ゆめとわのblog

ホームページとは違った、より臨場感のある情報をお届けしたいと思っています。 また、テーマも整体の枠を飛び出してみたいと思います。 ホームページは以下です。 http://yumetowa.com/ お問い合わせはメッセージ欄でお送りください。

カテゴリ: 呼吸

 少し前に呼吸のついての文章(「うつ症状‥‥呼吸の改善を」)を投稿しましたが、それを読まれて来店されたのか、遠くから若い青年が来店されました。
 現在抱えている主な症状は以下の通りです。
 ①手のひらと足裏の汗
 ②顔と背中の肌荒れ
 ③唾液が出にくい
 ④のぼせ‥‥イライラすると頭に血が上り苦しくなる
 ⑤話しにくい‥‥ボイストレーニングに通っている

 症状の発症はだいたい同じ時期で、中学性の頃ということです。
 現在の仕事では接客の業務も行っているため、手のひら汗が中でも気になるということでした。
 体型は長身で痩せています。
 過去のケガとしましては、中学性の時の左腕(橈骨)の骨折、高校時代の数々の足首周辺の捻挫などです。

 さて、手のひらと足裏に汗をかきやすいという問題は若い人にけっこう多いのですが、根本的な原因として考えられるのは体質の弱さによるエネルギー不足、あるいは体内エネルギーの廻り方が普通ではない、といったところです。
 「エネルギー不足」と言いますと、対策としては、食事やサプリメントを考えて適切な栄養を摂る、あるいは筋トレなどで体を鍛える、といったことを連想されるかもしれませんが、それは違うと私は考えています。現在の私たちに足りないもの、そして若い人や子供さんにとっては特に気をつけていただきたいことの一つに「ご飯をよく噛むこと」がありますが、哺乳動物である私たちにとっては、“そしゃく”は生命力に直結する大切な大切なことです。
 そして脊椎動物としての私たちにとって最も大切なことは“呼吸”です。生命の灯火が消えると同時に呼吸が止まりますが、呼吸の在り方は生命を維持するためだけではなく、健康を増進して快適に生きることに直結します。
 ですからエネルギー不足を改善して体質を強めるためには、よく噛んで、快適な呼吸状態を維持することが必要不可欠であると私は考えています。特定の栄養摂取や筋トレは、そしゃくをしっかり行い、快適な呼吸が実現できている上で、更にからだを強めるために行われる、という順番が大切だと思います。そしゃくと呼吸が軽視された状態でサプリ摂取や筋トレを行っても上手くいかないのではないかと思います。

 「エネルギーの廻り方が普通ではない」という表現は中途半端に聞こえるかもしれませんが、「異常という状態ではないけれど、正しいとは言えない」といったところです。大きな関節での歪みが悪化しますとこのような状態になります。たとえば、体幹と四肢をつなぐ肩関節と股関節の歪みは全身の循環に影響を与えます。それによって本来渇いているはずの手のひらから水分が出てしまったり、反対に常に潤っているはずの鼻腔や口腔が渇いてしまったりすることがあります。
 そして「精神的緊張が強くなると手のひらから汗がにじむ」ということが起こりますが、精神的な要因でエネルギーの廻り方がおかしくなることはあります。

 以上のことから、この青年を施術するに際し、まず呼吸とそしゃく筋の面から観察し始めました。

 ③唾液がでにくい、④のぼせ、といったことから連想されるのは噛みしめによるそしゃく筋のこわばりです。唾液腺の一つ、耳下腺は咬筋のところにありますので咬筋がカチカチに硬くなりますと耳下腺から唾液が出にくくなります。さらにエネルギーの廻り方がおかしい状態では、本来潤っているはずの口腔が渇いたりしますので益々唾液不足の状態になると思います。

耳下腺01

 のぼせは頭蓋骨の動きが悪いことが原因として考えられます。頭蓋骨は本来、息を吸う時に少し(横に)拡がり、息を吐くときに少し縮むように動きます。ところがそしゃく筋の一つである側頭筋が強くこわばっていたり、頭皮が硬くなっていたりしますと頭蓋骨が動かなくなります。さらに呼吸が悪い状態が重なりますと、脳内の血液の動きも悪くなりますので、頭が血で一杯の状態になってしまうと考えることができます。

 呼吸の面では、腹式呼吸の要である横隔膜がほとんど動かない状態でした。胸郭は薄く、横に広がった状態で全部の肋骨が下を向いていました。呼吸をしていても肋骨はほとんど動かない感じで「息が吸えない」といった感じでした。
 「ともかく息がたくさん吸える状態にすることから始めなければ‥‥」というのが私の直感でした。
 「横隔膜が十分に働けるようになるには、どうすれば良いのだろうか?」そんな思いを持ちながら胸郭を触っていきました。すると左側の第4と第5肋骨が胸骨から少し離れた感じになっているのがわかりまして、それを胸骨に近づけるように私の手で動かしてみました。するとその瞬間に、横隔膜が作動し始め胸郭が大きく開らきました。そして、ここが大事なところなのですが、横隔膜が作動して胸郭が自然に開くことから吸気の動作が始まるようになりました。無理に息を吸い込むのではなく、自然に息が気持ちよく入ってくる状態です。
 呼吸に関しては「肋骨のズレに根本的な原因がある」ことが分かった瞬間です。

 次に「どうして左側の肋骨が胸骨から離れた状態になっているのだろう?」という本質的な原因を探すステップになります。いろいろな症状が出始めたのは中学性の頃で、左腕を骨折したのも中学性の頃、という関連性が疑わしく思えてきました。
 「中学性の時の骨折は、具体的には左腕の何処だったのですか?」と質問をしました。すると橈骨の肘付近と手首付近の2箇所という返事でしたので、早速その辺りを探っていきますと確かに骨折した痕のような感じの弱いところが見つかりました。そしてその部分に手をあてがって補助しますと、胸骨から離れていた肋骨が少し戻って十分とは言えませんが、横隔膜が働き出し胸郭が大きく動く呼吸ができるようになりました。
 私が手を当てていたのは5~6分くらいだと思いますが、その間の呼吸が改善されましたので、顔色が良くなり、リラックスして楽な感じになりました。頭の方も“詰まり感”がなくなったようで、「楽になりました。」と仰いました。

 胸郭が下がっていたことで喉が下に引っ張られ、さらに呼吸が悪かったことで声の出も悪かったのですが、それも改善され“地声”が出て言葉がしっかりするようになりました。
 これまでにも発声や滑舌などに問題があってボイストレーニングに通われたりしている人が来店されましたが、整体的観点での問題が解消されないとなかなか成果が現れないという実態があります。

 この青年が訴えていた五つの症状は、それぞれを別に考えて、一つずつ片付けていこうとしますと迷路にはまっていくような感じになると思います。
 実際のところ今回は、呼吸のみにだけ集中して施術を行いました。「呼吸が浅い、呼吸が悪い」というのは訴えられた症状には入っていませんでしたが、私は、すべての症状は呼吸が悪いことから派生したものだろうと判断しました。そして120分のほとんどを、横隔膜がちゃんと機能するように整える時間に費やしましたが、施術が終わったときには本人が一番気にしていた手のひらの汗の問題はほとんど解消されていました。
 このブログでは、しつこいくらいに何度も何度も呼吸に関する話題を取り上げてきましたが、それは私たちの健康にとって呼吸は何よりも大切なことの一つだからです。

 私たちは常に無意識下で呼吸を行っていますので、「今の呼吸が普通の状態」と考えてしまいがちです。ですから「呼吸が良くなったとしても、それがどれくらい効果的なの?」と思っている人が多いと思います。あるいは「ヨガやストレッチやその他の運動で呼吸については訓練しているし‥‥」とか、「毎日深呼吸しているし‥‥」ということで私が話題に出している鼻呼吸、副鼻腔、横隔膜、肋間筋などといったキーワードには興味を抱かれないかもしれません。しかし、「真に快適な呼吸」を経験されますと毎日普通に行っていた自分の呼吸がとても非効率だったことが理解できると思います。

横隔膜と肝臓
 現在、遺伝性の糖尿病で悩んでいる人が定期的に来店されています。糖尿病の段階にもいろいろあるようですが、まだ合併症に苦しんだり、痩せてやつれたようになっている状態ではありません。少し太り気味で、食欲もあり、外見的にはごく普通に見える感じで、本格的な糖尿病になる何歩か手前の状態だと思います。ただ血糖値はかなり高く、尿タンパクも良い状態とは言えませんので、本人は何とか今より少しでも良い状態を保って、本格的な糖尿病にならないようにと当院を利用されています。
 糖尿病といいますと、膵臓からのインシュリン分泌不良、腎臓の働き低下などが連想されると思います。それらは足と手の反射区を利用して施術を行うことで対応するとしまして、私がこの方に対して最も気になってしまうのは呼吸の状態です。
 生きているわけですから、もちろん息はしています。ところが胸郭が殆ど動かないような呼吸で、息を吸うと下腹だけがプーッと膨らみパッと吐いてしまうような呼吸でした。腹式呼吸と言えば、一見そのような感じではありますが、リズムが本来の腹式呼吸はかけ離れていますし、胸郭が動かないのでは横隔膜を効率的に使う腹式呼吸ではありません。

肝臓の働き2

 以前にも申しましたが、胸郭の右側、つまり胃の右側には肝臓があります。肝臓があって、そのすぐ上に横隔膜があり、その上に肺があります。詳細は省きますが、肝臓は静脈系の臓器です。静脈系ということは自身の力では血液を運ぶことができないという側面があります。肝臓には小腸で吸収された影響が静脈血に混じって全部送られます。そして健康を維持するために必要なあらゆる処理が肝臓でおこなわれるわけですが、その処理された血液は心臓に戻らなければなりません。胃は自らの筋肉を収縮させて食物を次の段階(十二指腸)に送ることができますが、肝臓はそのようなことができません。吸気の時に横隔膜が収縮して肝臓を上から圧迫するわけですが、この原理も利用して血液を前に進め、心臓に戻しています。ですから、肝臓の働きが順調に行われるためには横隔膜の収縮と弛緩が必要です。つまり“ちゃんとした呼吸”がとても大切であると私は考えています。

横隔膜の圧迫による肝臓と大腸

 インシュリンはホルモンの一種ですが、ホルモンはアミノ酸の集合体です。そしてアミノ酸は肝臓でつくられます(タンパク質の分解)ので、肝臓が大切です。からだの維持に必要なあらゆる物質が肝臓で合成されます。血液に混じったあらゆる毒物を解毒するのは肝臓です。
 そういうことから、この方に対しては呼吸、呼吸、呼吸、といった感じで、理想的な呼吸ができるように施術を行っています。
 最初の来店から半年が経過していますが、呼吸の状態も「まあまあ」という感じになりました。血糖値は安定して下がっているというわけではありませんが、けっこう良い数値がつづくこともあるとのことです。尿タンパクの方も改善傾向にあるようです。そのような数値のことは私にはよくわかりませんが、立ち姿がスーッして背が高くなったように感じられ、素肌の血色も良くなって、当初の、重力に押しつぶされているような姿がすっかり変化していることが頼もしく思えています。遺伝性の症状(病気)ということで、克服するのはなかなか大変なことだとは思いますが、少しずつでも改善への道を進んでほしいと思っています。

横隔膜が働くために
 腹式呼吸の主役は横隔膜ですから、大概の人の横隔膜は働いています。しかし多くの人の腹式呼吸では、横隔膜の動きは、言わば「後付け」の感じです。これは正確な表現ではありませんが、横隔膜が積極的に働いて呼吸動作を主導している状態が理想的なのですが、そのような人はそれほど多くはありません。
 呼吸を整えるための施術を行いながら、私は実際に、横隔膜が大きく動き出すことから無理のない深い呼吸が始まる瞬間を見ていますし、よく知っています。冒頭に登場していただいた青年は、ただ肋骨を胸骨に近づけただけで「いきなり横隔膜が動き出す」という感じでした。本人の意志とはまったく関係なく、深い腹式呼吸が始まります。「この状態が理想!」と心の中で思いました。
 ですから、すべての人にこの状態になっていただきたいとの思いを込めながら施術を行っています。

 ところでカエルの呼吸を見たことはありますでしょうか? カエルは両生類、つまり水陸両用の要素を持った動物ですが、その呼吸の特徴を首のところがペコペコ膨らませることにあります。(You Tube で見てください。)
 そして私たちの横隔膜は、このカエルの呼吸で膨らむ首の筋肉が胸の下に降りてきたものだと言われています。ですから、横隔膜を動かす神経(横隔神経)は首から出ています。つまり横隔膜の働きに頚部の状態は関係があるということです。そういう意味で、老化により頚椎の状態が悪くなってしまった人や頚椎ヘルニアの疑いがある人は、もしかしたら横隔膜の働きが不十分で呼吸が悪くなっているという面があるのかもしれません。
 さらに、呼吸運動には肋骨を動かす肋間筋や大胸筋、胸郭を引き上げる首の筋肉(斜角筋、胸鎖乳突筋)と胸の筋肉(小胸筋)、息を吐くときに働く腹筋なども関わってきますので、良い呼吸を実現するためにはこれらの筋肉や関係する骨格の状態を整えることが不可欠になってきます。
 また、横隔膜が作動し始める合図となるのは、鼻骨のところに吸気を通すことなのかもしれないと思うようになってきました。鼻骨の上には前頭洞という副鼻腔があります。鼻から息を入れてスーッと前頭洞に通過させるような仕草を行いますと自ずと横隔膜が動きだし、胸郭が開いて肺に空気が入ってきます。鼻から息を入れても副鼻腔を通過させずに喉(咽頭)の方に空気を送ってしまうと胸郭の拡がり方は中途半端になってしまいます。鼻呼吸ではなく口呼吸になってしまいますと、肩で息をするような状態になり、胸は上がりますが反対に横隔膜の動きが制限された状態になってしまいます。息を吸っているのに胸が苦しくなってしまうのです。首や肩に力が入ってしまい、いつも肩こりを感じている人はそうなっていませんでしょうか?

 先ほども申しましたが、呼吸のリズムは生理活動のリズムに繋がります。ゆったりとリラックスして時を過ごしたいと願うのであれば、まず呼吸のリズムがそうなっている必要があると思います。
 だからといって、気合いを入れて「ゆったりした腹式呼吸をしよう」「ヨガで意図的に呼吸のリズムを整えよう」としてみても、その場は快適になるかもしれませんが、常にその快適な状態を保つことはなかなか難しいことです。
 ですから、特別な思いを抱いて取り組んだりするのではなく、ごく普通の状態が、快適な呼吸になるように工夫をしてみてください。そしてなかなか上手くいかないと思われるのであれば、ご来店ください。

 
足つぼ・整体 ゆめとわ
電 話  0465-39-3827
メールアドレス info@yumetowa.com
ホームページ http://yumetowa.com
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 「うつ病と診断されたわけではないけど、うつ症状が長引き、このままではうつ病になってしまうのではないかと思って。整体で少しでも良くなるといいのですが‥‥」と来店される人が時々いらっしゃいます。
 “うつ症状”と言われても、私の専門外ですし、症状や病態についての知識もそれほどありません。ですから施術に際しては、心理的な面とか、生活環境のこととか、症状や病態のこととか、そういうことは一切考えることなく単純にからだを観察して、必要な施術を行うようにしています。
 ただ多くの人を観察し、施術してきた経験で申しますと、うつ症状を訴える人、心理的に弱っている人に共通している状態があります。それは呼吸が悪く、脳が酸素不足、つまり酸欠状態ではないかと思われる状態です。
 医学的に酸欠状態をどのように定義しているのかは知りませんが、脳に酸素が足りなくて頭の働きが鈍っていたり、ドヨ~ンとしてスッキリしていなかったりする状態は明らかに存在します。思考が停止状態に陥っていたり、あるいはいつも同じ思考回路ばかり使っていてそこから抜け出すことができなかったり、そんな経験は多くの人にあると思います。精神的ダメージが強かったり、押し寄せるストレスに耐えられないような状況が続きますと「どうしていいかわからない」「物事が手につかない」などの状況になるかもしれませんが、脳の酸欠状態もそんな感じになるのではないかと、そんなふうに思います。

 そして施術を行い、呼吸のあり方を改善して血液循環が良くなるように整えますと、多くの人がその場で楽な状態になります。
 酸欠状態の人に「酸欠状態で‥‥」と申してもピンときませんが、酸欠状態が改善された状態になったときに「酸欠状態だったのだと思います」と申しますと皆さん合点がいくようです。酸素が行き渡った頭の思考は、それまでのうつ症状の時とは違ったものになっているからです。
 
 酸欠状態=酸素不足ですから、その原因を単純に考えますと“呼吸が悪い”となります。そして実際、その通りです。ならば大きな深呼吸を繰り返して肺にたくさん酸素を取り入れれば解決するのではないかと思われるかもしれませんが、それは、そう簡単ではありません。
 今回はこのことについて掘り下げて考えてみます。

要は“内呼吸”
  生理学の言葉になりますが、呼吸には“外呼吸”と”内呼吸”があります。
 外呼吸は誰もがイメージしています、肺で息を吸って血液中に酸素を取り入れ、不要な二酸化炭素(炭酸ガス)を吐き出す呼吸のことです。肺と呼吸運動に関係する筋肉と骨格(胸郭)が主役の呼吸です。
 一方、内呼吸は、血液(動脈血)中の酸素を細胞内に取り入れ、細胞内で不要となった炭酸ガスや老廃物を静脈血へ排出する作業のことです。細胞の中にはミトコンドリアがいますが、ミトコンドリアが動脈から取り入れた酸素を利用してエネルギー物質を生産し、そのエネルギーを利用して細胞は様々な活動を行っています。ですから細胞に動脈血が十分に届かなければエネルギー不足の状態となり細胞の機能は低下してしまいます。こんな状態が広範囲に及びますと、からだの生理機能は低下してしまいます。
 さらに、ミトコンドリアが消費した酸素は炭酸ガスとなって細胞から排出され、静脈に乗って一端心臓に戻ります。そして肺に送られて口や鼻から体外に放出されるという仕組みになっています。仮に何らかの理由で静脈の流れが悪くなりますと、炭酸ガスの心臓への戻りと肺への運搬が不十分な状態になってしまいますので、体内に炭酸ガスが溜まった状態になってしまいます。つまり内呼吸にとっては、動脈と静脈の両方の流れが重要な要素になっているということです。“血圧”や”コレステロール”や”動脈硬化”など、動脈系のことばかりに着目する傾向がありますが、それでは片手落ちの状態だと言えると思います。

 血圧は動脈の流れと関連性が深いですから、血圧の低い人は動脈血不足になりやすい傾向があると考えられます。しばしば脳貧血の症状になってしまうのは低血圧に原因があると考えられます。“冷え”は動脈、静脈にかかわらず血管の働きを弱め細胞の働きも弱めますので、内呼吸の働きを低下させる原因になります。動脈硬化、自律神経失調、それらも動脈の循環に影響を与えます。

 整体的に重要なことだと私は思っていますが、”静脈血が出ていかないと動脈血が入ってこない”という原理があります。ですから整体の施術において静脈の流れを整えることは非常に重要なことだと考えていますが、それを少し説明させていただきます。
 細胞は毛細血管によって運ばれてきた血液を内部に取り入れ、ミトコンドリアがそれを消費します。消費された酸素は炭酸ガスに変わって細胞から排出されますが、それらがまとまって水分に溶け込み静脈血となります。そして静脈血は血管(静脈)の中に戻って心臓への道を進むわけですが、もしその流れが停滞してしまいますと細胞に出入りする毛細血管からの血液の流れも止まってしいますので、「酸素が細胞に届けられない」という現象が起きてしまいます。
 毛細血管の血液の流れにはもはや血圧は関係ありません。ですから「血圧の力を利用して血液を細胞内に押し込む」ということはまったく期待できません。「静脈血がどんどん流れ去っていくので、動脈血がスムーズに細胞内に取り込まれていく」といったイメージの方が現状に近いのだと思います。
 そして静脈は動脈と違い、血圧や血管の弾力性を利用して血液を流しているのではなく、周りの筋肉の働きを利用して血液を運んでいます。動脈の流れが能動的であるのに対して静脈(リンパも含めて)の流れは受動的であると表現できます。筋肉が疲れ果てて働けない状態ですと、その周辺の静脈血は前に進むことができなくなってしまいます。ふくらはぎや足がむくみやすい理由の一つです。ですから骨格筋の働きと運動は静脈の流れにとって非常に重要だと言えます。その
意味で、整体の施術は内呼吸にとって価値のあるものとなってきます。

 “脳の酸欠状態を改善する”ということで考えたとき、まず「脳細胞に十分な動脈血が届いているか?」という視点があります。そして脳内の血液循環を停滞させないために「静脈の流れが滞っていないか?」という視点が出てきます。
 十分な動脈血を供給するという視点では、血圧、動脈硬化、首肩のコリや捻れといったキーワードが登場します。
 静脈の流れを整え血液循環を活発にするという視点では、鎖骨下静脈、鎖骨と肋骨の歪みというキーワードが登場します。
 そして血液(動脈血)の中に十分に酸素を取り込むために、外呼吸、肺、鉄分というキーワードが登場します。鉄分は血液中で酸素を運搬するヘモグロビンに関係しますが、それは食事で、あるいはサプリや薬で補うことができます。肺の病変については医療機関に頼ることが最善です。
 そして外呼吸につきましては、医療機関や薬などよりも整体的なアプローチが最も適していると私は考えます。

外呼吸を改善するときに着目するポイント
 私たちの様々な生理機能にとって内呼吸は最も重要な問題ですが、そのためにも外呼吸がしっかり行える状態にすることは重要なことです。
 胸式呼吸と腹式呼吸のどちらが良いか? あるいは他の呼吸法の方が優れているとか、外呼吸に対しての考え方は幾つかあるようですが、それらはそれとして、方法論ばかりに目を奪われますと肝心なポイントを外してしまうと私は考えています。
 おそらく殆どの人は鼻から息を吸って肺に空気を取り入れ、そして肺から空気を吐き出すことの繰り返しが“呼吸(外呼吸)の殆どである”と考えていると思います。それは間違いではありません。しかし、その外呼吸の効率を高め、外呼吸と内呼吸にリズム的な繋がりを持たせ、さらに外呼吸によって快適な状態を維持するためには、整えておかなければならないポイントがいくつかあります。
 それは、頭部の柔軟性、副鼻腔(鼻呼吸)、胸郭と肋間筋、首の筋肉、喉と舌、腹筋になります。

頭部の柔軟性と呼吸
 今の世の中、頭と目(感覚器官)の使い過ぎで頭部がガチガチに硬くなり、頭の中がパンクしそうにたくさん詰まっている人がたくさんいます。そのような人は頭蓋骨の柔軟性に乏しいのですが、すると呼吸が中途半端な状態になってしまいます。
 以前にも取り上げましたが、頭蓋骨は一般に「硬いもの」とイメージされていると思いますが、そんなことはまったくありません。本来は柔軟に動くものです。もちろん動ける範囲は非常に小さいですが、骨同士が関節(縫合)で繋がれているということは、「動くようにできている」ということです。
 さて本来であれば、私たちが息を吸うとき、後頭部が上方に動き、側頭部が膨らみます。耳の上部に軽く手を当てて繊細に観察しますと、呼吸動作における頭蓋骨の動きが感じられると思います。
 ところが頭(頭皮など)が硬く、その中がパンパン状態の人は、呼吸における頭蓋骨の動きがほとんど感じられません。

呼吸と頭蓋と骨盤の動き

 年度の切り替え時期になりますと事務職の人はパソコン仕事で大忙しになりますが、目と頭を酷使するためこのような状態になる人も多くいます。「マッサージしても疲れが取れなくて‥‥」「寝ても全然疲労感が抜けていかない」と感じている人は、頭のマッサージをすることで改善されるかもしれません。
 「頭が硬くなっている」というのは具体的には頭皮や頭部の筋膜が張っていたり、側頭筋や額や鼻周り筋肉がこわばっている状態のことですが、疲れているにもかかわらず仕事をしなければならないので歯を食いしばって頑張っていたり、目を酷使しているためにそのようになってしまったのかもしれません。
 また「頭が詰まった状態」というのは頭をたくさん使うため血液(動脈)がたくさんやって来たのですが、静脈の流れが悪く頭の中が血液過剰の状態になっている、つまり脳内がむくんだようになっている状態のことです。これは鎖骨下静脈の流れと密接に絡み合うことですが、詳細については過去の記事をご覧になってください。
 この二つの状態=“頭が硬くなって詰まっている状態”がありますと頭蓋骨は動きにくくなりますので、結論的に申しますと吸気が中途半端な状態になってしまいます。するとからだや頭は酸素不足の状態になってしまいますので、「からだをマッサージしても、休めても疲労がとれない」となってしまいます。
 これまでの経験で申しますと、頭を柔らかい状態にして静脈の流れを改善しますと何分もしないうちに呼吸状態が良くなり、間もなく活力が戻ってくるようになります。

副鼻腔
 私たちが息を吸うときは鼻孔で行うのが本来の在り方です。しかしながら、昨今は口呼吸、つまり口から息を吸ってしまう人が大変多くなっています。口呼吸ばかりの人は口の形にその特徴が現れます。鼻の下を人中(じんちゅう)と呼びますが、そこが短くなっていたり上唇が上を向いていて前歯がすぐに見えてしまう口の形がそれです。激しくハアハアと呼吸を繰り返さなければならないために鼻で吸っていたのでは間に合わない、たとえばサッカー選手などはどうしても口呼吸になりやすいですが、口呼吸には弊害があります。
 鼻孔を通して取り入れた空気は、副鼻腔を通過させることで健康を維持することに貢献します。副鼻腔は頬のところ(上顎洞)と額のところ(前頭洞)にあります。鼻でスーッと吸った空気を頬や額の副鼻腔を通過させますと顔の中に風が通るような感じになりますが、それによって空気は汚れを除かれ、温度と湿度を調整されます。1秒も掛からない短時間の間に外気をからだにとって最適な状態に調整する能力が副鼻腔にはあります。調整された空気はそのまま気管や肺に入っていっても安全で臓器に負担をかけることはないと言います。

副鼻腔2

 一方、口呼吸によって鼻孔や副鼻腔を通さずに取り入れた空気は、このような調整機能をまったく受けることなく咽頭や気管や肺の中に入っていきますので、からだに負担を掛けることになります。口の中には扁桃腺などがあって汚れやバイ菌をある程度除去してくれますが、それらは本来は食物に対するものですので、副鼻腔の空気浄化力にはかないません。扁桃腺が腫れやすい人は口呼吸を改めることを積極的に考える必要があると思います。
 また副鼻腔炎になりやすい人もおりますが、それは副鼻腔に新鮮な空気が通っていない、つまり、副鼻腔の中の空気が停滞してしまっていることが原因かもしれません。
 鼻孔で呼吸をしていても副鼻腔に空気を通さずにそのまま咽頭の方に空気を通過させている人もいます。鼻(鼻骨)が下がっていますと額の副鼻腔には空気が通りにくくなってしまいます。目元や鼻の周りが硬くこわばっている人、あるいは顔の骨格が歪んでいる人は頬の副鼻腔に空気が入りにくい状態になっていますが、このような人はせっかく鼻呼吸をしているのに、鼻呼吸の恩恵が半減している状態です。

胸郭と肋間筋
 胸郭は12本の肋骨と背骨でできています。その中には肺と心臓が収まっていて底面に横隔膜があります。肺にはほとんど筋肉がありませんので、肺は自らの力で膨らんだり縮んだりすることはできません。胸郭が拡がり、横隔膜が収縮して胸の底面が下がることによって袋である肺に空気が入ってくる仕組みになっています。
 さて、私たちのからだには鼻孔と副鼻腔を通して息を吸う動作に合わせて胸郭が拡がり横隔膜が収縮して肺に空気が入る連動性が備わっています。鼻のつけ根、鼻骨のところにスーッと音を立てて空気を吸い上げるように吸い込みますと、自然に肋骨が上がって胸が拡がり空気がたくさん肺に入ってきます。この一連の流れは呼吸独特のリズム感を生み出しますが、それに伴ってからだは次第にリラックスするようになります。
 ところが、口で息を吸う場合はこのような連動性は生じません。すぐに胸やお腹が詰まったような状態になってしまいます。

 ベッドに横たわっている人の呼吸を観察していますと幾つかのパターンがあります。胸郭の下部だけが動いて胸式呼吸をしている人、お腹だけが上下に動いて、胸郭の動かない腹式呼吸をしている人、喉元だけで呼吸をしているように見える人、その様子は様々です。理想は鼻孔~副鼻腔を通して吸気行い、一連のリズムで胸郭が拡がり横隔膜が下がって腹式呼吸をしている状態になることですが、そのためには肋間筋が整っている必要があります。また、胸鎖乳突筋や斜角筋、肩甲挙筋といった頚部の筋肉がしっかり働ける状態になっている必要もあります。

呼吸時における外肋間筋と横隔膜の動き

 肋骨は12本あります。そして肋骨と肋骨の間には2種類の肋間筋があります。内側にある内肋間筋(ないろっかんきん)は収縮することによって上部の肋骨を下方に引っ張りますが、全体の内肋間筋が働きますと胸郭全体が下がって平たく(薄く)なります。私たちが息を吐くとき、このような状態になりますが、それによって肺が縮まり中の空気が外に吐き出されます。
 外側にあります外肋間筋(がいろっかんきん)は収縮することによって下部の肋骨を上方へ引き上げますが、全体の外肋間筋が働くことによって胸郭全体が引き上げられ更に膨らみます。ちょうど内肋間筋と反対の働きをしますが、それによって肺も膨らんで空気がたくさん入ってくることになります。
 ところで外肋間筋も内肋間筋も正常な状態であれば、私たちが息を吸うときには内肋間筋がゆるんで伸張し、外肋間筋が収縮します。息を吐くときには内肋間筋が収縮して外肋間筋がゆるみます。ところが、内肋間筋がこわばっていてゆるむことができないために胸郭が拡がらず、心地良く肺に空気を入れることができない、つまり吸気が不十分な状態になっている人がいます。あるいは反対に、外肋間筋がこわばったままでゆるむことができないために、常に胸郭が拡がったままの人もいます。「鳩胸」ということで、単に個性的な特徴と捉えられるかもしれませんが、それは外肋間筋がこわばった状態になり続けているということなのかもしれません。このような人は息を吸ったままの状態と同じ状態ですので、いわゆる過呼吸状態であり息を吐き出すことが苦手な人だと言えます。首肩から力が抜けない緊張状態、ストレス一杯の状態であるとも考えられます。

 呼吸運動は波のような大きなリズム感を伴った一連の流れです。砂浜に海の波が心地良く押し寄せるようなリズムと臨場感に似た状態が理想ですが、そのためには肋間筋の状態が良くなければなりません。

 また肋間筋は使い過ぎによってこわばったり変調を起こすような類の筋肉ではありませんので、肋間筋の状態を整えるために胸郭に対して直接施術するようなことはほとんどありません。手先の使い方、目を開けるときに眉間辺りに力が入る癖などによってこわばってしまいます。ですから、その辺りをほぐして肋間筋の状態を整えることになります。

胸郭を引き上げる首の筋肉
 呼吸運動においては、吸気の時に胸郭が引き上げられて拡がるのですが、そのために働く筋肉が頭部と頚部から出ています。
 僧帽筋(そうぼうきん)の上部線維は頭部と肩甲骨及び鎖骨を繋いでいますが、収縮することで肩甲骨と鎖骨の外側部を引き上げる働きをします。
 頚部から肩甲骨に繋がっている肩甲挙筋(けんこうきょきん)は肩甲骨の内側部を引き上げる働きをします。僧帽筋の上部線維と肩甲挙筋は直接胸郭を引き上げるわけではありませんが、肩甲骨と鎖骨も引き上げられないと胸郭は上がってきませんので、呼吸運動においてこの二つの筋肉は脇役ながら重要な働きをしています。

吸息時に働く首周りの筋

 そして鎖骨を引き上げるもう一つの筋肉は胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)です。胸鎖乳突筋は鎖骨と胸骨の関節付近に付着していますので、収縮することで鎖骨の内側部と胸郭(胸骨)を引き上げる働きをします。
 そして首から胸郭の上部肋骨につながっていて胸郭を直接引き上げる働きをしている筋肉があります。それは斜角筋(しゃかくきん)のことですが、斜角筋には第1肋骨に繋がっている前斜角筋と中斜角筋、第2肋骨に繋がっている後斜角筋の3つがあります。斜角筋は首の側面にありますので、首の側面がガチガチで痛みを感じたり首を倒すと突っ張ったりする人は斜角筋がこわばっている可能性があります。そして斜角筋はそしゃく筋と関係が深い筋肉ですので、歯ぎしりや噛みしめの癖を持っている人は斜角筋がこわばった状態になっています。
 本来は吸気動作の時に斜角筋が収縮して胸郭が引き上げられ、呼気の動作の時に斜角筋がゆるみ同時に腹筋が働いて胸郭が下がるようになっています。ところが噛みしめの癖、歯ぎしり癖、首や顔に力の入りやすい癖の人などは斜角筋がこわばっているために常に胸郭が上がった状態になっていたりします。
 そして、それは息を吸ったときの状態ですので、その人は息苦しそうに見えます。本人の自覚ではそうは思っていないかもしれませんが、「過呼吸状態の人」であると考えることができます。胸郭が下がっていかないので息を吐き出せないのですが、その状態でさらに息を吸いますので、肺の中は常に空気でいっぱいの状態です。ですからしばしば溜め息をついて処理しなければならなったりします。
 「頭の中も(ストレスなどで)いっぱい、肺の中も空気でいっぱい。どうして溜め込んでばかりなんだろう?」と思われる人は、斜角筋をはじめとして首の筋肉をチェックする必要があるのかもしれません。

喉と舌の状態は隠れたポイント
 性格が内向的で、思っていることがなかなか言葉にできなかったり、うつむき加減で顎を引いた状態で喋る癖になっている人は、構造的に息継ぎが上手くできない可能性があります。瞬間的な息継ぎが苦手なので、苦しくなって言葉を続けることが億劫になっているかもしれません。
 お喋りが得意な人は、次から次にと言葉が続いて出てくるわけですが、そのためには息継ぎがポイントになります。言葉を発することは息を吐き続けるということですから、瞬間的な息継ぎをして空気を吸わないと苦しくなってしまいます。素速い息継ぎのためには肋間筋が素速く働いて胸郭が拡がり、肺に空気が瞬時に入る必要がありますが、それ以外に舌と喉など内部の筋肉の連携が上手くいっている必要もあります。
 食物や唾を飲み込むときの舌や喉の動きを観察しますと、まず舌を使って口の中を塞ぎ、次に舌を口蓋(天井)に押しつけながら舌と喉の筋肉を連動させて食道内に食物や唾を送り込みます。正常であれば、この動作に合わせて喉仏が上下に大きく動きます。もし喉仏の上下運動が何かの原因で障害されるようですと、飲み込む動作が不自然な感じになってしまいます。タイミングを見計らってからでないと飲み込めないような人は舌と喉の連携に問題がある可能性があります。
 息継ぎをすることと食物や唾を飲み込むことは、気管に空気を通すか食道に食物を通すかという違いはありますが、舌と喉の連携、喉仏の上下運動という点では共通点があります。

甲状軟骨と舌骨筋群

 さて、喉仏の上下運動は左右の胸鎖乳突筋の間で行われます。ですから、頭部や首が歪んでいたり、鎖骨の位置が狂っていたりして左右の胸鎖乳突筋のバランスが悪い状態ですと、あるいは頚椎に捻れがあって喉も捻れている状態ですと、喉仏の上下運動が胸鎖乳突筋に当たってしまい十分にできない可能性があります。あるいは、顎を引いた状態で喋ることは、それだけで喉の動きを制限しますので、息継ぎが苦手になってしまい言葉を続けることが難しくなります。
 また、舌は非常に微妙な動きをすることができますが、そのために幾つもの筋線維が複雑に絡み合ってできています。さらに舌には食物を取捨選択するための非常に鋭く繊細な感覚が備わっていますので、舌そのものを壊してしまいますと本人がすっかり満足するほど完全な状態に戻すことにとても苦労します。「まぁまぁ」の状態に戻すことは速やかにできても、息継ぎなど他の筋肉との緊密で繊細な連携を必要とするような繊細さを取り戻すまでには、私の経験から申しますと時間がかかります。ですから舌は大切に、大切にしてください。

腹筋は呼吸筋でもある
 人体模型など見ますと、胸郭と骨盤との間には背骨しかありませんので、大切な内臓をおさめる腹部は無防備で頼りない感じに思えます。しかし私たちには4種類の腹筋があって骨格的に弱点となっている腹部をしっかりと守っています。

腹部の4つの筋

呼気に働く腹筋02


 腹部のセンターラインには腹直筋(ふくちょくきん)がありますが、ちょうど背骨と相対するようにして腹部の“芯”になっています。そして腹直筋と背骨をつなぐように一番深部に腹横筋(ふくおうきん)があります。その表層部に斜め方向クロスするように走っている内腹斜筋(ないふくしゃきん)と外腹斜筋(外腹斜筋)があります。腹直筋も内腹斜筋も外腹斜筋も収縮することによって胸郭を下げる働きをしますので、呼吸運動においては呼気(息を吐き出す)の時にこれらの腹筋が働くことになります。そして吸気の時は、これらの腹筋が伸びることで胸郭がスムーズに上方に動くので肺が大きく膨らむことを可能にしています。
 もしこれら腹筋群の働きが弱い状態ですと最後まで息を吐き出すことが難しくなります。呼吸をして新鮮な空気をたくさん取り入れたいのに古い空気が肺の中に残ったままの状態になっているので呼吸の効率が悪くなります。
 また、腹筋群がこわばった状態の人は胸郭が上に動きにくい状態ですので、吸気が十分にできません。呼吸が浅くなってしまいますので、すぐに息苦しくなったり、しばしば動悸に襲われたりするかもしれません。

その他の呼吸に関わる要素
 「胸はセンサー」と前にも申しましたが、呼吸運動の舞台である胸部は精神的なことや環境からの要素などいろいろな事象に反応して状態を刻々変化させます。心理的ストレスによって胸は塞がったりしますが、具体的な現象としては、肋骨が胸骨のほうに巻き込むように向かっていき、息を吸っても胸郭が拡がらなくなってしまったりします。そのような時には“胸腺”を主眼に、胸骨上をほぐしてみたり、肋骨を胸骨方向に引っ張っている大胸筋がゆるむような施術を行ったりします。
 また、呼吸に合わせて頭蓋骨が動くように、骨盤も拡がったり縮んだりしますが、この動きが起こらないと呼吸が全身的なものになりません。一つの呼吸リズムが全身に拡がって「呼吸が心地良いもの」と感じ、芯からリラックスするためには骨盤の柔軟性が必要になります。
 骨盤の柔軟性を奪うのは腹筋や殿部の筋肉であり、足や下半身からの影響が考えられますので、足やふくらはぎを施術したりします。

 呼吸の理想は、鼻の上部、鼻骨のところでスーッと吸い込んだ空気が副鼻腔を通過しながら頭部と骨盤を拡げ、同時に胸郭を引き上げながら拡げて、ゆったりと肺に空気が十分に静かに入っていくこと。そして次に呼気の段階では、横隔膜がゆるみだし腹筋が働いて息をゆっくり吐き出しながら胸郭が下がって骨盤が閉まるようになりますが、その波とリズムが太股を伝わり、ふくらはぎを伝わって足裏から出て行くようになることです。
 このような状態が理想ですし、私のところでの施術ではそこまで実現しようと常に思っていますが、普段はここまで実現できなくても、今回取り上げた項目の半分以上ができている状態になっていただきたいと考えています。

 さて、うつ症状(うつ病ではない)に対する対応として「酸欠状態を解決すること」が有効だと私は考えていて、そのためには呼吸のあり方を見直して改善する必要がある、というスタンスで長々と書いてきました。
 私たちのからだの中で、脳は最も酸素を必要としている臓器です。考え事をする=思考を展開するためには非常にたくさんの酸素が必要だと言います。脳内が常に十分な酸素で満たされていれば、脳神経の伝達がスムーズで、思考を素速く思い通りに展開することができると思います。しかし頭に疲労(物質)が溜まってしまい、酸素の供給が不十分な状態になってしまいますと「考えたいけど‥‥考えられない!」というような状況になってしまいます。そして、これは誰もが経験していることではないでしょうか。
 もし慢性的に、つまり常に脳内の酸素が不十分な状態であれば、心で思ってもそれを頭にイメージとして構築することができないので実際の行動に移すことができなくなってしまうかもしれません。「思ってはいるけど、からだがついていかない」、このようなうつ状態は、このようにしてもたらされるのかもしれません。

 インターネットなどの情報によれば、うつ症状を改善するための方法の一つとして「深呼吸で酸素不足を解消する」というのがあります。それは上記の理由からも理にかなっていることだと思います。しかしながら、深呼吸をすることによって実際に脳内の酸素が満たされた状態になるかどうかという問題が残ってきます。
 今回取り上げましたいろいろな要素―頭蓋、副鼻腔、首の筋肉、肋間筋、腹筋など―に問題がありますと、深呼吸の動作は「単なるポーズで効果薄し」となってしまいます。ハッキリとした効果が感じられなければ、日課として始めた深呼吸の習慣もいつの間にか続かなくなり、うつ症状というマイナスループから抜け出すことがなかなかできないという状態になってしまうでしょう。
 実際、うつ症状を抱えて困っている人は、何とか改善したいと思っているはずです。ところが、その思いを実際の行動に移すことができないので、うつ状態なのだと思います。
 そんな方は、どうぞご来店いただければと思っています。

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 噛み合わせや舌に関係する症状などについては過去に取りあげましたが、悩んでいる人が度々来店されますので、改めて整理してみます。

噛み合わせと噛み方
 過去に歯科治療で歯を削ったり、歯列矯正を行ったり、あるいは片噛みの癖など影響で噛み合わせがおかしくなったと感じている人がいます。噛み合わせが気になり出しますと心理的にもスッキリしませんし、体調もなんとなく悪くなりますので、都心の専門的な歯科クリニックに遠くから通われている人もいます。
 実際、噛み合わせが合わないことは、単に「噛み合わせがおかしくて不快」という心理的な問題を超えて、必ずからだに悪い影響を及ぼすと私は考えています。
 自然界には陰陽・表裏という原理原則があります。陰と陽、表と裏はまったく性質の違う存在だけれども、二つを切り離すことは不可能で、陰があるから陽があり、表があるから裏がある、という互いに従属しあう関係になっている、それが自然の姿である、という原理原則です。

腹側と背側の境(噛み合わせ)

 私たちのからだにおける陰陽の原理は腹側と背側の関係にあてはまります。尾骨の近くにあります“会陰”を境に陰(腹側)と陽(背側)が始まりますが、その帰着するところは上顎と下顎の接点です。つまり顎関節であり、歯の噛み合わせです。ですから噛み合わせが合いませんと「陰と陽の境界がずれる」ということが起こりまして、そこから派生するいろいろな症状が現れます。その一つが「不快感」であり「落ち着かない心」であると考えられます。その症状を軽減したいがために、噛みしめたり、横向きで寝たり、顎を突き出したりと、いろいろな癖を持ってしまう可能性は高いと思います。

 私の知る限り、顔が下がっていますと噛み合わせや噛み方が「どうもしっくりこない」となる可能性が高くなります。歯科治療で微妙に歯を削ってみたり、マウスピースで調整してみて、その場では快適になったように感じても、時間が経つとまた噛み合わせが気になりだしたり、ご飯を食べていても顎や口周りが疲れたり、噛むこと自体が不快に感じたりするようになってしまうことがあります。
 「歯を削って噛み合わせをいくら調整しても解決しないのになぁ」と私は内心思ってしまいます。
 まず、からだが捻れていたり頭蓋骨が歪んでいたりして、その状態が許容範囲(からだの対応範囲)を超えますとますと顎関節がおかしくなります。ですから順番としては、からだや頭蓋骨の歪みを改善した上で歯の調整に進むべきだと思います。
 さらに、顔(上顎骨、鼻骨、頬骨、前頭骨など)が下がった状態では、口元から力を抜くことができません。口を閉じたときにオトガイ(顎先)に“梅干し”のような筋肉の塊ができてしまう人は、このような状態の典型的な人です。口角も下がってしまうことでしょう。

 いろいろ調整して顔の下がった状態を解消しますと、噛み方がすっかり変わります。言葉で表現することは難しいのですが、それは根本的な変化です。「顎からただ力を抜くだけで口(顎)が開く」状態になりますので、口を開くのに力を使いません。ですから、ご飯の噛み方も噛むとき(顎を閉じるとき)だけ力を使えばよくなります。ところが顔の下がった状態では、顎を開くときも力を使わなければなりません。下顎の底面や喉、首前面の筋肉を意図的に使わないと口を開くことができませんので、その辺りがこわばってしまいます。
 顔の下がっていない人は顎を開くとき“ただ脱力する”感じですみますが、同時に鼻から自然と空気が入ってきますので、口を閉じてモグモグしながらでも呼吸が苦しくなりません。一方、顔の下がっている人はそのようにはなりませんので、口を閉じたままモグモグそしゃくを続けることができず、口を開けてクチャクチャ噛むようになってしまいます。
 この感じは、実際に体験しないとまったく理解できないことだと思います。

頬骨の上下と顎の開閉

 眼の下に頬骨があります。手先を使って頬骨を軽く上に押し上げなら顎を動かし見てください。すると顎関節を脱力する感じで顎を開くことができますし、同時に鼻から空気が入ってくるのが感じられると思います。
 次に、頬骨を軽く下に下げるようにして顎を開く動作を何回か繰り返してみてください。顎関節を脱力する感じではなくなり、喉元の筋肉を使い、顎先の筋肉を使って顎を開いているのが感じられると思います。そして鼻からの空気の流入量も減り、何度かモグモグしていると息苦しくなってしまうのが感じられると思います。

舌の動き
 自分の喋り方に納得がいかない、滑舌に不満を感じている、発声に不満がある、喋ると疲れてしまう、そんな症状に共通しているのは舌の状態です。
 舌は筋肉の塊ですが、幾つもの筋層が複雑に絡み合って、微妙で、複雑で、独特な動きができる仕組みになっています。
 舌のおかしな状態としては、「舌足らず」という状態と「舌余り」と呼べる状態があります。
 舌足らずは舌が引っ込んでいて前に出ない状態です。舌先を大きく出して上下に動かし、鼻先に向けてみたり、顎先に向けてみたりしたとき、うまく力が入らず思うように動かせない状態は舌足らずと言えます。
 確実にそうだとは言い切れませんが、舌筋がゆるんで力が入りにくい状態になりますと舌足らずの状態になり、寝た時にたるんで気道をふさぎやすくなります。無呼吸症候群になったり激しいイビキをかいたりする原因になることもあります。
 また反対に舌が余った状態は、舌が長くなっていたり、大きくなっていたりする状況です。この状態の人は舌先で歯を押してしまいますので、歯列が前に動く可能性もありますし、舌に歯型の痕が残ったりします。舌の動きが少し緩慢になりますので、滑舌に影響したり、舌を噛んだりしてしまうかもしれません。
 喉元や顎の底面を触ったときに奥が硬くなっているようでしたら、それは舌筋がこわばった状態です。噛み方のところで説明しましたが、顔が下がった状態で顎を開くときにはこの辺りの筋肉をたくさん使わなければなりませんので、必然的に舌がこわばってしまいます。ですから顔の下がっている人は、喉元が硬くなり、舌が余った状態で滑舌が悪くなる、という傾向があります。

声の出し方に不満がある
 発声は、吐く息が気道を通るときに声帯を揺らすことによって行われます。吸う息の時でも発声することは可能ですが、それはとても限定的で、普通は言葉を発することはできません。
 ですから、息を長く吐き続けることができないと言葉を続けて話すことができなくなります。
 「出だしの音は聞こえるのに、尻切れトンボのようで、何を話しているのかよく聞き取れない」という人が時々います。自分の発言に自信がない、という心理的な影響もあるかもしれませんが、息をうまく吐くことができないことが理由でこのようになっている人もいます。
 また、このことを自覚している人は言葉を発する度に緊張しますので、さらに声が出しづらくなるという悪循環に陥ってしまうこともあります。

 息を長く吐き出すこのできない人は、一般的には腹式呼吸がうまくできないタイプの人と思われているかもしれませんが、それだけではないようです。歌を歌うときに「ブレス」(息継ぎ)がうまくできないと声が続かなかったり、リズムに乗り遅れてしまったりしますが、喋りにおいても瞬間的に息を吸う「ブレス」は重要です。
 腹式呼吸を意識的に練習している人は、「胸式呼吸」は良くないと思ってしまうのかもしれませんが、横隔膜やお腹のことばかりを重要視する傾向があるようです。呼吸法を実践しているときにはそれで良いかもしれませんが、一般的な日常生活では胸郭(肋骨)を動かして息を入れる胸式呼吸も併用しないと息苦しくなってしまいます。
 私たちが呼吸をして、空気を出し入れしている肺にはほとんど筋肉がありません。ですから、肋骨を動かして胸郭を広げ、横隔膜を下げることによって肺を膨らませているのが吸気の動作であり、反対の動きをして息を吐いているのが呼気の動作の実際です。したがって、肋骨を動かす筋肉(外肋間筋と内肋間筋など)と胸郭を引き上げる筋肉(斜角筋と胸鎖乳突筋など)、胸郭を引き下げる筋肉(腹筋群)の状態が芳しくないと胸式呼吸がうまくできなくなってしまいます。

呼吸における胸乳・斜角・肋間筋

 「ブレス」は一瞬のうちに空気を肺に取り入れる動作ですが、(専門的ですが)要になるのは、外肋間筋の収縮、内肋間筋の弛緩、斜角筋と胸鎖乳突筋の収縮です。さらに肩甲骨も持ち上げますので、肩甲挙筋と上部僧帽筋の収縮も共同作業として必要になります。これらの中で、内肋間筋(呼気の時に肋骨を下に向けて胸郭を下げる働きをする)がこわばっていて肋骨が持ち上がらないために瞬間的な息継ぎが苦手な人がいます。時間を掛けて、あるいは大げさな動作で空気を吸い込むことはできるのですが、瞬間的に鼻から「フッ」と息を入れることができません。できないのを無理してやろうとしますと、背中の筋肉を使って肋骨を持ち上げようとしますので背骨を反るような動作になり、緊張感が現れます。カラオケなどでテンポの速い曲を歌うのが苦手なのは「ブレスが間に合わないから」という理由かもしれません。

 さて、息を長く吐くことができなくて言葉が続けられない人や言葉尻が聞き取りにくい人の対処法として次の練習を薦めています。
 まず呼吸は、吐くことから始めます。長く吐き出すことができない人は心理的にか、たくさん空気を吸い込んでからゆっくり吐こうとします。しかし、日常生活で言葉を話すときはこのような順番にはなりません。ですから呼吸を息を吐くことから始める練習をしていただきたいと思います。
 そして、それに加えて、一息で「あ・い・う・え・お‥‥た・ち・つ・て・と‥‥」と言葉を続ける練習をします。最初はカ行かサ行までしか息が続かないかもしれません。しかし、息が続かなくなるほど吐き出しますと、からだは苦しさのあまり自然と胸やノドを動かして「ブレス」を行います。この無意識の動きが大切です。そして休むことなくすぐにまた「あ・い・う・え・お‥‥」と続けます。これを何回か繰り返しますと、次第に長く言葉を続けることが出来るようになりますし、発声のコツと息継ぎ(ブレス)を会得することができるようになると思います。

 できる人は、何も考えることなく無意識に息継ぎを行い、言葉を話し続けることができます。できない人は、意識してしまいますが、それは緊張を招き交感神経が優位になって、ストレスと感じるようになってしまいます。ですから無意識に自然とブレスができるように、上記のような練習をしていただきたいと思います。

 噛み合わせ、噛み方、喋り方、滑舌、舌の位置と動き、これらは関連性があって繋がっています。つまり、それぞれを単独で修正することは合理的な方法とは言えません。
 噛み合わせを直すために歯科クリニック、滑舌をよくするための舌のトレーニング、喋り方を直すための練習、舌の位置を意図的に良いところに保持する練習、それらを単独で行ったところで、効果はそれほど期待できないと思います。それよりも変な癖がついたりして、かえってマイナスに働いてしまうかもしれません。
 インターネットなどで手軽に「自分でできる○○トレーニング」などの情報を得ることができるかもしれませんが、実際に実践する際は慎重にしていただきたいと思います。過去に眼輪筋を鍛えるトレーニングをやり過ぎたせいで眼輪筋がこわばり、眼の下のシワが目立つようになった人もいました。舌に負担をかける練習をしすぎて思わぬ不調を抱えてしまった人もいます。

 私は整体師として、構造的なことや筋肉や骨格の状態、それらを考えることなく顔や口周りをいじってしまうことに驚きを感じます。
 今は、手軽に、と言いますか、半ば当然のように歯列矯正をしたり、歯を削ったりしますが、それらが招く将来的な弊害の可能性もちゃんと考えていただきたいと思います。歯を削りすぎてまったく噛み合わず、からだの捻れをストップすることができなくなってしまった人がいました。歯が噛み合うだけで、からだの捻れをそこで食い止められたいたものが、できなくなってしまったのです。それは陰陽のバランスを大きく崩す結果を招きますので、からだは大きな不調を抱えることになります。十分に注意してください。


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 今回はほとんどの人が信じないだろうと思われる、“眉唾”に受け取られる話題です。

 過去に経験した肉体的な大ケガやそれに基づく精神的な恐れやトラウマ、それらを克服することはなかなか困難のようです。鬱、ストレス、それらから抜け出せない人もかなりいると思います。このブログで「首肩から力が抜けない」というの話題を幾度か取り上げましたが、実際、首肩から力が抜けない状態を克服することもなかなか大変です。
 私の母はリウマチを患い膝関節が変形してしまったため、常に膝が締めつけられているように感じていますし、長く歩くと膝が痛くなります。しかし、時々からだに何の痛みや違和感を感じなくなる時があります。すると「なぜか意識がからだをチェックしだし、何処かに悪いところはないかと探し始めてしまう」と言います。「何かに夢中になり、意識がそちらにとられていると痛みのことなど一切忘れてしまうのに‥‥」というのは誰もが実際に体験していることではないでしょうか。
 何度も何度も”ぎっくり腰”を繰り返し、常に腰に不安を抱えている人は、実際には筋肉の状態が良くなって腰を使うことができるのに、なるべく腰部を使わないようにガッチリ腰を固めて動作しようとする傾向があります。すると腰や背中はピンと張った状態になりますので、捻ったり曲げたりすることができないばかりか、ちょっとしたことでまたピリッ、グキッとなってしまいます。心理の深い部分に「もう腰をケガしたくないので腰をガチッと固めておきたい」というのがあるのは理解できます。しかし、これでは自分で自分自身に制限をかけているのと同じこと、つまり自分で症状の改善をストップしているのと同じことですので、そこから先には一歩も進めなくなってしまいます。いつもいつも同じことの繰り返しで、少し状態が良くなったとしても、またちょっとしたことで腰部が傷つき、腰痛状態に戻ってしまいます。

不安、恐れ‥‥負の思考回路
 「マイナス思考」「ネガティブ」という言葉はよく耳にしますが、それを克服することは実際なかなか難しいことです。
 私の仕事に関連して例をあげてみます。
 何度も何度もギックリ腰を繰り返して腰の状態が非常に悪くなった人は、ちょっとしたことですぐにピリッ、ギクッ、グキッとなってしまう経験が身にしみていますので、常にその状態にならないようにと気を使っています。そしてそれは“腰部を固めてなるべく動かないようにする”という対処方法です。布団に入る時、布団から起き上がる時、椅子に座る時、椅子から立ち上がる時、必ず背中や腰を固めて動かない状態にしてから動作を行おうとします。“固める”ということは”息を止めた状態”で動作するということです。「腰をゆるめながら動作しないと危ないですよ!」と注意するのですが、どうしてもそれができません。不安や恐れの気持ちが根深くあるので、本人が「ゆるめなくては‥‥」と思っていてもそれができないのです。
 そしてこのような人はすべての動作において警戒心が働いてしまうようです。自分の意に反して常に腰部が固まった状態になってしまいます。家事で洗い物をするとき、包丁を使う時、洗濯物を干す時、入浴で髪やからだを洗う時、誰かに呼ばれてふり向く時‥‥、あらゆる動きで腰や背中を固めてしまいますので筋肉のしなやかな連係プレイは望むことができず、すべての動作がロボットの動きのようになってしまいます。そして何よりも、すべての動作でピリッとかギクッとか筋肉を傷める確率が高くなってしまいます。

 筋肉や骨格の状態も改善してきて、普通にしているだけではそれほど腰痛を感じる状態ではないのに、散歩をしてくると腰部や殿部がカチッとなってしまい痛みを感じる部分ができてしまいます。すると、その後の家事がやりづらくなったり、肩や腕などに痛みを感じるようになってしまうことがあります。「朝は普通に包丁が使えたのに、夕方は肩がカチッと固まってしまい包丁が使えなくなった。」というのは腰が固まっているからかもしれません。
 右手を使う時、普通は左腰に体重を預けて動作を行います。椅子に座った状態で、右のお尻(坐骨)に重心を乗せた状態で右手を動かそうとすると、どことなく不自然な動きになります。ところが左のお尻に体重を移すと途端に右手の動きが楽になります。重心を掛けた側とは反対側の腕や脚がフリーになるからです。からだはこのようにできています。ですから右手で包丁を使うならば左脚に体重を乗せるようにしたり、あるいはキッチン台に左腰を預ける(ぶつける)ようにして斜に構えて右腕を操作するのが自然な在り方であると言えます。ところが左腰に痛みを感じたり、左腰が固まっている時はそれができませんので、両足で突っ立ったまま、あるいは右側に体重をかけて右腕を操作してしまいます。すると包丁が上手く使えないばかりか、右肩や右腕の負担が増し、痛みを感じるようになってしまうかもしれません。包丁を使った後、字を書いた後、手や腕がとても疲労してしまう人は、重心のかけ方を工夫するだけで問題が解決するかもしれません。

 「左腰がカチッとしているので体重を掛けられない」という心理は解ります。しかし私はあえて「工夫をして左腰に体重を乗せてください」と言います。ゆっくり軽く足踏みをしたり、ゆっくりからだを捻ったりして左腰が固まった状態を解除してくださいと言います。「左側に体重を掛けられる状態にしてからでないと包丁は使ってはいけない」と言っていますが、からだの改善を図っている人にとってはこの微妙な重心移動がとても重要な要素であると考えています。

 ここからが謎めいた話になりますが、私の母は考え事をするとき必ず頭を動かして右下やや後方に視線を向けます。こういう仕草をしないと脳の思考回路のスイッチが入らないのかもしれません。一方で“右下やや後方”ということは、脳の右端、“右耳辺り”の場所を使って思考を展開していると解釈することもできます。人それぞれに脳の中で思考を展開する特定の場所というものがあるようです。
 ある人は額(前頭葉)の右側寄りを使って思考を展開しています。何を考えるにもそこを使っていますので、しばしばその部分が頭痛に襲われますし、頭蓋骨もそのように歪んでいます(頭部が右側にずれている=頭の右側が大きい)。それだけならまだ良いのですが、観察していますとその部分を通過する思考は必ずマイナス思考になってしまうようで、それが問題です。「できない」「恐い」「慎重」「不安」というフィルターがそこに存在しているかのようです。例えばこれまで30㎝くらいしか動かすことができなかった動作を35㎝に拡げようとします。筋肉の状態は十分にその動作が可能な状態です。ところがこれまでよりも5㎝動作が大きくなると考えただけで息が上がりだし、緊張感が生まれ、不安に襲われてからだが硬直してしまいます。当然動作は上手くできません。
 「首肩から力を抜いてゆったりと腹式呼吸をしてください。」とやってもらいますと、始めの2~3回は上手くできます。余計なことを考えることなく、単にそのリズムと雰囲気を継続してもらうだけでからだはどんどんリラックスしていくのですが、こういうタイプの人はすぐさま頭の“いつもの場所”を使い始めてしまいます。「このやり方でいいのだろうか?」とマイナス思考の回路が台頭し始めます。すると腹式呼吸をしているはずが、次第に呼吸が上がってきて息苦しくなり首肩の緊張が増してしまいます。
 そうなった場合でも、「そこ(額の右側)に意識やイメージを持っていかないでください。額の中央にイメージを持っていき、“単に吐くこと”だけに集中してください。」と言いますと、すっかり息苦しく感じていた呼吸が急に楽になり始め、腹式呼吸ができるようになります。
 呼吸に限らずどんな運動を開始する時も、この方は先ず身構えてから動作を始めようとします。慎重に体勢を整えてから動作を開始しようとする姿は“集中する”という面では長所です。ところが知らず知らずのうちに額の右側を使ってしまので、それは大きなマイナスです。「そこ(額の右側)で何を考えているのですか?」と尋ねても「別に何も考えていない」と応えます。もう何十年もこの癖を持って生きてきたので本人にはごく自然のことであり、「何がいけないのか?」まったくわからないのかもしれません。
 「では、そこ(額の右側)に意図的に意識を持っていかないようにしてください。何を思うにも額の真ん中で行ってください。」とやっていただくと身構えることなく動作を開始することができるようになります。あるいは動作をしながら意識を額の中央に持っていっていただくと、最初はぎこちなかった動作が次第にスムーズにできるようになります。
 この方のご両親は大変しつけが厳しかったようで、幼少の頃から“ミスしてはいけい”という思いを抱いていたということです。これは私の想像ですが、怯えが常にあったのでご両親を真正面から見ることが出来なかったのかもしれません。そうであるならば、それが知らず知らずのうちに視線と意識を額の右側に寄せてしまう癖をつくってしまったのかもしれません。

 「上手くやろうとしないでください。気持ち良くなるようにやってください。」私が今、この方に言い続けている言葉です。たとえば最初から上手く歩くことができなくてもかまいません。歩き続けているうちに、歩みの一歩一歩が次第に心地良く感じられ、腰やお尻の筋肉が働いていることが気持ちよく感じられるようになれば、歩き方は自ずと良くなっていきます。そして気持ちよく歩けている時は額の右側の思考回路は停止しています。自然に顔が上を向き出し、視線がしっかりと前方を捉えるようになります。背も高くなったように感じられます。「この感覚をしっかり覚えてください。からだに染み付かせてください。」とそう言っています。
 しかし、一端止まって再び歩き始めてもらおうとすると、例によって、“上手く再現しよう”という思いが額の右側を占有し始め、身構えることから始めてしまいます。すると、たった今できたことが何秒か後にはできなくなってしまう状態になってしまいます。

 ピアノや楽器の練習、スポーツの練習、あるいは何かの習い事などを真剣にやってきた経験のある人たちには理解できると思いますが、「上手くやろう」という邪心が芽生えますと、それが自分自身を制限し始め、それまで普通にできていたことが突如できなくなってしまったりします。また反対に、その時の技量では「なかなか難しい」と思われていたことも一生懸命トレーニングを繰り返し、頭の中にしっかりとしたイメージが出来上がれば、いざ本番という時に無心(余計なことを思わない集中した状態)になって取り組むことができるようになり、自分の限界を超えることができたという経験をお持ちの人も多くいると思います。これをメンタルトレーニングなどと言って心理学的に考えることもできるのかもしれませんが、頭の使う場所、つまり脳のどの思考回路を使うかという観点で考えることもできると私は思っています。

 四十肩や五十肩で肩関節が思うように動かせないのに「関節が固まってしまうから‥‥」という私から見ればとても不合理な理屈でオモリを持たせ強制的に関節を動かすようなトレーニングをさせたり、膝が痛むのに太もも(大腿四頭筋)にかなりの負荷をかけて筋力をアップさせようとするトレーニングなどを推奨している専門家がたくさんいます。こういうことは私のところでは一切やりませんが、時々、その時点でのご自分の限界点をその方が超えようとするとき、どのような息づかい(呼吸)、どのような気持ちや頭の使い方をしているかを観察するために、「動かせる限界から、もう少しだけ動かそうとしてみてください。」とお願いすることがあります。
 限界点を超えて動かそうとするので痛みを感じます。ですから誰もが一瞬不安な気持ちに襲われます。この時、もしその方がこの症状でとても辛い思いや痛みを経験したことがあったり、あるいはトラウマが頭に甦ったりしますと、その方の呼吸は突如として変わり、からだが硬直して手に冷や汗が出てくるかもしれません。「少し痛くてもリラックスして、息を吐きながらもう少しだけ動かしてみてください」と言われたところで、「わかってはいるけど、できない!」ときっと思われることでしょう。
 そして「できない!」という思いがどこかにあれば、実際、それ以上は動かすことはできません。“恐い”、“できない”という否定的な感情や思考はとても強力です。瞬時に呼吸を悪くし、筋肉を硬直させてしまいます。
 限界を超えて何かに挑戦するためには集中力が何よりも大切です。腕が30㎝しか上がらなかったものを35㎝に拡げようとするなら、肩関節や腕のつけ根の筋肉に全意識を集中させて取り組む必要があります。ところが頭の中に否定的な思考が生まれますと、意識の力が分散してしまい集中力が消え失せてしまいます。ご自分では肩関節や腕に意識を集中させているつもりでも、実際には頭の中にある「できない!」という恐怖心に意識がとられてしまいます。ですから実際、“できない状態”になるばかりか、痛みを感じたり、呼吸が荒くなって息苦しさを体験することになります。

 この時の「できない!」「恐い!」という感情は思考回路だと私は考えています。
 腕が30㎝しか上がらないなら、30㎝上げることをゆっくりと幾度か繰り返してもらいます。この時に意識を肩関節あるいは腕のつけ根に持っていってもらうのですが、それは実際には頭の中にイメージを作りあげるという作業です。頭に肩関節のイメージを描いて、そこに意識を集中するということですが、この作業をいつもの右側ではなく額の中央で行ってもらいます。ゆっくりと幾度か(30㎝動かす)動作を繰り返していると集中力が増していき、無心の領域に近づいていくのが感じられます。するとやがて30㎝だった可動域が自然に35㎝になり、それを超えていくようになったりします。(但し、肉体的状態として”動かすことができない”というのはあります。こういう状態の時に「もっと動かして!」と強要するのはからだを更に壊す原因になりますので、それはダメです。)

 少々乱暴な言い方になりますが、誰でもプラス思考やマイナス思考を持っています。額は脳の前頭葉の場所ですが、そこで私たちはイメージを形成して思考を展開していきます。仮にその方の前頭葉の右側で視覚化されたイメージはマイナス思考に結びつき、前頭葉の中央で視覚化されたイメージはプラス思考に結びつくと考えるならば、額の右側を無視して欲しいと思います。長年の癖は引力がとても強いものです。実際、額の中央に集中しようとしても動作が限界点に近づくと額の右側から“引っ張り”がやってきます。一連のトレーニングが終了して“ふっ”と安心して気を許すとすぐに思考の場所が右側に戻ってしまったりします。ですから、額の中央で視覚化することが“ごく普通”、“当たり前”になるまで自分の思考の在り方を注視し続けなければなりません。

集中するということ
 ほとんどの人は今回の話に疑問や疑いを持たれていることと思います。実際に体験しなければ“誰もわからないだろう”ということを承知の上であえて話題にしました。その理由は、私のところに来られる方々の中には肉体的な不調だけでなく、それに関連して精神的にも苦しんでいる方々が多くいらっしゃいまして、「何か良い手立てはないだろうか?」と毎日のように考えているからです。
 これらの方々は、施術を終えたときは症状も軽快して心理的にも明るくなるのですが、何日かしますとまた元の悪い状態に戻ってしまいます。肉体的な問題だけでそうなるのであれば、私の見立てが見当違いだったのか、私の技術力が未熟だったのか、という問題としてとらえることができるのですが、明らかにそうではなく、本人の心理状態が不調を改善することに対して邪魔になっている場合があります。“呼吸が悪く首肩から力が抜けない人”はこの傾向の人だと思われます。

 “疑いの心”、“恐れ”、“不安感”は、からだを改善することだけでなくいろいろな面で“邪魔者”です。何かを達成しようとするとき、私たちはそのことに集中して取り組まなければなりません。集中力が欠如した状態では思いを現実化することはできません。好きな楽器を練習するとき、趣味やスポーツに没頭するとき、商談で話し合うとき、美味しい食事を口にするとき、私たちは自然とそのことに集中し、瞬間的であったとしても他のことは頭から消えてしまいます。それが私たちに本来備わっている“集中力”という能力です。「どうせできないさ」とか「自分にできるだろうか?」とか「できなかったらどうしよう?」といった邪心(疑い、不安、恐れ)が頭にある状態では物事に集中することはできません。
 ですから、からだの状態が悪い「今」を、良い状態に変更しようと考えるならば‥‥つまり健康な自分を現実化しようとするならば、邪心をどこかに放り出して集中力を最大限に発揮する必要があるという理屈になります。

 たとえば痛みの出ない範囲でゆっくりと腕を動かし始めることは、不安感や恐怖心が表に現れませんので、集中力を発揮しやすい状態で運動を開始するということです。そして何度か同じ運動を繰り返していますと、集中が次第に深まっていき、他のことは何も頭になくなるという領域に心がシフトしていきます。するとからだの細胞は頭(脳)の状態を反映するかのように動きが良くなり始め、可動域が少しずつ大きくなっていきます。(ゆっくり、じっくり動かすということが大切です。)
 観察していますと 不思議なことですが、頭(脳)はギアチェンジするかのように違う領域へと状態をシフトしていきます。それを“脳波の移行”(α波、β波、θ波、Δ波)というとらえ方で説明できるのかもしれませんが、それについては私はよく知りません。
 ミュージシャンや歌手が音楽に集中するとき、野球選手が最大限に集中力を発揮しているとき、サッカー選手が集中しているとき、顔つきが普段とは違って「集中しているなぁ!」とわかりますが、ここに来られる方々も集中しているときは、顔つきが変化しますので私にはわかります。それは“わざとらしい集中”や“大げさな集中”ではなく、地味で”静かな集中”という様相ですが、確実に呼吸の状態も良くなっています。ですから、自分自身の変革、変化に取り組んでいるときは「いつもこうあってほしいなぁ!」と思っています。
 そのためには、先ず邪心の入らない状態に自分をおくことから始め、少しだけの進歩や変化でもいいですから、それを”良し”と思っていただき、毎日着実に前に進んでいることを実感していただくことが大切だと思います。

 また、からだの不調をいつも気にしている人は、ここで取り上げた”静かな集中”、“邪心のない集中”が苦手な傾向にあります。からだの不調とは関係のない、例えばお喋りに夢中になる、テレビ番組に集中する、といったことに対しては何の邪心もないままにストレートに集中することができますが、からだや心の気になることに関しては「単に集中して観察する」ということができないようです。どうしても“自分の想い‥‥不安、恐れ、疑い”というフィルターを通して観察してしまうようです。疑いのフィルターを通してからだを観察すれば、「今は良くてもまた駄目になってしまうのではないか」という思考が形成されます。恐れのフィルターを通して観察すれば、「この運動でまたグキッと筋肉を傷めたらどうしよう」となります。
 そしてこれらの邪魔なフィルターは“思考回路”だと私は考えています。道路を走る自動車に例えるならば、目的地に着くまでにどうしても寄りたくなってしまう「道の駅」みたいなものです。道の駅を無視して真っ直ぐに目的地に向かうなら余計な買い物をすることもなく、時間を浪費することもありません。道の駅に寄って一服してしまいますと、トイレを済ました後突然、「やっぱり行くのは止めて家に戻ろうかな?」などという心が芽生えてしまうかもしれません。朝目覚めたときに思いついた「今日は遠出をして気分転換しよう!」という素晴らしい計画は道の駅に寄ったがために「遠出して本当に気分が変わるだろうか? やっぱり家に帰ってのんびりしよう」という尻つぼみの結果になってしまうかもしれません。
 邪魔なフィルターの回路とは、この道の駅のようなものです。そこを思考が通過してしまいますと、当初の目的とは別の結果が導き出されてしまうのです。ですから、その思考回路に思考を通過させないようにと、苦しんでいる方々にはお伝えしたいのです。

 上記に例として取り上げた方は、この邪魔な思考回路のある場所が額の右側です。ですから何を考えるにも「額の右側に持っていかないでください」と注意し続けています。それでも何十年にもわたる癖ですから、そう容易く克服することはできません。ふとした瞬間に、油断した瞬間に、額の右側は思考を引っ張り込んでしまうのです。

意識の向け方とからだの変化
 やはり首肩から力が抜けずに顎、首、肩が不調で苦しんでいる別の人がいます。「私は二人で並んで歩く時、左側(連れの人が右側) に居ないと落ち着かない」と仰います。つまり誰かが自分の左側にいると落ち着かなくなると解釈することができます。また同時に「赤面症の気があるようで、正面で相対して仕事の話しなどをすると顔が火照ってきて緊張してしまう」とも仰っていました。そこで実際に、私がその方の左側と右側に立ってからだの変化を観察してみました。すると実際には本人の思いとは反対に、私が左側に立つと首肩から力が抜けてからだはリラックスした状態になり、右側に立つと首肩に力が入りだし呼吸も荒くなってしまいました。そしてその方の正面に相対して眼を見ながら会話を始めると、ここでも二つの状態が現れました。私が正面やや右側で相対すると首肩に力が入り出し息が荒くなりますが、私が少し移動して正面やや左側の位置になりますと、それまでの緊張感はスッと消えました。
 この反応を私は、意識を右側に向けるとからだが緊張する、つまり自律神経の交感神経が優位になる傾向があると解釈しました。からだが自然と防御体制になってしまうと考えました。
 「これまでの人生でトラウマになるような出来事はありましたか?」と尋ねますと、なかなか思い出せなかったのですが、しばらくしてから「そういえば随分前だけど、子供の友人のお母さんから激しく苦情を言われたことがあって、その時のことがずっと心に残っているのかもしれない。赤面症のようになったのもそれからかもしれない。」と仰いました。
 赤面症を医学的どう捉えているのかは知りませんが、単純に考えますと“顔の表面に血液がたくさん集まる”ということですから、顔の血管をコントロールしている交感神経が活発に働き出すということであると考えることができます。また火照りなども感じるのであれば、顔だけでなく脳も含めて頭部全体の交感神経が活発化するということです。自律神経のうち交感神経は、本来“防御体制をとっていつでも逃げられる”準備をするためのものですし、副交感神経はこれとは反対にリラックスしてからだを休めるためのものです。
 こう考えますと、この方が誰かと並ぶ時は右側にいて欲しいと願うのは、何かあったらいつでも逃げ出せる状態に自分を置いておきたいという深層心理なのかもしれません。
 これを“意識の向け方”という観点で考えますと、意識を右側に向けておけばいつでも防御できる状態なので安心感が生まれ、意識を左側に向けることは、どこか無防備に感じてしまい、からだはリラックスするかもしれないけど心は落ち着かなくなる、ということであると考えることもできます。

 意識がいつも頭や首や肩にある人はそこから力を抜くことがなかなかできません。つまり悩み続けている時や、いつも頭で考え続けている人は自然と顔首肩に力が入ってしまうということです。こういう人に「肩の力を抜いてください」と言ったところで、実際のところそれは難しいことです。意識がそこ(首・肩・頭)から離れないので力の抜き方がわからなくなってしまうのです。ですから私は「意識を足の方に向けてください」とか、腰を捻る運動や下半身を使う運動をやってもらったりします。すると意識がそちらの方に移動するので自然と首肩から力が抜けるようになります。
 なかなか首肩から力を抜くことができない人に対して、稀にとても抽象的な質問ですが、「今、この瞬間、あなたはどこで生きていますか?」と尋ねることがあります。つまり意識をどこに集中させていますか? ということなのですが、上記の”思考回路”のことも含めて、その方の癖を自分自身で実感していただきたい、そしてその癖を克服することに挑戦していただきたいという願いを込めて、こんな突飛な質問をすることがあります。

 私は心理学者でも心理セラピストでもありませんので、トラウマや上記で取り上げたような状況を根本的に解決するためにどうすればよいかということは知りません。ですからここに記してきたような事柄はもしかしたら単なる対処法に過ぎないかもしれません。しかしながら色々な病院を巡っても曖昧な応えしか得られず、挙げ句の果てに心療内科に回され、結局のところ薬を出されて釈然としない思いを抱いている人達の話を聞きますと、このようなアプローチ方法も有効な手段ではないかと思っています。

 思考回路のことに話を戻せば、私の仕事上での思考回路は「からだは全部つながっている」というものです。この思考回路を通して皆さんのからだを観察し、施術の方針を決めています。ですから骨盤を調整するために足先や手指を施術したり、噛みしめや目のコリを解消したりすることは、からだは全てつながっていて影響し合っていると考えている私にとっては何ら不自然ではなくごく当たり前のことです。ところが現代医学ではほとんどそのような考え方やアプローチはしませんし、テレビや本や雑誌などから情報を得ている皆さんも同様だと思います。これは大雑把に言ってしまえば、私とお医者さんとは思考回路がまったく異なっているということです。私もかつてはお医者さんや皆さんと同じような思考回路を使ってからだを観察していました。「腰痛の原因は椎間板が云々で、神経が圧迫されて云々」と勉強していましたので、そのような目(思考回路)で腰痛を捉えていました。ところがそれでは解決しない、“腑に落ちない”ことをたくさん経験しましたので、根本的に考え方を変えようと決心しました。つまり、それまでコツコツと勉強して築き上げてきた思考回路を全く別のものに取り替える作業に取り組んだのです。新しい思考回路が確立するまで2~3年は掛かったと思います。その間は、元々の思考回路からの攻撃(引力)をたくさん受けました。腰痛の方が来店されると、つい“神経の圧迫”とか“椎間や腰椎”などと頭に浮かんできてしまうのです。
 ですから思考回路を変更するということ、これまでの思考回路を使わずに新たな思考回路を築き上げるという作業が如何に大変で、粘り強い忍耐力が必要なことはよく理解しています。決して一朝一夕にできることではありません。しかし思考回路が変われば、からだが変わり、からだの使い方が変わります。
 顔・首・肩から力が抜けずに辛い思いをしている人、呼吸が苦しくて生きているだけでも辛いと感じている人、そういう人達は肉体的な調整だけでは不十分です。肩こりをほぐしても、楽に感じるのはその時だけです。
“今の自分”を抜け出して、心地良い自分、新たな自分になることを目指すのであれば、忍耐することを心に決めて”考え方を変えること”、つまり新たな思考回路を築き上げることに取り組んでみてはいかがかと思います。

足つぼ・整体 ゆめとわ
電 話  0465-39-3827
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 首と肩が緊張している人がたくさんいます。このような人は体型的に、猫背であったり、首が短く見えるようになっています。体型的なことだけであれば、さして云々する必要はないかもしれませんが、首・肩の緊張は体の働きにも悪い影響を与えますし、精神的にもリラックスできないのでなんとか改善していただきたい問題です。
 首を触ったときに硬くなったスジ(筋)がはっきりわかるようであれば、それは筋肉がこわばっていて緊張状態にあるということです。筋肉のこわばりが解消すると首はしなやかでなめらかな状態に感じられるようになります。

 さて、肉体を動かすことより考え事をたくさんする傾向にある現代の私たちは、どうしても意識が頭の方に向かいます。一日の活動を、頭を中心に行っていると言ってもよいでしょう。そうしますと“気”がどんどん上の方に上がってしまいますので、胸から下がおろそかになってしまいます。こういう生活を長く続けていますと“気を下ろす”ことができない体になってしまい、呼吸で言えば、“吸ってばかりで吐くことのできない体”、つまり“過呼吸状態の体”になってしまいます。この状態では自律神経が交感神経優位になってしまいますので、芯からリラックスすることは難しくなります。子供の頃とは違って、朝目覚めても疲れが残ったままで一日を始めなくてはいけない状態になってしまいます。

 ところで、簡単なテストをやってみましょう。手や腕のどこか、指圧すると痛みを感じる部分を、痛みを我慢しなければならないほど強く押してみてください。
 この時、痛みをこらえるために体のどこに力を入れていますでしょうか?
 臍から下の下腹部あたりに力をいれてますでしょうか。あるいは胸、あるいは首や肩の方でしょうか。
 これは体のどこを中心に使っているのか、つまり重心がどこにあるのかを知るための簡単なテストです。

 痛みをこらえるために思わず首・肩に力が入ってしまうようですと、それは重心が上にあるということで、私たちの本来の状態とは違っています。痛みをこらえるときは無意識に息を止めますが、下腹部の方に力をいれて息を止めている人は吐いた状態で止めていると思います。首・肩に力を入れて息を止めている人はで、吸った状態で止めているはずです。私たちの体は息を吸っている過程では無防備(すきだらけ)になり筋肉に意志が通じず傷める可能性が高い状態になります。つまり、首肩につい力を入れてしまうようなときは体を壊しやすということです。ギックリ腰を度々経験する人は思い当たる節があるのではないでしょうか。

 私たちの体の本来の状態は、骨盤が中心ですべての動作が行われるようになっています。しかし、日々の生活では本来の状態を保てない状況がかなりあります。 
パソコンの姿勢
 例えばパソコンのキーボードを操作するのは指先ですが、指先を動かすための力は骨盤(下腹部)から来ることが理想です。そのためには肘を下に降ろし、手首(手根部)は床面に着いた状態でなければなりません。この状態であれば肩に力を入れることなくリラックスした状態でキーボードを操作できますし、実際に文字を打っているときに下腹部に力が入っているのが確認できると思います。ところが肘を浮かせ、手首も浮かせますと途端に肩に力が入ってしまい、息を吐き出すことが困難になってしまいます。仕事上、書類を見ながら腕を前に出した状態でキーボードを操作しなければならない状況が何時間も続けば、肩に力が入りっぱなし、息を止めっぱなしの時間がとても長くなってしまうということです。こんな日常を続けていますと、動作の重心が首・肩の方に上がってしまうのは仕方のないことかもしれません。
 社会生活を続けている以上、首・肩に力が入り重心が上がってしまう傾向にあるということを知った上で、その状態を解除し、重心を下腹部に戻すためにはどうすればよいか、ということを考えてみましょう。

骨盤が中心である理由
 ところで、骨盤中心で動作を行うことが何故重要なのかということについて考えてみます。
 私たち人間は生物学的に哺乳類になりますが、もう一つ大きい枠では脊椎動物に属します。脊椎動物というのは背骨がある動物のことです。太古の時代、脊椎動物の先祖に背骨がまだできていないとき、体には頭も尻もありませんでした。丸い袋状のような形をして海の中で生活していました。袋には穴が開いていて、その穴からプランクトンなどの食物を摂取しては、同じ穴から尿や便を排泄していました。つまり最初は口と肛門、頭と尻(骨盤)はくっついていたのです。それが億年単位というとても長い間海中の波に揺らされ、流されていると、次第に体に長さができ、頭らしきものができるようになりました。頭らしきものには鼻ができ、エサを嗅ぎ分ける能力ができたのかもしれません。すると頭に相当する部分はエサに向かって進みたいと考えるようになったのか、やがて頭が尻(骨盤)から分離するようになります。これを“頭進”と言うそうですが、尻(骨盤)から分離した頭部(頭脳)は、その本能として前に前に進みたいという欲求があり、やがて頭が尻を従えるようになったのかもしれません。
 やがて進化が進むと頭と尻がすっかり分かれ、その間に背骨ができた脊椎動物となりますが、それは魚の姿です。その後、魚が陸に上がり、手と足ができて爬虫類(ワニなど)になり、哺乳類に進化が進み、私たち人間が誕生するのですが、骨盤と頭の関係を考えるとき私はいつもこのことを思います。
 つまり、骨盤が最初にできて、次に頭ができて体幹となり、手と足は最後にできて四肢と呼ばれるようになりましたので、筋肉の流れもこのようになっているのです。全身の筋肉は収縮するとき骨盤に向かいます。筋肉が伸びるときは骨盤から遠ざかる方向に向かいます。この現象が私の整体の基本中の基本なのですが、筋肉だけでなくエネルギーの流れも同じなのではないかと考えています。
 骨盤(下腹部)から力をもらって手足や指先などが動いているのであれば何の問題も起こりませんが、そうではない動作をしていますと、いろいろと体に不具合が生じてくるのではないかと思っています。激しいギックリ腰になり、骨盤部の力をまったく使えない状態になりますと、体を動かすことができなくなってしまうことがあります。そういう経験をされた方は、骨盤や腰部の力が体にとっていかに大切かということがよく解るのではないでしょうか。

首・肩から力を抜いて重心を下げるには呼吸しかない
 またまた呼吸の話になってしまいますが、首・肩に力が入って常に緊張状態にある状況を解除するためには呼吸を利用するしかないように思います。
会陰中心部上面

 「意識はエネルギー」ですから、意識が下腹部に向かっているときは、エネルギーは下腹部に集まります。そして意識を下腹部に向かわせるためには、息をゆっくり吐き出しながら下腹部に集中するのが簡単な方法です。ところで、下腹部とか下丹田とか骨盤とかの言葉は範囲も広く曖昧な受け取られかたをするかもしれませんので、これからは“会陰”と改めます。骨盤底で尾てい骨のすぐ前にあるのが肛門で、そのすぐ前にあるのが会陰中心部です。息をゆっくり吐きながら会陰中心部に意識を集めます。呼吸は普通にしていれば良いです。そうしながら5回、10回と呼吸をしていると次第に首・肩から力が抜けていくと思います。そしていつの間にか精神的な緊張もほぐれ、会陰が息づき始めるのを感じることができるかもしれません。
 はじめのうちは会陰を明確にイメージすることができないかもしれません。そんな時は下腹部とか尾骨に意識を集めることから始めてください。やがて馴れてくると、会陰中心部が明確にイメージできるようになり、そこへの集中も簡単になります。

 会陰に意識が集まるということは、エネルギーが会陰に集まることと同じです。何の動作をするにも会陰をイメージながら行っていれば、それは骨盤の力を使って動作を行っていることになります。会陰で座り、会陰で立ち上がり、会陰で歩く、こんなことが無意識に自然に行うことができるようになれば、それまで首・肩中心に行っていた様々な動作が骨盤中心の動作に変わるようになります。そうなりますと、肘と手首を浮かせた状態でキーボードを打つことが、いかに不自然な動作であるかに気づくことでしょう。仕事場の配置を変えたりして、自分がリラックスして作業を行えるよう工夫するようになるかもしれません。

 「体を変えることは、使い方を変えること」これは私の整体に対する理念の一つです。肩が凝りやすい、膝が痛みやすい、股関節がすぐに痛くなる、等々、多くの人が自分の傾向を把握しています。そしてそれをなんとか改善したいと私のところにきます。私はその症状を改善することと併せて、その症状になりやすい原因をその方に明らかにするようにしています。そして体の使い方が変わるように施術を行い、その方にもアドバイスをさせていただいています。それでもなかなか“使い方の癖”を一朝一夕に改善することは難しいことがほとんどだと思います。「右側ばかりで噛まないでください。」「いつも同じ場所でテレビを見ないようにしてください。」「一日の終わりには肩甲骨を後に引くストレッチをして脇の下の筋肉を伸ばしてください」などと申し上げますが、後ほど確認すると「つい忘れてしまって‥‥」などと、“ついつい‥‥”という返事が多く返ってきます。
 使い方が偏りますと、筋肉の状態がバランスを失い、体や顔が歪むようになります。施術で整えたとしても、使い方が変わらなければやがて元の状態に戻ってしまいます。それが道理です。

 今回テーマの首・肩に力が入ってしまう状態に対しては、施術で、自然に骨盤に力が集まり首肩から力が抜けるように整えるのが私の仕事です。一回の施術では無理にしても、数少ない施術で骨盤が中心になって体を使えるように整えようといつも考えています。体が上手く使えない状態なのに、“こうしては駄目”とか“こうしてください”など使い方を無理やり矯正するようなことは強要しません。しかし、一定期間は日常生活での体の使い方に注意を払っていただかなければなりません。
 頭の“思い込み”の思考回路はなかなか頑固で、考え方を変えるのはなかなか難しいですが、体の使い癖もそれなりに頑固です。自分では気をつけているつもりでも、油断するとすぐに以前の癖に戻ってしまうことでしょう。しかし、それでも忍耐強く挑戦し続けていただきたいと願っています。

 まとめになりますが、首肩の力が抜けない人は、全身の動作を行う中心(起点・重心)が体の上の方にあって、意識(=エネルギー)も上にありますので、胸から下がおろそかな状態になっています。本来、私たちのあらゆる動作の中心は骨盤(会陰)になるように体ができていますので、首肩に力が入っているときは体を壊す可能性が高い状態であると言えます。
 それを改善するための一番簡単な方法は呼吸であり、会陰に意識が集まるようにゆっくり息を吐くことを中心にした呼吸を行っていくことで、重心を上部から骨盤部に移すことができます。無意識に、自然にこの呼吸ができるようになれば、それまで首肩あるいは胸にあった動作の中心が骨盤部に定着しますので、体は理に合った、省エネの動作をすることができるようになりますし、体を壊しにくい状態になります。
 そしてそのためには、重心が骨盤部に安定するまでの間、体の使い方の癖を変化させるために、いつも会陰を意識するように忍耐強く頑張る必要があります。
 こうして首肩から力が抜ける状態が定着しますと、それまで交感神経優位で肉体的に緊張状態にあったものが解消されますので、体をリラックスさせることがいとも簡単にできるようになると思います。

 ストレス社会と言われている今日、それは環境や外部の状況から受けるストレス要因だけでなく、ご自分の体が緊張しやすい状態にあることも大きな要因だと思います。外側の状況を変えることはなかなか思うようには行かないと思いますが、ご自分の体を変えることは努力一つでできることです。是非試してみてください。
 この文章だけでは理解できなと思われる方は、一度来ていただければ体験を通して理解できるようになると思います。

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