ゆめとわのblog

ホームページとは違った、より臨場感のある情報をお届けしたいと思っています。 また、テーマも整体の枠を飛び出してみたいと思います。 ホームページは以下です。 http://yumetowa.com/ お問い合わせはメッセージ欄でお送りください。

脳の働き

 とてもマイナーな筋肉ですが、首(頸椎)と頭部(後頭骨前面)を繋ぐ喉元の深部に頭長筋(とうちょうきん)があります。
 この筋肉はうなずいたり、顎を引いたりする動作のときに収縮しますが、こわばって硬くなっている人がとてもたくさんいます。

 喉元の1番上には舌骨がありますが、その上面から下顎などにかけて舌骨上筋群(ぜっこつじょうきんぐん)と呼ばれる筋肉群があります。頭長筋のこわばりや舌骨上筋群のこわばりは、舌の状態や動き、喉の調子、さらには目や耳や鼻といった感覚器官、表情筋に関係する脳神経の働きにまで影響をもたらす可能性があります。

 ところで、顔や頭部のトラブルの原因になるものとして「噛みしめや歯ぎしりの癖」、「喉元の硬さ」などがあります。
 世間の情報では、「噛みしめないように気をつけましょう」「ストレスを溜め込まないようにしましょう」というのが対策として挙げられているようですが、それはナンセンスと言わざるを得ません。
 「それができれば苦労しない!」というのが、この問題で苦しんでいる多くの人の率直な感想だと思いますし、医学はそれに対して、もういい加減、答えを示す必要があると思います。

 「どうして噛みしめてしまうのだろう?」
 「歯ぎしりをやめるにはどうしたら良いのだろう?」
 「首・肩・喉元から力が抜けるようになるためにはどうすれば良いのだろう?」
 という率直な疑問に対して私は正面から取り組んで来ましたし、今でも取り組んでいます。そして、その中で体験として多くのことを知りました。しかし、まだ解っていないこともあります。

 今回とりあげます頭長筋はその一つですが、まだまだ解っていないところもありますが、これまでに知り得たことだけも、多くの人の役立つ情報になるのではないかと思っています。

頭長筋の場所と働き

 私たちの首の前面には喉があります。喉には「のど仏」と呼ばれている甲状軟骨の喉頭隆起があって声変わりがした男子はそこが喉から突出するようになります。そしてその下から胸にかけて気管が通っていますが、首の骨である頸椎は喉や気管の後側にあります。

 頭長筋はその(第3~6)頸椎の横の突起(横突起)の前面から出発して後頭骨の前面に付着しています。

 私たちが後頭部を触ったときに触れる骨が後頭骨ですが、後頭骨は頭蓋骨の下面まで伸びています。そして、そこに大きな穴があって太い脊髄が通過していますが、その少し前方に頭長筋の付着部があります。
 また、後頭骨と環椎(第1頸椎)の関節面は広くなっていて、環椎に対して後頭骨が少しスライドできる仕組みになっています。
 頭長筋が収縮しますと、後頭骨の前面が後下方に引っ張られますので、首を動かさなくても頭部を前に少し倒す動作(=うなずく仕草)ができるようになります。



頭長筋のこわばりとその弊害

 頭長筋はうなずく時に使う筋肉ですが、実際のところこわばっている人がたくさんいます。
 それは、下向き加減の姿勢でいる時間が長い人がたくさんいるということでもありますが、それ以外の要因も考えられます。

 頭長筋がこわばった状態になりますと、下顎を引いたような状態になります。頸椎(首)に対して頭部(後頭骨)は少し後にずれます。さらに頭長筋の付着部である後頭骨の前面は下を向くように少し回転しますので、後頭部は上がった状態になります。

 この状態では、喉元が詰まったような状態になるのと同時に、後頭部~後頚部の筋肉(後頭下筋群)が張って頸椎の前弯が乏しくなりますので、ストレートネック状態になってしまいます。
 さらに後頭部には大きな穴が空いていて、そこを脊髄が通過していますが、脳幹や小脳に血液を供給する椎骨動脈の流れも悪くなる可能性があります。すると、脳神経の働きが鈍くなったり、その他の脳機能が低下する可能性も考えられます。(「脳神経の働きと椎骨動脈」参照)

 頭長筋がこわばっいることによって眼の見え方が低下する、瞼が落ちてきて眠たそうな顔になる、顔面神経の働きが低下して顔の皮膚がたるんだり、眼を最後まで閉じることができなくてドライアイになってしまう等といった不調や不具合になっている人を現実に知っています。

頭長筋がこわばる理由

 私の頭長筋も少しこわばっています。毎日のように頭長筋をゆるめるストレッチをしていますが、それでも少しこわばった状態になってしまいます。仕事柄、うつむき状態になることが多いことが原因に一つであると考えられますし、現代に生きる私たちは遙か遠くを眺めるような、そんな暮らしではなく、何かにつけ近いところを見ることが多いので、頭長筋や舌骨筋群がこわばりやすいと考えることができます。

 ところで、頭長筋が非常に強くこわばっている人がいます。そして、そのようなタイプの人は、背中を丸めた姿勢で座り仕事をしている時間の多い人のようです。
 例えば、椅子に座ってすっかり背もたれに寄りかり、骨盤をグニュッと寝かせたような姿勢のまま首を前に出したり、上半身を前に屈めるような動作をしますと、自ずと下顎が引かれ、奥歯がかみ合って喉元に力が入った状態になってしまいます。

 骨盤が後ろに倒れた状態では、重心の位置が自ずと坐骨より後側になってしまいますが、すると腹筋でからだを支えることはできなくなります。
 ですから、上半身を屈めたり首を前に出す動作を背中側の筋肉で支えるようになります。すると、その反動のようにして胸~首の前面~顔に力が入るようになってしまいます。
 呼吸もしづらくなりますが、これが私たちのからだの仕組みであると言えます。つまり重心が後ろにある状態では、自ずと頭長筋や喉元の筋肉は収縮状態になって(こわばって)硬くなってしまうのです。

重心の位置と頭長筋

 写真の女性は左膝の状態が不完全な状態です。その状態でも毎日5000歩ほど歩いていますが、その影響もあってか両方の足首の在り方に少し問題があります。
 座った状態では重心が坐骨の後側にあります。骨盤が倒れているわけではありませんので、一見背筋が伸びて姿勢が良いように見えるかもしれません。
 骨盤が寝ている状態ではありませんが、重心が後ろにありますので、やはり背中側の筋肉を主体的に使って姿勢を保っています。そのため、背中が少し反って後から何かに引っ張られているような感じになっていますが、その力に対抗するように、口元と顎関節辺りにはキュッと力が入っています。それによって姿勢を保っているような感じに、私には見えます。
 この重心が後側にある状態のまま、天井を見るように上を向いてもらいました。(右側)
 私には、上の向き具合が中途半端に見えますし、首前面の筋肉が緊張して筋張った感じになっているように見えます。
 つまり、苦しそうで、この状態を長くは続けられないように感じます。

 次に、10分ほど施術して足首の状態を改善しました。それが次の写真です。
(専門的には、強くこわばっていた足裏の短母趾屈筋などをゆるめただけです。)

 座位での重心位置が元々より少し前に来て、ちょうど坐骨に乗る感じになりました。(これでもまだ「良い状態である」とは言えないのですが)
 背中側に力が入っている感じはなくなり、口元や顎関節からも力が抜けた状態になりました。(重心の位置が変わるとこんなに簡単に力が抜けるのです)
 そして上を向いてもらいましたが、先ほどとは違ってしっかりと天井を見ることが出来ましたし、首前面の緊張も感じられなくなりました。
 舌骨筋群のは伸び、そして頭長筋もゆるんだので、易々と天井を見ることが出来るようになったのです。

 上の写真は、左側が施術前で重心が坐骨の後にある状態、右側が足首を10分ほど施術した後の状態です。
 頭長筋の変化を説明するために、前屈みになった状態で正面を向いてもりました。普段、ここまでの大きな動きを行うことは少ないと思いますが、頭長筋や舌骨筋など喉元の筋肉がこわばってしまう原因を理解していただきたいと思い、あえて大げさな事例としました。

 頭長筋は顔を下に向ける筋肉ですから、顔を上に向ける筋肉が拮抗筋となります。具体的には後頭部と後頚部繋いでいる後頭下筋群です。
 拮抗関係にあるということは、反対の働きをして相手の働きを助ける意味合いがあります。頭長筋が収縮して顔を下に向けようとしたときには、拮抗筋である後頭下筋群がゆるんで伸び、顔を下に向ける動作を応援します。あるいは、後頭下筋群が収縮して顔(頭)を上に向けますが、拮抗筋である頭長筋が今度はゆるんで伸び、後頭下筋群が収縮しやすいように働きます。

 さて左側の写真では、重心が後方にありますので、頭長筋はこわばった状態=収縮した状態になっています。この状態で上半身を屈め、後頭下筋群を収縮させて顔を上げ、正面を向こうとします。本来であれば、頭長筋がゆるむことで後頭下筋群の収縮を応援するわけですが、頭長筋はこわばったままですので、後頭下筋群はスムーズに収縮することができません。ですから、後頭部では後頭下筋群の収縮が中途半端な状態になり、同時に喉元では頭長筋が伸びたくないと抵抗しますので、後頭部も喉元も硬直したような状態になってしまいます。それでも無理に顔を上げようとしますと、それは無理を強いることになりますので、筋肉や骨格を傷める可能性が生じます。

 他方、右側の写真では上半身を屈めようとしたときに重心の位置が坐骨から恥骨側(前方)に移ることができますので、腹筋を使って前屈みの姿勢を支えることができます。すると胸~首(の前面)~顔にかけてリラックスして筋肉の伸びが良くなります。つまり、前屈みの姿勢でも頭長筋はゆるんだ状態になります。ですから、後頭下筋群の収縮を拮抗筋である頭長筋が応援(補助)できる理想的な状態になりますので、楽々正面を見ることが出来るようになります。

 これまでも幾度となく重心移動の大切さを説明させていただきましたが、本当に大切なことなのです。
 頭長筋に関しては、単純ですが、重心が前に移動すれば筋肉がゆるみ、重心が後ろに移動すれば筋肉が収縮すると言うことができます。
 ですから、座位での重心が坐骨の後ろにある人、立位での重心がかかとにある人は「頭長筋がこわばりやすい生活を送っている」と言うこともできます。

頭長筋のこわばり状態を改善するために

 私たちは毎日の暮らしの中で、大変多くの運動をしています。食べることの一噛み一噛みは運動ですし、言葉を発することも運動ですし、座り心地を変化することも‥‥すべては運動です。
 その運動が大きいか小さいか、あるいは非常に小さいかに関わらず、運動することは重心を移動することでもあります。
 ですから重心移動がない状況での、あるいは上手くできない状況での運動や動作は理屈に反していることになります。合理的ではありません。

 私は骨格と筋肉を整え、からだを整えることが仕事ですから、重心移動がスムーズにできない状況のからだを整える術を知っています。
 しかし、専門家ではない普通の人にとっては、なかなか難しい問題であると言えます。まず、ご自分の重心が何処にあるのかを感じて知ることも難しいかもしれません。

 ですから、「重心位置が何処にあるか?」とか「重心移動ができているか?」ということにこだわらずに、日々の暮らしの中での注意していただきたいことを申し上げます。

①座った状態では、しばしば骨盤を立たせるようにする
 座位での重心が後ろにある人は骨盤がグニャッと寝ている状態になっている傾向があります。いわゆる「背中の丸まった状態」です。
 このような人は、しばしば骨盤を立たせるようにして、坐骨の後側から前側に重心が移動する感覚を養って欲しいと思います。そして、骨盤を立たせる運動を続けることで、いつの日か、それが普通の状態になるようにしていただきたいと思います。
 ただし注意として、骨盤が寝ている状態で恥骨側に重心を移動しようとしないでください。自分では重心を移動したつもりでいても、ただお腹を前に突き出しているだけになっている可能性があります。そして、それは横着です。
 元々横着だったので、骨盤が寝た状態のままいろいろな作業をしていたのかもしれません。これを機に、横着を止めて、からだを正しく使うようにしてみてください。寝ている骨盤(仙骨)を立たせる運動を行ってください。

②正しい正座を取り入れましょう
 正座は私たち特有の文化ですが、そこにはやはり理由があると私は思っています。
 私たちの骨盤は諸外国の人達に比べて後傾している傾向があると言われています。つまり、元々骨盤が少し寝た状態になっているわけですが、それゆえに椅子に座ると、ついつい骨盤を倒して背中の丸まった姿勢になりやすいのかもしれません。
 この話題の詳細は別にさせていただきますが、多くの人が椅子に座ったときに、骨盤にからだを委ねることが出来ません。無意識に、内股に力を入れて座位の姿勢を保つようになってしまいます。姿勢を正そうとしますと、脚に力を入れて背筋を伸ばすようになりますので、反り腰気味になりますし、首や肩に力が入ってしまうのです。
 ところが、このような人に、正しい正座をしていただきますと、反り腰状態は消え、首や肩からも力が抜けるようになります。ここで言う「正しい正座」とは、茶道や華道、柔道などの武道できちっと座る正座の状態のことです。反対に悪い正座とは、やはり骨盤が寝て、背中を丸め、ダラーッとした座り方のことです。
 きちんとした正座をしますと、後傾気味の骨盤が自然と補われて、恥骨側(つまり臍下丹田のところ)にエネルギーが集中します。ですから、楽な状態で姿勢良い状態を保つことが出来るようになります。
 私は施術中、しばしば正座の状態になりますが、そうすることで集中力が高まり施術に没頭しやすくなります。ですから、静かな集中力を必要とする茶道や華道などでは、私たちとっては正座が最も適しているのではないかと思います。そして、なかなか諸外国の人達には、このことは理解させれないかもしれません。
 ですから、一日の中で正しく正座する時間を設けて欲しいと思います。そうすることで、恥骨に力が集まるとはどういうことかが理解できると思いますし、正しい正座の状態から立ち上がったり、横に動いたりするときに腹筋が使われることがどういうことか、が理解できるのではないかと思います。
 ただし、長時間の正座は、足首の外側が伸びたり疲弊したりする可能性もありますので、それには注意してください。

③足首を柔らかくしましょう
 前回の投稿(食欲不振‥‥飲み込めなくて=嚥下の不調)でも紹介しましたが、足首の硬い人がたくさんいます。
 「足首が硬い」とは足首を保持するためのいくつかの靱帯が硬く縮んだ状態になっていること、そして足首周辺の筋肉や筋膜がこわばったり縮んだ状態になっているということですが、それによってふくらはぎの骨(脛骨と腓骨)が下に引っ張られ、膝関節が歪んだ状態になっています。膝小僧が目立ったり、膝の裏側が腫れぼったくなっていたり、硬くなっていたりするのは、そのことの現れです。
 足首が縮んだ状態になってふくらはぎが下に引っ張られた状態になりますと、当然太股も下に引っ張られ股関節が歪んだ状態になります。そして後傾気味の骨盤が、さらに後傾してしまいますので、重心が後側に行ってしまいます。

 実際、写真で紹介した高齢の女性に対して行った施術は足裏で硬く縮んでいたいくつかの筋肉を指圧したり、ストレッチしてゆるめただけでした。左側の写真の通り、元々骨盤が立っている状態でしたから、重心の位置を少し前に移動するだけの作業でしたので、足首の骨格を良い状態にして膝の在り方を改善しただけでした。

 足首には内側と外側に“くるぶし”がありますが、それがグッと下に落ちて靴に当たってしまうような人が多くいますが、そのような人達はここで取り上げたような状態です。ですから、足首周辺の筋肉と靱帯をゆるめて“くるぶし”があがるようにしていただきたいと思います。
 そしてそのためには、前回も紹介しましたが、下の写真のような足首回しの運動を行ってください。


 筋肉は同じ状態を長く保持することが苦手です。つまり収縮し続ける状態、あるいは伸ばされ続ける状態が苦手です。
 私たちの呼吸が呼気と吸気を交互に繰り返すように、筋肉も収縮と弛緩伸張を交互に繰り返していられる状況が理想です。ですから、その状態をなるべく逸脱しないように私たちは注意しなければなりません。
 そしてそのための秘訣は、(何度も繰り返してしまいますが)重心が思いのままに易々と移動できる状態を築いて保つことだと私は考えています。

 今回は、マイナーでほとんど耳にしないような筋肉を取り上げました。この目立たない小さな筋肉が縮んでいようが伸びていようが「それがどうかした?」と思う人も多いかと思います。しかし、私の目絡みますと、私たちが楽に生きるためには大切な筋肉です。

 難しくて解りづらい内容になってしまいましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。

足つぼ・整体 ゆめとわ
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 前回のブログ(体調を整える 呼吸編)で取り上げました、喉の硬さが原因で頭の働きに問題があった青年が一月半ぶりに来店されました。
 今回はその後に出てきた課題について取り上げます。

 私はこれまで発達障害と診断(?)された小学生を数人見てきました。たった数人のことですから、私の見解は間違っているかもしれませんが、彼らのことがずっと頭に残っています。
 発達障害と評価される基準がどのようなものか私は知りませんが、私から見て、本当は発達障害ではなく、単に脳の働きが悪いだけなのではないだろうか、と思うこともあります。あるいは、少しの間もじっと座っていられないのは、単に骨盤が座ることに耐えられない状態なのではないだろうか、と思うこともあります。
 そうであるならば、発達障害と診断して他の子供たちと違う接し方をしたりするのは、その子の心になにがしかのマイナス因子を生じさせてしまうのではないかと考えてしまいます。
 心の奥に残ってしまったマイナス因子、つまりトラウマのようなものは克服するのがなかなか大変だと思います。
 そんな面も含めて、今回の内容を読んでいただければと思います。

 彼は前回の来店時とは違って、とても落ち着いた表情をしていました。前回は「自分の頭ではないような気がする」と言っていましたが、今回はそんな状況ではありませんでした。ですから、前回の施術は合っていたのだと思いました。
 今回来店された彼の目的は、
「短期記憶が苦手で、相手から聞いている事柄を覚えていなければと思いつつ会話をしていると、途中から頭がついていけなくなってしまい、覚えていようとしていた記憶さえわからなくなってしまう。」
「相手に自分の言いたいことを説明するのが苦手」
という状況を改善したいとのことでした。

 前回は喉元の硬さが原因で、顔が下がり、呼吸が悪く、さらに蝶形骨(ちょうけいこつ)がズレていて脳の働きが悪く前頭葉で考えることができなった、という説明をさせていただきましたが、私としては「どうして喉が硬くなってしまったのか?」という疑問を残したままにしていましたので、それも含めて改めて彼の全体的な状態を確認することから施術を始めました。

呼吸状態の改善

 前回は詳しく書きませんでしたが、彼の呼吸状態が悪かった直接的な原因は胸郭が下がっていて、かつ、外肋間筋(息を吸うときに収縮)の働きが悪かったために、深く息を吸うことができない状態になっていることでした。
 ですから、呼吸の問題を改善するためには、①胸郭を上げることと、②外肋間筋の働きを良くすることが必要でした。

 ちょっと専門的になりますが、胸郭を上げるためには、頭部から胸に繋がっています胸鎖乳突筋、首の斜角筋、肩甲骨と胸郭を繋ぐ小胸筋、そして胸骨舌骨筋など舌骨筋群がしっかり働ける状態になっている必要があります。

 そして外肋間筋は息を吸う時に働いて肋骨を上に引っ張り上げますが、それによって胸郭が膨らむようになっていますので、息を吸うときに作動する筋肉と連動して働く仕組みになっています。つまり、胸鎖乳突筋や斜角筋などの働きが悪い状態ですと、外肋間筋の働きも悪くなっています。

 彼の喉は以前ほどではありませんが、まだまだ硬くこわばった状態になっていました。前回の施術でこわばり状態を解消しましたが、この一月半くらいの生活の中で徐々に硬い状態に戻りつつあることが解りました。
 喉仏の部分は軟骨状になっていますが、専門的には甲状軟骨(こうじょうなんこつ)と言います。そして甲状軟骨の下部には甲状腺があります。
 彼の甲状軟骨の部分は硬くこわばっていましたが、その下の甲状腺がある部分は反対にゆるんで腑抜けのような状態になっていました。

 「どうしてここがゆるんでいるのだろう?」というのが私の次の疑問です。前回の施術では時間の関係で「喉のこわばり」までしか追求できませんでしたが、今回はその先を追求することにしました。
 すると、胸骨のちょうど第4・5肋骨が繋がっている辺りの筋膜が腑抜けのような状態になっているのを見つけました。そして、その部分に手を当てて手当てしていますと、その部分の腑抜け状態が少しずつ良くなり、それに合わせるように甲状腺の部分のゆるんだ状態も良くなっていきました。そして喉元のこわばりがゆるみ始め硬さが取れていきました。
 「胸の問題かぁ‥‥」と直感しました。

 彼の場合、喉元がこわばっていたことによって、顔が下がり、頭部が後ろに歪んでいたので前頭葉にイメージを浮かべることが苦手でした。
 前回の施術では、それが頭の働きが悪かった原因ではないかと私は思いました。
 ところが、今回の施術では、そのさらなる原因として胸の問題、すなわち心の問題が絡んでいることが解ったと私は思いました。

 そして、さらに、彼の呼吸を悪くしている原因として左肩の亜脱臼状態を見つけました。
 本人に尋ねたところ、肩を脱臼した覚えはないとのことでしたので、おそらく幼い頃の体験だったと思われます。小さい子はお父さんなどに両腕を委ねて、ぶん回されたりする遊びが好きですが、関節の柔らかい子供たちはその時に脱臼しても何事もなかったかのようにすぐに元の状態に戻ってしまうので記憶には残っていないことがほとんどです。しかし、それによって肩関節がゆるんでしまい、そのまま成人になっている人もたくさんいます。

 私が想像するに、彼は幼い頃の左肩脱臼によって呼吸状態が悪くなりました。それによって頭の働きが低下して他の子供たちに比べて発達が遅いように感じられ、それが本人にとって無言のプレッシャーとなって蓄積し、心の晴れない状況がずっと続いたのかもしれません。
 それが現象として胸(胸骨上の筋膜)のゆるんだ状態として現れ、それを補うために無意識に喉に力を入れるようにして何とか生きてきたのではないかと、そんなふうに感じました。
 以上は、まったくの私の個人的見解ですから、間違っているかもしれませんが、実際に胸のゆるみを改善しますと、喉のこわばりも取れ、頭の歪みも改善して全身の状態が良くなりました。

言葉をイメージに変換する

 彼の今回の来店の目的である「短期記憶が苦手」「説明することが苦手」という状態を改善したいという要望についてですが、最初、私はどう解釈したらよいのだろうか? と考えました。
 このような要望をダイレクトに訴える人はなかなかいません。
 ところが、彼のからだについて諸々考え直してみますと、言葉をイメージに変換することと、イメージを言葉に変換することが苦手なのかもしれない、その状態を改善すればよいのかもしれないとの考えに至りました。
 彼はとても真面目で、さらに苦手意識もあったためにか、誰かと会話しても、その言葉を言葉として頭に記憶しようとしているのかもしれません。
 言葉を言葉として記憶するためには、通常は「反復」や「意識的な集中」が必要だと思います。相手の言葉に注意深く集中しながら頭に記憶しようとしている間に、相手の言葉はどんどん先に進んでしまうので頭がついていけなくなってしまう、そんな状況になってしまうのではないでしょうか。「短期記憶が苦手」というのは、そういう状況のことなのではないかと私は考えました。

 私事ですが、若い頃の私は電話番号を覚えるのが得意でした。私はダイヤルを回すアナログ電話がまだまだ残っていた頃の世代ですが、電話番号は実際にダイヤルを回すイメージを頭に描いて覚えていました。
 また、そろばんも習いましたが、暗算はそろばんを前頭葉にイメージして行っていました。
 つまり、記憶することとは情報を絵(ホログラム)に変換する作業であり、そのホログラムが頭の中に記憶されるのではないかと思いますし、考える、あるいは熟考する作業とは記憶されたホログラムを前頭葉に引っ張り出してきて、あれこれイメージを展開する作業なのではないかと思うのです。
 ですから、彼の「短期記憶と説明が苦手」という訴えに対しては、前頭葉がもっともっと効率的に使える状態にすることが必要なのではないかと考えました。
 耳から入ってきた言葉の情報が自然とホログラムになって前頭葉に現れる状態ができれば、短期記憶の改善という要望に応えられるのではないかと考えました。
 また、前頭葉にイメージしながら考え事(思考)を展開することができれば、それを言葉に変換する作業が「説明する」ということですから、「説明が苦手」という状況も克服できるのではないかと考えました。

 科学的に脳は右脳と左脳に分けられていることは多くの人が知っていると思います。それぞれ得意分野があって、イメージ脳と言語脳という表現で分けられていたりします。
 しかし私は別の区分けとして、頭には働く場所があって、額(前頭葉)はスクリーンのような役割していてイメージを展開する場所であり、記憶を貯蔵する場所は頭の後ろの方であると感じています。
 ですから私の施術は、この観点で頭蓋骨を整え、からだを整えることになります。 

 施術の詳細は省きますが、呼吸を整えるために行った胸への施術と左肩を安定させる施術に加え、頭蓋骨をもっと繊細に整えました。
 施術の間、彼はほとんど寝ていましたが、呼吸の状態、胸の動き、顔の緊張感が取れる状況、蝶形骨の位置などを観察しながら施術を行いました。

 言葉や文章では伝えられませんが、「前頭葉にイメージを構築して思考できる頭の状態」というのがあります。
 寝ている彼を起こして、何かを問いかけたときに、頭がどのように使われているかを注意深く観察することでそのことが解ります。

 彼の頭は、前頭葉にイメージできる状態になったと判断しましたので、施術を終えました。
 それから数日して、母親からメールが届きました。彼がとても楽になって、快適に過ごしているとの内容でした。彼の要望は叶えられていると安心しました。


 今回の話しも、学術的専門家や科学者の人達からしますと「眉唾」「嘘」と受け取られるかもしれません。しかし、私にとっては「私の真実」です。

 これから花粉症の季節、鼻炎と頭蓋骨の歪みにもある程度の関連性があります。
 次回も頭蓋骨に関する話しをさせていただこうと考えています。

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 時々、体調の悪い人が訪れます。
 病気と診断されているわけでもないので、いくつか病院を巡っても医師からは明確な応えがもらえず、気持ちまでモヤモヤしてしまい、「鬱なのかなぁ?」などと自信を失っている人もいます。

 私は医者ではないので、このような人たちに相談されても、解決方法などについて明確に応えることはできません。
 しかし、このような人をたくさん見てきた経験から、言えることがいくつかあります。その一つが「呼吸」です。

 私たちはは生きている限り当然呼吸をしていますので、ほとんどの人は呼吸について深く考えませんし、自己観察することもないと思います。
 ところが、私の目で観察しますと、呼吸状態には明らかに善し悪しがあって、呼吸状態の悪い人は体調不良に陥りやすく、また体調不良から回復に時間がかかってしまうと言えます。
 おそらく病院の呼吸器科では、腫瘍の有無、血中の酸素濃度、あるいは喘息などの発作や過呼吸などの症状を頼りに、病名を決め、対処法を決めているのだろうと思いますが、それらの方法では解決できない呼吸の問題もあります。

 「すぐに眠くなってしまったり、考え事がまとまらなかったり、勉強しても全然頭に入ってこなかったりするのは、頭が酸欠状態に陥っているかもしれません」と申し上げますと、
 「血中の酸素濃度を測っても問題ないし、とくに息苦しいというわけでもないので、酸欠というのは考えられない」という類の答えが返ってきます。
 こんなときには、理屈を説明してもなかなか理解されませんので、とりあえず酸欠のような状態を脱するようにからだを整え、そして実際に呼吸が快適になった状態を体験してもらうようにしています。
 すると、頭が冴えた状態、集中力が高まった状態、心から不安が除かれた状態、目の前が明るくなった状態がどんなものかが理解してもらえるようになります。

 私は仕事柄、呼吸状態が悪くて苦しんでいる人をたくさん見てきました。本人は不調や抱えている症状が、呼吸状態が悪いことでもたらされているとは思ってもいません。自分は精神的に弱いのだとか、鬱病になってしまったとか、からだの何処かがおかしくなってしまったと思い込んでいたりします。
 しかし、呼吸状態を改善するだけ不調が改善したり、症状が消えてしまうようなことも起こります。

 私たちは地球上の生物であり、脊椎動物であり、哺乳類に分類される"生きもの”です。この当たり前のことをじっくり考えますと、地球上の生命体として健全に暮らしていくために必要な根本的条件があります。
 その中で以下の3点は非常に重要だと私は考えています。

 1.呼吸が正しく快適に行われること
 2.歩行を適度に行うこと
 3.そしゃく筋をしっかり使うこと

 今回は呼吸がテーマですので、それ以外については別途取り上げたいと考えています。

呼吸の大切さ

 私たちが生きているか死んでいるかを判断する基準はいくつかありますが、「呼吸していることが生きている証しである」ことは誰もが知っていることです。

 呼吸によって私たちは外界から酸素を体内に取り入れて活動のためのエネルギー源としているのですが、私たちのからだの器官で最も酸素を必要としているのは脳です。
 脳は1400グラムぐらいの重さだということです。つまり体重60㎏の人であれば、全身の2.3%ぐらいの重さです。ところが私たちが呼吸で取り込む酸素量の25%程度も消費しているとのことです。(詳細はこちらを参照してください)
 このように脳は酸素を大量に消費しているわけですから、酸素が不足しますと「頭の働きがおかしくなる」ことは、普通に考えて当然のことだと言えます。

不安症と呼吸

 しばしば不安症に襲われる若いお母さんがいます。お子さんが生まれる以前は、たまに不安症に襲われることはありましたが、「大変だ!」というほどではありませんでした。
 ところがお子さんを出産してからは、しばしば不安症に襲われるようになり、そして時々鬱病のような状態になってしまうこともありました。
 彼女の母親が月に一度、からだの手入れのために私のところに来店されるのですが、「娘が今鬱状態で、心療内科に罹ってもパッとしなくて‥‥。整体で何かやり方はある? ちょっとでも良くなればいいんだけど。」と仰いました。
 彼女(娘さん)は嫁いで地元を離れたので、数年来店されることはありませんでした。このたび、しばらくぶりに顔を見たのですが、その表情は不安でいっぱいで、ずっと泣き続けているような感じでした。
 「不安で、不安で‥‥、それじゃダメだと思ったり、赤ちゃんにこんな顔見せてはいけないと思うのだけど、どうしたらよいか全然解らなくて‥‥。」と、なんとか話してくれました。

 施術をしながら私が感じたことは案の上、「呼吸が悪い」ことでした。
 頭(脳)に必要十分な酸素が行き渡っていないので、思考回路が偏ってしまい、あるいは限定されてしまい、何でも不安の回路に繋がってしまうのではないだろうかと思いました。
 それは、つまるところ脳が正常に働いていないということですが、脳へ供給される酸素量を増やすことができれば、解決するかもしれません。

 ところが、「脳内への酸素量を増やす」「酸欠状態から抜け出す」と言ったところで、医学的にはまったく相手にされないことだと思います。
 血中の酸素濃度や血圧に問題がなければ、医学的にはまったくスルーされてしまうことように思います。
 ところが、からだを触ることが仕事の私は、頭皮や頭の筋膜が硬くて呼吸が悪い状態や、呼吸が中途半端で脳に必要十分な酸素が行き渡っていない状況を感じ取ります。
 どうやって感じ取るのか? と聞かれることも多いのですが、文字通り「肌で感じる」のです。

 さて、話しを彼女のことに戻しますが、彼女は考えすぎたせいか、頭全体の頭皮が非常に硬くなっていました。そして呼吸も非常に浅く、胸がまったく動いていないような状態でした。
 呼吸についての細かいことは「自律神経と呼吸」を参照していただきたいのですが、まずは頭が呼吸運動に参加する状態になるように施術を始めました。

 息(空気)は鼻から吸いますが、その吸った空気が鼻孔から副鼻腔に入り、額の中を通って肺に送られるような感覚になることを今回の施術では目指しました。
 そのためには吸気に合わせて側頭部が拡がる必要もありますので、頭皮や側頭筋もゆるめました。さらに下がっている鼻骨を本来の位置になるよう整えるなど、呼吸に関係する頭部周辺の状態を整えました。

 施術は60分行いましたが、まだ十分と言える状態にはなりませんでした。ですから、また近いうちに来店して欲しいと申し上げ、そして「ともかく呼吸を改善しないと、考え方がマイナス思考になってしまうので、普段も呼吸を良くすること心がけてください。」と申し上げました。

 本人の中では、不安症と呼吸、鬱状態と呼吸の繋がりが理解できなかったようですが、「ともかく、何か考え始めて不安な気分になったら、息をゆっくり吐き出すことから始め、ゆったりとした呼吸を行うようにしてください。」と申し上げました。
 私は「まだこの状態では不安症から抜け出すことはできないだろう」と感じました。

 それから一月くらいして再び来店されました。もっと早く来店して欲しかったのですが、鬱状態にある人は、だいたいこんな感じです。私の言ったことを信じてはいないのです。

 2度目の施術では、呼吸についてゆっくりと丁寧に話しながら、胸に息が入るよう作業を進めていきました。
 呼吸状態が中途半端な人は、深呼吸をしても気持ち良く、そして大きく息を吸うことができません。
 腹式呼吸で横隔膜が働き、胸郭の下半分やお腹は動くのですが、鎖骨周辺や肩上部が呼吸運動に参加する状態にはなっていません。

 本人の意識としては「深呼吸をしている」のですが、入らない息を無理やり肺に吸い入れようとしているようで、動作に無理を感じるのです。
 このようになってしまう理由はいろいろありますが、頭蓋骨の歪みやそれによる噛みしめ状態、そして首の筋肉が張っている場合などが関係している場合があります。

 それらの一つ一つの状態を確認しながら調整していき、手指から胸に繋がって胸郭の動きを邪魔する要因などを除去していきました。そして、前回同様、頭部周辺や副鼻腔の状態を調整しました。すると呼吸状態もだいぶ良くなり、自然と深い呼吸ができる状態になりました。(本当は、もっと早くこのようにしてあげたかったのですが)

 施術が終わりますと、泣きべそをかいているような不安で一杯という表情は薄れ、少し笑みも浮かべられるような状態になっていました。
 まだ不安症から脱した状態にはなっていませんでしたが、「もしかしたら、上手くいくかも‥‥」と思いました。

 その後、彼女の母親より状況報告がありまして、精神状態がだいぶ落ち着いてきたとのことでした。そう聞いて私もホッとしました。
 「やっぱり呼吸が影響しているんだなぁ」と改めて感じたのが私の率直な印象です。

 それから半年くらいして、また彼女が情緒不安定になってしまったと母親が言ってきました。産後1年の休職期間も終わって仕事に復帰したら不安症が再発してしまったとのことでした。
 そして、また彼女に来店していただき、今度は黙ったまま、首肩の揉みほぐしと呼吸を整える施術を黙々と行いました。
 彼女も呼吸状態と不安症との関係を理解してくれていたのか、弱音や不安を訴えることもなく、施術を素直に受け入れてくれました。
 それ以来数ヶ月経ちますが、症状は良くなって精神的にも落ち着いていると母親が報告してくれています。

喉の硬さと酸欠状態

 その青年は「頭の回転がとても遅く、ときどき何を考えて良いのか、どう考えて良いのかさえ解らなくなってしまうことがある」と言います。
 そして、「今は頭が自分の頭ではないような気がする」と言って来店されました。

 上記では、呼吸状態が悪くて脳が酸欠のような状態になりますと、思考回路が限定されたり、マイナス思考になり、さらに症状が進むと鬱状態になってしまう可能性があるとの話題でした。
 今回は頭の回転速度と集中力と理解力についての話題です。

 まず、彼の頭を触ったときの感触からお話しします。
 普通、私たちには考える場所、イメージを構築して思考を展開する場所があります。大概は額の中央部、脳で言えば前頭葉の中心部になります。あるいは、人それぞれ、その場所が額の右側や左側など側頭部に近い所だったりする場合もあります。

  頭の中にある様々な記憶や情報をその場所(前頭葉)に引っ張り出してきて、いろいろ組み合わせたり、取り外したりしながら私たちはイメージを構築して思考を展開しるのだろうと思います。
 ところがその青年の前頭葉(額)は触った感触では、空っぽな感じがしました。後頭部とか側頭部の奥(深部)にはモノがあることを感じるのですが、額の奥には何もないように感じてしまうのでした。
 違った表現を用いれば、前頭葉には「気がない」「気が通っていない」という感じです。

 「いつも何処で考え事をしてるの?」と尋ねてみました。
 「? ? ?」
 すると、何を尋ねられているのかまったく解らないといった感じでした。
 「普通は頭の前の方でイメージを展開して考え事をするのだけど、あなたはそこを使っていないように感じるのだけど‥‥」
 「ちょっと九九を暗算でやってみて」と言ってやってもらいました。

 この簡単なテストで、その人がどこで考え事をしているのかがだいたいわかります。その部分の血流が活発になるのが感じられるからです。
 すると、その青年は後頭部で考え事をして感じでした。本来は記憶や情報を溜めておくような場所(と私は思っています)で、考え事をしているのです。ここではイメージを展開することは難しいと思いますので、端的に言いますと「考え事が苦手」なんだと思います。
 イメージを保持することができませんから、集中力はありませんし、思考を展開することが苦手ですから、理解力も乏しくなります。

 母親の話では、「何かを問いかけても、すぐに反応して返事をすることができないし、自分の意見をしっかり話すこともできない」とのことでした。
 私たちは何かを問いかけられたら、普通は「エーッと、それは‥‥」と考え始めて反応することができますが、彼はそれができないということです。
 何十秒か経って、やっと返事が返ってくるので、知恵遅れのように感じてしまうとのことでした。

蝶形骨(ちょうけいこつ)のずれと思考

 前頭葉をうまく使うことができない理由として、彼の場合は頭蓋骨の中で脳の台座となっている蝶形骨がずれていたからでした。
 頭蓋骨は解剖学的に、脳頭蓋(のうとうがい)と顔面頭蓋(がんめんとうがい)に分けられています。脳頭蓋は文字通り脳を収めるための頭蓋骨のことです。眉の下から下顎までの顔面部の骨格が顔面頭蓋で、額の骨である前頭骨は脳頭蓋に分類されています。

 ここでまた皆さんには信じがたいことを申し上げますが、顔面頭蓋に対して脳頭蓋が後方にずれている人がいます。そしてそのような人はけっこう高い割合でいます。
 これは頭蓋骨が歪んでいるということなのですが、それによって眼の働きや頭の働きが低下している場合があります。

 脳の台座となっている蝶形骨は頭蓋骨全体の中心に位置していますが、脳頭蓋が後にずれますと蝶形骨も後にずれます(平行移動ではなく後方に少し回転)ので、脳の働きが低下するのと同時に、前頭葉にイメージを構築することが苦手になるようです。

 彼の場合は、蝶形骨は後方にずれていることに加え、呼吸状態も悪かったので頭がすっかり働かない状態になっていたようです。

 「前頭葉のところでイメージすると言われても、ぜんぜん何のことか解らない」と最初は言っていました。
 そこで私は、手動で蝶形骨を少し前にずらしてみました。すると、それまで頭の中で散漫だった意識が次第に前頭部に集まってくる気配を感じるようになりました。

 すると「何となく前頭葉でイメージするというのが解ってきた。」と彼は言いました。
 そこで、「前頭葉に計算式をイメージするようにして、九九を暗算でしてください。」と言いました。するとそれもできるようになり、「脳の中にある記憶や情報を前頭葉に持ってきて、そこでイメージを描きながら考える」ということを理解してもらえるようになりました。

 さて、問題は彼の脳頭蓋が後方にずれてしまった理由です。それを修正しなければ、彼の希望を叶えることはできません。
 私のこれまでの経験から、顔面が下がると頭部(脳頭蓋)が後方に歪む可能性が高いことは知っています。ですから、その確認から始めていきました。
 顔は予想通り下がっていました。そして胸も下がっていました。さらにその延長である鼡径部も下がっていて足首が硬かったことから、そこに一つの原因があることが推察されました。
 ですから、まず足首を施術しました。硬い足首は、自力で大きく回すことができない状態でした。こわばっている靱帯をゆるめ、ふくらはぎの骨を整えると鼡径部が上がり、腹筋がゆるんで胸も上がりました。すると呼吸状態が少し良くなりました。
 しかし、顔は上がりません。顔を下げている理由が他にもあったからです。

 次に舌の位置を確認しました。すると舌も下がった状態になっていました。
 舌骨や喉仏の状態を確認していきますと、異様に喉仏が硬くなっていました。
 喉仏が硬くなる理由はいくつかありますが、言葉をこらえたり、喉を締めて我慢する癖がありますと喉仏は硬くこわばってしまいます。
 母親から聞いた話から察しますと、彼はおそらく幼い頃から喉を締めて我慢したり、頑張っていたのだと思います。
 そこで喉仏から下顎にかけての硬い部分を柔らかくする施術を行いました。
 すると舌も顔も上がりまして、後方に歪んでいた脳頭蓋も本来のところに戻ってきました。
 彼はこの間、ずっと寝ていましたが、からだはすっかりリラックスした状態になりました。
 呼吸で全く動かなかった鎖骨周辺や肩上部も動くようになりました。

 その後、頭蓋骨の微調整を行いました。副鼻腔に空気が通る状態にして、息を吸ったときに頭が拡がるように側頭部の筋肉をゆるめました。
 これで施術を終えましたが、セルフケアとして、足首をよく回すことと、喉仏から下顎に掛けてゆるめるように手当てをすることを伝えました。そして、「また来てね」と申し上げました。

 その数日後、母親から連絡が入り、だいぶ頭の調子も良くなり、その状態が続いているとのことでした。そして「近いうちに、また行かせます。」とのことでした。
 あれから一月以上経ちましたが、未だ連絡はありませんので、おそらく良い状態が保てているのだろうと思います。


 皆さんに呼吸の大切さをもっともっと認識していただきたいという想いから、二つの具体例を出して説明させていただきましたが「本当に、本当に、呼吸は大切です」。

 昨日、呼吸のことを話題にしながら施術を行っていましたが、「他のセラピストからの薦めもあってヨガを始めようと思っているけど、どう思いますか?」と質問を受けました。
 ヨガとか体操とか、あるいはジムでの運動とか、加圧トレーニング、ピラティス等々、それぞれに良いことなんだと思います。
 かつて私もアスリートとしてトレーニングを行っていた経験からも、適度な運動は良いことだと考えています。
 しかし、トレーニングでは解決できない問題があることを私はこの仕事を通じてよく知るようになりました。
 私たちのからだには構造的に「仕組み」が備わっています。その中の一つには「筋肉システム」もありますが、それ以外にもいろんな仕組みがあります。
 そして、それらの仕組みがやシステムが有機的に絡み合っていろんな活動がスムーズにできるようになっていると感じています。
 それは「狂っている一つの歯車が正常に噛み合うようになると全体がうまく回り出す」というようなものです。
 ということは反面、いくら努力して鍛えても、歯車のいくつかが噛み合っていないと、努力はまったく報われないということでもあります。

 そのヨガを始めようかと相談された人の足首には過去の捻挫が治りきっていない兆候がありました。そこで、私はそのグラグラ気味の足首をしっかりさせるように手当てを行いました。
 すると、その途端に息が胸の中に大きく入るように変わりました。
 この方は、自分の呼吸状態が悪いことを自覚していたので、他のセラピストからの薦めもあり、ヨガによってそれを改善したいと考えていました。
 しかし私は、呼吸を改善するためにはヨガや運動などを頼る前に、足首をしっかり治すことの方を優先させるべきだということを具体的に示しました。

 私は呼吸の大切さをよく知っています。しかし、私の知っている「良い呼吸」と皆さんがイメージしされる「良い呼吸」とはおそらく質的に違うものだと思います。
 ですから、このような言葉(文章)では伝えられないのが残念だと感じていますが、体調を整える上で、呼吸は非常に重要であることだけは知っていただきたいと思っています。

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 今年の梅雨はここ数年とは違った様相で、梅雨入りする直前は気温の高い日も続き「今年も猛暑なのかな~」とガッカリした気持ちになりました。ところが梅雨入りしてからは気温がガクンと下がり、肌寒い日が何日か続きました。この気温の大きな変化にからだが適応しきれず、体調を壊した人も多かったようです。
 今回は「天候不順によって感覚と呼吸状態が悪くなってしまった」という話題です。

 毎週来店されています女性のAさんは、「胸の周りが突っ張って苦しく、肩こりもいつもより酷く、体調が悪い」と訴えました。細身のAさんは日頃から胸回りが不快になりやすい傾向がありますが、今回はいつもより状態がかなり悪いということでした。
 からだを観察しますと、呼吸をしていても胸郭はほとんど動かない状態でした。そして肩甲骨がいつもより下がっていて骨盤方向に近づいていました。僧帽筋を触りますとゆるんだまま収縮しない状態でした。

 肩甲骨が本来の位置よりも下にあるということは、首筋の筋肉(肩甲挙筋)や背中の筋肉(菱形筋)に辛い状態をもたらしますので、肩甲挙筋と菱形筋は緊張してこわばります。そして、それが「辛い肩こり」として感じられたのだと思います。

脳神経の中の副神経

 脳神経は脳幹僧帽筋をコントロールしている神経を副神経と呼びます。副神経は脳幹にあります脳神経の一部ですが、僧帽筋と胸鎖乳突筋を支配しています。

 Aさんの場合、副神経の働きが悪かったようで、僧帽筋の収縮力が乏しい状態になっていて肩甲骨が下がっていました。そして胸鎖乳突筋の働きも悪かったので鎖骨も胸郭も下がった状態になっていましたが、胸鎖乳突筋と連動して胸郭を動かす外肋間筋と内肋間筋がほとんど働かない状況でした。ですから胸式呼吸がほとんどできない状態でした。
 私たちは普通の状態では無意識のうちに呼吸を行っていますが、それは横隔膜を中心とする腹式呼吸と外肋間筋と内肋間筋を働かせて胸郭を拡げたり狭めたりする胸式呼吸の両方を行っています。そしてどちらかがうまく行かなくても息苦しさを感じますし、実際、酸欠状態のような症状をもたらすこともあります。

 Aさんは胸式呼吸が行えず息苦しさを感じていましたので、普段以上に息を吸い込むことに意識を向けて胸を開こうとします。ところが肋骨は反応してくれませんので、Aさんの思いからしますと「胸(胸郭)の周りの筋肉や筋膜が突っ張っているために息が気持ちよく吸えない」と感じてしまったのだと思います。
 そしてこれらの問題を解決するためには、副神経の働き、つまり脳幹の働きが本来の状態になるように整えることが必要です。それによって僧帽筋の働きが戻って肩甲骨の位置が整い、胸鎖乳突筋の働きが戻って鎖骨と胸骨の位置が整うのと同時に、外肋間筋と内肋間筋が働きが戻ってくると私は考えました。
 Aさんが訴える症状、すなわち「首肩の強いコリや張り」「胸回りが突っ張って苦しい」の二つは脳幹の働きを整えることで一挙に解消されると感が増して、そのような施術を行いました。

仙骨周辺への施術‥‥オステオパシーと自然現象

 私たちの業態の一つにオステオパシーと呼ばれる考え方と方法(技術)があります。オステオパシーの詳細につきましては、私は無知に等しい状態ですので語ることはできませんが、その技術の一つに「頭蓋骨調整法」があります。説明によりますと「頭蓋骨にやさしく触れ、縫合を整復し、脳脊髄液の流れを促進させ、中枢神経系の働きを高めることにより、様々な効果を期待できる技術です」とあります。
 そして、今回のAさんのケースではこの「頭蓋骨調整法」が頭をよぎりました。そして私は、「もしかしたら大きな気温の変化で骨盤が冷え、脳脊髄液の流れが悪くなったために脳幹の働きが低下しているのかもしれない」と考えました。そこで頭蓋骨ではなく仙骨と尾骨の境辺りを中心に、手を当てたり擦ったりしてみました。5分間くらい施術を続けていましたが、すると僧帽筋と胸鎖乳突筋の働きが戻り、肩甲骨と胸郭の位置が整っていきました。ベッドにうつ伏せの状態でしたが、呼吸の度に胸郭が動くようにもなりました。

 仙骨部への施術を行った理由についてもう一度整理して説明させていただきます。

  1. 肩甲骨が下がり、胸式呼吸ができない原因は、脳神経の中の副神経(僧帽筋と胸鎖乳突筋を支配)の働きが鈍っているからだと考えました。
  2. 脳神経は脳幹の働きに依存していますので、脳幹全体の働きを本来の状態に戻そうと考えました。そのために私ができる範囲のことは、血流(椎骨動脈→脳底動脈)と脳脊髄液の流れを整えることですが、今回は自然現象(天候)による影響が怪しかったので、脳脊髄液の方に的を絞りました。
  3. 脳脊髄液の流れを整えるための考え方と方法論としましてオステオパシーがあります。その技術の中の頭蓋仙骨療法を参考にしまして、仙骨と尾骨の境目辺りを中心に仙骨部を手当てしたり、擦ったりしました。

 Aさん以外にも、同じように僧帽筋と胸鎖乳突筋の働きが鈍っていて呼吸状態が悪い人が何人か来店されました。目の見え方が悪かったり、顔がたるんでいたり、耳の調子が悪かったりと脳神経の働きに関係する症状を訴えておりましたが、これだけ天候がおかしくなりますと脳に対する影響が具体的に見える形で現れることを知りました。

エアコンによる初夏の冷えに注意

 もう初夏の季節ですから、湯船にゆったり浸かることもなくシャワーだけで済ませてしまう人が多くなってきたと思います。施術後、皆さんに入浴について尋ねますが、高齢でないほとんどの人は「シャワーだけ」と答えます。
 もしかしたら湯船に浸かってゆっくり過ごすという習慣を持っているのは私たち日本人だけかもしれませんが、それ故に私たちは湯船に浸かって一日の疲れを癒すとともに、からだを温める必要があるということでもあります。
 今回、私は仙骨部分を擦って温めるような施術をしましたが、それでかなりの改善が見られましたので、からだ(お腹と腰部)を温めれば、天候不順など自然界から受ける悪影響も緩和されると考えることができます。
 そして、エアコンからの風はからだを冷やしますが、この時期はギックリ腰になりやすい時でもあります。また、オフィスでの仕事でむくみが増えたり、目の見え方が悪くなったり、耳や喉の調子が悪くなったりすることが感じられたのであれば、それはからだの冷えに関係があるかもしれません。

 エアコンによるからだの冷えが気になったり、天候不順や気圧変化による影響が気になったりしたときには、意図的にゆっくりと湯船に浸かってみてはいかがでしょうか。脳脊髄液の流れが良くなって不調が緩和されるかもしれません。


 この原稿を書こうと思い始めたのは先週の木曜日(6/13)にAさんが来店され、その終末にかけて来店された人達の何人かが同じような状態だったからです。
 最近は天候も良くなり気温も安定していますので、もう同じような状態の人はそれほど来店されないと思っていました。しかし状態はAさんほどではありませんが、同じような傾向の人がその後も来店されています。
「梅雨時って、こうなのかなぁ?」などと感じているところです。

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 以前にも取り上げたことですが、これまでたくさんの人達を観察してきてわかったことの一つに、人それぞれに頭の中に“考える場所がある”ことです。頭の中で考えることは思考を展開しているということですが、頭の前方(額、前頭葉)でイメージを築きながら思考を展開している人もいますし、頭の右側や左側、頭頂付近や後頭部で思考を展開している人もいます。
 私は、前頭葉でイメージを構築しながら思考を展開するのが理想的なのではないかと思っていますが、このあたりのことにつきましては脳科学の専門家に聞いてみたいところです。
(思考を展開することとは別に、記憶を呼び起こす作業では意識を脳内のいろいろなところに向けながら探し出すようなことをします。)

 今回は整体的観点から、からだの状態と思考を展開する場所との関係についての話しをさせていただきます。

 今年の1月からセラピストになるための勉強会を行っています。月2回のペースで行っていますが、参加メンバーは現在3人で、全員この業界とは無縁の素人です。
 このブログでは、私が日々実際に経験していますことをお話しさせていただいていますが、それはやはり理屈だけですので、私が伝えたいと思っていることのほんの少ししか伝わらないのかもしれません。勉強会では、実際にからだを触りながら、あるいは触られながら体験しますので、理屈だけではなく「体験を通して学ぶ」「体得する」ということが可能になります。それは素晴らしいことなのですが、反面、難関にも直面します。
 難関は幾つかありますが、現在、参加メンバーにとって一番の難関は、筋肉の変調を検査することと骨の歪みや動きを検査することです。
 このブログによく登場します、筋肉の「こわばり」とか「ゆるみ過ぎ」という状態は筋肉の変調状態のことですが、筋肉を触る、あるやり方によって変調状態を確認する検査方法があります。骨格の歪みにつきましても、実際に骨を軽い力で操作して状態を把握するのですが、やり方に一種の「コツ」があります。
 変調の検査も骨格の検査も手先の感覚の鋭敏さが要求されますが、それは練習することによってどんどん鍛えられていきます。ところが、メンバーにとって一番の難関は自分の頭に浮かんでしまう「疑いの思い」を克服することです。
 検査のために操作している自分の手は正確に変調や骨格の歪みを捉えているのですが、「これで間違いないだろうか?」という疑念が湧いてきてしまい、何度も同じ場所の検査を繰り返してしまったりします。すると「本当にこれで間違いないだろうか?」と念を押したくなる気持ちが強くなるのですが、それに伴い検査している手にどんどん力が入ってしまいます。そうなりますと当初は正確に捉えていた手が狂った動きをするようになってしまいます。自分が自分の手で感じ取ったものを疑ってしまい、その疑いを払拭するために何度も何度も同じことを繰り返すのですが、そんなことをしているうちにどんどん混乱してしまい、ドツボにはまった状態になってしまうのです。
 こんな時は、「何も考えなくていいですから、ただ自分の手の動きだけを見てください」とアドバイスしますが、すると皆さん、すんなりと正確に検査を行うことができるようになります。“疑い”という余計な思いが消えますと検査はとても単純なものになるのですが、それが実際にはなかなか難しいのです。

 メンバーの一人が、何度アドバイスしてもすぐに混乱した状態に陥ってしまいますので、その人の頭の使い方を観察してみました。そうしますと、その人は頭頂より少し後のところで思考を巡らせているように感じました。「ああ、ここが疑いの回路なのか」と私は思いました。そして「頭の後の方で考えるのではなく、額のところにイメージを作ることだけに集中して検査してみてください」と言いました。

 筋肉が骨盤の方に向かっている状態は「こわばり」であり、末梢の方に向かっている状態は「ゆるみ過ぎ」の変調状態なのですが、検査では筋肉を触ってその方向を確かめます。検査するときに自分の手の動きだけを前頭葉(額)にイメージするようにとアドバイスしました。決して後頭部で「本当はどっちだろうか? などと考えないこと」と言いました。そうしましたら、いとも簡単に筋肉の変調を検査することができるようになりました。

 話は少し飛躍しますが、この人は“かかと重心の人”です。そして後頭部で思考を展開する癖があります。私もかつてはこの人と同じような場所で考える癖を持っていましたので、何となく解るのですが、そこで考える人は「聞いている人」かもしれません。後頭部にモデルを提示して、「どっち? どっち?」と、それに対する答えを待っているのかもしれません。
 「人それぞれに(脳の中で)考える特定の場所がある」と私は思っています。前頭部から頭頂部の右側の場所を使って考えている人が多いのですが、そこは心配や不安を生み出す回路のような気がします。何か頭の中に楽しいアイディアが浮かんだとしても、そのイメージを脳の右側に持っていって考えてしまいますと「やっぱり難しいかもしれない」などというマイナス思考が働いてしまい、結局、楽しいアイデアを自分で没にしてしまうのかもしれません。あるいは、何についても“心配”がついてまわったり、実行することよりも不安の方が先立ってしまうのかもしれません。頭の右側を使って考える癖を持っている人を観察しますと、このような傾向があるように感じられます。

イメージトレーニングと前頭部(前頭葉)
 私は若い頃、一生懸命スポーツをやっていました。その頃は「イメージトレーニング」なるものが流行りはじめた頃です。脳の前頭葉に自分が成功するイメージを構築することによって、実際にからだがそのように動き、成功する確率が高まるというものでしたが、当時の私はあまり興味を持っていませんでした。
 ところが時が経っていろいろ振り返りますと、偶然のように成功したのではなく、失敗する恐れがまったくなくて、確実に成功することを確信していたときには、確かに「前頭葉にイメージが在り在りとしていた」ことが、ついさっきの出来事のように思い出されます。そして、この仕事で毎日いろいろな人を観察して施術していますと、前頭葉でイメージを展開することがとても素晴らしいことだと思うようになりました。
 本当に集中力が研ぎ澄まされたときには、前頭葉に抱いたイメージ以外は意識から消えてしまい、時間が止まったように感じて、ただあるがままにそれだけを行うことができるようになるのではないでしょうか。“不安”や心配や恐れとは無縁な状態になると思います。

 ところが整体師として申し上げれば、からだが整っていませんと前頭葉以外で考える癖を克服することはなかなか難しいことです。かかと重心の人は思考の場所も後側になりますし、足の骨格が歪んでいる人や骨盤が歪んでいる人は頭の右側や左側で考える癖になってしまいます。意識を集中しているときは前頭葉の中央部で考えることができますが、気を抜くとすぐに元々の癖に戻ってしまいます。
 そして実際、かかと重心の人は多いですし、小趾側に重心が乗ってしまい足や骨盤が歪んでいる人も多いです。
 この状態を克服して快適に考えることを身につけるためには、まず、自分がどうであるかを知らなければなりません。そして次に、その原因を知る必要があります。そして、具体的にどうすれば原因を克服することができるかを知り、日々実践しなければなりません。

 私の母は現在80歳ですが、数年前まで、何かを尋ねますと頭を少し右下に向けて視線を右下やや後方に落とさないと記憶を呼び出したり、考え事ができないと言いますか、思考を働かせるスイッチが入らないような癖を持っていました。その後、左膝の変形が悪化し、歩くのに苦労するようになった頃から認知症の気配がするようになりました。そして一時的に体調を悪化させ3週間ほど入院したのですが、それを期に認知症がどんどん進行してしまいました。昨年秋に膝の人工関節置換手術を受けるために一月間ほど入院しましたが、認知症の問題で、ベッドに拘束されてしまうほどに認知症が進行していました。
 体調のいろいろな変化、リウマチのための投薬、膝の痛みを軽減するための鎮痛薬、加齢と老化、そんな諸々が重なり認知症が進行したのかもしませんが、あの、右下に視線を落とさないと思考回路のスイッチが入らない状態はすでに脳に異変が起こり始めた兆候だったのかもしれません。
 現在、膝の手術から1年以上が経過しましたが、毎朝私が15分くらいリハビリを兼ねて膝周辺のマッサージを行っています。膝の方はすっかり良くなって今は杖無しで普通に毎日たくさん歩いていますが、認知症の方もだいぶ軽くなってきました。毎朝(仰向けで寝た状態で)マッサージをしながらいろいろ考え事を投げかけるのですが、今は右を見ながら考えるのではなく、視線をまっすぐ天井に向けた状態、つまり前頭葉にイメージを浮かべながら考えるようになりました。膝の調子が良くなった影響かもしれませんし、毎日たくさん歩くようになった影響かもしれませんが、明らかにからだが改善したことで考え方(思考を展開する場所=思考回路)が変わり、脳の働きが良くなってきたのだと思います。

 さて、かかと重心で後頭部で考え、疑いの回路を使ってしまう勉強会のメンバーに対しては、かかと重心を改善するための施術を行いました。前回取り上げました小趾側のアーチをしっかりさせることもその中に含まれますが、重心の位置が足の中央部(距骨)になりますと、思考を展開する場所も自ずと前方に移ってきます。この状態では、普通に考えると前頭葉を使うようになりますが、すると変調の検査が簡単にできるようになりました。疑心暗鬼の思いを生み出す回路を使うことなく答えを導き出せるようになったからではないかと私は思っています。
 ですから、この人にとっては、この状態を長く維持することが大切になってきますが、そのためには何に注意し、日々どんなことを実践すれば良いのかということが日常生活での課題となってきます。

集中力が持続しない‥‥考える場所が定まらない
 時々「この人はどこで考えているのかわからない」と感じる人がいます。
 考える時、脳細胞は非常に活発に働くわけですが、そのためには多くの血液(酸素)が必要になります。ですからその人が脳内の特定の場所を使って思考を展開している時にはその場所の血流量が増大することになります。その人が頭を使って考えている状況を注意深く観察していますと、その人が脳のどの辺りの場所を主に使って考えているかを把握することができます。
 ところが、時々そのような特徴を持たない人がいます。今右耳の辺りで考えていたのに次の瞬間には左耳の方に移ってしまったり、そして次には頭頂の右側に変わってしまったりするのです。あるいは普段は多くの人達と同じように特定の場所を使って思考を展開しているのですが、何かあって動揺したり、自分の知らないことや不得意なことに遭遇しますと思考を展開する場所が定まらなくなってしまったりすることもあります。「思考が停止してしまったようだ」「頭が回転しない」とはそういうことなのかもしれません。そして、このように考える場所が定まらない場合は集中力の欠如した状態になるわけですが、考え続けることができない、熟考することができない、注意散漫の状態になってしまう、などという感じで認識されるのかもしれません。

からだの力を発揮するために
 私が整体の勉強をし始めた頃、ある本に「仙骨の傾きとからだの推進力には密接な関係がある」という内容がありました。実際、短距離走などのスタートでは、ダッシュ力を得るためにからだを前傾させますが「仙骨が前傾しているとからだを前に押しだす力(=推進力)が増す」という原理と関係があるのかもしれません。
 一般論として、仙骨が前傾している(=骨盤が前傾している)傾向が強い代表は黒人系の人達だと思います。そしてこれも一般的な印象としての話ですが、黒人系の人達は陽気で明るくいつも前向きな感じがします。そして足も速いです。
 私たち日本人は骨盤が後傾気味です。つまり仙骨の前傾が乏しいわけですが、いろんな面で推進力に乏しい傾向があると言うことができるかもしれません。反面、慎重で、平穏で、伝統を重んじ、古き良きものを護るという保守的な良い面があるとも言えます。

 さて、精神面や肉体面に限らず、疲れ切っていたり、落ち込んでいたりする人を観察しますと、まず下腹部(臍下丹田周辺)に力感が乏しく、全身が一体化していないように感じます。(「全身の一体化」というのは曖昧な表現ですが、自分の統一された意識がからだの隅々まで行き渡っていて、一つのエネルギーで全身が覆われているような感じの状態です)
 そしてこのような人を前にして、施術に入るときには「何処をどうすれば元気がでて、全身の一体感が甦るだろう?」と考えてしまいます。このような状態の人は前頭葉を使って集中して考え続けることが苦手ですし、骨盤もゆるんでいて仙骨は下がった状態になっています。だからといって頭蓋骨や骨盤を整えても問題は解決しません。
 ここが整体師としての経験と技術の発揮どころになりますが、いくつかのポイントをとても繊細に観察しながら施術ポイントを決めていくことになります。
 呼吸状態を改善する必要があるかもしれませんし、足のバランスを改善する必要があるかもしれません。あるいは手指先の問題や頭皮の硬さが原因になっていて、それらを整える必要があるかもしれません。
 主観的な言い方になりますが、ベッドに仰向けで寝ていただいたときに、状態の悪いときは全身がベッドにへばりついた状態、つまり重力のなすがままの状態になっているように感じます。思考する場所も頭頂から後頭部にかけての場合が多いですし、腹部をはじめ全身に力感が乏しいように感じます。
 そして、施術を進めている間に少しずつ元気が回復してきますと、思考する場所が前頭部に移り視線が真っ直ぐ上(天井方向)に向くようになります。そして呼吸が深くなって胸やお腹が呼吸に合わせてゆったり動くようになりますが、やがて下腹部や骨盤がしっかりしてくるようになります。
 ここまで辿り着けますと、その人に内在している本来の力であったり、心地良さ、快適さなどが表に現れて、その人自身が自信を回復して自ずからポジティブな状態になると思います。
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 うつ病やうつ症状で苦しんでいる人、自信が持てずに精神的にきつい人、根暗だと感じている人、不安や恐れや疑いなどの精神状態につきまとわれている人、心療内科に通っても進歩が見られない人、このような人達は、是非、前頭葉にイメージを描いて考えるようにしてみてくほしいと思います。
 もしかしたら、前頭葉を使い続けることができない場合もあるかもしれません。その時は、からだを整える必要があるかもしれませんし、方法をアドバイスさせていただきますので、一度ご来店ください。

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