19歳の女性が来店されました。「ともかく下半身全体がいつもだるく、腰痛もあって、息苦しさもある。パソコン作業の座り仕のに、夕方になると下半身がパンパンにむくんでしまう。」という訴えでした。
話を聞いただけで神経痛が疑われることがわかりましたが、19歳という年齢のこともあり、一応、頭をニュートラルにして体を観察することからはじめました。最初にうつ伏せで寝ていただいたのですが、お尻が二つの尖った山のようになっていました。神経痛に関係する殿部の梨状筋がこわばっているからです。もう90%の確率で神経痛だと思いました。
片方ではなく両脚にだるさがあるということなので、原因は背骨の方にある可能性が高いです。そして腰椎を観察しますと、フワフワと不安定で、胸(肋骨)が頭の方へ上がって(ずれて)いました。これが呼吸が浅く息苦しいことの原因だと考えられます。
幾度となくお話ししてきましたが、胸と下半身をつなぐ主な筋肉は腹筋です。胸が上がっているということは、骨盤と胸郭の間が本来の位置より離れているということであり、その原因は腹筋の働きが悪いからです。そして、これが腰痛の原因であり、神経痛の原因であり、息苦しさの原因であると考えることができます。
「いつから脚のだるさを感じていましたか?」と尋ねますと、「中学生の頃は既にだるさを感じていて、腰も痛かった。」ということでした。中学生の時は卓球部に所属していたとのことですが、特にケガをした覚えはないということです。そうであれば小学生以前の何かが原因となっている可能性がありますが、本人には記憶がないということでした。
体を観察していきますと右側の肩関節がゆるんでいました。「体育で懸垂運動はできなかったでしょう?」と尋ねますと、小学生の頃からとても苦手だったということです。幼い頃に脱臼をしたか、それに近い状況になったのかもしれません。その他には局所的に特別おかしいというような状態のところはありませんでした。肩関節のゆるみは股関節のゆるみに繋がりますので、それが腰痛や下半身のむくみの原因の一つであることは間違いありません。しかしこの方の場合は、腹筋のゆるみ、その中でも特に内腹斜筋のゆるんだ状態が症状の一番大きな原因だと考えられますので、その腹筋がゆるんでいる原因を探し出す必要があります。
もともと呼吸が浅く、胸だけで呼吸を行っていたために、腹筋を使わずにいたので腹筋がゆるんでしまったのかもしれません。「息を長く吐き出してみてください」とやってもらったのですが、それができません。途中で吐き出せなくなります。脇腹に手を置いてもらい「そこの筋肉が収縮するように息を吐いてみてください」とやってもらいましたが、フーッと力に乏しく、口先で息を吐けるだけで、少しも腹筋は使われません。どうやら予想は当たっているようです。
その後、呼吸に関係する筋肉や骨格を整え、腹筋を使って息を吐き出す練習を10回くらいやっていただきました。すると上がっていた胸が骨盤の方に近づき、まだまだ不十分ではありますが腹筋にも張り感がでてきました。下半身のだるさの状態を確認すると、かなり軽快したようです。胸と骨盤が近づいたことによって腰部のハリも改善しましたので、腰痛も楽になっています。腹筋を使ったことの副産物として、こわばっていた首の筋肉がゆるみましたので肩こりも改善しました。
この方の場合、以上の他に“下半身のむくみ”という問題も抱えたいましたが、それは股関節の鼡径部のところで血行が悪くなっていたからです。その主な原因は長内転筋のこわばりでしたが、それは普段の椅子の座り方に問題があるのかもしれません。ですから“仕事で座り続けているだけなのに夕方になると下半身がパンパンにむくんでしまう”という状況を招いたのかもしれません。その他いろいろ微調整をして、一番の訴えであった“下半身のだるさとむくみ”を改善して施術を終えましたが、最後に、毎日腹筋を使って息を吐き出す練習をしてもらうようアドバイスをしました。
“呼吸が浅い”、“腰が痛い”、”脚がだるい”という一つ一つの症状は、普通に考えると別々の問題であると思われるかもしれません。しかし整体的な観点では、これらは深く関連し合っている症状であり、それぞれが“腹筋の働きの悪さ”というキーワードで繋がります。
腹筋の働きが悪いことによって肋骨と骨盤の間が離れ、それによって腰椎が不安定になり、それが骨盤の不安定さにもつながって大腿神経と坐骨神経に常に弱く刺激が入っているので神経痛の軽い症状(=だるさ)が常に出ている状況になっている、というのが私の見解です。
ですから、この神経痛症状に対するリハビリは電気をかけることでも、マッサージをすることでもなく、腹筋を十分に使って息を吐き出す練習を毎日行うこと、となります。
最近は腹筋に関することばかり投稿している感がありますが、それだけ腹筋に問題を抱えている人が多いということです。
私たちの手と足は解剖学的には肩と骨盤から出ていますが、筋肉をたどっていくとお腹から始まっていることがわかります。ですから、手や足を軽快に、思いのままに動かせるよう保っておくためには“腹筋が要”であるという結論にたどり着きます。
お腹を冷やさないようにしてください。これからの時期、夜中にエアコンを入れっぱなしで寝ると朝方冷えて、ギックリ腰になる人が多く出ます。
腹筋を鍛えてください。普通人にとっては、腹筋運動をするよりも、息を腹筋を使って吐き出すことに集中した方が良いように思います。その方が内腹斜筋も含め、すべての腹筋がバランスの良く鍛えられるのではないかと思います。