ここで“顔が下がる”というのは頭蓋骨の中で、顔面(前面)の骨格が本来の位置より下がってしまうことを言っています。頬がたるんで下がる、顎のラインがたるんで下がる、というのとは本質的に意味が違いますが、顔の骨が下がると確実にそれらもたるんでしまいますので「顔のたるみの原因の一つとして骨格が下がっていることがある」と言うことができます。
 
 顔の骨(前頭骨、頬骨、上顎骨、下顎骨など)が下がる理由として考えられることは以下の通りです。
①頭蓋骨や顔の皮膚・筋膜・筋肉を損傷した場合
②からだの歪みの影響が頭蓋骨を歪めている場合
③噛みしめ、片噛み、歯ぎしり、食いしばりなどの癖によりそしゃく筋が変調状態にある場合
④歯茎が傷んだり弛んだりしている場合
⑤筋肉・筋膜・皮膚の疲労や衰え‥‥加齢など

 実際の施術では以上の5項目からの影響を考えて最終的に頭蓋骨を整え、表情筋の働きを整えるようにしています。ですから、おそらく皆さんがイメージしていると思われる「たるみを改善するに顔のマッサージをしてハリを回復させる」ということには重きを置いていません。

頭蓋骨の前後の関係‥‥前が下がると後ろが上がり、後ろが上がると前が下がる
 頭蓋骨において“前面”と言えば顔のことであり、具体的には前頭骨、鼻骨、頬骨、上顎骨、下顎骨のことです。そして“後面”は後頭骨のことであると言ってもよいと思います。

頭蓋骨の後頭部と顔面部の関係

 頭蓋骨の前面と後面の関係はシーソーのようになっていて、片方が下がると他方が上がるという現実があります。後面の後頭骨は、後頭部~後頸部~背中~骨盤後面という筋肉、つまり脊柱起立筋によって仙骨に、他の背筋によって骨盤後面につながっています。ですから脊柱起立筋が伸びた(ゆるんだ)状態になりますとお尻(仙骨)が下がり後頭骨が上がります。猫背のような姿勢の人は背中の筋肉が伸びてしまいますので、このような状態になっています。すると前頭骨や鼻骨が下がり、それに追随するように頬骨、上顎骨、下顎骨が下がってしまいます。
 また頭蓋骨前面の下顎骨は喉や首前面の筋肉につながり、胸~腹部~骨盤前面(恥骨)につながっています。例えばお腹が冷えて腹筋が硬くなる(こわばる)と胸が下がり首前面や喉の筋肉が緊張して下顎骨を下げてしまうということが起こります。そして下顎骨を下げるだけでなく顔の筋膜も下に引っ張られますので、顔前面の骨が全部下がってしまいます。そして、実際、こういう状況は大変多いので顔を整える施術の最初に背中側とお腹側の状態を確認し、それらを整えてから顔への施術に入るという手順が多くなります。
 60分の施術時間のうち、最初の30分をからだを整えることに費やすということはよくあることです。なぜなら顔や頭蓋骨を集中的に整えたとしても、腹筋や背筋の影響で元の状態に戻ってしまうのであれば整体の意味がなくなってしまうからです。

鼻骨が下がると顔が下がる
 顔が下がっている人はほとんどの場合、鼻(鼻骨)が下がっています。顔を上げる施術を行う場合、目安にする部位がいくつかありますが鼻骨は最初の目安です。見た目にも、鼻骨が下がりますと鼻筋の通り方にシャープさがなくなりますし、鼻骨はちょうど両眼の間にありますのが、その周辺の凹凸が減りますので、光と影の関係で“ホリの少ない顔”のように見えてしまいます。反対に鼻骨が上がって本来の位置に戻りますと、額から真っ直ぐに降りる鼻筋がはっきりし、眼窩の凹みもしっかり現れますので、引き締まった顔立ちに見えます。

表情筋のこわばりが顔を下げる

 鼻骨が下がる要素として眼鏡の影響はあります。昨今は眼鏡もだいぶ軽くなっているようですが、それでも重さがあります。それが一日の多くの時間、鼻骨にぶら下がっていれば鼻骨と前頭骨を繋いでいる関節がゆるんでしまい鼻骨は下がってしまいます。
 その他にも鼻骨が下がってしまう理由は幾つかあります。後頭骨が上がっていることもその一つです。また鼻骨は上顎骨と関節していますので、上顎骨が鼻骨を引っ張るという状況で鼻骨が下がってしまうこともあります。鼻と眼の間、そして眼の下(頬骨周辺)には幾つかの表情筋がありますが、これらの筋肉は日々の生活の中で非常にたくさん使われます。そのため収縮して硬くなっていることが多々あります。(強めに指圧すると痛みを感じます)。これらの筋肉は上顎骨と鼻骨をつないでいますので、筋肉の収縮が鼻骨を引き下げてしまうという状態を招きます。実際、鼻骨を上がる施術では、この辺りの表情筋をゆるめます。すると鼻骨だけでなく頬骨も上がりますので眼窩の状態も良くなり眼が大きく開くようになります。
 そして定かな理由はわかりませんが、胸(胸骨)と鼻骨は深い関係にあります。胸骨上には筋肉はあまりなく、ほとんど筋膜の下に骨があるような感じになっていますが、この筋膜がゆるんでいますと鼻骨が下がってしまうという関係があります。胸は環境に対するセンサーのような役割をしていますし、心理的な状態も胸に現れます。心配事や不安があると胸は閉じてしまいますが(実際に肋骨が閉じます)、その他にも天気や季節的要因の影響を受けます。花粉症の時期鼻の通りが悪くなりますが、その理由の一つは鼻骨が下がっていることです。胸骨を観察しますと力弱く感じられ筋膜もゆるんでいます。ですから花粉症の症状を改善するために胸骨の状態を整えて筋膜のゆるみを解消する施術を行いますが、それは鼻骨を上げて鼻の通りを良くするためもあります。

からだの前面(腹側)の筋肉が顔を引っ張って下げてしまう場合
 東洋医学ではからだの陰(腹側)と陽(背側)の境目として「人中」というツボがあると考えられています。“人中”は上唇と鼻孔の中間にありますが、からだの急所とされています。また解剖学的には上歯と下歯の接点、つまり上顎骨と下顎骨が背側と腹側を分ける骨であると考えられています。それは顎関節のことでもあり、上歯(上顎骨)から上部が背側であり、下顎骨は腹側です。

腹筋のこわばりによる顔の下がり

 腹側の出発点は骨盤の前面(正確には骨盤底)であり、恥骨部から始まる腹直筋を例にとると解りやすいかもしれません。腹直筋は恥骨部から始まり肋骨(胸郭)の前面につながっています。仮にお腹の冷えなどによって腹直筋がこわばって(収縮した状態)いるとします。すると肋骨は恥骨部の方に引っ張られますが、その流れは首の前面を経由して舌骨を引っ張り下顎骨を下げてしまいます。腹直筋がこわばってしまう理由は“お腹の冷え”以外にもありますが、猫背などの悪い姿勢を長く続けていること、丸まっている姿勢が“楽”という状態もあてはまります。ともに腹直筋をこわばらせたり、こわばっていることを象徴しているからです。
 下顎骨とそれ以外の頭蓋骨は陰と陽の関係にありますが、同じ顔を形成していますので筋膜や皮膚はつながっています。ですから腹側のこわばりによって下顎骨が下がりますと筋膜や皮膚が顔全体を下に引っ張りますので、結果的に「腹筋がこわばると胸が下がり顔も下がる」と言うことができるようになります。他者とくらべてバストの位置が「なんとなく下にあるな」と思われている人、あるいは「本来の自分より胸が下がっているように感じる」と思われる時は、ほぼ間違いなく顔が下がっていると考えられます。

 また腹筋だけでなく、手で言えば、手のひらは腹側であり、手の甲は背側です。手のひらを大きく伸びやかに拡げようとしても中途半端で終わってしまい、拡げきれない人は腹側の筋肉がこわばっているということです。左手は伸びやかに拡げることができるのに右手のひらはこわばっているという場合、顔の右側だけが下がっているという状態かもしれません。実際にはもっと複雑にいろいろな状況が絡み合って顔の歪みをつくっていますのでこんなに単純ではありませんが、このような原理によって顔の歪みがもたらされている場合もあると理解していただければと思います。そして、こういうからだの歪みが顔の歪みをつくっているというケースがとても多いと感じています。

お尻が下がると顔も下がる
 “頭蓋骨の前後の関係”で説明しましたとおり、後頭部(後頭骨)が上がると顔は下がります。そして後頭骨は仙骨と対になって連動して動いています。通常の場合、呼吸で息を吸う時、仙骨が上がると共に後頭骨は下がります。つまり息を吸うとき顔があがります。このようにならない人は呼吸の仕方がおかしいか、顔が歪んでいると思われます。
 ですから、骨盤つまりお尻が下がっている人は常に後頭骨が上がっているため顔が下がっている状態であると言えます。骨盤が下がる理由はたくさんありますが、普段の姿勢や歩き方は大きな影響力を持っています。背中の丸まった悪い姿勢で背中の筋肉が伸びて(ゆるんで)しまった人は後頭骨も上がり仙骨も下がります。ムチウチを経験した人でしっかり治癒していない人の多くは首後面の筋肉がゆるんでいますので後頭骨が上がり骨盤が下がっています。ウエストが緩いわけでもないのにジーンズやスラックスがすぐに下がってしまうような人はお尻が下がっている人と言えます。

噛みしめや歯ぎしりの癖
 再三登場する噛みしめ、歯ぎしり、食いしばりの問題ですが、これらも顔の下がりに影響します。これらの癖を持った人は“ついつい顔に力が入ってしまう人”に分類されますが、そしゃく筋だけでなく頬を中心とした表情筋もこわばっています。上唇から頬骨にかけて頬骨筋や笑筋などがありますが、これらがこわばりますと頬骨を引き下げてしまいます。頬骨が下がりますと額の骨である前頭骨も下がりますので眼窩が下がり目が開きにくくなります。そして額が下がるということは顔全体が下がるということです。また鼻の周辺にも幾つかの表情筋がありますが、これらがこわばると鼻骨を下げますので、やはり顔全体が下がってしまうということになります。私たちは日常生活において喋ったり、笑ったりしてこれらの表情筋をたくさん使っていますが、その影響で頬骨の下にある筋肉がまるで骨のように硬くなっている人がたくさんいます。目の下の部分を強く指圧したときに痛みを感じるのは筋肉が硬くこわばっているからですが、この辺りの筋肉を指圧してゆるめるだけでも目が開けやすくなり額が上がる場合もあります。

側頭筋と咬筋

 また、そしゃく筋である咬筋は顎関節から頬骨につながっている頬骨弓に付着していますので、噛みしめや歯ぎしりなどによって咬筋がこわばってしまいますと頬骨弓、つまり頬骨を下げてしまいます。ですから顔が下がるのを予防するためには、噛みしめ、食いしばり、歯ぎしりなどの癖や表情筋のこわばりが蓄積しないよう気をつけなければなりません。また日々のフェイシャルマッサージでは、顔の表面(皮膚や表情筋)だけでなく深い部分や咬筋の硬さをゆるめるケアをすることが望ましいと思います。そのやり方は静かにじっくりと指圧することが一番です。みなさんがやりがちな、“グイグイ”揉んだり指圧したりすることは組織を傷つける可能性がありますのでやらないでください。

歯茎の問題
 歯茎の影響については、現在いろいろと事例を集めて考察しているところですが、現象面のみで申し上げれば「歯茎がゆるむと舌がこわばり顔が下がる」となります。
 歯茎がゆるむ理由としては、歯槽膿漏や炎症など病的な要因もありますが、私のところに来られる方々の場合は、歯列矯正、インプラントなどによる影響が多いです。また、噛みしめや食いしばりによって歯茎に負担が掛かりすぎて弱くなっていることもあります。
 歯茎は上顎骨と上歯、下顎骨と下歯をつないでいて歯の健康やそしゃくの安定に深く関わっています。ですから歯茎の健康が損なわれますと、歯やそしゃくに関わる組織=舌、そしゃく筋、口の中の壁(口蓋や咽頭、頬)などに影響が及ぶと考えることができます。
 「首肩から力が抜けない」という項目で取り上げましたが、舌は神秘的で大きな影響力を持っています。首肩から力が抜けない人の多くは舌が硬くこわばっている傾向があります。顎を引く動作で舌は収縮しますが、舌がこわばっている人はいつも顎を引いている状態と同じであると考えてもよいと思います(程度はそれぞれ違いますが)。このような人は何かあると瞬時に顔に緊張が生まれ、呼吸が止まって息苦しくなり、首や肩に力が入ってしまいます。24時間、365日、ずっとこのような状態で生き続けることはそれだけで「大変」なことだと感じてしまいます。
 そして歯茎の状態が悪い時は、舌がこわばってしまいます。歯列矯正をした人、インプラントを行っている人、歯槽膿漏の人、あるいは歯茎がゆるんでいるかもしれないと思っている人は、両手の指先を使って歯茎に届くように押しあててみてください。歯茎に指先が当たっている時は舌がゆるみ、手を離すと舌がこわばる(舌先が少し引っ込む)のであれば、歯茎の影響が舌に及んでいるという証です。
 舌はこわばると下顎を引き寄せると同時に下げる働きをします。つまり舌がこわばっている人は顎が下がっているということです。そしてそれが顔全体を下げてしまうことは上記で説明したとおりです。

 先日「三白眼(黒目が小さく白目の面積が大きい)」を改善したいという要望がありました。「そこまで整体で可能かどうか?」と一瞬考えましたが、要望にはなんとか応えたいという思いもありまして過去のことをいろいろ尋ねました。「幼児の頃は三白眼ではなく、中学性になった頃から黒目が小さくなったように思う。」ということでしたので、子供の頃の癖について尋ねました。すると「顎を引いてにらむように見る癖があった。」ということでした。顎を引く動作は舌を収縮させる動作です。そして、にらむことは虹彩(黒目)を緊張させる動作です。ですからこの方は子供の頃、舌をこわばらせ、さらに黒目をこわばらせていたということになります。このことが影響しているかもしれないと思い、舌のこわばりをゆるめるように施術をしていきますと少しずつですが黒目が大きくなっていきました。“舌は神秘的”と前に少し記しましたが、舌が全身に及ぼす影響力はかなりのものだと思います。

打撲や損傷の影響
 転んで顔を打撲したことがある、頭を強打した経験がある、顔を殴られたことがあるなどで顔面や頭部の骨や筋肉や皮膚・筋膜が損傷し、それが治りきっていないことが原因で顔が下がっていることもあります。また手術を行った経験のある人は縫合の部分が弱くなっていますが、その影響で顔が下がっていることもあります。医師は手術が成功し、縫合部分がしっかりつながっていれば、それで治療が終了、「問題なし」と判断するのだと思いますが、整体的な観点では問題が残ったままになります。
 縫合部分は“すっかり元の状態に戻った”ということとは違います。からだには電気が流れていて、その流れの有様によって筋肉や筋膜や皮膚の働き具合は変わります。縫合によって皮膚も筋膜もしっかりくっつきますが電気の流れは縫合部で途絶えてしまうように感じます。ですから多くの場合、縫合部周辺の筋肉・筋膜・皮膚の働きは弱くなっています。それによって骨格は歪みますが、それだけでなく感覚器官の働きが悪くなったり、体調が“今ひとつパッとしない”という状態になってしまうことはよくあることです。そして、そういう人はたくさんいます。

加齢や衰えによる影響
 加齢によって筋肉の力や働きが衰えていくのは自然の流れであり、自然界に存在するかぎり避けることのできない現象です。しかしながら同じ40代、50代、60代であっても、個人差があり顔の下がり方に違いが生じているのも現実です。
 加齢による影響だけついて言えば、骨と骨をつないでいる関節線維の力が弱まり骨格全体がゆるんでしまうこと、代謝力が弱まってむくみが生じるため組織全体が重くなり、また筋力が弱まるため重力に負けてしまうことなどが考えられます。
 ですから、関節線維をケアすること、むくみが生じないようにケアすること、適切なフェイシャルマッサージを行って表情筋や皮膚の力を補うことなどが対策となります。そして加齢(老化)現象が速く進むか、ゆっくりになるかは、摂取するもの、特に薬やサプリメントの影響力は大きいと思います。科学的な見解では、同じ類の薬でも化学的作用の仕方に違いがあるとのことですが、結局のところ、鎮痛剤は神経の働きを鈍らせるものであり、筋肉弛緩剤は筋肉の働きを弱めるものであると私は思っています。
 痛い時には鎮痛剤は大いに役立つと思います。しかし“1日3回、毎食後に”と記され、常に鎮痛剤の効果が消えないように飲み続けるのはいかがなものかと思います。「痛みからは解放されるかもしれないけど、老化はどんどん進む」と私は思ってしまいます。

 老化は骨細胞、筋細胞、神経細胞、血液細胞などの力や働きが衰えることであると考えることができます。つまり細胞レベルで力や働きが衰えることですが、ということはホルモンと深く関わっていることだと考えることができます。なぜならホルモンは細胞に働き方を指示する命令書のようなものだからです。思考はホルモンの分泌に影響を与えます。生活習慣や食物はホルモンに影響を与えます。湿疹で苦しんでいる時、ステロイドホルモンを投与すると速やかに湿疹が改善したりしますが、この一例だけを見てもホルモンの細胞に及ぼす影響力の強さを知ることができます。高齢になっても若々しく見える人は、おそらく思考も若々しいのだと思います。若くても思考が高齢化してしまえば、年齢以上に老化して見えるかもしれません。

 冒頭に申しましたとおり、今回は顔の骨格について記しました。顔の“たるみ”や”むくみ”については直接的に触れませんでしたが、骨格が下がることはそれらの根本原因になると考えることができます。
 ”たるみ”は皮膚や筋膜や筋肉のハリが失われゆるんでしまうことですし、“むくみ”は静脈やリンパの流れが滞ってしまうことでもたらされます。骨格は筋肉の働きや静脈・リンパの流れの基盤です。一所懸命皮膚や筋肉をマッサージしてハリを回復させたり、リンパの流れに刺激を与えてむくみを改善したとしても、骨格が歪んだ状態であれば、その効果は長続きしないと思います。
 また、時々、本来の顔以上に「エラを細くしたい」「小顔にしたい」という要望をお持ちの方から問い合わせがありますが、生来の骨格を乱すような施術は一切行いません。必ず将来的に不調を招く原因になると考えるからです。顔が上がってハリが戻り、むくみが改善すれば顔はイキイキとして魅力的になると思います。小顔矯正などの施術を受け体調不良に苦しんでいる人を見る度に「それは邪道!」という思いが強くなります。くれぐれも気をつけていただきたいと思います。