ゆめとわのblog

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カテゴリ:顔面・頭部 > そしゃく

 「整体」と「噛み合わせ」とは関連性のない、違うジャンルのものであると認識している人がほとんどだと思います。「噛み合わせは」歯科や口腔科の領域であると一般には考えられていますし、噛み合わせの矯正には歯を削ったり、マウスピースを装着したり、場合によっては歯列矯正が必要になるというイメージを持たれているかもしれません。
 しかし、噛み合わせで悩んでいたり、違和感や不快感を感じ続けている人たちの話をうかがいますと、これらの手段を駆使しても問題は解決されないとのことです。
 そして噛み合わせのことが気になりだしますと、その調整の為に歯をどんどん削ることになり、不安を感じつつも深みにはまっていくような、そんな感じになっていくと仰った人もいました。

 「そしゃく」は哺乳動物である私たちにとって非常に重要です。そしゃくすることが心地良いのであれば、自然と私たちはそしゃくを増やすようになりますが、そしゃくすることに違和感や不快感を感じたり、疲労を感じるようであれば、自然とそしゃくをおろそかにして食物をすぐに呑み込んでしまうことになってしまいます。それは食物の消化という意味でも良くないことですが、それ以外にそしゃく筋がたるんでしまうと意味でも良くないことです。(そしゃく筋は全身筋肉の司令塔のような役割)
 ですから、そしゃくを心地良いものにするために、噛み合わせの問題を解決することはとても重要なことであると言えます。

 噛み合わせに関しましては、歯科や口腔科が専門とする「歯」と「歯茎」などの状態は重要です。しかし、それだけでは不十分で、「顎関節」の状態がとても重要です。噛み合わせの問題に取り組むときに顎関節の問題を外していろいろ調整してみたところで、根本的な解決には結びつきません。
 顎関節のバランスが悪く、上の歯列のある上顎骨と下の歯列のある下顎骨が歪んだ関係にあるなら、いかに歯や歯列を修正したところで、噛み合わせが合って、心地良くそしゃくできる状態になるとは考えることができません。顎関節が歪みなく正しく機能できる状態になっており、その上で、さらに歯列や歯の状態も良好であるとき、心地良いそしゃくが達成できるのだと、私はそう考えています。
 また、顎関節の状態を重要視されている歯科や口腔科の医師がかなり多くいらっしゃることは知っています。そして、いろいろな研究をされていらっしゃるのだろうと思います。そのような書籍も拝見したことがあります。しかしながら、歯科や口腔科の専門範囲内だけでの対応では、やはり限界があり、結果的に不十分な対応になってしまうと言わざるを得ません。

噛み合わせ(顎関節)は背側と腹側の接点


 私たちのからだは大きく背側と腹側に分かれています。そして構造的に上顎は背側であり、下顎は腹側です。ですから顎関節を修正するときには、「からだの背側と腹側」という観点を外して考えることはできません。単に上顎(側頭骨)と下顎のことだけにスポット当てて、部分に切り分けて対応しようとしますと、全然違った方向に答えを求めてしまうことになってしまいます。
 (例えば顎関節の開きが片側だけ悪いのは「咬筋が硬くなって伸びないからだ」と判断して、咬筋を伸ばすための対処として筋肉弛緩剤(ボトックスなど)を投与して解決したり、奥歯にゲタを履かせて強制的に咬筋を伸ばそうとしたりする等)

 具体的な例を一つ取り上げてみます。
 右腕を使い過ぎたり、他の理由で右の肩甲骨が外側にずれてしまうことがあります。すると肩甲骨から後頭部や頚椎に繋がっています僧帽筋や肩甲挙筋が引っ張られた状態になりますが、それによって後頭骨が捻れます。そして後頭骨の捻れは前頭骨、上顎骨へをつながり、上顎の捻れとともに上の歯列に歪みをもたらします。(上顎が左側に捻れる)

 また腹側では、右肩甲骨が外側にずれるのに合わせて右鎖骨が外側にずれますが、それによって首前面の筋肉が変調起こし、喉や舌骨が右側にずれます。舌骨から下顎骨には舌骨上筋群がつながっていますので、舌骨が右側にずれることによって下顎骨も右側に捻れますが、それは下の歯列を右方向に歪ますことになります。

 このようにして、肩甲骨が右側にずれたことによって上の歯列は左方向に、下の歯列は右方向に歪みますので噛み合わせが合わない状態が生じます。
 それでも、からだが健康な状態であり、筋肉の働きなども良い状態であれば、からだは自己修正する力を発揮して、肩甲骨の歪みが頭部の歪みにつながらないように何処かで調整し、噛み合わせへの影響が少ないように調整してくれると思います。ところが疲労が溜まってしまったり、体力が落ちたりして筋肉の能力が今一つ発揮できない状態になりしますと、自己修正能力を発揮することができず、肩甲骨の歪みがダイレクトに顎関節の歪みにつながってしまいます。
 このような場合、根本的な解決策は右手や右腕の疲労を回復させて筋肉の状態を整えることです。そうすることで肩甲骨の位置が本来の位置に戻り、頭部の歪みが解消されて顎関節および噛み合わせの不具合が改善されます。ですから、例えば顎関節周辺や頭部をいろいろいじってみたり、あるいは右の僧帽筋の張りがゆるむようにマッサージなどしてみても効果は期待できません。「効果があった」と感じたとしましても、極めて一時的なものでしかありません。肩甲骨の位置が本来の位置に戻らなければ何をやっても無駄になってしまうと私は思っています。

 以上は、非常に単純なものの例ですが、実際にはもっと多くの要因が絡み合って顎関節の不調や噛み合わせの不具合をもたらせています。ですから、顎関節を整え噛み合わせを整えるためには、からだ全体を細かくチェックして、全身の歪みを改善する作業が必要となります。

 顎関節は背側と腹側の接点であると申しましたが、それは陰と陽の接点であり、からだの陰陽のバランスとも関係しますので、単に「噛み合わせの問題」だけではありません。
 からだの腹側(陰)と背側(陽)のバランスが良ければ噛み合わせのバランスも良くなりますし、反対に噛み合わせのバランスが良くなれば、からだの陰陽のバランスが良くなると考えることもできます。
 ですから噛み合わせは「からだのバランス」という面でも、「重要事項である」と言うことができます。

噛み合わせを整えると、噛むことが心地良くなる

 口の中に何も物を入れない状態で、上下の歯をコツコツと音を立てるように噛み合わせの動作をしたときに、噛み合わせが良い状態であれば音が一つとなって心地良く響くと思います。そして奥歯が適度に刺激され心地良い感じがすると思います。どちらかの奥歯が浮いていたり、ずれていたりしていますとしっかり噛むことができませんので、心地よさは感じられないと思います。音もなんとなく一つではなく二つに聞こえたりします。この状態で長い時間(30秒程度)カチカチしていると疲れてきて不快感を感じるかもしれません。
 これは噛み合わせのことだけでなく全身の筋肉がそうなのですが、バランスが整っていますと筋肉を使うことは心地良いことと感じ、バランスが崩れていますと筋肉を使うことは不快であり、疲れやすいと感じてしまいます。
 私たち人間(哺乳動物)は噛むことと歩くことが健康を保つ上での基本ですが、「噛みたくない」「歩きたくない」と思っている人も少なからずいます。もしからしたらそのような人達は、噛むことに疲れや不快感を感じる状態であったり、歩くことに対して「なにが心地良いのかわからない」と感じてしまう状態であったりするのかもしれません。

 ここで話題がガラッと変わりますが、誕生したばかりの赤ちゃんは、まだ目もまったく見えないのに必死になって母親の乳房をまさぐり、乳首に食らいついて満足するまで一心不乱におっぱいを吸い続けます。この光景は私たち人間だけでなく、犬の赤ちゃんも同様です。それ故に哺乳動物と呼ばれるわけですが、乳を吸うときに働かせる筋肉は舌と頬の筋肉とそしゃく筋です。つまり哺乳動物の最初の動作はそしゃくであって、唇と頬と舌とそしゃく筋を巧みに使いこなす運動が私たちの原点であり、基礎であると言うことができます。ですから、「そしゃく」は本来心地良いものであるはずなのです。
 私たちは毎日食事を摂っていますが、その目的が栄養補給だけであるならば、カロリーメイトや飲む食品やサプリメントの類があれば事足ります。なにもそしゃく筋や舌をたくさん動かしてまで噛む必要はありません。ところが、実際は、私たちのほとんどは食事を好んでいます。それは美味を味わいたいという欲求や空腹を満たしたいという欲求を満たすという目的もありますが、無意識下で、そしゃくをしたいという根源的な欲求があるからなのかもしれません。「そしゃく」は本来心地良いものであることを私たちは潜在意識で知っているのだろうと思います。
 そう考えますと、そしゃくが思うようにできない状態‥‥歯が悪かったり、顎関節が痛かったり、噛み合わせが不調だったりする状態では根源的な欲求を満たすことができませんので、精神的に落ち着かなくなったり、心が晴れない心境になってしまうかもしれません。

・少しの歪みはそしゃくを繰り返すことで改善することもある
 そしゃくが私たちの根源的な動作・運動であるならば、そしゃくすることで私たちは「バランスを取り戻し、活力を回復することができる」という理屈になります。
 そして実際、そしゃく筋を使ってよく噛むことは、全身の筋肉を活性化し、からだに活力を取り戻します。

 ところで、虫歯の治療をして冠をかぶせたりしますと高さ調整を行っても、なんとなく噛み合わせが合っていないように感じたりします。ところが、その状態で何日か過ごしていますと、当初感じていた違和感は消失していることがあります。そしゃくを繰り返すことによって、歯や歯茎が少し動いて違和感の無い状態になったのだと思います。
 歯科の先生はよくご存じだと思いますが、歯はある程度自由に動いてくれます。インプラントは顎の骨にねじ込んでしまいますので全く動くことができませんが、普通の歯は直に顎の骨に繋がっているわけではありませんので、動いてくれます。
 このことは、多少顎関節が歪んでいたとしても、歯列はその歪みを補って噛み合わせを調整してくれる可能性があることを暗示しています。ですから、歯科治療によって歯の高さや傾きに多少の違いが生じたとしても「噛んでいるうちになんとなく揃ってしまう」という状態になるのだろうと思います。
 ところが、噛まないとこのような調整能力は働きません。時々見かけますが、歯のことに過剰に神経質になってしまい、治療によって生じた多少の違いがとても気になっている人は、そしゃくをしっかりすることよりも歯を調整することばかりに気がいってしまうために、心理的に不安定な状態になってしまいます。そして必要以上に歯の調整を要求するために、歯を削ってばかりの状況に陥ってしまい益々マイナスの方向に進んでしまったりします。歯を削りすぎて歯列の高さが低くなりますと、本来よりも深く噛まないと噛み合わない状態になってしまいますが、そうなりますと、また別の問題が発生する可能性があります。
 今現在、歯の高さや噛み合わせのことが気になっていらっしゃる方は、ご自分の状態を今一度省みていただき、神経質になっているようであれば、まずそしゃくをしっかりすることを試みていただきたいと思います。ご飯を一口30回、じっくり、しっかり噛んでみてください。そして、それを何日か続けてみてください。そうすることで、からだの歪みも調整されますし、筋肉の働きも改善されて活力が出てくると思います。精神的にも「落ち着き」が戻ってくるのではないでしょうか。そしゃくには、そういう力があるのだろうと思います。

噛み合わせを修正するために

 噛み合わせが多少狂っていたとしても、そしゃくをしっかり行っていますと違和感や不具合感は緩和されると思います。それは、そしゃくを繰り返すことで調整力が働き、バランスが整ってくるからだと思います。しかし、噛み合わせが大きく狂っていたり、不具合が頑固になっているようであれば、やはり積極的に顎関節と噛み合わせの修正を行う必要があります。
 そして、その場合、歯科に行かれるよりも先に、顎関節を整えることを優先させた方が良いと私は考えます。
 顎関節が歪んだ状態で歯や歯列をいじって噛み合わせを調整した場合、顎関節を後から調整しますと、せっかく調整した噛み合わせの歯列が合わなくなってしまいます。あるいは、歯や歯列のみの調整だけで顎関節を修正を行わなかった場合は、顎関節が歪んだままですから“心地良いそしゃく”は達成できません。噛み合わせを調整することになった、元々の動機と目的を満たすことができないのではないかと思います。

 冒頭に、「整体」と「噛み合わせ」は違うジャンルのものであると認識されている、と申し上げましたが、「整体的観点」も重要です。歯科・口腔科的調整と整体的調整の両輪があって、噛み合わせの調整は順調に進むのだと思います。

 

足つぼ・整体 ゆめとわ
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 この地球上における“生物”あるいは”生命体”という見方をしたとき、私たち人類は脊椎動物であり、その中の哺乳動物であるということになります。脳の発達に伴って精神性が最も進化しているだろうとされている私たちは、地球上で最も進化した存在でありますが、肉体的には脊椎動物の中の哺乳動物であるという制限を日々強いられています。ですから肉体的な面で「からだの健康」を考えるときに最も基礎となるのは、“脊椎動物”、“哺乳動物”というキーワードであると言うことができます。

 おそらくほとんどの人が、カゼをひいたり健康を害して病気になったとして、病気の治癒について、あるいは健康の維持について考えたとしても、自分たちが実は脊椎動物であり、哺乳動物であるという視点から考えることはないことでしょう。現代医学においても、あるいは長い年月伝承されてきた伝統医学の分野においても、学術的な理論として考察されることはあっても、実際にそれを臨床の現場で有効に活かして治療にあたっているということはほとんどないと思います。
 ところが、実際に整体の分野で私たちのからだを眺めますと、私たちが実は脊椎動物であり、哺乳動物であるということがとても重要になってきます。それは、からだの機能の根本的なシステムが、脊椎動物として、哺乳動物として厳然と存在しているからです。

 ところで生物界は植物界と動物界に分けられますが、一番の違いは栄養摂取の方法です。植物は大地に根を生やし、大地からの養分と水分、空気中の窒素などを材料に太陽光線によって光合成を行い、自らの栄養として生長します。一方、動物は光合成を行うことができませんから、栄養を食物として口から摂取しなければなりません。食物を追い求めて移動するために手足を持っているわけですし、嗅覚・視覚・聴覚・触覚・味覚という感覚と感覚器官(鼻・目・耳・皮膚・舌)もまた、その根本的な必要性は「食物を追い求めるためである」と言えると思います。

 地球上の生命はおよそ38億年前の太古の海で誕生したと考えられていますが、5億年ほど前に脊椎動物が誕生したとされています。そして今から2億年ほど前に哺乳動物が脊椎動物の進化の形態として誕生したとされています。
 脊椎動物は単純に表現すれば背骨をもった動物ということになりますが、脊椎動物ではないものにはカニや昆虫があります。彼らは背骨という内骨格を持たず皮膚(殻)に相当する部分を硬くして自分の形を維持しています。ですから「大きくなることができない」という制限があります。大きくなると自分の皮膚(殻)の重さでつぶれてしまうからです。
 一方、骨格として背骨をからだの内部に持つように進化した脊椎動物は大きくなることができるようになりました。さらに、骨格に支えられているので強い筋肉をもって素速く動くことができるようになりました。海の中を縦横無尽に素速く動く魚を連想していただければ、カニの動きよりはよほど俊敏であることがわかります。その理由は筋肉の発達の違いによるものであると言えます。

 ところで脊椎動物の第一の革命は、歯と顎を持ったことだと言われています。それまでは、口はあったものの歯がなかったので海中のプランクトンなど小生物を流れに任せて口の中に流し込むだけの捕食でしたが、歯と顎を持ったことによって、より積極的に獲物を捕らえることができるようになりました。大きな魚が小さな魚をガブッと噛みついて捕らえる光景が生まれました。
 脊椎動物の第二の革命は、海からの上陸に関連する大きな変革です。
 まず呼吸が変わりました。それまでは水の中に含まれている酸素を海水ごと口の中に取り込み、エラ(鰓)で酸素を取り出し、不要な水はエラ孔から外に出すというエラ呼吸でしたが、陸上の世界では水中呼吸に対応するエラは役に立ちません。そこで空気呼吸に対応するために肺を持ち、肺呼吸を行うための筋肉(首から胸腹部)が発達しました。さらに、陸上では重力が水中の6倍にもなりますので、血圧を上げなければ血液が循環しなくなってしまいます。そこで血圧を上げるための仕組み、すなわち心臓を中心とする循環系が発達しました。その他にも重力に負けない骨格をつくるために、それまでは骨といっても軟骨だったものが硬い骨に変わりました。さらに陸上を移動する必要性が、ヒレを手足に進化させていきました。この上陸による大きな変容・進化のためにおよそ1億年の年月がかかったと考えられています。

 そして、哺乳動物に進化する第三の革命では、“そしゃく”するシステムを獲得したことが大きな変化です。
 私たちは食事に際して、食物を口の中で噛み砕き、唾液と混ぜてこねりながら柔らかい食塊にして食道~胃へと送り込みます。それをそしゃく(咀嚼)と嚥下と言いますが、それは私たちにとっては“ごく普通のこと”です。私たちと同じ哺乳動物である牛や馬も草を口の中でモグモグとそしゃくしています。ところが爬虫類である、例えばヘビは、獲物をそしゃくすることはありません。丸呑みです。ワニにしても、あの恐ろしい歯でかみ切ることはあっても、モグモグそしゃくすることはありません。

 哺乳動物というのは「乳を吸う動物」という意味でもあるわけですが、生まれたばかりで目も見えないうちであっても子は母親の乳首に吸いついて一心に乳を吸います。乳を吸うためには唇を使って口をすぼめなくてはなりません。また、舌も上手に使わなくてはなりません。頬の筋肉も上手く使わなくてはなりません。ですから哺乳動物は唇をもち、舌が細かく微妙に動き、頬を巧みに操れる顔を持つようになりました。さらに、歯も切歯・犬歯・臼歯の三種類を持つのが特徴です。そして私たち人間は臼歯が一番多いのですが、それは米や麦や雑穀などを奥歯と舌と頬を使ってこねるようにしてそしゃくするのに適応するためだと考えることができます。肉食である犬、猫、ライオンなどと、穀物を主食とする私たちとは歯の構成が異なるのはこのような理由であると考えることができます。

 また、私たち人間が他の動物たちと一番異なる点のひとつは言葉を話すことです。そのために人間は脳の働きが優れていて知性が発達しているということになりますが、それに加えて舌と頬と唇と顎を巧みに使えるようになっていると言えます。
 ですから、私たちのからだについて考えるとき、この口周辺を中心とした“顔の機能と在り方”は非常に重要なポイントであると言うことができます。

 以上、大雑把に脊椎動物~哺乳動物~人間までの流れを見てきましたが、機能と形態とは表裏の関係で、切っても切れない関係であるという見方があります。それは機能に適するように形態が変化するという意味でもあります。思考し、言葉を語り、手を自由に動かして行為をするのが、他の動物にはない私たち人間の機能の大きな特徴です。ですからこの機能に適するように哺乳動物から今日の私たちまで形態を変化・変革させてきたのが人類の進化であるとも言えます。
 重力に対抗して二足歩行ができるようになったことで手を自由に動かせるよう解放しました。知性を発達させ、考えるための大きな脳を入れるのに適した頭蓋骨を持つようになりました。言葉を話し、いろいろな物を食べられるように舌と唇と頬と顎を自在に微妙に使えるようになりました。
 これらを反対から考えますと、歩くこと、考えること、そしてそしゃくを中心とした口周りの機能を使い続けること、これらが私たち人間の機能を健全に保つための要であると言えるのではないでしょうか。

 特にそしゃくに関していえば、ほんの少し前(数十年前)まで「一口30回噛みましょう」と大人達や学校の先生は子供たちに指導していました。ところが、今では医療の現場でさえ、そしゃくについては軽視されているように感じます。実際、整体の現場では、そしゃく筋がゆるんでいたり、偏りがあることが原因でからだに不調を訴える人がたくさんいます。そのような人たちは、まず”よく噛む”ことから始めなければなりません。「早食い」はまったく良くありません。

 “呼吸”と“循環”と“栄養の消化吸収”と“不要物の排出”が生命維持の要です。これらの機能を象徴する肺・心臓・小腸・肝臓・腎臓‥‥といった、いわゆる五臓六腑は、動物が脊椎動物に進化する以前は、細かく分化していたわけではなく、一つの腸が全てを担当していたということです。腸の中に全ての機能が含まれていて、その中心はエラ呼吸の場所にあったと考えられています。
 つまり私たちのからだで言えば、顔~喉にかけてが中心であり、頭部が骨盤部と分かれて前方に伸びる(頭進)ことによって胴体(体幹)ができ、内臓の臓器や器官がそこに効率良く配置されたということです。
 頭と顔の骨のことを頭蓋骨と言いますが、解剖学的に顔の骨のことを内臓頭蓋と表現することがあります。つまり顔は内臓が表に露出したものであるということを示唆する表現です。胃腸の調子が悪いと顔色がさえない、ということからも顔の色艶や表情には自然と内臓の状態が反映されます。それは発生学的に顔が内臓(腸)の延長線上であるからです。さらに顔には心の状態や精神(脳の働き)の状態も重なるようにして反映されますので、顔をよく観察することで肉体的なことだけでなく、いろいろな情報を読み取ることができるのでしょう。
 このように顔~喉にかけてはとても重要なところですから、化粧や美容などによって容姿を整えれば「それで良い」というものではありません。顔は全身機能の要であるという観点で考えることが、本当はとても重要なことだと言えます。

そしゃくは命の要
 太古の昔、エラ呼吸を行うエラの筋肉の運動リズムが、その生命体のリズムでした。そしてそのリズムは海の寄せては返す波のリズムと同調しており、地球の、そして自然界のリズムと同調したものであると言ってもよいのかもしれません。
 つまり、自然界のリズムに則って腸の蠕動運動のリズムがもたらされ、そのリズムに合わせてエラが動いていたので、呼吸や血液循環のリズムも自ずと自然界のリズムに同調していたということになります。
 そのエラ呼吸の要であるエラ孔は太古の魚には6個ありました。それぞれのエラ孔には筋肉と軟骨が付属しているのですが、進化とともに、耳とその機能器官、扁桃腺、胸腺、副甲状腺、肺、そしゃく筋、顔面表情筋、嚥下筋、発声筋などに変化していきました。
 現在、私たちの顔にあります表情筋やそしゃく筋は、自然界のリズムに支配されていたエラ呼吸の頃の筋肉(内臓平滑筋)とは違って、自分の意思によって動かすことができる筋肉に変わっています。肺を中心にした呼吸運動もある程度意思でコントロールすることが可能なシステムに変わっています。ということは反面、自然界のリズムに“お任せ”しておけば良いというものではなくなってしまったということです。意図的にコントロールしなければからだのリズムに支障をきたすようになってしまうということです。
 私たちは食べ物を食べるとき、食物を口の中に入れてモグモグとそしゃくし、それが飲み込んでも大丈夫な状態になった後、ゴクンと飲み込んで食道~胃に送ります。この一連の動作では、そしゃく筋と嚥下筋が連動するわけですが、それ以外にも唾液腺から唾液が分泌され、頬の筋肉や舌が協働して働きます。唾液には酵素が含まれていて食物を分解する働きをするわけですが、それ以外にも発ガン物質の毒性を抑える働きがあることもわかってきています。この強い味方の唾液をたくさん分泌するためには、そしゃく筋を働かせなければなりません。たくさん噛めば噛むほど唾液が分泌されるのです。余談ですが、中国漢方の教えに、活力の「活」という字は「舌」が「水」を伴っている状態だというのがあります。舌が常に湿った状態、つまり、舌が唾液で潤っている状態が「活」であり、唾液の分泌は健康にとても重要だと考えられています。

 そしゃく筋には四つの筋肉があります。主に顎を上下に動かす咬筋(こうきん)と側頭筋(そくとうきん)。下顎を前後左右に動かす働きをする内側翼突筋(ないそくよくとつきん)、外側翼突筋(がいそくよくとつきん)です。私たちの奥歯は臼歯で、穀物をすりつぶすのに役立つ臼の形になっています。そして、このすりつぶす動作に翼突筋が深く関与します。つまり穀物を主食として食べるようなシステムに、歯もなっていますし、筋肉も用意されているということです。反対から考えますと、穀物を食べなければそしゃく筋はバランスを失い、筋力不足になってしまう可能性が高くなるということです。
 かつてのエラ呼吸に関係する腺や筋肉や軟骨が、今日の私たちの扁桃腺、胸腺、副甲状腺、肺の機能、表情筋、そしゃく筋、嚥下筋、発声筋、耳の機能などになっているわけですから、これらの働きは当然連動しますし、腸の蠕動運動、すなわち内臓の働きに影響を与えると考えることができます。
 「連動する」ということは、影響し合うということであり、どれか一つが駄目になると他のものにも不具合が生じるということです。あるいは、どこかに不調があったとしても、連動の仕組みを利用して不調を改善させる可能性があるということです。
 そして、これらの中で私たちが意図的にコントロールできるものは、そしゃくと呼吸と発声です。ですから健康法や芸や武術(スポーツ)などの分野で“正しい呼吸”が上達のための鍵であるといわれているわけですし、歌を歌って発声筋を動かすことが健康のために良いことだと考えられています。そして同様に、そしゃく筋をよく使うこと、つまり穀物をよく噛んで食べることも健康のためにはとても重要なことです。

 現在は、「一口30回噛みなさい」と指導する声は聞こえなくなってしまったかもしれません。そして噛むことは面倒で時間もかかるという考え方の上に、「飲む栄養」「かじる栄養」「ゼリーの様な栄養」が市販されているのかもしれません。「早食い」が要求されるほど時間に追われている私たちの社会、“食物さえ、栄養さえ、バランス良く摂っていれば大丈夫だ”とみんなが思い込んでいるのかもしれません。
 しかし原点を振り返って、私たちのからだは脊椎動物であり哺乳動物である、ということに着目しますと、“そしゃく”がこの肉体にとって“とても大切である”という結論が導き出されます。
 現に整体の現場では、そしゃく筋がゆるんでいること、あるいは片噛みの癖や噛みしめの癖によって顔が歪み、その歪みがからだにつながり、不具合になっていることがとてもたくさんあります。“噛めば解決してしまう”ということもたくさんあります。呼吸を整えることがあらゆる面での基礎であると同様に、そしゃく筋を鍛えることも健康のための必要条件であり基礎です。そのように意識を変えて、日々の食事の時間を大切に過ごしていただきたいと思います。

足つぼ・整体 ゆめとわ
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  例えば自分の力では持ちきれないような重たい机や棚を移動しなければならないとき、私たちは歯を食いしばって持てる力の最大限を発揮しようとします。また、野球選手がバットでボールを叩く瞬間、バレーボールの選手がスパイクを打つ瞬間、顔が歪むほどに歯を思い切り食いしばっている姿をスローモーション再生で見ることがあります。
 通常の状態を超えて筋肉の能力を最大限に発揮しようとする時、自然と私たちは噛みしめたり、歯を食いしばったりして対応しているわけですが、それは私たちのからだが、そしゃく筋を収縮させることによって馬鹿力が発揮できる仕組みになっているからだと考えることができます。

 ところで、歯ぎしり癖、噛みしめの癖、食いしばりの影響でからだが歪み不調を感じたり、健康を害している人はたくさんいます。頭痛の多くは噛みしめ癖の影響ですし、顎関節の不具合、噛み合わせの不具合、歯茎の問題などはこれらの癖の直接的な影響によるものです。ですから「なぜ歯ぎしりをしてしまうのか?」「なぜ噛みしめ癖を持ってしまうのか?」という疑問に対する答えは健康を維持する上で重要なことだと言えます。
 最近は、3歳や4歳くらいの小さなお子さんでも「歯ぎしりをしている」という話をしばしば耳にします。「そんな小さいうちから不健康に向かっているのか‥‥」と私は内心ショックを受けます。

 私は仕事上、不調を抱えたたくさんの方々に触れてきましたが、多くの人が噛みしめ癖などでそしゃく筋がこわばり、顎関節が硬くなっていたり、あるいは手指や手のひらがとてもこわばっていたりします。「どうして皆さん、こんなに手がこわばっているのだろう?」とずっと考えていました。私のところに幾度か来店された人はよく知っていることですが、私は手や手指のこわばりをたくさん揉みほぐします。それらのこわばりが腰痛に繋がっていたり、下半身の不具合に繋がっていたりしますので、中途半端に妥協することなく念入りにほぐして筋肉の変調をとります。

 例えば私自身の場合は、仕事として手や手指をたくさん使いますので、私の手がこわばっていたとしてもそれは原因がはっきりしています。”仕事が原因”ということです。一日中、パソコンのキーボードを叩いている人はやはり手がこわばりますので、私と同じようなものです。ピアノをたくさん練習していたり、重たいものを持つことが多かったり、手を使うことの多い人は手や手指がこわばるのは理解が及ぶところです。ところがそれほど手を使うことをしていないのに手が強くこわばっている人がいます。「どうしてなんだろう?」とずっと考えていました。そして、ある時「もしかしたら、ついつい手を握ってしまう癖を持っているのかもしれない」との思いが浮かんできました。それから多くの人を、そのような観点で観察し始めるようになりました。
 首肩を揉みほぐすためにベッドにうつ伏せで寝た状態の時、左手は開いた状態なのに右手は軽く握った状態になっていたり、親指だけ曲げていたりと、皆さんいろいろな手の癖を持ています。痛みをこらえるとき手を強く握りしめてこらえる人もいれば、手足は平然としてお腹に力を入れてこらえる人もいます。「手を握ってください」とお願いしますと、親指を中に入れたゲンコツを作る人もいれば小指側を中心に手を握り親指は外に出したままの人もいます。
 これらを”その人の単なる癖”と考えることもできますし、”からだの使い方がそのようになってしまう状態にある”と考えることもできますが、私は後者の考え方をしています。

いつも手が凝っている人
 その方の職業は全身をケアするエステティシャンです。開業されて3年ほどですが、仕事の疲れもあって毎週来店されています。この方の両手はいつも強く凝っています。「まだ経験も浅いし、女性にとって全身ケアの仕事は重労働なので、手がこんなに凝ってしまうのかな?」と私はずっと思っていました。ところが「この一週間はほとんど仕事をしていないのに‥‥」ということでしたが、やはり手が凝っていましたので「何か怪しい」と私は思いました。
 手の強く凝った状態は必ずからだにいろいろな不調をもたらしますので、一通り施術を行い「まあまあの状態」になったところでテストをしてみました。
 このテストは単純で、手を開いた時と握った時ではどちらがからだを支える力が強いか、奥歯を合わせて噛みしめた時と顎を開いてそしゃく筋を伸ばした時ではどちらがからだを支える力が強いか、というものです。一通り施術した後ですので、手のこわばりもほとんど解消された状態でテストを行いました。するとこの方は、手を握った時と奥歯を噛みしめたと時はからだを支える筋肉がしっかりし、手を開いた時とそしゃく筋をゆるめた時はからだを支える筋肉の能力が明らかに落ちました。
 「これが、この人がいつも手を強くこわばらせ、そしゃく筋を硬くこわばらせている理由なんだ。仕事で手を使っていることが主な原因というわけではないんだ。」と私は思いました。「手を握り、噛みしめていないとからだを支えることができない」ということがわかった瞬間でした。
 ところで、これは不自然な状態です。軽い力であっても手を握るという行為は腹側(屈筋側)に刺激を入れて筋肉を収縮させていることですから、意志とは裏腹にからだが緊張状態になっているということです。
 この方の常態化している悩みの一番は、目がおかしいことです。「見えにくいわけでもないが、自分の目ではないように感じる」という症状を抱えています。そして仰向けで寝ると、枕を首にあて、顎が上がった状態、つまり顎を突き出して上を向いた状態になっているのですが、そのことが私はいつも気になっています。喉周辺が緊張し続けているため、そのようにしないと気道が確保できないのかもしれません。

 さて、この”手を握ると力が入る”という不自然な状態をどのように修正していけばよいのか? それが課題です。
 改めてじっくり観察していきますと、どうも顔や頭部に何か問題がありそうな気配を感じましたので、丁寧に頭から触っていきました。すると額の上、髪の毛の生え際より少し上のところに凹んでゆるんだ部分がありました。試しにその部分に手を当てながら、筋力テストを行ってみました。するとそれまでとは逆転して、手を開くと力が入り、顎を開いてそしゃく筋をゆるめると力が入る状態になりました。
 そして「手を握り続けてみてください。」「疲れて手を開きたくなりますか?」と聞いてみました。すると、それまでは手を軽く握った状態でいることが安心感のある状態だったものが、「手を開きたくなる」という状態になりました。私の手は、凹んだ部分に軽く当てたままの状態です。
 「ここに古傷の凹みがあるのですが、何か心当たりはありますか?」と聞いてみました。なかなか思い出せないでいましたが、「もう20年くらい前だけど、階段ですべって頭を何処かにぶつけたときの傷かもしれない」と仰いました。
 その後、しばらく私はその部分に施術を施しましたが、それだけでからだ全体がゆるみリラックスしました。顎を上げて上を向いた状態だった首もほとんど真っ直ぐな状態に変わりました。いつも緊張感が漂っていた目の周りがゆるみ、穏やかな眼差しに変わったことがとても印象的でした。

 さて、その凹んだ古傷のところのケアについてですが、髪の毛のないところであれば、いつもの「貼りもの」(ダイオードやマグレイン)を貼って修復を補うことが出来るのですが、この部分は無理ですので「一日に何度もこの部分に手を当ててケアしてください。」とアドバイスしました。
 これは文字通り「手当て」ですが、「そんなことで良くなるのか?」と皆さん思われます。私から見ると意味のないストレッチや筋トレの方が効果的だと考える人がほとんどです。マッサージをしたり運動をしたりする方が「筋肉に効果的」と思われるようですが、こういった古傷が問題になっているときは、丁寧に手を当てて細胞の働きが戻るようにケアする方がよほど効果的です。ですから「真面目にやってくれるといいのですが‥‥」

からだの芯の力を現す中間広筋と薬指
 この項目は完全に私の私見です。ですから本当は間違っているかもしれません。それを念頭にお読みになってください。

中間広筋のテスト

 私はからだの力、つまり筋肉の能力=働き方には二通りがあると考えています。一つは「動くための能力」であり、もう一つは「支えるための能力」です。再三申し上げていますが、筋肉は骨を足場にして自らを伸縮させることでからだの動作を生み出しています。ですから骨格が不安定ですと自らの能力を十分に発揮することができなかったり、こわばって緊張状態になってしまいます。そして「骨格の安定」をつくり出して維持しているのも筋肉の働きなのですが、これをここでは「支えるための能力」と表現しています。
 インナーマッスル、アウターマッスルという言葉がありますが、大雑把に申し上げれば、インナーマッスルが支えるために働く筋肉、アウターマッスルが動作のための筋肉と考えても、そう間違いではないと思います。
 支えるための筋肉がしっかり働くことによって骨格が安定します。すると骨を足場にして大きく伸縮する動作のための筋肉が十分に働ける状態になります。それによって、軽やかにスムーズにからだを動かすことができる、と私は考えています。
 そして、支えるための筋肉の能力を私は「からだの芯の力」と考えています。そして太股前面にある大腿四頭筋の中の中間広筋は芯の力を現していると考えています。
 
階段を降りる_中間広筋

 中間広筋は膝に粘りを与えてくれます。「階段を昇るのは大丈夫だけど、降りるとき膝が辛くて‥‥」「立った状態で玄関の下にある靴を履くとき、ふらついたり不安定になる」という場合、中間広筋の働きが悪いと考えられます。あるいは、トントンと素速く階段を降りることは出来ても、ゆっくり・じっくり降りることが苦手という場合も中間広筋の働きが悪いと考えられます。山登りの時、帰りの下りで膝がカクカクしてしまうのは脚が疲労しているからですが、それは中間広筋の働きが弱くなる現象として現れます。中間広筋は膝を支える地味な働きをしていますが、からだの粘る力、つまり芯の力を現していると考えられます。

 手を握ると力がどうなるのか、奥歯を噛みしめると力がどうなるのか、これらのテストは上記の意味から中間広筋の筋力テストで行いました。
 からだの健康を維持するという意味では、瞬間的な瞬発力よりも中間広筋に代表される「芯の力」の方が大事だと考えられるからです。
 また、以前に記しましたが、手指の中では薬指の力が芯の力を現すと私は考えています。薬指は普段使うことがほとんどありませんので、多くの人は何も気にしていないと思いますが、私はとても気になります。

対立筋テスト示指と環指

 掌の汗、足裏の汗で悩んでいる人、歯ぎしりや噛みしめる癖を持っている人、手を握りしめる癖を持っている人、こういう人たちは中間広筋の力も薬指の力も弱いです。
 からだの芯の力は”リラックスしている状態でのエネルギーの流れ”が大きな影響力を持っているように思います。夜眠っているときや、昼間リラックスしている時でも血液循環は一時も止みませんが、全身の隅々まで酸素と栄養豊かな動脈血が届き、エネルギーを消費して生じた老廃物や炭酸ガスが滞りなく回収されている状態であれば、芯の力はしっかりしていて基礎代謝も増大するのではないかと思います。ところが何処かに血液が十分届かない部分が生じたり、老廃物などの回収が滞ってしまった部分が生じますと、芯の力は弱くなってしまい基礎代謝も不十分になってしまうのではないかと思います。

 仮に、血液の循環に滞りがあり芯の力が弱かったとします。その状態では思考の速度が遅くなり、生理機能が弱くなってしまいますので、私たちは歯を噛みしめたり、手を握りしめたりすることでからだに力を伝え、循環力をアップしてからだの隅々まで血液を届けようとしているのではないでしょうか。
 ですから、このような人は奥歯を噛み合わせたり、手を握りますと中間広筋の力が強まります。反対に顎をゆるめて奥歯を離したり、手を開いた状態でテストをしますと力が弱くなってしまいます。それは改善を要する好ましくない状態です。手を開いた状態、顎をゆるめた状態でしっかり中間広筋に力が入る状態になることが好ましいことであり、正常な状態であると言えるのだと思います。

芯の力が弱くなってしまう理由
 中間広筋は膝関節に関係する筋肉ですから、膝の状態が悪ければ当然弱くなってしまいますので、そのような時は薬指の筋力テストで観察することになります。
 芯の力が弱くなってしまう理由は”幾つか”よりたくさんあります。身につけているペンダントやピアスやブレスレットなどが原因となっている場合もありました。ですから一概に「これが原因です」と確定的なことは言えません。しかし傾向としては、からだのエネルギーの流れと関係が深いようです。
 「エネルギーが順調に全身を巡っているので生理機能が良い状態を保ち、からだの力が充実している」
 という言葉を皆さんはどう受け取りますでしょうか? からだに関係して”エネルギー”という言葉は誤解を招きやすいので普段私はあまり口にしません。もし私が整体師でなくヒーラー(ヒーリングを施す人)であるならば、”エネルギー”という言葉はスピリチュアル的意味合いを含んだ言葉として受け取られると思います。しかし私は整体師ですので、スピリチュアル的な要素は含まずに肉体的、物質的な観点を原則にして説明し、施術を行っています。現代医学と伝統医学の範囲内が基盤です。そうお断りした上で、それでもやはり”エネルギーの流れ”という言葉が妥当だと思います。

 血液には動脈血と静脈血がありますが、動脈血には細胞の活動に必要な栄養物質と酸素が含まれています。ですから「動脈血は体内エネルギーの基である」と言うことができます。
 からだが冷えますと手先がかじかんで動きが悪くなりますが、それは熱が足りなくなると筋肉の働きが悪くなるからです。ですから熱はからだの機能を快適に保つためのエネルギーであると考えることができます。「お腹を冷やしてはいけない」という昔からのアドバイスは、内臓の働きを保つためには熱エネルギーが必要だという意味です。
 肩こりを緩和するために身につける磁気ネックレスやピップエレキバンは私たちのからだに流れている電気的要素に作用させて血行を良くしようとするものです。整形外科や接骨院で行う低周波や高周波などの治療は「電気をかける」という言葉で表現されることが多いですが、つまり私たちのからだの電気的な仕組みに働きかけてからだを治療しようというものです。ですから私たちのからだの働きには電気的エネルギーが大きく関わっているということです。実際、筋肉の働きも、神経の働きも全て電気仕掛けですので、電気的エネルギーはからだを機能させる根本的要素です。
 これら血流、熱、電気以外に、東洋医学には「気」というエネルギー、あるいは「プラーナ」という概念がありますが、今回はそれらを除いて考えてみます。

①循環不良‥‥大きな関節の不具合
 前の投稿で”鎖骨下静脈と鼡径部”について取り上げましたが、これらの状態が悪いと血液の流れが悪くなりますので、細胞の働きが鈍くなってしまうと考えることができます。ですから芯の力は低下します。また、肩関節、肘、手首、股関節、膝、足首といった大きな関節の歪みは大なり小なり必ず血液やリンパの循環に影響を及ぼします。中でも体幹と四肢との境になります股関節と肩関節の歪みは全身的な血行不良を招きやすいようで、芯の力に大きく影響します。
 また、体熱は血液の循環と深く関係しますので、血流に問題がありますと熱が足りないことによる筋力低下、芯の力の低下も招きます。
 私たちのからだの熱の多くは筋肉(骨格筋)の働きによって生み出され、血流に乗って全身に分配される仕組みになっています。例えば運動をして筋肉が温まりますと、その中を流れている血液も温かくなりますが、その温かい血液が心臓に戻って再び全身の細胞に届けられます。ですから熱を生み出す能力のさほど持たない内臓や脳も温まり、それぞれの機能をしっかり果たすことができます。
 つまり、全身の細胞が消費する栄養と酸素を供給する動脈血は熱も運んでいますので、血液循環の善し悪しは”芯の力”に大きな影響を与えることになります。

②頭部の古傷、体幹中心部筋肉の損傷や変調
 例に取り上げた人のように、頭部に古傷があったり、たびたびギックリ腰をして骨盤や仙骨に古傷のある人などは芯の力が弱くなっている可能性があります。からだが元気であれば、その古傷のマイナス面を他がカバーしてくれますので芯の力もしっかりした状態を保つことができますが、疲労が蓄積したり、体調を崩したりしてカバー力が低下したり、あるいは加齢によってカバー力が弱まりますと古傷の影響が現れ、芯の力が弱くなってしまうことがあります。
 頭部を打撲した、尾てい骨を打撲した、昔学校の先生や親に頭を叩かれた、そういったものが何十年経った現在にも影響を及ぼしていることを度々目の当たりにします。皆さん、最初は信じられない思いを抱きますが、筋力テストしますと即座に結果として現れますので、このことを納得されます。
 また腹部の手術で腹筋を横断するようにメスを入れた場合は、腹筋の働きが悪くなりますが、同時に芯の力も低下します。「手術後、体質が変わったなぁ」と思われている人は、もしかしたら手術痕の影響かもしれません。そうであるならば、適切なケアをする必要があります。そして適切なケアをしていけば、体質が強くなっていく可能性は十分にあります。

③ご飯を噛まない‥‥そしゃく筋のゆるみ
 まず、ご飯を噛むことと噛みしめることは全然違いますので、そのことを認識していただきたく思います。先日、「子供の頃から歯ぎしりや食いしばる癖があって、顎が硬くなり口を動かすことが苦手で、喋ることが辛い」と訴える若い青年が来店されました。しかし同時に「最近、ガムを噛むようになってからは症状が少し楽になった」とも仰いました。また、「どうして噛まなければならないのか?」と近年の若者らしい質問をされました。私が子供の頃は小学校の先生が「一口30回噛みなさい」と給食の時間に指導されていましたので、噛むことは当然なことであり、そのことに疑問を感じることはありませんでした。
 この質問に対する私の答えは「それは私たちが哺乳動物だからで、哺乳動物は噛まなければならない仕組みになっている」というものでした。
 哺乳動物が母親の胎内から産み出された後に行うことは、目も見えないのに母親の乳首を必死になって探し出し、唇をあてがい、一心不乱に乳を吸うことです。これを筋肉の動きで説明しますと、唇や口周りや頬の筋肉、そしてそしゃく筋の働きを総動員して行う動作、ということになりますが、これが哺乳動物にとっての根源的な動作であると考えることができます。赤ちゃんはご飯が噛めないので、一生懸命乳を吸います。その延長線上がそしゃくであり、ご飯が食べられるようになった幼児はそしゃくをしなければなりません。この時に親が柔らかい、よく噛まなくても飲み込めてしまうようなものばかりを与えてしまいますと、そしゃく筋や口周りの筋肉があまり使われなくなりますので哺乳動物としての原動力が弱くなってしまう可能性があると考えることができます。そして口周りの筋肉も頼りない状態になりますので、口が閉じていられなくなり、結果、口呼吸となってアレルギー体質になってしまうとも考えることができます。顎も発達しませんので歯列が乱れてしまうため、歯列矯正が当然のように行われることになる風潮のようですが、それはまた将来的に悪影響を及ぼす可能性が考えられます。
 ですから”そしゃく”は私たち哺乳動物にとって、生理機能や体力を維持するために必要な欠かすことのできない義務です。
 そしゃくが足りないので芯の力が弱くなり、芯の力が弱くなったので噛みしめてしまう、そして顎関節がおかしくなり頭痛に悩まされるようになる、そういった悪い流れが出来てしまいます。ですから、理想的とは言えないまでもガムを噛むことでそしゃく筋を働かせていれば、症状が多少なりとも軽減するといったことになるのだろうと思います。
 また、そしゃくに関しては「噛み方と噛み合わせ」という問題を取り上げなければなりませんが、それはここでは省力します。過去の投稿を参考にされてください。

流れを変えて芯の力を強くするために
 手を握る癖、噛みしめたり、食いしばったり、歯ぎしりをする癖を改善するためには、そういう行為をしなくても芯の力が強く、体力が充実した状態になるようにからだを変えればよいのではないか、と私は今考えています。

「エネルギーの流れを変える」
 これまでは噛みしめたり握ったりする方が強まったエネルギーの流れを、噛みしめたり握ったりすると弱くなってしまうように変化させれば、噛みしめることも握ることも居心地が悪くなるので、自然とそのような行為は行わないからだに変わっていく。

「何処を調整したり修正すれば、流れが変わるのだろうか?」
 股関節や肩関節の不具合は? 鎖骨下静脈や鼡径部の状態は? 頭部の古傷は? そしゃく筋の状態は? しっかりご飯を噛んでいるだろうか? あるいは、ペンダントやブレスレットなど装飾品が悪さをしていないだろうか?

 ざっと、以上が、考え方のポイントと施術での着目点です。
 この他には精神的ストレスや思い込みなど心理面での影響も考えられますが、それは私の範疇ではありませんので、ここでは取り上げません。
 しかし、これまでの経験で申し上げれば、皆さんが「精神的ストレスが原因?」などと感じていたものの多くが、実は肉体的な問題が原因だった、と言えます。

 噛みしめや歯ぎしりなどの癖は、からだに不具合をもたらす原因になります。また、手を握りしめてしまう癖も腰痛や膝痛、体調不全の原因になる可能性があります。更に、これらの癖を持っているということは、エネルギーの流れ方が「逆方向」ですので、是非改善していただきたいと思っています。そうすることが、どことなく不快感を感じ続ける毎日を快適な日々に変える第一歩であると考えます。

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  顎に関係する症状といえば、顎関節症、反対咬合、噛みしめ食いしばり癖、歯ぎしり癖、片噛み癖、といったところでしょうか。
 これらの症状に共通していることは、そしゃく筋から力が抜けない、あるいはついついそしゃく筋に力が入ってしまう、ということです。顎から力が抜ければ大きな問題にはなることはありませんが、本人の意思や自覚に関係なく筋肉に力が入った状態、筋肉が収縮したままの状態が存在するので、問題を解決することがしばしば厄介になってしまいます。
 「どうすれば力が抜けるのか?」この問題はそしゃく筋に限らず全身の筋肉に当てはめることもできます。力を抜くことができればリラックスできますし、呼吸も楽になります。ところが、それがなかなか実現できないので、いつもスッキリしない状態、常に不定愁訴を抱えた状態になってしまいます。

骨格がしっかりしていれば筋肉から自然と力が抜ける
 私はしばしば骨と筋肉の関係について、骨は筋肉が自らを動かすための「足場」という表現を使います。
 私たちがコンクリートやアスファルトなど地面のしっかりしたところに立ったり、歩いたりするときは安心できますので余計な力を使わずにすみます。ところが足場がとても不安定な場所を歩かなければならないとき、例えば細い吊り橋などを渡らなければならないとき、精神的にとても緊張しますが、からだも硬直して動きがとても悪くなります。筋肉もこれと同様です。基本的に骨と骨の間に筋肉があって、筋肉が伸び縮みすることによって骨を動かすので動作が生まれます。この動作を生み出すとき、筋肉は必ず一方の骨を足場にして自らを伸縮して他方の骨を動かします。腕の動きであれば、肘から肩関節にかけての上腕骨を足場に上腕二頭筋、上腕三頭筋という筋肉が伸縮して肘から手首にかけての前腕を動かして肘の曲げ伸ばしを行います。ですから上腕骨がしっかりしていないと上手く肘を曲げることができなかったり、あるいは力を抜いても筋肉がこわばったままなので肘が伸び切らない状態になってしまいます。
 このように筋肉の能力を十分に発揮してもらうためには、その条件として骨格の安定がとても大切です。

側頭筋と咬筋02

舌骨上筋群と舌骨下筋群

 さて、顎関節の動きや顎関節の状態にこのことを当てはめて考えてみます。
 細かい部分では違っている点もありますが、ざっくり表現しますと、顎を閉じる、つまり上顎骨に下顎骨を近づける働きをする主な筋肉はそしゃく筋(外側翼突筋を除く)です。反対に顎を開く(開口)ための主な筋肉は舌骨上筋群と呼ばれる筋肉です。ですから私たちが食事や会話などで顎を使うときは、そしゃく筋と舌骨上筋群がタイミングよく伸びたり縮んだりしながら協働して顎を動かしているということになります。
 重力がありますので、下顎を引き上げる方が引き下げるよりたくさんの力を必要とします。ですからそしゃく筋の方が舌骨上筋群よりはるかに筋力が強くなっています。

 さて、ここで顎を開く動作をそしゃく筋を中心に考えてみます。
 そしゃく筋には体表から触ることのできる側頭筋と咬筋があります。
 側頭筋はしばしば片頭痛おこす側頭部の側頭骨及び前頭骨を足場に、下顎骨の筋突起につながっています。収縮することで下顎骨を引き寄せて口を閉じ、弛緩伸長することで下顎骨を落として開口する動作を行います。
 咬筋は頬骨から耳にかけて繋がっている頬骨弓を足場に下顎骨のエラ(下顎角)につながり、側頭筋同様収縮することで下顎を引き上げ、弛緩伸長することで開口する動作を行います。

内側翼突筋と外側翼突筋

 体表から触ることのできないそしゃく筋として内側翼突筋と外側翼突筋があります。
 内側翼突筋は頭蓋骨の深部にあります蝶形骨を足場に下顎骨(下顎角)の裏側につながっています。口の中に指を入れて頬の内面を触ろうとするとき、歯茎と頬肉の間に壁のように硬くなっているものがありますが、それが内側翼突筋です。収縮することで下顎を引き上げる点は咬筋や側頭筋と同様ですが、それ以外に下顎を横に動かして、そしゃく時の複雑な動きを可能にしています。
 外側翼突筋は、蝶形骨を足場に顎関節のところで下顎骨につながっています。収縮すると顎関節で下顎を少し前に出します。この動きはとても繊細で、閉じて半ばロックがかかったような状態の顎関節からロックを外す働きをします。つまり外側翼突筋の収縮は他のそしゃく筋とは反対に開口に働きます。

 ですから、口を開く動作では咬筋、側頭筋、内側翼突筋が弛緩伸長し、外側翼突筋が収縮しなければなりません。筋肉の弛緩伸長は、簡単に表現しますと“リラックスして力が抜ける”ことです。
 ここで足場の話を思い出していただきたいのですが、安心感と共にリラックスして力が抜けるためには足場がしっかりしている必要があります。つまり側頭骨、頬骨弓、蝶形骨が安定していないとこれらの筋肉から上手く力が抜けないことになります。自分では一生懸命力を抜こうと努力するのですが、それは無理なのです。

顎が落ちるという感覚
 リラックスしているとき、あるいは無意識のとき、口は閉じているけれども顎は少し開いて奥歯が離れた状態になっているのが普通の状態です。口呼吸にならないように意識している人は奥歯を噛み合わせて口が開かないようにしているかもしれませんが、それは噛みしめ状態、つまりそしゃく筋が作動して少し収縮している状態です。収縮力はそれほど強いものではありませんので、短時間のことであればほとんど問題にならないと思いますが、何時間にもわたってそのような状態を続けていますと、そしゃく筋はこわばった状態になってしまい頭痛を招いてしまうかもしれません。このような人は、ご自分では噛みしめている意識はありませんので、「頭痛の原因は噛みしめです」と指摘されても腑に落ちず納得ができないかもしれません。しかし実際には、そしゃく筋から力が抜けない状態で、側頭筋の収縮が側頭部を圧迫して起こす緊張型頭痛になっています。

 さて、例えば椅子に座ってからだを緊張感から解放しますと下顎がスッと落ちるように動きます。夜、眠るために布団に入って目を閉じますと自然と顎がゆるんで下顎が落ちます。状態の良い人は、このようになっているはずです。そしてそのような人は、食物をモグモグとそしゃくする際、顎を開く時にも同じように「顎が落ちる」感じで顎関節が動いているのが感じられると思います。
 ところが、このような説明にまったく納得できない人、何のことやらさっぱり理解できない人、そのような人もいます。結論を先に言いますと、そのような人は顔の骨格が下がっている人です。
 「顎が落ちる感覚」というのは咬筋、側頭筋、内側翼突筋がゆるんで、あとはほとんど重力によって下顎が下がっている状態であると言い換えることができます。頭蓋骨の骨格がしっかり安定していれば、容易に咬筋、側頭筋、内側翼突筋から力を抜くことができますので、重力任せにしておくことができます。
 反対に、顔面が下がって頭蓋骨が不安定な状態の人は、咬筋、側頭筋、内側翼突筋から力を抜くことができません。顎関節を開くために、下顎骨を下に引っ張る舌骨上筋群を通常以上に働かせて下顎を引き下げなければなりません。このような状態の人は、リラックスするために奥歯が噛み合わない状態をつくろうと試みても、舌骨上筋群を収縮させた状態を保たなければならないため、とても疲れてしまいます。ですから、奥歯を噛み合わせた状態(=咬筋、側頭筋、内側翼突筋が少し収縮した状態で、舌骨上筋群が作動していない状態)の方が楽に感じられると思います。布団に入って眠りにつくとき、奥歯を合わせていた方が落ち着くのであれば、顔の骨格が下がっているか、頭蓋骨が不安定な状態である可能性が高いと考えられます。

骨格が自然と持ち上がるのが正常?
 結論を先に言いますと、顎を開こうとしたとき、つまり下顎を下げようとしたとき、自然な反応(反作用)として上顎骨、頬骨、前頭骨、側頭骨などが僅かに上に動きます。そのようにしてからだは頭蓋骨を安定させ、顎関節が脱力できる状態にしているようです。
 鼻筋の一番上、眉間の辺りに軽く指を当てて観察してみます。普通の状態の人であれば、下顎を下ろそうとするのと同時に眉間がわずかに上に動くのが感じられると思います。眉間のすぐ上には前頭筋という表情筋がありますが、それが微妙に収縮するのも感じられると思います。
 ところが、頭蓋骨の下がっている人、表情筋の働きが悪い人などはこのようには動きません。顎を開くときに脱力することができないため力を必要としてしまいます。
 正常に近い状態の人は食物をそしゃくする場合、下顎を下ろすときにはほとんど力を使いません。ですから、顎を引き上げて噛むときにだけ力を使えばよい状態す。往路は休んで、復路だけ力を使うようなリズムでそしゃくすることができます。一方、顎を開くときにも力を使わなければならない人は、往路も復路も力を使う状態ですから、息を抜いて休むことができないので筋肉は疲労しやすくなります。
 こういう意味でも、頭蓋骨を整え、表情筋の働きを整えることは大切なことだと言うことができます。

食物を噛みながら息苦しくなってしまうのは異常な状態
 食事中のお喋りが好きな人は、口に物を入れた状態でクチャクチャしながら噛んだり喋ったりする傾向があります。それは行儀の良いことではありませんが、整体的な観点では特に問題はありません。ところが、お喋りしながら食べているわけでもないのに、口を閉じてモグモグ噛み続ることができず、クチャクチャ噛んで、噛んでいる途中で息継ぎしなければならないような人や子供がいます。その状態は整体的に見て芳しくありません。
 顔の骨格が下がっていたり、表情筋(顔面神経)の働きが悪かったりしますとモグモグそしゃくしながら鼻から息を入れることができにくくなります。ですからすぐに口を開いて口呼吸をしてしまいます。あるいは食べながら口呼吸をするため、モグモグせずにクチャクチャ口を開いてそしゃくするようになります。(親御さん達はお子さんのこのサインを見逃さないで欲しいと私は思っています。)
 そうなりますと歯ぎしり、噛みしめ、首肩の凝り、浅い呼吸、胃腸の不調といった症状を招きやすくなります。それは小さなお子さんでも同じです。本人はまったく自覚していないかもしれませんが、3歳とか5歳とかの幼児でも肩こりになっているのを見たりします。お腹が硬くなって、顔が下がっているのです。
 乳幼児でも足裏が硬くなっている子がたくさんいます。硬く平らなところばかりを歩いていることが原因の一つだと考えられます。足裏が硬くなって腹筋がこわばり、頭蓋骨を下に引っ張ってしまうので顔が下がります。すると、そしゃくが上手くできなくなりますが、そういう一連の流れが考えられます。

「顎先が小さい?」‥‥舌骨上筋群や喉がこわばっている
 反対咬合ではありませんが下顎が少し前に出る傾向にある人が、「私の顎が小さいのはどうしてですか?」 と、まったく予想外な質問をされました。私は下顎が目立つような感じを気にしているのかな? と思っていたからです。「顎は十分に大きいけれど」と一瞬心の中で思いましたが、「そうか、顎先からすぐに喉の膨らみになっていることを指摘しているのか」と思い直しました。
 「顎の下(底面)がスッキリしていない」、「首と喉と顎の境がよくわからない」、「喉が硬く大きくなっている」と感じている人はこの方と同じような状態にあります。 下顎の底面には、顎を下に引っ張って開口させる舌骨上筋群があります。そして、喉のすぐ上にある舌骨から首の前面を胸骨まで繋いでいる舌骨下筋群があります。
 普通に食べたり喋ったりしている程度の顎の開閉では、舌骨上筋群が働くだけで事足りるため、舌骨下筋群を使うことはあまりないと言います。欠伸するほど大きく口を開いたり、声楽家や歌手の方が声帯の能力をフルに引き出して歌うときなどは舌骨下筋群がたくさん使われます。
 顎の底面が狭く、すぐに喉仏にぶつかってしまうような人は、舌骨上筋群も舌骨下筋群もこわばっているということですが、その理由は二つ程考えられます。
 一つはすでに記しましたが、骨格が不安定な状態なので開口時にそしゃく筋から力を抜くことができず、主に舌骨上筋群の力で下顎を引き下げなければならない時です。舌骨上筋群に通常以上の負荷をかけることになりますので、筋肉がこわばり、硬く太くなってしまいます。
 顎が落ちる感じで開口できる場合は、舌骨上筋群に負担を掛けることもありませんので、リラックスした状態で顎を使うことができます。ですから筋肉が変調状態になることはありません。

舌骨上筋_口腔底2

 二つ目は、舌骨上筋群の中で顎舌骨筋とオトガイ舌骨筋を主体に使っているからです。この二つの筋肉は下顎やオトガイ(顎先)の方に舌骨を引きつける働きをしますので、オトガイのすぐそばに舌骨を含めた喉が来てしまいます。すると舌骨と胸骨を繋いでいる舌骨下筋群は引っ張られた状態になりますので、こわばって硬くなってしまいます。このような方は反対咬合になりやすい傾向ですが、仕草によって顎先に梅干しのようなシワを持ったこわばりが発生します。最近はこのような人が増えたようにも感じます。

オトガイ舌骨筋・顎舌骨筋優位の顎ライン
 
 二重顎も含め下顎の底面がスッキリしていない場合、舌(舌筋)や舌骨上筋群がゆるんで落ちていることと、ここで取りあげましたように舌骨上筋群や喉がこわばって膨らんでいるようになっている場合があります。
 舌がゆるんでいる場合は、イビキや無呼吸症候群の危険性が高まります。舌骨上筋群や喉がこわばっている場合は、呼吸がしづらい、頭部への血行不良、目や鼻などの感覚器官に支障が現れる、舌の動きも含めてそしゃくや喋りに不具合を感じるなどの症状が現れる可能性が高いと思われます。

顎を上手に使うために
 噛みしめや歯ぎしり、食いしばり癖などの影響でそしゃく筋が強くこわばり、顎関節症になったり、顎の調子が悪かったり、頭痛や首のコリで辛い思いをしている人はたくさんいます。また、噛み合わせがしっくりいかないために不快な思いをしていたり、奥歯で食物を噛むことができない人もいます。
 時々、噛み合わせについてとても細かい情報を教えてくださったり、同時に学説的なことについて質問される方もいます。しかし現在の医学的な見解では、頭蓋骨はほとんど固定されていて「動かない」ということを基準にして理論が展開されているようですので、私のこのような話はまったく受け入れられないことでしょう。
 「頭蓋骨は簡単に動きます」そして、「だから頭蓋骨を直接動かしては危険です」という現場で実感している認識を土台として申し上げれば、「頭蓋骨は動かない」という見解でいる限り、医学は噛み合わせや嚥下やそしゃくに関する問題を解決することはできないと思います。

 自然現象は、作用があれば必ず反作用があるというのが法則です。下顎が下がれば上顎は反作用として上がります。下顎が上がれば、上顎は下がります。下顎は腹側(陰)であり、上顎は背側(陽)です。ですから下顎を自然に落とそう(下げよう)とするなら、同時に上顎が自然と上がる状態にしておかなければなりません。上顎は背側ですから、尾骨・仙骨から出発して後頭部にくっついている背筋がしっかりしている必要があるのです。
 その他にも、眼鏡をかけ続けているため鼻骨が下がり上顎が下がっている、ご飯をあまり噛まないのでそしゃく筋の働きが悪くなり、側頭骨が歪んで上顎が下がってしまう、いつも下を向いているので首の後面が伸びてしまい上顎が下がっている、というのもあります。
 いずれにせよ、陰と陽は一対であり、互いに影響を及ぼし合う関係ですから、下顎の動きを快適にしようと考えるならば、上顎側(背側)を良い状態にしておかなければなりません。これを平たく表現しますと、「頭蓋骨が安定していて顔が下がっていない状態」が顎を上手に使うためには必要だということになります。

 顎の問題で悩まれている方は、原因として考えられる要素としていろいろあるかもしれませんが、骨盤、背筋、首という視点で考え直してみますとヒントになることが浮かんでくるかもしれません。


顎関節の動き01
顎関節の動き02

顎関節の動き03

顎関節の動き04

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 食べることは栄養を補給するために必要不可欠なことですが、栄養を補給する目的であれば健康食品や薬などいろいろな方法があります。しかし、私たちは口を動かして食べたいという本質的な欲求を持っています。
 “そしゃくする”ということは、その運動によって筋肉が鍛えられ、脳の血流が良くなり、唾液が出て消化が良くなる、という生理機能的な効用をもたらしますが、それ以外にも“心地良くなる”という内面的な効果があります。
 ただし、快適なそしゃくができなければ「噛むのはかったるい」「顎が疲れる」といった反応になりますので「噛むと心地良い」ということにはまったく賛同できないことでしょう。

快適なそしゃくとは?
 スティック野菜をパリパリ噛むことが好きな人と嫌いな人がいると思います。顎を大きく動かしてそしゃくすることができる人は口腔の深いところ(奥歯の方)で噛み砕きながらパリパリ・モグモグしますが、それを快適に感じると思います。ところが顎を大きく動かすことができない人や反対咬合の人は、オトガイ(下顎の先端)の方に力を入れて噛むようになりますので、口先の方だけ動かして噛むような状態になってしまいます。また、この状態では噛む力も弱いので、硬いものは苦手に感じてしまうことでしょう。

閉口筋_咬筋・側頭筋

 ところで、顎を大きく使ってそしゃくすることのできない人に、「口先の方を使って噛んでいますよね?」と問いますと、ほとんどの人の反応は「?」マークです。何を言われているのか意味不明に思われるようです。物心ついた頃からずっとその噛み方ですから、それが普通だと思っています。顎関節がおかしくなった経験があったり、歯科治療や何かのアクシデントをきっかけに「噛み方が変わった」「長くかみ続けることが苦痛になった」と感じている人は、このことが解るようですが、そうでなければ解らないかもしれません。
 「噛み合わせがおかしくなった」という訴えはよく聞きますが、「噛み方がおかしくなった」という訴えはあまり聞くことはありません。しかし、噛み方がおかしくなることはよくあることですし、毎日を快適に暮らす上で、大切なポイントになると思います。

 さて、このことに関しまして私が今着目している筋肉があります。それは舌骨上筋群と呼ばれていますが、喉元にあります舌骨と下顎の骨をつないでいる筋肉で、オトガイ舌骨筋、顎舌骨筋、顎二腹筋という名前がついています。

舌骨上筋_口腔底

 “そしゃく”は“食物を噛む”ことが根本ですから、顎を閉じたり開いたりする運動が基本的な動作になります。(実際はもっと複雑です)
 それは顎関節を支点として、下顎骨を引き上げたり、引き下げたりする運動のことですが、下顎骨を引き上げる筋肉は閉口筋と呼ばれ、そしゃく筋である咬筋、側頭筋、内側翼突筋が主体になります。下顎骨を引き下げる直接的な筋肉は舌骨上筋群であるオトガイ舌骨筋、顎舌骨筋、顎二腹筋(前腹)です。
 実際のそしゃく運動は、舌筋や表情筋なども動員して複雑になりますが大雑把に申しますと、以上の通りです。

オトガイ舌骨筋と顎舌骨筋のこわばり状態

 ところで私が観察したところ、同じ舌骨上筋群でも顎二腹筋(前腹)とオトガイ舌骨筋、顎舌骨筋では働き方の性質が異なります。顎二腹筋(前腹)はオトガイを舌骨の方に引き寄せますが、オトガイ舌骨筋と顎舌骨筋は舌骨をオトガイの方に引き寄せるように働きます。
 この違いが実際のそしゃく動作でどういう違いになるかと申しますと、顎二腹筋を収縮させて口(顎)を開いた時には、下顎が後方(耳の方)に引かれますので顎関節が大きく動きます。一方、オトガイ舌骨筋や顎舌骨筋を働かせて口を開く時には舌骨や喉が前に動く形になりますので顎関節が動くというより喉元が動いてそしゃくをするような状態になります。ですから、口先だけで噛んでいるような感じです。

 「ア」を発声するために開口するとき、普通は顎二腹筋を使いますので下顎は耳の後方に動くのがハッキリと感じられます。「イ」を発声するときには、顎関節よりも下唇の下(オトガイ)に力が入るのが感じられると思いますが、オトガイ舌骨筋、顎舌骨筋が収縮します。
 ですからオトガイ舌骨筋、顎舌骨筋を使って噛んでいる人は、顎先から下唇にかけてと下顎の縁がこわばりますので、その辺りを指圧しますと痛みを感じます。また、喉もこわばりますので、顎の底面から喉や首にかけて硬くなり、厚みが増します。正面から見た時、首がスッキリせず、顔と首との境界もぼやけてしまうと思います。そしてこのような人は「そしゃくすることが心地良い」とは感じないと思います。
 他方、顎二腹筋を使って噛んでいる人は顎関節が大きく動きますし、そしゃく筋も上手に使えますので噛む力も自然と強くなります。硬いものを噛むことも平気です(歯や歯茎が弱くなければ)。顎関節の動きが大きくなるわけですが、それは筋肉を大きく伸びやかに使っていることと同じですので、「そしゃくすることは心地良い」と感じると思います。

鼻骨の状態が舌骨上筋群に影響を与える?
 私の鼻骨は今、少し下がっています。この状態で煎餅を噛んでみますと顎関節が大きく使われている感じはしません。しかし口先だけで噛んでいる感じでもありません。次に鼻骨を上に持ち上げながら噛んでみますと、顎関節が軽くなり、顎が大きく使われるようになります。そして今度は鼻骨を引き下げて噛んでみますと口先の方だけで噛むようになり、奥歯を使って噛むことができなくなってしまいます。ですから、鼻骨の状態が噛み方の影響を与えることがわかります。
 また、筋肉の状態も鼻骨によって変化することが観察できます。鼻骨を上げますと顎二腹筋の状態がしっかりします。鼻骨を下げますと顎二腹筋がゆるんで顎舌骨筋とオトガイがこわばります。
 鼻骨は下がりやすい骨です。眼鏡を使っている人の多くは鼻骨が下がっていることでしょう。花粉症の季節は、たくさんの人の鼻骨が下がります。花粉症で鼻炎が悪化する理由の一つは鼻骨が下がってしまうことだと私は考えています。
 
 鼻骨が下がってしまう理由は幾つか考えられます。
 最近の眼鏡は軽いとは言え、やはり重みがありますので、眼鏡を使っている人はどうしても鼻骨が下がってしまいます。

後頭骨と鼻骨の関係性

 鼻骨と後頭骨はシーソーのような関係になっています。つまり後頭骨が上がると鼻骨が下がるということです。後頭骨は背骨や背筋(脊柱起立筋)を介して仙骨とつながっていますので、いつも姿勢が悪く背筋がゆるんだ状態になっている人は後頭骨が上がってしまいます。また仙骨や骨盤が下がっている人も後頭骨が上がってしまいます。
 東洋医学の考え方では鼻と肺は密接な関係ですが、実際、胸の状態と鼻骨は関係性があります。現代医学的には、胸腺の働きはほとんど無視されたような状況ですが、胸(胸骨)を触ると鼻骨が上がる場合があります。胸骨、あるいは胸腺は免疫系と関係がありますので、そこにエネルギーが与えられる(手で触る)と鼻の状態が良くなると考えることができます。 鼻づまり、くしゃみ等の症状の時に胸に塗る「ヴィックスヴェポラップ」はこのことを応用していると思います。
 実際、今の私は胸に手を当てると下がっている鼻骨が上がります。

ちょっとした“差”が、心地よさを決める
 「口を開く時に舌骨上筋群のどの筋肉を優先的に使っているか?」というのは、あまりにも細かく、マニアックな内容かもしれません。しかし実際に調子の悪くなった人、たとえば滑舌が悪かったり、舌が思うように動かせなかったり、喉がつかえたり、満足に噛むことができなかったりする人に対しては、こういう細かい点をチェックして調整しなければ症状を改善に向かわせる糸口に辿り着けなかったりします。反対咬合の人も、それを直そうとするのであれば、とても重要なポイントです。

 私たちは美味しい物をたべると心が高揚して楽しくなります。アルコールも、好きな人にとっては気分を高揚させたり、心を落ち着けたりすることに利用できます。その他にも趣味を楽しんだり、自分の嗜好にしたがって満足感を得て気分を高揚させたりしています。これらのほとんどは舌や目や耳など感覚器官を通じて取り入れた外部からの刺激がもたらしてくれるものですが、そういった外部の物が全くなくても心地よさを感じることのできる内的な道具も幾つか持っています。
 そして、その中の一つが“そしゃく”であると私は思っています。もう一つは“歩行”で、きっとその他にもいくつかあると思います。
 快適にそしゃくしていれば、それだけで自ずと心地良くなります。「心地よさとは、どういう状態で、そのためには脳から○○というホルモンあるいは化学物質が放出されている」と科学者は分析されるのかもしれませんが、私はそこには理由付けは必要ないと思っています。哺乳動物の一種である私たち人間は、生まれたばかりの赤ちゃんが母親の乳房に唇を吸い付けて一心不乱にそしゃく筋を働かせて乳を吸いますが、それが本来の姿だと思います。そしゃくすることが本来の状態であって、本来の状態になれば、“自ずと心地良くなる”のだと私は考えています。ですから、内的に心地良くなりたい、安らかな気持ちになりたい、リラックスしたいと考えるのであれば、快適なそしゃく、正しい噛み方を身に付ける必要があるのではないかと思います。

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