現在、パソコンを操作することが日常の業務になっている人がたくさんいますが、そういう人たちに共通して必ずおかしくなっている筋肉があります。腕の肘から手首にかけてを専門用語で「前腕」と呼びますが、前腕を内側に捻る働きをする円回内筋(えんかいないきん)がそれです。パソコンでキーボードを叩く動作、ピアノを弾く動作、字を書く動作では、肘を下ろして手の甲を上に向けますが、その動作を専門用語では「回内」と呼びます。一日の長い時間をパソコン操作で使っている人、ピアノを何時間も引いている人、勉強で何時間もペンを握っている人は、円回内筋を使い続けていますので、この筋肉が強くこわばっています。ベッド仰向けで寝たとき、自然と手の甲が上になってしまう人はこういう人です。
 加えてパソコンではマウスを頻繁に使いますが、すると人差し指(示指)と親指(母指)の筋肉が知らず知らずのうちにこわばった状態になります。そしてこれらの筋肉のこわばりがいろいろと悪影響を及ぼしますが、それについて説明させていただきます。

円回内筋のこわばりは肩関節を不安定にし顎を硬くする

円回内筋のこわばり

 骨格の仕組みとして、前腕が内側に捻れる(回内)と上腕が外側に捻れる(外旋)という連動性があります。座った状態ではよくわからないのですが、仰向けで寝た状態の時、円回内筋がこわばって手の甲が上を向いている人の肩関節では、腕(上腕)が少し垂れ下がって外に開いたような状態になっています。肩関節が不安定な状態です。これによって上腕二頭筋(長頭)がこわばりますので、腕(上腕)を前面から掴むと筋肉がピンと張っていて痛みを感じるかもしれません。また、この肩関節の不安定さは首や顔に緊張感をもたらしますので、顎関節にも自ずと力が入ってしまい、少し噛みしめた状態になってしまいます。
 今、もしパソコンを使っているのであれば、例えば左手の掌を下に向けた状態(回内位)にしたまま右手で左顎関節や左首筋を触りますとなんとなく緊張を感じると思います。その右手を当てたままの状態で、左掌を外側に回し少し上を向けるように動かしますと、顎関節や首筋の緊張感が弱まりゆるむ感じがすると思いますが、いかがでしょう? (回しすぎて掌がすっかり上を向くような状態になりますと別の緊張がもたらされると思います。)この現象は、肩関節が不安定になると顎関節や首筋の筋肉がこわばってしまうことを意味します。(他の理由で元々肩関節が不安定な人は、変化を感じることができないと思います。)

 ですから、仕事でたくさんパソコンを使っている人、勉強をしたりしてたくさん字を書いている人、ピアノの練習をたくさんしている人などは、円回内筋がこわばるので肩関節が不安定になり、首や顔や顎に力が入りやすい傾向がある、ということになります。

 このような人に対しての施術では、時間を掛けて円回内筋のこわばりをゆるめる施術を行いますが、それだけでもからだの緊張感がかなり軽減するのがわかります。文明は急速に発達し便利さは飛躍的に増しましたが、からだには不自然な負荷がかかようになり、それはストレスであり、いらぬ緊張をもたらす弊害があることが、こういった事実を取り上げることで明になります。

円回内筋の「こ」とストレッチ

 ご自分で対処するセルフケアとしましては、円回内筋を伸ばすストレッチを行うことです。片方の腕を前に出し、反対側の手で肘の上を押さえて上腕が動かないように固定します。そしてその状態で、掌や手首を外側に捻る(回外)ようにして筋肉が伸びるのを待ちます。
 奥歯が噛み合っている人は、円回内筋が伸びるに従って自然と歯が離れていくと思います。あるいは、顎の力が抜けていくのを感じませんでしょうか。パソコンなどの作業をたくさんする人は、一日に何度もこのストレッチをしていただくことをお勧めします。

マウスを酷使すると母指と示指の筋肉がこわばる
 パソコン操作では頻繁にマウスを使いますが、すると母指先を曲げる長母指屈筋(ちょうぼしくっきん)と示指を動かす筋肉がたくさん使われます。(示指伸筋と深指屈筋の示指につながら筋腹)

マウス操作における長母指屈筋・示指伸筋の「こ」

 以前の投稿で、母指と示指に力を入れて手を使うと首と肩に力が入ってしまう、という内容を説明しましたが、パソコンのマウス操作はまさにそのような感じです。前腕を回内位にしますと自ずと母指と示指を中心に手を動かすようになります。マウスを握り動かす時、母指球の側を中心(支え)にしてマウスを動かした方が、小指球側を中心に動かすよりも使いやすいのはそのためですが、マウスを頻繁に使うことによって母指と示指に関連する筋肉がこわばることになります。
 するとからだの使い方も、臍を中心とした体幹の内側や、太股~足にかけての内側が中心になるのではなく、脇の下から脇腹、骨盤の外側から太股の外側、ふくらはぎの外側に重心が掛かるようになります。これは効率の悪い状態ですし、O脚になりやすく、将来膝を痛める可能性が高まると考えられます。体型もスマートでなくなります。
 私の目から見ますと、街中にはO脚や、将来O脚になる予備軍の人がとてもたくさんいます。それは仕事がパソコンと切り離せないことと深く関係し合っていると思います。ですから、パソコン操作の弊害を溜め込まないように、毎日の終わりにリセットする意味で腕と手のストレッチやマッサージを習慣づけて欲しいと思います。

 先日、株式投資をしている人で、パソコン画面をマウスで頻繁に切り替えながら、多くの銘柄を一遍に見ているという人が来店されました。顔の右半分が右腕の方に引っ張られていて辛いとのことでした。右腕は棒のように硬くなっていましたが、特に長母指屈筋やその周辺の筋肉がとても強くこわばっていました。マウスの使いすぎです。
 そのこわばっている筋肉をゆるめて調整しますと、顔の状態も下肢がガニ股気味の状態も良くなるのですが、1週間後に来店されるとまた同じような状態に戻っていました。筋肉の使いすぎは良くありませんし、きっと気持ちを集中させて画面を見ているので呼吸も悪くなり、リズム感も悪くなってしまうので、どんどん母指や示指の筋肉がこわばってしまうのだと思います。

長母指屈筋と示指筋肉のストレッチ

 長母指屈筋も示指に関係する屈筋も前腕前面の奥深くにありますので、なかなか手が届きません。ですから、ストレッチの方法としては母指先と示指先を第一関節のところで反対側の指を使って引っ掛け、強めに反ることで伸ばすのが良いかもしれません。

 パソコンでばかり仕事をしている人は、うつむき加減で首(頭)が前に出やすく、肩が前に出て猫背気味という姿勢の特徴とともに、先ほども申しましたが重心が外側に掛かりますので、お腹や骨盤の力で座位を保つことができないため内股に力を入れて座るようになります。ですから体型的には外側に重心があってO脚気味なのに太股の内側がカチカチに硬くなっていたりします。背中~首筋~後頭部にかけてスーッとスッキリさせたいところですが、それがなかなか叶いません。想いとは裏腹になってしまうわけですが、それは筋肉連動の関係で、必然としてそうなってしまうのです。そして、この筋肉連動の出発点となる筋肉の一部が今回取り上げました円回内筋、長母指屈筋、示指に関係する筋肉です。うつむいて作業をすることによる筋肉のこわばりの弊害も除去しなければなりませんが、今回取り上げた筋肉をしっかりケアすることだけでも、かなりいろんなことが改善されると思います。


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