ゆめとわのblog

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2015年06月

 19歳の女性が来店されました。「ともかく下半身全体がいつもだるく、腰痛もあって、息苦しさもある。パソコン作業の座り仕のに、夕方になると下半身がパンパンにむくんでしまう。」という訴えでした。
 話を聞いただけで神経痛が疑われることがわかりましたが、19歳という年齢のこともあり、一応、頭をニュートラルにして体を観察することからはじめました。最初にうつ伏せで寝ていただいたのですが、お尻が二つの尖った山のようになっていました。神経痛に関係する殿部の梨状筋がこわばっているからです。もう90%の確率で神経痛だと思いました。
 片方ではなく両脚にだるさがあるということなので、原因は背骨の方にある可能性が高いです。そして腰椎を観察しますと、フワフワと不安定で、胸(肋骨)が頭の方へ上がって(ずれて)いました。これが呼吸が浅く息苦しいことの原因だと考えられます。
 幾度となくお話ししてきましたが、胸と下半身をつなぐ主な筋肉は腹筋です。胸が上がっているということは、骨盤と胸郭の間が本来の位置より離れているということであり、その原因は腹筋の働きが悪いからです。そして、これが腰痛の原因であり、神経痛の原因であり、息苦しさの原因であると考えることができます。

胸と骨盤の間隔比較

 「いつから脚のだるさを感じていましたか?」と尋ねますと、「中学生の頃は既にだるさを感じていて、腰も痛かった。」ということでした。中学生の時は卓球部に所属していたとのことですが、特にケガをした覚えはないということです。そうであれば小学生以前の何かが原因となっている可能性がありますが、本人には記憶がないということでした。
 体を観察していきますと右側の肩関節がゆるんでいました。「体育で懸垂運動はできなかったでしょう?」と尋ねますと、小学生の頃からとても苦手だったということです。幼い頃に脱臼をしたか、それに近い状況になったのかもしれません。その他には局所的に特別おかしいというような状態のところはありませんでした。肩関節のゆるみは股関節のゆるみに繋がりますので、それが腰痛や下半身のむくみの原因の一つであることは間違いありません。しかしこの方の場合は、腹筋のゆるみ、その中でも特に内腹斜筋のゆるんだ状態が症状の一番大きな原因だと考えられますので、その腹筋がゆるんでいる原因を探し出す必要があります。
 もともと呼吸が浅く、胸だけで呼吸を行っていたために、腹筋を使わずにいたので腹筋がゆるんでしまったのかもしれません。「息を長く吐き出してみてください」とやってもらったのですが、それができません。途中で吐き出せなくなります。脇腹に手を置いてもらい「そこの筋肉が収縮するように息を吐いてみてください」とやってもらいましたが、フーッと力に乏しく、口先で息を吐けるだけで、少しも腹筋は使われません。どうやら予想は当たっているようです。
 その後、呼吸に関係する筋肉や骨格を整え、腹筋を使って息を吐き出す練習を10回くらいやっていただきました。すると上がっていた胸が骨盤の方に近づき、まだまだ不十分ではありますが腹筋にも張り感がでてきました。下半身のだるさの状態を確認すると、かなり軽快したようです。胸と骨盤が近づいたことによって腰部のハリも改善しましたので、腰痛も楽になっています。腹筋を使ったことの副産物として、こわばっていた首の筋肉がゆるみましたので肩こりも改善しました。
 この方の場合、以上の他に“下半身のむくみ”という問題も抱えたいましたが、それは股関節の鼡径部のところで血行が悪くなっていたからです。その主な原因は長内転筋のこわばりでしたが、それは普段の椅子の座り方に問題があるのかもしれません。ですから“仕事で座り続けているだけなのに夕方になると下半身がパンパンにむくんでしまう”という状況を招いたのかもしれません。その他いろいろ微調整をして、一番の訴えであった“下半身のだるさとむくみ”を改善して施術を終えましたが、最後に、毎日腹筋を使って息を吐き出す練習をしてもらうようアドバイスをしました。

腹筋を整えるためのトレーニング

 “呼吸が浅い”、“腰が痛い”、”脚がだるい”という一つ一つの症状は、普通に考えると別々の問題であると思われるかもしれません。しかし整体的な観点では、これらは深く関連し合っている症状であり、それぞれが“腹筋の働きの悪さ”というキーワードで繋がります。
 腹筋の働きが悪いことによって肋骨と骨盤の間が離れ、それによって腰椎が不安定になり、それが骨盤の不安定さにもつながって大腿神経と坐骨神経に常に弱く刺激が入っているので神経痛の軽い症状(=だるさ)が常に出ている状況になっている、というのが私の見解です。
 ですから、この神経痛症状に対するリハビリは電気をかけることでも、マッサージをすることでもなく、腹筋を十分に使って息を吐き出す練習を毎日行うこと、となります。

 最近は腹筋に関することばかり投稿している感がありますが、それだけ腹筋に問題を抱えている人が多いということです。
 私たちの手と足は解剖学的には肩と骨盤から出ていますが、筋肉をたどっていくとお腹から始まっていることがわかります。ですから、手や足を軽快に、思いのままに動かせるよう保っておくためには“腹筋が要”であるという結論にたどり着きます。
 お腹を冷やさないようにしてください。これからの時期、夜中にエアコンを入れっぱなしで寝ると朝方冷えて、ギックリ腰になる人が多く出ます。
 腹筋を鍛えてください。普通人にとっては、腹筋運動をするよりも、息を腹筋を使って吐き出すことに集中した方が良いように思います。その方が内腹斜筋も含め、すべての腹筋がバランスの良く鍛えられるのではないかと思います。

 「肩の力を抜いて‥‥」とは、緊張をほどいてリラックスするためによく言ったり聞いたりする言葉です。しかし、どうしても肩の力を抜くことができないときや、肩の力を抜くと何の仕事もできなくなってしまう状態というものがあります。何かを指導する立場にある人は、このことを理解しないと善意で発した言葉が、聞く人にとってはとてもプレッシャーになって心を閉ざしてしまうことになるかもしれません。
 私の業界でも、施術者がお客さんに対して「体の力を抜いてください」と発することがあります。体に力が入っていると筋肉が硬くなってしまうのでマッサージしにくいからです。しかしそれは話が反対で、お客さんにしてみれば、体の力を抜いてリラックスすることができないのでマッサージを受けに来たわけです。このことを理解できない対応は適切であると言えません。

 さて、肩の力を抜くことができないということは、肩の力を抜くと体や精神を保つことができない状態にあると考えることができます。
 肩に力が入った状態を整体的に表現しますと、首の筋肉を収縮させて肩甲骨を持ち上げ、肋骨も持ち上げた状態です。これは呼吸で息を吸った時と同じ状態です。自律神経でいえば、交感神経が優位になった状態で、臨戦態勢であり、気持ちが高ぶった状態です。
 ですから常に肩に力が入っている人は、常に息を吸った状態にあると考えることができます。息を吐いたとしても、それは溜め息のようであり、苦しいから吐き出すのであって、息を吐き出す(呼気)ことを利用して副交感神経を働かせるまでには至りません。ですからリラックスすることができないと考えることもできます。

肩に力が入ったとき作動する筋(背面)

 こんな例があります。その方は長い間腰を患っていて、座ることもできず普通に立ち続けることもできません。何とか短い距離を歩くことができる程度です。足裏全体で立てないので、足の指先に力を入れて、足指で踏ん張るようにして立つことしかできません。その状態が長く続いていましたので、足の指先を曲げる筋肉(長母趾屈筋と長趾屈筋)がすっかりこわばってしまいました。その影響で腹筋の働きが悪くなり、体を普通に支えることができない状態になっています。そのため普通の人ならリラックスして自然に簡単にできる作業や動作ができないでいます。
 体はネットワークです。各筋肉、各器官が連携性をもって互いに補い合い機能を果たす仕組みにできています。この方の場合、ゆるんで働けなくなっている腹筋をなんとかしないと仰向けで寝ることすらできません。ですから無意識に首の筋肉を収縮させ、その連動性で無理やり腹筋を収縮させて、ようやく仰向けで寝ることができ、短い時間であれば立つことができ、歩くことができるようになっています。首の筋肉を収縮させていないと、これらのことができない状態なのです。寝ていても肩から力を抜くことができないのですが、それはこういう理由からです。
 また噛みしめの癖も持っていますが、噛みしめることによって何処かの筋肉を働かせ、それで体の機能を維持しています。これらのことは本人の意志とは関係なく、体が自己防衛手段として仕方なく勝手にやっていることと言えます。
 本来、肩に力を入れることも、噛みしめることも体の健康には良くないことです。マイナス面がたくさんあります。しかし、そのマイナス面を天秤にかけて差し引いても、現在の体の状況ではそうした方が体を維持できると体自身が判断して、無意識に行ってしまうのだと思われます。「ふと気づくと肩に力が入って息を吸った状態になっていた。」「ふと気づくと噛みしめていた。」そんな感じです。

 これから先、この方の“肩に力を入れてしまう”状態を改善するための施術に本格的に取り組みますが、立った時、足裏全体で体を支えられるような状態になるよう下半身の筋肉を整えることから始めます。それによって腹筋の働きが改善すれば首や肩の筋肉を収縮させなくても体を支えられるようになるからです。これまでは、すぐにギックリ腰になりやすい状態だった腰部や殿部の筋肉を整えることに集中していましたが、ようやく次の段階に進むことができるようになりました。

 全般的に言えば、吸気は交感神経を刺激し、呼気は副交感神経を刺激しますので、リラックスして日常生活を送るためには呼気を大切にしなければなりません。フーーっと息を吐きながら胸を降ろしていく動作が重要です。首や肩に力を入れる動作は息を吸う動作ですが、吸ってばかりいますとどんどん胸は上に上がってしまいます。するともうそれ以上吸えない状態になりますが、これが過呼吸状態であるとも言えます。
 ご自分の首が太く硬くなっていて、いつも肩に力が入っていると感じている人は過呼吸予備軍です。そのような人は意識的に、“吐いて、吐いて、吐いて”を繰り返し、胸が下がるようにしてみてください。そして、そのようにしてもなかなか肩の力を抜くことができないようであれば、体を整えることを考えてみてください。

 武芸をされている人はわかると思いますが、私たちの体は息を吸ったときにスキができます。息を吸っている瞬間は身動きのとれない無防備な状態になってしまうのです。ギックリ腰は重い物を持った時や無理な体勢で作業をした時ではなく、そのような動作を息を吸いながら、あるいは息を止めてやった時に起こしやすいのかもしれません。“作業は常に息を吐きながら”、そんなことを心がけてみてください。

 本人はずっと“むくみ”だと思っていたのに、実は坐骨神経痛だった、あるいは“むくみ”と坐骨神経痛の両方が重なっていたということがしばしばあります。内臓の病気からくるものは別として、夕方になると膝下がむくんでかったるくなり、夜は足を高くしないとなかなか寝付けないなど、血行不良によるむくみも辛いことですが、それは急を要して改善しなければ状態があっかするというものでもありません。しかし、坐骨神経痛による“足のだるさ”は状態が悪化しますと、しびれや痛みに変わったり、足が動かせなくなるほどになる危険性もありますので、早急に改善していただきたいと思います。
 血行不良のむくみによる足のだるさの特徴は、やはり夕方にかけて症状が重くなるといった点です。朝方はむくんでいないが、仕事が終わる頃になるとふくらはぎがパンパンにむくみ、ブーツや靴を履くのがきつくなるというのが一つのの傾向です。
 一方坐骨神経痛による足のだるさは、時間帯はほとんど関係ありません。そして活動しているとき、動いているときは症状を感じませんが、じっと座っていたり、横になったりして静かにしているときに症状を感じやすくなるという特徴があります。ですから、「だるいと言えば、いつもだるい」というような感想を持つようになります。

 数日前に来店された30歳代のお母さんです。その方の自覚症状は「日中動いているときは特別症状も苦痛も感じないが、夜布団に入って眠りにつくと脚全体がなんとなく痛みを感じ、朝起きると足がむくんでいる。」そして「背中が痛くて仰向けで寝ることができない。」というものでした。
 “動いていると他のことに紛れて気にならないが、じっとしていると症状が目立ってくる”というのは、ある種の耳鳴りもそうですが、常に軽微の症状があり続けているということかもしれません。まず軽度の坐骨神経痛か、あるいは大腿神経痛の疑いがあります。“朝起きると足がむくんでいる”というのは、一般的によくある“仕事後のむくみ”、”夕方のむくみ”とは違って、何処かで血行不良になっているのか、腎臓の機能が弱っているからかもしれません。
 背中の痛みは肩甲骨の辺りとその下の肋骨下部の両方にありました。肩甲骨周辺の痛みは、肩甲骨の位置がおかしいことが原因ですが、その下の痛みは腎臓が少し腫れていて肋骨からの圧迫を受けているからだと考えられます。「仰向けで寝ると背中が痛い」というのがその兆候です。ですから“坐骨神経痛と腎臓”というのが、今回の施術のキーワードになります。
 
 腎臓が少し腫れることはよくあることです。それで腎機能がおかしいとか、腎臓が病的であるということではないと思いますが、疲れが溜まると腫れてしまうのかもしれません。“耳の調子が少しおかしい”というが腎臓が腫れているときによくある症状です。これに対しては、私は専ら足裏や手のひらの腎臓反射区を利用して施術を行います。けっこう痛みを感じるかもしれませんが、反射区を強めの指圧で刺激し続けます。するとそのうち硬かったり粘っこかったりしていた反射区の部分が柔らかくなります。これで大概の腎臓の腫れは改善されますので背中下部の痛みは良くなりますが、もし反射区への施術だけで改善しない場合は耳のズレを修正するため顔の整体を行います。腎臓の状態はむくみに大きく関わりますので、当然むくみ対策の施術でもあります。
 予想していた通り、反射区への施術を終えますと肋骨下部の腫れはおさまり、「仰向けで寝ていても痛みを感じなくなった」とおっしゃいました。おそらくこれで起床時の足のむくみも良くなるだろうと思われます。

 次に坐骨神経痛の方ですが、以前にも記しましたように坐骨神経痛は神経が腰椎の椎間板で圧迫される(ヘルニア)か、殿部の梨状筋がこわばって圧迫されるかのどちらかが多いのですが、どちらの場合も右側か左側のどちらか片方に症状がでることが多いです。今回のように両脚に同じような症状がでるというのは、別の理由で両側の梨状筋が同時にこわばってしまった可能性が考えられます。
 背骨(腰椎)を一つ一つ確認していきますと、腰椎2・3・4番の棘突起が上の方を向いていました。私の手でそれらを下に向けますと殿部の梨状筋のこわばりが改善します。ですからこの方の場合、何らかの理由で腰椎が本来の状態ではなくなったために、常に梨状筋が少しこわばった状態にあり、それが坐骨神経を軽く圧迫し続けているので軽度の坐骨神経痛になったのだと思われます。結局、仙骨が歪んでいたことがその原因でしたので、それを調整して施術を終えました。

下半身の皮神経

 尚、下半身のしびれやだるさに関係する神経には坐骨神経と大腿神経があります。大腿神経は概ね内転筋や太ももの前面と外側面に関係しますが、それは腰神経叢であり腰椎の2~4番に関係します。坐骨神経は太ももの裏側と膝から下、足先までに関係しますが、仙骨神経叢であり腰椎4・5番と仙骨に関係します。
 この方の場合「脚全体が痛みを感じた」と訴えていましたので、坐骨神経痛のみならず大腿神経痛(大腿外側皮神経痛)も併発していたと思われます。

 “むくみ”か“神経痛”かの判別は、普通の人にはなかなか難しいところです。ふくらはぎから下のむくみであれば、足リフレ(足つぼマッサージ)でだるさがスッキリしてしまうことも多いのですが、坐骨神経痛が絡んでいる場合はそれでは解決しません。足リフレの効果は、その時だけ心地良く感じても半日ももたないでしょう。夜に足リフレをやって久々に気持ちよく眠れたとしても「翌朝起きたら、まただるさを感じる」というようになってしまいます。
 坐骨神経痛は症状が軽微なうちに改善してしまいましょう。「何となく気になるけど‥‥」と放っておくと症状が徐々に進み、ある日突然足が動かせなくなることもあります。
 慢性的に脚にだるさやかったるさを感じている人は、「私のふくらはぎのだるさは、むくみのせい」と決めつけない方が良いと思います。

 今回は筋肉の話です。
 私たちが通常「腹筋」と呼んでいる筋肉は腹直筋を指すことがほとんどですが、腹筋には4つの筋肉があります。腹直筋と外腹斜筋と内腹斜筋、そして腹横筋です。これに内臓を保護するための腹壁をつくるという意味で腰方形筋をその仲間に入れることもあります。今回はこの中で内腹斜筋について取り上げてみます。

腹筋群_側面
 
 私のところに時々声楽家の方がいらっしゃいます。声楽家ですから腹式呼吸は得意とするところです。ところが内腹斜筋の働きが悪いと息を最後まで吐き出すことがスムーズにできなくなります。そして、どことなく声を出すにも背筋に力が入りきらないとおっしゃいます。
 私たちは普段、内腹斜筋を意識することはほとんどありません。普通に息をしているくらいではほとんど働いていないかもしれません。しかし、私たちが下腹部に重心を持っていくためには、つまり「下っ腹に力を入れる」ためにはとても大切な筋肉です。
 息を最後までフーーっと吐き出し続けます。すると横っ腹の骨盤に近い部分がジーンとするような筋肉の収縮感が得られます。その筋肉が内腹斜筋です。

内腹斜筋01


腰痛と内腹斜筋との関係
 内腹斜筋の働きが悪いと骨盤と胸郭の間が広くなり、胸が上がって体幹が不安定になります。腰部に痛みをもたらす筋肉は主に脊柱起立筋ですが、肋骨と骨盤の間が離れるので脊柱起立筋は張ってしまいます。仰向けで眠ることができない、横向きでないとリラックスできないという場合は、内腹斜筋の働きが悪く脊柱起立筋がパーンと張ってしまうからかもしれません。息を最後まで吐き出しきることができないで腰部や背中にいつも張り感がある場合は、内腹斜筋の働きを疑う必要があります。
 また、内腹斜筋の働きが悪いと胸腹部と骨盤部の一体感が失われますので、歩く時でもなんとなく骨盤がフニャフニャした感じになり、下半身に体重を乗せて歩くことができなくなります。重心の位置が胸に近くなってしまいます。この傾向は現代の人に多いと思います。
 下半身の安定感にとぼしく背中や腰がいつも張っているように感じる時は内腹斜筋が関係していると考えられます。

呼吸と内腹斜筋の関係
 息を吸うとき胸は拡がり胸郭は上がります。腹式呼吸では、これに加えてお腹が前に膨らみます。この時、腹筋は伸びてゆるんだ状態になります。腹筋がゆるまないと息を深く吸うことはできません。
 息を吐く時は、これとは反対に腹筋が収縮して胸郭を引き下げます。腹筋の働きが悪いと息を吐く動作が不十分で途中までしか息を吐き出せないため呼吸が浅くなります。
 さて、内腹斜筋の働きが悪く収縮する能力が弱くなりますと、自然な腹式呼吸ができなくなります。自然な腹式呼吸とは、意識せずともゆったりしていて、腹部が滑らかに寄せては返す波のように動いている状態です。しかし、現代の多くの人たちがハアハアと胸を動かすだけの呼吸だったり、お腹がペコペコするだけの呼吸だったりしています。何かに集中することが多かったり、精神的な緊張状態が続いたりすると私たちは呼吸を止めて息を吐き出すことを忘れてしまい、しばらくして溜め息をつくように息を吐き出すわけですが、ストレスの多い現代社会ではそれも仕方のないことなのかもしれません。しかしそれでは内腹斜筋はほとんど働きませんので、筋肉としての能力は落ちてしまいます。浅い呼吸が内腹斜筋の働きを弱め、働きの弱った筋肉はさらに呼吸を浅くしてしまうという悪循環になってしまいますので、一日に何回かは意図的に息を最後まで吐き出して内腹斜筋を鍛えるような時間をつくる必要があると思います。

重心と内腹斜筋の関係
 私のところに来られる方々はほとんどが体に不調や不具合を抱えていますが、そのような方々に共通しているのは重心の位置が高いことです。ここで”重心”と表現しているのは、体を動かすときの中心部という意味です。体のどこを支えにして歩いたり、手を動かしたり、呼吸をしたりしているかということです。
 理想的な重心の位置は下腹部だと思います。臍から骨盤にかけての部分が支点となってあらゆる動作が行えるのが効率的ですし、体を壊さない秘訣かもしれません。しかし、その重心がお腹の上部から胸、つまりみぞおち付近にある人がたくさんいます。そこが硬くこわばっているのです。胃の調子が悪い人が多い理由はここにあるのではないかと思っています。硬くなったみぞおち(腹直筋の上部)が常に胃を圧迫していますし、胃のすぐ下を通っている大腸の横行結腸の動きも悪くなりますので、便秘や下痢といった不調を招いているのではないかと考えています。
 安定していて、楽に立ったり、歩いたりするためには重心の位置が下腹部に来る必要があります。立っていても、座っていても、息を抜いて楽に骨盤に上半身を乗せることができることが正しい姿勢をつくるためのポイントですが、そのためには重心が下腹部になければなりません。重心の位置が高いと骨盤で上半身を支えることができませんので、すぐに背もたれに寄りかかりたくなったり、あるいは座ることが苦痛なのですぐに横になったりしてしまいます。体がこんな状態なのに、「姿勢良くしなさい!」などと強要したところで、本人にとっては苦痛以外の何物でもなく、反発を招くだけの結果に終わってしまうでしょう。
 そして、重心を下腹部に下げるためには内腹斜筋の働きを良くすることが欠かせません。姿勢を正して、ともかく骨盤にしびれを感じるくらい最後まで息を吐き出し続けます。それを何回か繰り返していると、腹筋の下の方が硬くしまっていく感じがつかめると思います。肛門も自然と締まってくることでしょう。内腹斜筋に限らず腹筋の全部が最大限に力を発揮している状態です。
 このようなトレーニングをしていると、これまで体験したことのないような力が自分の内にあるのが体感できるようになると思います。これは筋トレの腹筋運動では得ることのできない、腹筋の鍛え方です。

 先日、大学の陸上競技部の選手が腰痛の改善に来られました。立派でしなやかな体型をしているのですが、「腰が痛くて仰向けで寝ることができない」ということでした。いろいろ体を調整しましたが、私がとても気になったのは、重心の位置が胸にあることでした。ハイジャンプの選手ですが、筋トレでベンチプレスをはじめ上半身を鍛えることをかなりやっているとのことです。この選手に「ともかく息を吐いて重心を降ろしてください」と言っても、本人はその感覚がなかなかつかめません。ベンチプレスなどで腕の筋肉や胸筋や前鋸筋を鍛えすぎているため重心が上がってしまい、さらに体の内側ではなく外側に重心が分散してしまっているのだろうと私は思いました。もっと効率の良い体の使い方ができるはずですし、そうなれば記録も上がっていくだろうと感じました。

 運動選手や特殊な仕事に従事する人は別として、普通の人が内腹斜筋を鍛えるために何かのトレーニングをする必要はないと思います。ともかく、一日に何回か、息を吐き出しきって骨盤がジーンとなるような呼吸を1~2分行ってもらえれば、それで十分だと思います。そうすることで呼吸も改善し、重心の位置も改善し、「横向きでないと眠れない」という状態も改善するかもしれません。

 専門的に、内腹斜筋の状態を整える方法はいくつかあります。内腹斜筋は下半身では長内転筋、後脛骨筋、母趾内転筋と、腕では上腕筋、母指内転筋などと連動しますので、それらの筋肉の状態を整えることによって調整します。 

 内腹斜筋はあまり語られることのない地味な筋肉ですが、体の芯を支えるインナーマッスルであると私は考えています。ここに取り上げた、腰痛、呼吸、重心、という項目では必ず状態を調整しなければならない筋肉です。 

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