ゆめとわのblog

ホームページとは違った、より臨場感のある情報をお届けしたいと思っています。 また、テーマも整体の枠を飛び出してみたいと思います。 ホームページは以下です。 http://yumetowa.com/ お問い合わせはメッセージ欄でお送りください。

2018年04月

 花粉症の時期も終盤にさしかかりましたが、この時期(春先)は季節的な要因で胸に変化が起こりやすくなっています。
 花粉症に関係するからだの変化としては、胸(胸骨)が下がり、それに合わせて鼻(鼻骨)も下がってしまうことがあります。東洋医学では「鼻は肺の煙突」と表現されるほど、鼻と肺にはとても深い関係性があるとされています。アレルギー性の症状として鼻炎(花粉症)と気管支喘息がありますが、ともに肺と関係があると考えますと、肺―胸―胸腺―免疫という一連の関係性が浮かび上がってきます。そして実際、胸骨や胸郭を整えますと鼻骨が上がり、鼻の通りが良くなることがあります。

 花粉症の人も、そうでない人も、多くの人が春先は胸が下がり鼻が下がるわけですが、それは季節的な要因であり、季節の変わり目の影響であり、三寒四温など自然現象による“からだの変化”と捉えるのが妥当かもしれません。
 そして胸骨が下がるだけでなく、胸の筋肉(大胸筋と小胸筋)がこわばって胸郭が狭くり、肋骨の動きが悪くなっている人がたくさんいます。これらの変化は動悸や息切れ(浅い呼吸)などの症状をもたらすかもしれません。

“肋骨の帯”のように働く二つの後鋸筋
 さて、「胃の調子が冴えず、背中に辛さを感じる」という症状の原因の一つとして、背中の筋肉が張っていて肋骨の動きが制限されているというのがあります。これまでの投稿で、背中の辛さや痛みについて、肩甲骨の内側、胃の裏側、肋骨下部など場所別に説明してきましたが、今回はそれらに加えての説明になります。
 背中の深いところに後鋸筋(こうきょきん)と呼ばれる筋肉があります。肩~肩甲骨辺りの深部に上後鋸筋(じょうこうきょきん)があり、肋骨の下部に下後鋸筋(かこうきょきん)があって胸郭の背面を支える働きをしています。学問的には、その働きは「肋骨(胸郭)を上下に動かし、呼吸を補助する」とされていますが、実際は胸郭の上部と下部を“帯で縛る”ようにして安定させたり、動きを制限したりしているのではないかと私は感じています。

上後鋸筋と大胸筋(だいきょうきん)の関係
 強い肩こりや背中のこりを持っている人は左右の肩甲骨の間が盛り上がったように硬くなっている場合があります。肩甲骨周りには表層から僧帽筋(そうぼうきん)、菱形筋(りょうけいきん=大菱形筋と小菱形筋)という筋肉がありますが、通常の肩こりや背中のハリでは、この二つの筋肉が施術の対象となります。しかし、その奥が硬くなっていて指圧しても、揉みほぐしてもなかなかコリが解消しない場合があります。「難治性の肩こり」と表現している施術者もいるようですが、その筋肉が上後鋸筋です。

僧帽筋・広背筋・菱形筋・下後鋸筋

後鋸筋と脊柱起立筋

 この筋肉が硬く盛り上がっている人の多くは胸郭の厚みが増していますが、それは上後鋸筋のこわばりが肋骨を背骨の方に引きつけているからだと考えられます。
 からだの個性として、「胸板の厚い人」「丸っこい胴体の人」「胸が平たく薄い人」「鳩胸の人」「お腹は出ているのに胸は薄い人」等々、いろいろなタイプの人がいます。こういった個性が本来的なものか、それとも胸の変化による一時的なものかを判断しなければなりませんが、胸はいろいろな要素によって刻々変化します。そして、その変化をもたらすのは肋骨に関係する筋肉になるわけですが、上後鋸筋はその一つです。

大胸筋と小胸筋

 胸の骨格である胸郭は前面中央にあります胸骨と肋骨と背面中央にあります背骨(胸椎)でできています。胸部(前面)には大胸筋という力強い筋肉があります。大胸筋は鎖骨と胸骨と肋骨など胸郭前面の骨と腕のつけ根(上腕骨大結節稜)を繋いでいますので、胸骨や鎖骨が変化することで大胸筋の状態が変わったり、あるいは大胸筋の状態によって胸郭の状態が変わったりします。
 そしてこの時期(春先)は大胸筋がこわばっている人が大変多くなるのですが、それによって胸郭の前面が狭くなり、息苦しさや動悸などを招いてしまうことがあります。私の感覚では、このような状態の人の胸は「内側に落ち込んでいる」と感じます。
 両腕も肩のつけ根のところで内側に入り込んでいたり(内旋)、あるいは腕のつけ根の辺り(大胸筋停止部=上腕骨大結節稜)を強めに触ると痛みを感じたりしますが、それは大胸筋がこわばっているからです。

上後鋸筋のこわばり

 「春先は胸骨が下がり、胸郭が内側に落ち込んでいる人がたくさんいる」というのが私の率直な印象です。そして「背中や首のつけ根辺りにツッパリ感を感じる」という人も多くいます。
 そして、この背面上部の突っ張りは上後鋸筋のこわばりによるものだと考えられます。
 胸郭の前面にある大胸筋のこわばりによって肋骨が胸骨の方に引きつけられますが、それは胸骨が相対的に落ち込んだようになるのと同時に、肋骨が内向きに回旋しますので背面では背骨から肋骨が離れるような状態になります。それを阻止しようと上後鋸筋は収縮するわけですが、この状態が常態化して上後鋸筋の慢性的なこわばり状態を招くと考えることができます。

 そして、このこわばり状態が「すっきりしない背中の上部」「帯で締められたような感じ」「呼吸で息が深く入いらない」「仰向けで寝ると首のつけ根から背中にかけて嫌な感じがする」などといった症状をもたらすことになります。
 「強情な肩こりや背中のこり」だと思って、道具を使って一生懸命叩いてみたり、誰かに揉んでもらったりしても、一時的に解放されて気持ち良くなったと感じるかもしれませんが、スッキリ解決することはほとんどないと思います。なぜなら原因の多くは胸の前面にあるからです。

 さて、大胸筋や胸骨の問題で上後鋸筋がこわばっている場合の対処方法について考えてみます。
 繰り返しになりますが、この季節は誰もが、胸の状態が程度の差こそあれおかしくなります。胸はいろいろな事象に反応して変化しやすい部位です。季節の移り変わりを感じますし、精神的なことでももちろん変化します。そして「変化する」というのは、具体的には骨格の形が変化するということですが、それを行うのは筋肉であり、筋膜です。ですから、筋肉と筋膜を整えることで対応することができると考えることができます。
 実際、大胸筋のこわばっている人がたくさんいます。大胸筋は鎖骨の下から腕にかけての広い部分にありますが、その部分を少し強めにマッサージすると痛みを感じると思います。特に腕の近く、腋の下の部分は筋線維が集まっていますので、かなり痛く感じると思います。
 その痛みが軽減するまでマッサージしたり、筋束を掴んでゆるめたりしていただきたいと思います。そうしますと次第に胸が解放されるような感じになり、実際に胸が広がるわけですが、同時に背面の上後鋸筋のこわばりも改善しますので、呼吸が楽になるなどの変化が現れると思います。

大胸筋へのセルフケア

 また普段の顎の使い方として、顎先に力を入れて口を動かしている人も多くいますが、そういう人は顎先(オトガイ)から顎ラインに掛けて硬くなっています。オトガイが梅干しのようになっている人は確実にこの状態だと言えます。このような人は、指圧などでこれらの硬さを解消しますと、胸のこわばりも解消しやすくなり、セルフケアが効果的になると思います。

下後鋸筋のこわばりは背骨を整える
 肋骨の下部には「腹部の帯」のような感じの下後鋸筋があります。解剖学的には息を吐くときに働く呼吸筋、あるいは呼吸補助筋として取り扱われていますが、それよりも上後鋸筋同様、肋骨を安定させる意味合いの方が強いと思います。
 時々「背中の下の方が辛い」と訴える人がおりますが、下後鋸筋のある肋骨下部には腎臓があります。からだに疲れが溜まると腎臓が腫れてしまう人が少なからずおりますので、まずこの部位の「ハリ感」や「辛さ」は下後鋸筋のこわばりによるものか、腎臓の膨大によるものかを識別しなければなりません。
 その上で、下後鋸筋のこわばりによって「背中の下部が張って辛い」「寝ていても背中が反っているように感じる」などの場合は、背骨(下位胸椎と腰椎)を整えることが解決策だと私は考えています。

下後鋸筋のこわばり

 下後鋸筋がこわばっている人の多くは、腰部の背骨が「真っ直ぐ棒のような感じ」です。背骨は椎骨(頚椎7個、胸椎12個、腰椎5個)が椎間板をクッションにして連結してできていますので柔軟性があり、普通は一つ一つの椎骨を触り分けることができます。ところが時々、椎骨間が詰まっていて一本の棒のように感じることがあります。「背骨に余裕がない」と私は思ってしまうのですが、腰部の背骨がそのような状態の人は大抵、下後鋸筋がこわばっています。
 腰部の椎骨に関係する筋肉には大腰筋(だいようきん)と腰方形筋(ようほうけいきん)があります。背骨全体にわたって脊柱起立筋(せきちゅうきりつきん)は関係しますが、下後鋸筋の変調に関係するという意味では、大腰筋と腰方形筋に着目すべきではないかと私は考えています。
 そして腰方形筋は殿部の中殿筋(ちゅうでんきん)と連動しますので、中殿筋が硬くこわばってしまいますと腰方形筋もこわばり腰椎が詰まった感じになります。あるいは、中殿筋の働きが悪くなりますと、太股の骨(大腿骨大転子)が下がってしまうので、大腰筋が緊張して張ってしまい、腰部の背骨に余裕がなくなり、下後鋸筋がこわばって「お腹に帯が巻かれている」ように感じたりすることがあります。そして、実際はこちらの方が多いかもしれません。

 下後鋸筋のこわばりに対しては、脊椎、大腰筋、中殿筋、腰方形筋などの専門的な知識を要しますので、一口にセルフケアを説明することはできません。
 下後鋸筋がこわばっていたとしても、「腹部が帯で巻かれているように感じる」とか、「仰向けで寝ると反っているようで落ち着かない」といった程度の不快感を感じる症状ですから「大きな問題ではない」とも言えます。ですから、実際は無視している人がたくさんいると思います。気になる人は専門家へ相談されることをお勧めします。

足つぼ・整体 ゆめとわ
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 この地球上における“生物”あるいは”生命体”という見方をしたとき、私たち人類は脊椎動物であり、その中の哺乳動物であるということになります。脳の発達に伴って精神性が最も進化しているだろうとされている私たちは、地球上で最も進化した存在でありますが、肉体的には脊椎動物の中の哺乳動物であるという制限を日々強いられています。ですから肉体的な面で「からだの健康」を考えるときに最も基礎となるのは、“脊椎動物”、“哺乳動物”というキーワードであると言うことができます。

 おそらくほとんどの人が、カゼをひいたり健康を害して病気になったとして、病気の治癒について、あるいは健康の維持について考えたとしても、自分たちが実は脊椎動物であり、哺乳動物であるという視点から考えることはないことでしょう。現代医学においても、あるいは長い年月伝承されてきた伝統医学の分野においても、学術的な理論として考察されることはあっても、実際にそれを臨床の現場で有効に活かして治療にあたっているということはほとんどないと思います。
 ところが、実際に整体の分野で私たちのからだを眺めますと、私たちが実は脊椎動物であり、哺乳動物であるということがとても重要になってきます。それは、からだの機能の根本的なシステムが、脊椎動物として、哺乳動物として厳然と存在しているからです。

 ところで生物界は植物界と動物界に分けられますが、一番の違いは栄養摂取の方法です。植物は大地に根を生やし、大地からの養分と水分、空気中の窒素などを材料に太陽光線によって光合成を行い、自らの栄養として生長します。一方、動物は光合成を行うことができませんから、栄養を食物として口から摂取しなければなりません。食物を追い求めて移動するために手足を持っているわけですし、嗅覚・視覚・聴覚・触覚・味覚という感覚と感覚器官(鼻・目・耳・皮膚・舌)もまた、その根本的な必要性は「食物を追い求めるためである」と言えると思います。

 地球上の生命はおよそ38億年前の太古の海で誕生したと考えられていますが、5億年ほど前に脊椎動物が誕生したとされています。そして今から2億年ほど前に哺乳動物が脊椎動物の進化の形態として誕生したとされています。
 脊椎動物は単純に表現すれば背骨をもった動物ということになりますが、脊椎動物ではないものにはカニや昆虫があります。彼らは背骨という内骨格を持たず皮膚(殻)に相当する部分を硬くして自分の形を維持しています。ですから「大きくなることができない」という制限があります。大きくなると自分の皮膚(殻)の重さでつぶれてしまうからです。
 一方、骨格として背骨をからだの内部に持つように進化した脊椎動物は大きくなることができるようになりました。さらに、骨格に支えられているので強い筋肉をもって素速く動くことができるようになりました。海の中を縦横無尽に素速く動く魚を連想していただければ、カニの動きよりはよほど俊敏であることがわかります。その理由は筋肉の発達の違いによるものであると言えます。

 ところで脊椎動物の第一の革命は、歯と顎を持ったことだと言われています。それまでは、口はあったものの歯がなかったので海中のプランクトンなど小生物を流れに任せて口の中に流し込むだけの捕食でしたが、歯と顎を持ったことによって、より積極的に獲物を捕らえることができるようになりました。大きな魚が小さな魚をガブッと噛みついて捕らえる光景が生まれました。
 脊椎動物の第二の革命は、海からの上陸に関連する大きな変革です。
 まず呼吸が変わりました。それまでは水の中に含まれている酸素を海水ごと口の中に取り込み、エラ(鰓)で酸素を取り出し、不要な水はエラ孔から外に出すというエラ呼吸でしたが、陸上の世界では水中呼吸に対応するエラは役に立ちません。そこで空気呼吸に対応するために肺を持ち、肺呼吸を行うための筋肉(首から胸腹部)が発達しました。さらに、陸上では重力が水中の6倍にもなりますので、血圧を上げなければ血液が循環しなくなってしまいます。そこで血圧を上げるための仕組み、すなわち心臓を中心とする循環系が発達しました。その他にも重力に負けない骨格をつくるために、それまでは骨といっても軟骨だったものが硬い骨に変わりました。さらに陸上を移動する必要性が、ヒレを手足に進化させていきました。この上陸による大きな変容・進化のためにおよそ1億年の年月がかかったと考えられています。

 そして、哺乳動物に進化する第三の革命では、“そしゃく”するシステムを獲得したことが大きな変化です。
 私たちは食事に際して、食物を口の中で噛み砕き、唾液と混ぜてこねりながら柔らかい食塊にして食道~胃へと送り込みます。それをそしゃく(咀嚼)と嚥下と言いますが、それは私たちにとっては“ごく普通のこと”です。私たちと同じ哺乳動物である牛や馬も草を口の中でモグモグとそしゃくしています。ところが爬虫類である、例えばヘビは、獲物をそしゃくすることはありません。丸呑みです。ワニにしても、あの恐ろしい歯でかみ切ることはあっても、モグモグそしゃくすることはありません。

 哺乳動物というのは「乳を吸う動物」という意味でもあるわけですが、生まれたばかりで目も見えないうちであっても子は母親の乳首に吸いついて一心に乳を吸います。乳を吸うためには唇を使って口をすぼめなくてはなりません。また、舌も上手に使わなくてはなりません。頬の筋肉も上手く使わなくてはなりません。ですから哺乳動物は唇をもち、舌が細かく微妙に動き、頬を巧みに操れる顔を持つようになりました。さらに、歯も切歯・犬歯・臼歯の三種類を持つのが特徴です。そして私たち人間は臼歯が一番多いのですが、それは米や麦や雑穀などを奥歯と舌と頬を使ってこねるようにしてそしゃくするのに適応するためだと考えることができます。肉食である犬、猫、ライオンなどと、穀物を主食とする私たちとは歯の構成が異なるのはこのような理由であると考えることができます。

 また、私たち人間が他の動物たちと一番異なる点のひとつは言葉を話すことです。そのために人間は脳の働きが優れていて知性が発達しているということになりますが、それに加えて舌と頬と唇と顎を巧みに使えるようになっていると言えます。
 ですから、私たちのからだについて考えるとき、この口周辺を中心とした“顔の機能と在り方”は非常に重要なポイントであると言うことができます。

 以上、大雑把に脊椎動物~哺乳動物~人間までの流れを見てきましたが、機能と形態とは表裏の関係で、切っても切れない関係であるという見方があります。それは機能に適するように形態が変化するという意味でもあります。思考し、言葉を語り、手を自由に動かして行為をするのが、他の動物にはない私たち人間の機能の大きな特徴です。ですからこの機能に適するように哺乳動物から今日の私たちまで形態を変化・変革させてきたのが人類の進化であるとも言えます。
 重力に対抗して二足歩行ができるようになったことで手を自由に動かせるよう解放しました。知性を発達させ、考えるための大きな脳を入れるのに適した頭蓋骨を持つようになりました。言葉を話し、いろいろな物を食べられるように舌と唇と頬と顎を自在に微妙に使えるようになりました。
 これらを反対から考えますと、歩くこと、考えること、そしてそしゃくを中心とした口周りの機能を使い続けること、これらが私たち人間の機能を健全に保つための要であると言えるのではないでしょうか。

 特にそしゃくに関していえば、ほんの少し前(数十年前)まで「一口30回噛みましょう」と大人達や学校の先生は子供たちに指導していました。ところが、今では医療の現場でさえ、そしゃくについては軽視されているように感じます。実際、整体の現場では、そしゃく筋がゆるんでいたり、偏りがあることが原因でからだに不調を訴える人がたくさんいます。そのような人たちは、まず”よく噛む”ことから始めなければなりません。「早食い」はまったく良くありません。

 “呼吸”と“循環”と“栄養の消化吸収”と“不要物の排出”が生命維持の要です。これらの機能を象徴する肺・心臓・小腸・肝臓・腎臓‥‥といった、いわゆる五臓六腑は、動物が脊椎動物に進化する以前は、細かく分化していたわけではなく、一つの腸が全てを担当していたということです。腸の中に全ての機能が含まれていて、その中心はエラ呼吸の場所にあったと考えられています。
 つまり私たちのからだで言えば、顔~喉にかけてが中心であり、頭部が骨盤部と分かれて前方に伸びる(頭進)ことによって胴体(体幹)ができ、内臓の臓器や器官がそこに効率良く配置されたということです。
 頭と顔の骨のことを頭蓋骨と言いますが、解剖学的に顔の骨のことを内臓頭蓋と表現することがあります。つまり顔は内臓が表に露出したものであるということを示唆する表現です。胃腸の調子が悪いと顔色がさえない、ということからも顔の色艶や表情には自然と内臓の状態が反映されます。それは発生学的に顔が内臓(腸)の延長線上であるからです。さらに顔には心の状態や精神(脳の働き)の状態も重なるようにして反映されますので、顔をよく観察することで肉体的なことだけでなく、いろいろな情報を読み取ることができるのでしょう。
 このように顔~喉にかけてはとても重要なところですから、化粧や美容などによって容姿を整えれば「それで良い」というものではありません。顔は全身機能の要であるという観点で考えることが、本当はとても重要なことだと言えます。

そしゃくは命の要
 太古の昔、エラ呼吸を行うエラの筋肉の運動リズムが、その生命体のリズムでした。そしてそのリズムは海の寄せては返す波のリズムと同調しており、地球の、そして自然界のリズムと同調したものであると言ってもよいのかもしれません。
 つまり、自然界のリズムに則って腸の蠕動運動のリズムがもたらされ、そのリズムに合わせてエラが動いていたので、呼吸や血液循環のリズムも自ずと自然界のリズムに同調していたということになります。
 そのエラ呼吸の要であるエラ孔は太古の魚には6個ありました。それぞれのエラ孔には筋肉と軟骨が付属しているのですが、進化とともに、耳とその機能器官、扁桃腺、胸腺、副甲状腺、肺、そしゃく筋、顔面表情筋、嚥下筋、発声筋などに変化していきました。
 現在、私たちの顔にあります表情筋やそしゃく筋は、自然界のリズムに支配されていたエラ呼吸の頃の筋肉(内臓平滑筋)とは違って、自分の意思によって動かすことができる筋肉に変わっています。肺を中心にした呼吸運動もある程度意思でコントロールすることが可能なシステムに変わっています。ということは反面、自然界のリズムに“お任せ”しておけば良いというものではなくなってしまったということです。意図的にコントロールしなければからだのリズムに支障をきたすようになってしまうということです。
 私たちは食べ物を食べるとき、食物を口の中に入れてモグモグとそしゃくし、それが飲み込んでも大丈夫な状態になった後、ゴクンと飲み込んで食道~胃に送ります。この一連の動作では、そしゃく筋と嚥下筋が連動するわけですが、それ以外にも唾液腺から唾液が分泌され、頬の筋肉や舌が協働して働きます。唾液には酵素が含まれていて食物を分解する働きをするわけですが、それ以外にも発ガン物質の毒性を抑える働きがあることもわかってきています。この強い味方の唾液をたくさん分泌するためには、そしゃく筋を働かせなければなりません。たくさん噛めば噛むほど唾液が分泌されるのです。余談ですが、中国漢方の教えに、活力の「活」という字は「舌」が「水」を伴っている状態だというのがあります。舌が常に湿った状態、つまり、舌が唾液で潤っている状態が「活」であり、唾液の分泌は健康にとても重要だと考えられています。

 そしゃく筋には四つの筋肉があります。主に顎を上下に動かす咬筋(こうきん)と側頭筋(そくとうきん)。下顎を前後左右に動かす働きをする内側翼突筋(ないそくよくとつきん)、外側翼突筋(がいそくよくとつきん)です。私たちの奥歯は臼歯で、穀物をすりつぶすのに役立つ臼の形になっています。そして、このすりつぶす動作に翼突筋が深く関与します。つまり穀物を主食として食べるようなシステムに、歯もなっていますし、筋肉も用意されているということです。反対から考えますと、穀物を食べなければそしゃく筋はバランスを失い、筋力不足になってしまう可能性が高くなるということです。
 かつてのエラ呼吸に関係する腺や筋肉や軟骨が、今日の私たちの扁桃腺、胸腺、副甲状腺、肺の機能、表情筋、そしゃく筋、嚥下筋、発声筋、耳の機能などになっているわけですから、これらの働きは当然連動しますし、腸の蠕動運動、すなわち内臓の働きに影響を与えると考えることができます。
 「連動する」ということは、影響し合うということであり、どれか一つが駄目になると他のものにも不具合が生じるということです。あるいは、どこかに不調があったとしても、連動の仕組みを利用して不調を改善させる可能性があるということです。
 そして、これらの中で私たちが意図的にコントロールできるものは、そしゃくと呼吸と発声です。ですから健康法や芸や武術(スポーツ)などの分野で“正しい呼吸”が上達のための鍵であるといわれているわけですし、歌を歌って発声筋を動かすことが健康のために良いことだと考えられています。そして同様に、そしゃく筋をよく使うこと、つまり穀物をよく噛んで食べることも健康のためにはとても重要なことです。

 現在は、「一口30回噛みなさい」と指導する声は聞こえなくなってしまったかもしれません。そして噛むことは面倒で時間もかかるという考え方の上に、「飲む栄養」「かじる栄養」「ゼリーの様な栄養」が市販されているのかもしれません。「早食い」が要求されるほど時間に追われている私たちの社会、“食物さえ、栄養さえ、バランス良く摂っていれば大丈夫だ”とみんなが思い込んでいるのかもしれません。
 しかし原点を振り返って、私たちのからだは脊椎動物であり哺乳動物である、ということに着目しますと、“そしゃく”がこの肉体にとって“とても大切である”という結論が導き出されます。
 現に整体の現場では、そしゃく筋がゆるんでいること、あるいは片噛みの癖や噛みしめの癖によって顔が歪み、その歪みがからだにつながり、不具合になっていることがとてもたくさんあります。“噛めば解決してしまう”ということもたくさんあります。呼吸を整えることがあらゆる面での基礎であると同様に、そしゃく筋を鍛えることも健康のための必要条件であり基礎です。そのように意識を変えて、日々の食事の時間を大切に過ごしていただきたいと思います。

足つぼ・整体 ゆめとわ
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 椎骨動脈は頚椎の横突起の中を通って頚部を上り脳の中に入って行きますが、頚椎2番、頚椎1番、後頭骨の関係にズレが生じていますと流れが悪くなり、脳幹や小脳への血流量が減る可能性が考えられる、ということは前回の投稿で申し上げました。
 そして、現代社会環境で暮らす私たちは“下向き加減”の生活を強いられていますので、頭部が頚部に対して前にずれている可能性が高く、それが椎骨動脈の流れを悪くしている大きな要因になっている可能性があると申し上げました。
 実際、猫背気味で首が前にでている人が多いのですが、その姿勢では前に出ている首を支えるために頚長筋(けいちょうきん)が常に作動している状態になっています。つまり頚長筋がこわばっています。そしてこれは肩こりの人がよく指摘される“ストレートネック”の原因でもあります。

環椎後頭関節とその動きに関わる筋肉

 椎骨動脈の流れを考えたときに、最も注目すべき部位は頚椎1番(環椎)と後頭骨との関節である環椎後頭関節です。ここで後頭骨が環椎に対して前方にずれますと椎骨動脈に余計なテンションが掛かりますので椎骨動脈の流れが悪化する可能性があると以前にも記しました。そして、このずれを生じさせる原因の一つとして頭長筋のこわばりが考えられます。

頚長筋と頭長筋のこわばりは後頭下筋群のこわばりにつながる
 ここで、頚長筋と頭長筋のこわばった状況をイメージしてみます。

首が前に出た状態の後頭下筋群、舌骨下筋群、頚長筋、頭長筋

 頚長筋のこわばっている人は首が前にでている人で、その状態で読書や勉強や事務処理などで視線を落とし、顎を少し引いて下向き加減の状態を続けますと頭長筋もこわばります。さらにその状態を保ったまま顎を上げて前方を向きますと、後頭部と頚椎の境(環椎後頭関節)を中心に頭を上げることになりますので、後頭下筋群を使って前を向く姿勢を築いていることになります。
 例えば書類を見ながらその内容をパソコンに入力する作業で、書類をキーボードの手前に置き、背もたれにもたれながら(猫背の姿勢)前方にある画面と書類とを見比べながら作業を続けていたとします。この状態では首が前に出ている状態を保つために頚長筋は常に収縮しています。そして頭を上下させるのは頭長筋と後頭下筋群ですので、どちらの筋肉もこわばります。そして後頭下筋群がこわばりますと首の後側の筋肉(背中から繋がる背筋や脊柱起立筋群)は猫背による影響も加わりゆるんでしまいます。すると首を支えるために頚長筋にはさらなる負担がかかりますので、頚長筋のこわばりはとても強くなってしまいます。

頚椎7を中心に首を動かす

 頚椎は7個あります。本来上を向いたり下を向いたりする動作の支点であり起点となるのは頚椎7番と胸椎1番との関節です。「首のつけ根が動いて首が上下に動く」といった感じが本来の姿であり、そのように動作できていれば背筋が使われますので、背中はしっかりし、座っていても骨盤が立ってきて姿勢が自然と良くなります。頚長筋のこわばりも弛むようになりますので、背が高くなり視線が高くなる印象になると思います。硬くこわばっていた後頭下筋群の状態も良くなり、後頭部の頭痛が改善するかもしれません。

頚長筋と頭長筋のケア
 さて、多くの人の頚長筋と頭長筋はこわばっていると思いますが、それをケアする方法について説明させていただきます。

頚部前面と椎前筋2

 頚長筋も頭長筋も一番深部にある筋肉です。その前面には気道(気管)や喉、食道、そして幾つかの骨格筋がありますのでアプローチがけっこう難しく、触り馴れるまでは正確に捉えることができないかもしれません。またケアを始めたばかりの頃は、気管やその周辺の筋肉も硬くなっていますので、スムーズに手が奥に入っていきません。そのことを承知された上で、最初から「バッチリ決めよう!」とは思わずにケアを行ってください。ケアを行っている間に、少しずつ筋肉や組織が柔らかくなっていきますので、次第に手が深いところに入っていき、目的である頚長筋をと捉えることができるようになります。

 注意事項としては、
①必ず頚動脈を避けてください。
 そのためには、最初に頚動脈がどこにあるのかを確認してください。頚動脈はしっかり脈を打っていますので、その位置は把握しやすいはずです。目的である頚長筋は頚動脈よりも中心寄り、気道(気管)の方にあります。

②強い力で押さないようにしてください。
 気道と、その裏にある食道やその周辺の組織は敏感ですので傷つけないように注意する必要があります。
 要領がつかめないうちは、なかなか手が奥の方に入っていきませんから、ついつい力が入ってしまうかもしれません。そうならないように十分に注意してください。

頚長筋のこわばりを改善するケア
 頚長筋の下部は胸椎3番になりますので鎖骨より下にあります。しかし、そこには手が届きませんので先ずは鎖骨のところ辺りからケアを始めます。

頚長筋へのセルフケア

 鎖骨の上縁の深部を指先で軽く圧しながら中央部(胸骨)から外側にゆっくり辿っていきますと頚動脈の搏動にぶつかります。そこに頚動脈があり、それは垂直に上方に進んでいます。そこは圧しないように確認します。頚動脈より指1本分内側に気道の縁があります。そして気道の裏側に食道と関係する組織があります。目的の頚長筋はその更に奥にありますので、先ずは母指以外の四指の指先を使って気道と食道に関係する組織をグイッと反対側に動かして、決してそれらを圧しないように避けます。

 気道と食道とその周辺の組織を避けた状態で、そのまま四指の指先を少し奥に差し込んでいきますと搏動を感じると思います。それは頚動脈ではなく椎骨動脈の搏動です。椎骨動脈は頚椎の横突起の中を通っていますが、頚長筋の本体はその更に内側、椎体の方にありますので指先を差し込んだままの状態で更に四指を中央の方に移動しますと硬く緊張した頚長筋にぶつかります。こわばりの強い人はかなり痛みを感じるかもしれません。

 頚長筋に指先が当たっていることが確信できましたら、少し圧を増して筋肉を上方に引き上げるようにしてしばらくのあいだ圧を加え続けます。多少椎骨動脈の脈動を感じると思いますが、それはそれほど気にしなくても大丈夫です。
 はじめのうちは、硬い筋肉を圧したときの痛みが強かったかもしれませんが、次第に痛みが弱くなり、少し気持ち良さを感じるようになると思います。
 そうなりましたら、場所を少しずつ上方にずらしていき、同じようにケアを行いします。すると内臓が動き出してお腹が鳴り出したり、目の見え方変わってきたりという変化が現れると思います。椎骨動脈の流れが良くなり、脳神経の働きに変化が現れた現象です。

 ここで注意しなければならないことは、鎖骨近辺から始め、上方にケアするポイントをずらしていきますと胸鎖乳突筋にぶつかりますので、それを避けなければならないことです。胸鎖乳突筋もお構いなしに圧してしまいますと頚長筋を捉えられなくなるばかりでなく、胸鎖乳突筋を傷つける可能性もありますので、上手に避けてください。

頭長筋のこわばりを改善するケア
 頭長筋へのケアは頭部と頚部の関係を改善するためのポイントとなります。ほとんどの人の頭長筋は、程度の差こそあれこわばっていると思います。
 頭長筋は頚長筋の上部にありますが、周囲には胸鎖乳突筋、顎二腹筋、茎突舌骨筋といった骨格筋や咽頭関係の組織がありますのでなかなか直に探り当てることは難しい筋肉です。

頭長筋へのセルフケア

 耳の下部の後頭部側には大きな突起(乳様突起)がありますが、そこと下顎のエラとの間に頚椎1番の横突起があります。その辺りに深めに指先を入れた状態で、軽くうなずいてみます。この時に収縮する筋肉が頭長筋ですが、エラのすぐ後あたりを更に強めに指を入れていきますと、硬く張っていて、うなずく動作に合わせて収縮する頭長筋の筋線維を探り当てることができると思います。けっこう痛みを感じる人も多いのではないかと思いますが、頭長筋へのケアはその張っている筋線維をゆるめることです。
 ゆるめ方は筋線維に指先で圧力をかけたままの状態で少し上方へ引き上げるようにします。筋線維が硬いうちはかなりの痛みを伴うと思いますが、躊躇せずに思い切って上方へ引き伸ばすように持続的に圧をかけ続けることがポイントです。決してグイグイ押したり、揉むようにしたりしないでください。筋線維を傷める危険性があります。
 痛みをこらえながら持続圧を続けていますと、頭長筋が少しずつゆるみだし、頭部と頚部の関係が改善し始めます。すると脳神経の働きが良くなり始めますので、視界が明るくなり目が開くようになったり、迷走神経の働きが良くなって内臓が反応し始めたりする変化が現れると思います。頬のタルミも改善し、フェイスラインがシャープになったりします。
 こういった変化は圧をゆるめると消えてしまったり、あるいは長持ちしなかったりするかもしれません。それは長年頭長筋をこわばらせてきたので、頭長筋が形状記憶のような状態になっているのだと思われます。「ゆるめてもすぐに元の張った状態に戻ってしまう」、「次の朝には元の状態に戻ってしまう」などという状態から始まるかもしれませんが、何日間かケアを続けますと良い状態が長持ちするようになると思います。


 今回取り上げました頭長筋と頚長筋のケアは実際のところ、「簡単にできる」というものではありません。
 現在整体の勉強会に参加されているメンバーに、“筋肉を正確に捉える”訓練の一環として上記の内容を練習してもらっていますが、なかなか上手くできないようです。ですから、技術的には“高度な手技”の部類に入るかもしれません。
 このことをご理解の上、最初から「上手にこなして結果を求めよう」ということにこだわらず、「何度かやっているうちに何となく上手くできるようになってきた」というスタンスで取り組んでいただければと思います。
 くれぐれも組織や筋肉を強く押しすぎて傷めることのないように注意してください。  
 

足つぼ・整体 ゆめとわ
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