ゆめとわのblog

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カテゴリ:体型 > 骨盤

 前回に、骨盤の歪みは“骨盤だけに着目するのではなく、からだ全身との関係性から考える必要があるという趣旨を記しました。
 ですから、実際の施術に際しては
 ①からだの歪みが骨盤に影響を与えているの場合
  ‥‥上半身からくる影響か、下半身からくる影響かを見極める必要
 ②骨盤の歪みがからだに影響を与えている場合
  ‥‥骨盤の中で、仙骨・尾骨と左右の完骨では、どの骨の歪みが全体に影響を与えているのか
 以上の二つを一番最初に判断することからはじめます。

①からだの歪みが骨盤に影響を与えている場合
・上半身からの影響で骨盤が歪んでいるケース
 上半身で歪みを起こす元となりやすいのは、顔(目、顎)と手や手先です。噛み癖、噛みしめや食いしばりの癖、歯ぎしり癖、これらは顎の状態に影響を与えます。また目の使い方の癖、つまり片方の目ばかりを使って物を見ているとか、右側を見ていることが多いとか、ということですが、これも上半身に歪みをもたらす原因になります。目と顎(口)の偏りは顔(頭蓋骨)を歪ませますが、後頭骨が歪みますと、それと対になって連動している仙骨も歪んでしまいますので骨盤全体が歪むことになります。
 
目の偏りと骨盤の歪み

 また、私たちは手をたくさん使って作業を行っていますが、それによって手や手先がたいへんこわばっています(ほとんどの人は自覚していませんが)。そのこわばりは、腕の筋肉~胸筋~腹筋を伝わって骨盤に影響を与えます。
 普段はあまり重い物を持ち歩かないのに、ある日遠出をして終日片手に重いカバンなどを持ち続けていた後で、何日かたって腰痛になってしまうということがありますが、それは手の筋肉が能力以上に酷使されたのでこわばってしまい、それが骨盤の歪みを引き起こしてしまったためだと考えられます。
 事務職などで終日椅子に座ってパソコンを操作している人は、強弱は別にして慢性的に腰痛を抱えている可能性が高いです。一つは座り続けていることで骨盤底筋が硬くなってしまったこと、もう一つは手のこわばりが骨盤に影響を与えてしまったことが原因であると考えることができます。
手と腹斜筋と骨盤の歪みの関係性

 以上のように上半身の歪みが骨盤に影響を与えている場合は、原因のほとんどは顔と手にありますので、それらを施術によって整えることが改善策になります。そして予防としては、目の使い方、噛み方、噛みしめや歯ぎしり癖を改善するか、それができなければ、毎日の終わりに偏ってしまった状態をセルフケアしてよりニュートラルに近い状態に一端戻すことが必要です。ただし、上半身の歪みで骨盤が歪んだ場合は、当然下半身にも歪みは伝わっていますので、次に挙げる下半身の歪みの影響も考える必要があります。

・下半身からの影響で骨盤が歪んでいるケース
 顔や手の影響で上半身が歪み骨盤に影響を与える場合は、途中に腕、肩、胸、腹や背中という部位を経由しますので、からだが元気であれば、そこで歪みを吸収して自動調整し、骨盤にそれほど影響が及ばないケースも考えられます。しかし、下半身の歪みは途中で吸収される部位が少ないため、ほとんどダイレクトに骨盤に影響を与えてしまうという現実があります。
 私は骨盤の調整であれ、腰痛の改善であれ、まず足裏やふくらはぎから施術を始めます。最初に足とふくらはぎを整え、その上で骨盤が歪んでいる原因を改めてチェックし直し、次の作業に移るようにしています。足やふくらはぎを施術していると、その人の歩き方や下半身の使い癖がイメージとしてなんとなく頭の中に浮かんできます。そして太ももや骨盤底の筋肉をチェックしていきながら最終的に“どう整えようか”という作戦と施術の段取りが決めて施術を進めていくことにしています。

 下半身の影響で骨盤が歪んでしまうケースは様々ですが、外反母趾、内反小趾、扁平足、足首の捻挫痕、骨折痕、肉離れ痕、手術痕、膝の問題というのは原因となる可能性の高いものです。
 過去の捻挫や肉離れ、骨折痕などは、現在痛みがないから関係ないと考えている人がほとんどですが、痛みがなくとも筋肉がしっかり働けない状態であれば大いに関係します。それらを見直すことは骨盤矯正にとって重要です。

②骨盤の歪みがからだに影響を与えている場合‥‥骨盤自体に原因がある場合
 骨盤自体がからだの様々な不調の原因になっているケースで考えられることは、ケガと骨盤底の柔軟性不足と産後ケア不足などです。
 ケガというのは、打撲、骨折、ギックリ腰、尻もち、手術などです。
 骨盤底の柔軟性は加齢とともに失われる傾向にあります。また座り続けることが多いとやはり柔軟性は失われます。骨盤底が伸びないと全身の筋肉が伸びない、骨盤底が硬くなると坐骨間が狭くなり骨盤が後傾してお尻が下がる、と前回記しましたが、骨盤矯正で骨盤底を整えることは最も大切なことかもしれません。
 時々産後ケアの一環として骨盤矯正のために来店される人がいます。産後三ヶ月前後が一番効果的な時期かもしれませんが、何年経ったとしても産後の骨盤矯正をされた方が良いと思われる人はけっこういます。出産時にはホルモンの力で、通常はガチッとしてほとんど伸びることのない恥骨結節や骨盤の靱帯が大きく伸びて骨盤は上部も下部も拡がります。産後安静にして、ケアを適切に行っていれば通常は3ヶ月から半年ほどで骨盤はほとんど元の状態にもどるとされていますが、今の世の中、産後の安静を3ヶ月も保つことはなかなかできないというのも実情です。ですから、産後の骨盤変化が気になる方は、一度専門家に確認していただいてはどうでしょうか。

・仙骨・尾骨と完骨
 たとえばギックリ腰をして腰がいたくなった場合、ほとんどの人は腰部の痛みを発しているところに湿布を貼って痛みを軽減しようとします。それは正しいことです。痛みのあるところを冷やせば痛みが緩和するからです。ところが、実際に症状を改善しようとする場合は原因のあるところに施術を行わなければ意味がありません。そして統計的に見ますと、その場所は仙骨や尾骨周辺であることがほとんどです。そしてその中でも一番多い場所は仙骨と尾骨の間(関節)の中央よりちょっと右側の部分です。この部分の筋膜にちょっとした傷がついてしまいギックリ腰の症状になってしまったのです。この部分はからだの中心部の中の中心ですから、ちょっと傷がついて本来の働きができなくなっただけで全身に影響が及んでしまいます。
 どうして“中央のちょっと右側”なのか、その理由はわかりませんが、そうなりますと仙骨の上部(仙骨底)は右側に歪みます。仙骨が少し時計回りに回転した状態です。そして右側の完骨(腸骨)は外側に動き、左側の完骨は後傾します。

ギックリ腰でよく見られる状態

 また、尻もちをついた痕で一番気になるところは尾骨です。尾骨が曲がったり捻れている人をよく見かけます。私たち人間は尾骨がすっかり退化していますが、犬が喜びを表現するために激しく尻尾をふりますが、それを見ると尾骨と尾骨を動かす筋肉の強さが連想できます。その尾骨が曲がったり捻れたりしますと、当然骨盤は歪んでしまう、と私は単純に思います。ですから階段で足を滑らせて尾てい骨を強打した、転んで尻もちをついた、あるいは高いところから飛び降りて着地したときにお尻に響いた、という経験があるなら、それはからだの不調の根本原因かもしれません。

 今、定期的に顔の整体を受けに来られている若い女性がいます。顔面全体が少し下がっています。施術した直後はそれなりに良くなるのですが、1週間後に見るとまた下がっています。当人が言うには、今年の3月頃からなんとなく顔が下がったような気になり、いろいろな情報を頼りに自分で顔をいろいろいじっていたら6月くらいから顔の歪みが顕著になってきたということです。私は「何かケガしたとか、尻もちをついたとか、捻挫したとか、そういう心当たりはありませんか?」と尋ねていたのですが、「特に何もありません」という返事でしたので、本人の訴え通り顔や頭部ばかりを施術していました。「施術後と1週間後では状態が変わってしまうのは、よほど頭部や顔面部の筋膜がダメージを受けていたのかな?」と思っていたのですが、先日、二日連続で施術する機会がありました。一日目の施術を終えて、次の日来店された顔を見ると、やはり施術後よりも若干顔が下がっています。それで、もう一度最初から経緯を聞き直してみました。「3月の、ちょっと顔の状態が気になりだした、その少し前に何かあったのだと思うけど、思い出せないですか?」「2月に何か変わった事しませんでしたか?」などと質問をしていきました。すると2月に初体験のスキーをしたということでした。「では、たくさん転んだでしょう?」と聞きますと、「特別痛くはなかったけど、初めてだったのでたくさん転んだ。」ということでした。
 それで骨盤を見ると仙骨の真ん中くらいの筋膜がゆるんだ状態で、仙骨が少し下がっていました。 強い打撲ではなかったのでからだの動きには支障が感じられませんでしたが、軽いダメージを数多く重ねたことで筋膜の状態が悪くなったままになっていたのです。仙骨と後頭骨の関係については前回記しましたが、仙骨が下がると後頭骨は上がります。そして後頭骨が上がると顔面は下がりますので、これがベースにあったため顔への施術を行っても時間とともに顔が少し下がってしまったのです。

 骨盤自体の歪みの中で仙骨と尾骨はこのように重要な位置を占めています。尻もち、ギックリ腰、打撲、それらの傷は場合によっては何年も何十年も残ったままになっている可能性もあります。それによって仙骨・尾骨と左右の完骨の関係がおかしくなった骨盤の歪みとなっているかもしれません。

・骨盤底の硬さ 
 骨盤底は会陰とも呼ばれ、下半身での腹側(陰)と背側(陽)の境目という、からだのバランスをとるという意味で大切なところであり、からだの中心(骨盤)を支える中心の中心というところでもあります。
小さい子供
 赤ちゃんや小さい子供は骨盤底がとても柔らかい状態です。その柔らかさが全身に伝わり、からだのどこもかしこも柔らかい状態です。一方、加齢を重ね高齢になっていきますと骨盤底の柔軟性は失われ、全身の筋肉も硬くなってしまいます。動作にもスムーズさが乏しくなり、しなやかな動きは期待できなくなっていきます。また、骨盤底の筋肉は腹直筋と一体のように繋がっていますので、骨盤底が硬くなると腹直筋も硬くなり伸びが悪くなるため、からだの前面に伸びやかさがなくなり、歩くときも少し前屈みになってしまいます。硬い腹筋に制限されて胃や腸も動きが悪くなりますので、食欲や栄養吸収、便通などに影響が出る可能性もあります。さらに横隔膜や舌筋とも連動しますので、肺活量が減り呼吸が浅くなって滑舌にも影響が出る可能性も考えられます。
 すっかり様式に変化してしまった私たちの生活では骨盤底を伸ばす動作は非常に少なくなっています。和式トイレに座る動作は股関節を大きく使い骨盤底を伸ばす動作ですが、そういうこともすっかりなくなってしまったので、誰もが骨盤底が硬くなってしまう状況であるとも言えます。また年齢に関係なく、仕事で一日中椅子や車に座っているような状況は骨盤底を硬くさせます。

 さて前回も記しましたが、骨盤底が硬くなる、つまり骨盤底筋がこわばりますと左右の坐骨間が狭まり、恥骨と尾骨の間も狭まります。お尻の底がすぼまった体型になってしまいます。
骨盤底のこわばりによるO脚

 そうなりますと、股関節では大腿骨の角度を本来より少し開かないと脚が途中でクロスしてしまいますので立っていられなくなります。本来、大腿骨は膝にかけて内側に向かっているので、左右の膝内側が接近するようになっているのですが、完骨の角度が変わったために大腿骨の角度が垂直に近くなってしまいます。当然左右の膝は離れた状態になりますので、結果としてO脚になってしまうという理屈になります。高齢者の多くがO脚状態に近くなってしまう理由はここにあるのかもしれません。
 ですから施術では骨盤底に柔軟性が戻るようなことを行います。加齢や座り過ぎなどで単純に骨盤底筋がこわばっているだけなら筋肉をゆるめることが主になります。あるいは骨盤底がこわばってしまった理由が他にあるなら、それを主体に施術することになります。
 かかとと骨盤底は関係性がありますので、かかと体重で常にかかとに無理がかかっているような人は、かかとのこわばりを取る施術と、かかと体重を改善する施術を行います。
 また以前に記したとおり、骨盤底筋は腹直筋を経由してはるばる舌まで続いていますので、例えばお腹が冷えて腹直筋がこわばったり、姿勢が悪く下顎が前に出て喉元がこわばったりしますと骨盤底筋にも影響が出ます。それらを全部チェックして根本的な原因を改善するのが専門的な施術の進め方になります。

・産後の骨盤
 出産に関連して伸びるところは子宮、腹部の筋肉と筋膜、骨盤底の筋肉と筋膜、恥骨結合、そして骨盤に関係する靱帯です。出産後、時間の経過とともにこれらが元の状態に戻れば体型的にも骨盤の歪みとしても問題はないことになります。
 私の場合、出産直後の骨盤を触ることはありませんが、産後3~6ヶ月くらいの骨盤を触ることはよくあります。産後3ヶ月前後の骨盤は“フワフワ”といった頼りない感じです。6ヶ月でも“しっかりした骨盤”の状態にはなっていません。しかし1年も経つと骨盤は“カシッ”とした感じになります。すっかり妊娠以前の元の状態です。
 出産に向かって腹部の筋・筋膜を弛め、骨盤の靱帯を弛めるのはホルモンの働きによるものですが、出産後、元の姿に戻すのもホルモンの働きによるものです。ですから、本来はからだの生理機能に任せるのが道理で整体が出る幕はないのですが、腹筋を整え、靱帯を整え、からだが元に戻る過程を邪魔する要素を排除するために施術を受けていただくのは意味のあることだと思います。ホルモンの分泌は脳と関係しますが、仙髄と呼ばれる仙骨部分も大切だと私は考えています。
 また、産後数年経過しても骨盤の開きが戻らないという場合は相談していただきたいと思います。骨盤には構造的な仕組みがありますし、靱帯、筋膜、筋肉といったものが協力し合って正しい骨盤の状態を築き上げています。“グイッ”とやったり、“ボキボキ”とやる骨盤矯正では、産後の骨盤矯正にはならないと思います。

 “私たちのからだの中心は骨盤である”と聞かされたとき、理由は定かでなくても、それは何となく頷けることだと思います。直立二足歩行の私たち人間は、からだの中ほどに骨盤があって、上半身と下半身の境になっていると誰もが認識しているからだと思います。ところが、四つ足動物、例えば犬の(胴長)ダックスフンドのからだの中心を問われたときに、それが殿部の骨盤であるとはあまり想像が及ばないかもしれません。しかし、やはりからだの中心は骨盤であるということを説明したいと思います。

 私たちのからだを考えるとき、人間を含めて動物の進化の歴史を考察しないわけにはいきません。私たちの暮らす地球の歴史は46億年ともいわれています。地球上に生命が誕生して38億年、最初の生命は海の中で生まれたのですが、その後生命体は進化を繰り返し多種の生物に枝分かれしてきたと考えられています。
 
頭進

 私たちは背骨をもつ脊椎動物の一種ですが、今から5億年ほど前に脊椎動物の祖先が海の中で誕生しました。脊椎動物とはいえ、その生物に背骨はまだありません。丸い袋のような状態で海の中を波に揺られながら漂っていたと考えられています。プランクトンなどのエサを口の中からとりいれて、便や尿も同じ口を通して排出していました。口と肛門、つまり頭と尻は最初は同じひとつのものだったのです。その後、動物の本能としてエサを追い求めるように自ら動くようになるのですが、そうしているうちに同じ袋の中にあって頭と口の役割をしている部分が前に前に行きたがるようになり、次第に殿部から分かれ、からだに長さができるようになったと考えられているようです。これを頭進と呼ぶようですが、頭部から殿部が後退したのではなく、殿部から頭部が先んじて離れていったのです。
 つまり、はじめは殿部=骨盤部しかありませんでしたが、次に頭部ができたという順番です。やがてこの生物は私たちが食卓で食べている魚に進化していきますが、魚には背骨と内臓があるように、殿部から分かれて前に伸びていった頭部との間に背骨と肋骨ができ、その腹側に内臓が置かれたという私たちの体幹と同じ構造ができあがりました。
 この理屈を裏付けるように、私たちの全ての筋肉は縮むと骨盤に向かうという現実があります。背筋の全て、腹筋の全ては骨盤が起点(筋肉の起始)となって繋がっているのです。
 ですから、私たちのからだの中心は骨盤であると結論づけることができます。また、四肢と呼ばれる上肢(腕と手)と下肢(脚と足)は魚が海から陸に上がった頃にできますが、上肢は頭部から、下肢は骨盤から発生しましたので、上肢の筋肉は縮むと頭部を経由して骨盤に向かうようにできています。

骨盤が中心である現実
 骨盤がからだの中心であるということは、からだを動かす原動力やエネルギーは骨盤からやって来るということになります。これはなかなか現実として受け入れがたい部分があると思います。たとえば目をまばたきする力は骨盤とは関係ないように思えます。スマホ操作で動かす人差し指の動きは骨盤と関係ないように思えます。ですから全ての動作の力が骨盤からやって来るわけではないのかもしれません。しかし重度のギックリ腰になりますと、しばらくの間からだをまったく動かすことができなくなったりします。ギックリ腰は主に骨盤の中心である仙骨尾骨部の筋肉や筋膜にちょっとした損傷ができたために起こる急性腰痛ですが、ほんのちょっとの傷でも椅子から立ち上がることや、まともに歩くことができなくなってしまいます。この現実をしばしば目撃していますと、骨盤の中心部に小さな傷ができただけでも、からだがすっかり不自由になってしまうのだから骨盤は本当にからだの中枢なんだと感じます。
 骨盤の状態が悪くてもピアノを弾いたり、楽器を奏でたりすることはできるかもしれません。しかし、どこか手先だけの、口先だけの演奏になってしまうでしょう。骨盤がしっかりしていれば、指先にも唇にもからだの芯から力とエネルギーが伝わってきて全身で演奏することが容易にできるかもしれません。そういう意味で、からだの持つ底力は骨盤からやって来るのではないかと考えています。

骨盤の構造
 骨盤は一対の完骨と仙骨と尾骨からなっています。それらを結合しているのは線維性の関節で、後部に仙腸関節が二つ、前部に恥骨結合があります。また完骨は腸骨(いわゆる腰骨)と坐骨と恥骨の3つの部分が結合してできたもので、上部と下部で違う方向を向いているのが特徴です。

骨盤基礎01

骨盤基礎02

骨盤基礎03

 坐骨の底部には下肢の筋肉の出発点(起始部)になる坐骨結節があります。坐骨結節は座る時に座面に接触する部分ですので、下肢の筋肉がこわばりますと「座るとお尻が痛くなる」ということになります。あるいは長時間座り続けて坐骨結節が疲労状態になりますと、下肢の筋肉が張ってきたりします。
 また骨盤は前方斜め上方から見ますとツバのある帽子を逆さにしたような形をしています。腸骨と恥骨と仙骨の上部でできている帽子のツバの部分を大骨盤、その奥の帽子の部分を小骨盤と呼んだりします。大骨盤は腹部、小骨盤は生殖と排泄の部分と考えてもよいかもしれません。

骨盤の内側
 かつて私にいろいろ教えてくださった理学博士の先生(整体の先生ではありません)が「いろいろ偉そうに言ったり、やったりしたところで所詮人間は、地球上の生物としてみれば単なるウンコ製造器に過ぎない」と仰いました。過激な発言のようにも聞こえますが、私はなるほどと感心しました。
 家族や気の合う仲間達と共にする食事は楽しいですし、美味なものを食すと一時幸せな気持ちになります。あるいは、健康のことを考え食材を吟味した食事を摂っている方も多いと思います。しかし、そうして食べたり飲んだりしたものも、喉元を過ぎて食道に入ってしまえば、胃腸が調子悪くない限り、あとはほとんど何の感覚も得られないまま時間の経過とともに便や尿として排泄されるだけです。昨日食べた美味しい寿司も、翌日か翌々日には便という姿になってトイレに流されてしまうだけです。ですから私たちのからだは食べたものを便に換える機械であるという見方もできるわけです。
骨盤内臓断面02

 骨盤は大骨盤と小骨盤の二つに分けられると申しましたが、大骨盤は腹部の内臓を支える役割をしていて、主に小腸が収まる場所になっています。小骨盤には直腸、膀胱、そして生殖機能に関係する子宮や前立腺、卵巣や精巣と性器が収まっています。つまり、からだの中心である骨盤の奥(ここが本当の中心部)には糞尿を排泄するための臓器と子孫を残すための臓器が位置していることになります。
 人生の目的とか、心とか、喜びや悲しみなどの感情などは私たちの精神面ですが、それを除いて肉体的な面だけを捉えれば、私たちが地球上の生命体の一つであることの意味と価値が骨盤から読み取れるかもしれません。つまり、便を作って出すことと子孫を残すことです。
 便を作り出すことは、地球上の生態系に寄与して命をつなぎます。私たちがトイレに流した便は下水処理施設や浄化槽のなかでバクテリアのエサになります。そしてこれらのバクテリアが排出した便や尿は、究極的には土に還って植物が摂る栄養になります。そうして育った植物は私たちの食材になったり、あるいは他の動物たちのエサになります。このようにして生態系は今後も地球から水がなくならない限りずっと維持され続けていきます。
 また、人類という種を存続させるための、つまり子孫を繋いでいくための生殖機能が、からだの最も中心部にあるという事実は、生命体の本能として子孫を繋いでいくことが大切だということを物語っているのかもしれません。
 以上のように肉体的観点でみると、骨盤内部の働きは糞尿を排出することと子孫を産み出すことの二つに集約されるということになります。

骨盤の外側
 骨盤の外側はからだにたくさんある筋肉(骨格筋)の中心という役割があります。
 骨盤前面(恥骨から腸骨の上部)は腹部の筋肉(腹直筋・腹横筋・外腹斜筋・内腹斜筋)の始まり(起始部)になっていて、胸郭(肋骨と胸骨)を経由して胸部の大胸筋・小胸筋・前鋸筋と首前面の筋肉に繋がっていき、下顎の底部(舌筋など)まで続いています。
 
骨盤前面からの腹筋

 骨盤後面の上部は背部の筋肉(脊柱起立筋群・広背筋・腰方形筋など)の起始部になっていて、首の後面を経由して後頭部に繋がっています。もっと細かく云えば、後頭部を越して頭部・顔面部へ下り鼻の下までは背部の筋肉の繋がりです。
 そして骨盤後面と下面(恥骨下部と坐骨)は大腿部(下肢)にある筋肉の起始部となっています。
 つまり上肢(肩甲骨と腕と手)を除くほとんどの骨格筋は骨盤が起点になっているということです。ですから骨盤が歪みますと、からだ中の筋肉が影響を受けてしまい様々な運動系の不具合を引き起こしてしまう可能性があるということになります。

中枢神経としての骨盤
 私たちが健やかな心身を維持するために最も大切な器官は“脳・脊髄と心臓”であることはよく知られていることです。
 ところで、からだを動かす神経には二つの系統があります。一つは自分の意志のままに筋肉を働かすための随意神経、もう一つは自分の意志に関係なく、いわば勝手に働いてからだの働きを調整している自律神経です。随意神経は動物性神経、自律神経は植物神経などとも呼ばれますが、自律神経はからだ(肉体)を快適に維持するための神経であるとも云えます。
 
自律神経01
 中枢神経のことを“髄”と呼んだりもしますが、からだには頭部から順に延髄、頸髄、胸髄、腰髄、仙髄の五つ中枢があります。そして骨盤は仙髄の場所です。また、自律神経は日中優位に働いて、からだを活発にさせる交感神経系と、からだを休めて疲れを癒し、消化・吸収・栄養などの内臓の働きを高める副交感神経系に分かれていますが、五つある髄の中で延髄と仙髄は副交感神経系の中枢です。脳の最下部にある延髄と骨盤にある仙髄が協力し合って、呼吸を整え、からだの疲れを癒す役割を担っていますので、自律神経失調症などと診断される人が多い今日、骨盤の重要性がもっと見直されるべきだと思います。

 私たち人間と他の動物たちと一番違うところは、目に見えない精神性です。感情は他の哺乳動物、犬や猫やイルカや鯨にも備わっていますが、高度に思考を展開し、言葉使って自らを表現するといった点が人間ならではのものなのかもしれません。そのために私たちの脳は他の動物たちよりも遙かに大きくできています。
 ところがその反面、肉体的に見るとからだよりも頭の方が自らを主張する傾向が強くなり、今日では“からだではなく頭で生きている”ような人たちが多くなりました。つまり“からだの中の骨盤”に対する比重がどんどん軽く考えられるようになってきました。昔は「女の子はお腹を冷やしてはいけない。子供が産めなくなるよ。」などとお年寄りが若い女性に対してよく注意していたものですが、今はからだの健康よりもファッション性、つまり自己主張したがる頭の方が優先されいるようです。
 若いときから気にしなければいけない婦人病の数々、子供がなかなかできない現状、科学的には証明されていないかもしれませんが、これらが腹部や下腹部の冷えによってもたらされいる可能性は否定できないと思います。
 
 骨盤が開いたり歪んでいると太ってしまう。ダイエットのためには骨盤矯正が必要。そういったことのために骨盤を整えることは良いことだと思いますが、それだけでなく、機能的にも骨盤がからだの中心であって、普段から骨盤や下腹部を大切にして整えておく必要があるということを考えていただければと思います。
 “骨盤の歪みと矯正”についても近々記していきたいと思っています。

 一度発症するとなかなか治りづらいと思われている症状に坐骨神経痛があります。
 「その足のだるさは、坐骨神経痛と思われます。」と言いますと、ショックを受けてしまう方が多くいます。「神経痛」という響きが“高齢者の病気”であり、“治りにくい”ということを連想させるからかもしれません。足のだるさぐらいでは、もっと気楽に受け取っていただける言葉を選びたいといつも思うのですが、やはり神経痛は神経痛なので、仕方なくそのように説明しています。

 さて坐骨神経痛の軽い症状では、ふくらはぎがだるかったり、太ももやふくらはぎの外側を触ったときに薄皮が一枚挟まっているような、なんとなく他とは違うような感覚異常を感じたりします。多くの人が、むくみによってそのようになっていると考えているようです。むくみの場合は夕方になるとふくらはぎがパンパンになってだるくなるなど、一日の中である時間帯とか、あるいは立ち仕事が続いたなどの作業によって症状がもたらされることが多いのですが、時間帯や作業に限らず一日中だるかったり、あるいは椅子に座るとだるくなるといった場合は坐骨神経痛の可能性が高いです。
 
坐骨神経の走行ライン

 坐骨神経は腰椎の4番、5番、仙骨部から出発し、骨盤(殿部)の梨状筋の隙間を抜けて太ももの中を通り、膝から下ではそのままふくらはぎの裏側を通って足裏まで下るラインと、膝下から外側に出てふくらはぎの外側を下っていくラインの二つがあります。ですから神経痛の症状が進みますと、殿部や太ももの裏側、ふくらはぎの裏側や外側、足先といったところにしびれや痛みが発症します。
 腰椎椎間板ヘルニアでは腰椎4・5番あたりの問題で神経痛になることがほとんどですが、それ以外では骨盤の歪みによる梨状筋のこわばりによって坐骨神経が圧迫されているケースがほとんどです。
 
梨状筋と坐骨神経

 立っていれば大丈夫だけど座るとしびれやだるさが強まる、というのであればまず間違いなく骨盤の歪みが原因であると考えられます。(骨盤に体の重みが掛かると梨状筋のこわばりが強くなる)
 骨盤が歪んでしまう原因はたくさんありますが、坐骨神経痛になってしまうようなものとしては、ギックリ腰をしたことがある、尻餅をついたことがある、ずりっと足を滑らせて太ももの裏側や殿部を伸ばしたことがある、肉離れをしたことがある、などが考えられます。

スリッパがすぐに脱げてしまう、自分の足ではないみたい
 最近来られた女性の方です。坐骨神経痛になってかなり時間が経っていました。病院では脊柱管狭窄症と診断され“手術しか治しようがない”と言われたそうです。手術はしたくなかったので、半ば症状の回復は諦めていたということでした。
 私がみたところ、脊柱管狭窄症ではなく梨状筋のこわばりによる坐骨神経痛でした。太ももからふくらはぎ、そして足先までしびれがあり、足裏がとても硬くなって「自分の足のような気がしない」と言っていました。
 神経痛になってしまった原因を探るため、いろいろお話しを伺ったところ、体操をしていて開脚したとき股関節左側の筋肉を傷めて一時的に動けなくなったことがあるということでした。おそらくこれが元々の出発点だったと思います。それから下半身の使い方のバランスが崩れ、骨盤が歪んで梨状筋がこわばってしまったのだと思います。ですから、施術としては“梨状筋のこわばりをどうやって解消していくか”が最大のポイントです。
 最初は週に2度くらい、それから週に1度のペースで5~6回来店していただきました。まだ完全に良くなったわけではありませんが、お孫さんの出産も重なってこの2週間ほど来店されていません。
 最初の頃は歩くにも、ドスンドスンと足裏全体を上に上げてから降ろすような歩き方でした。足先を上げる、つまり足首を自分の方に曲げる筋肉が作動しなかったのです。(前脛骨筋や長趾伸筋、長母趾伸筋)これは坐骨神経痛に関連する神経障害です。3回目の施術くらいから足首を曲げることができるようになり、歩き方もまぁまぁ見られる状態になりました。神経痛の痛みは改善されていました。ただスリッパを履いて歩くことができませんでした。歩行時に足先を持ち上げたまま保つことができなかったのです。
 直近の施術の後は、それもかろうじてできるようになり、「自分の足のような気がする」と言っていました。それから2週間ほど経った今はそれなりに良くなっているのだと考えています。
 このような事例はまだまだありますが、そのたびに病院での“脊柱管狭窄症”という診断は、あてにならないことが多いとつくづく思います。

たった一回の夜釣りでなってしまった坐骨神経痛
 この方は大工さんです。労働に見合うほど体が強くないので、月に1度か2度来店されてメンテナンスを行っています。ですからこの方の体のことはよく承知しています。ところがいつもとは違うパターンで左側の殿部からふくらはぎにかけての痛みを訴えて来店されました。
 症状的には坐骨神経痛です。しかし、これまで坐骨神経痛になったことはありません。
 「どこか冷たいところに長く座っていたとかありました?」と尋ねました。というのは、お尻の左側の筋肉がたるんでいたからです。殿部の筋肉と骨盤の安定に影響を与える太もも裏側のつけ根にある大内転筋がうまく機能できない状態でした。
 なかなか思い出せないようでしたが、しばらくすると「そういえば、イカ釣りに行った。雨の降る寒い夜で、長い時間ずっと座りっぱなしでやっていた。」ということでした。原因は100%“これだ”と確信しました。大内転筋は骨盤の安定に強い影響を与える大腰筋と連動しますので、お尻の筋肉がゆるんで大内転筋がゆるみ、その連動で大腰筋がゆるんでしまったので骨盤が不安定になり梨状筋がこわばって坐骨神経痛になってしまったという理屈になります。
 ですから施術はひたすらお尻の筋肉や大内転筋の働きを元に戻すことばかりです。話を聞くと4時間ほどずっと座りっぱなしだったということですので、お尻の筋肉はかなりやられています。以前に、真冬に駅のホームでベンチに15分ほど座っていたために坐骨神経痛になっ手しまった人がいました。“こんな些細なことで神経痛になるの?”と思われる人も多いかと思いますが、冷えで筋肉が上手く働けなくなると、骨盤が不安定になり坐骨神経痛や腰痛になってしまうことはよくあることです。
 ちなみにこの大工さんの坐骨神経痛は2度の施術で解決しました。

強い治療を続けたことによって坐骨神経痛が悪化した
 最初はそれほどひどい神経痛ではなく「殿部から太ももにかけツッパリ感や痛みがでる程度でゴルフもできた。」という方が来店されました。
 数ヶ月前に駅のトイレで滑りそうになって踏ん張ったとき「太もも裏の付け根の部分がズリッとなった」というのがきっかけのようです。軽い肉離れを起こしたのだと思います。そしてその後ギックリ腰になり、それから次第に症状が悪化したため整形外科や接骨院での治療を続けていたということです。
 私のところに来店されたときは、右のふくらはぎパンパンで強烈な痛みに鎮痛薬が手放せない状態でした。「この二ヶ月ほど治療を続けていたが、一向に良くならないばかりか痛みが強くなるばかりで‥‥」「腰痛ベルトは効かなくて、今はサラシを巻いて鎮痛薬を飲んで、なんとか仕事ができる状態で。しかし鎮痛薬もこれ以上飲み続けたくないし‥‥」ということでした。
 体をみると、ズリッと伸ばしてしまった右側殿部のつけ根(大内転筋か短内転筋)が機能していない他、右側の太ももや骨盤部、背部まで筋肉がたるみきった状態です。
 「筋肉がみんな疲弊してますけど強い電気治療でも続けましたか?」と尋ねました。すると職場の近くで通っている接骨院では強い痛みをともなうような電気治療を毎回おこなっているということです。電気治療も刺激が強すぎると筋肉を傷めます。以前、家庭用の低周波治療器を太ももにかけてマッサージ代わりにしていた人がいました。刺激を強くすると筋肉がグイーングイーンとなり揉んでいるような状態になるので、毎晩疲れをとるために行っていたようです。そうしたらある日神経痛の症状が現れ、それ以来症状がどんどん悪化したということでした。
 ギックリ腰や肉離れは損傷部分の面積が小さい場合が多いので、改善することはそれほど難しいことではありません。ところが、これらのように太もも全体や腰部や殿部の広い範囲にわたって筋肉が機能しない状態になりますと、回復させるのにとても苦労します。
 この方はゴールデンウィーク中、4日連続で来ていただきましたが、さして施術の効果は見られませんでした。なんとか少しでも良くなって欲しいという思いで施術をするのですが「筋肉がここまでやられてしまうと、そう簡単にはいかない」というのが本音です。
 その後、1日開けて仕事前に来店してもらったとき「なんとなく痛み方が変わってきた」ということです。そして次回、2日開けて来店していただいたときは「鎮痛薬なしでも仕事ができるようになった」ということです。少しずつですが、前に進んでいる実感が本人に感じられるようになったようで希望が見えてきた段階です。(今度は明日3日開けて来店されます)
 “マッサージや指圧をすれば良くなる”、“ほぐせば良くなる”、“刺激を与えれば良くなる”、それは“肩こり”など筋肉が凝った状態の時だけで、筋肉や骨格の状態を正確に把握して適切に対処しなければ逆効果になってしまいます。残念ながら、こういったことで状態を悪化させてしまうことはしばしばあることです。

 坐骨神経痛に対しては、とても神経を使います。なぜなら放っておくと悪化するばかりになってしまうからです。最初は小さな違和感や痛み、軽いしびれから始まりますが、次の段階では明らかな神経痛になり、その状態が進むと足を動かせないほどになってしまうし、じっとしていても耐えられない痛みに襲われるようになります。
 症状が軽いうちに適切な対応をすれば、「神経痛」という響きの印象とは別に、意外に簡単に改善することができます。しかし状態が悪くなってしまいますとブロック注射で痛みを取らなければならない状態になるでしょうし、それは整形外科などの範疇ですので、こういっては何ですが、積極的な治療方法はそこにはないと思いますので、改善までにたくさんの時間がかかってしまうと思います。

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