以前に椎骨動脈(ついこつどうみゃく)の流れについて取り上げました。首と頭の位置関係が悪くなると椎骨動脈の流れが悪くなり、脳幹や小脳の働きに影響がでる、といった内容でした。
 その後も観察を続けてきましたが、今はハッキリ「頭の位置が悪くなると脳神経の働きが鈍くなる」と言うことができます。「脳神経」という言葉の響きは「脳神経外科=脳の病気」というものを連想させますので、単なる整体師である私が口にするのは「不適切」と受け取られるかもしれませんが、それでもやはり脳神経のことなので、そう言わざるを得ません。

 ”頬のたるみ”を整えることは美容であり、エステティシャンや美容整形が取り扱う分野だと思われている人が多いと思います。ところが、頬の筋肉は顔面神経の働きによって機能していますので、顔面神経の働きが鈍くなりますと頬のたるみは取れません。エステティシャンの施術やいろんな美容機器を駆使して一時的にたるみが改善されたとしても、長持ちはしません。(素肌のハリなど皮膚に関することは顔面神経ではないのですが、たるみは表情筋のゆるみであり、顔面神経に関係します。)
 寝ているのに瞼がしっかり閉じきれない人がけっこういます。これは眼を閉じる眼輪筋の働きが中途半端な状態です。まばたきの多い人、ドライアイの人もこの傾向にあると思われます。これらの症状に対してネット上では「眼輪筋トレーニング」なるものが推奨されているようですが、眼輪筋トレーニングで目元がおかしくなった人を知っていますので、是非気をつけていただきたいと思います。そして、そんなトレーニングなどしなくても頭の位置を修正すれば何の苦労もすることなく症状は消えてしまうと私は考えています。

脳幹の働きに影響を与える脳底動脈
椎骨動脈の走行

 この写真は以前にも掲載しましたが、頚椎に沿って上り、頭蓋骨の中に入る左右の椎骨動脈の走行ラインを示しています。頭蓋骨に入った左右の椎骨動脈は合して一本になり、脳底動脈という名称に変わります。

椎骨動脈の流れ

 脳幹は生命維持に重要な機能の中枢部があるほか、感覚神経、運動神経の通路になっている大切なところです。そして、そこに血液を供給しているのが脳底動脈です。例えば椎骨動脈が狭窄したり閉塞したりして脳底動脈への血流が途絶えますと、脳梗塞を起こして脳幹の機能が麻痺してしまうこともあります。そこまでいかなくても、脳底動脈の流れが悪くなりますと脳幹への栄養が不十分になりますので、脳幹の機能が低下することが考えられます。
 そして、今回取り上げますのはそんな状態についてです。

脳神経の主な働きと椎骨動脈の流れの関係

脳神経

 脳神経は12対ありますが、上図に示されています通り、鼻(臭い)、耳(聴覚)、眼(視覚と眼球の運動)、口と顎(そしゃく運動と歯の知覚)、舌、顔の表情と知覚、平衡感覚の中枢的(神経核となっている)な役割をしています。さらに、迷走神経は副交感神経系として内臓の働きをコントロールし、副神経は胸鎖乳突筋と僧帽筋をコントロールして首と肩の運動に影響を与えています。

 ここで話は飛びますが、神経と血流の関係について考えてみます。例えば長い時間正座をしますと膝や足首の周りがしびれて辛くなりますが、さらにそのまま座り続けていますと感覚がとても鈍くなります。この現象は膝を曲げ続け、ふくらはぎを圧迫し続けたことによって膝から下への血流量が乏しくなったのか、あるいは神経が圧迫され続けたことによってもたらされたと考えることができます。
 つまり神経に酸素と栄養を供給する血流が乏しくなったことで神経が半ば麻痺状態になったのか、あるいは神経管が圧迫されて神経伝達が異常な状態になったと考えられます。

 ①神経を養っている血流が途絶えたので神経が麻痺状態のようになった
 ②神経管が圧迫されたことで、その中で行われる神経伝達が上手くいかなくなった

 正座を止めて膝を伸ばしますと、あの何とも言えない神経の反応現象を経験しますが、やがて麻痺状態だった神経は本来の状態に戻ります。
 ですから、長時間の正座という一時的な状況のために神経の働きが悪くなったわけですが、その一時的な状況が本来の状態に戻れば神経の働きは正常になりますので「神経が損傷したとか病的な状態になった」ということではありません。

 “脳神経”という言葉の響きは恐怖や不安を抱かす可能性が高いので、「脳神経の働きが鈍っている可能性がある」という説明は、実は私もしたくありません。しかし、そういう言葉がやはり適当だと思うのです。
 「MRIの検査では何処にも異常はないと診断された」と反論されることがありますが、確かに神経(神経管)にも血管にも異常はないことでしょう。ただ血管の中を流れている血液の量が正常な状態より乏しくなっているので、神経の働きが80%とか、70%とか(数値は知りませんが)の状態になっているのではないかと推察できるだけです。それは上記の正座によるしびれと同様の原理です。
 そしてその状況は眼の働きを弱め、表情筋の働きも弱めるので、頬がたるみ、口角が下がり、眼がしっかり閉じないのでドライアイになり、耳の過敏症(音が気になる)や「立つとふらついたりフワフワする」(平衡感覚や小脳の働き)といった症状となって現れるのだと思います。
 そうであるならば、ドライアイの目薬は効き目が実感できず、フェイシャルマッサージも効果が持続せず、平衡感覚の薬もそれほど効果が感じられない、という状態になってしまうのだと思います。

”下向きかげん”が多いことが血流に影響
 以前にも説明したことですが、頭部と頚部(首)との境には後頭骨と頚椎1番(環椎)の関節(環椎後頭関節)があります。そしてこの関節は前後にスライドできる仕組みになっています。これによって私たちは首を固定された状態でも、少しだけなら頭を前後に動かすことができます。私たちが軽くうなずく時、この関節でスライドが起こっているわけですが、その動きを起こす筋肉は、頚椎の前面では頭長筋であり、後面では後頭下筋群です。

環椎後頭関節とその動きに関わる筋肉

 現在の私たちの日常生活では、スマホやパソコンを見たり、新聞や本を読んだり、学生や受験生は勉強ばかりしていたりと下向き加減で過ごす時間が大変増えています。このことは頭長筋や頚長筋、そして首前面の筋肉(舌骨下筋群)を収縮し続けている時間が長いということですので、多くの人のそれらの筋肉がこわばっている可能性が高いと考えることができます。

頚部前面と椎前筋

・頭長筋と頚長筋
 私たちの首の前面には喉仏がありますが、喉を含めて空気の通る気管とそのすぐ後側に食物の通る食道があります。そしてその奥(裏側)に頚椎があって、頭長筋と頚長筋はそこにあります。ですから「奥に手を突っ込まないと触ることができない」筋肉が頭長筋であり、頚長筋です。
 この辺りには頚動脈がありますし、咽頭の働きに関係するデリケートな筋肉もありますので、慎重の上に慎重に触れていかなければならないのですが、頭長筋、頚長筋に手が届きますと少し痛みを感じます(こわばっていますので)。持続的に圧(指圧)をかけ続けていますと痛みからイタキモ(痛気持ちよい)にかわり、やがて痛みも柔らでいきます。そして同時に、眼の働き、顔のハリ、他の感覚器官の働きが良くなるのを感じることができると思います。椎骨動脈の流れが良くなり、脳幹への血液供給量が増えたからだと考えることができます。

・舌骨下筋群(胸骨舌骨筋、胸骨甲状筋、甲状舌骨筋)
 首の前面には軟骨でできている気管がありますが、その途中にはいわゆる「喉仏(のどぼとけ)」と呼ばれる喉頭隆起があり、その上部に舌骨があります。胸から舌骨に繋がっている筋肉を総称して舌骨下筋群(ぜっこつかきんぐん)と呼びますが、これらの筋肉がこわばりますと舌骨を引き下げますので、下顎も下方に引っ張られ顔は下向き加減になります。
 舌骨下筋群のこわばりによる下向き状態だけで椎骨動脈の流れに影響が及ぶかどうかは定かではありませんが、顔の下向き加減を修正して視線が高くなるようにするためには頭長筋、頚長筋のこわばりを解消するだけでなく、舌骨下筋群のこわばりも解消する必要があります。
 また、頭長筋と頚長筋のこわばりを解消したとしても、舌骨下筋群のこわばりが解消されなければ下向き加減の状態は変わりませんので、頭長筋がこわばりやすい状態が残されてしまうと考えることができます。  

脳神経の働きを高めると改善すること
 眼、鼻、耳、舌、顔面の皮膚感覚、平衡感覚に関係する症状は椎骨動脈の流れを良くすることで改善する可能性がたくさんあると思います。但し、頭蓋骨の歪みやその他の要素でこれらの働きが悪くなっていることもありますので、そちらも修正しなければなりません。
 それ以外に、第11脳神経の副神経は僧帽筋と胸鎖乳突筋の支配神経ですから、この神経の働きが悪くなりますと肩甲骨が下がり、鎖骨や胸骨が下がるという状態になります。首が他の人に比べて長く見える可能性が考えられますし、いわゆる「なで肩」はこの影響もあるのかもしれません。僧帽筋の働きが悪くなりますと、肩に荷を背負うことが苦手になります。リュックや肩掛けカバンは辛く感じると思いますし、極端な人では、コートやジャンパーなどを羽織るだけで瞼が重くなり眼の開け方が悪くなったりすることもあります。
 第10脳神経の迷走神経は自律神経の副交感神経系として内臓の働きに関わっています。「動悸がして、胃腸の働きが悪い」などと聞きますと「迷走神経の働きが悪い?」などと連想してしまいます。
 ピロリ菌を除去しても、胃薬を飲んでも「胃の状態がなかなか改善しない」思われている人は、脳神経の働きを高めることを試してみるのも良いのではないでしょうか。

頭のふらつき、フワフワ感‥‥小脳の働き?
 椎骨動脈は脳底動脈になりますが、その後、小脳や後頭葉に血液を供給する動脈となります。「めまいとは違うんだけれど、立つと頭がふらついてフワフワ感もある」という症状を訴える人がいます。
 立ちくらみや起立性の貧血症状は低血圧などの理由で脳への血液供給が遅れたしまったときなどに起こると思いますが、それとも違って、頭と足との連係にズレが生じてしまうように感じてしまうような症状もあります。
 小脳の脳梗塞を経験した人に聞きますと、失調と呼ばれる症状として、眼から入る情報と足から入る情報の処理がうまく噛み合わなくて、ふらついたりフワフワしたりするような状態になることもあるようです。洗濯物を干すために下を向いたり上を向いたりする動作が繰り返されるとフラフラになってしまったり、自転車を乗ることができなくなったり、立った状態でただ足元を見るだけでもフワッとした感じになったりするようです。

 脳梗塞を患ったわけでもないのに、同じような症状を訴える人が何人か来店されています。年齢的には中高年から高齢者になります。年齢的なこともあり、「血液や血圧や心臓や脳に問題があるのかもしれない?」といろいろ検査されていますが、決定的な診断はなされないようです。ですから本質的な治療は行われないようで「どうしてよいやら?」と、困った状態で日々を過ごしているのが実態です。
 私はこの「ふらつき症状」に関して確たる根拠を持っているというわけではありませんので、自ら積極的に「やってみましょう」と施術を行うことはしていませんが、頭長筋、頚長筋を整える施術を行いますと改善傾向が見られます。2~3度の施術ですっかり良くなってしまった人もおりますし、その時は良くなったように思えても何日か経つと症状が戻ってしまう人もおります。
 これらの違いについては観察と考察を続けて原因を探し出す必要がありますが、これまでの経験で申し上げれば、原因がよくわからないとされるフラフラ感やフワフワ感に対して、頭部と頚部の関係を整えることで明らかに改善の傾向は見られます。ですから医学的にも知っていただき、医療の現場での治療法の一つとして取り入れていただきたいと願うものです。

ライフスタイルの変化の中で
 今から150年前に明治維新があり、文明化の流れが始まりました。それまで庶民のほとんどは毎日肉体労働をしていて、遠くの山並みを眺めたり、遠くの水平線を眺めたりしながら暮らしていたと思われます。それから少しずつ文明化の流れが生活の中に入ってきましたが、戦後の工業化社会になるまではさほど生活様式に変化がなかったのかもしれません。ところがこの数十年で文明が高度に発達し、学歴社会が到来して新聞や書物に接する時間が増えました。現在は誰もがスマホを持ち、会社ではパソコン画面を見ている時間が増え、私たちの多くが毎日何時間も視線を落とした下向き加減の生活をするようになりました。山並みを眺めたり水平線を眺めたり、つまり視線を高くして伸び伸びと生活する姿は皆無に等しくなりました。この生活様式の変化は、私たちの筋肉の使い方に確実に変化をもたらしています。
 運動不足を解消して健康なからだを維持するためにジムに通ったり、ヨガをやったりと、皆自分のやり方で努力をしています。それはそれで良いことであります。ところが、からだの使い方として根本的なところに問題がありますと、いろいろな努力も効果が半減してしまいます。私は、今回取り上げた頭部と頚部の関係における椎骨動脈の血流の在り方は、私たちの感覚器官に直接関わってくるところですので、非常に大切なことだと考えます。
 この現代社会において、どのようなライフスタイルで暮らし、どのようなセルフケアを行えば良いのか? そういった研究は地味ではありますが、きっと多くの人の役に立つと思います。

 脳神経が本来の能力を十分に発揮でない状態だとするなら、それだけで「なんとなく冴えない」などと感じると思います。そしてそれは、やがて不調や不快感に発展していくと思います。
 ですから、心ある研究者が現れて、医学的、科学的見地からこのことに関して研究が進み、一般の人にも広く知識と情報が広まることを望みます。

 (次回は、頭長筋と頚長筋に対するセルフケアなどについて取り上げます。)


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