしくなってしまいますが、それが影響して肩関節痛や腰痛や膝痛を招いてしまうこともあります。
 このような状況はからだの使い方が非効率な状態です。つまりエネルギーの流れが悪い状態です。
 骨盤の中心~背骨というからだの中心ラインにエネルギーがしっかりと流れている状態では、どんな動作をしても骨盤の力、つまり力の源泉から力を得ることができるので効率が良く、楽に動かせる状態となります。

 ヨガや筋トレやいろいろな健康法でからだを鍛えようとされている方は、このポイントを抑えることが大切だと思います。
 なぜこのようなことを言っているのかは、健康に気遣いながらからだのためにいろいろやっている人でも、このようなことはまったく考えていない人が殆どだからです。一整体師からのアドバイスとしえ言わせていただきました。

 座る姿勢が悪い、姿勢を正そうとしてもすぐに骨盤が倒れて猫背になってしまう、というような相談をよく受けます。
 このような人の場合、背筋を伸ばして座るためには意識的に背筋に力をいれて姿勢を保つか、あるいは癖として常に背中に力が入った状態(=首や肩にも力が入っている)になっている可能性があります。いわゆる「反り腰」もこの類です。

 このような人の場合、腰椎の構造に問題がある場合が多いのですが、その他に下腹部の腹筋が使えない状態になっている場合もあります。

 腰椎の構造的な面、つまり腰椎の歪みという面では、頚椎のストレートネック同様に、腰椎の前弯が消失している場合が多いです。


頚椎と腰椎の関係01

 腰椎の前弯は、上図のように第3、第4、第5腰椎のところが要です。3つのなかで中心となる第4腰椎がほぼ地面と平行な状態になっているとき、第3腰椎は上を向き、第5腰椎は下を向いている状態が理想的です。腰椎がこのようになっているのであれば、特に意識することもなく自然と背筋が伸びが正しい姿勢を築いて保つことができます。
 図の右側のように腰椎がストレートな状態になっていますと、腰椎より上の部分で後ろに反らさないと上半身が前に倒れてしまいますので、バランスを撮るために腰椎と胸椎の境辺りで背骨を後ろに反らせるようになります。するとその反動として胸椎の上の方で背骨のバランスをとるために後弯をおこないますので、肩甲骨辺りが後ろに飛び出すような猫背の状態となってしまいます。

下腹部の腹筋が使えないために正しい姿勢が保てない状態

 腰椎がストレートというわけでもないのに、座位や立位で心地良い姿勢を保つことができない状況もあります。

 実例をあげます。大学生の若い男性は、座位で正しい姿勢を保つことができなくてすぐに後ろに寄り掛かるように(つまり骨盤を寝かせて)座ってしまう癖があります。骨盤を立たせようと意識するとそれは可能で背筋をのばすこともできますが、すぐに疲れてしまったその状態を保つことができなくなります。立位では、出っ尻出っ腹のいわゆる「おじさん体型」となってしまい、スーッと気持ちよく立っていることができません。つまり、骨盤に寄り掛かるようにして立ってしまうので反動として首が前に出た立ち方になってしまいます。

 ベッドにうつ伏せの状態になってもらったときに私が感じた第一印象は、「腰部が使えない」「腰部が腑抜けのような状態」だと感じました。そして殿部も下がっているのでとても若者のからだとは言えない印象でした。
 腰椎を観察していきますと、本来下向きになっているはずの第5腰椎が上を向いていました。そして第1腰椎が下向きの状態になっていました。その第1腰椎を私の手で修正しますと、第5腰椎は下向くの状態になり、たれていたお尻の筋肉やハムストリングもしっかりした状態になり、頼りなかった腰部にも力感が戻りました。
 ですから、第1腰椎が直るように考えていけば良いわけですが、そのヒントを得るために背骨のさらに上部、胸椎を確認していきました。すると胸椎に限らず肋骨(胸郭)にも何か損傷のようなものを感じました。
 そこで質問をしました。「過去に背中を強打したことがありますか?」
 すると「高校生の時に2階のような高いところから落ちて背中全体をドスンと地面に強打したことがある」とのことでした。

 下腹部の腹筋が使える状態か否かを確認する簡単な方法は、座った状態で上半身を後ろに傾けたときにどこに力を入れてその姿勢を支えるかで知ることができます。

下腹部腹筋のテスト

 腹筋が働かない状態の人は、骨盤の背面や腰部に力を入れて姿勢を支えるようになります。下腹部の腹筋が働ける状態の人は、下腹部や恥骨結合の近辺に力が入ってこの姿勢を支えるようになります。そして、腹筋が働ける状態の人は、この上半身を後方に傾けた状態を前に戻そうとするときに腹筋を使ってその動作を行うようになりますが、それはとても自然で速やかな動作として行うことができます。

 そして、この下腹部の腹筋が働ける状態というのがとても重要です。私たちの骨格筋の大きな特徴として、同じ状態を長く保つことが苦手なことがあります。長い時間収縮し続けたり、弛緩し続けたりすることが苦手です。骨格筋は収縮したり、弛緩したりすることを交互に行っていたいのです。
 ですから、同じ座った状態を保つにも、重心の位置をいろいろと変えながら特定の部位だけに負担が行かないように私たちは無意識の微妙な動作を行っています。
 もっと簡単に言いますと、座り続けるにも重心を骨盤(坐骨)の後側に掛けたり、前側(恥骨結合)に移動したりと何度も何度も繰り返しています。そして、骨盤の後側に重心が掛かったときには腰部(背面)の筋肉を使い、骨盤の前側に重心が掛かったときには腹筋を使う仕組みになっていて、腹筋と背筋がバランス良く使われるようになっています。
 ところが下腹部の腹筋が働かない状態=使えない状態では、重心を骨盤の前側に移すことができなくなりますので、骨盤の背面ばかりで姿勢を支えなければならなくなります。ですから、お尻や腰部の筋肉に負担が強いられるようになってしまいます。そして、この状況は正しい姿勢を保つことができないだけでなく、腰痛の原因ともなります。

 この男性に対しては、背面を強打した名残として背骨(脊椎)がおかしくなっているところを調整しました。3箇所くらい修正しなければならないところがありましたが、それを済ませると本人もビックリ、自然に恥骨側に重心が乗った状態で座ることが可能になりました。反り腰の状態ではなくなりましたので、本人がきにしていた「首が前に出る」状態も自ずと改善しました。

要になる第1腰椎と第5腰椎

 その他にも第5腰椎の向きが本来とは反対(上向き)の状態であることが理由で、腰部がおろそかな感じになり、お尻が下がり、ハムストリングが力ないのに下半身がむくんでいるという状況の人がいました。まだ20歳代前半の若い女性でしたが、仕事上、とてもストレスが多いようです。
 この女性も上記同様、第1腰椎は下向きの状態になっていましたが、とても気になったのは第5胸椎の硬さでした。第5胸椎やその周辺が盛り上がるように硬くなっていて、肋骨の動きも悪い状態になっていて呼吸も浅い状態でした。(横隔膜の動きが悪いので腹式呼吸が不完全)
 「胸はセンサー」です。そしてその中心は第5胸椎と考えられています。第5胸椎は背骨(脊椎)ですが、その腹側の胸骨上には?中という大切なツボがあります。あるいは、ハートチャクラでもあります。
 強いストレスは胸を締め付けたり、あるいはストレスを体内に取り入れないようにするために胸を締めたりしますが、その中心が?中であり第5胸椎です。
 私は硬くなってしまった第5胸椎及びその周辺をゆるめるために?中を中心に軽く揉みほぐしを行いました。あるいは、大胸筋がゆるむように施術を行いました。すると次第に横隔膜が動くようになって腹式呼吸が始まりました。そして第1腰椎と第5腰椎を確認しますと、それは良い状態に戻っていて、腰部の筋肉も使える状態になりました。

 まだ、「絶対にそうだ」とは言いきれませんが、第1腰椎と第5腰椎、そして第5胸椎には体幹のバランスを取るための大切な関連性があるのだと考えています。

腹筋が使えないその他の理由

 今回は下腹部の腹筋と腰椎との関連性の話題でしたが、下腹部の腹筋が使えない理由はいくつかあります。
 鼡径部が硬くて恥骨結合の状態が良くない。股関節で大腿骨と骨盤の関係が良くない(O脚や内股など)。舌の位置が悪い。噛みしめている。顎関節の状態が悪い。鎖骨の状態が悪い。
 もっと他にもあるかもしれませんが、私たちのからだは腹側(陰)と背側(陽)のバランスが大切です。それは姿勢のことだけでなく、生理機能にも影響すると思われます。
 ジムやトレーニングやストレッチなどでからだをケアすることは好ましいことですが、どうぞ陰と陽のバランスを考えて行ってください。
 たとえば腰痛だからといって腰部の筋肉ばかり鍛えても、腹筋の働きが悪ければ症状は改善しません。整形外科のリハビリでよく指導されるようですが、たとえば膝関節の問題に対して大腿四頭筋ばかり鍛えても、的外れです。
 バランスはとても重要です。

 子供の頃から何十年も内股の女性がいます。背中のハリ感と不快感、浅い呼吸と内臓活動の不調という慢性症状に悩まされています。
 お腹の筋肉のことを一般的に、一口に「腹筋」と呼んでいますが、腹筋には四つの筋肉があります。誰もが「腹筋」として認識しているのが腹直筋(ふくちょくきん)ですが、その他に2つの腹斜筋(外腹斜筋と内腹斜筋)、そして最も深部に腹横筋(ふくおうきん)があります。腹横筋は腹圧に深く関係している筋肉ですが、腰腹部のコルセットのような働きをしています。

腹筋_前面


 今回は腹横筋にスポットを当てて、先の女性が悩んでいる背中の硬さやハリ感、浅い呼吸、内臓の不調について考えてみます。

 私が観察したところによれば、腹横筋がこわばるとウエストは少し細くなります。(反対に腹横筋が弛んだ状態ではウエストが太くなります)
 しかし、その反動として胸郭(肋骨)が横に拡がって平たくなります。胸部が広がってウエストが細くなるので、一見するとスタイルが良くなったように見えるかもしれませんが、これまでたくさんの人たちを観察してきた私の目にはそうは見えません。
 胸郭が横方向に拡がって平たくなるのを専門的に云々しますと、背骨から肋骨が離れた状態に歪んでいて不安定な状態であるると言えます。
 このような状態になりますと、肋骨に関係している背中の筋肉(脊柱起立筋の胸最長筋や腸肋筋群)は硬くこわばってしまいますが、それが背中のハリ感として認識されると思います。


脊柱起立筋群と背中の痛み

 また、腹式呼吸にとって非常に大切な横隔膜は肋骨を足場として収縮したり弛緩伸張していますので、肋骨が不安定だと横隔膜の働きも当然悪くなります。そして横隔膜の働きが悪くなりますと、内臓の働きも低下しますので胃腸の働きが悪くなったり、肝臓の働きにも影響が及ぶかもしれません。

横隔膜の圧迫による肝臓と大腸


腹横筋がこわばる理由

 さて、胸郭を本来あるべき状態に近づけるためには、腹横筋のこわばりを解消する必要があるわけですが、腹横筋がこわばる理由について考えなければなりません。
 筋肉の連動関係で言いますと、私の知っている限りでは、眼球を外側に向ける外眼筋と肩甲骨と喉(舌骨)を結ぶマイナーな筋肉である肩甲舌骨筋(けんこうぜっこつきん)と腹横筋は連動します。
 ですから、たとえばテレビやパソコン画面が右側にある、あるいはパソコンに有力するときに書類が右側にあって右側を見る機会が多い人は、右目のこの外眼筋がこわばります。すると、それに連動して右側の肩甲舌骨筋、右側の腹横筋がこわばります。
 あるいは、何かの理由で舌骨が歪んだり、肩甲骨の位置が歪んだりして肩甲舌骨筋がこわばると同側の腹横筋がこわばります。

 ところで、筋連動の関係以外の理由で腹横筋がこわばることもあります。

腹横筋のこわばりと胸郭の扁平と足の関係_01


 腹横筋がこわばっている人によく見られる以下のような状態があります。
 まず仙骨を覆う筋膜が硬くこわばっていて、仙骨が腰椎の方に引き付けられている状況があります。仙骨が前傾していると状況に似ていますので「良い状態」と受け取られるかもしれませんが、仙骨と仙腸関節を覆う筋膜が硬くなっているので仙骨は身動きできないような状態であると考えられますし、仙骨下部と尾骨部分が突出している感じなので、「出っ尻」に近い状態です。
 そして仙骨の両側にある骨盤の骨(腸骨)は上方が外側に拡がるようになっていてます。この状況は骨盤下部の坐骨結節が内側に回転するように狭まっていることが原因でもたらされていますが、ここが修正すべき大事なポイントです。。

 坐骨結節が内側に歪んでしまう理由は幾つか考えられます。
 尾骨と坐骨を結んでいる尾骨筋がこわばっている可能性が考えられます。あるいはハムストリングの変調が原因になっている可能性も考えられます。
 しかしながら、上記のような状況のときにはハムストリングの変調による可能性の方が高いようです。

(余談ですが、通常では、仙骨が上方にあがる(前傾する)と骨盤の下部(坐骨結節)が拡がり骨盤全体が前傾します。仙骨が下がると骨盤下部がすぼむように狭くなって骨盤全体も後傾します。ですから、上記のような仙骨が上がりながら骨盤下部が狭くなる状況は「通常ではない」と判断できます。)

半膜様筋が要
 ハムストリングは太ももの裏側にある筋肉群のことで、通常は半膜様筋、半腱様筋、大腿二頭筋のことを指します。
 半腱様筋と半膜様筋は坐骨結節と膝裏内側(脛骨)を結んでいます。大腿二頭筋の長頭は坐骨結節と膝裏外側(腓骨)を結んでいます。
 これらの中で坐骨結節の左右の歪みに関係が深いに筋肉は半膜様筋と大腿二頭筋長頭になります。そして坐骨結節が内側に歪む現象は、坐骨結節を外側に引っ張る役割をしている大腿二頭筋長頭が損傷したり、疲弊したりしてゆるんでしまったか、あるいは坐骨結節を内側に引き寄せる働きをする半膜様筋がこわばって縮んでいるかのどちらかが考えられます。

半腱様筋・半膜様筋の変調と坐骨結節の歪み


 私のこれまでの施術経験では、今回の腹横筋のこわばりの原因となっている件としては、半膜様筋のこわばりが原因になっていることが圧倒的に多いです。

 さて、ではどうして半膜様筋がこわばってしまうのか? という問題が次に訪れます。
 膝関節が歪んでいる場合が一つ考えられます。もう一つは筋肉の連動関係によるものが考えられます。

 膝関節の歪みは、またいろいろと原因が考えられますので、今回は筋肉の連動関係による原因について考えてます。

 半膜様筋と連動関係にある筋肉はふくらはぎのヒラメ筋の内側線維と足では母趾MP関節の先の内側の筋膜です。

腹横筋のこわばりと胸郭の扁平と足の関係_02


 極端な例で話しますと、歩くときにちゃんと母趾先を使って地面を蹴っているのではなく、このMP関節先の内側部分を使って母趾を捻るようにして地面を蹴っている状況が目に浮かびます。
 たとえば外反母趾の人は、母趾のMP関節がはみ出しているので母趾が斜めになっています。この状態では正しく母趾を使って歩くことはできません。母趾を回転させて捻らないと地面を蹴ることができません。
 ですから母趾MP関節の先にはタコができて硬くなっていると思います。そしてその硬さがヒラメ筋の内側線維にこわばりをつくり、半膜様筋のこわばりへと連動して坐骨結節を内側に引っ張ってしまうことになります。

外反母趾と内反小趾の骨格


 今回は足の指と骨盤の歪みと腹筋や呼吸のかんけいについて私が真実だと思っていることを記しました。
 「楽に生きる」、「楽なからだになる」、そのためには呼吸が最も大切だと思います。理想的な呼吸状態はそれだけで全身のマッサージ効果になりますしし、宇宙のリズムと呼応しますので、伸びやかになることができます。ヨガや様々な呼吸法は理想的な呼吸状態をもたらすための手段でもありますが、私は整体の施術でそれを実現することもできると考えています。
 今回の話が、皆様の参考になればと思っています。


余談:甲高の人は注意してください

 私はしばしば「踵重心は改善しなければならない」「小趾アーチが沈んだ状態は改善する必要がある」と言っています。なぜならば、これらの人たちは足裏を伸びやかに使うことができないからです。
 本来は、ふくらはぎ(脛骨)と足の関節となっている距骨に体重が乗っていることが望ましい状態です。そうであれば、体重の負荷は足裏で分散されますし、足の指は伸びやかな状態を保つことができます。
 ところが踵に重心が乗ったり、小趾側に重心が乗ったりしますと、立った時に足の筋肉は緊張状態(収縮状態)になってしまいます。平たく言いますと「足の指で踏ん張って立っている」状態です。足の指に力を入れてバランスをとり続けないと立っていられないのです。(この状態に馴れている人は、それが当然なので何とも感じないかもしれません)

 甲高の人は、足をすぼめた状態であると認識した方が良いと思います。もちろん生来の体型的なものによる個別差はあると思いますが、踵や小趾側に重心のある人は平たい足でも足首の先の部分(楔状骨)は高くなっているはずです。

 そして、そのような人は母趾と2趾の間に力を入れるようになってしまいますので、その二つの骨の間を跨ぐようにある母趾内転筋(斜頭)、短母指屈筋、長腓骨筋などがこわばってしまい、からだに悪影響を及ぼします。

 実際のところ甲高の状態を自分で直すことは、セルフケアでは難しいことです。ですから、甲高の人は今回の母趾MP関節の先の部分や母趾と2趾の間の深い部分をツボ押し棒などで刺激してゆるめるようにしてみてください。

 夜の銀座で働いている女性が定期的に来店されています。普段はドレスを着て仕事をいしているとのことですが、冬の寒い時期は着物で接客する方がからだの負担が少ないということで、この時期は着物で仕事をしているとのことです。
 先日プライベートで静岡県の久能山を訪れ、たくさんの階段を登り降りしたとのことです。普段運動をそれほどしていないので筋肉痛が激しかったようですが、その数日後になって副鼻腔が腫れぼったくなり発声することが困難になったということで来店されました。

 来店されたときには声もかすれ、普通に会話することも困難でした。
 状態としては、頬骨のところにある副鼻腔(上顎洞)も眉間のところの副鼻腔(前頭洞)も詰まった状態で腫れぼったくなっていました。病院での診察では副鼻腔の炎症ということで、抗生物質が処方されたようです。

 筋肉は連動する仕組みを持っています。そして副鼻腔にも筋肉連動の影響は及びます。まだ正確に把握しているわけではありませんが、上顎洞は外肋間筋、前頭洞は内肋間筋と関係が深いようです。

四対の副鼻腔


 例えば目の下の頬骨のあたりが硬くなっていたり腫れぼったいようですと、上顎洞の副鼻腔の働きに支障が生じるようです。顔の中心に力が入りやすい癖を持っている人は頬骨が中央に寄り、鼻翼から頬にかけて硬くなっていますが、すると上顎洞の副鼻腔に空気が通らなくなり、そこが詰まったり、炎症が生じる可能性が生じるようです。
 あるいは、眉間に力が入る癖をもっている人は額の副鼻腔である前頭洞に空気が通らなくなり、そこが詰まったり炎症を起こす可能性が考えられます。

 また、外肋間筋は外腹斜筋(上腕二頭筋長頭?三角筋前部線維?外腹斜筋?外側広筋?前脛骨筋という連動)と、内肋間筋は内腹斜筋(上腕筋?内腹斜筋?長内転筋?後脛骨筋という連動)とも関係が深いようです。

肋間筋02

 外肋間筋が収縮すると肋骨を引き上げますので、胸郭は上方に動き胸が広がります。つまり外肋間筋は息を吸う動作に直接関与します。ところで、息を吸うときだけ外肋間筋が収縮するなら問題はないのですが、常に収縮した状態=こわばった状態になっていますと、胸郭が下がらなくなりますので息を吐き出す効率が悪くなります。さらに臨床的に気になるのは、胸郭が上がって広がったまま(胸板が厚くなる)になっていますので、それ以上息を吸い込むことも難しくなります。いわゆる過呼吸状態に近い感じです。
 一方、内肋間筋は収縮することで肋骨を下げますので、胸郭は下方に動き胸郭自体も薄く平たくなります。この作用によって肺から息を吐き出す動作がスムーズにいきます。しかしながら内肋間筋がこわばった状態になっていますと、息を吸う動作をしようとしても胸郭が上がって来ませんので、胸が広がらず息を肺に効率よく入れることが難しくなります。

 私の観察によれば、上顎洞の副鼻腔への通りが悪い状態になっている人は外肋間筋がこわばっている傾向がありますし、前頭洞の副鼻腔の通りが悪い人は内肋間筋がこわばっている傾向があります。ですから、おでこ(前頭洞)にも頬(上顎洞)にも両方とも吸気が通らない人は、外肋間筋も内肋間筋もこわばった状態になっていて、胸郭は固まったようにガチガチの状態になっています。胸郭(肋骨)をマッサージすると嫌な痛みを感じると思いますが、この女性がそのような状態でした。

 さて、このような状態を整体的に解決する方法を考えたときに、外肋間筋と内肋間筋を中心に、それぞれの変調を改善することで対応しようと考えました。

 外肋間筋は「外腹斜筋―外側広筋―前脛骨筋の連動関係」と深い関係がありますので、例えば前脛骨筋がこわばっていますと外肋間筋がこわばってしまう可能性は高いと考えられます。
 そこでヒントになったのが、久能山に行き、たくさんの階段を昇り降りしたことの影響と和装の草履や足袋と前脛骨筋の変調です。下り坂や階段を降りる動作では、中間広筋と外側広筋が酷使されます。登山などで上りはふうふうしながらも心地良く昇れるのに、下山した後で膝がガクガクしてしまう経験をしている人もいるかと思いますが、それは上りと下りでは主に使われる筋肉が異なることと、下りでは「筋肉の粘り」が必要になりますので、太もも筋肉が変調を起こしやすいからです。(中間広筋と外側広筋がかなり変調していましたが、外側広筋の変調は前脛骨筋の変調へとつながります。)
 また、和装の草履の鼻緒はちょうど前脛骨筋の停止に近いところに当たりますので、前脛骨筋が変調を起こす可能性も考えられます。そして案の上、前脛骨筋の停止付近がとてもこわばっていて、揉みほぐすと強い痛みを感じました。


鼻緒と前脛骨筋腱

 痛みはかなり激しかったですが、痛みに耐えていただきながら揉みほぐしていきました。3分程した後には痛みも和らぎましたし、目的であった外肋間筋のこわばりも解消されていきました。鼻の通りも少し良くなり声のかすれも良くなりつつありました。

 次に内肋間筋のこわばりの変調に取り組みました。
 この女性は元々眉間に力を入れてしまう癖を持っていますので、素地として前頭洞の通りが悪く、内肋間筋がこわばりやすい傾向があります。
 それに加え、今回は中間広筋が疲弊状態にあったことの影響が内肋間筋のこわばりを強くしていました。
 久能山に行く前は気にならなかったことで、その時気になっていることに足袋が母趾と2趾の間に「食い込んで痛い」という訴えがありました。
 詳細を省いて結論だけ申しますと、たくさんの階段を降りたことで中間広筋が疲弊状態になっていましたが、それは短母趾伸筋がゆるむという形で連動します。そして、その影響で母趾と2趾の間の筋膜がこわばってしまい、そこに足袋の凹んだ生地が接触するので痛みを発していました。痛いので気になってそこに力が入るようになるので、さらに痛みが強くなるといった状況です。ですから短母趾伸筋のゆるみ過ぎの変調を解消することでこの症状は治まりますが、そのためには中間広筋の状態を回復させることが必要となります。
 そして中間広筋の変調が、結論として眉間~額にかけてのこわばりをもたらしていて前頭洞の通りを悪くしている原因になっていました。
 右足首はこれまで幾度となく捻挫をした経験があるようで、慢性的に短母趾伸筋(中間広筋―恥骨筋等々に連動)の働きが悪い状態なので右側の恥骨の位置も歪んでいて腹筋から喉元の筋肉まで少し変調していますが、それが眉間に力が入ってしまう要因の一つだと思われます。

 今回の整体に対する結論としては、足指や足元の問題が、階段をたくさん昇り降りしたことで胸郭を硬くして副鼻腔の通りに影響をもたらしていたということです。そして一時的な副鼻腔炎となり、喉元まで影響を受けて声が出なくなったしまったという一連の繋がりが考えられます。
 施術が終わりますと、本来の声まですっかり戻ったわけではありませんが、普通に会話ができるようになりました。仕事ができるようになったのでホッとしたようです。

↑このページのトップヘ