ゆめとわのblog

ホームページとは違った、より臨場感のある情報をお届けしたいと思っています。 また、テーマも整体の枠を飛び出してみたいと思います。 ホームページは以下です。 http://yumetowa.com/ お問い合わせはメッセージ欄でお送りください。

2017年11月

 「上部頚椎を整える」ことを専門にしているカイロプラクティックや整体院があります。上部頚椎というのは頚椎1番と頚椎2番のことですが、意味するところは頭蓋骨の基部である後頭骨と首との接続部分を整えると全身に影響が及び、からだが元から改善される可能性があるということだと思います。
 後頭骨と頚椎1番の関節部分は、その周りに筋肉を含め軟部組織が分厚くありますので直接触って状態を観察するのはなかなか難しいところです。また、歪みの状況が解ったとしても、それを素速くきれいに修正するのはなかなか難儀だと私は感じています。カイロプラクターや骨を直接動かす施術を行う整体師は「コツン」と軽く一撃することで歪みを修整するということですが、私はそういう技を持っていませんので修正に時間を要してしまいます。
 しかしながら、この部分が歪んでいるために首の動きが制限されていたり、「痛くて首を動かせない」状況だったり、さらには目や耳など感覚器官の働きが「今一」だったりすることがありますので、からだの能力を十分に発揮できるようになるためには、整えておかなければならないところだと考えています。

目の働き、舌の動きに影響する環椎後頭関節
 頚椎1番のことを専門用語として環椎(かんつい)と呼びます。私たちが軽くうなずいたり、少しだけ顎を上げたりする動作は、頭蓋骨(後頭骨)と環椎の間の関節(環椎後頭関節)で行われています。後頭骨は環椎の上で前後に滑るように少し動きますので、頭を少しだけ動かす時にはほとんどこの関節だけを使っている感じです。

 あるデザイナーの人は一日中パソコンを使ってデザインの仕事をしていますが、瞼が重たくなってしまい目を開けていることが辛い状態です。それでも目を開けていないと仕事になりませんので、頭の筋肉を使って瞼を引き上げているため頭もカチカチに硬くなっています。そんな辛い状況でも頑張らなければならないため噛みしめ癖も持つようになってしまい、更に辛い思いをする日々を過ごしています。

 私が施術を行った直後は、症状は軽快します。しかし、1分くらい座ったままでいますとまた瞼が重たくなってしまいます。原因について、いろいろな可能性を考えて対処しましたが「うまくいったようで‥‥、やっぱり駄目か」という状況が続きました。
 私も悩みまして「あと残った可能性は?」などと自問していましたが、すると「もしかしたら頭が乗っている位置が狂っているのかも」という思いが浮かび上がってきました。そこで、座った状態で頭を少しだけ後に引いてみました。すると“どよ~ん”としていた眼や瞼が開き出しました。そして私が頭から手を離して、再び元の状態(少し頭が前に出た状態)に戻ってしまうと、また“どよ~ん”としてしまいます。
 「頭の位置が悪くて脳の血流が悪くなっている」と私は思いました。

椎骨動脈(ついこつどうみゃく)
 心臓から頭(脳や顔面)に動脈血を運ぶルートには“頚動脈”と呼ばれて多くの人が知っている内頚動脈と外頚動脈がありますが、それ以外に頚椎に沿って進む椎骨動脈があります。

脳を養う内頚動脈と椎骨動脈

 椎骨動脈は鎖骨下動脈から枝分かれして頚椎6番の横突孔に進み、そのまま環椎(頚椎1番)の横突孔まで昇っていきますが、その後ほぼ直角に後方に曲がり、さらに大きく前方に曲がって後頭骨の中に入り脳へと進んでいきます(脳底動脈)。血流という面で、頚椎2番(軸椎)と環椎と後頭骨の関係性は気になるところです。
 椎骨動脈は左右2本ありますが、後頭骨に入ると1本に合して脳底動脈という名前になります。脳幹や小脳に血液を供給し、大脳の後頭葉に進みますので、脳の後方循環系と呼ばれます。脳幹には脳神経の核がありますが、鼻、眼、耳、舌といった感覚器官を司っているほか、表情筋とそしゃく筋の働き、嚥下の働きなども司っています。ですから、椎骨動脈の流れが悪化すると視力や視界が悪くなり、瞼の動きも悪くなるということは説明がつくことです。

椎骨動脈の流れ

 先ほどのデザイナーの人は、首に対して頭がちょっとだけ前に出た状態でした。つまり環椎後頭関節にズレが生じている状態ですが、それによって椎骨動脈の流れが悪くなり眼や瞼の動きが悪くなってしまった可能性があります。私が手で頭を後方に少し引っ張ると眼や瞼の状態が良くなったのは、その現れだと思います。

頭(後頭骨)のずれが舌の動きに影響を与える
 「しゃべると顎先が上下に動き、息苦しくなって舌の動きも悪くなる」と訴える人がいます。顎を下げた状態(顎先がからだに近づいた状態)では口を大きく動かすことができなくなってしまうので、言葉をしゃべるときは頭を上向き加減にして顎先を上げるようにしてしまいます。しかしそうなりますと気道がふさがってしまい呼吸が苦しくなって言葉を続けることができなくなってしまうということです。顎を下向き加減にすると呼吸ができて楽になるのですが、すると口が開かず喉が詰まるようになってしまいます。ですから結局この人は、言葉をしゃべりながら顎先を上下に揺らすようにしています。
 その他、この人は舌が硬く思い通りに動かせないという症状を抱えていました。現在、この問題はほとんど解決されましたが、動かない舌を無理して動かし続けていたことが今回の問題につながっているのかもしれません。
 
頭長筋と後頭下筋群の関係

頭長筋と頚長筋と斜角筋

 頭蓋骨と首の骨(頚椎)との接点は後頭骨と環椎(第1頚椎)で、環椎後頭関節と言います。環椎後頭関節は、環椎に対して後頭骨が前後に滑ることができる構造になっています。私たちがうなずいたり、ちょっと頭を上げたりする動きは後頭骨が環椎の上を滑ることによって行われますが、その動きをもたらす主な筋肉は頭長筋(とうちょうきん)と後頭下筋群です。頭長筋を収縮させることによって後頭骨の底部が前下方に引っ張られ、うなずく動作が行われます。スマホを見る、読書をするなど“ちょっと下を向き続ける”動作は頭長筋を収縮し続けることになりますので、頭長筋がこわばる可能性が高まります。(頭長筋がこわばったことによって頭部が下を向いた状態では後頭下筋群は張ってしまい、後頭部の頭痛や首後面の張りをもたらす可能性があります。)

 さて、この人は頭長筋も、その下にある頚長筋(けいちょうきん)もこわばっていました。動きづらい舌を無理して動かしていたたために喉周辺の筋肉も強くこわばっていましたが、合わせて頭長筋も頚長筋もこわばってしまったのだと思います。それによって常に頭や顔は下向き状態になっていますので、舌骨を含め喉が下顎に近づいた状態になっています。下顎を大きく開けようとしても舌骨や喉のところで詰まってしまうので、しゃべるときには自然と顎先を上げてこの状態を回避するのだと思います。
 顎先を上げる動作では後頭下筋群を収縮させることになりますが、張ってこわばった状態の筋肉をさらに収縮させなければならないということもあって、気道がふさがってしまう状況になってしまうのかもしれません。

 今回、この人に対する施術はこわばっている頭長筋と頚長筋をゆるめることでした。頚長筋は頚部から胸部までつながっていますが、そこそこ触ることができますので、こわばりを解消することが、まあ可能です。一方、頭長筋は一部しか触ることができません。ですから満足するほどこわばりを解消することはできませんでしたが、それでもまずまず成果がありました。下向き状態だった頭蓋骨はほぼまっすぐな状態になり、張っていた後頭下筋群もゆるみ後頭部に余裕が生まれました。そして、顎先を上げずとも口を大きく開くことができるようになり、頭を上下に揺らすことなくしゃべり続けることできるようになりました。

後頭骨と上部頚椎と椎骨動脈

椎骨動脈の走行

 椎骨動脈は頚椎の横突起にあります横突孔という穴の中を通って頭部に昇っていきますが、第3頚椎から軸椎、そして環椎のところで弯曲が生じ、環椎の横突孔を抜けた後はほぼ直角に後方に曲がります。その後、上関節窩(椎骨動脈溝)を大きく回り込み後頭骨に入って前方に進みます。後頭骨と環椎と軸椎は頭を動かす度に動きますので、椎骨動脈は大きくうねった状態で常に伸び縮みを強いられていることになります。

椎骨動脈の関節突起回り込み比較

 仮に頭長筋がこわばって後頭骨が前下方に引っ張られた状態になりますと、環椎の上関節窩(椎骨動脈溝)を回り込む辺りが圧迫を受け、血流が悪くなる可能性があります。
 先ほど例として取り上げたデザイナーの人は、頭部を後側に少しずらすことによって眼の働きが良くなったわけですが、それは環椎に対して前方にずれていた後頭骨を正しい位置に戻したので椎骨動脈の流れが回復し、脳の働きが良くなったからだと考えることができます。

上部頚椎と後頭骨を整えることの意味
 冒頭の話題に戻りますが、上部頚椎を整える専門家は「上部頚椎を整えると全身に影響が及び、からだが快適になる」というようなことを仰います。「首を整えると脳が体を治しだす」という題名の本もあります。
 私は、この方々が提唱されていることを「そうかもしれない」と思いながらも具体的にはどういうことを意味しているのか理解できないでいました。理屈を聞かされても今一、なんとなく漠然としているように感じられて腑に落ちませんでした。上部頚椎を整えることで確かに骨格の歪みは改善され、首の動きが良くなって肩こりが改善するというようなことは想像しやすいことですが、だからといって大したことではないと感じていました。ところが、ここにきてやっとその意味がわかりかけてきました。まだ途中の段階で、日々検証している最中ですが、上部頚椎と後頭骨の関係が整いますと椎骨動脈の流れが良くなる可能性があって、そのことがからだに様々な良い影響を及ぼすからなのではないかと思い始めています。
 左右の椎骨動脈は合流して脳底動脈となり、脳幹に血液を供給し、小脳と後頭葉へ血液を供給します。ですから椎骨動脈の流れが良くなりますと脳幹と小脳の働きが良くなるという理屈になります。
 脳幹には脳神経の核があります。脳神経は嗅覚、視覚、聴覚、味覚、そしゃく、嚥下、表情筋(顔面神経)などを司っています。ですから、脳幹の働きが良くなりますと、視界が広がってよく目が見えたり、耳の働きが良くなったり、嚥下や舌の動き、しゃべりが楽になったり、顔のたるみが軽減したり‥‥という現象が現れるはずです。
 そして実際、後頭骨と上部頚椎の関係性を整えますと、そのような現象が現れました。

 また、「座っているときは頭やからだがふらついたりすることはないのだけれど、立ち上がるとからだがふらついてしまって前に倒れそうになる」と訴える高齢者の人に対して、後頭骨の位置を整える施術を行いますとふらつきがなくなり、安定して立っていられるようになりました。これは小脳の働きが良くなったからなのではないかと思っています。

 脳幹や小脳の働きは勿論これらのことだけではありませんので、これからもいろいろ観察していきたいと考えていますが、からだを根本的に変えていくための方法や可能性が少し見えてきたような気がしています。
 「首を整えると脳が体を治しだす」という意味は、具体的には脳幹と小脳、そして後頭葉の働きがパワーアップするということかもしれません。それによってからだが自然と自らを治癒して改善し、より高いレベルの健康を実現できるようになるのかもしれません。
 「小脳」は私たちにとってまだまだ未知の領域ですが、私にとっては魅惑的に感じる存在です。そんなことも含めて、改めて投稿したいと考えています。


足つぼ・整体 ゆめとわ
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「腕を前に出そうとすると背中が痛む」「車のハンドルを握っていると腕~背中にかけて重たさを感じ、すぐに疲れる」など腕の動作を行うと背中にかけて重たさや痛みを感じる時は、菱形筋という肩甲骨内側の筋肉がこわばっている可能性が高いです。

菱形筋の「こ」と「ゆ」

 菱形筋は小菱形筋、大菱形筋に分けられますが、ともに背骨から出発(起始)し、肩甲骨の内側に付着(停止)しています。収縮することで肩甲骨を背骨の方へ引き寄せる働きをしますが、反対に伸びる(弛緩伸張)ことで肩甲骨の自由な動きを可能にする働きをしています。肩甲骨の動きと密接な関係がある筋肉の一つ(正確には二つ)です。

 二足歩行の私たちは他の四つ足哺乳動物たちとは違って、手や腕を歩いたり走ったりするためにではなく、いろいろな手作業のために使っています。そのために上肢(腕と肩)はとても大きな可動域を持っていますが、それは肩甲骨の動きがあるから可能になっています。

 からだの仕組みとして、もし肩甲骨が動くことができなければ私たちは最大限90°までしか腕を上げることが出来ません。肩(肩峰)と腕(上腕骨頭)がぶつかってしまうので、それ以上動かすことができなくなります。しかしながら実際には腕を真上まで上げることが出来ますが、それは肩甲骨が上方に回旋することによって可能になっています。(https://www.youtube.com/watch?v=CH3UZgg_lCM
 また反対に背中で手を組むなど、腕を背中側にグッと回し込むことができますが、それは肩甲骨が下方に回旋することができるので可能です。また、手の先にあるものを掴むために腕をグッと前に伸ばしますが、それは肩(肩甲骨)が前に出る(前方突出)ので可能です。
 ラジオ体操や準備体操やストレッチ運動は心地良いものですが、そこには普段あまり動かしていない筋肉を動かすことによる心地よさが含まれています。大きく腕を動かす動作は肩甲骨を最大限に動かす動作と言い換えることもできますが、肩甲骨を積極的に動かすことは心地良さをもたらす効果があると言うことができます。
 ところが時々、肩甲骨を動かすことを好まない人がいます。ラジオ体操は嫌いで、ストレッチや運動は面倒だと感じてしまう人は、怠惰という性格的なものもあるかもしれませんが、からだが運動を望んでいないという場合もあります。その理由の一つとして肩甲骨の動きをサポートする筋肉の状態が悪いことがありますが、今回はその中の菱形筋について考えてみます。

菱形筋のこわばりが背中に痛みをもたらすケース
 筋肉がこわばった状態とは、筋肉が収縮したままで上手く伸びることができない状態であると言い換えることができます。そして、こわばった筋線維は「硬くなって太くなる」という特徴もあります。例えば、日々パソコンを操作したり、重たいもの扱う仕事をしている人は手や腕の筋肉がこわばりますが、腕をグッと力強く掴んだり、押したりしますと深部に硬くなった筋肉を感じます。そして、さらに圧力を増やしますと痛みを感じると思います。つまり、こわばった筋肉は圧力を加えると痛みを発する(圧痛)という仕組みになっていますし、伸ばそうとしますと痛みを発する仕組みになっています。

 菱形筋は肩甲骨を背骨に近づける働きをしますので、菱形筋がこわばっていますと、常に、肩甲骨を背骨の方へ引きつける力が働き続けていることになります。そして菱形筋は硬くなり太くなりますので、肩甲骨の内側が厚ぼったくなり、布団に背中を付けることに違和感や不快感を感じるようになるかもしれません。「横向きでないと眠ることができない」理由の一つになります。
菱形筋と前鋸筋の「こ」による背中の痛み

 さらに、パソコン業務や腕を使う仕事を行っている人は前鋸筋がこわばって肩甲骨が外側に引っ張られる状態になっている場合が多いのですが、そうなりますと菱形筋のこわばりによって肩甲骨は背骨側に引きつけられているのに、一方で前鋸筋によって背骨から離れる方向に引っ張れるという状態になってしまいます。肩甲骨を介して菱形筋と前鋸筋が綱引きを行っているような状態です。こうなりますと菱形筋のこわばりは更に強くなりますので、肩甲骨が身動きのとれない状態になってしまったり、じっとしているだけでも背中(菱形筋)が重たく窮屈で、痛みを感じてしまう状態になってしまいます。

肩関節の屈曲動作

腕を前に出すと背中が痛む‥‥大菱形筋のこわばり
 「車を運転すると背中~腕にかけてだるくなり疲れる」「普通に座っているだけなら大丈夫なのに、食事をしたり、手作業をしたり、パソコンをすると腕や背中がつらくなる」といった場合は、二つある菱形筋の下方、大菱形筋がこわばっている可能性が高いと考えられます。
 車のハンドルを掴む姿勢、食事で茶碗を持ち上げたり、手作業で手を前に出すなどの動作では、肩甲骨が少し前に出て上方回旋する必要があります。そのためには大菱形筋が伸びなければなりませんが、筋肉がこわばっているために伸びにくかったり、縮む方向に力が働いていますと肩甲骨が上手く動いてくれなくなります。そのため、ハンドルを掴む姿勢は腕から背中にかけて負担が掛かり、茶碗を持つ姿勢は肩が前に出ないのでロボットの動作のような感じになってしまいます。手を前に出して行う作業は辛さをもたらすことでしょう。

大菱形筋がこわばる理由
 トレーニングジムなどで器具を使い、負荷をかけながら肩甲骨を引く(後方牽引)などの運動をしますと菱形筋がこわばる可能性はありますが、日常生活での動作で大菱形筋や小菱形筋自体がこわばることはほとんどないと思います。
 ですから大菱形筋がこわばっているのは、他の要素との関係や他の筋肉との連動関係でこわばっていることがほとんどであると言えます。そして筋肉の連動関係では、大菱形筋は大腰筋、大内転筋などと密接な関係があります。

大菱形筋と大内転筋と大腰筋

 大腰筋は腰痛に関係するインナーマッスルですが、普通の日常生活でこわばる可能性としては、骨盤(股関節)や脊椎がずれていることが挙げられます。大腰筋は腰椎の腹部側から始まり股関節の大腿骨(小転子)に繋がっていますので、大腿骨が下がったり、あるいは腰椎が上方へずれますと骨と骨の間が本来より遠くなりますので、筋肉が張ってこわばります。実際、大腿骨が股関節で下がってしまうことはよくあることです。(整体院で「脚の長さが違いますね~」などと言う時など)
 この場合は片側の大腰筋がこわばりますので、大菱形筋も片側がこわばり背中のどちらかが違和感や痛みを感じることになります。また、腰椎が上にずれる場合で多いケースは頚椎が捻れているときなどです。右眼ばかりを使っている人は、右眼を動かす外眼筋がこわばりますが、それは頚椎と肩甲骨をつなぐ肩甲挙筋のこわばりへと連動し、同時に頚椎7番を右側に引っ張ります。その影響で胸椎も腰椎も不安定になり、上にずれてしまうことがあります。この場合は両側の大腰筋がこわばりますので、両側の大菱形筋がこわばることになり、両方の肩甲骨の動きが制限されることになります。
 実際、大菱形筋のこわばりを解消するためにコメカミを持続指圧して外眼筋のこわばりをゆるめ、頚椎を戻す施術はよく行っています。

 時々大内転筋がこわばっている影響で大菱形筋がこわばっている人と出会います。内股の人にその傾向は強いかもしれません。内股の人は内転筋のほとんどがこわばった状態になっていることが多いのですが、その原因を探っていきますと、足の外側(小趾側)が硬くなっていることが挙げられます。歩くとき足が「ハ」の字になってしまうので、小趾側が前に出た状態で着地してしまうからだと思います。母趾を除いた4本の足趾を曲げる筋肉に長指屈筋がありますが、この筋肉が大変こわばっていることが内股の人の特徴でもあります。

足の第4骨間筋と大内転筋

 そして足裏の4趾と5趾の間の筋肉(骨間筋)がとても硬くこわばっていますが、それが大内転筋のこわばりの原因だと考えられます。内股でなくても小趾側に重心がかかっている人は同様です。
 ですから大内転筋がこわばっている人に対しては、足裏の4趾5趾間をよく揉みほぐすことと長指屈筋を弛めることが対策になります。

 また、小菱形筋と大菱形筋は拮抗する関係になることがあります。例えば肩に重いショルダーバックをかけることが多い人は、肩甲骨の上部が外側に引っ張られるよう力をかけ続けられているわけですが、すると僧帽筋の上部線維と小菱形筋は疲弊して伸びた状態になってしまうことがあります。小菱形筋が機能不全に陥った状況になるわけですが、そうなりますと大菱形筋は小菱形筋の分まで頑張って肩甲骨の位置を保つように働くことになります。つまり大菱形筋は収縮し続けこわばった状態になります。

菱形筋が収縮できずに痛みを発する場合
 菱形筋のこわばりが背中の痛みにつながるケースについて説明してきましたが、それとは反対に菱形筋がゆるんで収縮できないために背中に痛みを発することもあります。
 腕を真上に上げて大きく背伸びする動作や、胸を大きく開いて肩甲骨を後ろに引く動作では菱形筋が収縮します。肩を回したり、胸を閉じたり開いたりする運動では菱形筋が伸びたり縮んだりするわけですが、菱形筋に上手く収縮できない部分(筋線維)がありますと「余分な肉が余ったような状態」になってしまい、縮めない状態なのに無理やり縮めようとするので痛みを発するという状況になります。

菱形筋と僧帽筋の「ゆ」による背中の痛み

 先日、菱形筋を“寝違えた”ように損傷してしまった人が来店されました。損傷によりこのような状態でしたが、その他にも、過去に太股の裏側を肉離れして大内転がゆるんだままであったり、腰が悪くて大腰筋が上手く働かないために連動する大菱形筋が上手く収縮できない状態になっているなどということもあります。

 菱形筋の問題が原因で背中が痛くなるケースはそれほど割合が高いというものではありません。(肩甲骨の内側が痛いという場合は、前鋸筋の問題が原因しているケースが多い)
 しかしながら「腕を動かすと腕や背中が重い」、「手を前に出しているのがかったるい」という場合は菱形筋が原因となっている可能性が高いと思います。
 そして再度申し上げますが、菱形筋自体を使いすぎてこわばってしまうことは普通の日常生活の中ではほとんどないと起こらないと思います。菱形筋がこわばっている原因のほとんどは、足や股関節や腰などの問題だと考えられます。そうであるならば、腕や背中が辛いからといって腕や背中をマッサージしたところで解決にはつながりません。それよりも足裏やふくらはぎを念入りに揉みほぐしていたら背中の問題が解決するかもしれません。腕を動かすことがかったるいと思われる方は、足裏やふくらはぎのマッサージを試されてみてください。


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 その男性は30代半ばの体格の良い人です。10年ほど前に腰椎ヘルニアを患い、その後、慢性的な腰痛と背中痛と首の痛みに悩まされているとのことです。学生時代は弓道をやっていたということで、その後はからだの痛みもあって特に運動はしていないとことです。仕事は営業で、立っていることが多く、かなり重たいカバンを右手で持ち歩いているとのことです。
 今回来店された目的は腰痛と首の痛みを軽減したいということでした。ヘルニアに関しては10年前に坐骨神経痛(下肢のシビレ)でかなり苦しんだとのことですが、その後症状の再発はないとのことです。

 施術前に私が簡単に観察したところ、左目の周りがピクピク痙攣していて、顔や首がこわばっているように見えました。痙攣のことを尋ねますと、常態的に顔面左側にこわばりと痙攣があるとのことでした。

 ベッドにうつ伏せになっていただき施術を始めますと、足裏、ふくらはぎ、太股、殿部、腰部、背中、首、後頭部、つまり全部がとてもこわばっていてバリバリでした。その他には、右肩(肩甲骨)が大きく外側にズレていました。
 「腰痛、首痛というよりも‥‥、背面全部が駄目な状態だ!」と感じました。そして、「何か厄介な状況でなければいいのだが」と思いながら、うつ伏せでの施術を終え、仰向けになっていただきました。
 仰向けでからだの前面を観察しますと、やはり全部がこわばった状態でした。腕も、手も、顔も含めてです。「これは、やっぱりおかしい! 通常の不具合とは違う」と直観しまして、「どうしたものか?」と施術方法について思考を巡らせながら細かく観察していきました。「パーキンソン病などの初期症状とかでなければいいけど」
ゆるみ
 筋肉やからだの仕組みの一つとして「何処かにゆるんで機能できない部分があると、それを補おうとして他の部分がこわばる」という性質があります。この仕組みによる全身のこわばりであれば、からだの中心部分に機能できない部分がある可能性が高いです。「中心が頼りないので周りが頑張って(緊張して)何とか今の状態を維持している」というようなイメージです。

大胸筋の損傷

 まずは腹部から胸にかけて探っていきました。すると胸郭の上の方、胸骨のやや右側、第3~第4肋骨のつけ根辺りに凹んで落ち込んでいる部分がありました。しばらくそこに手を当てていますと、バリバリに硬くなっていた太股や腕の筋肉が少し柔らかくなりました。腹筋も少し伸びたような感じです。
 さらにその部分の肋骨が右側にずれていましたので「ここが少し凹んでいますが、何かありましたか?」と尋ねますと、「就職して間もなくの頃、痛くなったので病院に行ったらヒビが入っていると診断された。打撲した記憶もないのに不思議に思った。」ということでした。さらに、「考えられるとしたら、いつもかなり重たいカバンを右手で持っていたので、それでかなぁ」という大きなヒントが返ってきました。

 右側の肩甲骨が外側にずれていること、重たいカバン(5~6㎏)を持っていたこと、そして肋骨にヒビが入ったこと、これらから連想できることはカバンの重たさにからだが負けて、肋骨が損傷し、肩甲骨が右側に落ちてしまった状況です。

前鋸筋_起始停止

 重たいものを持ち続けることでこわばる筋肉は前鋸筋と手や腕の筋肉です。前鋸筋は肋骨と肩甲骨をつないでいますが、この筋肉がこわばりますと肩甲骨が外側にずれて肋骨の動きが制限されるといった状況を招きます。

大胸筋_ 起始停止

 また反対に、重たいものを持ち続けることで疲弊する可能性のある筋肉が幾つかあります。その中の一つに大胸筋がありますが、大胸筋は胸骨や肋骨を起始(筋肉の始まり部分)にしていますので、重たいカバンを持ち続けていることに耐えきれなくなって胸骨と肋骨の境辺り(起始部)が損傷し、その影響で肋骨が外側にずれてしまったと考えることもできます。そしてこの損傷により胸郭の一部筋肉あるいは筋膜が機能できなくなり、それを補うように全身の筋肉がこわばってしまった、という可能性は十分に考えられることです。
 ですから胸の損傷部分のケアを行い、前鋸筋のこわばりを取って胸郭を歪みの無い状態に戻すことを行いました。すると、バリバリにこわばっていた腕や太股やお腹や背中の筋肉がゆるみはじめました。前鋸筋の強いこわばりによって制限されていた胸郭の動きも良くなったため呼吸が楽に行えるようになりましたが、それも筋肉のこわばりを解消するために不可欠なことです。

 さて、あとは左目の周りを中心にピクンピクンしていた痙攣状態がどうなったかですが、顔面左側のこわばりは残ったままでした。
 「左半身か左手などにケガした記憶はありますか?」と尋ねました。しばらく記憶をたどられた後、「弓道をしていた頃、強いバネ指になってしまい、今も中指はバネ指状態です。」と仰いました。確認しますと左肘関節が捻れた状態でした。(前腕が橈側にずれ、さらに回内位に捻れた状態)
 ここで、前回の記事で取り上げました中間広筋のテストをしてみました。何も操作しない、肘が捻れたままの状態でテストをしますと、手を握った状態、奥歯を噛みしめた状態では膝に力が入り、手を広げ、奥歯を離した状態では力が弱くなってしまいました。次に私が手動で操作して肘の捻れを正しい位置に戻すようにしてテストを行いますと、手を広げ、奥歯を離した方が力強くなりました。つまり、左肘の捻れがエネルギーの流れを悪くしているということがわかりました。
 ですからこの人は、弓道をしていてバネ指になってしまった大学生の頃から、手を握る癖、噛みしめる癖、もっと言えば首肩に力が入ってしまう癖を持っていた可能性があると考えることができます。これだけでも全身が緊張状態になって筋肉がこわばる傾向になりますが、その後の胸の損傷や肩甲骨のずれにが加わったことによって全身の筋肉がバリバリになるほど強くこわばってしまったと考えることができます。
 左肘の歪みと捻れの原因は左手と左手指の強いこわばりでした。弓道をしていたころの名残かもしれません。「力を抜いて弓を操作するように指導されたけど、なかなかそれができなくて、ついつい力が入ってしまったからかなぁ」と仰っていました。

 左手のこわばりはかなり強く、たくさん揉みほぐしましたが「すっかりほぐれた」という状態には至りませんでした。しかし、肘の歪みと捻れはだいぶ良くなり、中指のバネ指状態もほとんど解消しました。
 その後、また筋力テストを行いましたが、今度は何の操作をしなくても手を開いた状態、顎を弛めた状態で中間広筋にしっかり力が入るようになりました。こわばっていた顔面左側もゆるみ、痙攣の兆候も消えました。

 これで概ね施術は終了ですが、細かい部分を確認するため座位になっていただきました。座った状態での腰痛や背中の張り、首の痛みなどがどうなったかを確認していただき、さらに立っていただき、からだの動きなどを確認していただきました。
 ご本人は来店された目的が果たされ満足されたようですが、私は気になることが少し残っていました。右の肩甲骨がまだ少し外側に動いてしまいます。リラックスした状態で、からだはしっかり保てるようになってはいたのですが、十分にしかっりした状態ではないと判断しました。そしてそれはきっと右肩甲骨に不安定さが少し残っているからだと思いましたので、細かく確認していきました。

菱形筋の「ゆ」による肩甲骨の「ド」

 すると背骨と肩甲骨を結んでいる小菱形筋と大菱形筋にゆるんでいる部分がありました。「重たいカバンは二つの菱形筋までも疲弊させてしまったのか」と思いながら、その部分にはダイオードを貼って筋肉の修復を促しました。
 これで施術は終了しました。左肘の捻れと胸の損傷が「すっかり良くなった」とは言い切れない状況でしたが、来店時の全身バリバリのからだはすっかり変わり、左目周辺の痙攣も解消されていましたので「まずまず」といった感じです。苦しそうな感じで来店された雰囲気が、すっかり変わり、楽しそうな雰囲気なって帰られる姿を見るのはいつも私を心地良い気分にさせてくれます。

 時系列的にこの方の症状を整理してみますと、以下のように考えることができます。

①大学生時代の弓道で左手に必要以上に力が入り、それによって肘が捻れを起こし、バネ指になってしまった。さらに左手のこわばりと肘の捻れは顔面に痙攣をもたらし、エネルギーの流れを悪くしたために手を握る癖、歯を噛みしめる癖をもたらした。からだから力を抜いてリラックスすることがなかなかできない状態になってしまった。

②そんな慢性的緊張状態のまま就職し、営業職でかなり重たいカバンを持って歩き続けなければならない状況になった。すると間もなくからだが耐えられなくなり腰椎ヘルニアを患い、さらに右腕と肩が荷物に引っ張られ続けたために肋骨にヒビが入る状態になった。そのことの影響で全身の筋肉がバリバリ状態になって①の状態を悪化させた。

 「腰痛なのに腰は施術しないのですね」と施術後尋ねてきました。
 「腰痛というより、全身の筋肉がバリバリに張っていた症状でした。背筋の強いこわばりが腰椎を圧迫するなどして痛みをもたらしていたし、背骨の状態が悪かったのでからだを反ることが出来なかった。筋肉がゆるんでしまえば腰痛や反ることのできない症状はなくなると思ったので。」と回答し、「最初は何かの病気の可能性も考えられると思ったけど、原因がはっきりして、病気ではないことがわかったこともよかったと思います。」と申し上げました。

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