ゆめとわのblog

ホームページとは違った、より臨場感のある情報をお届けしたいと思っています。 また、テーマも整体の枠を飛び出してみたいと思います。 ホームページは以下です。 http://yumetowa.com/ お問い合わせはメッセージ欄でお送りください。

2017年08月

 医学界では、頭蓋骨はほとんどずれない、動かないことになっているようです。「頭蓋骨や顔が変形してしまう、寝て起きると顔が変わっているし、枕に後頭部をつけて寝ることはペシャッとなりそうで怖い」と医師に訴えても「あり得ない」と言われ、精神科に回されそうになると仰っていました。
 私は実際の解剖を経験したこともなく、直に頭蓋骨や骨盤を触ったこともありません。ですから「頭蓋骨が変形することはない」「仙腸関節もたやすく動くことはない」と言われますと、「確かに解剖所見ではそうかもしれません」と思いますが、同時に「屍体と生体では違うのではないか」と思います。私は筋肉や皮膚の上からしか頭蓋骨や骨盤を触ることはありませんが、常に生きているからだを触っていますので、頭蓋骨や仙腸関節が簡単に動くことはよく知っています。

 私が整体の学校に通っていた頃、先生は骨盤の模型を手に取りながら、「このように骨盤は表面も裏面も強靱な靱帯でガチガチ固められているので仙腸関節はほとんど動かないと考えられる」と説明していました。確かに「靱帯(関節を強固にし、その運動を制御する)」という言葉の印象と模型を見せられた印象で想像しますと「仙腸関節を動かすことは大変なことだ」と感じてしまいます。

マシュマロのように感じた頭蓋骨
 むくみで悩んでいる人はよくおわかりだと思いますが、足のむくみが強いとき、スネを指で押しますと凹みができてしばらく戻らなかったりします。頭蓋骨の弛み方が進行しますと、これと同じような感じになります。頭を左から右に押しますと、そのように頭が変形してなかなか戻らなくなります。頬骨を押しても同様になります。それはむくみの激しいときに皮膚を押すと凹んでなかなか戻らなくなるのに似ています。「まるでマシュマロのようだなぁ」、私がもっとも重症だと感じた頭蓋骨の状態です。
 歩く一歩一歩の振動で頭の骨がそのように揺らされ、頭を横に回すと後頭部や頭頂部が時間遅れで後から着いてくるような感じになってしまいます。それまで一つにまとまって一体化していた頭蓋骨がバラバラに動いてしまうように感じられるのだと思いますが、その不安感は大変なものだと思います。
 このような状態になってしまった人は「まさかこんなに酷くなるとは‥‥」と後悔されますが、同時に「もう生涯、元の状態には戻らないかもしれない」と強烈な不安感に襲われるようです。医師に相談しても「理解してもらえない」と感じてしまうのであれば、尚更そうだと思います。

ゆるみきってしまった筋膜、縫合はじっくり取り組むしかない
 20歳を超えたばかりの若い女性は、額の吹き出物やニキビが気になり、四六時中それらをいじったり、つぶすようにして頭蓋骨を押していたと言います。そうしているうちに少しずつ頭蓋骨がゆるみだし、あるとき「自分の顔がおかしくなっている」と危機感を感じ、美容整形や整体院を訪ねるようになったということです。整体院ではいろいろなやり方で頭蓋骨をいじられ、美容整形で顔にメスをいれるようになり、益々歪みと不安定さが増し、私のところに来店されました。
 「いじりすぎたために筋膜がゆるみ過ぎてしまい、何度も直接頭蓋骨を動かしたので縫合関節がゆるんで形が変わり、安定性がなくなってしまった」というのが実際の原因だと思います。
 こうなってしまったら、筋膜を元の状態に戻し、ゆるんでしまった縫合関節を元の状態に戻すしか方法はありません。それは時間と手間のかかることです。忍耐力が必要です。しかし、これしか方法がないと私は思います。
 この女性は最初は週に2度ほど来店され、それが週1になり、やがて月に2度ほどのペースになりましたが、1年近く来店されました。「気になって、気になって、つい触っていじってしまう」という癖がなかなか抜けなかったようです。

 皮膚や筋膜は触り方次第で、しっかりしたり、反対にゆるんでしまったりします。時々電話で「何処をどう触ればいいのか?」と問合せを受けますが、言葉で説明できるものではありません。実際に体験していただいて、やり方を覚えて帰っていただきたいのです。やり方自体は非常に簡単です。しかし、触る深さと集中力と意識が大切です。テレビに気を取られながら触り続けても意味のないばかりか、悪い影響を与えてしまうかもしれません。

 この若い女性は、今はだいたい3週間に一度くらいの間隔でケアのために来店されますが、「気になって触ってしまうことはもうなくなった」と言います。今の安定した状態からすれば、いったいあの時の状態は何だったのか? と思えます。
 
生身の私たちの骨格は固定されたものではない
 施術をしていて「硬いなぁ!」と感じるものは筋肉や靱帯や筋膜など軟部組織です。それらが硬くなっているために骨格が動かしにくというのはありますが、骨格が硬くて動かしようがないと感じることはありません。

頭蓋の主な縫合01

 頭蓋骨は20以上の骨が縫合関節というしっかりとした結合組織で結びついて一体化していますので「硬く固定されたもの」という印象をお持ちかもしれません。しかし実際には呼吸をする度に少し拡がったり縮んだりしています。そしゃくする度に少し動きますし、喋る度に動いています。関節があるということは、そこが動くようにできているということです。動かなくて済むならたくさんの関節がある必要はありません。

骨盤の靱帯

 それは骨盤の仙腸関節も同様です。骨盤の模型を見ますと、仙腸関節は強力な靱帯でガッチリ固められていますので、まったく動きが制限されているように思えます。実際、学校の授業で先生はそのように説明されていました。しかし、実際には歩く度に仙腸関節は動いていますし、立ったり座ったりする時に骨盤の形は変わりますが、それは仙腸関節が動いているから可能になります。もし仙腸関節がガッチリ固定されて動かないような状態でしたら、私たちの動作はロボットのようになってしまい、しなやかな動きはできなくなってしまいます。
 腰痛やギックリ腰の時には、私たちの動きにスムーズさが欠けてしまいますが、それは仙腸関節の動きにしなやかさが欠けてしまうからだと考えてもよいと思います。
 生気が失われてしまった、単なる物質としての靱帯、筋肉、筋膜、骨などを観察しますと「仙腸関節も頭蓋骨もほとんど動かない」という結論になるかもしれませんが、それは生きている生身の私たちには全然あてはまらないと私は考えます。

簡単に動いてしまうので、直接骨格を動かさない
 「整体」に対する一般的なイメージは「骨をボキボキする」ということのようです。ですから、そのようなことを一切しない私の施術は「何という施術方法なのか?」としばしば聞かれます。
 例えば、なんとなく肩関節や手指の関節に違和感を感じるので、故意に動かして「バキッ」と音を鳴らす癖を持った人がいます。それによって関節がはまり、スッキリすると言います。それはそれで整体の一つの手法ですから、ボキボキ直接骨を動かす整体も「あり」だと思います(私には上手くできませんが)。
 但し、頭蓋骨は別です。下顎骨を除いた頭蓋骨表層の骨は「縫合」という接続方法で隣の骨と結びついていますが、一つ一つの骨はパズルのピースのような関係性で頭蓋骨全体を形作っています。ですから一つが狂いますと全体に影響が及ぶことになります。どれかの骨を押し続けますと、その周辺の縫合がゆるみます。すると、その骨が安定性を失いグラグラすることになりますが、加えて頭蓋骨全体が歪みだし不安定になることになります。

 頭蓋骨を形作っている縫合関節は柔らかくて丈夫です。これは頭蓋骨に限ったことではありませんが、私たちのからだの骨格は「強く押すと反発する。そっと柔らかく触る(圧する)と動きがわかる」という特性があります。この特性を利用して私は、骨が上や下や右や左に「ずれている」と把握しています。見た目で骨のずれを察知しているのではなく、軽く圧して骨の動き具合を感じて判断していますが、こうした頭蓋骨の特性を無視して頭蓋骨をいじりますといろいろと問題が起きる可能性が高まります。
 コルギや小顔整体などで、頭蓋骨をグイグイ押し込みますと、最初は反発します。それは「強く押すと反発する」という特性です。ところが何度も何度も同じことを繰り返したり、あるいはたった一回かもしれませんが、縫合関節が反発する力を失ってしまいますと頭蓋骨は簡単に変形するようになります。コルギや頭蓋骨を直接操作する小顔整体はこの特性を利用して頭蓋骨を変形させているのかもしれないと思えてしまいます。他にも機械や電気を使って縫合を意図的にゆるめ、頭蓋骨が変形しやすい状態にしている方法があるのかもしれません。

 何処か一部分の縫合関節がゆるんだだけの状態であれば、すぐに取り返すことができます。しかし一部分の縫合がゆるんだだけでも頭蓋骨全体は歪みますし、そこに不安定さまで混じってきますと、気持ちとして「何とかしなければ」という思いが心を埋めるようになり、施術を重ねたり、自分でいじり続けることが制御できなくなってしまったりするようです。するとゆるんだ縫合の箇所が増えてしまいますので、益々頭蓋骨は不安定になり、やがてマシュマロのような頭蓋骨への道を歩むことになってしまうのだろうと思います。

  •  最初は頭蓋骨が反発するので「もっと強く押して屈服させよう」という思いでいじり始める。
  • そんなことを繰り返しているうちに、突然反発しなくなる時がやってきて「これは上手くいくかも(小顔になるかも)」と思い、さらにいじり続ける。
  • 「なんか骨の一部が落ち込んでいるように感じはじめ、ちょっと不安」
  • 「目や鼻など感覚器官に不調を感じ始め、顔面に違和感を感じ始める」
  • 焦る気持ちも混じり、「なんとかしなければ」と強く思うようになって、負のスパイラルへの道を進んでしまう
 屍体ではなく、生きている私たちの頭蓋骨やからだの骨格の関節は、丈夫ですが、とても柔軟です。ですから骨は簡単に動きます。硬く固定されたように見える頭蓋骨は、実は(ある範囲の中で)簡単に動かすことができます。ですから私はあえて「直接頭蓋骨を操作してはいけない」と申し上げたいのです。
 今から少し前、コルギがとても流行った頃、「自分で行うコルギ」みたいな本が売られていました。「どうしてこんな危険なものが一般に売られているのだろう?」と、ゾッとしました。個人的な見解ですが、まったく恐ろしいことだと思います。

絶望も、諦めることも必要ない
 頭蓋骨や顔を乱して、深い悩みや絶望感にさいなまれてしまった人が何人も来店されました。顔や頭は私たち自身(自己)に一番近いところですから、そこが物理的に不安定になりますと精神的にもとても不安定になってしまいます。
 「もう、生涯元の状態には戻らないかもしれない」
 心全体が不安感で埋まってしまいます。しかし、忍耐強く地道に修復に取り組んでいけば必ず元の状態、不安感が消える状態になる日が来ます。それまでに3ヶ月以上、あるいは半年くらい時間を要するかもしれません。人によっては1年以上になってしまうかもしれません。

 ゆるみきってしまった縫合や筋膜は、そう簡単には力を回復しません。時々来店していただき施術を行いますが、それだけでは足りませんので、自分で修復のためのケアをし続けなければなりません。改善に取り組み始めた当初は3歩進んで2歩後退、あるいは3歩後退しているように思える日々が続きますが、ある日を境に急に力を回復して関節が安定する時がやってきます。そんな部分が少しずつ増え、やがて頭蓋骨全体がしっかり安定するようになり、心が安らぐ時が必ず訪れます。忍耐、忍耐、忍耐の日々を何日も経験しなければなりませんが、やはりこの地道なやり方が王道だと思います。ゆるんでしまった縫合や筋膜の働きを即効的に回復させるための特効薬的手段はないと思います。特殊能力をもったヒーラーなどにはそういう力があるかもしれませんが、一般的には無理です。
 このような状態に陥った人は「他にもっと有効な方法はないのか?」と耐えきれずに私に迫ってきたりしますが、それは無理なのです。しかし、やがて、必ず安定した状態に戻るのです。

 私が知っている頭蓋骨はこういう特性を持ったものです。そして、解剖学的に顔は内臓(腸管)が表に飛び出したものだと解釈されていますので、顔や頭をいじることは内臓を直接いじっていることと同じことになります。ですから本当に細心の注意を払って取り扱わなければなりません。「エイヤー!」と気合いを入れて一気に取り扱う類のものではないのです。
 今も顔で悩まれている人、顔をいろいろいじっている人、そのような人がたくさんいると思いますが、どうぞくれぐれも注意していただきたいと、そう願っています。

足つぼ・整体 ゆめとわ
電 話  0465-39-3827
メールアドレス info@yumetowa.com
ホームページ http://yumetowa.com

  顎に関係する症状といえば、顎関節症、反対咬合、噛みしめ食いしばり癖、歯ぎしり癖、片噛み癖、といったところでしょうか。
 これらの症状に共通していることは、そしゃく筋から力が抜けない、あるいはついついそしゃく筋に力が入ってしまう、ということです。顎から力が抜ければ大きな問題にはなることはありませんが、本人の意思や自覚に関係なく筋肉に力が入った状態、筋肉が収縮したままの状態が存在するので、問題を解決することがしばしば厄介になってしまいます。
 「どうすれば力が抜けるのか?」この問題はそしゃく筋に限らず全身の筋肉に当てはめることもできます。力を抜くことができればリラックスできますし、呼吸も楽になります。ところが、それがなかなか実現できないので、いつもスッキリしない状態、常に不定愁訴を抱えた状態になってしまいます。

骨格がしっかりしていれば筋肉から自然と力が抜ける
 私はしばしば骨と筋肉の関係について、骨は筋肉が自らを動かすための「足場」という表現を使います。
 私たちがコンクリートやアスファルトなど地面のしっかりしたところに立ったり、歩いたりするときは安心できますので余計な力を使わずにすみます。ところが足場がとても不安定な場所を歩かなければならないとき、例えば細い吊り橋などを渡らなければならないとき、精神的にとても緊張しますが、からだも硬直して動きがとても悪くなります。筋肉もこれと同様です。基本的に骨と骨の間に筋肉があって、筋肉が伸び縮みすることによって骨を動かすので動作が生まれます。この動作を生み出すとき、筋肉は必ず一方の骨を足場にして自らを伸縮して他方の骨を動かします。腕の動きであれば、肘から肩関節にかけての上腕骨を足場に上腕二頭筋、上腕三頭筋という筋肉が伸縮して肘から手首にかけての前腕を動かして肘の曲げ伸ばしを行います。ですから上腕骨がしっかりしていないと上手く肘を曲げることができなかったり、あるいは力を抜いても筋肉がこわばったままなので肘が伸び切らない状態になってしまいます。
 このように筋肉の能力を十分に発揮してもらうためには、その条件として骨格の安定がとても大切です。

側頭筋と咬筋02

舌骨上筋群と舌骨下筋群

 さて、顎関節の動きや顎関節の状態にこのことを当てはめて考えてみます。
 細かい部分では違っている点もありますが、ざっくり表現しますと、顎を閉じる、つまり上顎骨に下顎骨を近づける働きをする主な筋肉はそしゃく筋(外側翼突筋を除く)です。反対に顎を開く(開口)ための主な筋肉は舌骨上筋群と呼ばれる筋肉です。ですから私たちが食事や会話などで顎を使うときは、そしゃく筋と舌骨上筋群がタイミングよく伸びたり縮んだりしながら協働して顎を動かしているということになります。
 重力がありますので、下顎を引き上げる方が引き下げるよりたくさんの力を必要とします。ですからそしゃく筋の方が舌骨上筋群よりはるかに筋力が強くなっています。

 さて、ここで顎を開く動作をそしゃく筋を中心に考えてみます。
 そしゃく筋には体表から触ることのできる側頭筋と咬筋があります。
 側頭筋はしばしば片頭痛おこす側頭部の側頭骨及び前頭骨を足場に、下顎骨の筋突起につながっています。収縮することで下顎骨を引き寄せて口を閉じ、弛緩伸長することで下顎骨を落として開口する動作を行います。
 咬筋は頬骨から耳にかけて繋がっている頬骨弓を足場に下顎骨のエラ(下顎角)につながり、側頭筋同様収縮することで下顎を引き上げ、弛緩伸長することで開口する動作を行います。

内側翼突筋と外側翼突筋

 体表から触ることのできないそしゃく筋として内側翼突筋と外側翼突筋があります。
 内側翼突筋は頭蓋骨の深部にあります蝶形骨を足場に下顎骨(下顎角)の裏側につながっています。口の中に指を入れて頬の内面を触ろうとするとき、歯茎と頬肉の間に壁のように硬くなっているものがありますが、それが内側翼突筋です。収縮することで下顎を引き上げる点は咬筋や側頭筋と同様ですが、それ以外に下顎を横に動かして、そしゃく時の複雑な動きを可能にしています。
 外側翼突筋は、蝶形骨を足場に顎関節のところで下顎骨につながっています。収縮すると顎関節で下顎を少し前に出します。この動きはとても繊細で、閉じて半ばロックがかかったような状態の顎関節からロックを外す働きをします。つまり外側翼突筋の収縮は他のそしゃく筋とは反対に開口に働きます。

 ですから、口を開く動作では咬筋、側頭筋、内側翼突筋が弛緩伸長し、外側翼突筋が収縮しなければなりません。筋肉の弛緩伸長は、簡単に表現しますと“リラックスして力が抜ける”ことです。
 ここで足場の話を思い出していただきたいのですが、安心感と共にリラックスして力が抜けるためには足場がしっかりしている必要があります。つまり側頭骨、頬骨弓、蝶形骨が安定していないとこれらの筋肉から上手く力が抜けないことになります。自分では一生懸命力を抜こうと努力するのですが、それは無理なのです。

顎が落ちるという感覚
 リラックスしているとき、あるいは無意識のとき、口は閉じているけれども顎は少し開いて奥歯が離れた状態になっているのが普通の状態です。口呼吸にならないように意識している人は奥歯を噛み合わせて口が開かないようにしているかもしれませんが、それは噛みしめ状態、つまりそしゃく筋が作動して少し収縮している状態です。収縮力はそれほど強いものではありませんので、短時間のことであればほとんど問題にならないと思いますが、何時間にもわたってそのような状態を続けていますと、そしゃく筋はこわばった状態になってしまい頭痛を招いてしまうかもしれません。このような人は、ご自分では噛みしめている意識はありませんので、「頭痛の原因は噛みしめです」と指摘されても腑に落ちず納得ができないかもしれません。しかし実際には、そしゃく筋から力が抜けない状態で、側頭筋の収縮が側頭部を圧迫して起こす緊張型頭痛になっています。

 さて、例えば椅子に座ってからだを緊張感から解放しますと下顎がスッと落ちるように動きます。夜、眠るために布団に入って目を閉じますと自然と顎がゆるんで下顎が落ちます。状態の良い人は、このようになっているはずです。そしてそのような人は、食物をモグモグとそしゃくする際、顎を開く時にも同じように「顎が落ちる」感じで顎関節が動いているのが感じられると思います。
 ところが、このような説明にまったく納得できない人、何のことやらさっぱり理解できない人、そのような人もいます。結論を先に言いますと、そのような人は顔の骨格が下がっている人です。
 「顎が落ちる感覚」というのは咬筋、側頭筋、内側翼突筋がゆるんで、あとはほとんど重力によって下顎が下がっている状態であると言い換えることができます。頭蓋骨の骨格がしっかり安定していれば、容易に咬筋、側頭筋、内側翼突筋から力を抜くことができますので、重力任せにしておくことができます。
 反対に、顔面が下がって頭蓋骨が不安定な状態の人は、咬筋、側頭筋、内側翼突筋から力を抜くことができません。顎関節を開くために、下顎骨を下に引っ張る舌骨上筋群を通常以上に働かせて下顎を引き下げなければなりません。このような状態の人は、リラックスするために奥歯が噛み合わない状態をつくろうと試みても、舌骨上筋群を収縮させた状態を保たなければならないため、とても疲れてしまいます。ですから、奥歯を噛み合わせた状態(=咬筋、側頭筋、内側翼突筋が少し収縮した状態で、舌骨上筋群が作動していない状態)の方が楽に感じられると思います。布団に入って眠りにつくとき、奥歯を合わせていた方が落ち着くのであれば、顔の骨格が下がっているか、頭蓋骨が不安定な状態である可能性が高いと考えられます。

骨格が自然と持ち上がるのが正常?
 結論を先に言いますと、顎を開こうとしたとき、つまり下顎を下げようとしたとき、自然な反応(反作用)として上顎骨、頬骨、前頭骨、側頭骨などが僅かに上に動きます。そのようにしてからだは頭蓋骨を安定させ、顎関節が脱力できる状態にしているようです。
 鼻筋の一番上、眉間の辺りに軽く指を当てて観察してみます。普通の状態の人であれば、下顎を下ろそうとするのと同時に眉間がわずかに上に動くのが感じられると思います。眉間のすぐ上には前頭筋という表情筋がありますが、それが微妙に収縮するのも感じられると思います。
 ところが、頭蓋骨の下がっている人、表情筋の働きが悪い人などはこのようには動きません。顎を開くときに脱力することができないため力を必要としてしまいます。
 正常に近い状態の人は食物をそしゃくする場合、下顎を下ろすときにはほとんど力を使いません。ですから、顎を引き上げて噛むときにだけ力を使えばよい状態す。往路は休んで、復路だけ力を使うようなリズムでそしゃくすることができます。一方、顎を開くときにも力を使わなければならない人は、往路も復路も力を使う状態ですから、息を抜いて休むことができないので筋肉は疲労しやすくなります。
 こういう意味でも、頭蓋骨を整え、表情筋の働きを整えることは大切なことだと言うことができます。

食物を噛みながら息苦しくなってしまうのは異常な状態
 食事中のお喋りが好きな人は、口に物を入れた状態でクチャクチャしながら噛んだり喋ったりする傾向があります。それは行儀の良いことではありませんが、整体的な観点では特に問題はありません。ところが、お喋りしながら食べているわけでもないのに、口を閉じてモグモグ噛み続ることができず、クチャクチャ噛んで、噛んでいる途中で息継ぎしなければならないような人や子供がいます。その状態は整体的に見て芳しくありません。
 顔の骨格が下がっていたり、表情筋(顔面神経)の働きが悪かったりしますとモグモグそしゃくしながら鼻から息を入れることができにくくなります。ですからすぐに口を開いて口呼吸をしてしまいます。あるいは食べながら口呼吸をするため、モグモグせずにクチャクチャ口を開いてそしゃくするようになります。(親御さん達はお子さんのこのサインを見逃さないで欲しいと私は思っています。)
 そうなりますと歯ぎしり、噛みしめ、首肩の凝り、浅い呼吸、胃腸の不調といった症状を招きやすくなります。それは小さなお子さんでも同じです。本人はまったく自覚していないかもしれませんが、3歳とか5歳とかの幼児でも肩こりになっているのを見たりします。お腹が硬くなって、顔が下がっているのです。
 乳幼児でも足裏が硬くなっている子がたくさんいます。硬く平らなところばかりを歩いていることが原因の一つだと考えられます。足裏が硬くなって腹筋がこわばり、頭蓋骨を下に引っ張ってしまうので顔が下がります。すると、そしゃくが上手くできなくなりますが、そういう一連の流れが考えられます。

「顎先が小さい?」‥‥舌骨上筋群や喉がこわばっている
 反対咬合ではありませんが下顎が少し前に出る傾向にある人が、「私の顎が小さいのはどうしてですか?」 と、まったく予想外な質問をされました。私は下顎が目立つような感じを気にしているのかな? と思っていたからです。「顎は十分に大きいけれど」と一瞬心の中で思いましたが、「そうか、顎先からすぐに喉の膨らみになっていることを指摘しているのか」と思い直しました。
 「顎の下(底面)がスッキリしていない」、「首と喉と顎の境がよくわからない」、「喉が硬く大きくなっている」と感じている人はこの方と同じような状態にあります。 下顎の底面には、顎を下に引っ張って開口させる舌骨上筋群があります。そして、喉のすぐ上にある舌骨から首の前面を胸骨まで繋いでいる舌骨下筋群があります。
 普通に食べたり喋ったりしている程度の顎の開閉では、舌骨上筋群が働くだけで事足りるため、舌骨下筋群を使うことはあまりないと言います。欠伸するほど大きく口を開いたり、声楽家や歌手の方が声帯の能力をフルに引き出して歌うときなどは舌骨下筋群がたくさん使われます。
 顎の底面が狭く、すぐに喉仏にぶつかってしまうような人は、舌骨上筋群も舌骨下筋群もこわばっているということですが、その理由は二つ程考えられます。
 一つはすでに記しましたが、骨格が不安定な状態なので開口時にそしゃく筋から力を抜くことができず、主に舌骨上筋群の力で下顎を引き下げなければならない時です。舌骨上筋群に通常以上の負荷をかけることになりますので、筋肉がこわばり、硬く太くなってしまいます。
 顎が落ちる感じで開口できる場合は、舌骨上筋群に負担を掛けることもありませんので、リラックスした状態で顎を使うことができます。ですから筋肉が変調状態になることはありません。

舌骨上筋_口腔底2

 二つ目は、舌骨上筋群の中で顎舌骨筋とオトガイ舌骨筋を主体に使っているからです。この二つの筋肉は下顎やオトガイ(顎先)の方に舌骨を引きつける働きをしますので、オトガイのすぐそばに舌骨を含めた喉が来てしまいます。すると舌骨と胸骨を繋いでいる舌骨下筋群は引っ張られた状態になりますので、こわばって硬くなってしまいます。このような方は反対咬合になりやすい傾向ですが、仕草によって顎先に梅干しのようなシワを持ったこわばりが発生します。最近はこのような人が増えたようにも感じます。

オトガイ舌骨筋・顎舌骨筋優位の顎ライン
 
 二重顎も含め下顎の底面がスッキリしていない場合、舌(舌筋)や舌骨上筋群がゆるんで落ちていることと、ここで取りあげましたように舌骨上筋群や喉がこわばって膨らんでいるようになっている場合があります。
 舌がゆるんでいる場合は、イビキや無呼吸症候群の危険性が高まります。舌骨上筋群や喉がこわばっている場合は、呼吸がしづらい、頭部への血行不良、目や鼻などの感覚器官に支障が現れる、舌の動きも含めてそしゃくや喋りに不具合を感じるなどの症状が現れる可能性が高いと思われます。

顎を上手に使うために
 噛みしめや歯ぎしり、食いしばり癖などの影響でそしゃく筋が強くこわばり、顎関節症になったり、顎の調子が悪かったり、頭痛や首のコリで辛い思いをしている人はたくさんいます。また、噛み合わせがしっくりいかないために不快な思いをしていたり、奥歯で食物を噛むことができない人もいます。
 時々、噛み合わせについてとても細かい情報を教えてくださったり、同時に学説的なことについて質問される方もいます。しかし現在の医学的な見解では、頭蓋骨はほとんど固定されていて「動かない」ということを基準にして理論が展開されているようですので、私のこのような話はまったく受け入れられないことでしょう。
 「頭蓋骨は簡単に動きます」そして、「だから頭蓋骨を直接動かしては危険です」という現場で実感している認識を土台として申し上げれば、「頭蓋骨は動かない」という見解でいる限り、医学は噛み合わせや嚥下やそしゃくに関する問題を解決することはできないと思います。

 自然現象は、作用があれば必ず反作用があるというのが法則です。下顎が下がれば上顎は反作用として上がります。下顎が上がれば、上顎は下がります。下顎は腹側(陰)であり、上顎は背側(陽)です。ですから下顎を自然に落とそう(下げよう)とするなら、同時に上顎が自然と上がる状態にしておかなければなりません。上顎は背側ですから、尾骨・仙骨から出発して後頭部にくっついている背筋がしっかりしている必要があるのです。
 その他にも、眼鏡をかけ続けているため鼻骨が下がり上顎が下がっている、ご飯をあまり噛まないのでそしゃく筋の働きが悪くなり、側頭骨が歪んで上顎が下がってしまう、いつも下を向いているので首の後面が伸びてしまい上顎が下がっている、というのもあります。
 いずれにせよ、陰と陽は一対であり、互いに影響を及ぼし合う関係ですから、下顎の動きを快適にしようと考えるならば、上顎側(背側)を良い状態にしておかなければなりません。これを平たく表現しますと、「頭蓋骨が安定していて顔が下がっていない状態」が顎を上手に使うためには必要だということになります。

 顎の問題で悩まれている方は、原因として考えられる要素としていろいろあるかもしれませんが、骨盤、背筋、首という視点で考え直してみますとヒントになることが浮かんでくるかもしれません。


顎関節の動き01
顎関節の動き02

顎関節の動き03

顎関節の動き04

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