ゆめとわのblog

ホームページとは違った、より臨場感のある情報をお届けしたいと思っています。 また、テーマも整体の枠を飛び出してみたいと思います。 ホームページは以下です。 http://yumetowa.com/ お問い合わせはメッセージ欄でお送りください。

カテゴリ: 歪み

 医学界では、頭蓋骨はほとんどずれない、動かないことになっているようです。「頭蓋骨や顔が変形してしまう、寝て起きると顔が変わっているし、枕に後頭部をつけて寝ることはペシャッとなりそうで怖い」と医師に訴えても「あり得ない」と言われ、精神科に回されそうになると仰っていました。
 私は実際の解剖を経験したこともなく、直に頭蓋骨や骨盤を触ったこともありません。ですから「頭蓋骨が変形することはない」「仙腸関節もたやすく動くことはない」と言われますと、「確かに解剖所見ではそうかもしれません」と思いますが、同時に「屍体と生体では違うのではないか」と思います。私は筋肉や皮膚の上からしか頭蓋骨や骨盤を触ることはありませんが、常に生きているからだを触っていますので、頭蓋骨や仙腸関節が簡単に動くことはよく知っています。

 私が整体の学校に通っていた頃、先生は骨盤の模型を手に取りながら、「このように骨盤は表面も裏面も強靱な靱帯でガチガチ固められているので仙腸関節はほとんど動かないと考えられる」と説明していました。確かに「靱帯(関節を強固にし、その運動を制御する)」という言葉の印象と模型を見せられた印象で想像しますと「仙腸関節を動かすことは大変なことだ」と感じてしまいます。

マシュマロのように感じた頭蓋骨
 むくみで悩んでいる人はよくおわかりだと思いますが、足のむくみが強いとき、スネを指で押しますと凹みができてしばらく戻らなかったりします。頭蓋骨の弛み方が進行しますと、これと同じような感じになります。頭を左から右に押しますと、そのように頭が変形してなかなか戻らなくなります。頬骨を押しても同様になります。それはむくみの激しいときに皮膚を押すと凹んでなかなか戻らなくなるのに似ています。「まるでマシュマロのようだなぁ」、私がもっとも重症だと感じた頭蓋骨の状態です。
 歩く一歩一歩の振動で頭の骨がそのように揺らされ、頭を横に回すと後頭部や頭頂部が時間遅れで後から着いてくるような感じになってしまいます。それまで一つにまとまって一体化していた頭蓋骨がバラバラに動いてしまうように感じられるのだと思いますが、その不安感は大変なものだと思います。
 このような状態になってしまった人は「まさかこんなに酷くなるとは‥‥」と後悔されますが、同時に「もう生涯、元の状態には戻らないかもしれない」と強烈な不安感に襲われるようです。医師に相談しても「理解してもらえない」と感じてしまうのであれば、尚更そうだと思います。

ゆるみきってしまった筋膜、縫合はじっくり取り組むしかない
 20歳を超えたばかりの若い女性は、額の吹き出物やニキビが気になり、四六時中それらをいじったり、つぶすようにして頭蓋骨を押していたと言います。そうしているうちに少しずつ頭蓋骨がゆるみだし、あるとき「自分の顔がおかしくなっている」と危機感を感じ、美容整形や整体院を訪ねるようになったということです。整体院ではいろいろなやり方で頭蓋骨をいじられ、美容整形で顔にメスをいれるようになり、益々歪みと不安定さが増し、私のところに来店されました。
 「いじりすぎたために筋膜がゆるみ過ぎてしまい、何度も直接頭蓋骨を動かしたので縫合関節がゆるんで形が変わり、安定性がなくなってしまった」というのが実際の原因だと思います。
 こうなってしまったら、筋膜を元の状態に戻し、ゆるんでしまった縫合関節を元の状態に戻すしか方法はありません。それは時間と手間のかかることです。忍耐力が必要です。しかし、これしか方法がないと私は思います。
 この女性は最初は週に2度ほど来店され、それが週1になり、やがて月に2度ほどのペースになりましたが、1年近く来店されました。「気になって、気になって、つい触っていじってしまう」という癖がなかなか抜けなかったようです。

 皮膚や筋膜は触り方次第で、しっかりしたり、反対にゆるんでしまったりします。時々電話で「何処をどう触ればいいのか?」と問合せを受けますが、言葉で説明できるものではありません。実際に体験していただいて、やり方を覚えて帰っていただきたいのです。やり方自体は非常に簡単です。しかし、触る深さと集中力と意識が大切です。テレビに気を取られながら触り続けても意味のないばかりか、悪い影響を与えてしまうかもしれません。

 この若い女性は、今はだいたい3週間に一度くらいの間隔でケアのために来店されますが、「気になって触ってしまうことはもうなくなった」と言います。今の安定した状態からすれば、いったいあの時の状態は何だったのか? と思えます。
 
生身の私たちの骨格は固定されたものではない
 施術をしていて「硬いなぁ!」と感じるものは筋肉や靱帯や筋膜など軟部組織です。それらが硬くなっているために骨格が動かしにくというのはありますが、骨格が硬くて動かしようがないと感じることはありません。

頭蓋の主な縫合01

 頭蓋骨は20以上の骨が縫合関節というしっかりとした結合組織で結びついて一体化していますので「硬く固定されたもの」という印象をお持ちかもしれません。しかし実際には呼吸をする度に少し拡がったり縮んだりしています。そしゃくする度に少し動きますし、喋る度に動いています。関節があるということは、そこが動くようにできているということです。動かなくて済むならたくさんの関節がある必要はありません。

骨盤の靱帯

 それは骨盤の仙腸関節も同様です。骨盤の模型を見ますと、仙腸関節は強力な靱帯でガッチリ固められていますので、まったく動きが制限されているように思えます。実際、学校の授業で先生はそのように説明されていました。しかし、実際には歩く度に仙腸関節は動いていますし、立ったり座ったりする時に骨盤の形は変わりますが、それは仙腸関節が動いているから可能になります。もし仙腸関節がガッチリ固定されて動かないような状態でしたら、私たちの動作はロボットのようになってしまい、しなやかな動きはできなくなってしまいます。
 腰痛やギックリ腰の時には、私たちの動きにスムーズさが欠けてしまいますが、それは仙腸関節の動きにしなやかさが欠けてしまうからだと考えてもよいと思います。
 生気が失われてしまった、単なる物質としての靱帯、筋肉、筋膜、骨などを観察しますと「仙腸関節も頭蓋骨もほとんど動かない」という結論になるかもしれませんが、それは生きている生身の私たちには全然あてはまらないと私は考えます。

簡単に動いてしまうので、直接骨格を動かさない
 「整体」に対する一般的なイメージは「骨をボキボキする」ということのようです。ですから、そのようなことを一切しない私の施術は「何という施術方法なのか?」としばしば聞かれます。
 例えば、なんとなく肩関節や手指の関節に違和感を感じるので、故意に動かして「バキッ」と音を鳴らす癖を持った人がいます。それによって関節がはまり、スッキリすると言います。それはそれで整体の一つの手法ですから、ボキボキ直接骨を動かす整体も「あり」だと思います(私には上手くできませんが)。
 但し、頭蓋骨は別です。下顎骨を除いた頭蓋骨表層の骨は「縫合」という接続方法で隣の骨と結びついていますが、一つ一つの骨はパズルのピースのような関係性で頭蓋骨全体を形作っています。ですから一つが狂いますと全体に影響が及ぶことになります。どれかの骨を押し続けますと、その周辺の縫合がゆるみます。すると、その骨が安定性を失いグラグラすることになりますが、加えて頭蓋骨全体が歪みだし不安定になることになります。

 頭蓋骨を形作っている縫合関節は柔らかくて丈夫です。これは頭蓋骨に限ったことではありませんが、私たちのからだの骨格は「強く押すと反発する。そっと柔らかく触る(圧する)と動きがわかる」という特性があります。この特性を利用して私は、骨が上や下や右や左に「ずれている」と把握しています。見た目で骨のずれを察知しているのではなく、軽く圧して骨の動き具合を感じて判断していますが、こうした頭蓋骨の特性を無視して頭蓋骨をいじりますといろいろと問題が起きる可能性が高まります。
 コルギや小顔整体などで、頭蓋骨をグイグイ押し込みますと、最初は反発します。それは「強く押すと反発する」という特性です。ところが何度も何度も同じことを繰り返したり、あるいはたった一回かもしれませんが、縫合関節が反発する力を失ってしまいますと頭蓋骨は簡単に変形するようになります。コルギや頭蓋骨を直接操作する小顔整体はこの特性を利用して頭蓋骨を変形させているのかもしれないと思えてしまいます。他にも機械や電気を使って縫合を意図的にゆるめ、頭蓋骨が変形しやすい状態にしている方法があるのかもしれません。

 何処か一部分の縫合関節がゆるんだだけの状態であれば、すぐに取り返すことができます。しかし一部分の縫合がゆるんだだけでも頭蓋骨全体は歪みますし、そこに不安定さまで混じってきますと、気持ちとして「何とかしなければ」という思いが心を埋めるようになり、施術を重ねたり、自分でいじり続けることが制御できなくなってしまったりするようです。するとゆるんだ縫合の箇所が増えてしまいますので、益々頭蓋骨は不安定になり、やがてマシュマロのような頭蓋骨への道を歩むことになってしまうのだろうと思います。

  •  最初は頭蓋骨が反発するので「もっと強く押して屈服させよう」という思いでいじり始める。
  • そんなことを繰り返しているうちに、突然反発しなくなる時がやってきて「これは上手くいくかも(小顔になるかも)」と思い、さらにいじり続ける。
  • 「なんか骨の一部が落ち込んでいるように感じはじめ、ちょっと不安」
  • 「目や鼻など感覚器官に不調を感じ始め、顔面に違和感を感じ始める」
  • 焦る気持ちも混じり、「なんとかしなければ」と強く思うようになって、負のスパイラルへの道を進んでしまう
 屍体ではなく、生きている私たちの頭蓋骨やからだの骨格の関節は、丈夫ですが、とても柔軟です。ですから骨は簡単に動きます。硬く固定されたように見える頭蓋骨は、実は(ある範囲の中で)簡単に動かすことができます。ですから私はあえて「直接頭蓋骨を操作してはいけない」と申し上げたいのです。
 今から少し前、コルギがとても流行った頃、「自分で行うコルギ」みたいな本が売られていました。「どうしてこんな危険なものが一般に売られているのだろう?」と、ゾッとしました。個人的な見解ですが、まったく恐ろしいことだと思います。

絶望も、諦めることも必要ない
 頭蓋骨や顔を乱して、深い悩みや絶望感にさいなまれてしまった人が何人も来店されました。顔や頭は私たち自身(自己)に一番近いところですから、そこが物理的に不安定になりますと精神的にもとても不安定になってしまいます。
 「もう、生涯元の状態には戻らないかもしれない」
 心全体が不安感で埋まってしまいます。しかし、忍耐強く地道に修復に取り組んでいけば必ず元の状態、不安感が消える状態になる日が来ます。それまでに3ヶ月以上、あるいは半年くらい時間を要するかもしれません。人によっては1年以上になってしまうかもしれません。

 ゆるみきってしまった縫合や筋膜は、そう簡単には力を回復しません。時々来店していただき施術を行いますが、それだけでは足りませんので、自分で修復のためのケアをし続けなければなりません。改善に取り組み始めた当初は3歩進んで2歩後退、あるいは3歩後退しているように思える日々が続きますが、ある日を境に急に力を回復して関節が安定する時がやってきます。そんな部分が少しずつ増え、やがて頭蓋骨全体がしっかり安定するようになり、心が安らぐ時が必ず訪れます。忍耐、忍耐、忍耐の日々を何日も経験しなければなりませんが、やはりこの地道なやり方が王道だと思います。ゆるんでしまった縫合や筋膜の働きを即効的に回復させるための特効薬的手段はないと思います。特殊能力をもったヒーラーなどにはそういう力があるかもしれませんが、一般的には無理です。
 このような状態に陥った人は「他にもっと有効な方法はないのか?」と耐えきれずに私に迫ってきたりしますが、それは無理なのです。しかし、やがて、必ず安定した状態に戻るのです。

 私が知っている頭蓋骨はこういう特性を持ったものです。そして、解剖学的に顔は内臓(腸管)が表に飛び出したものだと解釈されていますので、顔や頭をいじることは内臓を直接いじっていることと同じことになります。ですから本当に細心の注意を払って取り扱わなければなりません。「エイヤー!」と気合いを入れて一気に取り扱う類のものではないのです。
 今も顔で悩まれている人、顔をいろいろいじっている人、そのような人がたくさんいると思いますが、どうぞくれぐれも注意していただきたいと、そう願っています。

足つぼ・整体 ゆめとわ
電 話  0465-39-3827
メールアドレス info@yumetowa.com
ホームページ http://yumetowa.com

 その人は30歳代半ばで、やや痩せている男性です。来店されるなり、内臓の検査データなどをお見せになりからだの不調について説明されはじめました。まだまだお若いのにたくさん不調を抱えておりました。
 「内臓が不調になったので、からだが歪んだのか? あるいは、からだが歪んだ状態が長く続いたので内臓が病変したのか?」
 皆さんは、どちらのケースが多いと思われますか。“操体法”という整体法の産みの親である橋本敬三氏(故人、医師)は「からだの歪みが原因で病変している場合の方が断然多い」という主旨のことを語っております。私は医者ではないので、そのことの真偽について私見を述べることはありませんが、整体師という立場では「からだの歪みを修整することで内臓の働きが戻り、病気が良くなってくれれば嬉しい」と考えています。そしてこの度来店された方に対して、そのように対応させていただきました。

右半身に問題あり‥‥右半身が下がっている
 右の顎関節の開きが悪く、胆嚢の機能が悪く、胃・腸に問題があり、子供の頃からアトピー性皮膚炎で現在も治らず、いびき、無呼吸症候群‥‥、ざっとこんな症状をお持ちで、その他にはコレステロール、動脈硬化の傾向があるとのことでした。子供の頃から一生懸命サッカーをやっており、激しく動いて血流が盛んになっているときは症状が緩和していたことから、普段の血流にも問題があるのではないかと考えておられました。
 からだを見ますと、確かに大きく歪んでいました。上半身が左下の方に、頭から見て左巻きに捻れていて右顎、右鎖骨、右胸が骨盤の左側にむけて強く引っ張られている状態でした。右顎関節の問題は、この捻れによる影響が大きかったです。下顎骨の右側(右のエラ)が下に引っ張れているので、口を閉じるのに余計に力が要ります。ですから右側の咬筋が左側より力を入れて使うように必然的になってしまいますが、その結果右側の咬筋が噛みしめ状態となり顎の開きが悪くなってしまいます。
 また、胸郭が左巻きに捻れていることによって横隔膜の動きは当然悪くなり、腹式呼吸が不十分な状態になっています。さらに、同じ理由で胸郭内の右側、つまり右肺や肝臓も常に圧迫されていることから働きが低下していることが予想されます。胆嚢は肝臓系の機能の一部ですので、ここは厳密に対処しないといけない、と考えました。
 この方に限らず、胸郭の右側が圧迫されて不調を訴える方に対しては、細部にわたって調べ、対応しなければならないと考えています。なぜなら、そこには肝臓があるからです。少し話は難しくなりますが、肝臓は静脈系の臓器です。静脈系ということは自分の力で血液を流すことは苦手であり、心臓のポンプ力も及ばないので、周りの助けによって血液を巡らせなければなりません。
 ふくらはぎが浮腫みやすく“第2の心臓”などと呼ばれることがあるのは、心臓から離れているので心臓のポンプ力は及ばないため、歩くことによって筋肉を動かし、筋肉が収縮と弛緩を繰り返す力(ミルキングアクション=乳搾り)を利用して血液を循環させなければならないからです。静脈やリンパは動脈のように搏動しませんので、その周りの筋肉運動の力を頼りに血液やリンパ液を心臓に向けて進ませる仕組みになっています。
 食べた食物は胃や十二指腸など消化器系によって分解され、小腸で栄養成分として吸収されて血液の中に入ります。その後、その栄養豊かな血液は門脈(門静脈)と呼ばれる静脈を通って肝臓へ送られます。そして肝臓で解毒・分解・合成されてからだに必要な物資として生まれ変わります。血液の中にある余分な糖分はグリコーゲンとして蓄えられ、アミノ酸はタンパク質に合成され、有害物質は解毒され無害化されます。このように肝臓で処理された血液が心臓に戻り、肺でガス交換された後、動脈血となって全身に送られる仕組みになっています。ですから肝臓の働きが悪くなりますと、新陳代謝に必要な物質が欠乏してしまうことになります。その状態が続きますと、やがて私たちはからだを正常に維持することができなくなってしまうのです。

肝臓の働き

 さて肝臓は静脈系ですから、周りの力を借りて血液を循環させています。門脈を通って肝臓に入った血液は、肝臓の中の細かい道(毛細血管)に枝分かれします。それは、川が小川に分かれ、小川がさらに細かいチョロチョロの流れに分かれ、水の流れがとてもゆっくりになるのと同じです。とても細いところをゆっくり流れる水は岸辺の草や水中の石や微生物の作用を受けて浄化されます。浄化された水は再び合流して小川となり、やがて本流に合流しますが、その時には川の水はすっかりきれいになっています。肝臓における処理もこれと同様だということです。
 ところで、細い川の流れが滞るとどうなりますでしょうか。水はゆっくりでも流れていれば“浄化”に働きますが、水溜まりのように流れがなくなってしまいますとやがて“腐敗”し悪臭を発生するようになってしまいます。ですから肝臓内の血液は流れが停滞してしまってはいけません。うっ血状態になってしまっては病気になってしまう可能性が高まります。

体の前面01
 
 肝臓は横隔膜のすぐ下の右側に位置しています。ですから腹式呼吸による横隔膜の運動は肝臓内の血流に影響力があると考えることができます。腹式呼吸では、息を吸ったときに横隔膜が収縮して胸が拡がり腹部が圧迫されます(お腹が前にでる)。つまりこの時肝臓は横隔膜と他の臓器に挟まれて圧迫をうけます。次に呼気(息を吐く)の時は横隔膜が弛緩して腹部がゆるんで拡がります。それまで圧迫を受けていた肝臓は解放された状態になります。呼吸運動に合わせて行われる圧迫と解放の繰り返しはミルキングアクションです。ふくらはぎの血液が少しずつ心臓に向かった進むように、肝臓内の毛細血管にある血液も少しずつ前進します。ですから肝臓にとって横隔膜の運動はとても大切ですし、肝臓が位置している胸郭(肋骨)の状態も大切だと整体的には考えることができます。
 胸郭が捻れていて肋骨が常に肝臓を圧迫しているような状態は、肝臓の力を弱めてしまうと考えられますが、この方の上半身の捻れは正にそのような状態であったと言えます。

腹直筋と外腹斜筋と内腹斜筋
 私たちが会話で普通に話している「腹筋」には、正確には四つの筋肉があります。腹筋の発達した人のイメージは「お腹の筋肉が割れている」なのかもしれませんが、その筋肉が腹直筋です。その他に、筋線維がお腹を斜に走る外腹斜筋、内腹斜筋、そして横に走る腹横筋があります。さらに施術的観点では、腹直筋は中心から3つのラインに分けて考えます。

肝臓の圧迫

 そして、右半身の肋骨下部から上腹部にかけて、つまり肝臓に直接関係する運動を整えようとするとき、右側の外腹斜筋と腹直筋の一番外側のラインの状態は一番気になるところです。
 右半身の外腹斜筋がこわばった状態ですと、胸郭を(頭部から見て)左巻きに捻り下げますので、肝臓は肋骨によって圧迫された状態になってしまいます。あるいは左半身の内腹斜筋がこわばった状態でも同じような状況です。
 胸郭(肋骨)は歪んだ状態ですので、肋骨を足場に運動している横隔膜の動きも当然悪くなってしまいます。
 腹直筋の外側ラインがこわばった状態ですと、息を吸う時、胸郭を上げることができなくなってしまいます。つまり息をたくさん吸い込むことができません。これは腹式呼吸が中途半端な状態になっているということですが、肝臓に対するミルキングアクションが不十分になってしまいますので、肝臓内の血流が停滞気味になってしまう可能性が考えられます。

 外腹斜筋、腹直筋以外の問題で肝臓や胃を圧迫していたり、ミルキングアクションが不十分になっていることも当然あります。
 しかしながら肝臓(や胆嚢)機能のことを優先して考えた時には、この右半身の肋骨下部と上腹部の筋肉の状態は細心の注意を払って観察し、厳密に整えなければならないと私は考えています。

 ところで、この男性は右半身の外腹斜筋と腹直筋、左半身の内腹斜筋に根強い問題がありました。そしてその原因を追究していきますと、両足の指に根本的な問題点が見つかりました。おそらく子供のころから打ち込んでいたサッカーによる影響だと思います。
 現在、海外にお住まいなので次の来店がいつになるかわかりません。日々自分でできるセルフケアをアドバイスしましたが、「上手くやってくれてればいいけど‥‥」と思っています。

整体的な観点でも
 もう長くお付き合いしている方々には、「胃の調子が悪くて」とか「むくみが強いので腎臓かしら」など内科的症状や、時には「歯が痛くなって」という症状で、私のところに来られる人もいらっしゃいます。
 私は整体師ですので、筋骨格系を中心にからだを整えるのが仕事です。薬のことは全く分かりませんし、血液検査の数値を言われてもほとんどわかりません。ですが、実際、からだだけを見て整えていきますと胃腸の痛みや不調、歯痛他、いろいろな症状が自ずと消えていくことがあります。

 ですから「長年、医師の治療を受けているが症状の改善が思わしくない」と感じられていらっしゃるようでしたら、一度ご来店いただければと思います。整体的な観点では「どう捉えるのか?」ということを知っていただくだけでも意味があるかもしれません。

足つぼ・整体 ゆめとわ
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 ここで“顔が下がる”というのは頭蓋骨の中で、顔面(前面)の骨格が本来の位置より下がってしまうことを言っています。頬がたるんで下がる、顎のラインがたるんで下がる、というのとは本質的に意味が違いますが、顔の骨が下がると確実にそれらもたるんでしまいますので「顔のたるみの原因の一つとして骨格が下がっていることがある」と言うことができます。
 
 顔の骨(前頭骨、頬骨、上顎骨、下顎骨など)が下がる理由として考えられることは以下の通りです。
①頭蓋骨や顔の皮膚・筋膜・筋肉を損傷した場合
②からだの歪みの影響が頭蓋骨を歪めている場合
③噛みしめ、片噛み、歯ぎしり、食いしばりなどの癖によりそしゃく筋が変調状態にある場合
④歯茎が傷んだり弛んだりしている場合
⑤筋肉・筋膜・皮膚の疲労や衰え‥‥加齢など

 実際の施術では以上の5項目からの影響を考えて最終的に頭蓋骨を整え、表情筋の働きを整えるようにしています。ですから、おそらく皆さんがイメージしていると思われる「たるみを改善するに顔のマッサージをしてハリを回復させる」ということには重きを置いていません。

頭蓋骨の前後の関係‥‥前が下がると後ろが上がり、後ろが上がると前が下がる
 頭蓋骨において“前面”と言えば顔のことであり、具体的には前頭骨、鼻骨、頬骨、上顎骨、下顎骨のことです。そして“後面”は後頭骨のことであると言ってもよいと思います。

頭蓋骨の後頭部と顔面部の関係

 頭蓋骨の前面と後面の関係はシーソーのようになっていて、片方が下がると他方が上がるという現実があります。後面の後頭骨は、後頭部~後頸部~背中~骨盤後面という筋肉、つまり脊柱起立筋によって仙骨に、他の背筋によって骨盤後面につながっています。ですから脊柱起立筋が伸びた(ゆるんだ)状態になりますとお尻(仙骨)が下がり後頭骨が上がります。猫背のような姿勢の人は背中の筋肉が伸びてしまいますので、このような状態になっています。すると前頭骨や鼻骨が下がり、それに追随するように頬骨、上顎骨、下顎骨が下がってしまいます。
 また頭蓋骨前面の下顎骨は喉や首前面の筋肉につながり、胸~腹部~骨盤前面(恥骨)につながっています。例えばお腹が冷えて腹筋が硬くなる(こわばる)と胸が下がり首前面や喉の筋肉が緊張して下顎骨を下げてしまうということが起こります。そして下顎骨を下げるだけでなく顔の筋膜も下に引っ張られますので、顔前面の骨が全部下がってしまいます。そして、実際、こういう状況は大変多いので顔を整える施術の最初に背中側とお腹側の状態を確認し、それらを整えてから顔への施術に入るという手順が多くなります。
 60分の施術時間のうち、最初の30分をからだを整えることに費やすということはよくあることです。なぜなら顔や頭蓋骨を集中的に整えたとしても、腹筋や背筋の影響で元の状態に戻ってしまうのであれば整体の意味がなくなってしまうからです。

鼻骨が下がると顔が下がる
 顔が下がっている人はほとんどの場合、鼻(鼻骨)が下がっています。顔を上げる施術を行う場合、目安にする部位がいくつかありますが鼻骨は最初の目安です。見た目にも、鼻骨が下がりますと鼻筋の通り方にシャープさがなくなりますし、鼻骨はちょうど両眼の間にありますのが、その周辺の凹凸が減りますので、光と影の関係で“ホリの少ない顔”のように見えてしまいます。反対に鼻骨が上がって本来の位置に戻りますと、額から真っ直ぐに降りる鼻筋がはっきりし、眼窩の凹みもしっかり現れますので、引き締まった顔立ちに見えます。

表情筋のこわばりが顔を下げる

 鼻骨が下がる要素として眼鏡の影響はあります。昨今は眼鏡もだいぶ軽くなっているようですが、それでも重さがあります。それが一日の多くの時間、鼻骨にぶら下がっていれば鼻骨と前頭骨を繋いでいる関節がゆるんでしまい鼻骨は下がってしまいます。
 その他にも鼻骨が下がってしまう理由は幾つかあります。後頭骨が上がっていることもその一つです。また鼻骨は上顎骨と関節していますので、上顎骨が鼻骨を引っ張るという状況で鼻骨が下がってしまうこともあります。鼻と眼の間、そして眼の下(頬骨周辺)には幾つかの表情筋がありますが、これらの筋肉は日々の生活の中で非常にたくさん使われます。そのため収縮して硬くなっていることが多々あります。(強めに指圧すると痛みを感じます)。これらの筋肉は上顎骨と鼻骨をつないでいますので、筋肉の収縮が鼻骨を引き下げてしまうという状態を招きます。実際、鼻骨を上がる施術では、この辺りの表情筋をゆるめます。すると鼻骨だけでなく頬骨も上がりますので眼窩の状態も良くなり眼が大きく開くようになります。
 そして定かな理由はわかりませんが、胸(胸骨)と鼻骨は深い関係にあります。胸骨上には筋肉はあまりなく、ほとんど筋膜の下に骨があるような感じになっていますが、この筋膜がゆるんでいますと鼻骨が下がってしまうという関係があります。胸は環境に対するセンサーのような役割をしていますし、心理的な状態も胸に現れます。心配事や不安があると胸は閉じてしまいますが(実際に肋骨が閉じます)、その他にも天気や季節的要因の影響を受けます。花粉症の時期鼻の通りが悪くなりますが、その理由の一つは鼻骨が下がっていることです。胸骨を観察しますと力弱く感じられ筋膜もゆるんでいます。ですから花粉症の症状を改善するために胸骨の状態を整えて筋膜のゆるみを解消する施術を行いますが、それは鼻骨を上げて鼻の通りを良くするためもあります。

からだの前面(腹側)の筋肉が顔を引っ張って下げてしまう場合
 東洋医学ではからだの陰(腹側)と陽(背側)の境目として「人中」というツボがあると考えられています。“人中”は上唇と鼻孔の中間にありますが、からだの急所とされています。また解剖学的には上歯と下歯の接点、つまり上顎骨と下顎骨が背側と腹側を分ける骨であると考えられています。それは顎関節のことでもあり、上歯(上顎骨)から上部が背側であり、下顎骨は腹側です。

腹筋のこわばりによる顔の下がり

 腹側の出発点は骨盤の前面(正確には骨盤底)であり、恥骨部から始まる腹直筋を例にとると解りやすいかもしれません。腹直筋は恥骨部から始まり肋骨(胸郭)の前面につながっています。仮にお腹の冷えなどによって腹直筋がこわばって(収縮した状態)いるとします。すると肋骨は恥骨部の方に引っ張られますが、その流れは首の前面を経由して舌骨を引っ張り下顎骨を下げてしまいます。腹直筋がこわばってしまう理由は“お腹の冷え”以外にもありますが、猫背などの悪い姿勢を長く続けていること、丸まっている姿勢が“楽”という状態もあてはまります。ともに腹直筋をこわばらせたり、こわばっていることを象徴しているからです。
 下顎骨とそれ以外の頭蓋骨は陰と陽の関係にありますが、同じ顔を形成していますので筋膜や皮膚はつながっています。ですから腹側のこわばりによって下顎骨が下がりますと筋膜や皮膚が顔全体を下に引っ張りますので、結果的に「腹筋がこわばると胸が下がり顔も下がる」と言うことができるようになります。他者とくらべてバストの位置が「なんとなく下にあるな」と思われている人、あるいは「本来の自分より胸が下がっているように感じる」と思われる時は、ほぼ間違いなく顔が下がっていると考えられます。

 また腹筋だけでなく、手で言えば、手のひらは腹側であり、手の甲は背側です。手のひらを大きく伸びやかに拡げようとしても中途半端で終わってしまい、拡げきれない人は腹側の筋肉がこわばっているということです。左手は伸びやかに拡げることができるのに右手のひらはこわばっているという場合、顔の右側だけが下がっているという状態かもしれません。実際にはもっと複雑にいろいろな状況が絡み合って顔の歪みをつくっていますのでこんなに単純ではありませんが、このような原理によって顔の歪みがもたらされている場合もあると理解していただければと思います。そして、こういうからだの歪みが顔の歪みをつくっているというケースがとても多いと感じています。

お尻が下がると顔も下がる
 “頭蓋骨の前後の関係”で説明しましたとおり、後頭部(後頭骨)が上がると顔は下がります。そして後頭骨は仙骨と対になって連動して動いています。通常の場合、呼吸で息を吸う時、仙骨が上がると共に後頭骨は下がります。つまり息を吸うとき顔があがります。このようにならない人は呼吸の仕方がおかしいか、顔が歪んでいると思われます。
 ですから、骨盤つまりお尻が下がっている人は常に後頭骨が上がっているため顔が下がっている状態であると言えます。骨盤が下がる理由はたくさんありますが、普段の姿勢や歩き方は大きな影響力を持っています。背中の丸まった悪い姿勢で背中の筋肉が伸びて(ゆるんで)しまった人は後頭骨も上がり仙骨も下がります。ムチウチを経験した人でしっかり治癒していない人の多くは首後面の筋肉がゆるんでいますので後頭骨が上がり骨盤が下がっています。ウエストが緩いわけでもないのにジーンズやスラックスがすぐに下がってしまうような人はお尻が下がっている人と言えます。

噛みしめや歯ぎしりの癖
 再三登場する噛みしめ、歯ぎしり、食いしばりの問題ですが、これらも顔の下がりに影響します。これらの癖を持った人は“ついつい顔に力が入ってしまう人”に分類されますが、そしゃく筋だけでなく頬を中心とした表情筋もこわばっています。上唇から頬骨にかけて頬骨筋や笑筋などがありますが、これらがこわばりますと頬骨を引き下げてしまいます。頬骨が下がりますと額の骨である前頭骨も下がりますので眼窩が下がり目が開きにくくなります。そして額が下がるということは顔全体が下がるということです。また鼻の周辺にも幾つかの表情筋がありますが、これらがこわばると鼻骨を下げますので、やはり顔全体が下がってしまうということになります。私たちは日常生活において喋ったり、笑ったりしてこれらの表情筋をたくさん使っていますが、その影響で頬骨の下にある筋肉がまるで骨のように硬くなっている人がたくさんいます。目の下の部分を強く指圧したときに痛みを感じるのは筋肉が硬くこわばっているからですが、この辺りの筋肉を指圧してゆるめるだけでも目が開けやすくなり額が上がる場合もあります。

側頭筋と咬筋

 また、そしゃく筋である咬筋は顎関節から頬骨につながっている頬骨弓に付着していますので、噛みしめや歯ぎしりなどによって咬筋がこわばってしまいますと頬骨弓、つまり頬骨を下げてしまいます。ですから顔が下がるのを予防するためには、噛みしめ、食いしばり、歯ぎしりなどの癖や表情筋のこわばりが蓄積しないよう気をつけなければなりません。また日々のフェイシャルマッサージでは、顔の表面(皮膚や表情筋)だけでなく深い部分や咬筋の硬さをゆるめるケアをすることが望ましいと思います。そのやり方は静かにじっくりと指圧することが一番です。みなさんがやりがちな、“グイグイ”揉んだり指圧したりすることは組織を傷つける可能性がありますのでやらないでください。

歯茎の問題
 歯茎の影響については、現在いろいろと事例を集めて考察しているところですが、現象面のみで申し上げれば「歯茎がゆるむと舌がこわばり顔が下がる」となります。
 歯茎がゆるむ理由としては、歯槽膿漏や炎症など病的な要因もありますが、私のところに来られる方々の場合は、歯列矯正、インプラントなどによる影響が多いです。また、噛みしめや食いしばりによって歯茎に負担が掛かりすぎて弱くなっていることもあります。
 歯茎は上顎骨と上歯、下顎骨と下歯をつないでいて歯の健康やそしゃくの安定に深く関わっています。ですから歯茎の健康が損なわれますと、歯やそしゃくに関わる組織=舌、そしゃく筋、口の中の壁(口蓋や咽頭、頬)などに影響が及ぶと考えることができます。
 「首肩から力が抜けない」という項目で取り上げましたが、舌は神秘的で大きな影響力を持っています。首肩から力が抜けない人の多くは舌が硬くこわばっている傾向があります。顎を引く動作で舌は収縮しますが、舌がこわばっている人はいつも顎を引いている状態と同じであると考えてもよいと思います(程度はそれぞれ違いますが)。このような人は何かあると瞬時に顔に緊張が生まれ、呼吸が止まって息苦しくなり、首や肩に力が入ってしまいます。24時間、365日、ずっとこのような状態で生き続けることはそれだけで「大変」なことだと感じてしまいます。
 そして歯茎の状態が悪い時は、舌がこわばってしまいます。歯列矯正をした人、インプラントを行っている人、歯槽膿漏の人、あるいは歯茎がゆるんでいるかもしれないと思っている人は、両手の指先を使って歯茎に届くように押しあててみてください。歯茎に指先が当たっている時は舌がゆるみ、手を離すと舌がこわばる(舌先が少し引っ込む)のであれば、歯茎の影響が舌に及んでいるという証です。
 舌はこわばると下顎を引き寄せると同時に下げる働きをします。つまり舌がこわばっている人は顎が下がっているということです。そしてそれが顔全体を下げてしまうことは上記で説明したとおりです。

 先日「三白眼(黒目が小さく白目の面積が大きい)」を改善したいという要望がありました。「そこまで整体で可能かどうか?」と一瞬考えましたが、要望にはなんとか応えたいという思いもありまして過去のことをいろいろ尋ねました。「幼児の頃は三白眼ではなく、中学性になった頃から黒目が小さくなったように思う。」ということでしたので、子供の頃の癖について尋ねました。すると「顎を引いてにらむように見る癖があった。」ということでした。顎を引く動作は舌を収縮させる動作です。そして、にらむことは虹彩(黒目)を緊張させる動作です。ですからこの方は子供の頃、舌をこわばらせ、さらに黒目をこわばらせていたということになります。このことが影響しているかもしれないと思い、舌のこわばりをゆるめるように施術をしていきますと少しずつですが黒目が大きくなっていきました。“舌は神秘的”と前に少し記しましたが、舌が全身に及ぼす影響力はかなりのものだと思います。

打撲や損傷の影響
 転んで顔を打撲したことがある、頭を強打した経験がある、顔を殴られたことがあるなどで顔面や頭部の骨や筋肉や皮膚・筋膜が損傷し、それが治りきっていないことが原因で顔が下がっていることもあります。また手術を行った経験のある人は縫合の部分が弱くなっていますが、その影響で顔が下がっていることもあります。医師は手術が成功し、縫合部分がしっかりつながっていれば、それで治療が終了、「問題なし」と判断するのだと思いますが、整体的な観点では問題が残ったままになります。
 縫合部分は“すっかり元の状態に戻った”ということとは違います。からだには電気が流れていて、その流れの有様によって筋肉や筋膜や皮膚の働き具合は変わります。縫合によって皮膚も筋膜もしっかりくっつきますが電気の流れは縫合部で途絶えてしまうように感じます。ですから多くの場合、縫合部周辺の筋肉・筋膜・皮膚の働きは弱くなっています。それによって骨格は歪みますが、それだけでなく感覚器官の働きが悪くなったり、体調が“今ひとつパッとしない”という状態になってしまうことはよくあることです。そして、そういう人はたくさんいます。

加齢や衰えによる影響
 加齢によって筋肉の力や働きが衰えていくのは自然の流れであり、自然界に存在するかぎり避けることのできない現象です。しかしながら同じ40代、50代、60代であっても、個人差があり顔の下がり方に違いが生じているのも現実です。
 加齢による影響だけついて言えば、骨と骨をつないでいる関節線維の力が弱まり骨格全体がゆるんでしまうこと、代謝力が弱まってむくみが生じるため組織全体が重くなり、また筋力が弱まるため重力に負けてしまうことなどが考えられます。
 ですから、関節線維をケアすること、むくみが生じないようにケアすること、適切なフェイシャルマッサージを行って表情筋や皮膚の力を補うことなどが対策となります。そして加齢(老化)現象が速く進むか、ゆっくりになるかは、摂取するもの、特に薬やサプリメントの影響力は大きいと思います。科学的な見解では、同じ類の薬でも化学的作用の仕方に違いがあるとのことですが、結局のところ、鎮痛剤は神経の働きを鈍らせるものであり、筋肉弛緩剤は筋肉の働きを弱めるものであると私は思っています。
 痛い時には鎮痛剤は大いに役立つと思います。しかし“1日3回、毎食後に”と記され、常に鎮痛剤の効果が消えないように飲み続けるのはいかがなものかと思います。「痛みからは解放されるかもしれないけど、老化はどんどん進む」と私は思ってしまいます。

 老化は骨細胞、筋細胞、神経細胞、血液細胞などの力や働きが衰えることであると考えることができます。つまり細胞レベルで力や働きが衰えることですが、ということはホルモンと深く関わっていることだと考えることができます。なぜならホルモンは細胞に働き方を指示する命令書のようなものだからです。思考はホルモンの分泌に影響を与えます。生活習慣や食物はホルモンに影響を与えます。湿疹で苦しんでいる時、ステロイドホルモンを投与すると速やかに湿疹が改善したりしますが、この一例だけを見てもホルモンの細胞に及ぼす影響力の強さを知ることができます。高齢になっても若々しく見える人は、おそらく思考も若々しいのだと思います。若くても思考が高齢化してしまえば、年齢以上に老化して見えるかもしれません。

 冒頭に申しましたとおり、今回は顔の骨格について記しました。顔の“たるみ”や”むくみ”については直接的に触れませんでしたが、骨格が下がることはそれらの根本原因になると考えることができます。
 ”たるみ”は皮膚や筋膜や筋肉のハリが失われゆるんでしまうことですし、“むくみ”は静脈やリンパの流れが滞ってしまうことでもたらされます。骨格は筋肉の働きや静脈・リンパの流れの基盤です。一所懸命皮膚や筋肉をマッサージしてハリを回復させたり、リンパの流れに刺激を与えてむくみを改善したとしても、骨格が歪んだ状態であれば、その効果は長続きしないと思います。
 また、時々、本来の顔以上に「エラを細くしたい」「小顔にしたい」という要望をお持ちの方から問い合わせがありますが、生来の骨格を乱すような施術は一切行いません。必ず将来的に不調を招く原因になると考えるからです。顔が上がってハリが戻り、むくみが改善すれば顔はイキイキとして魅力的になると思います。小顔矯正などの施術を受け体調不良に苦しんでいる人を見る度に「それは邪道!」という思いが強くなります。くれぐれも気をつけていただきたいと思います。

足つぼ・整体 ゆめとわ
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 骨盤の歪みが原因で顕著に自覚できる症状は、腰部の張り、腰痛、下肢のしびれ(坐骨神経痛)、股関節の不調、殿部の痛みなど腰部と下半身に現れる不調です。しかし、それ以外にも頭痛、肩甲骨周辺の張りや痛み、お腹の張り、手の不具合など上半身にも影響が及ぶことがあります。また、骨盤の歪みが原因して太る、胃腸の調子が悪くなる、などということも指摘されています。
 ところで、多くの整体院では「脚の長さが左右で違うのは骨盤が歪んでいるから」ということで、脚の長さを揃えるために骨盤や背骨や股関節をグイッとやって骨盤を矯正するようですが、私はそのようなことをしたことがありません。それは一種のパフォーマンスにすぎないと思っているからです。
 私が整体を学んでいた学校でも、そのような手技を教えていましたが、先生は「ま、一時的な効果だけど‥‥」と言っていましたので、そんな手技は信用できませんでした。
 骨盤矯正も、その他の骨格矯正も、理屈をちゃんと理解した上で行わなければ本当の意味での“矯正”ではありません。そして骨格矯正は“バランス”が大きなキーワードになると考えています。骨盤に繋がっている多くの筋肉のバランス、からだに捻れをもたらせている筋膜のバランス、それらを整えてはじめて“骨盤矯正”の目的が達成されるのだと考えています。

骨盤で確認するポイント
 骨盤の構造のところで説明したとおり、骨盤の骨格は腸骨、恥骨、坐骨が一体となった一対の完骨と仙骨と尾骨でできています。“骨盤が歪む”ということは関節で骨と骨の関係がおかしくなるということですが、一番影響力が大きいのは完骨(腸骨)と仙骨の間にある仙腸関節です。この関節は外側も内側も強力なじん帯でガッチリかためられていますので、一昔前まで「仙腸関節は固定して動かない」という定説もあったようです。ところが実際は、仙腸関節が歪んでいることがとても多いです。

骨盤背面

①左右の腸骨と仙骨の関係
 骨盤上部を背側から見ますと仙骨の上部(専門用語では仙骨底といいます)を挟んで左右に腸骨があります。右利きの多くの人は、仙骨底が右側(時計回り)に少し傾いていて、左側の腸骨が後に傾き、右側の腸骨が外側前方に傾いている傾向にあります。そして左側股関節の伸びが悪いため、うつ伏せになったとき、左側のお尻が右側よ少し高くなっています。腰部も右側より左側がこわばっています。これは右手ばかりを使っていることと、右足に体重を乗せて立っていることが原因だと考えられます。からだには重心を掛けた方の筋肉が伸びるという原理がありますので、右足に体重をかけて立つ癖のある人は、右半身の筋肉がゆむみ、左半身の筋肉がこわばってしまいます。
 この歪みを修整する作業の第一段階は、腸骨を正しい位置に戻せば仙骨の歪みが改善されるのか、あるいは仙骨を正せば腸骨の歪みが改善されるのか、どちらであるかを把握することです。それによって調整しなければならない筋肉がまったく違ってくるからです。

②骨盤の捻れ
 スカートやジーンズなどを履くと、どうもどちらかの骨盤が前に出ているように感じるとか、動いているとスカートが回ってしまう、などというときは骨盤全体が捻れているからかもしれません。
 骨盤が捻れてしまうのは、①の腸骨と仙骨の関係に歪みがあることの他、上半身や下肢からの捻れが原因となっていることも考えられます。
 上半身の捻れが原因となっている場合、多く見られるのは胸郭の上部が利き腕の方に引っ張られ、その反動で胸郭の下部が反対方向に捻れを起こし、その捻れの流れによって骨盤が捻れてしまうことです。鎖骨も注意深く観察すると左右対称でなかったり、脇腹の肋骨を触った感じが左右で違うと感じるときは確実に上半身が捻れています。この捻れは、筋肉で云えば腹斜筋、腹横筋、前鋸筋、大胸筋などのバランスが悪いことでもたらされている可能性が高いです。
 下半身(下肢)からの影響で骨盤が捻れている場合は、原因として考えられることはたくさんあります。膝や足首の不調、O脚、外反母趾、内反小趾、足趾の捻れや曲がり‥‥、ともかくたくさんあります。
 このような場合、仰向けで寝たときに左右の脚の開き具合が股関節で違っていることが見受けられますが、骨盤の捻れを手動で直すと足の開き具合が少し改善するのか、あるいは脚の開き具合を手動で修正すると骨盤の捻れが少し改善するのかによって骨盤の捻れが下半身に影響しているのか、下半身の捻れが骨盤に影響しているのかを把握する目安になります。

③骨盤の開き
 「骨盤が開いている」とはよく使われる言葉ですが、正確には、骨盤の上部が開いているのか、下部が開いているのか、両方が開いているのか、ということを把握しなければなりません。
 女性の場合、出産のときに骨盤が開き、出産後時間をかけてゆっくりと元の状態に戻っていきますが、産後のケアが悪いと骨盤が開いたままの状態になっていることがあります。その場合は、上部も下部も開いた状態の場合が多く見受けられます。
 出産や生理時以外の通常の場合、骨盤は上部と下部がシーソーのように一方が開けば他方が閉じるという動き方をします。例えば、太りすぎや腹筋の働きが悪くなって骨盤の上部(上前腸骨棘=腰骨に手を開いて当てたときに人差し指が当たる部分)が開いてからだの真横近くに来ている場合、骨盤の下部が閉じて左右の坐骨の間が短くなっています。また反対に骨盤底部がゆるんだままで坐骨間が開いていますと、骨盤上部は狭くなって窮屈になってしまいます。
 良いスタイルとかダイエットとかを目指す場合は、大抵骨盤上部の開きを改善したいということになりますが、そのためには骨盤底部の筋肉のこわばりを改善しなければなりません。それをせずに骨盤上部をバンドやコルセットなどで締めつけたところで、それは骨盤の動きの道理に合っていませんので、効果を期待するのは難しいことになります。
 “骨盤の開き”は次に説明する“骨盤の傾き”と表裏一体の関係にありますので、「開きを直したいなら傾きを直さなければならない」ということになります。

④骨盤の傾き
 骨盤の傾きは骨盤矯正にとって非常に重要なポイントだと私は考えています。
 私たち日本人は諸外国の人たちに比べると骨盤が後ろに傾いている(後傾)傾向にあると云われています。その結果、お尻が下がって脚の長さも実際より短く見えてしまいます。また、若い頃に比べて歳を重ねていくとお尻がたれてくる傾向がありますが、それは骨盤の傾きが変わった影響による可能性が考えられます。
 骨盤は背面から見ますと、仙骨を挟むようにして左右の完骨が両側に配置され股関節で下肢とつながっています。そして骨盤の傾きでカギを握るのは仙骨です。仙骨が後に傾きますと、仕組みとして両側の完骨は下部が狭まり上部が開いて骨盤全体が後に傾きます。また両側の完骨の下部(坐骨部分)の間が狭まるか、上部が開きますと仙骨が下がるか後傾してしまい同様に骨盤全体が後に傾いてしまいます。
 仙骨は前傾しすぎても、出っ腹、出っ尻になってしまうのでよくありませんが、実際に前傾している人は太りすぎてお腹が大きく張り出している人ぐらいで、多くの場合、仙骨の後傾を修正するようになります。

仙骨の角度と脊椎の状態

・仙骨後傾の場合
 仙骨の状態は頭部の後頭骨、背骨の際にある脊柱起立筋(脊柱固有筋群)、下肢の内側の筋肉、そして腹直筋の状態によって決まります。

後頭骨と仙骨に影響を与える脊柱起立筋と下肢の筋肉

 頭部の後頭骨との関係で云えば、後頭骨が上がると仙骨は下がります。呼吸で息を吸うときは頭部が膨らむとともに後頭骨が上がりますが、その時仙骨は下に動きます。息を吐くときは反対に後頭骨が下がり、仙骨は上がります。
 いつも下を向き加減、あるいは背中を丸めて作業をしている時間が多い人は、仙骨~背中~首後面とつながって後頭部に達している脊柱起立筋が伸び気味になっていますので後頭骨が上にずれた状態になっています。つまり仙骨は下がった状態になっているということになります。

腹側から見た骨盤の歪み_1

 また、腹直筋は解剖学的には恥骨から始まり肋骨につながっている筋肉ですから、直接的には仙骨とは関係ないと考えられがちですが、現実には腹側の直筋は下顎~首の前面~胸骨~腹部、恥骨を越えて骨盤底~尾骨までつながっています。ですから腹直筋がこわばりますと尾骨を腹側に、つまり前下方に引っ張ることになります。そうなりますと尾骨とつながっている仙骨は後に傾いてしまうことになります。
 時々、喉の周辺から下顎にかけてとても硬くこわばっている人をみかけますが、それは舌筋などがこわばっているということです。このこわばりはそのまま腹直筋につながり、尾骨と仙骨を後傾させる原因となります。また、次に説明しますが、腹直筋のこわばりは恥骨を頭部の方へ引っ張りますので、骨盤全体が後傾する原因になります。
 
 原理について確定的なことは云えませんが、実際の現象として、下肢内側の筋肉の働きが悪くなりますと仙骨は下がってしまいます。足の母趾の内側から踵にかけて、ふくらはぎの内側(ヒラメ筋内側)、太もも裏側の内側(半膜様筋)、これらの筋肉がゆるんでいますと仙骨は下がってしまいます。

・完骨が後傾する場合
 完骨は腸骨(腰骨)と恥骨と坐骨の合体したものですので、骨盤の中で後面中央の仙骨・尾骨を除いたものです。
 腹側では恥骨が腹直筋とつながっていますので、腹直筋がこわばりますと恥骨が頭部の方に引きつけられ骨盤が後傾します。仰向けで寝たとき、恥骨部分が盛り上がっているように見える場合は、このような状態である可能性があります。あるいは、腹直筋が大丈夫でも外腹斜筋や内腹斜筋がこわばりますと、それらは腸骨の傾きに影響を与えますので、片方の骨盤が前傾して反対側が後傾するといった捻れを生じる可能性があります。
 また、内腹斜筋や腹横筋の働きが悪くなりますと骨盤上部は開いてしまいますので骨盤は後傾してしまいます。

腹側から見た骨盤の歪み_2

 骨盤は下部(骨盤底)が狭まると上部が開くとともに完骨自体が後傾する仕組みになっています。骨盤底(尾骨と恥骨と二つの坐骨の間)には幾つかの筋肉と強靱な筋膜がありますが、それらがこわばってしまうと骨盤底が狭くなります。また、加齢によって骨盤底は柔軟性を失う傾向がありますので、年齢とともに骨盤底が狭くなり骨盤が後傾するようになってしまいます。高齢者のお尻がすぼんで下がり、貧弱に見えてしまうのはこのためだと考えられます。また、若くても、いつも座ってばかりの作業をしていますと、やはり骨盤底はこわばってしまい骨盤が後傾してしまいます。

骨盤矯正の考え方
 骨盤はからだの中心ですから、からだ全体を考えたとき、中心である骨盤を整えることが、からだ全体を整える上での基礎となります。あらゆるところを整えたとしても骨盤が歪んでいれば、やはり歪みが残ってしまいます。慢性腰痛、慢性的な首・肩の張り、慢性的な足のだるさ、血行不良、冷え、‥‥あらゆる慢性的な不調は骨盤の歪みが関係している可能性があると思います。
 しかしながら――これが私たちのからだが部品を組み合わせたロボットと一番違う点ですが――中心である骨盤もまたからだの各部分との依存関係にあります。骨盤が歪めば手にも足にも歪みが現れますが、反対に手や足が歪んでも骨盤が歪んでしまうのが私たちのからだです。ロボットは手の調子が悪くなったとしても骨盤に相当する部分に影響を及ぼすことはありませんので、頭部がおかしくなったり、足がおかしくなったりすることはありません。不具合になった手の部品を修理したり交換すれば事足ります。しかし私たちのからだはすべて繋がっていますので、手がおかしくなると骨盤が影響を受け、その歪みによって頭痛になったり、歩き方がおかしくなったり、と骨盤の歪みによる影響が全身に現れます。ただ歪み方が一定の範囲内におさまっていて、なおかつ筋肉の働きに粘りと対応力があれば、歪みが不調として自覚される程にはならないというだけです。
 ですから骨盤矯正に際しては、骨盤だけに着目するのではなく、からだの各部位との関連性、特に普段たくさん使っている部位=手や足や顔との関連性の中で骨盤を修正するように考えることが正しい在り方だと思います。あるいは、お腹の冷えは直接骨盤に影響を与えますし、精神的緊張など心理面との関連性もあると思います。

 私は通常、腰痛などに対する施術では、はじめに足趾やふくらはぎを整えることからはじめます。そして骨盤底の筋肉を整え、下半身の筋肉状態がより正常に近づくようにして、その後で骨盤自体を改めて検査し、歪みの状態を確認した上で手や肩や頭部といった上半身への施術を行っていきます。ギックリ腰、肉離れ、筋肉を損傷したなど、明らかにケガと思われることが原因でないかぎり、骨盤を歪ませているのは他に原因があると考えているからです。
 脚の長さが左右で違っているのは確かに骨盤が歪んでいるからです。だからといって骨盤や股関節や背骨をグイッと矯正したところで、極めて一時的に脚の長さは整うかもしれませんが、骨盤に歪みをもたらせている原因を修正しなければすぐに元の状態に戻ってしまいます。イメージ的に、確かにグイッとやると整体っぽいかもしれません。私のようにじっくりやっていると整体っぽくないかもしれません。しかし、理屈を一つ一つ考えていくとこういう施術になるのだと思います。
 「ひとつながりの身体」というのが私の店の看板ですが、本当にからだは頭の天辺からつま先まで、ひとつながりに繋がっているのです。

 今回は骨盤の歪みの実際と骨盤矯正に対する考え方について記しました。次回は施術の実際について記します。

 “私たちのからだの中心は骨盤である”と聞かされたとき、理由は定かでなくても、それは何となく頷けることだと思います。直立二足歩行の私たち人間は、からだの中ほどに骨盤があって、上半身と下半身の境になっていると誰もが認識しているからだと思います。ところが、四つ足動物、例えば犬の(胴長)ダックスフンドのからだの中心を問われたときに、それが殿部の骨盤であるとはあまり想像が及ばないかもしれません。しかし、やはりからだの中心は骨盤であるということを説明したいと思います。

 私たちのからだを考えるとき、人間を含めて動物の進化の歴史を考察しないわけにはいきません。私たちの暮らす地球の歴史は46億年ともいわれています。地球上に生命が誕生して38億年、最初の生命は海の中で生まれたのですが、その後生命体は進化を繰り返し多種の生物に枝分かれしてきたと考えられています。
 
頭進

 私たちは背骨をもつ脊椎動物の一種ですが、今から5億年ほど前に脊椎動物の祖先が海の中で誕生しました。脊椎動物とはいえ、その生物に背骨はまだありません。丸い袋のような状態で海の中を波に揺られながら漂っていたと考えられています。プランクトンなどのエサを口の中からとりいれて、便や尿も同じ口を通して排出していました。口と肛門、つまり頭と尻は最初は同じひとつのものだったのです。その後、動物の本能としてエサを追い求めるように自ら動くようになるのですが、そうしているうちに同じ袋の中にあって頭と口の役割をしている部分が前に前に行きたがるようになり、次第に殿部から分かれ、からだに長さができるようになったと考えられているようです。これを頭進と呼ぶようですが、頭部から殿部が後退したのではなく、殿部から頭部が先んじて離れていったのです。
 つまり、はじめは殿部=骨盤部しかありませんでしたが、次に頭部ができたという順番です。やがてこの生物は私たちが食卓で食べている魚に進化していきますが、魚には背骨と内臓があるように、殿部から分かれて前に伸びていった頭部との間に背骨と肋骨ができ、その腹側に内臓が置かれたという私たちの体幹と同じ構造ができあがりました。
 この理屈を裏付けるように、私たちの全ての筋肉は縮むと骨盤に向かうという現実があります。背筋の全て、腹筋の全ては骨盤が起点(筋肉の起始)となって繋がっているのです。
 ですから、私たちのからだの中心は骨盤であると結論づけることができます。また、四肢と呼ばれる上肢(腕と手)と下肢(脚と足)は魚が海から陸に上がった頃にできますが、上肢は頭部から、下肢は骨盤から発生しましたので、上肢の筋肉は縮むと頭部を経由して骨盤に向かうようにできています。

骨盤が中心である現実
 骨盤がからだの中心であるということは、からだを動かす原動力やエネルギーは骨盤からやって来るということになります。これはなかなか現実として受け入れがたい部分があると思います。たとえば目をまばたきする力は骨盤とは関係ないように思えます。スマホ操作で動かす人差し指の動きは骨盤と関係ないように思えます。ですから全ての動作の力が骨盤からやって来るわけではないのかもしれません。しかし重度のギックリ腰になりますと、しばらくの間からだをまったく動かすことができなくなったりします。ギックリ腰は主に骨盤の中心である仙骨尾骨部の筋肉や筋膜にちょっとした損傷ができたために起こる急性腰痛ですが、ほんのちょっとの傷でも椅子から立ち上がることや、まともに歩くことができなくなってしまいます。この現実をしばしば目撃していますと、骨盤の中心部に小さな傷ができただけでも、からだがすっかり不自由になってしまうのだから骨盤は本当にからだの中枢なんだと感じます。
 骨盤の状態が悪くてもピアノを弾いたり、楽器を奏でたりすることはできるかもしれません。しかし、どこか手先だけの、口先だけの演奏になってしまうでしょう。骨盤がしっかりしていれば、指先にも唇にもからだの芯から力とエネルギーが伝わってきて全身で演奏することが容易にできるかもしれません。そういう意味で、からだの持つ底力は骨盤からやって来るのではないかと考えています。

骨盤の構造
 骨盤は一対の完骨と仙骨と尾骨からなっています。それらを結合しているのは線維性の関節で、後部に仙腸関節が二つ、前部に恥骨結合があります。また完骨は腸骨(いわゆる腰骨)と坐骨と恥骨の3つの部分が結合してできたもので、上部と下部で違う方向を向いているのが特徴です。

骨盤基礎01

骨盤基礎02

骨盤基礎03

 坐骨の底部には下肢の筋肉の出発点(起始部)になる坐骨結節があります。坐骨結節は座る時に座面に接触する部分ですので、下肢の筋肉がこわばりますと「座るとお尻が痛くなる」ということになります。あるいは長時間座り続けて坐骨結節が疲労状態になりますと、下肢の筋肉が張ってきたりします。
 また骨盤は前方斜め上方から見ますとツバのある帽子を逆さにしたような形をしています。腸骨と恥骨と仙骨の上部でできている帽子のツバの部分を大骨盤、その奥の帽子の部分を小骨盤と呼んだりします。大骨盤は腹部、小骨盤は生殖と排泄の部分と考えてもよいかもしれません。

骨盤の内側
 かつて私にいろいろ教えてくださった理学博士の先生(整体の先生ではありません)が「いろいろ偉そうに言ったり、やったりしたところで所詮人間は、地球上の生物としてみれば単なるウンコ製造器に過ぎない」と仰いました。過激な発言のようにも聞こえますが、私はなるほどと感心しました。
 家族や気の合う仲間達と共にする食事は楽しいですし、美味なものを食すと一時幸せな気持ちになります。あるいは、健康のことを考え食材を吟味した食事を摂っている方も多いと思います。しかし、そうして食べたり飲んだりしたものも、喉元を過ぎて食道に入ってしまえば、胃腸が調子悪くない限り、あとはほとんど何の感覚も得られないまま時間の経過とともに便や尿として排泄されるだけです。昨日食べた美味しい寿司も、翌日か翌々日には便という姿になってトイレに流されてしまうだけです。ですから私たちのからだは食べたものを便に換える機械であるという見方もできるわけです。
骨盤内臓断面02

 骨盤は大骨盤と小骨盤の二つに分けられると申しましたが、大骨盤は腹部の内臓を支える役割をしていて、主に小腸が収まる場所になっています。小骨盤には直腸、膀胱、そして生殖機能に関係する子宮や前立腺、卵巣や精巣と性器が収まっています。つまり、からだの中心である骨盤の奥(ここが本当の中心部)には糞尿を排泄するための臓器と子孫を残すための臓器が位置していることになります。
 人生の目的とか、心とか、喜びや悲しみなどの感情などは私たちの精神面ですが、それを除いて肉体的な面だけを捉えれば、私たちが地球上の生命体の一つであることの意味と価値が骨盤から読み取れるかもしれません。つまり、便を作って出すことと子孫を残すことです。
 便を作り出すことは、地球上の生態系に寄与して命をつなぎます。私たちがトイレに流した便は下水処理施設や浄化槽のなかでバクテリアのエサになります。そしてこれらのバクテリアが排出した便や尿は、究極的には土に還って植物が摂る栄養になります。そうして育った植物は私たちの食材になったり、あるいは他の動物たちのエサになります。このようにして生態系は今後も地球から水がなくならない限りずっと維持され続けていきます。
 また、人類という種を存続させるための、つまり子孫を繋いでいくための生殖機能が、からだの最も中心部にあるという事実は、生命体の本能として子孫を繋いでいくことが大切だということを物語っているのかもしれません。
 以上のように肉体的観点でみると、骨盤内部の働きは糞尿を排出することと子孫を産み出すことの二つに集約されるということになります。

骨盤の外側
 骨盤の外側はからだにたくさんある筋肉(骨格筋)の中心という役割があります。
 骨盤前面(恥骨から腸骨の上部)は腹部の筋肉(腹直筋・腹横筋・外腹斜筋・内腹斜筋)の始まり(起始部)になっていて、胸郭(肋骨と胸骨)を経由して胸部の大胸筋・小胸筋・前鋸筋と首前面の筋肉に繋がっていき、下顎の底部(舌筋など)まで続いています。
 
骨盤前面からの腹筋

 骨盤後面の上部は背部の筋肉(脊柱起立筋群・広背筋・腰方形筋など)の起始部になっていて、首の後面を経由して後頭部に繋がっています。もっと細かく云えば、後頭部を越して頭部・顔面部へ下り鼻の下までは背部の筋肉の繋がりです。
 そして骨盤後面と下面(恥骨下部と坐骨)は大腿部(下肢)にある筋肉の起始部となっています。
 つまり上肢(肩甲骨と腕と手)を除くほとんどの骨格筋は骨盤が起点になっているということです。ですから骨盤が歪みますと、からだ中の筋肉が影響を受けてしまい様々な運動系の不具合を引き起こしてしまう可能性があるということになります。

中枢神経としての骨盤
 私たちが健やかな心身を維持するために最も大切な器官は“脳・脊髄と心臓”であることはよく知られていることです。
 ところで、からだを動かす神経には二つの系統があります。一つは自分の意志のままに筋肉を働かすための随意神経、もう一つは自分の意志に関係なく、いわば勝手に働いてからだの働きを調整している自律神経です。随意神経は動物性神経、自律神経は植物神経などとも呼ばれますが、自律神経はからだ(肉体)を快適に維持するための神経であるとも云えます。
 
自律神経01
 中枢神経のことを“髄”と呼んだりもしますが、からだには頭部から順に延髄、頸髄、胸髄、腰髄、仙髄の五つ中枢があります。そして骨盤は仙髄の場所です。また、自律神経は日中優位に働いて、からだを活発にさせる交感神経系と、からだを休めて疲れを癒し、消化・吸収・栄養などの内臓の働きを高める副交感神経系に分かれていますが、五つある髄の中で延髄と仙髄は副交感神経系の中枢です。脳の最下部にある延髄と骨盤にある仙髄が協力し合って、呼吸を整え、からだの疲れを癒す役割を担っていますので、自律神経失調症などと診断される人が多い今日、骨盤の重要性がもっと見直されるべきだと思います。

 私たち人間と他の動物たちと一番違うところは、目に見えない精神性です。感情は他の哺乳動物、犬や猫やイルカや鯨にも備わっていますが、高度に思考を展開し、言葉使って自らを表現するといった点が人間ならではのものなのかもしれません。そのために私たちの脳は他の動物たちよりも遙かに大きくできています。
 ところがその反面、肉体的に見るとからだよりも頭の方が自らを主張する傾向が強くなり、今日では“からだではなく頭で生きている”ような人たちが多くなりました。つまり“からだの中の骨盤”に対する比重がどんどん軽く考えられるようになってきました。昔は「女の子はお腹を冷やしてはいけない。子供が産めなくなるよ。」などとお年寄りが若い女性に対してよく注意していたものですが、今はからだの健康よりもファッション性、つまり自己主張したがる頭の方が優先されいるようです。
 若いときから気にしなければいけない婦人病の数々、子供がなかなかできない現状、科学的には証明されていないかもしれませんが、これらが腹部や下腹部の冷えによってもたらされいる可能性は否定できないと思います。
 
 骨盤が開いたり歪んでいると太ってしまう。ダイエットのためには骨盤矯正が必要。そういったことのために骨盤を整えることは良いことだと思いますが、それだけでなく、機能的にも骨盤がからだの中心であって、普段から骨盤や下腹部を大切にして整えておく必要があるということを考えていただければと思います。
 “骨盤の歪みと矯正”についても近々記していきたいと思っています。

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