ゆめとわのblog

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カテゴリ: 体型

 和服の女性は、少し内股気味の方が見栄えも良く、仕草が魅力的だと感じる人も多いかと思います。そんな伝統を心のどこかで引き継いでいるのか、“女の子”が内股であることに対して“気をつけなければならない”と考える人はほとんどいないかもしれません。私も、この仕事に従事していなければ、そんなことはまったく気にもしなかっただろうと思います。
 内股と似ているO脚はスマートさに欠けますし、膝や股関節に負担がかかりますので矯正したいと考える人は多いかと思います。しかし内股も(程度に寄りますが)O脚と同じように、からだに負担が掛かかりますので早めに修正した方が良いと思います。

 仰向けで寝た時に、足のかかとより爪先の方が内側に入ってしまうのが内股の人の特徴の一つです。O脚の人もこの傾向にありますので区別しにくいところですが、立った時に膝の間が拡がってしまうのがO脚の人の特徴です。内股だけの人は立位で膝の間が拡がってしまう感じにはなりません。
 
骨盤男女差

 女性と男性の骨盤や股関節を比べますと、女性の骨盤の方が広くなっている分、左右の股関節の間隔は離れています。大腿骨は離れた股関節から膝に向かって入ってくるわけですが、その角度が男性より大きくなっていますので、女性は男性より内股になりやすい傾向があります。

 さて、内股の弊害について取り上げてみます。
①下肢の内側がとてもこわばり、顔もこわばる
 下肢とは股関節から下の太股、ふくらはぎ、足のことですが、それらの内側の筋肉が強くこわばっているのが内股の人の特徴の一つです。
 内股になってしまう理由として、生まれながらに股関節に問題があり、下肢内側の筋肉がこわばってしまう結果として内股になっている、というのはあると思います。あるいは、女性生来の深層心理として、内股を閉じておきたい(決してガニ股にはなりたくない)というのがあって、無意識のうちに下肢の内側に力を入れていることで内股になってしまうというのもあると思います。
 いずれにせよ、内股の人に見られる下肢内側の筋肉の強いこわばりは腹直筋や内腹斜筋と連動しますので、胸郭の位置を下げたり、喉や首のこわばりにつながります。鼻を含めた顔中心部の不調を招く原因になる可能性もあります。

腹筋と下肢筋肉の連動

 例えば膝のお皿(膝蓋骨)のすぐ上の内側は大腿四頭筋の中の内側広筋がありますが、この筋肉がこわばりますと腹直筋の正中線(中央部)近くがこわばります。すると胸郭の中で胸骨を下に引き下げますが、それによって喉がこわばり、発声や嚥下に不調をもたらす可能性があります。あるいは恥骨を下げてしまいますので、それにともない腹筋全般がこわばったり、恥骨筋がゆるんで、その連動で膝に力が入りづらくなり(中間広筋のゆるみ)、階段を降りる時に不安定さを感じるかもしれません。

内股の筋肉01

 太股中央部の内側には長内転筋があります。おそらく(座位で膝を開かないようになど)内股を意識する人はこの筋肉がもっとも強くこわばっていると思いますが、そのこわばりは内腹斜筋のこわばりにつながります。すると胸郭を下げたり骨盤を歪ませたりすることになりますので、それに伴う不調がもたらされます。そして内腹斜筋のこわばり(塊)は腹痛や便秘の原因になる可能性もあります。下腹部の骨盤周辺に違和感やこわばりを感じて押してみたところ、内部に硬い塊があって痛みを感じ「腫瘍?」などと不安を感じる人もたまにいます。

内股の筋肉02

 太股内側の股関節から膝にかけて薄筋があります。あぐらをかいたり、股関節を開くストレッチ運動をしたときに「突っ張って開かない」と感じたり、痛みを感じる筋肉です。この筋肉のこわばりは股関節の安定と運動に深く関係している腸骨筋のこわばりを招きます。腸骨筋がこわばりますと、鼡径部で血液の流れが悪くなりますので下半身のむくみを招きます。また股関節の前面が伸びなくなりますので、仰向けで寝ると腰部が浮いて腰が痛くなります。うつ伏せや横向きでないと眠ることができないという原因の一つです。

②「ハの字」で歩くことの影響
 内股の人は足の爪先が内側に入った「ハの字」型の足で立ったり歩いたりしているわけですが、すると母趾先の内側と4趾と5趾の踵近くがこわばります。その辺りに力を入れてからだを支えているからです。
 母趾先の内側のこわばりは太股では長内転筋に連動しますので、益々内股が強調されたり固定化されることになります。
 和服に履く草履は、普通に歩くのではなく、内股でつま先をあまり上げることなく歩くのが似合いますが、そのような歩き方は足の内側(母趾側)ではなく外側を前に出すような歩き方です。それによって4趾、5趾の踵付近がこわばり外くるぶしが前にズレます。この状況は骨盤を含めて下半身の筋肉や筋膜の流れを歪めてしまいます。
 「気がスムーズに流れなくなる」「邪気を足裏から発散しにくくなる」と表現しますと怪しげに思われるかもしれませんが、実際そんな感じです。状態の良い人は目を閉じて、太股~膝~ふくらはぎ~足や足裏を頭の中にイメージすることができます。そして、それらが一本のラインで繋がっているイメージを思い描くことができます。しかし骨格が大きく歪んでいたり、筋肉や筋膜の流れが悪い人は、途中までしかイメージすることができません。「右脚は足裏まで一本のラインで繋がるのに、左脚は膝から下が途切れてしまう。意識が通じない。」というような状態になってしまいます。「気が通らない」「気の流れが止まっている」とはこのような状態のことだと思います。

 頑固な内股になっている人の歩き方を観察しますと、つま先立ちで歩いているような感じに見えます。つまり、踵よりも先につま先の方が着地しているような、そんな感じですから歩き方がとても不安定です。
 歩く動作は“片脚立ちを交互に繰り返す連続動作”ですから、全体重が片方の脚に乗った状態でしっかり立つことができなければなりません。そのために重要な働きをしている筋肉の一つに中殿筋がありますが、「ハの字」の人はお尻の筋肉がゆるんでいますので中殿筋を働かすことができません。中殿筋が収縮しますと「お尻にエクボ」ができますが、「ハの字」の人はどんなに頑張っても満足なエクボができません。しかし、そんな人でも両足の踵を付けて、つま先を開いて、つまり逆ハの字の状態にしてしっかり立ちますと、お尻にエクボをつくることが簡単にできます。骨盤もしっかりしますので自然と背筋が伸びて、顎も引かれます。内股の人はこの状態をつくることが上手くできませんので、姿勢を正そうとする時、背中に力を入れるようになりますが、それはからだに無理を強いることですから、やがて何処かに不調が現れるようになると思います。

内股を改善するために
 私の整体の先生は「形にこだわると間違ってしまう」と教えてくれました。ですから、少々O脚でも、少々内股でも、からだに歪みがあったとしても、からだが上手く機能していて不調がないのであれば「個性」と解釈して、無理に矯正する必要はないと思います。
 ところが、からだにいろいろな不調があって、その原因として内股に関連する筋肉の変調があるのであれば、それはやはり改善する必要があると考えます。

①どうして内股になるのか?
 少し内股の30代半ばの母親が時々来店されます。数年前は常に腰痛を抱えているような状態でした。今は腰痛よりも肩こりなどの方が気になるようですが、腰は相変わらず良い状態であるとは言えません。内股による骨盤の歪みが原因している可能性があります。
 「下の子供(幼稚園生)がすごい内股で‥‥」と仰いました。「女の子でしたっけ?」と尋ねますと「男の子なのにすごい内股で‥‥」ということでした。“骨格の遺伝性”が原因として考えられるのかな、などと思いました。
 私の娘も少々内股です。子供の頃から“立ち方”に不安を感じていました。膝の裏をすっかり伸ばしたような立ち方(反張膝) をしていました。O脚の人はこのような立ち方をよくしています。彼女は子供の頃からの姿勢によってO脚にはなりませんでしたが内股になってしまったタイプです。大人になった現在は反張膝で立つこともないのですが、体型は少々内股です。(家系的に他に内股の人はいませんので、遺伝性ではありません。)

 現在、“とても頑固な内股”の高齢の女性が来店されています。そのお嬢さんも強い内股で、はるばる遠くから来店されました。母と娘と、ともに強い内股ですから先天性、遺伝性のものと考えられますが、お嬢さんの内股は私も初めて体験するほど強いものでした。脚を外側に回旋させることはほとんどできず、“あぐらをかく”もできません。来店された主目的は内股を改善することではなく、他の耐えきれない不調を改善したいということでしたが、「この内股を何とかしないと良くならない」と私は判断しました。そしてこんなに内股が頑固な状態になってしまったのは、“先天性内股”+”内股状態で何十年も過ごした結果”だと思いました。

 内股の出発点は股関節ですから「股関節が異常?」と思われ、整形外科でレントゲンを撮り、医師の診断を受けた経験のある人も多いかと思います。骨と骨の関係として「関節が浅い」とか、角度が普通ではないとか、いろいろな診断があると思います。整形外科は画像を元に診断をしますが、骨(骨盤)と骨(大腿骨)の関係性だけで内股が悪い影響を及ぼす程になっているというのではなく、何の対策もしないまま長年放置したことによって関係する筋肉の変調状態が固定化してしまったために、からだに不調をもたらしていると考えることもできます。そうであるならば、筋肉の変調状態を元々の状態に戻すことによって固定化された内股に柔軟性が戻り、子供の頃のように「形は内股だけど、からだの機能に問題はない」という状態にできると思っています。

②内股を形成する筋肉のこわばり

股関節の外側にある小殿筋と大腿筋膜張筋のこわばり

内股_小殿筋と筋膜張筋「こ」

 内股状態は主に下肢内転筋がこわばっていることによってもたらされますが、骨盤の外側にある二つの筋肉が強い影響力を持っている場合があります。それは小殿筋と大腿筋膜張筋です。ただ、小殿筋の主な働きは股関節で“大腿骨を外に開く(股関節の外転)”働きであるとされていますので、内股とは反対の動きになります。つまり、小殿筋がこわばるとガニ股になりますので、私の見解に反対の専門家も多いかと思います。ところが、小殿筋には股関節を内旋させる(大腿骨を内側に回旋させる)働きもあります。同様に、大腿筋膜張筋も大腿骨の外転と内旋の働きをします。
 そして実際、内股の人は小殿筋、大腿筋膜張筋がこわばっているのですが、それを骨格的に当てはめてみますと、股関節で太股を開きながら内側に捻った状態となります。本人は脚を開きながら内側に捻っているという意識は持っていないと思いますが、筋肉の状態を観察しますとそのように解釈することができます。
 普通の状態の人が、この状態(脚を開きながら内側に捻る)を再現しようとしますと、踵の外側~足の小趾側にかけて強く力を入れることになりますが、実際、踵の外側の強いこわばりが小殿筋のこわばりに繋がり、足の小趾側のこわばりが大腿筋膜張筋のこわばりにつながります。
 ですから、内股の人の特徴である股関節での大腿骨の内旋を改善しようとするときの一番目の施術は踵外側筋膜と足の小趾側(4趾、5趾間)のこわばりをほぐすことになります。
 先ほど話題に出しました大腿骨をほとんど外旋させることができなかった女性は、踵の外側の強いこわばりを指圧してゆるめたことで、大腿骨を外旋させる動きができるようになりました。そして、この踵の外側は反射区としては卵巣にあたりますが、この方は卵巣嚢腫を経験しています。もしかしたら偶然一致しただけかもしれませんが、強い内股で長年過ごしていたために踵外側が強くこわばってしまい、卵巣の反射区が血行不良状態となり卵巣の病変を招いてしまった可能性も否定できないと私は考えています。

下肢の内転筋のこわばり
 上記で説明しました小殿筋と大腿筋膜張筋は内股の人だけでなくO脚の人もその他の人もこわばっていることが多い筋肉です。特徴としては股関節で大腿骨が少し外に飛び出しているように感じる(骨盤から太股が外に出っ張っている)、太股が内側に捻れている、あるいは太股外側の筋肉がボーンと張って目立っている、というのがあります。
 内股の人はO脚の人と比べますと膝の間が離れているのではなく内側に寄っていることが特徴ですが、それは太股内側筋肉の緊張やこわばりによってもたらされます。ご自分では太股内側に力を入れているつもりはまったくなくても、自然とこわばった状態になっています。
 こわばっている筋肉について少し説明しますと以下の通りです。

a.内側広筋のこわばり‥‥膝のすぐ上の内側が硬くなっている

内股_内側広筋「こ」

 内側広筋は大腿四頭筋の中の一つですので、学問的には内転筋の中に含まれていません。ですから、“内股”とは特に関係のないように考えられているかもしれませんが、実際は非常に深い関係があります。
 内側広筋は膝周辺ではスネの骨(脛骨)の内側に筋膜を伸ばして付着しています、ですから内側広筋の膝周辺部がこわばりますと、脛骨を内側に内旋させながら引っ張り上げるように歪ませます。そして、その流れは脛骨前面内側の筋膜を通して足首に同じような歪みをもたらします。ですから内股で内側広筋が強くこわばっている人は、たとえば仰向けで寝たときに、単に足が内側に捻れて足が「ハの字」になっているだけではなく、内くるぶしから土踏まずにかけて引き上げられているような、上を向いているような状態になっています。
 「足首周辺でエネルギーの流れは止まってしまうので、排泄すべき気をうまく出すことができない=デトックスできない」と私は感じます。
 内側広筋のこわばりは、足では母趾先の内側のこわばり、手では小指つけ根の内側のこわばりと関係が深いので、それらをほぐすことが施術方法の一つです。

b.長内転筋のこわばり‥‥膝をくっつける意識が強いとこわばる

内股_長内転筋「こ」

 太股中程の内側にある内転筋で、こわばっている人の多い筋肉です。内股の人のこの筋肉が強くこわばりますと太股の上1/3から膝にかけての部分がグイッと内側に捻れます。膝のお皿(膝蓋骨)が内側に入っている人は、長内転筋のこわばりによる可能性が高いです。女性が椅子に座って膝が開かないように内転筋に力を入れるとき一番働く筋肉ですので、デスクワークをしている女性の多くはこの筋肉がこわばっています。そしてその影響は下半身のむくみ、お腹の硬さ他、いろいろな不調をもたらします。
 そして、長内転筋のこわばりで重要なことは、この筋肉の連動が足では母趾外転筋、ふくらはぎでは後脛骨筋につながっていることです。

 母趾外転筋は踵の内側から母趾の側面と下面を通って外反母趾で痛みを出すところに繋がっています。ですから母趾外転筋がこわばるような歩き方(外反母趾の人が行っている母趾を捻って地面を蹴る歩き方)をしますと外反母趾が痛み出すとともに踵の内側も硬くこわばります。

前脛骨筋と後脛骨筋の拮抗関係
 
 さらに連動している後脛骨筋もこわばるのですが、そうなりますと土踏まずの踵寄りの部分(舟状骨)が足首の方に引き上げられます。見た目は扁平足の反対で、ハイアーチのようになるのですが、それは良いことではありません。筋肉の拮抗関係で前脛骨筋がゆるむため土踏まずの指先側(母趾中足骨)が落ちてしまいます。そして指先は甲側に曲がりますので、ハイヒールの靴を履いているわけでもないのに足の形がそのような感じになってしまいます。これでは足の母趾がしっかりしませんので、足裏の全体感として力不足になってしまい、指先に必要以上に力を入れて歩くようになってしまいます。足趾は曲がり、足趾のつけ根部分にはタコができてしまいます。

内股による母趾の捻れ

 内股の人は、足の小趾側指先の方から着地するような歩き方になってしまいますので、母趾を効率よく使うことができません。外反母趾でもないのに母趾先を捻って地面を蹴りますので、母趾の第1関節の2趾側が強くこわばってしまいます。見た目では母趾の内側が地面の方に捻れて落ち込んでいるような感じになります。この状態は母趾外転筋と後脛骨筋をこわばらせ、なお一層長内転筋のこわばりを助長する結果を招きます。

c.薄筋のこわばり‥‥膝裏や股関節の伸びが悪くなり腰痛を招く可能性

内股_薄筋「こ」

 太股内側の真横、股のつけ根(恥骨近辺)から膝にかけて細長い薄筋があります。開脚などのストレッチ運動のときに、開脚にストップをかけてしまう筋肉です。この筋肉がこわばった状態ですと、あぐらの姿勢が辛くなったり、股関節を開く動作が気持ちよく行えません。そして重要なことは、この筋肉が骨盤内にあります腸骨筋と連動関係にあることです。腸骨筋はとても強力な筋肉で、腿上げ運動で働いたり、仰向けで寝た状態から腹筋を使って起き上がるときに股関節で上半身を持ち上げる働きをします。座ることの多い仕事の人は腸骨筋がこわばっている可能性が高いですが、すると鼡径部で血管を圧迫することになりますので、下半身がむくんでしまいます。
 ”内股の人は薄筋が強くこわばっている”ということではないのですが、時々薄筋が強くこわばった内股の人を見かけます。そういう人は本当に脚の内側に力を入れて動作をしているのかもしれませんが、膝裏が伸びませんので仰向けで寝ても膝が少し曲がった状態になっていますし、膝裏が腫れぼったくなっている人が多いです。

短内転筋
 小さな筋肉ですので目立ちませんし、解剖学の解説書などでもあまり取り上げられていませんので情報量が少な筋肉です。恥骨に深い部分と大腿骨の上部を繋いでいますが、その位置関係からこの筋肉が収縮しますと大腿骨を外側に回旋します(股関節の外旋筋)。“骨盤と大腿骨の上部を結ぶ短かく丈夫な筋肉”であるという共通点、方や外旋と内転(短内転筋)、方や内旋と外転(小殿筋)という正反対の働きをするという点で、短内転筋を考える上では小殿筋を常に念頭に入れなければならないと私は考えています。

 上記で説明した薄筋がこわばった人はあぐらの姿勢が苦手ですが、短内転筋のこわばりが強い人はあぐらの姿勢ができないかもしれません。「股関節の根元が開こうとしない」という言葉があてはまると思います。
 まだ、確定的に言える段階ではありませんが、短内転筋と足の母趾と2趾の間の骨間筋は連動性があるように感じています。

③内股を改善するための施術
 今回は内股に関係する筋肉について、いつもより細かく説明させていただきました。内股の程度は様々ですが、ある人はこれらの筋肉の一つだけが変調をおかしくなっているだけかもしれません。あるいは、全部の筋肉がこわばっている”強烈な内股”と表現できるような人もいます。
 私は施術者として、おかしな状態になっている筋肉を一つ一つずつ全部修正することが内股を改善するための王道だと考えています。O脚や外反母趾などに対しても同様ですが、骨格ばかりに注目してコルセットや装具を使ったりして矯正する方法は、私は採用しません。
 筋肉は必ず連動します。内股のある筋肉がこわばりますと、必ず腹部や手や顔の何処かがこわばります。ですから、内股の筋肉のこわばりをそのままに形だけ整えたとしても、からだの不調は改善しないということになってしまいます。筋肉は形状記憶するような要素を持っていますので、長い年月こわばった状態の筋肉を修正しようする場合、それは時間と忍耐力が必要となります。ですから骨格矯正や歪みの矯正を望まれて来店される方々の中には、時間がかかることに耐えきれず途中で止めてしまう人も多くいます。
 今、おかしくなったのなら、今、元の状態に戻せるかもしれません。しかし内股の場合は、長年に渡る状態進行の結果、からだに不調や不具合が現れたということがほとんどですから、改善のためには忍耐がどうしても必要になります。そのように考えていただきたいと思いますし、根気強く筋肉の変調を改善していけば、内股とは全然関係ないと思われる目の不調が良くなったり、呼吸が良くなってリラックスできるからだになったりという副産物が必ず得られます。内股=つまり”からだの中心ラインの強いこわばり”を改善することは、日々の生活に快適さをもたらすことにつながります。
 
 犬や猫、牛や馬などほとんどの哺乳動物は四つ足です。爬虫類はもっと地面に這いつくばるように動いていますが、それは地球の重力の影響をあまり受けないようにするためだと考えることもできます。ところが私たち人間はすっかり重力に対抗するように2つの脚だけで立って歩きます。ですから下肢にかかる負担はとても大きいと言うことができます。
 私のところに来られる方々は、「調子がおかしい」人がほとんどだからかもしれませんが、脚が“棒のよう”だったり、パツンパツンにむくんでいたり、足や足趾に無理が掛かっている人ばかりです。おそらく”普段がそのような状態”なので、ご自分では“下肢がおかしな状態”だという認識はないのかもしれません。そんな状況の一つ現れがこのたび取り上げた内股です。
 私は施術者として「もっとリラックスしてスッキリした脚になってほしい」と願いながら施術を行っています。そのためには、内股状態の強い人は、内股状態を改善する必要があります。骨格の状態が良くならなければ、いくらマッサージをしても、リンパを流しても、その場限りのものに終わってしまいます。
 膝関節はどこもおかしくないのに正座ができない人がいます。膝を深く曲げると太股やふくらはぎに突っ張りを感じ、その状態を保持することができません。その方は70年以上内股状態で過ごしてきました。下肢の筋肉が形状記憶のように頑固になっていますので、何度も何度も施術しなければなりません。それでも、一月くらい経つと短時間であれば星座ができる状態になりました。そしてもう少し施術を続けていけば、本人の願いである正座が再びできる状態になることでしょう。そしてやがて筋肉の形状記憶状態も解除されて、もっともっと楽に、歩いたり、立ったり、座ったりすることができるようになると私は思っています。

 肩甲骨の上部に棘上筋(キョクジョウキン)という筋肉があります。筋肉のガイド書などによりますと、肩関節を安定させる筋肉のひとつであり、腕を横に開く=肘を横に上げる(上腕骨の外転)働きをする筋肉と解説されています。
 “肩こり”は私たちにとって厄介な問題ですが、肩こりの根深い芯はこの棘上筋にあるのではないかと私は最近考えるようになっています。
 “肩こり”は幾つかのタイプに分かれます。
 
肩こりを感じる主な筋肉
 
 首の後側の首筋から肩甲骨にかけての“こり”は肩甲挙筋のこわばりが主な原因で、目の酷使や疲労、肩甲骨のズレなどによってもたらされます。
 皆さんが「肩が凝った!」と言って、ついつい手を当ててしまう肩上部は僧帽筋の“こり”であり、運動不足であったり、肩に力が入りやすい性格の人によく見られる症状です。
 首の横の深い部分、鎖骨の後ろにある凹みや、その奥から首の横にかけてガチガチに硬くなり首を動かすこともつらいと感じる場合は斜角筋や胸鎖乳突筋のこわばりであり、歯ぎしりや噛みしめの癖と深い関係があります。
 少し背中側の両肩甲骨の間や肩甲骨内縁に感じる違和感やハリや痛みは菱形筋のこわばりによるものですが、肩甲骨のズレが一番の原因ですので、それを直さない限り、いくら揉みほぐしても解決しません。

棘上筋01

 さて、棘上筋は肩甲骨の上の方の凹み(棘上窩)にありますが、絵で見るイメージより実際は太く強い筋肉です。「いつも肩に何かをしょっているように感じる」「いくらマッサージしても肩の芯の”こり”が取れない」と感じているのであれば、それはこの筋肉の凝りやこわばりによる可能性が高いと思います。
 棘上筋は角度的に、肩上部の方向から指圧するようにしてほぐすことが適していますので、通常のマッサージでは“表面を舐める”程度しか力を及ぼすことができません。マッサージを受けると“痛気持ちいい”と感じるかもしれませんが、“こり”を改善する効果は期待できないと思います。
 私は指圧によって棘上筋の凝りやこわばりに対応していますが、指圧を始めた最初の頃は「痛いけど気持ちいい」とほとんどの人が仰います。ところが指圧によって表面の凝りが取れ、深部に圧が及んで行きますと「痛~い!」となります。通常、だいたい3分程度は持続的な指圧を行っていますが、それでもなかなか芯まではほぐれません。人によっては10分くらい指圧し続けることもありますが、それでも満足にほぐれなかったりします。それくらいこの筋肉の凝りやこわばりは頑固です。私たちが肩こりと長く付き合っていかなければならない理由はここにあるのかな? などと感じています。

棘上筋の“こり”と“こわばり”
 まず最初に私が使い分けて表現している“こり”と”こわばり”について簡単に説明します。“こり”は筋肉内に含まれている血液や水分などの流れが滞ってしまい、内圧が高くなってコチコチに硬くなった状態を言っています。「中身が詰まりすぎた状態」とイメージしていただければと思います。“こわばり”は筋肉自体が収縮して硬くなっている状態、あるいは収縮する方向に力が働いていて“張っている状態”を言っています。筋肉を使いすぎると硬くなりますが、それは“こわばり”状態です。筋肉が何かの力で引っ張られますと、伸ばされたくないので縮む方向に力が作用します。この状態も“こわばり”です。ストレッチ運動をして筋肉を伸ばしていきますと、あり段階で痛みを感じ「これ以上伸ばすことは無理」と感じたりしますが、それは筋肉が弛緩伸張状態からこわばりに転じたということですので、それ以上伸ばし続けると筋肉を傷める可能性がありますので気をつけなければなりません。
 “こり”は内圧が高い状態、”こわばり”は縮んで伸びない状態、と大雑把にイメージしていただければよいと思います。

 さて、棘上筋のこわばりについて考えてみます。使い過ぎるとこわばり、余計なテンションがかかるとこわばりる、といった観点で考えてみましょう。
 棘上筋は肩甲骨と腕(上腕骨)をつないで肩関節の安定に貢献し、肘(腕)を横に上げる(上腕骨の外転)働きをすると説明されていますが、実は地味な働きをするインナーマッスルです。ですから、実際には肘を上げるという表だった動作よりも、上げた肘を降ろさないように保持する働きをしていると考えた方がよいと思います。
 例えば、本やノートに目を近づけてペンを使い続けている学生は、脇を開いた(肘を上げた)状態で字を書いているわけですが、この姿勢は棘上筋を使い続けている姿勢です。
 (以前に取り上げた)“首肩に力が入りやすいタイプ”の人は、親指と人差し指を中心に物を持つ傾向がありますが、そうしますと自然と脇が開いてしまいます。それはつまり、棘上筋を使っているということです。パソコンのキーボードを打つ時に肘が上がっている人は棘上筋を作動し続けているということです。

 また、棘上筋は腕を肩にしっかり結び付けて肩関節を安定させる大事な働きをしています。例えば重い荷物を持って腕が肩から引き離されるような負荷が掛かりますと、棘上筋が収縮して腕を肩にしっかり留めようとします。この時、引っ張る力が強すぎて棘上筋が耐えきれなくなりますと“腱板損傷”などを起こしやすい状態になり、四十肩や五十肩など肩関節周囲炎になることがあります。
 重い物を持つことの多い人、肩関節周囲炎の人や、かつてそうだった人、そういう人は棘上筋がこわばっているか、あるいは反対に疲弊して筋力が発揮できない状態である可能性が高いと思います。

棘上筋の“こり”
 棘上筋は“肩こりが辛くて思わず手を当ててしまうところ”より少し下の深部にあります。ほとんどの人は凝っていますので、その部分を指圧しますと心地良い痛さを感じます。ところが、この筋肉はイメージ以上に厚みがありますので、深部深部へと指圧をすることができます。そして深部は表層以上にこわばりが強くなっていますので、指圧を続けていますと“心地良い痛さ”から”とても痛い”に変わっていきます。
 また、長さも肩甲骨内縁(背骨側)から肩関節付近まで10㎝以上ありまして、内縁側の方が分厚くなっていますので、そのことを念頭に満遍なく指圧してほぐすことが効果的です。指圧をしている時は痛みを感じますが、少しでもほぐれますと肩から荷が降ろされたような感覚になると思います。
 肩の上面にある筋肉(僧帽筋)のこりはマッサージなどで揉みほぐすことができますが、棘上筋は深部にありますし、角度的に背中側からのマッサージではほぐすことが難しいですから、持続的な指圧でほぐすことをお勧めします。

棘上筋のこわばりはO脚やガニ股を招く可能性
 からだの骨格筋には連動しあう仲間の筋肉というものがあります。棘上筋は肩関節の一番深層にある外転筋ですが、股関節で同じ条件をあてはめますと小殿筋が該当します。そして、実際、棘上筋と小殿筋は連動しあっています。つまり、棘上筋がこわばっている人は小殿筋もこわばっているということです。小殿筋は股関節で大腿骨を外転させ、股関節を外に開く働きをしますので、棘上筋がこわばっている人は股関節が開いた状態になりやすく、股間が広がった体型、ガニ股、O脚になりやすいということになります。

ジャイアン

 ドラえもんのジャイアンは棘上筋と小殿筋がこわばった人を表しています。からだが太いか細いかは別にして、このような体型の人を見かけることがあると思いますが、それは改善できないものではなく、棘上筋や小殿筋を整えることによってスマートな状態になる可能性があります。

インナーマッスルとしての棘上筋
 インナーマッスルを文字通り解釈しますと、体表ではなく、体幹の骨格に最も近い、深部にある筋肉ということになります。ざっくり表現しますと、体表にある表層の筋肉は素速く大きな動作を行う働きをしていて、深層にある筋肉は骨格を支え、表層の筋肉が働きやすい状態を築く役割をしていると言うことができます。筋肉は骨格を足場に、自らを伸縮して骨格自体を動かし、からだの動作としています。ですから骨格がグラグラして不安定な状態ですと、上手に伸縮することができなくなり、からだの動作が不安定になります。インナーマッスルは、そうならないように骨格を安定させる働きをしています。
 棘上筋は肘を横方向に上げ、脇が開いた状態を保持するために働きます。例えば日曜大工で、ドライバー(ネジ回し)を使ってネジを回すとき、普通は肘を少し浮かせ状態で作業を行います。脇を閉じた状態では手先だけの動作になってしまい力を入れてネジを回すことができません。この、肘を浮かせた状態は棘上筋の働きによって保たれています。ですから、もし棘上筋が損傷して十分に働くことができなくなりますと、ネジ回しも思うようにできなくなってしまうということになります。

三角筋と棘上筋01

 棘上筋の表層には三角筋があります。肘を上げる動作では棘上筋とともに三角筋が使われますが、動作の主体は三角筋の方になります。三角筋の中部線維が収縮することによって肘を直角近くまで上げることができます。ところが上げた肘を、その状態で保持する場合は主役が三角筋から棘上筋に移ります。例えば肘を直角まで上げた状態を2分間くらい保つとします。最初の内は三角筋が使われていることが実感できますが、時間の経過とともに肩甲骨の上部が気になりだし、そこが疲労を感じるようになります。この状態が長くなりますと“肩こり”になりますが、それは棘上筋が”こわばった"ということです。
 
四十肩や五十肩(肩関節周囲炎)と棘上筋
 棘上筋は太くて丈夫ですから、そう簡単に疲弊して能力が極端に低下することはないと思います。ところが強い衝撃などによって損傷したり、他の筋肉との関係で酷使状態となって働きが悪くなったりすることはあります。
 肩関節が脱臼したり、あるいはそれに近い状態になった時、棘上筋が損傷することはあります。病名としては“腱板損傷”と診断されるかもしれません。(普段持ち馴れない重い荷物を持つ時は注意が必要です。)
 肩関節は棘上筋を含め、他の回旋筋腱板(肩甲下筋、棘下筋、小円筋)によって脱臼状態にならないように支えられていますが、これらの中のどれかの筋肉の働きが悪くなりますと、棘上筋にかかる負担が増えますので、棘上筋は酷使状態になります。その状態が長く続きますと、やがて負担に耐えられなくなって炎症を起こし、筋肉の能力が極端に低下する可能性があります。こうなりますと肩関節を正常に維持することができなくなり、いわゆる四十肩、五十肩と呼ばれる肩関節周囲炎となってしまいます。棘上筋は肩関節の安定に対して貢献度の高い筋肉ですから、棘上筋の損傷や疲弊による肩関節周囲炎は重症化します。腕が肩からぶら下がった感じになり、ただ立ったり座ったりしているだけでも痛みを感じ続けるようになってしまう可能性があります。
 ですから「棘上筋が損傷したかも」と感じた時には、なるべく安静にして筋肉の回復を待ってください。揉みほぐしたり、リハビリ運動などをしてしまいますと逆効果になって重症化への道を進んでしまいます。痛みをこらえながらの「関節が固まらないように動かさなければならない」は、この状態では全くの逆効果です。
 棘上筋の損傷や疲弊状態では、腕が肩関節から少し落ちた状態(上腕骨が肩甲骨から離れる)になりますので肩関節の動きが悪くなったり、他の筋肉に負担が掛かって痛みを感じたりします。そんな時の対処法としては、肩関節を安定させる意味で肩上部から上腕の外側面にキネシオテープを貼ることをお勧めします。それだけで働きの悪くなった棘上筋を補ってくれますので、肩関節は少し安定します。ストレッチや変な運動療法などをするよりも、テーピングをして1~2週間ほど余計な負荷ををかけることなく安静に過ごしていただいた方が筋肉の回復が速いと思います。2週間程度関節を動かさなくても固まってしまうことはありませんので、筋肉が回復してから運動を始めてください。

 私たちは、精神的にも肉体的にも“実は頑固な存在”だと、私は思っています。いろんな人を施術していますと、“こり”というのは肉体的頑固さの象徴なのかもしれないと思います。そして、もしかしたら肉体的頑固さの“根っこ”は棘上筋なのかもしれないと最近感じ始めています。棘上筋のこわばりや硬さはなかなか取れないのです。少し緩和したかな、と思っても2~3日後にはまた硬い状態に戻ってしまいます。
 棘上筋がコチコチに硬くなったとしても、それだけでは、“肩こり”として感じることはないかもしれません。「押されるとそんなに凝っているんだ! と感じるけど」というのがほとんどの人の反応です。
 しかし、「もし、棘上筋のこわばりや硬さが解決すれば、この上なく“肩が軽い”という感触を感じてもらえるのかもしれない」という思いの元、なんとか効率的なやり方はないかと模索している現在です。

 足裏(足底)やカカト(踵)がとても硬くなっている人がたくさんいることは前にもお話ししました。私は、腰痛や下半身に症状を抱えた方はもちろん、頭痛や首・肩のこりの人であってもほとんどの場合、足裏やふくらはぎを施術します。そして、「どうしてこんなに硬くなってしまうのだろう?」と思うことがよくあります。
 そしてたどりついた一つの見解が、“カカト重心の人が多い”ことです。私たちが普段立ったり歩いたりしている地面が硬いコンクリートやアスファルトなので自ずと足底は硬くなってしまうということを以前に記しましたが、それに加え、カカトで立っているためにどうしてもカカトが硬くなってしまうのだと思います。

カカト重心の人の特徴
 カカト重心の人の外見上の特徴があります。(すべてがあてはまるわけではありませんが)

①反り腰
 本人は背筋を伸ばして良い姿勢を保とうとしているのだと思いますが、腰の上部を反らせてしまうとカカトの方に重心が移ってしまいます。

②首が前に出ている
 肩甲骨の位置はカカト重心を改善するための決め手の一つです。肩甲骨が後方にあるとカカト重心になってしまいますが、このような人はバランスを維持するために頭部を前に出すようになってしまいます。「肩甲骨が後ろにあるので顔が前に出る」と言った方が解りやすいかもしれません。肩甲骨は鎖骨と対になっていますので、肩甲骨が後にある人は正面から見た時に鎖骨が埋もれてしまってよく見えないか、存在感が乏しい状態になっていると思います。首が前に出ていて鎖骨がハッキリ見えないような人は、カカト重心である可能性が高いと言えます。

③ガニ股歩き
 立った状態で意図的にカカトに体重を乗せようとしますと(少し後に反ろうとしますと)、膝の内側に力が入らなくなり膝が少し開いた状態になります。この状態で歩きますと、必然的にガニ股歩きになってしまいます。
 カカト重心の人は、常に後方から何かに引っ張られているのと同じ状態ですから、どうしても膝が外に向かってしまうような歩き方になってしまいます。女性の方で、それが気になる人は意図的に膝を締めて歩こうとしますので内股歩きのようになりますが、それはからだに無理を強いることになりますので、カカト重心を是非改善していただきたいと思います。

カカト重心の弊害
 カカトに体重が乗っているということは、後から何かの力で引っ張り続けられているようなものです。ですから前に進むためには普通の状態以上に力が必要になります。それはからだに疲労を蓄積しますし、筋肉に無理を強いる結果を招きます。また、カカトで立っているので、からだはバランスをとるためにいろいろ不自然な状態になります。

カカト重心の人2

 下半身の方から見ていきますと、後に倒れないようにするために腰や下腹部を前に出すようになります(=腹が出る)。そしてその反動として背中を反らせますので腰部や背中の下部にハリや緊張を感じるようになります(=反り腰、慢性的腰痛)。そして肩甲骨が後に位置するようになりますので首や頭が前に出て猫背になってしまいます。(上述の通り)

 足底では、カカトで立っていることは不安定ですから、自然と足の指(足趾)を曲げて足趾に力を入れて、足趾で踏ん張ってからだを支えるようになります。それは足底の筋肉に緊張状態をもたらしますので、カカトだけでなく足底も硬くなってしまいます。また足趾の筋肉はふくらはぎにつながっていますので、ふくらはぎも硬く太くなり血流も悪くなります。この状態は、足の冷えやむくみの原因の一つであると考えられます。

 足趾が曲がる=足趾に力を入れて立ったり歩いたり、あるいは座ったりする状態は、腰痛の原因になります。O脚、外反母趾、内反小趾等々下半身の問題の原因になるだけでなく、顔や首から力が抜けない、呼吸が悪いなどの問題にも絡んできますので、カカト重心は是非改善していただきたいと思います。

カカト重心と、硬いカカト、曲がった足趾との関係性
 「扁平足はからだが疲れやすい」というようなこと聞いたことがある人も多いと思います。足底には縦と横にアーチがあって、立ったり歩いたりする時にクッションのように働いてくれます。この仕組みによって地面からの衝撃は和らぎ、私たちの重み(体重)は分散されるので足をはじめからだの骨格が護られるようになっています。扁平足の人はこのアーチの働きが乏しくなってしまうので、足腰に掛かる負担が増えてしまい、“疲れやすい”、”故障しやすい”となってしまいます。
 ところが、この原理は重心の位置が良いところにある人に通じる理屈だと言えます。カカトに重心のある人の場合、足底のアーチがちゃんとしていたとしてもクッションの役割があまり果たせなくなってしまいます。

足に掛かる重心と足底_1

 重心が良い位置(私は足首の前側、足の甲の出発点くらいだと思っています)にある人の場合、体重の重みによって縦アーチが沈みますが、それによって重みは爪先側とカカト側に分散されます。足底の筋肉は伸ばされ、合わせて足趾も伸びます。重みが掛かることによって足が平たく引き伸ばされるようになります。

足に掛かる重心と足底_2


 一方、カカトに重心がある人の場合、立った時に爪先側が少し浮いたような状態になります。この状態は不安定ですので、自ずとからだは足趾を曲げて立位の安定を保つようになります。誰かに前方から押されて後に倒れそうにバランスを失った時、私たちは足趾をギュッと曲げて倒れないように頑張りますが、これと同じようなことがカカト重心の人には起こっていると考えていただければ解りやすいかもしれません。足趾を曲げることは足底の筋肉を収縮させることと同じですので、足底は硬くこわばった状態になります。また、重心も足底の力もカカトに集まりますので、カカトはとても硬くなってしまいます。

 カカトが硬くなるとどうなるのか? という疑問に全部答えられるわけではありませんが、幾つかの不都合については確認しています。
 カカトの内側にはふくらはぎの深部にある後脛骨筋と長趾屈筋の腱が通っています。また足底の母趾外転筋の出発点でもあります。これらの筋肉は太股の内転筋(長内転筋)と連動関係にありますので、カカト重心の人は太股の内側がコチコチに硬くなるのと同時に骨盤が後に傾きます。腹部では内腹斜筋もこわばってしまいますので、お腹の伸びやかさが失われたり、時には便秘になったりするかもしれません。
 また、カカトの外側には股関節の外側に位置する筋肉(中殿筋、小殿筋、大腿筋膜張筋)と関係の深い部分がありますので、股関節で太股の骨が出っ張ったような体型になったり、股の間が広くなってしまったりすることが考えられます。骨盤から下肢が少しはみ出たような状態です。さらに小殿筋は肩の棘上筋と連動しますので、肩関節の動きが鈍く感じたり、脇が常に開いているような体型になったり、肩に何かをしょい続けているように感じたりするかもしれません。
 その他には、舌が硬くなっていて喋りづらさを感じたり、飲み込み(嚥下動作)が悪く感じたりしているかもしれません。

カカト重心を改善するために
 私が知っていることだけで申し上げれば、カカト重心を改善するための考え方は二つあります。(この先、もっと増えるかもしれませんが)
 一つ目の考え方は、“推進力のあるからだ”にすることです。カカト重心の人は後から何かの力に引かれているとか、向かい風の中に立ち続けているような状態ですから、前に進む力=推進力の乏しい状態です。骨盤は後傾し、お尻も垂れ気味になっています。この状態を克服して推進力のあるからだ、つまり歩いていても「自然に、前に前に脚が進んでいく」状態にするためには仙骨を前傾させて骨盤の後傾を改善することが必要です。
 仙骨の状態を整えることについてはだいぶ前に取り上げましたが、骨盤底の柔軟性やヒラメ筋、半膜様筋というハムストリングを整えることが必要になります。
 二つ目の考え方は、鎖骨を前に出すことです。鎖骨と肩甲骨は腕を動かす土台として一対になっていますが、合わせて上肢帯と呼ばれています。
 鎖骨を前に出すことは肩甲骨を前に出すという意味でもありますが、カカト重心の人のほとんどは肩甲骨あるいは鎖骨が本来の位置よりも後方にある状態ですので、これを改善する必要があります。

鎖骨を出すとかかと重心が改善_1
鎖骨を出すとかかと重心が改善_2

 パソコン作業が増えた今日、肩甲骨が外側に拡がり、肩が巻くように前に出て鎖骨が喉の下の方に埋もれてしまったような状態の人が増えています。猫背とも言えますし、胸が狭く閉じ込められたような状態であるとも言えます。このような状態はカカト重心になりやすい状態ですので、胸を開き(前鋸筋や大胸筋や小胸筋のこわばりを解消し)埋もれた鎖骨を表に出し、肩甲骨の位置を本来の状態に戻すことがカカト重心を改善するためには必要になります。

 普通は以上のように、仙骨のあり方を整え、鎖骨と肩甲骨の位置と状態を整えることで、多くのカカト重心を改善することは可能です。その他に、腰椎の在り方がおかしかったり、膝や足に故障を抱えていることによってカカト重心になっている場合などもありますが、基本としては仙骨と鎖骨・肩甲骨であると今の私は考えています。

 カカト重心にならないように意識的に体重を前に掛けて対応するという方法を思いつかれる方もいると思いますが、その状態はからだの何処かに力を入れて操作しているわけですから不自然な状態です。カカトの高い靴などを履いてもカカト重心を解消することができますが、それはそれで足の何処かに力が入ってしまいますのでやはり不自然な状態です。そうではなく、自然に立った時にカカト重心が克服されている状態になっていることが本道であり、大切です。
 以前に申し上げましたが、私たちが動作を行うということは“重心を移動させる”ことに他なりません。この重心移動がスムーズで上手な人が運動神経が良い人、バランス感覚の良い人であると言ってもよいと思います。
 そのためには、重心のホームポジションがカカトや爪先にあるのではなく、良い場所にくるようにからだを整えていただきたいと思います。ヨガやピラティスやいろんな健康運動によって、しなやかで健康的なからだを作り上げていくことは大切なことだと思いますが、その効率を高めるためにも重心の在り方を気に掛けていただきたいと思います。

 時々、小学生や中学性や高校生など若い人たちが来店されますが、椅子に座った状態でも、足底を床に着けるのではなく足趾を丸めている人たちをけっこう見かけます。これは単に“姿勢が悪い”とか”仕草がおかしい”という言葉で済ませてはいけないことだと思います。その状態が彼女や彼らにとっては自然であり、足裏を地面に着ける状態は不自然なわけですから、“貧乏揺すり”などと同じように、からだの何処かに狂いが生じているのだと考えられます。若い時分からそうであれば、将来的に不具合が表面化する可能性はとても高いと思います。
 ですから、若い人たちをもった親御さんは、“それくらいのことで‥‥”と見逃さないでいただきたいですし、スマホで酷使している親指などは原因になっているかもしれません。鎖骨を前に出す一つの方法は母指先を伸ばすことです。スマホ操作で酷使している指の第一関節はかなりこわばっています。それを伸ばすのはとても痛みを感じますが、それによってカカト重心が改善し、足趾が伸びて足裏で地面を捉えることが自然な状態になる可能性は高いと思います。

 「娘が学校の検診で側弯症の初期段階だと指摘され、このまま進行すればコルセットが必要になると言われて‥‥。どうにかなりますか?」と、定期的に来院されている方から聞かれました。同様の相談は過去に何件かありましたし、側弯症が進行した状態で成人された方も幾人か来店されました。腰痛や膝痛や五十肩などは“症状”であって病気ではないと一般に思われいるのか、私のようなところで対応できると思われているようですが、側弯症は病気であって病院が取り扱う分野だと思われている人が多いようです。
 ところが病院では「このまま状態が悪化すればコルセットを装着しなければならなくなるし、もっと悪化するようだと手術も考える必要がでてくる。」というようなことを言われ、「で、では、どうすれば状態が改善するのか?」という最も素朴な疑問に対しては明快な回答が得られないようです。

 側弯症が進行した状態で成人しますと、内臓の位置が普通の人に比べかなり偏った状態になると思います。体幹(首下~骨盤)の左側は薄く右側は厚くなって、正面から見ると「C型」に歪んでいる人がいましたが、「内臓はどのように配置されているのだろう?」と素朴に思ったりしました。「今(35歳)からでも側弯症を改善するように日々体操してみてはどうですか?」と言いましたが、本人は「病気なのでそんなことでは治らない」と思い込んでいて、私の助言は聞き流されました。
 また側弯症の影響で坐骨神経痛になっていた若い女性もいました。坐骨神経痛といっても症状としては軽く、太股から足にかけて「だるさを感じる」程度でしたが、側弯症による影響でしたから“常に症状がある”状態でした。この方にも「側弯症が原因なので、それを改善するために、この体操を毎晩寝る前にやってください。」と来店の度に幾度か進言しましたが、「そんなことで直るわけがない」みたいな反応でしたので、助言を止め、施術で側弯症が少しずつでも改善されるようにしていました。月1回程度の頻度で来店されていましたが、2年くらい経過した頃から坐骨神経痛の症状は消えました。その後は背中のハリや肩こりなどの症状で時折来店されましたが、今はすっかり来店されることもなくなりました。

機能性側弯症は“何処から歪み始めたか”を見極めることから
 側湾症には先天的な要因や神経の問題など病気としてもの(構築性側弯症 )と、生活習慣や姿勢などの問題で背骨が曲がってしまう機能性側湾症があるとされています。明らかに病気としての側湾症は、私の担当する領域ではありませんが、機能性側湾症に対してはできることもあります。
 側湾症が発症するのは幼少期から中学性の頃までの成長期がほとんどのようです。つまり関節が柔らかく筋肉や組織が成長している時期に背骨が曲がり始めると、どんどん曲がりが大きくなってしまうと解釈できます。ですから、そうならないように早い時期から対策を講じることが肝要であるということはわかります。しかし、その対策が“コルセット”では、あまり効果が期待できないのではないかと思います。

 背骨が歪んでいる人はたくさんいますが、歪みの程度が大きくなると側弯症と診断されるのであれば、歪みの度合いを軽減していけば良いという理屈になります。私のところに来られる方々のほとんどはからだに歪みを持った方々ですから、歪みを修整するという意味では、側弯症の人もその他の人も私にとっては大して違いはありません。ただ、側弯症の方々のほとんどは歪みが大きく、固定化している場合が多いので修正に時間がかかってしまいます。

 背骨の歪みに対する施術を行う場合、その歪みが何処から始まったのかを見極めることがポイントです。例えば、骨盤上部の腰椎が左側に歪んでいる人は胸椎下部が右側に、胸椎上部や頚椎下部が左側に、そして頚椎上部が右側に歪んでいたりしますが、その歪みは骨盤から始まったのか、それとも頭頚部から始まったのか、あるいは別の場所から始まったのか、それを見誤るといくら施術を繰り返しても改善には結びつきません。

 先日来店された中学2年生の女子は、小学生の頃からソフトボールを始め、現在もソフトボール部に所属しています。座った状態を観察しますと、左側のお尻に体重が乗っています。つまり、右の坐骨に体重を掛けられない状態です。次に立ってもらい片脚立ちをしてもらいましが、日々クラブ活動で鍛えているにもかかわらず、右脚の片脚立ちがしっかりできません。バランスが取れないのです。これは右側の中殿筋が上手く働いていないことの現れですが、過去のケガについて本人と母親に尋ねたところ、小学5年生の時に右足首に強い捻挫をしたが病院や治療院に行くこともなく放って置いたということです。これが中殿筋が機能しない原因でした。
 この女子は小学5年生の頃からおよそ4年間、右側に体重をかけられない状態でしたから、骨盤の左側ばかりにからだを乗せて座っていたということが推察できます。これは明らかに背骨を歪めてしまう原因です。
 また、首の方を観察しますと頚椎の1番が右側に歪んでいました。それは右側ばかりで噛んでいる片噛みによる影響です。お尻の左側に体重を乗せて座っているので腰部は左側に歪みます。するとバランスを取るために首を右側に倒して座るようになります。その状態で食事をするので自然と右側で噛んでしまう片噛み癖になってしまいますが、その積み重ねによって頚椎上部が右側に歪んでしまっているのだと推察できます。
 ですからこの女子の場合、右足首を整えて中殿筋が機能するようにしてまっすぐに座れるようにすることがポイントで、併せて右側の硬くこわばっているそしゃく筋を整えることが施術方針になります。
 初回はこの方法で背骨と首の歪みはかなり良くなりました。しかし成長期という大事な時期ですから、しばらくは月に1回の間隔で来店していただき経過を観察するとともに施術を行っていくことにしました。

 骨格や筋肉に柔軟性のある成長期までの頃は、歪みを改善することもすぐに結果が現れます。ということは反面、悪い姿勢や悪いからだの使い方をしているとすぐにまた歪んでしまうということでもあります。子供さん達の姿勢の変化や噛み癖、目の使い方の癖には十分注意していただきたいと思います。
 そして、この女子のように過去のケガによってからだのバランスが崩れている場合は「ちゃんと座りなさい」「両方の歯で噛みなさい」と注意をしても、からだがそのようにできない状態である、ということもあります。その場合は厳しくしつけるよりも、からだの不具合を直すことを優先させた方が、親子と共にストレスを感じなくてすむと思いますので、そちらを選んでいただきたいと思います。
 
 もう一つの例として、20歳代半ばの女性のケースです。彼女の側湾はそれほど大きなものではありませんでしたが、自覚的には仰向けで寝ると背中の右側は肋骨~腰の上部までがしっかり床に着くのですが、左側はすっかり浮いてしまっているというものでした。うつ伏せになった状態を観察しますと、右側の背筋が棒のように張っているのに対して、左側は凹んだ状態です。フワッとした感じの服を着ていると側弯症であることがわからない程度のものでしたが、常に右脚にだるさを感じていました。本人はむくみが強くてだるくなってしまうのだと思っていましたが、実は側弯症による軽微の坐骨神経痛でした。
 彼女は小学生の頃に側弯症であると指摘されたようですが、病気なので治らないと思っていました。しかし、側弯症が改善しなければ脚のだるさは取れません。ですから、側弯症を少しずつでも改善するための3分程度の体操を教え、「毎晩寝るときにやってください。やり続けていれば必ず良くなるから」とアドバイスしましたが、全然やってくれませんでした。私の助言を馬鹿にしているというよりも、医師から言われた「治りません」の言葉が頭から離れないからかもしれません。

 彼女の側湾は首から始まっていました。首が歪み、胸が歪み、腰が歪み、骨盤が歪んで坐骨神経痛になっているというパターンでした。「どうして首が歪んだのだろう?」というのが当然の疑問です。顎関節の調子も悪かったので、噛みしめや歯ぎしりの影響は十分考えられます。
 そうだとして、では「どうして噛みしめてしまうのだろう?」というのが次の疑問です。
 からだを観察していきますと右手人差し指の先がが捻れているのが気になりました。その捻れを、私が操作して捻れの無い状態に戻しますとベッドを押しつけるようにくっついていた背中の右側が少し浮くようになりました。背骨の歪みが軽減して右側の張りが少し弛んだからです。
 「どうしてこの指先が捻れているのか心当たりはありますか?」と尋ねますと、しばらく記憶をたどった後、「幼稚園児の頃まで人差し指をしゃぶる癖があったからかもしれない」との返答でした。「これが側弯の原因かもしれない」そう私は思いました。
 人差し指の捻れは肋骨の2番目を中心に胸郭を歪ませ、首の筋肉(斜角筋)を緊張させせる傾向があります。斜角筋が緊張することで頚椎は歪みますが、同時にそしゃく筋も緊張させますので本人の意図に反して噛みしめの状態になってしまいます。
 その後来店される度に人差し指の捻れを解消するようにしていきますと、4~5回目くらいの来店時から右脚のだるさを訴えなくなりました。背骨の側弯は残ってはいるものの以前に比べ明らかに改善しています。そして、その後はしばらく来店されることもありませんでした。
 私としましては、もっと側弯が改善されるまで通っていただきたいという思いを持っていましたが、今は結婚をされ遠くに住まわれていますので、たまにご実家に戻られたときに来店される程度です。

 何故か女子に多い側弯症ですが、それが生活習慣や姿勢の問題に由来するものであるならば、改善する可能性はあると考えます。側弯に限らずからだの歪みには必ず最初の原因があります。それを丁寧に探っていけば歪みを改善するための方法は見つかります。
 ほとんどの人が私のような職種よりも医師の言うことの方を信じると思いますが、それはそれで懸命な判断だと思います。ところが「コルセットを付けて、それでも駄目なら手術まで考えなければならない」という診断は私から見ますと治療を放棄しているようにさえ思えます。「悪い兆候はあるけれど、もっと悪くなるまではやりようがない」と言っているのに等しいのではないでしょうか。患者の立場としては、症状が軽微なうちに治したいし、症状を進行させないためにどうすれば良いかを知りたいはずです。
 また“コルセット”という手段も私には解せません。固定して動きに制限をかければ歪みは進行しない、というような考え方はからだの仕組みを知っている人の発想とは思えないからです。「からだはそんな風にできていないのになぁ?」というのが率直な気持ちです。

 私はこの職業に携わってから、背骨が真っ直ぐで理想的な状態の人に出会ったことがありません。大なり小なりすべての人は歪みを持っていると思っています、と言いますか、それが現実です。
 私はその歪みが大きくなってしまったのが機能性側弯症ではないかという考え方をしています。側弯が進行しますとスタイルが悪くなり、さらに進行しますと内臓機能にも影響が及ぶようになってしまいます。それは女性にとって、将来的に苦痛に結び付くことかもしれませんので、なんとか改善していただきたいです。
 現在、側弯症と診断される程歪みが大きくなってしまっている人は、改善までに時間を要すると思います。しかし、元々のきっかけを明らかにし、それを改善することに忍耐強く取り組んでいけば、きっと状態は良くなるはずだと考えています。
 側弯に対する施術は、腰痛や関節痛、頭痛などのように、すぐに変化を実感できるというものではありません。しかし日々の努力で必ず状態は良くなると思いますので、お悩みの方は一度ご来店の上、ご相談ください。

 今年は9月に入ってから立て続けに台風がやってきて、天候がとても不安定です。台風が発生すると具合が悪くなる人、低気圧が通過する頃体調が悪くなる人、そんな人はたくさんいます。高齢者で膝や股関節など関節を病んでいる人にとってはとても辛い季節かもしれません。

変形性膝関節症01

 私の母は既に後期高齢者ですが、70歳になる手前の頃、リウマチを患い左側の膝関節が変形してしまいました。リウマチの方は投薬治療によって寛解したのですが、変形してしまった膝は元には戻りません。右脚の方は変形することもなく普通の状態ですので、写真(数年前)にありますように左右で脚の形が違っているため(左脚が短いので)歩き方が変わってしまいました。その影響で少しずつ左脚のO脚が悪化し、今では左脚を引きずるような歩き方になってしまいました。今は同居していますので毎朝出勤前にマッサージをしているのですが、この長引く悪天候はマッサージの効果も少なく、とても辛いようです。

O脚で膝の内側に痛みを感じたらしっかり対処してください
 私たち日本人にはO脚の人がたくさんいます。特に高齢の女性には大変多いです。それは、O脚は加齢とともに進行するという現実を現しているのだと思います。スタイルが悪くなるということだけであれば、私があえて問題視することでもないのですが、進行したO脚は変形性膝関節症になる危険性が高くなりますので、そうならないように対策をしっかりしてO脚を進行させないように、あるいはO脚自体を改善するようにしていただきたいと思います。

 O脚は脚の外側面に力がかかりますので、ふくらはぎ(下腿)は膝関節で外側にずれるようになります。そのような状態が長年続きますとやがて膝関節の内側半月板(クッション)が損傷して大腿骨とスネ(脛骨)が直に接触するようになったりして炎症が生じます。ここまで状態が悪化しますと変形性膝関節症と診断されますが、こうなってしまいますと改善はなかなか難しくなります。 膝が変形する前の段階でも膝の内側に痛みを感じることはよくあります。一番多いのは膝関節が一時的に、あるいは慢性的に歪んでいるため、膝内側の筋肉が緊張状態になってしまい、曲げたり動かしたりすると痛みを感じるケースです。O脚ではない人でも、手や足を酷使した後で膝が痛むことはしばしば見受けられます。(この仕組みについては過去のブログやホームページを参照してください。)ほとんどの場合、一時的なものですので手足の疲労やコリが回復すれば膝は元の状態に戻ります。
 他方、O脚の人は常に脚の外側に力が掛かっており脛骨が外側に歪んでいますので、膝内側の筋肉は引っ張られていて緊張状態にあります。また筋肉だけでなく、膝関節を包んで中に関節の動きを円滑にするための潤滑液を含んいる“関節包”にも偏った力が掛かったり、圧迫が加わったりしてしまいますので炎症が起こりやすくなっています。ですから少し長く歩いたり、重たい物を持ったり、正座をしたりしますと膝の内側に痛みを感じたり水が溜まったりしてしまうという状況になります。状態が悪くなりますと膝を曲げることが辛くなったり、椅子に座っているだけでもジンジンしたり、何もしていなくても苦痛を感じるようになってしまうこともあります。このような状態でも湿布を貼ったり、温めたり、痛み止めの薬を飲んだりしますと苦痛は軽減します。ですからそのようにして対処している人が多いのですが、この段階は要注意です。この段階ではヒアルロン酸の注射は効果があると思います。痛みも和らぎ、関節包の状態も良くなりますので関節の動きもスムーズになります。しかし、膝内側の筋肉が緊張状態であることには変わりがありません。「良くなったはずなのに‥‥。また痛くなってしまった。」となってしまうことでしょう。

変形性膝関節症(半月板損傷)

 半月板や軟骨の損傷が進んでいない状態であれば、それがひどい膝関節痛や不具合だったとしても回復の可能性は十分にあります。膝関節を取り巻く筋肉のバランス状態を改善することで膝は良好な状態に戻ることができます。しかし、進行したO脚状態では筋肉バランスを整えることは難しくなりますので、少しずつでもO脚を改善することに取り組んでいただきたいと思います。
 若くて筋肉に力があるうちは膝内側が緊張状態であっても筋肉は耐えることができます。半月板が減ってしまうこともないかもしれませんので膝は変形しないでいられます。ところが加齢とともに筋肉や組織の力が衰えますと筋肉は緊張状態に耐えきれなくなり、少しずつゆるみ始めて膝関節の歪みが進行していきます。O脚状態で膝の歪みが進行しますと、内側の半月板はダメージを受け機能が低下してしまいます。すると大腿骨と脛骨の軟骨部分が接触するようになったりして膝にいろいろな問題が生じるようになります。
 ここまで状態が進行してしまいますと、“膝が良好な状態”に戻すことは難しくなります。正座ができない、早歩きができない、湿布や貼り薬が手放せない、しばしば整形外科のリハビリ器具を利用したくなる、などの状況になりますが、生涯膝の不具合と付き合って行かなければならない可能性がたかくなります。

 ですから、ご自分やご家族の誰かがO脚で、膝の内側に痛みを感じるようであれば、早い段階で適切に対処することを是非実行してください。その症状が一月も続くようであれば、関節を整えることを考えてください。
 現代医学の領域では、ヒアルロン酸によって関節の動きがスムーズになること、痛み止めの注射や薬で炎症が治まり痛みを感じなくなること、関節の変形が酷くて機能を果たすことができなければ人工関節に取り替えること、もしかしたらそういうことを“適切な対処法”と考えているのかもしれませんが、それでは医学が進歩しているとは私には思えません。
 O脚の人は“将来の変形性膝関節症の予備軍”みたいなものですから、如何にO脚を改善するか、あるいは如何にO脚を悪化させないようにするか、そういったことに取り組むのが、本当の意味での進歩ではないかと思うのですが‥‥。

O脚の改善は股関節から
 スタイル重視を掲げている“O脚矯正”では両膝の間が狭くなり脚がなるようにすることを主体に矯正を行っているのかもしれません。それは“形”に重点を置いたやり方です。しかしそれでは今回の、将来変形性膝関節症にならないためにO脚を改善するという目的を叶えることにはつながらないかもしれません。

O脚と下肢の筋肉・骨格02

 私たちの標準的な骨骼では、大腿骨は骨盤の外側から膝に向かって内に入るように降りています。そして膝から足にかけての脛骨はほぼ垂直に降りています。骨格の在り方は力の方向性を示しますので、下肢は“骨盤から膝にかけて力が内側に集まっている状態が正しい”ということになります。つまり立った時、膝のやや内側に力が集中している感じが得られる状態が良い、ということです。立った時、膝の外側に力が逃げてしまったり、どこに力が集まっているのかハッキリしないのであれば、それは改善する必要があるということです。

 O脚を改善するための第一段階は、力が膝の内側に集まるようにすることだと私は考えています。そしてそのためには、股関節では大腿骨を外側に開く働きをする筋肉を整えなければなりません。その要は小殿筋です。
 更に、股関節で大腿骨を外側に回旋させる働きをする筋肉を整える必要があります。その要は短内転筋です。
 その他に筋膜の影響があります。そしてその影響力はかなり強いです。大腿部の筋膜が少し内側に捻れる感じで膝に向かっているのが良いのですが、触診に馴れていない人にとって筋膜の流れを感じることは難しいかもしれません。仮に、筋膜が理想とは反対に外側に流れているような状態では、力はその方向に向かってしまいますので、膝の内側に力が集まる状態にはなりません。そして膝蓋骨(膝のお皿)は筋膜の影響を受けますので、他者に比べて膝蓋骨が外側に位置しているように感じるかもしれません。それは筋膜が外側に捻れていることを現しています。
 尚、立った時に足が「ハの字型」になっているO脚や内股の人は膝蓋骨が内側に入り筋膜も内側に捻れている状態になっていますが、それが良いわけではありません。股関節で脚が内側に捻れているということですから、膝裏が外側を向いてしまうので反張膝になってしまいO脚を助長してしまいます。

 O脚の場合、膝関節で脛骨が外側にズレているわけですが、そのことばかりに注目して膝関節ばかり整えたとしても、股関節から膝関節にかけての力の掛かり方が改善されなければ、膝関節の矯正は極めて一時的なものになってしまいます。5分も歩けば元の状態に戻ってしまうかもしれません。
 ですから先ず第一に整えるべきところは股関節での大腿骨の角度であり、大腿部の筋膜の流れだと私は考えています。その上で、膝関節における大腿骨と脛骨の関係、足関節(足首)などを修正するのが順番になります。

 たとえ脚の形がすぐに真っ直ぐにならなかったとしても、立ったり、歩いたりするときの重心が太股と膝のやや内側に集まるような状態になっていれば、自ずと足の母趾側に力が入るようになります。このような状態でからだを使い続けていれば次第に骨格も筋肉のバランスもそのように変わっていきます。それまで負担の掛かっていた内側半月板も次第に偏った圧力から解放されるようになりますので、変形性膝関節症になる可能性は遠のいていきます。

O脚と骨密度
 高齢者、とくに女性の高齢者にとって骨密度は気になるところです。骨折しやすい状態かどうかは骨密度だけの問題ではないかもしれませんが、一つの目安として骨密度を気に掛けていることは良い方法かもしれません。
 また、私の母を例に出しますが、リウマチを患って少し経った頃骨密度を測定したことがあります。普通の状態である右脚の骨密度は年齢より若い値でした。一方、O脚である左脚は骨密度が芳しくなく投薬によって対処しなければならないレベルでした。
 これを一般の人はどう考えるのでしょうか? 骨密度が悪く、つまり骨が弱いのでO脚になってしまったと考えるのでしょうか?
 専門用語は忘れましたが、骨は重力の掛かり具合によって成長したり退化したりする傾向があります。重力のない宇宙では、じっとしていると筋肉だけでなく骨も細ってしまいますので、宇宙飛行士達は宇宙船の中でたくさんトレーニングをしています。それは骨や筋肉に重力をかけているということに他なりません。
 そう考えますと、普通の状態である母の右脚の骨にはしっかりと重力が掛かっていますが、O脚の左脚には重力があまり掛かっていないということになります。O脚が進行して左脚を引きずりながら歩いている現在であれば、「左脚をかばうために右脚ばかりに力をいれている」ということで骨密度の左右差の原因をイメージしやすいと思います。しかし、測定した頃は左脚で地面をしっかり踏めていた頃ですから、左右で大きな差があることは想像しにくいことでした。

変形性膝関節症01

 ここでもう一度母の写真を見ていただきたいのですが、O脚である左脚は股関節から膝のやや外側に重力が掛かっていて、膝から下は力の方向がすっかり外側に向かっています。この状態を見方を変えて観察しますと「右脚はからだの重み(重力)をしっかりと大腿骨と脛骨で受け止めているが、左脚は力が外側に流れて逃げてしまっている」となります。つまり骨に対する荷重が左側は弱くなっていますので骨が退化してしまう、となります。
 O脚(X脚も同様)の人は膝関節に対する負担が増えるので痛みや炎症を起こすのですが、骨そのものに対する負担は減るので骨密度が悪化するという結果になります。

 ホルモンの関係とも言われていますが、体質的に女性は骨密度が悪化しやすいと言います。高齢になって外出の機会、歩く距離も減りますと骨が弱くなってしまうのは仕方がないことではありますが、そこに膝関節の不具合、O脚が加わりますと尚さら骨の弱体化が加速します。ですから道理だけで考えますと、加齢に従いO脚は改善するようにしなければならないということになります。
「スタイルのことを考えていた若い頃はO脚を気にしていたけど、もうそんな歳でもないし、今更O脚を直そうとも思わない」というのは心情的には理解できますが、からだの健康を考え「いつまでも自分の脚で歩き続けていたい」と思われるのであれば、O脚を改善することを考えていただきたいと思います。
 O脚を改善することは重心をからだの中央に持っていき、動作を無理なく効率的に行うことにもつながりますので、単に脚だけの問題ではないことをつけ加えます。

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