ゆめとわのblog

ホームページとは違った、より臨場感のある情報をお届けしたいと思っています。 また、テーマも整体の枠を飛び出してみたいと思います。 ホームページは以下です。 http://yumetowa.com/ お問い合わせはメッセージ欄でお送りください。

カテゴリ: 動作

 「物をつかむ基本は小指側で行う」というと驚かれるかもしれません。正確に表現するなら「小指側で支えて他の指を使う」となります。ぺんを使う、コーヒーカップを持つなど、何かをつかむ時はほとんどの場合、親指と人差し指をで行いますので“小指側”という表現に疑問がでるのは当然のことです。しかし不調のからだを改善しようとする時、この“小指側を中心に手を使う”ことは重要なポイントになってきます。
 動作や運動を行う時には原則があります。例えば自転車や自動車が道路を走る時には道路がしっかりしていないとタイヤは上手く動いてくれません。歩く時にも砂浜のように足場がしっかりしていないところでは、道路を歩くようには上手く歩けませんし非常に疲れます。道路が私たちの動きをしっかり支えてくれるので、思いのままに歩くことができ走ることができます。からだの動作も同様で、その動作を支えるものがしっかりしていないと楽に動くことができません。反対に言えば、しっかりとした支えがあれば動作がとても楽にスムーズにできるようになる、ということになります。
 ペンで字を書く時、小指を少し曲げて、つまり小指側の筋肉を少し収縮させてしっかりとした支えをつくることによって実際にペンを握って操作する親指と人差し指の動きが軽快で自由になります。ペンを握る親指と人差し指にギュッと力が入ってしまい筆圧が強くなってしまう人は、しばらく字を書いていると手が痛くなりますが、それは動作を行う指も動作を支える指も同じになってしまうからです。すらすらと字を書くためには小指側の筋肉をしっかりした状態にした上で字を書き続けることがポイントになります。

小指側が中心の人は手のひらが上を向き、親指側中心の人は手の甲が上を向く
 小中学生の頃、運動会でリレーをやった時、バトンをどの指で握っていたでしょうか。雑巾を絞る時、どの指に力を入れて絞っていますでしょうか。これらはからだの使い方の癖を表すとともに、壊れやすいからだか、壊れにくいからだかを予測するポイントにもなり得ます。
 
カップを持ち上げる動作

 たとえばコーヒーカップを持とうとしてカップの穴に人差し指をかける時、手の甲が上を向いた状態で穴の縁を親指と人差し指で挟むようにして持つ人は、小指側の筋肉を使っていない傾向の人です。穴の中に人差し指を入れると同時に小指を曲げて、どちらかというと手のひら側を上向き加減でカップを持ち上げる人は、小指側を中心に動作を行っている人です。
体の中心部ライン・外側部ライン

 これは以前にも記しましたが、からだを“中心”と“外側”に分けて考えた時、手では小指側が中心で、下半身では親指側が中心になります。つまり手の親指側と足の小趾側は外側です。“中心がしっかりしていると外側の動作がスムーズになる”と考えますと、中心部分をしっかりさせることが楽に動作するためのコツになります。
 からだの筋肉は必ず連動して作用するという特徴がありますが、その一つに拮抗関係があります。それは一方の筋肉が収縮する時は必ず他方の筋肉が弛緩伸張するという筋肉のシステムです。手の小指を曲げて小指球を収縮させますと母指球がゆるんで親指や人差し指側の筋肉が解放されるような感覚が得られます。親指と人差し指を曲げて母指球を収縮させると小指球がゆるんで小指、薬指、中指が解放されます。そして解放された指が自由に動けるようになります。ですから手首を柔らかくして太鼓を叩く、箸を使う、ペンを使うためには親指と人差し指が自由に動けるように小指球を収縮させる必要があるということになります。
 バトンを持って走るとき、落とすまいとして親指や人差し指に力を入れてギュッと握りしめてしまうと速く走ることはできません。そして自分の思いとは反対にバトンを落としやすくなってしまいます。走る姿が、“肩に力が入っている”ように見える人は、きっとこのような人でしょう。
 小指を中心に中指・薬指・小指の3指でバトンを握るようにしますと、手首や肩から力が抜けて脚が上がり速く走ることができます。

 感覚的には“小指でつかむ”、“小指で握る”というのが自然な在り方です。例えば皿を持ち上げて自分の方に引き寄せようとした時、実際には親指と人差し指で皿の縁をつまんで持ち上げるのですが、この時に小指を曲げて小指球を収縮させていないと皿が不安定になってしまい中の物を落としそうになります。食器を洗うとき、小指を伸ばしたままの状態で洗っていますと腕や肩がとても疲れます。肩こりの原因です。そしてこのような人はけっこう多いようです。手指を器用に動かして細かい作業をすのは親指と人差し指の役割ですが、つかんだものを安定させるのは小指の働きです。そう考えますと、あまり大した役割はしていないように見えてしまう小指が、実は非常に重要な働きをしていると言うことができます。
 つい親指と人差し指に力をいれて作業をしてしまう人は、その癖を直すために小指を曲げてから物をつかみ上げるような練習をするのが良いかもしれません。
 
小指と小指球を使う練習_カップ

肘から先が内側に捻れている人が多い
 ベッドに仰向けで寝たとき、からだの横に置いた手はどのようになっていますでしょうか。手の甲がすっかり上を向いた状態が楽であれば、それは肘から手にかけて内側に捻れている歪みの状態です。手のひらがすっかり上を向いた状態が楽であるという人はあまりいないかもしれませんが、少し手のひらが開き気味の状態であれば問題はありません。

手の使い方と腕の捻れ

 パソコンのキーボードで作業する姿勢は手の甲が上を向いた状態ですので、パソコン作業の多い人は肘から先(前腕)が内側に捻れている可能性が高いです。また、先に説明したように字を書くときに親指と人差し指にたくさん力を入れて筆圧が強くなってしまう人も前腕が内側に捻れています。それ以外にも、実際、前腕が内側に捻れている人がたくさんいます。
 からだの仕組みとして、前腕が内側に捻れているときは上腕(肘から肩にかけての骨)が外側に捻れます。自分で前腕を内側に捻ろうとしてもこうはなりませんが、骨格が歪んでいる場合はこのようになっています。そしてこのような人は肩関節に違和感や問題を抱えていることが多いです。四十肩や五十肩がなかなか治らない理由の一つでもあります。

 そして前腕が内側に捻れている状態では、小指側を中心(軸)に手を使うことはできません。からだの仕組み上、手の小指側を中心に動作ができないということは足の親指側つまり下半身の内側を中心に動作をできないということですから、からだの力は外側に流れてしまいます。これを体型的に表現しますと、脇が開いて肘が張り、肩が前に出て猫背になり、骨盤が開いてお尻が下がり、O脚またはガニ股になりやすく、足の小指が捻れてマメができ外反母趾になりやすい、となります。スマートさからはかけ離れてしまいます。
 ほとんどの事務作業がパソコンになっている今日の社会では、私たちのからだはこうなりやすいという現実があります。だからといって対策方法がないわけではありません。手首や前腕の内側への捻れを改善することが対処方法ですが、そのための一番単純で簡単な方法は、小指側の筋肉(小指球)を収縮させる訓練を行うことです。
 
小指球の収縮と母指球の解放

小指球の収縮

 例えば仰向けに寝た状態で手の甲が上になっている人は、親指と人差し指軽く延ばした状態で力を抜いてジワーッと小指球を収縮させるように小指を曲げます(この時手首を曲げてしまう人がいますが、そうならないように注意してください)。それと同時に母指球から力が抜け親指と人差し指が解放されていく感覚を味わいます。次第に前腕の筋肉も伸びて肘が楽になると思います。この動作を10回くらい繰り返しますと次第に手の甲が横を向き出し、甲を上にして寝ていることに違和感を感じるようになるはずです。前腕の捻れが少し改善された状態です。そして下半身や背中を観察しますと、背中から力が抜けて背骨自体の存在感が増し、下半身が伸びてリラックスできる状態になっているのではないでしょうか。
 手の小指側の筋肉がしっかりすることによってからだの中心部の筋肉がしっかりするため背骨がしっかりします。ですから背骨の存在感が増し、からだの芯を感じやすくなります。

 今、“もっと楽に効率よく歩ける”ようになるために、からだを整えるとともに歩き方の練習をしている人がいます。この方の癖は、ついつい首肩に力が入ってしまい動作の中心がからだの上の方になってしまうことです。ちょっとだけ歩く分にはいいのですが、長く歩いていると呼吸が上がってしまい、腰やお尻が痛くなってしまいます。この方の前腕は内側に捻れていて肩関節に痛みがあります。
 この方には、前述した小指球を収縮させる練習と、座った状態で背骨と背筋だけに集中して力を集める練習をいていただき、その後で歩いてもらいました。すると首肩から力がすっかり抜けて、しかし背筋はしっかりと伸び、うつむき加減だった視線がしっかりと前を向くような歩き方に変わりました。外から見ますと背が高くなったように感じますし、本人の印象としては「視界が高くなった」となりました。
 からだの中心に力が集中するようにしただけです。それも施術ではなく、自分の意識の向け方を変え、簡単な練習をしただけです。とても単純なことですが、この練習を毎日、それが自分の自然な状態になるまで根気強く行っていただければ、この問題は施術の必要がなく解決してしまうことでしょう。

 ある若い学生が「腕の外側の筋肉が痛くて‥‥」と訴えてこられたので、私は“手の親指側~肩の外側にかけての筋肉”の問題だと予想しました。ところが話を聞きますと、それは小指側の筋肉~肘の内側にかけての問題でした。この方は常に脇が開き、肘が張って腕が内側に捻れている状態なので、この方の意識では私が内側だと考えている方が外側になっていたのです。
 先にも記しましたが、腕が内側に捻れる問題、それに付随して起こる猫背、O脚、外反母趾や体調不良の問題は隠れた現代病であるとも言えます。本来の自然なからだの在り方には反しています。スマホやパソコンが大きなウエイトを占める今日の社会生活ではこういった方々が増えてしまうのでしょう。

 手の使い方が不自然でも、腱鞘炎やバネ指以外で直接的に手指や手首に不調が現れることは少ないかもしれません。ですからほとんどの人は普段、手の使い方については何も気にしていないと思います。ところが実際には手指の使い方の問題で腰痛や膝痛の原因になっていたり、ここで説明しましたように体型のくずれから首肩の張り、むくみ、体調不良の原因になっていることもあります。たかが“手の使い方一つの問題”と受け取られるかもしれませんが、施術において何かの症状を改善するときの最後の決め手になるのは手指の問題であったりします。
 字を書き続けると手が疲れたり、箸がうまく使えなかったり、食器洗いが苦手だったりする人は手指に問題があったり、手の使い方に問題がある可能性が高いと思います。
 からだに不調のある方は、どうぞご自分の手の使い方について検証してみてください。

 以前に、大学の陸上競技部に所属する走り幅跳びの選手が来店されました。反対咬合気味で、「地面を蹴るとき、どうも蹴り足がしっかりしない。反対咬合が影響しているかもしれないと思って‥‥。」ということでした。当時、4年生で最後の競技会に臨むに際して反対咬合を直したいという目的での来店でした。

 からだを見ますと、案の上、左の足首はグラグラしていました。これではしっかりした蹴り出しはできません。
 反対咬合と左足首のぐらつきが関係するのかどうか判断するために、反対咬合に対する施術から入りました。それほどの反対咬合ではなかったので、初回の施術で咬合は正しくなりました。左足首を確認しますと、最初よりはぐらつき感は改善されたものの、”カチッとした”しっかりした状態にはなりませんでした。
 そこでもう一度顔に戻って筋肉の状態を確認していきますと、左側咬筋のちょうど下顎のエラに近いところがゆるんでいました。ここは食物を(牛が草を噛むように) モグモグと噛むとき、キュッキュッと縮んで力こぶができるところです。この人は左側でモグモグと噛んでいないことがわかりました。
 そこで本人に右側ばかりで噛んでいる“片噛み癖”を指摘し、改善するようにアドバイスしました。また、試しに「左側のエラのところ、そこに力こぶができるようキュッと噛んでみて」とやってもらいますと、左側の足首がしっかりしました。
 この人は反対咬合が影響して地面をしっかり蹴ることができないのではなく、左側で噛んでいないため左足首や左足に力が入りきらない状態にある、ということがわかりました。そこで両方の奥歯でよく噛むことをアドバイスするとともに、マグレインという小さな粒があるのですが、それを「左側のエラのところに貼って幅跳びの練習をしてみて」と言いました。
 再度来店された時に蹴り足の具合を確認しますと、「バッチリです! すごいですね、この粒」と言っていました。競技会にはマグレインを貼って臨むと言っていました。
 
噛みしめと正しい咀嚼の咬筋

 噛むことと噛みしめることは違います。咬筋でいいますと、モグモグと噛むとき、上記の通りエラ(下顎角)の近くの部分に噛む度に力こぶができます。それがとても大切だと思います。ガムを噛むのは、どちらかというとクチャクチャに近いですから力こぶはできません。噛みながらしゃべっている人はクチャクチャと噛んでいる人ですから、たくさん噛んでいるからといって咬筋をしっかりさせていくことにはつながりません。その違いはとても大切です。
 また、噛みしめるとき力が入るのは咬筋の上の方、耳周辺部になりますのでそれはよくありません。食事でモグモグと噛む動作は筋肉を縮めたり伸ばしたりすることなので、筋肉は鍛えられます。噛みしめる動作は持続的に筋肉に刺激を入れ続けることなので、こわばりをつくってしまいます。つまり噛むことは筋肉をしっかりさせ、噛みしめることや歯ぎしりは筋肉をこわばらせてしまう傾向があるという違いがあります。からだに与える影響という意味で、この差は大きいです。
 しかし噛むことが大切だからといって、硬いものをたくさん噛むのも弊害が出ます。スルメや硬い煎餅などの食べすぎは、そしゃく筋に負担をかけることにつながりますので、こわばりをつくってしまいますし顎関節にも負担をかけてしまいます。

 さて、そしゃく筋は全身筋肉の司令塔のような役割をしているということを幾度となく取り上げていますが、今回は咬筋がゆるんでいると足に力が伝わりきれない状態になってしまうという例を挙げました。
 マグレインというのは1㎜くらいの小さな金属の粒を絆創膏で皮膚に貼り付けるものです(インターネットで検索できます)。ツボを刺激するという意味で使っている治療家が多いのかもしれませんが、私は筋肉や筋膜のゆるんでいるところを補ってしっかりさせるために使っています。ギックリ腰や過去のギックリ腰などで骨盤の筋膜が損傷していて筋力が発揮できなかったり、骨盤が歪んでいる場合などに使うことが多いのです。小さな粒ですが、普通の人からするとビックリするような変化がもたらされると感じられると思います。
 今回のケースではゆるんでいる咬筋の部分にポチョッと1つ貼っただけで足首がしっかりしました。ギックリ腰の場合は損傷部分の皮膚(仙骨・尾骨周辺が多い)に貼るだけで、それまで歩くこともままならなかったものが、普通に歩けるようになったりします。筋肉、筋膜、皮膚の不思議さが感じられる現象ですが、とても役に立つものです。

 今回はそしゃく筋のからだに対する役割が以下に大切かという一例を挙げましたが、かつて私が子供の頃、小学校の給食時間に先生が何度も何度も言っていた「一口30回、しっかり噛んで食べなさい」という言葉の大切さが本当にありがたい教育だったと思えます。
 冷え症、手汗、活力が出ない、姿勢が保てない、集中力が持続しない等々、今の私たち(特に気になるのは若い人たち)に多く見られる症状の大元は、もしかしたら単に“噛んでいない”ことからもたらされている可能性もあると思います。私たちの内に内在しているエネルギーを発揮するためにもよく噛んで食べて欲しいと思います。

 それぞれの人がいろんな癖を持っていて、普段の姿勢もまちまちです。寝ているときの姿勢、座っているときの姿勢、立っているときの姿勢、歩いている時の姿勢、これらがすべて理想的な状態の人は限りなくゼロに近いと思います。
 今回は立っているときや歩く動作に直接的に関わる重心の問題について取り上げてみます。
 私たちの体はとても精妙にできていて、動作の重心がどこにあるかによって体が効率よく働けたり、あるいは反対に効率悪く不具合を起こす方向に進んでしまったりすることがあります。また重心の位置はスタイルの善し悪しにも影響しますので、スマートな体型や動作を維持したいと考えている人は参考にしてください。

“かかと体重”の悪影響
 立った時に足のかかとに重心が乗っている状態を“かかと体重”などと呼んだりしますが、この状態が体や動作に直接及ぼす影響を挙げてみます。
①かかとが痛くなりやすい
 当然と云えば当然のことですが、かかと体重の人はいつもかかとに負担がかかっていますので、時折かかとの筋肉や筋膜が耐えられなくなり痛みを発します。朝起きた直後の第一歩でかかとがつけなくなるという場合、寝ている間の血行不良が原因の一つですが、かかと重心によるかかとの疲労がベースとしてあるのかもしれません。

②歩いても前に進みづらいので、歩くと疲れやすくなる
 かかとに重心があるということは、背中側から何かの力によって後に引っ張られている状態であると考えることもできます。歩く動作は前に進む動作ですが、常に後に引っ張られる力が働いているため、向かい風の中を歩くように体はスムーズに前に進むことができません。足腰の筋肉は余計な負担を強いられますので疲労しやすくなります。また呼吸も荒くなりますので、歩き続けていると息が上がってしまうので途中で休みたくなったりします。
骨盤底
骨盤後面

③骨盤底が硬くなり、お尻が下がる
 骨盤の下部(底)には肛門や生殖器がありますが、その部分を骨盤底といいます。骨盤底は強靱な筋肉(骨盤底筋)と結合組織でできた膜ですが、それによって骨盤内臓物が下に落ちないように支えています。骨盤底筋の働きが加齢やその他の理由で衰えたり弱くなったりしますと、失禁や生殖器系の不調や不具合が生じる原因になると考えられます。また反対に骨盤底筋がこわばって硬くなりますと体全体の筋肉の伸びが悪くなり、腰痛をはじめ様々な不具合の基礎的要因になると云えます。乳幼児は全身がとても柔らかいですが、骨盤底筋にたいへん柔軟性があるので股関節を大きく使うことができるのが特徴的ですし、その延長線上で全身の筋肉が柔軟性に富んでいます。
 加齢にともない骨盤底筋は柔軟性を失う傾向にあります。学生達の動作はしなやかですが、30代、40代、50代と年代が進むにつれ体つきも動作もしなやかさを欠いていきます。それは単に太っただけではなく、筋肉の微妙な柔軟性と働きが失われていくため、体つきにゴツゴツ感が感じられるようになったり、動作がロボットの動きに近づくような感じになったりするからです。ですから、いつまでもしなやかな状態でいたいと望むのであれば、骨盤底筋の強さと柔軟性を維持するようにすべきだと私は考えます。
 そして、骨盤底筋はかかとの結合組織と連動する関係にあります。つまり骨盤底筋がこわばるとかかともこわばって硬くなり、反対に、かかとがこわばって硬くなると骨盤底筋も硬くなってしまいます。かかと体重の人は立っているだけで常にかかとに力が入っている状態ですので、当然かかとはこわばり、連動して骨盤底筋も硬くなってしまいます。
 
 骨盤底筋は前方(腹側)では恥骨、股関節では腰骨(腸骨)下部の座骨結節、背側では尾骨とつながっている膜ですから、骨盤底筋がこわばりますと恥骨、座骨結節、尾骨の間隔が狭くなります。つまりお尻がすぼまった状態になります。尾骨と一体化している仙骨は下方に引っ張られますのでお尻は下がってしまいます。若い頃はお尻も上がって脚が長く見えたのに、加齢とともにお尻が垂れ気味になり脚が短くなったように感じるのは骨盤底筋が硬くなったからかもしれません。

④動作が鈍くなる
 私たちの体は何かの動作をするとき、そのために一端バランスを整えてから動作に移るようにできています。例えば椅子から立ち上がるときは、最初に頭を前に出して(=首を下に向けて)上体を前傾させてからお尻を座面から浮かすようにして重心を膝に移してから立ち上がります。強い腰痛になって首を下に向けることができなくなると、重心の移動ができなくなりますので、どんなに脚や膝に力があったとしても椅子からスムーズに立ち上がることができなくなります。肘掛けなどに手をついて、手の力で上体を押しだし重心を膝に乗せてからでないと立ち上がることができません。
 同様にあらゆる動作は重心を移動する過程を経過しないと行うことができませんが、重心の位置が理想に近いところにある人は動作のための重心移動がとても素速くできます。しかし、かかとに重心のある人は一端ニュートラルな位置に重心を戻すという過程を踏んでから必要な動作のための重心移動を行なわなければならないので手間と時間がかかってしまいます。この様子を遠くから眺めますと、“どこか無駄な動きが多い”と映ってしまいます。他人から注意などされて自分では動作を素速くしようと試みても、体がそのように動いてくれないので歯がゆく感じてしまうかもしれません。

⑤推進力が生まれない‥‥仙骨の後傾
 脚の速い人は、走り出すとどんどん前に進んでいきます。走り方も軽やかで、それほど力を入れて走っているように見えなくても他者より先に進んでしまいます。それは前に前にと重心を移動させる推進力に豊んでいるからです。歩くことも同様です。一生懸命力を入れて歩いている自分を横目に、すいすい軽やかに追い越していってしまう人がいますが、その人も推進力が豊かな人です。この違いは骨格的に見ると仙骨の傾き方に原因があります。仙骨が前傾している人は重心を前に移動させることが得意ですが、仙骨が後に傾いている人は重心を前に移動させることが苦手な体であると云えます。
 さらに、仙骨が前に傾き加減の時は自然と背筋が伸びますが、仙骨が後傾している人は自然と背中が丸まってしまいますので、猫背気味の体型になります。歩いている時や座っているときの自分の背中が丸くなっていて姿勢が悪いと感じたときに、仙骨を前に傾けるだけで自然と背筋が伸びますのでこのことが理解できると思います。
 さて、かかと重心の人は③に記したとおり尾骨と一緒に仙骨も下がりますので、仙骨が後傾した状態です。つまり、かかと重心の人は推進力に乏しい体になっていると云うことができます。そして、体の推進力と心理的な“やる気”は同調するようですので、“体がどうもかったるくて、やる気も出てこない”と感じているときは、仙骨の状態を整えるために、かかと重心の体を修正してみるのも一つの方法だと思います。

⑥その他
 上記以外に、ガニ股やO脚になりやすい、ふくらはぎの後側がいつも張ってしまう、骨盤の上部が拡がってしまう(→太る原因になりやすいとの見解もあります)などのマイナス面があります。

かかと重心になってしまう原因と対策
 骨盤が後に傾いていることが、かかと重心の直接的な原因であると思われます。骨盤は左右の腰骨(腸骨)と中央の仙骨・尾骨と前方の恥骨を合わせたものですから、腸骨が後傾しても、あるいは仙骨が後傾してもかかと重心になってしまいます。ですから、かかと重心を改善するためには骨盤が正しい状態に戻るように体を修正する必要があります。そして、これまで施術してきた経験で云いますと、後頭部から首のつけ根にかけての筋肉や筋膜がゆるんだ状態を修正することによってかかと重心が改善される場合が多くあります。立っているときに首の後側に手のひらを当てると次第に重心が前方に動いたり、歩いている時に首の後側に手のひらを当てると歩き方が軽快になり脚がどんどん前に進んでいくように感じるのであれば、それは首の後側に問題があってかかと重心になっているということです。
 過去のムチウチやケガ、頚椎の歪み、あるいは下半身の問題で首の後面がゆるみ、仙骨が下がっていることはよくあることです。私自身の場合、立った時に右脚の重心はちゃんとしているのですが、左側が少しかかと重心になっています。普通に歩いている分には何の問題もありませんが、少し長い時間を歩き続けますと左の膝から下が棒のようになってしまう感じになります。私は仕事がらか、あるいは過去の問題か、右側の第2肋骨が外側に歪んでいます。それによって首の筋肉(後斜角筋)がこわばり、第6頚椎が右側にずれています。それが原因となって首の後面が少しゆるんでいます。ですから、歩きながら第2肋骨を少し内側に押し込みますと歩き方が軽快になります。

 また、骨盤底筋が硬くてかかと重心になっている場合、セルフケアとしては相撲取りが四股を踏んで股を大きく開き骨盤底を伸ばす恰好をしますが、それを真似るとか、和式便器で用をたす恰好のようなことをするなどして骨盤底のストレッチを行うことは有効です。
 私は施術で骨盤底をゆるめるときには直接骨盤底筋を指圧してゆるめる場合もあれば、骨盤底筋と連動しているかかとを揉みほぐすこともあります。かかとの底面は丈夫にできていますので表層部分はかなり強く揉んでも痛みを感じませんが、かかとがこわばっている人の深部はコリコリと硬くなっていて、それを揉みほぐしているうちにかなり強い痛みを感じるようになります。その痛みが軽減するまで揉みほぐすことがポイントです。
 骨盤底筋のこわばりが改善してきますと、お尻の底部がゆるんで拡がったようになります。反対に骨盤の上部は引き締まってしっかりした感じになります。

 その他には腹筋がゆるんでいる影響でかかと重心になっていることや、足の指先が硬く丸まっているためにかかと重心になっていることなどもあります。
 
かかと体重
 
 かかと重心の人でも、お腹を前に突き出すことによって重心を前方に移して立ったり歩いたりすることは可能です。つまり意図的にかかと重心を矯正することはできます。しかし、それは不自然な状態であり、体のどこかに力を入れている状態ですので疲れが溜まってしまいます。あくまでも自然な状態で立った時に、自ずと重心が足首の前方辺りにあって、かかとが微かに浮き気味になっている状態になることが本当の矯正です。

 呼吸に関連した項目でも“重心の位置”について記しましたが、私たちの体が効率よく順調に働ける状態であるためには、“重心”はとても重要です。ご自分が“かかと重心”だと感じる人は是非、重心の位置が正しくなるように体を整えてみてください。それだけで体が軽快に動けるようになると思います。

 現在77歳の母が「昔、おばあちゃんがいた頃、階段を上り下りするのにドタンドタンと大きな音をたてていて、もっと静かに歩けないのかな? と思っていたけど、気づいたら私も音がうるさくなってきた。」と私に話しました。
 高齢者になると筋力が衰え動作の微調整が苦手になるので、静かに歩いたり座ったりすることができにくくなってしまいます。また、年齢に関係なく筋肉の働きが悪くなると同様です。階段を上り下りするときバタンバタンとしてしまったり、歩くときパタパタと音をたててしまうようなときは、筋肉の働きが悪いと考えられます。

肘を曲げる動作

 さて、筋肉は収縮することによって四肢や体を曲げたり伸ばしたり捻ったりするわけですが、一つの筋肉が働く(収縮する)とき必ずその働きに拮抗する筋肉がその動作を補助する仕組みになっています。たとえば肘を曲げる動作では上腕二頭筋を収縮させるわけですが、反対側にある上腕三頭筋が同時に伸びなければ肘を曲げることはできません。この上腕二頭筋の収縮と上腕三頭筋の伸張の絶妙なバランスによって肘は自分の意志に従ってスムーズに曲げることが可能になります。素速く曲げる時には上腕三頭筋がサッと伸びて上腕二頭筋の収縮を助けます。反対にゆっくりジワーッと曲げる時には上腕三頭筋もまたジワーッと伸びて上腕二頭筋の働きを助けます。そしてこのジワーッと伸びることが筋肉の状態を見極める上でとても大切なポイントになります。
 ジワーッと伸びるということは、単に伸びるだけでなく、“緊張(収縮)を保ちながら伸びる”あるいは“伸びながら収縮する”というようなことを筋肉が行っているということです。

階段を降りる_中間広筋

 階段を降りる動作で見たとき、たとえば右足を下の段に着く場合、左膝が曲がるわけですが、そのためには左太もも前面の筋肉(主に大腿四頭筋の中の中間広筋)が体を支えながら伸びる必要があります。この筋肉の働きが良ければ、右足が下の段に着く寸前までじっくりと左膝を曲げた状態を保つことができます。しかし働きが悪ければ、それができませんので左膝がカクッと折れたようになり、思わず右足をパタッとさせて着地するようになってしまいます。こういう状態では、タッタッタッタッと音をたてながら階段を素速く降りることはできますが、静かにゆっくり降りることはできなくなってしまいます。
 歩く動作でも同様です。私は歩き方や下半身の筋肉状態を確かめるとき「音を立てずに歩いてみてください」とやってもらいます。皆さん、そんなことは簡単にできると思っています。ところが音を立てずに、静かにそーっと歩ける人はそれほど多くありません。 誰にも気づかれないように歩く“忍び足”、それは筋肉の働きとバランスが整っていないとできないものなのです。

 加齢によって筋肉の働きが弱くなる、あるいは年齢に関係なく筋肉の状態が正常ではない、そんなときは音を立てずに動作することはとても難しいことです。テーブルに物を置く動作、洗い物をする動作などでも同様です。“静かに”、“そーっと”ができないのです。
 ですから家族や同僚の誰かに対して「動作の一つ一つがうるさい」と感じてイライラしたりするのではなく、「ああ、筋肉の働きが悪いんだね」と同情の思いを抱い方がストレスにもなりませんし、「筋肉をしっかりさせるにはどうしたらよいのだろうか?」というような前向きな考えに結びつくと思います。

 一般に子供達や若者達は体つきもしなやかで動作もしなやかですが、歳をとると体型も動作もしなやかさを失いロボットに近づくような感じになっていきます。それは筋肉自体の柔らかさが失われていくという避けがたい要因もありますが、筋肉の働きが悪くなっているという側面もあります。そして筋肉の働きが悪いというのは、筋力が弱いというのとは少し違います。筋力が弱くてもしっかり働ける状態であれば、ゆったりしなやかに動作することはできます。反対にジムなどでトレーニングをして筋肉モリモリになったとしても、筋肉が上手く働くことのできない状態になると、ゆったりしなやかに動作することができなくなってしまいます。
 打撲をしたり捻挫をすると筋肉は働けなくなりますが、そのごく小さいバージョンが体の中にいくつも点在していることを想像してみてください。外見的には丈夫そうに見えても、実は体を効率よくしなやかに動かすことができません。こうなりますと「意識的に力を入れないと動作ができない」「いつも力んでいるよう」というような状態になってしまいます。そしてこんな状態を修正し、筋肉が効率よく働けるように調整するのが「体を整える」という整体の本来の意味であると私は考えています。
 まだそれほど歳でもないのに、動作の一つ一つに音を立ててしまったり、階段の上り下りがドタドタしたり、足元の物を動かすのについ足を使ってしまったりするようならば、それは働きが悪い筋肉がけっこうたくさんあるということかもしれません。トレーニングをするより先に、筋肉がしっかり働ける状態になるよう調整した方が良いと思います。

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