ゆめとわのblog

ホームページとは違った、より臨場感のある情報をお届けしたいと思っています。 また、テーマも整体の枠を飛び出してみたいと思います。 ホームページは以下です。 http://yumetowa.com/ お問い合わせはメッセージ欄でお送りください。

2015年08月

 現在77歳の母が「昔、おばあちゃんがいた頃、階段を上り下りするのにドタンドタンと大きな音をたてていて、もっと静かに歩けないのかな? と思っていたけど、気づいたら私も音がうるさくなってきた。」と私に話しました。
 高齢者になると筋力が衰え動作の微調整が苦手になるので、静かに歩いたり座ったりすることができにくくなってしまいます。また、年齢に関係なく筋肉の働きが悪くなると同様です。階段を上り下りするときバタンバタンとしてしまったり、歩くときパタパタと音をたててしまうようなときは、筋肉の働きが悪いと考えられます。

肘を曲げる動作

 さて、筋肉は収縮することによって四肢や体を曲げたり伸ばしたり捻ったりするわけですが、一つの筋肉が働く(収縮する)とき必ずその働きに拮抗する筋肉がその動作を補助する仕組みになっています。たとえば肘を曲げる動作では上腕二頭筋を収縮させるわけですが、反対側にある上腕三頭筋が同時に伸びなければ肘を曲げることはできません。この上腕二頭筋の収縮と上腕三頭筋の伸張の絶妙なバランスによって肘は自分の意志に従ってスムーズに曲げることが可能になります。素速く曲げる時には上腕三頭筋がサッと伸びて上腕二頭筋の収縮を助けます。反対にゆっくりジワーッと曲げる時には上腕三頭筋もまたジワーッと伸びて上腕二頭筋の働きを助けます。そしてこのジワーッと伸びることが筋肉の状態を見極める上でとても大切なポイントになります。
 ジワーッと伸びるということは、単に伸びるだけでなく、“緊張(収縮)を保ちながら伸びる”あるいは“伸びながら収縮する”というようなことを筋肉が行っているということです。

階段を降りる_中間広筋

 階段を降りる動作で見たとき、たとえば右足を下の段に着く場合、左膝が曲がるわけですが、そのためには左太もも前面の筋肉(主に大腿四頭筋の中の中間広筋)が体を支えながら伸びる必要があります。この筋肉の働きが良ければ、右足が下の段に着く寸前までじっくりと左膝を曲げた状態を保つことができます。しかし働きが悪ければ、それができませんので左膝がカクッと折れたようになり、思わず右足をパタッとさせて着地するようになってしまいます。こういう状態では、タッタッタッタッと音をたてながら階段を素速く降りることはできますが、静かにゆっくり降りることはできなくなってしまいます。
 歩く動作でも同様です。私は歩き方や下半身の筋肉状態を確かめるとき「音を立てずに歩いてみてください」とやってもらいます。皆さん、そんなことは簡単にできると思っています。ところが音を立てずに、静かにそーっと歩ける人はそれほど多くありません。 誰にも気づかれないように歩く“忍び足”、それは筋肉の働きとバランスが整っていないとできないものなのです。

 加齢によって筋肉の働きが弱くなる、あるいは年齢に関係なく筋肉の状態が正常ではない、そんなときは音を立てずに動作することはとても難しいことです。テーブルに物を置く動作、洗い物をする動作などでも同様です。“静かに”、“そーっと”ができないのです。
 ですから家族や同僚の誰かに対して「動作の一つ一つがうるさい」と感じてイライラしたりするのではなく、「ああ、筋肉の働きが悪いんだね」と同情の思いを抱い方がストレスにもなりませんし、「筋肉をしっかりさせるにはどうしたらよいのだろうか?」というような前向きな考えに結びつくと思います。

 一般に子供達や若者達は体つきもしなやかで動作もしなやかですが、歳をとると体型も動作もしなやかさを失いロボットに近づくような感じになっていきます。それは筋肉自体の柔らかさが失われていくという避けがたい要因もありますが、筋肉の働きが悪くなっているという側面もあります。そして筋肉の働きが悪いというのは、筋力が弱いというのとは少し違います。筋力が弱くてもしっかり働ける状態であれば、ゆったりしなやかに動作することはできます。反対にジムなどでトレーニングをして筋肉モリモリになったとしても、筋肉が上手く働くことのできない状態になると、ゆったりしなやかに動作することができなくなってしまいます。
 打撲をしたり捻挫をすると筋肉は働けなくなりますが、そのごく小さいバージョンが体の中にいくつも点在していることを想像してみてください。外見的には丈夫そうに見えても、実は体を効率よくしなやかに動かすことができません。こうなりますと「意識的に力を入れないと動作ができない」「いつも力んでいるよう」というような状態になってしまいます。そしてこんな状態を修正し、筋肉が効率よく働けるように調整するのが「体を整える」という整体の本来の意味であると私は考えています。
 まだそれほど歳でもないのに、動作の一つ一つに音を立ててしまったり、階段の上り下りがドタドタしたり、足元の物を動かすのについ足を使ってしまったりするようならば、それは働きが悪い筋肉がけっこうたくさんあるということかもしれません。トレーニングをするより先に、筋肉がしっかり働ける状態になるよう調整した方が良いと思います。

 その方はスーパーの鮮魚売り場で働く中年の女性です。毎日、包丁を使って魚をさばいています。私のところに通われるようになってもう長い年月が経ちます。
 この方の悩みは、右足の母趾のつけ根が痛くなり、左膝が時々不調を起こすこととと、忙しいときなど包丁を使いすぎて手が痛くなることです。魚屋さんは足元が常に冷たく、いつも長靴を履いていて、包丁を力を入れて使い続けていますが、これらが体に負担をかける主な要因となっています。
 若い頃に患った外反母趾の影響で、両母趾のつけ根が少し内側に飛び出していますが、今は靴を履くことによって生じる外反母趾特有の痛みはないということです。しかし、疲れが溜まってくると靴を履いているときではなく、家で休んでいるときなどに母趾つけ根内側の突出している部分がうずいて痛むということです。また、数年前に転んで膝に重いケガをしてしまい、その影響で、やはり疲れが溜まってくると膝の上に水が溜まり、関節の動きがおかしくなるということです。
 そして私のところの足リフレ(足つぼマッサージ)を気に入ってくれているようで、毎回、足リフレ+整体のコースを選択されます。魚屋さんは足元が冷えますので、足がむくみやすいので、ふくらはぎのマッサージが気持ちいいのだと思います。
 施術では最初に足リフレを行い、その後ベッドに仰向けになって膝と母趾の痛みを改善するのがこの方の定番のメニューですが、今回は顔のむくみとたるみを改善して欲しいとの要望でした。整体にあてられる時間は45分くらいですから、その中で母趾と膝に対する施術と顔への施術を行わなければなりません。実際、顔への施術は20分くらいの短時間でしたので本格的な調整はできませんでしたが、顔のむくみを取ってたるみを改善するくらいは可能でした。そして施術が終わった後、鏡をご覧になって満足そうでしたので、「このコースのこういう使い方もいいのかなぁ」と思い、このブログに記すことにしました。

顔のむくみとたるみの改善
 本格的に顔の整体を行う場合は、やはり60分くらいの施術時間は必要になります。骨格の歪みを調べて、その原因を探り、歪みをもたらしている原因を一つ一つ改善していくという作業が必要になるからです。目の使い方、噛み方、手の使い方、骨盤の状態、それらが顔の骨格に影響を与えることはよくあることです。
 しかし限定的にはなりますが、20~25分くらいの時間で顔に対する施術を行うことも可能です。この方の場合のように、年齢的にもある程度いきますと、加齢とともにどうしても顔の筋肉が弾力を失いたるんでしまう傾向になります。それは仕方のないことではありますが、それでも骨格を整えますと筋肉の働きが良くなり、張りが戻ってきてたるみ具合がけっこう改善されたりします。また、むくみがありますと筋肉や組織内部の水分が多くなって重たくなり、筋肉の張りが重力に負けてしまうタイプのたるみも加わってしまいますが、骨格と筋肉を調整することでむくみを減らすことができます。
 むくみを取って筋肉の働きが良くなるよう調整することで、たるみも自ずと軽減し、見た目も触った感じもかなり変わったと実感できると思います。ただし、年齢的なこともあり、ずっとその状態をキープし続けることはフェイシャルマッサージなどをしないと難しいかもしれません。
 短時間でできる顔への施術は、根本的な改善を目指すという意味からすると不十分な施術となってしまいます。しかし、二週間に一回とか、三週間に一回とかいう間隔で定期的にケアするのであれば、3ヶ月後、半年後と時間が経過するにしたがい、顔の感じもだいぶ変わっていくものと思われます。

 この方のように、主目的は母趾の痛みと膝の痛みのケアであり、ついでに顔のたるみも改善したいという要望であるならば、足リフレと整体のコースをこのように利用されるのは良い手段だと思います。
 あるいは整体60分コースの中で、首肩を30分、顔を30分という使い方も良いと思います。ただし、これは前提として定期的に施術を受けられる場合のおすすめです。首肩もバッチリで改善したいし、顔もしっかり改善したいというのであれば、それぞれ60分ずつのコースを選んでいただければと思います。

参考までに、顔以外でこの方に施術した概要を下記に記します。
①足リフレクソロジー
 足リフレの施術には大きく分けて二つのタイプがあります。心地よさとリラックスに重点をおいた軽やかなものと、施術者がかなり力をいれてグイグイやるタイプのものです。西洋式と台湾式(東洋式)と分ける見方とも言えます。私のところは後者に近い強めの力で施術する方式です。ですから、馴れていない方にとっては最初はかなり痛みを感じる施術となります。馴れてしまうと、その痛み具合に心地よさを感じるようになると皆さんは仰います。
 そして私が目的とするところは、足やふくらはぎに滞っている老廃物を除去して血液やリンパの流れを改善することです。そうすることでむくみが改善し、硬かった足やふくらはぎが柔らかくなります。施術中は痛みを感じますが、施術後は膝から下が軽やかになりますし、全身の血流も良くなりますので、皆さん「気持ちいい」「サッパリした」と仰います。
 この方のように、普段足元が冷えたところで作業されている人にとってはとても良いものだと思います。
 ただ、筋肉の張りとかシビレ感とかは足リフレでは改善できませんので、そこを間違わないようにしていただければと思います。

②母趾つけ根の痛み
 現在、外反母趾症状の真っ最中ということであれば他の要因も考えなければなりませんが、この方のように普段は靴を履いていても痛みを感じることはないが、疲れが溜まってくると靴を履いていなくても痛みを感じてしまうという場合は、母趾の内側にある母趾外転筋がこわばっているからです。
 そして多くの場合、手の使い方や手の使いすぎが原因でこの筋肉のこわばりが発生します。母趾のつけ根と手に関係性があるとはほとんどの人は考えられないと思いますが、私はまず最初にこの関係性を確認することから施術を始めます。そしてその経路の途中に膝がありますので、手の問題が膝に不具合をもたらせている可能性も高いと考えます。
 この方の右手は包丁をたくさん使っていることから、ゴチゴチに硬くなっています。そして母趾の内側(母趾外転筋)と直接的に関連するのは手の母指と示指になりますが、どちらの指もグラグラになっていました。その辺りを調整することで、母趾外転筋のこわばりは解消しますので、この痛みに対する施術は手指を揉みほぐすだけで終了です。

③膝の不具合
 この方の場合、私から見ると両膝が万全とは言えなかったのですが、本人の自覚では以前に転んでケガをした左膝の上に水が溜まって曲げ伸ばしの際に違和感を感じるというものでした。
 そのケガはかなりのダメージを膝に与えるものでしたので膝周辺の筋肉が弱くなっていますが、疲れてくると症状が感じられるということです。ですから、他の何かの要因が加わったときに症状が現れると考えることができます。そして、やはり仕事柄、冷えと手の疲労が最も疑わしいものであると考えられます。足リフレによって冷えの方は改善されていると思われますので、あとは手の疲労となります。実際手の疲労で、ある筋肉がこわばり、それによって膝から下(脛骨)が外側に少し捻れていました。魚を切るのは右手ですが、左手も魚を押さえるためにかなり力を入れているとのことです。
 結局、左手を施術することで左膝を整えました。膝周辺は一切調整していません。ちなみに、左母趾も外反母趾気味になっていますが、こちら側が痛むことはないということでした。

 頭痛で一番多いのは“緊張型頭痛”と呼ばれる、頭皮や筋膜が縮んで頭蓋骨を外側から締めつけるタイプのものですが、これとは反対に頭蓋骨の内部圧力が高まって頭が重くなり、ボーッとして脳の回転がうまく機能しないように感じる頭痛や頭重もあります。計算もスムーズにできないし、理路整然と話すこともできなくなり、“自分の頭はおかしくなった”と感じたりすることもあるようです。
 こういう訴えを持っている人の頭を触ると、中身がぎっしり詰まって身動きできない感じで、“血液が流れていないのではないか”と感じてしまいます。理屈はともかくとして「頭がパンパンに詰まっていますね」と指摘しますと、ご本人も実感として理解できるようです。

 さて、こういう場合の特徴は3つほどあります。目が凝っていてこめかみがパンパンに張っていることが一つ。鎖骨と肋骨の関係がおかしく、鎖骨下静脈の流れが悪くなっていることが一つ。もう一つは頭が開放的でなく、閉じているように感じることです。その他には噛みしめによってそしゃく筋が強くこわばっていることも少なからず関係があります。
 目が強く凝ってこめかみがパンパンに張ってしまうと、どうして頭の中が詰まったようになるのかの理由はよく解りませんが、こめかみの張りをじっくり取っていくと、やがて私の手に血液が流れ出す感触が伝わるようになります。ですから、現象として、目の凝りは頭の詰まりに関係していると考えています。
 
鎖骨下静脈と鼡径部

 鎖骨下静脈の流れについてはこれまで幾度か取り上げています。全身の血流を考えるとき、私が真っ先に確認するところは鎖骨下静脈と股関節の鼡径部です。この2箇所は静脈血が心臓に還る最後の関所のようなところで、他が良くてもこの部分の流れが悪いと全身的に影響が及びます。また動脈と静脈の関係で言いますと、心臓の働きも快適で、血管の状態も万全で、動脈の流れを阻害する要因が全くなかったとしても、動脈と静脈は最終的につながっていますので静脈の流れが悪いと動脈の流れも停滞してしまいます。そうしますと動脈の血管に血液が溜まってしまう可能性が考えられます。それは車の交通渋滞に似ています。出口が渋滞しているのに後から後から血液が入ってきてしまうので血管が膨れあがった状態になり、それが頭蓋骨内部や脳の内部を圧迫するので、頭痛や頭重、そして脳の働きを低下させる原因になると考えることもできます。
 3つ目の“頭が閉じている”ことに関しては、おそらく現代医学では認められないことだと思いますが、実際に頭を触ると「この人の頭は閉まっている」と感じてしまうのです。そして、そんな時は眉間の少し上、額の中央を軽く開くように手をあてます。そこは前頭骨という一つの骨ですから、関節ではないので物理的には開きようがありません。しかし私は、骨のそこが閉じているように感じるので、骨を開くように手をあてます。そうしていますと頭の内部が動き始めるのを感じるようになります。そしてしばらくの間同じようにしていますと、次第にリラックスしだし眠りに落ちてしまう人がたくさんいます。この部分は血流との関係性というより、思考(イメージを思い浮かべる前頭葉の部分なので)との関係性が考えられます。思考の流れが悪くなったことで、血液の流れも悪くなったと考えることができるのかもしれません。

 だいたい以上の3つのうちのどれかを行えば、頭の中身が詰まってパンパンになった頭痛や頭重はすみやかに解消されます。悩みやストレスを溜め込んでいる人は、おそらく頭の中が詰まっていると思います。いつも頭がスッキリしないのは、体調が悪いのではなく、単に頭の中にたくさん溜め込んでいるだけかもしれません。
 血液を溜め込んでいるのか、“思い”や思考を溜め込んでいるのか。解剖学者の故三木成夫先生は、溜まりの場所が病気になりやすいと言っています。体を健康に保つには溜めずにどんどん流すことが肝心だということです。過呼吸は肺に空気が溜まってしまいます。食べ過ぎや消化不良は胃にいつまでも食べ物が溜まった状況をつくり、便秘は大腸に便が溜まった状況をつくります。肝臓も血液が溜まりやすい器官ですが、これらの器官はガンになりやすい臓器でもあります。同じように心(胸)と頭には思いや思考が溜まります。心は心臓に通じると言いますので、心配や不安が心臓に悪い影響を与えると考えることもできますし、ストレスや悩みが多いと脳の病気を招くかもしれません。これらの因果関係は科学的に正しいことかどうかはわかりませんが、直感的になんとなく頷けるところではないでしょう。いずれにせよ、“溜めずにどんどん流す”ことが体と心を快適にするための基本事項であると私は思っています。
 
脳の水分‥‥血液と髄液の循環
 脳には全身血液の15%程が循環していると言われています。これは安静時の数字ですので、考え事をしたりして頭を働かせている状態ではもっと多くの血液が循環していると思われます。また脳と脊髄には、血液とは別にそれ自身を養い、健康に欠かすことのできない髄液がゆっくりと循環しています。(髄液の役割はよく解っていない部分も多いようです。)
 脳細胞の活動を行うためには酸素が必要ですが、それは心臓のポンプ力(血圧)によって動脈血が脳の隅々まで行き渡ることによって可能になります。心臓から頭部に行く動脈は頚動脈(外頚動脈と内頚動脈)と頚椎に沿って昇る椎骨動脈の二つの経路があります。そして脳内で役目を終えた血液と髄液は、いくつかの静脈洞と呼ばれる池のような溜まりに集められ、そこから内頸静脈という大きな静脈に入り、胸郭の入り口で鎖骨下静脈と合流して心臓に戻ります。
脳の静脈
髄液循環

 脳に血液や水分(髄液)が溜まった状態になってパンパンになるといった場合、上記の循環が上手くいっていないことがまず考えられます。脳梗塞など動脈の詰まりを除いて考えますと、静脈洞→内頸静脈→鎖骨下静脈→心臓という脳内水分の出口経路のどこかに流れが悪い部分があるため、頭痛や頭重を感じてしまうのではないかと考えて対処するのが道理だと思います。CTやMRI画像を撮影して「脳には異常がありません。きれいな脳です。」と言われたところで、それが医療の答えで頭痛薬が処方されるだけなら、なんとも中途半端と言わざるを得ません。
 
外頚静脈と鎖骨下静脈の停滞

 この経路の中で、静脈洞も内頸静脈も心臓も、整体の施術では直接的には何もすることはできません。ところが鎖骨下静脈だけは対処の方法があります。鎖骨下静脈は前斜角筋の前、鎖骨と第1肋骨の間というとても狭い場所を通っています。ちょっと鎖骨がずれただけで、あるいは肋骨が捻れただけで流れが悪くなってしまいます。解剖図を見る限り、内頸静脈と鎖骨静脈が合流する場所は肋骨の内側、つまり鎖骨下静脈が狭い場所を通過した後ですから、私は当初、内頸静脈の流れと鎖骨下静脈の流れは関係ないと思っていました。しかし実際に施術を行って鎖骨と第1肋骨の関係を改善すると頭部の血液の流れが良くなるので、今は関係が深いと考えています。

頭が閉じている
 「頭の形は刻々と変化しています」と表現しますと、現在の科学的見地では“ほら吹き”と言われてしまいそうです。頭が詰まった状態、眉間に縦皺がよりやすい状態、これらを確認する時、私は額のところをまず触ります。そこは骨で言えば前頭骨です。上顎骨と頬骨は左右に分かれていますので、狭くなったり広くなったりすると言ってもそれほど不思議ではないかもしれません。ところが前頭骨は一つの骨ですから、骨自体が“閉じたり狭くなったりするはずはない”と言われても仕方がありません。私も理屈ではそう思います。
 しかし実際の施術では理屈よりも現象を優先し、骨の感触と内部の感触を繊細に捉えて判断しながら作業を進めています。
 ところで、眉間に縦皺がよりやすい人はかなり多くいます。中にはくっきりと深い縦皺が刻まれている人もいます。そのような人は、すぐに顔の中心部に力を入れてしまう人、しかめっ面が得意な部類の人です。このような人は頭(前頭部)が閉じています。あるいは尖っています。あえて文学的に表現しますと“ストレスや悩みが多くいつも緊張状態にあるので頭(思考)が開放的ではなく、気持ちが内向きになっていることを、頭も形として現している”ということになります。

脳の動脈

 頭内部の内圧が高まった頭痛には動脈から出血する脳出血も当然考えられますので、緊急時を除いても幾日か症状が続くようであれば病院等で検査を受けるのがよろしいかと思います。その結果、異常が見つからない場合は、今回取り上げたことも考慮に入れて整体施術を受けることをおすすめします。そして頭痛の改善のみならず頭をスッキリさせて快適な日々を過ごされるようにしていただければと思います。

 首と肩が緊張している人がたくさんいます。このような人は体型的に、猫背であったり、首が短く見えるようになっています。体型的なことだけであれば、さして云々する必要はないかもしれませんが、首・肩の緊張は体の働きにも悪い影響を与えますし、精神的にもリラックスできないのでなんとか改善していただきたい問題です。
 首を触ったときに硬くなったスジ(筋)がはっきりわかるようであれば、それは筋肉がこわばっていて緊張状態にあるということです。筋肉のこわばりが解消すると首はしなやかでなめらかな状態に感じられるようになります。

 さて、肉体を動かすことより考え事をたくさんする傾向にある現代の私たちは、どうしても意識が頭の方に向かいます。一日の活動を、頭を中心に行っていると言ってもよいでしょう。そうしますと“気”がどんどん上の方に上がってしまいますので、胸から下がおろそかになってしまいます。こういう生活を長く続けていますと“気を下ろす”ことができない体になってしまい、呼吸で言えば、“吸ってばかりで吐くことのできない体”、つまり“過呼吸状態の体”になってしまいます。この状態では自律神経が交感神経優位になってしまいますので、芯からリラックスすることは難しくなります。子供の頃とは違って、朝目覚めても疲れが残ったままで一日を始めなくてはいけない状態になってしまいます。

 ところで、簡単なテストをやってみましょう。手や腕のどこか、指圧すると痛みを感じる部分を、痛みを我慢しなければならないほど強く押してみてください。
 この時、痛みをこらえるために体のどこに力を入れていますでしょうか?
 臍から下の下腹部あたりに力をいれてますでしょうか。あるいは胸、あるいは首や肩の方でしょうか。
 これは体のどこを中心に使っているのか、つまり重心がどこにあるのかを知るための簡単なテストです。

 痛みをこらえるために思わず首・肩に力が入ってしまうようですと、それは重心が上にあるということで、私たちの本来の状態とは違っています。痛みをこらえるときは無意識に息を止めますが、下腹部の方に力をいれて息を止めている人は吐いた状態で止めていると思います。首・肩に力を入れて息を止めている人はで、吸った状態で止めているはずです。私たちの体は息を吸っている過程では無防備(すきだらけ)になり筋肉に意志が通じず傷める可能性が高い状態になります。つまり、首肩につい力を入れてしまうようなときは体を壊しやすということです。ギックリ腰を度々経験する人は思い当たる節があるのではないでしょうか。

 私たちの体の本来の状態は、骨盤が中心ですべての動作が行われるようになっています。しかし、日々の生活では本来の状態を保てない状況がかなりあります。 
パソコンの姿勢
 例えばパソコンのキーボードを操作するのは指先ですが、指先を動かすための力は骨盤(下腹部)から来ることが理想です。そのためには肘を下に降ろし、手首(手根部)は床面に着いた状態でなければなりません。この状態であれば肩に力を入れることなくリラックスした状態でキーボードを操作できますし、実際に文字を打っているときに下腹部に力が入っているのが確認できると思います。ところが肘を浮かせ、手首も浮かせますと途端に肩に力が入ってしまい、息を吐き出すことが困難になってしまいます。仕事上、書類を見ながら腕を前に出した状態でキーボードを操作しなければならない状況が何時間も続けば、肩に力が入りっぱなし、息を止めっぱなしの時間がとても長くなってしまうということです。こんな日常を続けていますと、動作の重心が首・肩の方に上がってしまうのは仕方のないことかもしれません。
 社会生活を続けている以上、首・肩に力が入り重心が上がってしまう傾向にあるということを知った上で、その状態を解除し、重心を下腹部に戻すためにはどうすればよいか、ということを考えてみましょう。

骨盤が中心である理由
 ところで、骨盤中心で動作を行うことが何故重要なのかということについて考えてみます。
 私たち人間は生物学的に哺乳類になりますが、もう一つ大きい枠では脊椎動物に属します。脊椎動物というのは背骨がある動物のことです。太古の時代、脊椎動物の先祖に背骨がまだできていないとき、体には頭も尻もありませんでした。丸い袋状のような形をして海の中で生活していました。袋には穴が開いていて、その穴からプランクトンなどの食物を摂取しては、同じ穴から尿や便を排泄していました。つまり最初は口と肛門、頭と尻(骨盤)はくっついていたのです。それが億年単位というとても長い間海中の波に揺らされ、流されていると、次第に体に長さができ、頭らしきものができるようになりました。頭らしきものには鼻ができ、エサを嗅ぎ分ける能力ができたのかもしれません。すると頭に相当する部分はエサに向かって進みたいと考えるようになったのか、やがて頭が尻(骨盤)から分離するようになります。これを“頭進”と言うそうですが、尻(骨盤)から分離した頭部(頭脳)は、その本能として前に前に進みたいという欲求があり、やがて頭が尻を従えるようになったのかもしれません。
 やがて進化が進むと頭と尻がすっかり分かれ、その間に背骨ができた脊椎動物となりますが、それは魚の姿です。その後、魚が陸に上がり、手と足ができて爬虫類(ワニなど)になり、哺乳類に進化が進み、私たち人間が誕生するのですが、骨盤と頭の関係を考えるとき私はいつもこのことを思います。
 つまり、骨盤が最初にできて、次に頭ができて体幹となり、手と足は最後にできて四肢と呼ばれるようになりましたので、筋肉の流れもこのようになっているのです。全身の筋肉は収縮するとき骨盤に向かいます。筋肉が伸びるときは骨盤から遠ざかる方向に向かいます。この現象が私の整体の基本中の基本なのですが、筋肉だけでなくエネルギーの流れも同じなのではないかと考えています。
 骨盤(下腹部)から力をもらって手足や指先などが動いているのであれば何の問題も起こりませんが、そうではない動作をしていますと、いろいろと体に不具合が生じてくるのではないかと思っています。激しいギックリ腰になり、骨盤部の力をまったく使えない状態になりますと、体を動かすことができなくなってしまうことがあります。そういう経験をされた方は、骨盤や腰部の力が体にとっていかに大切かということがよく解るのではないでしょうか。

首・肩から力を抜いて重心を下げるには呼吸しかない
 またまた呼吸の話になってしまいますが、首・肩に力が入って常に緊張状態にある状況を解除するためには呼吸を利用するしかないように思います。
会陰中心部上面

 「意識はエネルギー」ですから、意識が下腹部に向かっているときは、エネルギーは下腹部に集まります。そして意識を下腹部に向かわせるためには、息をゆっくり吐き出しながら下腹部に集中するのが簡単な方法です。ところで、下腹部とか下丹田とか骨盤とかの言葉は範囲も広く曖昧な受け取られかたをするかもしれませんので、これからは“会陰”と改めます。骨盤底で尾てい骨のすぐ前にあるのが肛門で、そのすぐ前にあるのが会陰中心部です。息をゆっくり吐きながら会陰中心部に意識を集めます。呼吸は普通にしていれば良いです。そうしながら5回、10回と呼吸をしていると次第に首・肩から力が抜けていくと思います。そしていつの間にか精神的な緊張もほぐれ、会陰が息づき始めるのを感じることができるかもしれません。
 はじめのうちは会陰を明確にイメージすることができないかもしれません。そんな時は下腹部とか尾骨に意識を集めることから始めてください。やがて馴れてくると、会陰中心部が明確にイメージできるようになり、そこへの集中も簡単になります。

 会陰に意識が集まるということは、エネルギーが会陰に集まることと同じです。何の動作をするにも会陰をイメージながら行っていれば、それは骨盤の力を使って動作を行っていることになります。会陰で座り、会陰で立ち上がり、会陰で歩く、こんなことが無意識に自然に行うことができるようになれば、それまで首・肩中心に行っていた様々な動作が骨盤中心の動作に変わるようになります。そうなりますと、肘と手首を浮かせた状態でキーボードを打つことが、いかに不自然な動作であるかに気づくことでしょう。仕事場の配置を変えたりして、自分がリラックスして作業を行えるよう工夫するようになるかもしれません。

 「体を変えることは、使い方を変えること」これは私の整体に対する理念の一つです。肩が凝りやすい、膝が痛みやすい、股関節がすぐに痛くなる、等々、多くの人が自分の傾向を把握しています。そしてそれをなんとか改善したいと私のところにきます。私はその症状を改善することと併せて、その症状になりやすい原因をその方に明らかにするようにしています。そして体の使い方が変わるように施術を行い、その方にもアドバイスをさせていただいています。それでもなかなか“使い方の癖”を一朝一夕に改善することは難しいことがほとんどだと思います。「右側ばかりで噛まないでください。」「いつも同じ場所でテレビを見ないようにしてください。」「一日の終わりには肩甲骨を後に引くストレッチをして脇の下の筋肉を伸ばしてください」などと申し上げますが、後ほど確認すると「つい忘れてしまって‥‥」などと、“ついつい‥‥”という返事が多く返ってきます。
 使い方が偏りますと、筋肉の状態がバランスを失い、体や顔が歪むようになります。施術で整えたとしても、使い方が変わらなければやがて元の状態に戻ってしまいます。それが道理です。

 今回テーマの首・肩に力が入ってしまう状態に対しては、施術で、自然に骨盤に力が集まり首肩から力が抜けるように整えるのが私の仕事です。一回の施術では無理にしても、数少ない施術で骨盤が中心になって体を使えるように整えようといつも考えています。体が上手く使えない状態なのに、“こうしては駄目”とか“こうしてください”など使い方を無理やり矯正するようなことは強要しません。しかし、一定期間は日常生活での体の使い方に注意を払っていただかなければなりません。
 頭の“思い込み”の思考回路はなかなか頑固で、考え方を変えるのはなかなか難しいですが、体の使い癖もそれなりに頑固です。自分では気をつけているつもりでも、油断するとすぐに以前の癖に戻ってしまうことでしょう。しかし、それでも忍耐強く挑戦し続けていただきたいと願っています。

 まとめになりますが、首肩の力が抜けない人は、全身の動作を行う中心(起点・重心)が体の上の方にあって、意識(=エネルギー)も上にありますので、胸から下がおろそかな状態になっています。本来、私たちのあらゆる動作の中心は骨盤(会陰)になるように体ができていますので、首肩に力が入っているときは体を壊す可能性が高い状態であると言えます。
 それを改善するための一番簡単な方法は呼吸であり、会陰に意識が集まるようにゆっくり息を吐くことを中心にした呼吸を行っていくことで、重心を上部から骨盤部に移すことができます。無意識に、自然にこの呼吸ができるようになれば、それまで首肩あるいは胸にあった動作の中心が骨盤部に定着しますので、体は理に合った、省エネの動作をすることができるようになりますし、体を壊しにくい状態になります。
 そしてそのためには、重心が骨盤部に安定するまでの間、体の使い方の癖を変化させるために、いつも会陰を意識するように忍耐強く頑張る必要があります。
 こうして首肩から力が抜ける状態が定着しますと、それまで交感神経優位で肉体的に緊張状態にあったものが解消されますので、体をリラックスさせることがいとも簡単にできるようになると思います。

 ストレス社会と言われている今日、それは環境や外部の状況から受けるストレス要因だけでなく、ご自分の体が緊張しやすい状態にあることも大きな要因だと思います。外側の状況を変えることはなかなか思うようには行かないと思いますが、ご自分の体を変えることは努力一つでできることです。是非試してみてください。
 この文章だけでは理解できなと思われる方は、一度来ていただければ体験を通して理解できるようになると思います。

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