ゆめとわのblog

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2015年10月

 骨盤の歪みが原因で顕著に自覚できる症状は、腰部の張り、腰痛、下肢のしびれ(坐骨神経痛)、股関節の不調、殿部の痛みなど腰部と下半身に現れる不調です。しかし、それ以外にも頭痛、肩甲骨周辺の張りや痛み、お腹の張り、手の不具合など上半身にも影響が及ぶことがあります。また、骨盤の歪みが原因して太る、胃腸の調子が悪くなる、などということも指摘されています。
 ところで、多くの整体院では「脚の長さが左右で違うのは骨盤が歪んでいるから」ということで、脚の長さを揃えるために骨盤や背骨や股関節をグイッとやって骨盤を矯正するようですが、私はそのようなことをしたことがありません。それは一種のパフォーマンスにすぎないと思っているからです。
 私が整体を学んでいた学校でも、そのような手技を教えていましたが、先生は「ま、一時的な効果だけど‥‥」と言っていましたので、そんな手技は信用できませんでした。
 骨盤矯正も、その他の骨格矯正も、理屈をちゃんと理解した上で行わなければ本当の意味での“矯正”ではありません。そして骨格矯正は“バランス”が大きなキーワードになると考えています。骨盤に繋がっている多くの筋肉のバランス、からだに捻れをもたらせている筋膜のバランス、それらを整えてはじめて“骨盤矯正”の目的が達成されるのだと考えています。

骨盤で確認するポイント
 骨盤の構造のところで説明したとおり、骨盤の骨格は腸骨、恥骨、坐骨が一体となった一対の完骨と仙骨と尾骨でできています。“骨盤が歪む”ということは関節で骨と骨の関係がおかしくなるということですが、一番影響力が大きいのは完骨(腸骨)と仙骨の間にある仙腸関節です。この関節は外側も内側も強力なじん帯でガッチリかためられていますので、一昔前まで「仙腸関節は固定して動かない」という定説もあったようです。ところが実際は、仙腸関節が歪んでいることがとても多いです。

骨盤背面

①左右の腸骨と仙骨の関係
 骨盤上部を背側から見ますと仙骨の上部(専門用語では仙骨底といいます)を挟んで左右に腸骨があります。右利きの多くの人は、仙骨底が右側(時計回り)に少し傾いていて、左側の腸骨が後に傾き、右側の腸骨が外側前方に傾いている傾向にあります。そして左側股関節の伸びが悪いため、うつ伏せになったとき、左側のお尻が右側よ少し高くなっています。腰部も右側より左側がこわばっています。これは右手ばかりを使っていることと、右足に体重を乗せて立っていることが原因だと考えられます。からだには重心を掛けた方の筋肉が伸びるという原理がありますので、右足に体重をかけて立つ癖のある人は、右半身の筋肉がゆむみ、左半身の筋肉がこわばってしまいます。
 この歪みを修整する作業の第一段階は、腸骨を正しい位置に戻せば仙骨の歪みが改善されるのか、あるいは仙骨を正せば腸骨の歪みが改善されるのか、どちらであるかを把握することです。それによって調整しなければならない筋肉がまったく違ってくるからです。

②骨盤の捻れ
 スカートやジーンズなどを履くと、どうもどちらかの骨盤が前に出ているように感じるとか、動いているとスカートが回ってしまう、などというときは骨盤全体が捻れているからかもしれません。
 骨盤が捻れてしまうのは、①の腸骨と仙骨の関係に歪みがあることの他、上半身や下肢からの捻れが原因となっていることも考えられます。
 上半身の捻れが原因となっている場合、多く見られるのは胸郭の上部が利き腕の方に引っ張られ、その反動で胸郭の下部が反対方向に捻れを起こし、その捻れの流れによって骨盤が捻れてしまうことです。鎖骨も注意深く観察すると左右対称でなかったり、脇腹の肋骨を触った感じが左右で違うと感じるときは確実に上半身が捻れています。この捻れは、筋肉で云えば腹斜筋、腹横筋、前鋸筋、大胸筋などのバランスが悪いことでもたらされている可能性が高いです。
 下半身(下肢)からの影響で骨盤が捻れている場合は、原因として考えられることはたくさんあります。膝や足首の不調、O脚、外反母趾、内反小趾、足趾の捻れや曲がり‥‥、ともかくたくさんあります。
 このような場合、仰向けで寝たときに左右の脚の開き具合が股関節で違っていることが見受けられますが、骨盤の捻れを手動で直すと足の開き具合が少し改善するのか、あるいは脚の開き具合を手動で修正すると骨盤の捻れが少し改善するのかによって骨盤の捻れが下半身に影響しているのか、下半身の捻れが骨盤に影響しているのかを把握する目安になります。

③骨盤の開き
 「骨盤が開いている」とはよく使われる言葉ですが、正確には、骨盤の上部が開いているのか、下部が開いているのか、両方が開いているのか、ということを把握しなければなりません。
 女性の場合、出産のときに骨盤が開き、出産後時間をかけてゆっくりと元の状態に戻っていきますが、産後のケアが悪いと骨盤が開いたままの状態になっていることがあります。その場合は、上部も下部も開いた状態の場合が多く見受けられます。
 出産や生理時以外の通常の場合、骨盤は上部と下部がシーソーのように一方が開けば他方が閉じるという動き方をします。例えば、太りすぎや腹筋の働きが悪くなって骨盤の上部(上前腸骨棘=腰骨に手を開いて当てたときに人差し指が当たる部分)が開いてからだの真横近くに来ている場合、骨盤の下部が閉じて左右の坐骨の間が短くなっています。また反対に骨盤底部がゆるんだままで坐骨間が開いていますと、骨盤上部は狭くなって窮屈になってしまいます。
 良いスタイルとかダイエットとかを目指す場合は、大抵骨盤上部の開きを改善したいということになりますが、そのためには骨盤底部の筋肉のこわばりを改善しなければなりません。それをせずに骨盤上部をバンドやコルセットなどで締めつけたところで、それは骨盤の動きの道理に合っていませんので、効果を期待するのは難しいことになります。
 “骨盤の開き”は次に説明する“骨盤の傾き”と表裏一体の関係にありますので、「開きを直したいなら傾きを直さなければならない」ということになります。

④骨盤の傾き
 骨盤の傾きは骨盤矯正にとって非常に重要なポイントだと私は考えています。
 私たち日本人は諸外国の人たちに比べると骨盤が後ろに傾いている(後傾)傾向にあると云われています。その結果、お尻が下がって脚の長さも実際より短く見えてしまいます。また、若い頃に比べて歳を重ねていくとお尻がたれてくる傾向がありますが、それは骨盤の傾きが変わった影響による可能性が考えられます。
 骨盤は背面から見ますと、仙骨を挟むようにして左右の完骨が両側に配置され股関節で下肢とつながっています。そして骨盤の傾きでカギを握るのは仙骨です。仙骨が後に傾きますと、仕組みとして両側の完骨は下部が狭まり上部が開いて骨盤全体が後に傾きます。また両側の完骨の下部(坐骨部分)の間が狭まるか、上部が開きますと仙骨が下がるか後傾してしまい同様に骨盤全体が後に傾いてしまいます。
 仙骨は前傾しすぎても、出っ腹、出っ尻になってしまうのでよくありませんが、実際に前傾している人は太りすぎてお腹が大きく張り出している人ぐらいで、多くの場合、仙骨の後傾を修正するようになります。

仙骨の角度と脊椎の状態

・仙骨後傾の場合
 仙骨の状態は頭部の後頭骨、背骨の際にある脊柱起立筋(脊柱固有筋群)、下肢の内側の筋肉、そして腹直筋の状態によって決まります。

後頭骨と仙骨に影響を与える脊柱起立筋と下肢の筋肉

 頭部の後頭骨との関係で云えば、後頭骨が上がると仙骨は下がります。呼吸で息を吸うときは頭部が膨らむとともに後頭骨が上がりますが、その時仙骨は下に動きます。息を吐くときは反対に後頭骨が下がり、仙骨は上がります。
 いつも下を向き加減、あるいは背中を丸めて作業をしている時間が多い人は、仙骨~背中~首後面とつながって後頭部に達している脊柱起立筋が伸び気味になっていますので後頭骨が上にずれた状態になっています。つまり仙骨は下がった状態になっているということになります。

腹側から見た骨盤の歪み_1

 また、腹直筋は解剖学的には恥骨から始まり肋骨につながっている筋肉ですから、直接的には仙骨とは関係ないと考えられがちですが、現実には腹側の直筋は下顎~首の前面~胸骨~腹部、恥骨を越えて骨盤底~尾骨までつながっています。ですから腹直筋がこわばりますと尾骨を腹側に、つまり前下方に引っ張ることになります。そうなりますと尾骨とつながっている仙骨は後に傾いてしまうことになります。
 時々、喉の周辺から下顎にかけてとても硬くこわばっている人をみかけますが、それは舌筋などがこわばっているということです。このこわばりはそのまま腹直筋につながり、尾骨と仙骨を後傾させる原因となります。また、次に説明しますが、腹直筋のこわばりは恥骨を頭部の方へ引っ張りますので、骨盤全体が後傾する原因になります。
 
 原理について確定的なことは云えませんが、実際の現象として、下肢内側の筋肉の働きが悪くなりますと仙骨は下がってしまいます。足の母趾の内側から踵にかけて、ふくらはぎの内側(ヒラメ筋内側)、太もも裏側の内側(半膜様筋)、これらの筋肉がゆるんでいますと仙骨は下がってしまいます。

・完骨が後傾する場合
 完骨は腸骨(腰骨)と恥骨と坐骨の合体したものですので、骨盤の中で後面中央の仙骨・尾骨を除いたものです。
 腹側では恥骨が腹直筋とつながっていますので、腹直筋がこわばりますと恥骨が頭部の方に引きつけられ骨盤が後傾します。仰向けで寝たとき、恥骨部分が盛り上がっているように見える場合は、このような状態である可能性があります。あるいは、腹直筋が大丈夫でも外腹斜筋や内腹斜筋がこわばりますと、それらは腸骨の傾きに影響を与えますので、片方の骨盤が前傾して反対側が後傾するといった捻れを生じる可能性があります。
 また、内腹斜筋や腹横筋の働きが悪くなりますと骨盤上部は開いてしまいますので骨盤は後傾してしまいます。

腹側から見た骨盤の歪み_2

 骨盤は下部(骨盤底)が狭まると上部が開くとともに完骨自体が後傾する仕組みになっています。骨盤底(尾骨と恥骨と二つの坐骨の間)には幾つかの筋肉と強靱な筋膜がありますが、それらがこわばってしまうと骨盤底が狭くなります。また、加齢によって骨盤底は柔軟性を失う傾向がありますので、年齢とともに骨盤底が狭くなり骨盤が後傾するようになってしまいます。高齢者のお尻がすぼんで下がり、貧弱に見えてしまうのはこのためだと考えられます。また、若くても、いつも座ってばかりの作業をしていますと、やはり骨盤底はこわばってしまい骨盤が後傾してしまいます。

骨盤矯正の考え方
 骨盤はからだの中心ですから、からだ全体を考えたとき、中心である骨盤を整えることが、からだ全体を整える上での基礎となります。あらゆるところを整えたとしても骨盤が歪んでいれば、やはり歪みが残ってしまいます。慢性腰痛、慢性的な首・肩の張り、慢性的な足のだるさ、血行不良、冷え、‥‥あらゆる慢性的な不調は骨盤の歪みが関係している可能性があると思います。
 しかしながら――これが私たちのからだが部品を組み合わせたロボットと一番違う点ですが――中心である骨盤もまたからだの各部分との依存関係にあります。骨盤が歪めば手にも足にも歪みが現れますが、反対に手や足が歪んでも骨盤が歪んでしまうのが私たちのからだです。ロボットは手の調子が悪くなったとしても骨盤に相当する部分に影響を及ぼすことはありませんので、頭部がおかしくなったり、足がおかしくなったりすることはありません。不具合になった手の部品を修理したり交換すれば事足ります。しかし私たちのからだはすべて繋がっていますので、手がおかしくなると骨盤が影響を受け、その歪みによって頭痛になったり、歩き方がおかしくなったり、と骨盤の歪みによる影響が全身に現れます。ただ歪み方が一定の範囲内におさまっていて、なおかつ筋肉の働きに粘りと対応力があれば、歪みが不調として自覚される程にはならないというだけです。
 ですから骨盤矯正に際しては、骨盤だけに着目するのではなく、からだの各部位との関連性、特に普段たくさん使っている部位=手や足や顔との関連性の中で骨盤を修正するように考えることが正しい在り方だと思います。あるいは、お腹の冷えは直接骨盤に影響を与えますし、精神的緊張など心理面との関連性もあると思います。

 私は通常、腰痛などに対する施術では、はじめに足趾やふくらはぎを整えることからはじめます。そして骨盤底の筋肉を整え、下半身の筋肉状態がより正常に近づくようにして、その後で骨盤自体を改めて検査し、歪みの状態を確認した上で手や肩や頭部といった上半身への施術を行っていきます。ギックリ腰、肉離れ、筋肉を損傷したなど、明らかにケガと思われることが原因でないかぎり、骨盤を歪ませているのは他に原因があると考えているからです。
 脚の長さが左右で違っているのは確かに骨盤が歪んでいるからです。だからといって骨盤や股関節や背骨をグイッと矯正したところで、極めて一時的に脚の長さは整うかもしれませんが、骨盤に歪みをもたらせている原因を修正しなければすぐに元の状態に戻ってしまいます。イメージ的に、確かにグイッとやると整体っぽいかもしれません。私のようにじっくりやっていると整体っぽくないかもしれません。しかし、理屈を一つ一つ考えていくとこういう施術になるのだと思います。
 「ひとつながりの身体」というのが私の店の看板ですが、本当にからだは頭の天辺からつま先まで、ひとつながりに繋がっているのです。

 今回は骨盤の歪みの実際と骨盤矯正に対する考え方について記しました。次回は施術の実際について記します。

 “私たちのからだの中心は骨盤である”と聞かされたとき、理由は定かでなくても、それは何となく頷けることだと思います。直立二足歩行の私たち人間は、からだの中ほどに骨盤があって、上半身と下半身の境になっていると誰もが認識しているからだと思います。ところが、四つ足動物、例えば犬の(胴長)ダックスフンドのからだの中心を問われたときに、それが殿部の骨盤であるとはあまり想像が及ばないかもしれません。しかし、やはりからだの中心は骨盤であるということを説明したいと思います。

 私たちのからだを考えるとき、人間を含めて動物の進化の歴史を考察しないわけにはいきません。私たちの暮らす地球の歴史は46億年ともいわれています。地球上に生命が誕生して38億年、最初の生命は海の中で生まれたのですが、その後生命体は進化を繰り返し多種の生物に枝分かれしてきたと考えられています。
 
頭進

 私たちは背骨をもつ脊椎動物の一種ですが、今から5億年ほど前に脊椎動物の祖先が海の中で誕生しました。脊椎動物とはいえ、その生物に背骨はまだありません。丸い袋のような状態で海の中を波に揺られながら漂っていたと考えられています。プランクトンなどのエサを口の中からとりいれて、便や尿も同じ口を通して排出していました。口と肛門、つまり頭と尻は最初は同じひとつのものだったのです。その後、動物の本能としてエサを追い求めるように自ら動くようになるのですが、そうしているうちに同じ袋の中にあって頭と口の役割をしている部分が前に前に行きたがるようになり、次第に殿部から分かれ、からだに長さができるようになったと考えられているようです。これを頭進と呼ぶようですが、頭部から殿部が後退したのではなく、殿部から頭部が先んじて離れていったのです。
 つまり、はじめは殿部=骨盤部しかありませんでしたが、次に頭部ができたという順番です。やがてこの生物は私たちが食卓で食べている魚に進化していきますが、魚には背骨と内臓があるように、殿部から分かれて前に伸びていった頭部との間に背骨と肋骨ができ、その腹側に内臓が置かれたという私たちの体幹と同じ構造ができあがりました。
 この理屈を裏付けるように、私たちの全ての筋肉は縮むと骨盤に向かうという現実があります。背筋の全て、腹筋の全ては骨盤が起点(筋肉の起始)となって繋がっているのです。
 ですから、私たちのからだの中心は骨盤であると結論づけることができます。また、四肢と呼ばれる上肢(腕と手)と下肢(脚と足)は魚が海から陸に上がった頃にできますが、上肢は頭部から、下肢は骨盤から発生しましたので、上肢の筋肉は縮むと頭部を経由して骨盤に向かうようにできています。

骨盤が中心である現実
 骨盤がからだの中心であるということは、からだを動かす原動力やエネルギーは骨盤からやって来るということになります。これはなかなか現実として受け入れがたい部分があると思います。たとえば目をまばたきする力は骨盤とは関係ないように思えます。スマホ操作で動かす人差し指の動きは骨盤と関係ないように思えます。ですから全ての動作の力が骨盤からやって来るわけではないのかもしれません。しかし重度のギックリ腰になりますと、しばらくの間からだをまったく動かすことができなくなったりします。ギックリ腰は主に骨盤の中心である仙骨尾骨部の筋肉や筋膜にちょっとした損傷ができたために起こる急性腰痛ですが、ほんのちょっとの傷でも椅子から立ち上がることや、まともに歩くことができなくなってしまいます。この現実をしばしば目撃していますと、骨盤の中心部に小さな傷ができただけでも、からだがすっかり不自由になってしまうのだから骨盤は本当にからだの中枢なんだと感じます。
 骨盤の状態が悪くてもピアノを弾いたり、楽器を奏でたりすることはできるかもしれません。しかし、どこか手先だけの、口先だけの演奏になってしまうでしょう。骨盤がしっかりしていれば、指先にも唇にもからだの芯から力とエネルギーが伝わってきて全身で演奏することが容易にできるかもしれません。そういう意味で、からだの持つ底力は骨盤からやって来るのではないかと考えています。

骨盤の構造
 骨盤は一対の完骨と仙骨と尾骨からなっています。それらを結合しているのは線維性の関節で、後部に仙腸関節が二つ、前部に恥骨結合があります。また完骨は腸骨(いわゆる腰骨)と坐骨と恥骨の3つの部分が結合してできたもので、上部と下部で違う方向を向いているのが特徴です。

骨盤基礎01

骨盤基礎02

骨盤基礎03

 坐骨の底部には下肢の筋肉の出発点(起始部)になる坐骨結節があります。坐骨結節は座る時に座面に接触する部分ですので、下肢の筋肉がこわばりますと「座るとお尻が痛くなる」ということになります。あるいは長時間座り続けて坐骨結節が疲労状態になりますと、下肢の筋肉が張ってきたりします。
 また骨盤は前方斜め上方から見ますとツバのある帽子を逆さにしたような形をしています。腸骨と恥骨と仙骨の上部でできている帽子のツバの部分を大骨盤、その奥の帽子の部分を小骨盤と呼んだりします。大骨盤は腹部、小骨盤は生殖と排泄の部分と考えてもよいかもしれません。

骨盤の内側
 かつて私にいろいろ教えてくださった理学博士の先生(整体の先生ではありません)が「いろいろ偉そうに言ったり、やったりしたところで所詮人間は、地球上の生物としてみれば単なるウンコ製造器に過ぎない」と仰いました。過激な発言のようにも聞こえますが、私はなるほどと感心しました。
 家族や気の合う仲間達と共にする食事は楽しいですし、美味なものを食すと一時幸せな気持ちになります。あるいは、健康のことを考え食材を吟味した食事を摂っている方も多いと思います。しかし、そうして食べたり飲んだりしたものも、喉元を過ぎて食道に入ってしまえば、胃腸が調子悪くない限り、あとはほとんど何の感覚も得られないまま時間の経過とともに便や尿として排泄されるだけです。昨日食べた美味しい寿司も、翌日か翌々日には便という姿になってトイレに流されてしまうだけです。ですから私たちのからだは食べたものを便に換える機械であるという見方もできるわけです。
骨盤内臓断面02

 骨盤は大骨盤と小骨盤の二つに分けられると申しましたが、大骨盤は腹部の内臓を支える役割をしていて、主に小腸が収まる場所になっています。小骨盤には直腸、膀胱、そして生殖機能に関係する子宮や前立腺、卵巣や精巣と性器が収まっています。つまり、からだの中心である骨盤の奥(ここが本当の中心部)には糞尿を排泄するための臓器と子孫を残すための臓器が位置していることになります。
 人生の目的とか、心とか、喜びや悲しみなどの感情などは私たちの精神面ですが、それを除いて肉体的な面だけを捉えれば、私たちが地球上の生命体の一つであることの意味と価値が骨盤から読み取れるかもしれません。つまり、便を作って出すことと子孫を残すことです。
 便を作り出すことは、地球上の生態系に寄与して命をつなぎます。私たちがトイレに流した便は下水処理施設や浄化槽のなかでバクテリアのエサになります。そしてこれらのバクテリアが排出した便や尿は、究極的には土に還って植物が摂る栄養になります。そうして育った植物は私たちの食材になったり、あるいは他の動物たちのエサになります。このようにして生態系は今後も地球から水がなくならない限りずっと維持され続けていきます。
 また、人類という種を存続させるための、つまり子孫を繋いでいくための生殖機能が、からだの最も中心部にあるという事実は、生命体の本能として子孫を繋いでいくことが大切だということを物語っているのかもしれません。
 以上のように肉体的観点でみると、骨盤内部の働きは糞尿を排出することと子孫を産み出すことの二つに集約されるということになります。

骨盤の外側
 骨盤の外側はからだにたくさんある筋肉(骨格筋)の中心という役割があります。
 骨盤前面(恥骨から腸骨の上部)は腹部の筋肉(腹直筋・腹横筋・外腹斜筋・内腹斜筋)の始まり(起始部)になっていて、胸郭(肋骨と胸骨)を経由して胸部の大胸筋・小胸筋・前鋸筋と首前面の筋肉に繋がっていき、下顎の底部(舌筋など)まで続いています。
 
骨盤前面からの腹筋

 骨盤後面の上部は背部の筋肉(脊柱起立筋群・広背筋・腰方形筋など)の起始部になっていて、首の後面を経由して後頭部に繋がっています。もっと細かく云えば、後頭部を越して頭部・顔面部へ下り鼻の下までは背部の筋肉の繋がりです。
 そして骨盤後面と下面(恥骨下部と坐骨)は大腿部(下肢)にある筋肉の起始部となっています。
 つまり上肢(肩甲骨と腕と手)を除くほとんどの骨格筋は骨盤が起点になっているということです。ですから骨盤が歪みますと、からだ中の筋肉が影響を受けてしまい様々な運動系の不具合を引き起こしてしまう可能性があるということになります。

中枢神経としての骨盤
 私たちが健やかな心身を維持するために最も大切な器官は“脳・脊髄と心臓”であることはよく知られていることです。
 ところで、からだを動かす神経には二つの系統があります。一つは自分の意志のままに筋肉を働かすための随意神経、もう一つは自分の意志に関係なく、いわば勝手に働いてからだの働きを調整している自律神経です。随意神経は動物性神経、自律神経は植物神経などとも呼ばれますが、自律神経はからだ(肉体)を快適に維持するための神経であるとも云えます。
 
自律神経01
 中枢神経のことを“髄”と呼んだりもしますが、からだには頭部から順に延髄、頸髄、胸髄、腰髄、仙髄の五つ中枢があります。そして骨盤は仙髄の場所です。また、自律神経は日中優位に働いて、からだを活発にさせる交感神経系と、からだを休めて疲れを癒し、消化・吸収・栄養などの内臓の働きを高める副交感神経系に分かれていますが、五つある髄の中で延髄と仙髄は副交感神経系の中枢です。脳の最下部にある延髄と骨盤にある仙髄が協力し合って、呼吸を整え、からだの疲れを癒す役割を担っていますので、自律神経失調症などと診断される人が多い今日、骨盤の重要性がもっと見直されるべきだと思います。

 私たち人間と他の動物たちと一番違うところは、目に見えない精神性です。感情は他の哺乳動物、犬や猫やイルカや鯨にも備わっていますが、高度に思考を展開し、言葉使って自らを表現するといった点が人間ならではのものなのかもしれません。そのために私たちの脳は他の動物たちよりも遙かに大きくできています。
 ところがその反面、肉体的に見るとからだよりも頭の方が自らを主張する傾向が強くなり、今日では“からだではなく頭で生きている”ような人たちが多くなりました。つまり“からだの中の骨盤”に対する比重がどんどん軽く考えられるようになってきました。昔は「女の子はお腹を冷やしてはいけない。子供が産めなくなるよ。」などとお年寄りが若い女性に対してよく注意していたものですが、今はからだの健康よりもファッション性、つまり自己主張したがる頭の方が優先されいるようです。
 若いときから気にしなければいけない婦人病の数々、子供がなかなかできない現状、科学的には証明されていないかもしれませんが、これらが腹部や下腹部の冷えによってもたらされいる可能性は否定できないと思います。
 
 骨盤が開いたり歪んでいると太ってしまう。ダイエットのためには骨盤矯正が必要。そういったことのために骨盤を整えることは良いことだと思いますが、それだけでなく、機能的にも骨盤がからだの中心であって、普段から骨盤や下腹部を大切にして整えておく必要があるということを考えていただければと思います。
 “骨盤の歪みと矯正”についても近々記していきたいと思っています。

 このブログを読んでいただき、私の施術内容に興味をもたれた方々がしばしば来店されます。遠くの場所から定期的に通われている方もいらっしゃいます。そして、遠くからわざわざ来ていただいた方々のお話に共通しているのは、「明らかに自覚症状として顔や頭が歪んでいると感じ不調を訴えているのに、医療機関では結果的にまったく相手にしてくれない」「整体院で顔の歪みの矯正を頼むと、強い力でグイグイ押されるので怖い」「顔や体の歪みを調整してくれるところに巡り会わなかった」というものです。
 脳の思考回路というか、思い込みや先入観というのは時に困ったもので「頭蓋骨が動くはずはない」と思い込んでいる医師や治療家は、はなからまったく相手にしませんでしょうし、訴えている方の心理や精神を疑い「心療内科」をすすめる場合があると聞きます。ところが理屈でちゃんと合理的に考えるなら、頭蓋骨は当然歪むものであり、体の骨格も歪んで当たり前のものです。息を吸うだけで頭部は膨らみ、仙骨は下がります。反対に息を吐くときには頭部は縮まり、仙骨は上がります。それは頭や仙骨に手を当てているだけで容易に観察できることです。
 
 誰もが頭や体に歪みを持っています。その歪みがある一定の範囲内におさまっていれば、体の機能に不具合は起きません。ところがその範囲を超えて歪みが大きくなりますと、最初は自覚的に違和感を感じるところから始まって、次第に明らかな不調や機能不全を感じるようになります。大まかに云えば、そういう流れになります。
 ですから施術者としての私は、最初は、歪みをパーフェクトに解消することよりも、全体として歪みが許容範囲内におさまることを目標に施術を始めます。そして全体としてバランスがよくなり、自覚としての不調も軽減したと判断してから、パーフェクトにより近づくように施術を進めていきます。

顔や体の歪みが当然な“わけ”
 私たちの骨格は200個以上の骨が関節で繋がりできています。なぜ関節があるかというと、そこは動きが起きる場所だからです。肩関節、股関節、肘関節、膝関節といった大きな関節は、動きをもたらす部分としてすぐに理解できることでしょう。
 ところが、頭蓋骨も23個の骨が繋がってできているにもかかわらず、未だに「頭蓋骨の骨が動くはずはない」という先入観や思い込みをもっている専門家が多いようで残念です。どんな関節であれ、関節であるかぎり必ず動きがあります。そして動きがあるということは歪む可能性があるということです。もっと云うならば、誰もが多少歪んでいる状態が”普通”であり、”当然”だと云えます。問題は、ある範囲を超えて大きくゆがんだり、もっと問題なのは、関節がグラグラしていて骨格が不安定な状態です。ある若い女性が来店されて、「額を軽く押すだけで頭蓋骨全体がグニューッと動いてしまって怖い」と仰っていましたが、これはかなり重度な状態で、ゆがみを整えることの前に関節をしっかりさせることを優先しなければならない状態です。
 
頭蓋骨の縫合

頭蓋骨のゆがみを修正するために‥‥縫合関節
 顎関節を除いて、頭蓋骨は縫合という結合線維で一つ一つの骨が連結しています。そして全部の骨が繋がって一つの頭蓋骨となっていますが、それはあたかもパズルのようです。ですから、パズルのピースの一つが何かの理由でずれますと、全体が歪んでしまうという結果を招きます。例えば腰痛などで背中の筋肉(脊柱起立筋)が張ってしまいますと後頭骨が歪みます。すると後頭骨と接している側頭骨、頭頂骨、蝶形骨がゆがみます。そうなりますとそれらに繋がっている骨も歪みますので、結果として頭蓋骨全体が歪むことになります。ですから頭蓋骨の歪みを修整するためには、歪みの出発点となっている骨を特定し、それを修正することが肝心です。(前例で云えば、後頭骨のずれを直すことであり、そのためには腰痛を改善して脊柱起立筋の張りを解消すること。)そうでないことをいくらやったとしても、一時的に良くなるかもしれませんが、すぐに歪んだ状態に戻ってしまいます。
 ケガや無理な矯正などを除いた多くの場合、歪みの元となりやすいのは後頭骨と側頭骨です。後頭骨は仙骨、背骨との関係が強いので頚椎が歪むだけですぐに変位します。側頭骨は下顎骨と顎関節を形成していますので、片噛み癖や噛みしめ癖、歯ぎしり癖などによって咬筋が変調しますとすぐにずれます。また、頸部の筋肉(胸鎖乳突筋、斜角筋、胸骨舌骨筋、舌骨上筋など)を経由して鎖骨・肋骨と繋がっていますので、上半身が歪みますと側頭骨も歪むことになります。

ゆるんだ縫合を修復するのは時間がかかる
 歪んだ頭蓋骨は関節で骨と骨の関係が微妙に、あるいは結構ずれているということです。噛みしめや歯ぎしりなどで咬筋がこわばって縮み、側頭骨を引っ張っていることによるずれは、咬筋をゆるめることで修正できます。頚椎が歪んでいて後頭骨がずれている場合は、頚椎を修正することで改善できます。これらは関節縫合にダメージがない場合の例です。
 ところが打撲やムチウチなどで、(縫合線維の働きに影響力が強い)頭部の筋膜がダメージを受けたり、強い力で骨を操作したために、あるいは軽い力でも長い期間にわたる操作で縫合線維そのものがゆるんでしまった場合などは、それを修復するために時間がかかってしまいます。小顔整体などで頭蓋骨を押し込まれたりすると上顎骨や頬骨が凹んだ状態になったりしますが、それを修復するのはなかなか大変です。また、自分で毎日のように顔の骨をいじったりしていますとやはり筋膜や縫合線維がダメージを受けた状態になりますので要注意です。顔や額にできたニキビや吹き出物を、指でつぶすことを癖のようにやっている人は、力で頭蓋骨を押し続けているのと同じです。そのことによっていつの日か縫合線維がゆるんで、頭蓋骨がゆるゆるの状態になってしまう可能性もあります。

 ゆるんで働きの悪くなった筋膜や縫合線維への施術は、その回復を促すためにそっと手当てをするのが施術の方法です。ゆるんでしまったということは部分的に細胞の働きが悪くなってしまったということです。ですから細胞の働きが活発になるよう意識を込めて、手先を当てながらじっと待ちます。するとやがて、フニュフニュとしていた部分に張りが戻ってきます。そして不安定だった骨格が安定していきます。
 そっと手先を当てているだけですから、施術を受けている方からすると「何をやっているのか?」と疑問の気持ちが芽生えるかもしれません。しかし経験上、今のところこの方法が一番です。
 これまでに顔の整体施術を受けられた多くの人たちに聞かれた疑問は「ただそっと手を当てているだけで頭蓋骨の歪みが本当に直っていくの?」ということです。不思議に思うのかもしれません。しかし私からしますと、ちゃんと理屈に則して、段取りを踏んで、施術を行っていることですから別に不思議なことでも何でもありません。当然の結果が現実としてやって来るだけのことです。ただ、このことはいくら説明しても本当のところは理解されないと思います。実際に施術を受けた方が実感として理解できることなのだと思います。

 さて、こうして頭蓋骨を整えたとしても、強くダメージを受けたり長年にわたりゆるんだ状態にあった筋膜や縫合繊維は1度や2度の施術で完全にしっかりした状態に戻すことは残念ながら難しいと云えます。その時はしっかりと修復した部分も、時間の経過とともに少しゆるんでしまうのが現実です。三歩進んで一歩か二歩後退、それを何回か繰り返しているうちに、やがて縫合も筋膜も安定した状態が訪れます。施術者としてもどかしさも若干感じますが、そこには形状記憶のような感じの力が働いているようでそれを克服するまでは仕方がないのかもしれないと感じています。

・出産のときに頭部を強くつかまれて生まれた赤ちゃんは、最初から斜頸と診断されるかもしれませんが、それは強くつかまれたときにゆるんでしまった頭部の筋膜が原因の可能性が高いと思います。ゆるんでいる筋膜を施術しますと縮んでいた首の筋肉が伸びてきて斜頸が改善されます。ところが1週間後にみると、やはり頭部筋膜のゆるみは残っていて再び同じように施術します。そんなことを何回か繰り返しているうちに斜頸をもたらしていた首の筋肉の縮み具合が改善していき斜頸もそれほどではなくなっていきます。生まれたときにできた傷は、やはり根深いものがあると感じます。

・子供の頃、遊んでいる間に頭から真っ逆さまに落ちて強くダメージを受けた頭頂部の筋膜損傷は、30年経っても回復されません。そして体の不調の基礎的要因になっています。このゆるんだ筋膜のために体の芯が定まらないのです。体のあちこちに不調があって、さまざまな治療を受けたとしても、どうも“しっくりした感じ”は現れません。子供の頃の傷の影響が根本にあるからです。ですから、それをまず回復させる必要があります。もしかしたら、それだけで体の多くの不調は改善されてしまうかもしれません。そして、傷を回復させる施術は手を当てるだけですから、ご自分でもできます。毎日、傷の部分に意識を込めて手を当てていれば良いだけです。

 以上のような長期間放置されたダメージの損傷であったとしても、3回、4回と施術を行っているうちに、次第にしっかりとした状態が継続するようになっていきます。
 こういった根本的な原因にアプローチすることなく、斜頸をもたらしている首の筋肉をいくらほぐしたところで一時的に斜頸が良くなったように見えるだけで、それはすぐに縮み始め斜頸は一向に改善されないでしょう。
 また、頭頂部の傷に手をつけることなく、体の歪みを一生懸命正すように施術したり努力してみたところで、歪みの出発点が良くならなければ、すべては徒労に終わってしまいます。
 そういう意味で、何十年も前のものであったとしても、過去の大きなケガや損傷、歪みのきっかけとなる出来事を思い出していただくことが整体を効率よく進めていくためには欠かすことができないと云えます。

 皆さんが感じている違和感や不調は、レントゲンやCTやMRI、その他の医学的検査では“異常なし”という結論の下、病院では相手にされないかもしれません。しかし、体の何処かに歪みがあるので違和感を感じたり、体が不調を訴えるのは間違いのないことです。進行した変形性膝関節症やリウマチなどによる関節の変位など、組織の回復が難しい場合を除いて、体の歪みはきめ細かく丁寧に施術を行っていけば必ず改善することができると私は考えています。
 「検査の結果、体に何処にも異常が見られないので、あなたの感じている不調は精神的な問題かもしれない。心療内科を受診してみてください。」と医師から云われたものの、どうも納得できないと思われている方は、機会があれば一度ご来店ください。病院とは違った、また他の整体院や治療院とも違った見方で、不調や違和感の原因と対策についてお知らせできるのではないかと思っています。

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