ゆめとわのblog

ホームページとは違った、より臨場感のある情報をお届けしたいと思っています。 また、テーマも整体の枠を飛び出してみたいと思います。 ホームページは以下です。 http://yumetowa.com/ お問い合わせはメッセージ欄でお送りください。

そしゃく

 そしゃくと嚥下が上手くできなくて、食事ができない女性のその後の報告です。
 前回の投稿では、首の筋肉である前斜角筋がこわばっていることで舌が上がらず、満足なそしゃくができなくてスムーズな嚥下ができないという内容で終わりました。

 その女性が前回の施術から8日後に来店されました。そして、その後の食欲やそしゃくの状態について尋ねましたが、前斜角筋をケアしながらでもやはりそしゃくができなくて、全然食欲が出ないと仰いました。「喉は確かに上がっているのだけれど、舌が取り残されているようで上がってこない」と仰いました。

 私が触診で観察したところ、喉の状態は悪くありませんし、前斜角筋だけでなく他の斜角筋にも問題はありませんでした。舌骨の位置もたいして問題はありません。ですから「通常は問題がないはずなのに、どうしてなのだろう?」と思いました。

 頭部や顔面を観察していきますと、今回は鼻(鼻骨)が眉間の方に食い込むくらいに上がっていて、上の前歯や歯茎も鼻の方に突っ込んでいるように詰まっているのが分かりました。
 つまり、顔面が上がりすぎている状態なのですが、「もしかしたら口蓋(口の中の天井)が上がりすぎていて舌が届かない状態になっているのかもしれない」と直感しました。このようなことは通常はほとんど見られない状況です。大概は鼻骨や上顎骨が下がって問題が生じているのですが、今回は反対の状況です。

口蓋が上がって舌が届かない

 どうして鼻骨と上顎骨が上にずれてしまったのでしょうか?
 鼻骨と上顎骨をが上下に歪む、もっとも確率の高い原因は後頭骨の位置が上下に歪んでいることです。頭部は顔面部と後頭部でシーソーのような関係になっていて、後頭部が上がると顔面部が下がり、後頭部が下がると顔面部が上がるという関係性があります。

後頭下筋の「こ」によって舌が上がらない

 結論を言いますと、この女性の場合、後頭部と第1・第2頚椎を結ぶ後頭下筋(大後頭直筋と承光頭直筋)および後頭部の筋膜が非常に強くこわばっていて、後頭骨を前下方に引っ張り込んでいたことが主な原因でした。後頭骨がグイーッと首の方に食い込んだような状態になっていましたが、その影響で頭部が後ろ向きに回転した状態になっていた上に、後頭骨と鼻骨・上顎骨のシーソー関係から上顎が上に上がっていました。顔面で見ると上の前歯と鼻が眉間の方に押しつけられているような状態です。そして、この状況によって舌が口蓋に届かず「喉は上がっているのに舌が上がっていない」と自覚する状況になっていました。

 では、どうして後頭下筋がつよくこわばっているのか? という問題になりますが、その理由の主なものは、第1頚椎と第2頚椎のが上向き(=後ろの棘突起は下向き)になっていたために、後頭下筋を引っ張る状況となってこわばっていました。
 ですから、解決策としては第1頚椎と第2頚椎の上向き状態を修正することになります。
 専門的には、肩甲挙筋や中斜角筋がゆるんでいたり、働きが悪い状態だったりすることに着目します。
 施術の詳細は割愛しますが、胸郭に問題があってそれを修正することで問題は解決しました。

バイオリズム? それとも何故?

 今回の投稿を入れて3回は、同じ女性について書きました。
 彼女は食事を満足に摂ることができず、病院では逆流性食道炎と診断され、実際、胃液、それも時々緑色の液体まで吐き出してしまうほど消化系に問題を抱えています。
 そして彼女の状況に関して、私が思ったことは、まず口の中でしっかり食物を噛んで唾液による消化を行うことから始めなければならないことでした。口で噛むことをおろそかにした食物を胃に送ったのでは、胃の調子が悪くなるのは当たり前の話です。食物はそしゃくと唾液の消化酵素である程度消化され食塊となります。そしてその食塊が嚥下によって胃に送られ、胃では胃酸や酵素を使って更に消化されます。そしてそれが十二指腸で胆汁(緑色)や膵臓から分泌される酵素でさらに消化されて小腸に送られ、栄養として吸収される仕組みになっています。ですから、そしゃくと唾液の分泌がスタートです。その工程を飛ばしてしまいますと、消化が上手くいかないのは当然の理です。
 ところが彼女は出産時の問題で、そしゃく筋が働かない状態になってしまいました。それについては二つ前のブログに記載しました。
 分娩時の臍の緒が巻きついて首を損傷したことが原因でそしゃく筋が機能できない状態でしたが、それは今は大丈夫になっています。ところが、次には「舌が上がらない」という問題を修正しなければなりませんでした。舌が上がらないと口を閉じたままモグモグとウシが草を食べるようなそしゃくはできませんし、食塊を飲み込む嚥下動作もスムーズに行うことができません。ですから、前回は舌を上げるために斜角筋を整えました。
 ところが今回は、「喉は上がったけど、舌が取り残されたように上がらなくなってしまった」と本人が言っていましたが、それは舌の問題ではなく、頭蓋骨の歪みで口蓋が高くなってしまい舌が届かない状況になっていました。
 前回までの問題はクリアしたにも関わらず、結果論的には「そしゃくできない、嚥下できない」状況は持ち越されたままになっていました。
 そして今回はこの問題を修正しましたが、次回はどうなっているのか? まだ私は安心していません。

 話は変わりますが、もう何年も、だいたい10日間隔で来店されている50歳くらいの女性がいます。彼女が昨年の秋口くらいから右腕に違和感を感じ始めました。初期の初期の五十肩の兆候です。
 11月くらいになりますと、違和感から運動制限、そして痛みへと変化するようになり、それから一気にいわゆる本格的な五十肩の症状を呈するようになりました。
 来店されるたびに、私は真剣に、症状が悪化しないように心がけました。施術が終わると、まぁまぁ状態は良くなりました。ところが10日後に来店されるときには以前より悪い状態になっている状況が今年の3月くらいまで続きました。
 私は不思議に思うことがあります。症状は毎回殆どかわりませんが、症状に直接関係する原因が毎回異なっていることです。あるときは首周辺の問題だったり、あるときは手指や手首の問題だったり、またあるときは、骨盤や足の方の問題だったり、「これが原因だ!」というものを確定することができなかったのです。

 これが本当の五十肩(あるいは四十肩)なのかもしれません。年齢的になのか、ホルモンのバランス変化によるものなのかわかりませんが、人生におけるある時期の一定期間は「肩関節周辺がおかしくなる」という症状がもたらされるということなのかもしれません。その時々に不具合の直接的な原因は変わるけど症状はかわらない、なので整体の施術が力不足に感じてしまう、そんな感じを味わいます。
 こんな時は私にできることは、症状がなるべく悪化しないようにすることと、五十肩の期間をなるべく短いものにすることです。幸いにして、5月に入ったくらいから肩関節の動きも回復し始め、通常の日常生活では不便さを感じない程度にはなっています。ですから半年間苦しい状態だったということですが、ご本人は気持ちの優しい方なので、十分ではないにしても普通に近く生活できるようになったことを素直に喜んでくれていますので、私の気持ちも軽やかです。

 今回の女性に対しても同じような印象を感じています。そしゃくと嚥下がちゃんとできない、という症状に対して、この3回の施術では原因が異なりました。次回はどんな感じになっているのかわかりませんが、また別の理由で「やはりそしゃくや嚥下ができず食事がまともにできない」状況になっている可能性が高いように感じています。

 整体の仕事も長くやっていますが、私の力では克服できない、こういった面が私たちのからだにはあるのだろうと感じています。
 それはバイオリズムによるものなのかもしれませんし、あるいは精神的・霊的理由によるものであったり、別の理由によるものなのかもしれません。
 しかしながら、私は、まずはこの3次元的、物理次元的アプローチで施術を行うことから始めています。

 私たちは哺乳動物に分類されますが、哺乳動物の大きな特徴の一つに「そしゃく」があります。私たち人間に限らず、犬や猫やその他の哺乳動物の赤ちゃんは目が見えなくても母親の乳房にくらいつき、チュッチュ、チュッチュと一生懸命乳首から乳を吸います。その動作こそ「そしゃく」に繋がる最も重要な動作です。

 前回(一つ前)のブログの女性の、その後について少しお話しさせていただきます。
 彼女は首の改善を続けていますが、その状態はだいぶ良くなりました。普通に口笛を吹くことも出来るようになりました。ところが、そしゃくについては「調子の良いときと悪いときがある」と言います。以前ほどひどくはないけど、その時の調子によって噛むことが嫌になり、食欲がなくなってしまうことがあると言います。

 「そしゃく筋はちゃんと作動するのに噛むことが嫌になる」ということは、次に疑うべきところは舌になります。
 私たちが食物を噛みくだいて、そしゃくして、飲み込む(嚥下)までの一連の動作で舌は決定的に重要な働きをしています。

嚥下


 そしゃく動作においても舌は働いていますので、舌先を噛んでケガしたり、口内炎が舌にできたりしますとそしゃくそのものに不具合や不調が生じます。しかし、そのこと以上に舌をピタッと口蓋
(口の中の天井)にくっつけることができないと「飲み込む」動作が普通にできなくなります。タイミングを見計らって「セイノー○○」という感じでないと飲み込めなくなったり、水分を利用して流し込むようにしないと食物(食塊)を食道に送ることができなくなってしまいます。
 つまり舌が下がった状態で、上に上がってこない状態では食物を効率よく飲み込むことができないのです。

 前回ブログの女性の話題に戻りますが、彼女が「調子の良いときと悪いときがある」と言ったことの理由は舌の状態に関係することだったのかもしれません。
 今回の施術で観察したとき、彼女の舌は下がった状態になっていました。
 通常、下がっている舌を上げるための施術としては、喉が上がるように胸郭を上げたり、こわばっている腹筋を整えたり、鼡径部や恥骨結合を上げるようにしていますが、この時は、それらだでは舌が上がりませんでした。

 そして新たに分かったのは、前斜角筋(ぜんしゃかくきん)が舌の動きと関連性があることでした。前斜角筋はそしゃく筋の一つである咬筋(こうきん)の浅層筋と連動関係にありますが、噛みしめの癖があるとこわばりますし、あるいは咬筋がこわばりますと噛みしめてしまうことになります。

斜角筋03

側頭筋と咬筋

 ご飯を噛むことが「調子の良い」ときは咬筋がこわばり状態ではなく、「調子が悪い」ときはこわばり状態になっていると考えられますが、その理由と解決は次回の施術に持ち越しとなりました。

 余談ですが、この女性は今は週一くらいのペースで来店されていますが、毎回のように不調や不具合の箇所が違います。毎回共通しているのは胃腸の働きが悪いこと、疲れやすいことです。
 前回のブログでは、出産時に臍の緒が首に巻きついてしまい、おそらくそれが原因でそしゃく筋が使えないために「生まれつきからだが弱い」、「全身の筋肉が上手く働けない」と記しました。つまり、肉体としての基礎がグラグラ状態だということですが、そうなりますとちょっとしたことで調子が悪くなったり、不具合が生じたりするようになってしまいます。ですから、不調や不具合箇所の個々を整えることに加えて、それ以上に、しっかりとしたそしゃくと嚥下ができる状態になることと、骨盤が肉体の中心としてしっかりと役割を果たせる状態になることが大切だと私は思っています。
 「そしゃくと骨盤」どうかこの二つを大切にされてください。

(過去に投稿した記事を修正・加筆したものです)

 歯ぎしり、噛みしめ、食いしばりが癖になりますと、からだに悪い影響を与えます。肩こり、首の痛み、頭痛といった直接的な症状を招く可能性が高まるだけでなく、顔やからだに歪みをもたらしますので、肩関節、股関節、膝関節などに不具合が生じる可能性もあります。胸郭が歪みますと呼吸が悪くなったり、動悸や胸の圧迫感、のどの詰まり感といった症状をもたらすことがありますが、その原因は“噛みしめ癖”だったということもよくあることです。
 テレビやいろいろな媒体を通じて「普段は奥歯を合わせないようにしましょう」「噛みしめないように常に注意を払いましょう」みたいな情報は多くの人にも届いていると思いますが、それだけではまったく不十分で、解決には至らないと私は常々思っています。
 寝ている間に行ってしまう噛みしめや歯ぎしりは“注意のしようがない”ですし、歯科医師はマウスピースで対策することを奨励されているようですが、確かに歯や歯茎は守られますが、歯ぎしりや噛みしめの癖が改善されるわけではありません。たとえば、顎関節の不具合をマウスピースで対処しようとする試みの道理が私には理解できません。反対に、マウスピースの厚さの分、顎が開いた状態になりますので、口呼吸の可能性がでてきますし、噛みしめる筋肉(=そしゃく筋)には余計に力が入ってしまうのではないかと思えてしまいます。


噛みしめてしまう理由を2つの面で考える

 精神的に緊張状態になりますと自律神経の交感神経が優位な状態になります。イライラ、心配、不安、恐れなども交感神経を優位にしてしまう原因になりますが、このような状態の時には、無意識下に噛みしめてしまったり食いしばってしまったりすることは誰もが経験されていることだと思います。ですから「精神的な要因で噛みしめてしまう」という現実は存在しますが、精神面は私の専門外ですので、ここでは肉体面を中心に噛みしめてしまう理由について考えてみます。

①エネルギーや血液の循環が悪い可能性

 私たちは馬鹿力を出そうとするとき、歯を食いしばって最大限の力を発揮しようとします。それは噛みしめる筋肉(=そしゃく筋)が全身筋肉の司令塔のような役割をしているからです。先ずそしゃく筋を収縮させることによって全身に力(エネルギー)が伝わります。ポカンと口を開いたままでは強い力を発揮することはできません。
 また、例えば鉄棒にぶら下がったとして、最初のうち、手や腕などが疲労していない間は歯を食いしばることもなく平然と鉄棒を握り続けることができます。ところが手や腕が疲労してきますと口元に力が入り出し、いよいよそれだけでは耐えきれなくなりますと歯を強く食いしばって頑張ろうとします。
 この二つの状況の時、つまり一つはエネルギーをたくさん回して強い力を発揮しようとする時、もう一つは筋肉が疲労状態になり、そのままでは負荷にからだが負けてしまうような時、私たちは食いしばったり、噛みしめたり、歯ぎしりをするのかもしれません。

 このように考えますと、からだから力を抜いた状態(リラックス状態)では体内エネルギーが順調に回らないので“噛みしめてエネルギーを回そうとしている可能性がある”と考えることができます。あるいは、眠っている時には血液循環が不良な状態になってしまい内臓の働きを保つことができないので、歯ぎしりをして頑張っているのかもしれない”と考えることもできます。

 血液循環について考えてみます。昼間(活動時)は交感神経が優位になって心臓の働きが活発化しますが、心臓はそのポンプ力(=血圧の力)で動脈血を回していますので、肩関節や股関節などが多少歪んでいても血液を循環させることができます。しかし夜中(睡眠時)は、心臓は休養時間となって機能を低下させますので血圧も低下します。睡眠時は副交感神経が優位になって内臓の働きが活発になります。血液は小腸に集まって、その日に摂取した食物からの栄養を血液の中に吸収しますが、小腸に血液を集める力は心臓のポンプ力よりはるかに小さいですから、肩関節や股関節に歪みがありますと全身の循環が上手くできなくなってしまうと考えることができます。そうなりますと消化・吸収・栄養という私たちの生命を維持するための内臓の働きが悪くなってしまいますので、無意識に歯ぎしりをしたり、噛みしめたりして力を伝え、血液循環やエネルギー循環を高めようとしているのではないかと私は考えています。
 実際のところ、歯ぎしりの悩みを持っている人には、股関節に歪みや問題を抱えた人が多くいます。四十肩や五十肩の経験者で、肩関節をしっかり改善することなく中途半端な状態にしている人などには、噛みしめ癖を持った人が多くいます。

 また循環の問題では“冷え”も考えなければなりません。寒いところに長時間いますと、からだがとても冷たくなって血液循環が低下しますが、やがてからだが震えだしたり、顎がカタカタしたりします。これは熱をつくるためにからだが勝手に起こす反応ですが、歯ぎしりの原理にも通じるように思います。

②筋連動の影響や骨格の歪みで噛みしめ状態になっている

 筋肉が硬くなっている場合、それは“肩こり”などと同じように単純に凝り固まっている場合と、筋肉自体が収縮していて硬くなっている場合があります。単純に凝り固まっている場合は揉みほぐしたり指圧したりしますと初めのうちは強く痛みを感じますが、次第に気持ち良さが感じられるようになります。いわゆる「痛キモ」状態です。ところが筋肉が収縮してこわばっている場合は、軽く触れただけでも痛みを感じたり、引き伸ばそうとしますと辛い痛みだけを感じ「痛キモ」の感じにはなりません。

 単に噛みしめや歯ぎしりの癖によって顎周辺がガチガチに硬くなっている場合は、筋肉の使いすぎによる硬さ(硬結)ですから持続的指圧などで硬さは次第にほぐれていきます。
 一方、筋肉(そしゃく筋)が収縮状態にあって硬くなっている場合は、収縮している原因を解決しなければなりません。それをせずに硬い部分を強く指圧して無理やり柔らかくしようとしますと強い痛みを感じ続けますし、筋肉を傷めてしまう可能性もあります。

 歯ぎしり、噛みしめ、食いしばりに直接関係しているそしゃく筋は、胸鎖乳突筋、斜角筋、胸骨舌骨筋、甲状舌骨筋など首周りの筋肉と連動関係にありますので、それらの筋肉の状態によってこわばったり(収縮)、ゆるんだり(弛緩)します。骨格の歪みは首回りの筋肉に変調をもたらし、その影響で連動するそしゃく筋がこわばって噛みしめ状態になってしまうことがあります。

 また、肩や胸の骨格が歪んでいますと、それだけで本人の意志には関係なく「噛みしめた状態になってしまう」という現象が起こります。
 例えば胸(胸郭)や鎖骨が本来の位置よりも下がりますと、首の筋肉や筋膜が下顎を下に引っ張るようになります。下顎が下に引っ張られる状況は、”口が開いてしまう力”が掛かり続けているということです。するとからだは、無意識にその力に対抗しようとして、そしゃく筋など口を閉じる筋肉に力を入れて収縮力を高め、口を閉じた状態を保とうとします。運動会の綱引きで、相手に引っ張られると均衡を保つためにこちらも力を増して引っ張るようになるのと同じ原理です。
 この原理を胸や鎖骨が慢性的に下がっている人に当てはめますと、そしゃく筋は本人の意志に関係なく慢性的に収縮している状態になってしまうということです。そして、この状態は即ち、噛みしめた状態になっているということです。このような場合に噛みしめ状態を解決するためには、そしゃく筋をほぐしてゆるめることではなく、下顎が引っ張られている状況を解決することが必要なことです。

 ほとんどの人は、奥歯が噛み合っていなければ「噛みしめていない」と考えています。しかし実際には、歯がくっついていなくても筋肉的に“噛みしめ状態”は存在します。そしゃく筋が常に収縮して緊張している状態です。そしてこのような状態の人に施術を行い、そしゃく筋が緊張状態から解放されていきますと「顎がゆるんで下顎がだんだん離れていく」という驚きに近い感想をいただきます。意志に関係なく顎が動いてゆるんでいくからです。

 以上記しましたとおり、“噛みしめ”に対して施術を行う時には、噛みしめの原因がエネルギー循環にあるのか、それとも筋連動や骨格の歪みの影響によるものなのかを識別しなければなりません。

 実際の施術では、一つの噛みしめ状態を解除するために、からだから得た情報を元に幾つかのアプローチを行っていきます。そして、その人が噛みしめてしまう原因を特定していき、日常生活での注意事項としてアドバイスしています。
 噛みしめてしまう原因は人それぞれですが、多くの人に共通して見受けられるものもありますので、以下に幾つか取りあげてみます。

筋連動による噛みしめ状態の例

・親指の先のこわばりが影響して噛みしめ状態になる

 その若い男性は学生の頃、毎日毎日勉強ばかりしていたということです。顎周辺の問題と座り続けることができないという問題を抱えています。顎周辺の問題はそしゃく筋のこわばりによる噛みしめ状態です。座り続けることができない問題は骨盤(特に仙骨)を立てることができないので、骨盤に体重を乗せることができないからです。座っていてもすぐに寝そべった状態になってしまいます。
 勉強を続けていたことで、ペンを使い続けていたことと、腋の下を開き続けていた(=両肘を上げた状態)ことが連想できました。筆圧も高いので親指と示指に力が入ってしまう癖を持っていることもわかりました。

 この人の問題を改善する要は、右手親指先の強いこわばりを取ることでした。学生時代何年も親指に力を入れていたことから、爪の横から母指球にかけて根深いこわばりがあり、それによって肩甲骨が影響を受け、右のそしゃく筋にこわばりが生じていました。施術で母指のこわばりを解消していきますと、顎が次第にゆるんでいきました。顎の問題はそれだけでほとんど良くなりました。さらに骨盤も立つようになり、座り続けることが可能になりました。

 スマホ操作などで親指の先を酷使している人はたくさんいます。それが噛みしめの原因、顎関節症の原因になっている可能性も考えられます。右手母指をたくさん使ってスマホを操作している人で、顔の右側が左に比べて縮んでいたり下がっていたりしていると感じているなら、それは母指先のこわばりが原因かもしれません。

・胸が下がっているために噛みしめ状態になっている

 バストの位置が下がったように感じている人は「加齢のせい?」と考えているかもしれませんが、多くの場合、実際に胸郭、つまり肋骨全体が下がって骨盤に近づいているからです。その原因についてはここでは取り上げませんが、胸が下がった結果として首の筋肉が緊張します。するとそれはそしゃく筋に連動し、自ずと噛みしめ状態を招いてしまいます。その他にも喉の調子が悪くなったり、舌も硬くなりますので滑舌が悪くなったり、息苦しさを感じ続けたりするかもしれません。
 この問題を解決するためには胸郭を正しい位置に戻すことが必要ですが、それは腹筋の状態(縮んでいる)を改善することがポイントになります。お腹が冷えていると腹筋が縮んで胸が下がってしまうことはよくあることですが、それ以外では足や足底の問題が原因になっている場合が多くあります。硬く平なコンクリートのなど上を歩いている現代人は、足や足底が柔軟性を失いこわばってしまう傾向にあります。そのこわばりが腹筋のこわばりにつながり胸を下げ噛みしめ状態や舌の硬さをもたらしている可能性があります。足首を柔らかく動かしたり、足底や足趾を揉みほぐしたり、硬くなっている踵の両側を揉みほぐしたりすることは対策として有効です。

・膝下の骨がずれていることによる噛みしめ状態

 欧米人に比べますとO脚だったり、O脚気味だったりする割合が高いのが私たち日本人の体型ですが、それが膝下の骨(脛骨と腓骨)の外側へのずれによるものだとしますと、いろいろと問題が生じてきます。

 膝下の骨が外側にずれる理由はいくつかありますが、一番多いのは太股外側の筋肉が緊張(収縮)して膝下の骨を外側に引っ張っていることです。立った時に足の小趾側に体重が掛かってしまう人(重心が外側に逃げてしまう人)は、この傾向にあります。膝下が外側にずれますと太股内側の筋肉は緊張して張ります。(途中の原理は省略しますが)すると結果的にそしゃく筋は収縮します。顔の表情にも緊張感が生じると思います。
 また膝下の骨は外側だけでなく後側(踵側)にずれることもよくありますが、すると股関節の働きや鼡径部の血流にも影響が生じ、エネルギー循環の問題から噛みしめや歯ぎしりの問題を生じてしまうことも考えられます。
 階段をゆっくり降りることが苦手な人(パタッと足を着いてしまう人)、正座した状態から立ち上がるのが苦手な人、「膝小僧が目立つ」と感じている人は膝下が後方にずれているかもしれません。

 以上の項目以外にもそしゃく筋がこわばってしまう原因はありますが、最近目立つのは以上の3項目です。


 「たかが噛みしめや歯ぎしりくらいで‥‥」と思われる方はたくさんいらっしゃると思います。私もかつてはそう思っていました。ところが、からだを整えることを追求していますと、どうしても噛み方や噛みしめや歯ぎしりの問題と、歩き方の問題は解決しなければならないことであると思うようになりました。
 しかしながら現実的な施術では、時間的制約もありまして、十分に満足するまでやりきれない場合がほとんどです。歯や歯茎や顎周辺などそしゃくに関係することと、“歩くこと”は私たちのからだをしっかりしたものに保つための核心です。そのことを多くの人に認識していただきたいと常々思っております。

足つぼ・整体 ゆめとわ
電 話  0465-39-3827
メールアドレス info@yumetowa.com
ホームページ http://yumetowa.com
web予約 http://yumetowa.com/sp/reserve2.html

 「整体」と「噛み合わせ」とは関連性のない、違うジャンルのものであると認識している人がほとんどだと思います。「噛み合わせは」歯科や口腔科の領域であると一般には考えられていますし、噛み合わせの矯正には歯を削ったり、マウスピースを装着したり、場合によっては歯列矯正が必要になるというイメージを持たれているかもしれません。
 しかし、噛み合わせで悩んでいたり、違和感や不快感を感じ続けている人たちの話をうかがいますと、これらの手段を駆使しても問題は解決されないとのことです。
 そして噛み合わせのことが気になりだしますと、その調整の為に歯をどんどん削ることになり、不安を感じつつも深みにはまっていくような、そんな感じになっていくと仰った人もいました。

 「そしゃく」は哺乳動物である私たちにとって非常に重要です。そしゃくすることが心地良いのであれば、自然と私たちはそしゃくを増やすようになりますが、そしゃくすることに違和感や不快感を感じたり、疲労を感じるようであれば、自然とそしゃくをおろそかにして食物をすぐに呑み込んでしまうことになってしまいます。それは食物の消化という意味でも良くないことですが、それ以外にそしゃく筋がたるんでしまうと意味でも良くないことです。(そしゃく筋は全身筋肉の司令塔のような役割)
 ですから、そしゃくを心地良いものにするために、噛み合わせの問題を解決することはとても重要なことであると言えます。

 噛み合わせに関しましては、歯科や口腔科が専門とする「歯」と「歯茎」などの状態は重要です。しかし、それだけでは不十分で、「顎関節」の状態がとても重要です。噛み合わせの問題に取り組むときに顎関節の問題を外していろいろ調整してみたところで、根本的な解決には結びつきません。
 顎関節のバランスが悪く、上の歯列のある上顎骨と下の歯列のある下顎骨が歪んだ関係にあるなら、いかに歯や歯列を修正したところで、噛み合わせが合って、心地良くそしゃくできる状態になるとは考えることができません。顎関節が歪みなく正しく機能できる状態になっており、その上で、さらに歯列や歯の状態も良好であるとき、心地良いそしゃくが達成できるのだと、私はそう考えています。
 また、顎関節の状態を重要視されている歯科や口腔科の医師がかなり多くいらっしゃることは知っています。そして、いろいろな研究をされていらっしゃるのだろうと思います。そのような書籍も拝見したことがあります。しかしながら、歯科や口腔科の専門範囲内だけでの対応では、やはり限界があり、結果的に不十分な対応になってしまうと言わざるを得ません。

噛み合わせ(顎関節)は背側と腹側の接点


 私たちのからだは大きく背側と腹側に分かれています。そして構造的に上顎は背側であり、下顎は腹側です。ですから顎関節を修正するときには、「からだの背側と腹側」という観点を外して考えることはできません。単に上顎(側頭骨)と下顎のことだけにスポット当てて、部分に切り分けて対応しようとしますと、全然違った方向に答えを求めてしまうことになってしまいます。
 (例えば顎関節の開きが片側だけ悪いのは「咬筋が硬くなって伸びないからだ」と判断して、咬筋を伸ばすための対処として筋肉弛緩剤(ボトックスなど)を投与して解決したり、奥歯にゲタを履かせて強制的に咬筋を伸ばそうとしたりする等)

 具体的な例を一つ取り上げてみます。
 右腕を使い過ぎたり、他の理由で右の肩甲骨が外側にずれてしまうことがあります。すると肩甲骨から後頭部や頚椎に繋がっています僧帽筋や肩甲挙筋が引っ張られた状態になりますが、それによって後頭骨が捻れます。そして後頭骨の捻れは前頭骨、上顎骨へをつながり、上顎の捻れとともに上の歯列に歪みをもたらします。(上顎が左側に捻れる)

 また腹側では、右肩甲骨が外側にずれるのに合わせて右鎖骨が外側にずれますが、それによって首前面の筋肉が変調起こし、喉や舌骨が右側にずれます。舌骨から下顎骨には舌骨上筋群がつながっていますので、舌骨が右側にずれることによって下顎骨も右側に捻れますが、それは下の歯列を右方向に歪ますことになります。

 このようにして、肩甲骨が右側にずれたことによって上の歯列は左方向に、下の歯列は右方向に歪みますので噛み合わせが合わない状態が生じます。
 それでも、からだが健康な状態であり、筋肉の働きなども良い状態であれば、からだは自己修正する力を発揮して、肩甲骨の歪みが頭部の歪みにつながらないように何処かで調整し、噛み合わせへの影響が少ないように調整してくれると思います。ところが疲労が溜まってしまったり、体力が落ちたりして筋肉の能力が今一つ発揮できない状態になりしますと、自己修正能力を発揮することができず、肩甲骨の歪みがダイレクトに顎関節の歪みにつながってしまいます。
 このような場合、根本的な解決策は右手や右腕の疲労を回復させて筋肉の状態を整えることです。そうすることで肩甲骨の位置が本来の位置に戻り、頭部の歪みが解消されて顎関節および噛み合わせの不具合が改善されます。ですから、例えば顎関節周辺や頭部をいろいろいじってみたり、あるいは右の僧帽筋の張りがゆるむようにマッサージなどしてみても効果は期待できません。「効果があった」と感じたとしましても、極めて一時的なものでしかありません。肩甲骨の位置が本来の位置に戻らなければ何をやっても無駄になってしまうと私は思っています。

 以上は、非常に単純なものの例ですが、実際にはもっと多くの要因が絡み合って顎関節の不調や噛み合わせの不具合をもたらせています。ですから、顎関節を整え噛み合わせを整えるためには、からだ全体を細かくチェックして、全身の歪みを改善する作業が必要となります。

 顎関節は背側と腹側の接点であると申しましたが、それは陰と陽の接点であり、からだの陰陽のバランスとも関係しますので、単に「噛み合わせの問題」だけではありません。
 からだの腹側(陰)と背側(陽)のバランスが良ければ噛み合わせのバランスも良くなりますし、反対に噛み合わせのバランスが良くなれば、からだの陰陽のバランスが良くなると考えることもできます。
 ですから噛み合わせは「からだのバランス」という面でも、「重要事項である」と言うことができます。

噛み合わせを整えると、噛むことが心地良くなる

 口の中に何も物を入れない状態で、上下の歯をコツコツと音を立てるように噛み合わせの動作をしたときに、噛み合わせが良い状態であれば音が一つとなって心地良く響くと思います。そして奥歯が適度に刺激され心地良い感じがすると思います。どちらかの奥歯が浮いていたり、ずれていたりしていますとしっかり噛むことができませんので、心地よさは感じられないと思います。音もなんとなく一つではなく二つに聞こえたりします。この状態で長い時間(30秒程度)カチカチしていると疲れてきて不快感を感じるかもしれません。
 これは噛み合わせのことだけでなく全身の筋肉がそうなのですが、バランスが整っていますと筋肉を使うことは心地良いことと感じ、バランスが崩れていますと筋肉を使うことは不快であり、疲れやすいと感じてしまいます。
 私たち人間(哺乳動物)は噛むことと歩くことが健康を保つ上での基本ですが、「噛みたくない」「歩きたくない」と思っている人も少なからずいます。もしからしたらそのような人達は、噛むことに疲れや不快感を感じる状態であったり、歩くことに対して「なにが心地良いのかわからない」と感じてしまう状態であったりするのかもしれません。

 ここで話題がガラッと変わりますが、誕生したばかりの赤ちゃんは、まだ目もまったく見えないのに必死になって母親の乳房をまさぐり、乳首に食らいついて満足するまで一心不乱におっぱいを吸い続けます。この光景は私たち人間だけでなく、犬の赤ちゃんも同様です。それ故に哺乳動物と呼ばれるわけですが、乳を吸うときに働かせる筋肉は舌と頬の筋肉とそしゃく筋です。つまり哺乳動物の最初の動作はそしゃくであって、唇と頬と舌とそしゃく筋を巧みに使いこなす運動が私たちの原点であり、基礎であると言うことができます。ですから、「そしゃく」は本来心地良いものであるはずなのです。
 私たちは毎日食事を摂っていますが、その目的が栄養補給だけであるならば、カロリーメイトや飲む食品やサプリメントの類があれば事足ります。なにもそしゃく筋や舌をたくさん動かしてまで噛む必要はありません。ところが、実際は、私たちのほとんどは食事を好んでいます。それは美味を味わいたいという欲求や空腹を満たしたいという欲求を満たすという目的もありますが、無意識下で、そしゃくをしたいという根源的な欲求があるからなのかもしれません。「そしゃく」は本来心地良いものであることを私たちは潜在意識で知っているのだろうと思います。
 そう考えますと、そしゃくが思うようにできない状態‥‥歯が悪かったり、顎関節が痛かったり、噛み合わせが不調だったりする状態では根源的な欲求を満たすことができませんので、精神的に落ち着かなくなったり、心が晴れない心境になってしまうかもしれません。

・少しの歪みはそしゃくを繰り返すことで改善することもある
 そしゃくが私たちの根源的な動作・運動であるならば、そしゃくすることで私たちは「バランスを取り戻し、活力を回復することができる」という理屈になります。
 そして実際、そしゃく筋を使ってよく噛むことは、全身の筋肉を活性化し、からだに活力を取り戻します。

 ところで、虫歯の治療をして冠をかぶせたりしますと高さ調整を行っても、なんとなく噛み合わせが合っていないように感じたりします。ところが、その状態で何日か過ごしていますと、当初感じていた違和感は消失していることがあります。そしゃくを繰り返すことによって、歯や歯茎が少し動いて違和感の無い状態になったのだと思います。
 歯科の先生はよくご存じだと思いますが、歯はある程度自由に動いてくれます。インプラントは顎の骨にねじ込んでしまいますので全く動くことができませんが、普通の歯は直に顎の骨に繋がっているわけではありませんので、動いてくれます。
 このことは、多少顎関節が歪んでいたとしても、歯列はその歪みを補って噛み合わせを調整してくれる可能性があることを暗示しています。ですから、歯科治療によって歯の高さや傾きに多少の違いが生じたとしても「噛んでいるうちになんとなく揃ってしまう」という状態になるのだろうと思います。
 ところが、噛まないとこのような調整能力は働きません。時々見かけますが、歯のことに過剰に神経質になってしまい、治療によって生じた多少の違いがとても気になっている人は、そしゃくをしっかりすることよりも歯を調整することばかりに気がいってしまうために、心理的に不安定な状態になってしまいます。そして必要以上に歯の調整を要求するために、歯を削ってばかりの状況に陥ってしまい益々マイナスの方向に進んでしまったりします。歯を削りすぎて歯列の高さが低くなりますと、本来よりも深く噛まないと噛み合わない状態になってしまいますが、そうなりますと、また別の問題が発生する可能性があります。
 今現在、歯の高さや噛み合わせのことが気になっていらっしゃる方は、ご自分の状態を今一度省みていただき、神経質になっているようであれば、まずそしゃくをしっかりすることを試みていただきたいと思います。ご飯を一口30回、じっくり、しっかり噛んでみてください。そして、それを何日か続けてみてください。そうすることで、からだの歪みも調整されますし、筋肉の働きも改善されて活力が出てくると思います。精神的にも「落ち着き」が戻ってくるのではないでしょうか。そしゃくには、そういう力があるのだろうと思います。

噛み合わせを修正するために

 噛み合わせが多少狂っていたとしても、そしゃくをしっかり行っていますと違和感や不具合感は緩和されると思います。それは、そしゃくを繰り返すことで調整力が働き、バランスが整ってくるからだと思います。しかし、噛み合わせが大きく狂っていたり、不具合が頑固になっているようであれば、やはり積極的に顎関節と噛み合わせの修正を行う必要があります。
 そして、その場合、歯科に行かれるよりも先に、顎関節を整えることを優先させた方が良いと私は考えます。
 顎関節が歪んだ状態で歯や歯列をいじって噛み合わせを調整した場合、顎関節を後から調整しますと、せっかく調整した噛み合わせの歯列が合わなくなってしまいます。あるいは、歯や歯列のみの調整だけで顎関節を修正を行わなかった場合は、顎関節が歪んだままですから“心地良いそしゃく”は達成できません。噛み合わせを調整することになった、元々の動機と目的を満たすことができないのではないかと思います。

 冒頭に、「整体」と「噛み合わせ」は違うジャンルのものであると認識されている、と申し上げましたが、「整体的観点」も重要です。歯科・口腔科的調整と整体的調整の両輪があって、噛み合わせの調整は順調に進むのだと思います。

 

足つぼ・整体 ゆめとわ
電 話  0465-39-3827
メールアドレス info@yumetowa.com
ホームページ http://yumetowa.com
web予約 http://yumetowa.com/sp/reserve2.html

 この地球上における“生物”あるいは”生命体”という見方をしたとき、私たち人類は脊椎動物であり、その中の哺乳動物であるということになります。脳の発達に伴って精神性が最も進化しているだろうとされている私たちは、地球上で最も進化した存在でありますが、肉体的には脊椎動物の中の哺乳動物であるという制限を日々強いられています。ですから肉体的な面で「からだの健康」を考えるときに最も基礎となるのは、“脊椎動物”、“哺乳動物”というキーワードであると言うことができます。

 おそらくほとんどの人が、カゼをひいたり健康を害して病気になったとして、病気の治癒について、あるいは健康の維持について考えたとしても、自分たちが実は脊椎動物であり、哺乳動物であるという視点から考えることはないことでしょう。現代医学においても、あるいは長い年月伝承されてきた伝統医学の分野においても、学術的な理論として考察されることはあっても、実際にそれを臨床の現場で有効に活かして治療にあたっているということはほとんどないと思います。
 ところが、実際に整体の分野で私たちのからだを眺めますと、私たちが実は脊椎動物であり、哺乳動物であるということがとても重要になってきます。それは、からだの機能の根本的なシステムが、脊椎動物として、哺乳動物として厳然と存在しているからです。

 ところで生物界は植物界と動物界に分けられますが、一番の違いは栄養摂取の方法です。植物は大地に根を生やし、大地からの養分と水分、空気中の窒素などを材料に太陽光線によって光合成を行い、自らの栄養として生長します。一方、動物は光合成を行うことができませんから、栄養を食物として口から摂取しなければなりません。食物を追い求めて移動するために手足を持っているわけですし、嗅覚・視覚・聴覚・触覚・味覚という感覚と感覚器官(鼻・目・耳・皮膚・舌)もまた、その根本的な必要性は「食物を追い求めるためである」と言えると思います。

 地球上の生命はおよそ38億年前の太古の海で誕生したと考えられていますが、5億年ほど前に脊椎動物が誕生したとされています。そして今から2億年ほど前に哺乳動物が脊椎動物の進化の形態として誕生したとされています。
 脊椎動物は単純に表現すれば背骨をもった動物ということになりますが、脊椎動物ではないものにはカニや昆虫があります。彼らは背骨という内骨格を持たず皮膚(殻)に相当する部分を硬くして自分の形を維持しています。ですから「大きくなることができない」という制限があります。大きくなると自分の皮膚(殻)の重さでつぶれてしまうからです。
 一方、骨格として背骨をからだの内部に持つように進化した脊椎動物は大きくなることができるようになりました。さらに、骨格に支えられているので強い筋肉をもって素速く動くことができるようになりました。海の中を縦横無尽に素速く動く魚を連想していただければ、カニの動きよりはよほど俊敏であることがわかります。その理由は筋肉の発達の違いによるものであると言えます。

 ところで脊椎動物の第一の革命は、歯と顎を持ったことだと言われています。それまでは、口はあったものの歯がなかったので海中のプランクトンなど小生物を流れに任せて口の中に流し込むだけの捕食でしたが、歯と顎を持ったことによって、より積極的に獲物を捕らえることができるようになりました。大きな魚が小さな魚をガブッと噛みついて捕らえる光景が生まれました。
 脊椎動物の第二の革命は、海からの上陸に関連する大きな変革です。
 まず呼吸が変わりました。それまでは水の中に含まれている酸素を海水ごと口の中に取り込み、エラ(鰓)で酸素を取り出し、不要な水はエラ孔から外に出すというエラ呼吸でしたが、陸上の世界では水中呼吸に対応するエラは役に立ちません。そこで空気呼吸に対応するために肺を持ち、肺呼吸を行うための筋肉(首から胸腹部)が発達しました。さらに、陸上では重力が水中の6倍にもなりますので、血圧を上げなければ血液が循環しなくなってしまいます。そこで血圧を上げるための仕組み、すなわち心臓を中心とする循環系が発達しました。その他にも重力に負けない骨格をつくるために、それまでは骨といっても軟骨だったものが硬い骨に変わりました。さらに陸上を移動する必要性が、ヒレを手足に進化させていきました。この上陸による大きな変容・進化のためにおよそ1億年の年月がかかったと考えられています。

 そして、哺乳動物に進化する第三の革命では、“そしゃく”するシステムを獲得したことが大きな変化です。
 私たちは食事に際して、食物を口の中で噛み砕き、唾液と混ぜてこねりながら柔らかい食塊にして食道~胃へと送り込みます。それをそしゃく(咀嚼)と嚥下と言いますが、それは私たちにとっては“ごく普通のこと”です。私たちと同じ哺乳動物である牛や馬も草を口の中でモグモグとそしゃくしています。ところが爬虫類である、例えばヘビは、獲物をそしゃくすることはありません。丸呑みです。ワニにしても、あの恐ろしい歯でかみ切ることはあっても、モグモグそしゃくすることはありません。

 哺乳動物というのは「乳を吸う動物」という意味でもあるわけですが、生まれたばかりで目も見えないうちであっても子は母親の乳首に吸いついて一心に乳を吸います。乳を吸うためには唇を使って口をすぼめなくてはなりません。また、舌も上手に使わなくてはなりません。頬の筋肉も上手く使わなくてはなりません。ですから哺乳動物は唇をもち、舌が細かく微妙に動き、頬を巧みに操れる顔を持つようになりました。さらに、歯も切歯・犬歯・臼歯の三種類を持つのが特徴です。そして私たち人間は臼歯が一番多いのですが、それは米や麦や雑穀などを奥歯と舌と頬を使ってこねるようにしてそしゃくするのに適応するためだと考えることができます。肉食である犬、猫、ライオンなどと、穀物を主食とする私たちとは歯の構成が異なるのはこのような理由であると考えることができます。

 また、私たち人間が他の動物たちと一番異なる点のひとつは言葉を話すことです。そのために人間は脳の働きが優れていて知性が発達しているということになりますが、それに加えて舌と頬と唇と顎を巧みに使えるようになっていると言えます。
 ですから、私たちのからだについて考えるとき、この口周辺を中心とした“顔の機能と在り方”は非常に重要なポイントであると言うことができます。

 以上、大雑把に脊椎動物~哺乳動物~人間までの流れを見てきましたが、機能と形態とは表裏の関係で、切っても切れない関係であるという見方があります。それは機能に適するように形態が変化するという意味でもあります。思考し、言葉を語り、手を自由に動かして行為をするのが、他の動物にはない私たち人間の機能の大きな特徴です。ですからこの機能に適するように哺乳動物から今日の私たちまで形態を変化・変革させてきたのが人類の進化であるとも言えます。
 重力に対抗して二足歩行ができるようになったことで手を自由に動かせるよう解放しました。知性を発達させ、考えるための大きな脳を入れるのに適した頭蓋骨を持つようになりました。言葉を話し、いろいろな物を食べられるように舌と唇と頬と顎を自在に微妙に使えるようになりました。
 これらを反対から考えますと、歩くこと、考えること、そしてそしゃくを中心とした口周りの機能を使い続けること、これらが私たち人間の機能を健全に保つための要であると言えるのではないでしょうか。

 特にそしゃくに関していえば、ほんの少し前(数十年前)まで「一口30回噛みましょう」と大人達や学校の先生は子供たちに指導していました。ところが、今では医療の現場でさえ、そしゃくについては軽視されているように感じます。実際、整体の現場では、そしゃく筋がゆるんでいたり、偏りがあることが原因でからだに不調を訴える人がたくさんいます。そのような人たちは、まず”よく噛む”ことから始めなければなりません。「早食い」はまったく良くありません。

 “呼吸”と“循環”と“栄養の消化吸収”と“不要物の排出”が生命維持の要です。これらの機能を象徴する肺・心臓・小腸・肝臓・腎臓‥‥といった、いわゆる五臓六腑は、動物が脊椎動物に進化する以前は、細かく分化していたわけではなく、一つの腸が全てを担当していたということです。腸の中に全ての機能が含まれていて、その中心はエラ呼吸の場所にあったと考えられています。
 つまり私たちのからだで言えば、顔~喉にかけてが中心であり、頭部が骨盤部と分かれて前方に伸びる(頭進)ことによって胴体(体幹)ができ、内臓の臓器や器官がそこに効率良く配置されたということです。
 頭と顔の骨のことを頭蓋骨と言いますが、解剖学的に顔の骨のことを内臓頭蓋と表現することがあります。つまり顔は内臓が表に露出したものであるということを示唆する表現です。胃腸の調子が悪いと顔色がさえない、ということからも顔の色艶や表情には自然と内臓の状態が反映されます。それは発生学的に顔が内臓(腸)の延長線上であるからです。さらに顔には心の状態や精神(脳の働き)の状態も重なるようにして反映されますので、顔をよく観察することで肉体的なことだけでなく、いろいろな情報を読み取ることができるのでしょう。
 このように顔~喉にかけてはとても重要なところですから、化粧や美容などによって容姿を整えれば「それで良い」というものではありません。顔は全身機能の要であるという観点で考えることが、本当はとても重要なことだと言えます。

そしゃくは命の要
 太古の昔、エラ呼吸を行うエラの筋肉の運動リズムが、その生命体のリズムでした。そしてそのリズムは海の寄せては返す波のリズムと同調しており、地球の、そして自然界のリズムと同調したものであると言ってもよいのかもしれません。
 つまり、自然界のリズムに則って腸の蠕動運動のリズムがもたらされ、そのリズムに合わせてエラが動いていたので、呼吸や血液循環のリズムも自ずと自然界のリズムに同調していたということになります。
 そのエラ呼吸の要であるエラ孔は太古の魚には6個ありました。それぞれのエラ孔には筋肉と軟骨が付属しているのですが、進化とともに、耳とその機能器官、扁桃腺、胸腺、副甲状腺、肺、そしゃく筋、顔面表情筋、嚥下筋、発声筋などに変化していきました。
 現在、私たちの顔にあります表情筋やそしゃく筋は、自然界のリズムに支配されていたエラ呼吸の頃の筋肉(内臓平滑筋)とは違って、自分の意思によって動かすことができる筋肉に変わっています。肺を中心にした呼吸運動もある程度意思でコントロールすることが可能なシステムに変わっています。ということは反面、自然界のリズムに“お任せ”しておけば良いというものではなくなってしまったということです。意図的にコントロールしなければからだのリズムに支障をきたすようになってしまうということです。
 私たちは食べ物を食べるとき、食物を口の中に入れてモグモグとそしゃくし、それが飲み込んでも大丈夫な状態になった後、ゴクンと飲み込んで食道~胃に送ります。この一連の動作では、そしゃく筋と嚥下筋が連動するわけですが、それ以外にも唾液腺から唾液が分泌され、頬の筋肉や舌が協働して働きます。唾液には酵素が含まれていて食物を分解する働きをするわけですが、それ以外にも発ガン物質の毒性を抑える働きがあることもわかってきています。この強い味方の唾液をたくさん分泌するためには、そしゃく筋を働かせなければなりません。たくさん噛めば噛むほど唾液が分泌されるのです。余談ですが、中国漢方の教えに、活力の「活」という字は「舌」が「水」を伴っている状態だというのがあります。舌が常に湿った状態、つまり、舌が唾液で潤っている状態が「活」であり、唾液の分泌は健康にとても重要だと考えられています。

 そしゃく筋には四つの筋肉があります。主に顎を上下に動かす咬筋(こうきん)と側頭筋(そくとうきん)。下顎を前後左右に動かす働きをする内側翼突筋(ないそくよくとつきん)、外側翼突筋(がいそくよくとつきん)です。私たちの奥歯は臼歯で、穀物をすりつぶすのに役立つ臼の形になっています。そして、このすりつぶす動作に翼突筋が深く関与します。つまり穀物を主食として食べるようなシステムに、歯もなっていますし、筋肉も用意されているということです。反対から考えますと、穀物を食べなければそしゃく筋はバランスを失い、筋力不足になってしまう可能性が高くなるということです。
 かつてのエラ呼吸に関係する腺や筋肉や軟骨が、今日の私たちの扁桃腺、胸腺、副甲状腺、肺の機能、表情筋、そしゃく筋、嚥下筋、発声筋、耳の機能などになっているわけですから、これらの働きは当然連動しますし、腸の蠕動運動、すなわち内臓の働きに影響を与えると考えることができます。
 「連動する」ということは、影響し合うということであり、どれか一つが駄目になると他のものにも不具合が生じるということです。あるいは、どこかに不調があったとしても、連動の仕組みを利用して不調を改善させる可能性があるということです。
 そして、これらの中で私たちが意図的にコントロールできるものは、そしゃくと呼吸と発声です。ですから健康法や芸や武術(スポーツ)などの分野で“正しい呼吸”が上達のための鍵であるといわれているわけですし、歌を歌って発声筋を動かすことが健康のために良いことだと考えられています。そして同様に、そしゃく筋をよく使うこと、つまり穀物をよく噛んで食べることも健康のためにはとても重要なことです。

 現在は、「一口30回噛みなさい」と指導する声は聞こえなくなってしまったかもしれません。そして噛むことは面倒で時間もかかるという考え方の上に、「飲む栄養」「かじる栄養」「ゼリーの様な栄養」が市販されているのかもしれません。「早食い」が要求されるほど時間に追われている私たちの社会、“食物さえ、栄養さえ、バランス良く摂っていれば大丈夫だ”とみんなが思い込んでいるのかもしれません。
 しかし原点を振り返って、私たちのからだは脊椎動物であり哺乳動物である、ということに着目しますと、“そしゃく”がこの肉体にとって“とても大切である”という結論が導き出されます。
 現に整体の現場では、そしゃく筋がゆるんでいること、あるいは片噛みの癖や噛みしめの癖によって顔が歪み、その歪みがからだにつながり、不具合になっていることがとてもたくさんあります。“噛めば解決してしまう”ということもたくさんあります。呼吸を整えることがあらゆる面での基礎であると同様に、そしゃく筋を鍛えることも健康のための必要条件であり基礎です。そのように意識を変えて、日々の食事の時間を大切に過ごしていただきたいと思います。

足つぼ・整体 ゆめとわ
電 話  0465-39-3827
メールアドレス info@yumetowa.com
ホームページ http://yumetowa.com
web予約 http://yumetowa.com/sp/reserve2.html  

↑このページのトップヘ