医学界では、頭蓋骨はほとんどずれない、動かないことになっているようです。「頭蓋骨や顔が変形してしまう、寝て起きると顔が変わっているし、枕に後頭部をつけて寝ることはペシャッとなりそうで怖い」と医師に訴えても「あり得ない」と言われ、精神科に回されそうになると仰っていました。
私は実際の解剖を経験したこともなく、直に頭蓋骨や骨盤を触ったこともありません。ですから「頭蓋骨が変形することはない」「仙腸関節もたやすく動くことはない」と言われますと、「確かに解剖所見ではそうかもしれません」と思いますが、同時に「屍体と生体では違うのではないか」と思います。私は筋肉や皮膚の上からしか頭蓋骨や骨盤を触ることはありませんが、常に生きているからだを触っていますので、頭蓋骨や仙腸関節が簡単に動くことはよく知っています。
私が整体の学校に通っていた頃、先生は骨盤の模型を手に取りながら、「このように骨盤は表面も裏面も強靱な靱帯でガチガチ固められているので仙腸関節はほとんど動かないと考えられる」と説明していました。確かに「靱帯(関節を強固にし、その運動を制御する)」という言葉の印象と模型を見せられた印象で想像しますと「仙腸関節を動かすことは大変なことだ」と感じてしまいます。
マシュマロのように感じた頭蓋骨
むくみで悩んでいる人はよくおわかりだと思いますが、足のむくみが強いとき、スネを指で押しますと凹みができてしばらく戻らなかったりします。頭蓋骨の弛み方が進行しますと、これと同じような感じになります。頭を左から右に押しますと、そのように頭が変形してなかなか戻らなくなります。頬骨を押しても同様になります。それはむくみの激しいときに皮膚を押すと凹んでなかなか戻らなくなるのに似ています。「まるでマシュマロのようだなぁ」、私がもっとも重症だと感じた頭蓋骨の状態です。
歩く一歩一歩の振動で頭の骨がそのように揺らされ、頭を横に回すと後頭部や頭頂部が時間遅れで後から着いてくるような感じになってしまいます。それまで一つにまとまって一体化していた頭蓋骨がバラバラに動いてしまうように感じられるのだと思いますが、その不安感は大変なものだと思います。
このような状態になってしまった人は「まさかこんなに酷くなるとは‥‥」と後悔されますが、同時に「もう生涯、元の状態には戻らないかもしれない」と強烈な不安感に襲われるようです。医師に相談しても「理解してもらえない」と感じてしまうのであれば、尚更そうだと思います。
ゆるみきってしまった筋膜、縫合はじっくり取り組むしかない
20歳を超えたばかりの若い女性は、額の吹き出物やニキビが気になり、四六時中それらをいじったり、つぶすようにして頭蓋骨を押していたと言います。そうしているうちに少しずつ頭蓋骨がゆるみだし、あるとき「自分の顔がおかしくなっている」と危機感を感じ、美容整形や整体院を訪ねるようになったということです。整体院ではいろいろなやり方で頭蓋骨をいじられ、美容整形で顔にメスをいれるようになり、益々歪みと不安定さが増し、私のところに来店されました。
「いじりすぎたために筋膜がゆるみ過ぎてしまい、何度も直接頭蓋骨を動かしたので縫合関節がゆるんで形が変わり、安定性がなくなってしまった」というのが実際の原因だと思います。
こうなってしまったら、筋膜を元の状態に戻し、ゆるんでしまった縫合関節を元の状態に戻すしか方法はありません。それは時間と手間のかかることです。忍耐力が必要です。しかし、これしか方法がないと私は思います。
この女性は最初は週に2度ほど来店され、それが週1になり、やがて月に2度ほどのペースになりましたが、1年近く来店されました。「気になって、気になって、つい触っていじってしまう」という癖がなかなか抜けなかったようです。
皮膚や筋膜は触り方次第で、しっかりしたり、反対にゆるんでしまったりします。時々電話で「何処をどう触ればいいのか?」と問合せを受けますが、言葉で説明できるものではありません。実際に体験していただいて、やり方を覚えて帰っていただきたいのです。やり方自体は非常に簡単です。しかし、触る深さと集中力と意識が大切です。テレビに気を取られながら触り続けても意味のないばかりか、悪い影響を与えてしまうかもしれません。
この若い女性は、今はだいたい3週間に一度くらいの間隔でケアのために来店されますが、「気になって触ってしまうことはもうなくなった」と言います。今の安定した状態からすれば、いったいあの時の状態は何だったのか? と思えます。
生身の私たちの骨格は固定されたものではない
施術をしていて「硬いなぁ!」と感じるものは筋肉や靱帯や筋膜など軟部組織です。それらが硬くなっているために骨格が動かしにくというのはありますが、骨格が硬くて動かしようがないと感じることはありません。
頭蓋骨は20以上の骨が縫合関節というしっかりとした結合組織で結びついて一体化していますので「硬く固定されたもの」という印象をお持ちかもしれません。しかし実際には呼吸をする度に少し拡がったり縮んだりしています。そしゃくする度に少し動きますし、喋る度に動いています。関節があるということは、そこが動くようにできているということです。動かなくて済むならたくさんの関節がある必要はありません。
それは骨盤の仙腸関節も同様です。骨盤の模型を見ますと、仙腸関節は強力な靱帯でガッチリ固められていますので、まったく動きが制限されているように思えます。実際、学校の授業で先生はそのように説明されていました。しかし、実際には歩く度に仙腸関節は動いていますし、立ったり座ったりする時に骨盤の形は変わりますが、それは仙腸関節が動いているから可能になります。もし仙腸関節がガッチリ固定されて動かないような状態でしたら、私たちの動作はロボットのようになってしまい、しなやかな動きはできなくなってしまいます。
腰痛やギックリ腰の時には、私たちの動きにスムーズさが欠けてしまいますが、それは仙腸関節の動きにしなやかさが欠けてしまうからだと考えてもよいと思います。
生気が失われてしまった、単なる物質としての靱帯、筋肉、筋膜、骨などを観察しますと「仙腸関節も頭蓋骨もほとんど動かない」という結論になるかもしれませんが、それは生きている生身の私たちには全然あてはまらないと私は考えます。
簡単に動いてしまうので、直接骨格を動かさない
「整体」に対する一般的なイメージは「骨をボキボキする」ということのようです。ですから、そのようなことを一切しない私の施術は「何という施術方法なのか?」としばしば聞かれます。
例えば、なんとなく肩関節や手指の関節に違和感を感じるので、故意に動かして「バキッ」と音を鳴らす癖を持った人がいます。それによって関節がはまり、スッキリすると言います。それはそれで整体の一つの手法ですから、ボキボキ直接骨を動かす整体も「あり」だと思います(私には上手くできませんが)。
但し、頭蓋骨は別です。下顎骨を除いた頭蓋骨表層の骨は「縫合」という接続方法で隣の骨と結びついていますが、一つ一つの骨はパズルのピースのような関係性で頭蓋骨全体を形作っています。ですから一つが狂いますと全体に影響が及ぶことになります。どれかの骨を押し続けますと、その周辺の縫合がゆるみます。すると、その骨が安定性を失いグラグラすることになりますが、加えて頭蓋骨全体が歪みだし不安定になることになります。
頭蓋骨を形作っている縫合関節は柔らかくて丈夫です。これは頭蓋骨に限ったことではありませんが、私たちのからだの骨格は「強く押すと反発する。そっと柔らかく触る(圧する)と動きがわかる」という特性があります。この特性を利用して私は、骨が上や下や右や左に「ずれている」と把握しています。見た目で骨のずれを察知しているのではなく、軽く圧して骨の動き具合を感じて判断していますが、こうした頭蓋骨の特性を無視して頭蓋骨をいじりますといろいろと問題が起きる可能性が高まります。
コルギや小顔整体などで、頭蓋骨をグイグイ押し込みますと、最初は反発します。それは「強く押すと反発する」という特性です。ところが何度も何度も同じことを繰り返したり、あるいはたった一回かもしれませんが、縫合関節が反発する力を失ってしまいますと頭蓋骨は簡単に変形するようになります。コルギや頭蓋骨を直接操作する小顔整体はこの特性を利用して頭蓋骨を変形させているのかもしれないと思えてしまいます。他にも機械や電気を使って縫合を意図的にゆるめ、頭蓋骨が変形しやすい状態にしている方法があるのかもしれません。
何処か一部分の縫合関節がゆるんだだけの状態であれば、すぐに取り返すことができます。しかし一部分の縫合がゆるんだだけでも頭蓋骨全体は歪みますし、そこに不安定さまで混じってきますと、気持ちとして「何とかしなければ」という思いが心を埋めるようになり、施術を重ねたり、自分でいじり続けることが制御できなくなってしまったりするようです。するとゆるんだ縫合の箇所が増えてしまいますので、益々頭蓋骨は不安定になり、やがてマシュマロのような頭蓋骨への道を歩むことになってしまうのだろうと思います。
- 最初は頭蓋骨が反発するので「もっと強く押して屈服させよう」という思いでいじり始める。
- そんなことを繰り返しているうちに、突然反発しなくなる時がやってきて「これは上手くいくかも(小顔になるかも)」と思い、さらにいじり続ける。
- 「なんか骨の一部が落ち込んでいるように感じはじめ、ちょっと不安」
- 「目や鼻など感覚器官に不調を感じ始め、顔面に違和感を感じ始める」
- 焦る気持ちも混じり、「なんとかしなければ」と強く思うようになって、負のスパイラルへの道を進んでしまう
屍体ではなく、生きている私たちの頭蓋骨やからだの骨格の関節は、丈夫ですが、とても柔軟です。ですから骨は簡単に動きます。硬く固定されたように見える頭蓋骨は、実は(ある範囲の中で)簡単に動かすことができます。ですから私はあえて「直接頭蓋骨を操作してはいけない」と申し上げたいのです。
今から少し前、コルギがとても流行った頃、「自分で行うコルギ」みたいな本が売られていました。「どうしてこんな危険なものが一般に売られているのだろう?」と、ゾッとしました。個人的な見解ですが、まったく恐ろしいことだと思います。
絶望も、諦めることも必要ない
頭蓋骨や顔を乱して、深い悩みや絶望感にさいなまれてしまった人が何人も来店されました。顔や頭は私たち自身(自己)に一番近いところですから、そこが物理的に不安定になりますと精神的にもとても不安定になってしまいます。
「もう、生涯元の状態には戻らないかもしれない」
心全体が不安感で埋まってしまいます。しかし、忍耐強く地道に修復に取り組んでいけば必ず元の状態、不安感が消える状態になる日が来ます。それまでに3ヶ月以上、あるいは半年くらい時間を要するかもしれません。人によっては1年以上になってしまうかもしれません。
ゆるみきってしまった縫合や筋膜は、そう簡単には力を回復しません。時々来店していただき施術を行いますが、それだけでは足りませんので、自分で修復のためのケアをし続けなければなりません。改善に取り組み始めた当初は3歩進んで2歩後退、あるいは3歩後退しているように思える日々が続きますが、ある日を境に急に力を回復して関節が安定する時がやってきます。そんな部分が少しずつ増え、やがて頭蓋骨全体がしっかり安定するようになり、心が安らぐ時が必ず訪れます。忍耐、忍耐、忍耐の日々を何日も経験しなければなりませんが、やはりこの地道なやり方が王道だと思います。ゆるんでしまった縫合や筋膜の働きを即効的に回復させるための特効薬的手段はないと思います。特殊能力をもったヒーラーなどにはそういう力があるかもしれませんが、一般的には無理です。
このような状態に陥った人は「他にもっと有効な方法はないのか?」と耐えきれずに私に迫ってきたりしますが、それは無理なのです。しかし、やがて、必ず安定した状態に戻るのです。
私が知っている頭蓋骨はこういう特性を持ったものです。そして、解剖学的に顔は内臓(腸管)が表に飛び出したものだと解釈されていますので、顔や頭をいじることは内臓を直接いじっていることと同じことになります。ですから本当に細心の注意を払って取り扱わなければなりません。「エイヤー!」と気合いを入れて一気に取り扱う類のものではないのです。
今も顔で悩まれている人、顔をいろいろいじっている人、そのような人がたくさんいると思いますが、どうぞくれぐれも注意していただきたいと、そう願っています。
足つぼ・整体 ゆめとわ
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