ゆめとわのblog

ホームページとは違った、より臨場感のある情報をお届けしたいと思っています。 また、テーマも整体の枠を飛び出してみたいと思います。 ホームページは以下です。 http://yumetowa.com/ お問い合わせはメッセージ欄でお送りください。

2015年05月

 その方は91歳の女性です。ふくらはぎの下部から足にかけてむくみが強く、歩くとき足がなかなか前に出ないという訴えでした。これほど高齢になりますと、体のどこかに不調があるのは仕方のないことかもしれません。しかし、いつまでも自分の足で歩き続けたいと思うのは、私たちの切なる願いでもあります。
 むくみを起こす原因はいくつかありますが、この方の場合、腎臓機能の低下によるむくみかもしれません。と言いますのは、耳もかなり弱くなっていて補聴器がなければ日常生活ができない状態であると聞かされたからです。現代医学では耳と腎臓の関係性は特に指摘されませんが、東洋医学では耳と腎の働きは密接に関係し合っていると考えられています。

足裏の反射区で効果がある「腎臓」と「小腸」
 以前にも取り上げましたが、私の経験上、足裏や手の反射区で素速い効果が期待できるものに“
腎臓”と“小腸”があります。その他にも消化器系などの反射区も期待できますが、今回の”むくみ”というテーマではこの二つの反射区を利用することにしました。
 腎臓反射区は、まさしく腎機能をアップしむくみの改善を目指すためと、耳に対する効果を期待して用います。小腸反射区は血液循環の改善と体の芯を温める目的で用います。(この反射区については以前に取り上げました。)血液循環と体熱はもちろん”むくみ”に関係します。

腎と小腸反射区

 高齢になりますと筋肉量は落ちます。さらに運動量も落ちます。体熱は筋肉の働きと肝臓の働きに負うところが大きいので、高齢者になって運動量が落ち、食欲も落ちますと自ずと体は冷えた状態になってしまいます。そして、その状態はしっかりと小腸反射区に現れます。その部分の奥の方へ指をあてていきますと、板のように硬くなってしまったところに突き当たります。これが体の芯が冷えていることの証であると私は考えています。
 腎臓反射区の方は、これとは少し様子が異なります。奥の方へ指を沈めていきますと硬めのコリのようなものが見つかります。大きさはその時々によってまちまちです。直径2㎝くらいのときもあれば、5㎜程度の小さいときもあります。このコリのようなものがなくなるまで指圧し続けることが施術方法です。また、腎臓反射区のすぐ上に副腎の反射区がありますが、ここは東洋医学の腎の経絡で湧泉というツボにあたります。ここも強めに刺激するとよいと思います。

 施術前は足首の上部から足にかけて非常に硬く、指で押すとすっかり沈み込んでしまうほどむくみがひどかったのですが、40分程度の施術後は足裏はかなり柔らかくなりました。足の甲や足首の上部に硬さやむくみがすっかり良くなったわけではありませんが、かなり改善されました。
 これまで週に1回のペースで3回施術を行いましたが、歩く速度もかなり速くなり、普通の人が歩くのと大差がなくなりました。本人は「足が軽くなって、とても快適になった」と言っていました。

 今回、このことをご紹介したのは、この施術はとても簡単で、どなたでもすぐに覚えられ実践することができると考えたからです。自宅に高齢者が居て足がむくんでいたり、歩くのがおぼつかなかったりするようであれば毎日でなくとも週に二度三度して差し上げてみてください。あるいは、ご自分がむくみで不快な思いをされているようであれば、是非試してみてください。
 私のところでは足のリフレクソロジー(足つぼマッサージ)もやっていますが、むくみをとるという目的に絞れば、腎臓と小腸に集中したこのやり方の方が足リフレより効果が高いです。以下に、実際の手順を記します。ポイントは満遍なく一通り行うのではなく、腎臓反射区と小腸反射区に集中して”感じが変わる”まで粘り強く行うことです。溜まっていた物が”流れる”、という感じをつかみ取ってから次に進んでください。

実際の施術
 時間は両足でだいたい40分間です。
①準備段階‥‥そんなに本気を出さなくても大丈夫です。
 まず最初は足裏全体に対する指圧です。縦方向に5本のラインをつくり、中心線からはじめます。一つのラインに対し5箇所ほど少し強めにゆっくりと指圧をしていきます。
 その次は指先を揉みほぐします。強く揉むとかなり痛みを感じるかもしれませんので、様子をみながら少し痛みを感じるくらいの力でほぐします。ここまでが準備体操のようなものです。
 
膝下から足のむくみに対するマッサージ01

②本番‥‥心を集中して行ってください。
 小腸反射区への粘り強い施術。肝腎なことは血液や体液の流れを感じ取り、全身の筋肉が次第にリラックスしていく様を感じ取ることです。
 この反射区は両手の母指を使ってかなりの強さで指圧します。硬くなっている部分は厚みがありますし面積も広いですが、根負けすることのないくらいの覚悟で深く深くと圧していきます。私はこの部分だけで5分ほど使う場合もありますが、そうしているうちに何となく血液が流れ出し、むくんで溜まっていたものが動き出す雰囲気が感じられるようになります。それまでカチカチだった足の骨格もゆるんできます。そうなりますと、指圧が痛気持ちよく感じられるようになります。ここまでやらなければ大きな効果は期待できません。
 腎臓(及び副腎の)反射区への施術。小腸反射区と同じような感じの施術になりますが、小腸区の方は指圧一辺倒だったものが、この反射区へは”コリの揉みほぐし”的要素が加わります。奥の方で少し指先を動かして揉みほぐすとも含めるといった感じです。
 この反射区への施術も時間をかけてゆっくりと行います。そうしていますと、コリが消えて指圧している部分を中心に周囲がフニャッとゆるんだ感じになります。停滞していたリンパが流れ出し、分厚く硬かった足裏が薄く柔らかくなっていきます。

膝下から足のむくみに対するマッサージ02

③仕上げの段階‥‥足裏全体がゆるんで、停滞していたものが流れやすい状態になっていますので、ここからは、流すことを中心に施術をします。
 足の甲側、足趾と足趾の間をほぐします。そこに停滞しているリンパを流すイメージです。
 ふくらはぎへの施術。これはいわゆるリンパマッサージのごとく行います。筋肉と筋肉の間に溜まっているリンパを分離するといった感じです。マッサージの方向にこだわる人もいますが、私はそれほどこだわっていません。やりやすいようにやっています。ふくらはぎの裏側を、膝裏のリンパ節に流すことばかりにこだわるより、ともかく溜まって筋肉とか筋膜にこびりついているものを流し離すといった感じでやっています。力は少し強めです。

足三里

 足三里への指圧。これはかなり重要だと考えています。このツボへの指圧は要領が必要かもしれません。
ツボの位置に正確に当たって、指圧の深さも適切なところにいきますと「流れ」が感じられます。

 来店された91歳の方はしばらく週一回のペースで通われるようです。玄関を出て駐車場まで歩く姿を拝見していますが、少し猫背ではあるもののスタスタと足が動いている様子を見ますと、私も嬉しく思います。
 また、高齢者が歩きづらくなるのは”むくみ”ばかりとは限りません。お腹の力が足りなくて足が動かなくなってしまうこともよくあることです。それについてはまた取り上げたいと考えています。

 これまで幾人かアゴのエラをほっそりさせる目的でボトックス注射を利用している人が来店されました。額のシワをなくす目的で利用されている方も来店されました。
ボトックス注射は筋肉の働きを弱めて、筋線維を細くする効果があると説明されています。小顔目的ではエラにある咬筋に注射するようですが、それは一時的に美容目的はかなえられると思いますが、長期的には体へのマイナス面があるので、私としてはおすすめできません。

咬筋は全身の筋肉の働きに影響を及ぼす
 私たちは“火事場の馬鹿力”のような強い力を出そうとするとき、歯を強く食いしばりながら全身の筋肉を総動員しようとします。口を開いたまま全身の筋肉を働かすことはできません。
 歯を食いしばる筋肉を”そしゃく筋”と呼びますが、そしゃく筋は全身の筋肉の司令塔のような働きをしています。強い力を出そうとするときはまず、そしゃく筋を収縮させて目的の筋肉を働かすことができる仕組みに私たちの体はなっているということです。
 そしゃく筋がしっかりしていれば、全身の筋肉も概ねしっかりしていると考えることができます。そして経験的にもこれは真実であるといえます。そしてボトックス注射の対象となる咬筋はそしゃく筋の一つですから、こうして取り上げた次第です。

 「一口30回噛んで食べる」という死語になりつつある言葉は、そしゃく筋の大切さを物語っています。現在は柔らかい食べ物で溢れているため、子供達や若者達も含めて多くの人が十分な“そしゃく”をしなくなっています。そのことが、毎日体がだるかったり、姿勢が保てなかったり、活力に欠けた生活を送ってしまう原因の一つであると私は考えています。私は毎日何人かの人の顔や体を触っていますので、このことが身にしみて理解できます。

ボトックス注射による影響

 さて、アゴの咬筋にボトックス注射をしますと、その部分の筋線維は細くなり働きが悪くなります。つまりゆるみきった状態になってしまうということです。それでも私たちは毎日食事をしたり、会話をしたりするため口を閉じたり開けたりしなければなりません。咬筋がしっかりしていれば、何の苦労もない動作ですが、咬筋が働かないため別の筋肉の力を借りてこれらの動作をしなければならなくなります。口周りの表情筋や頬の筋肉が本来の役割以上に力を使うので、これらの筋肉がこわばり顔が硬くなってしまうかもしれません。また、咬筋と同じそしゃく筋の一つである側頭筋が咬筋の働き分まで負担することになるので、強くこわばってしまい、コメカミの頭痛や片頭痛を招く可能性は非常に高いと考えることができます。
 咬筋がしっかりしていれば全身の筋肉が持てる力を楽に発揮することができますので、普通に立ったり、姿勢を保ったりすることは特に苦を要することもありません。しかし筋肉の働きが悪いため、無意識に、常に咬筋に刺激を入れ続けようとして噛みしめる癖を持ってしまうことは十分に考えらることです。もちろん寝ている間の歯ぎしりの原因にもなります。
 ボトックスによってエラは細くなったけど、顎が開かなくなったり、顎関節症になったり、イビキをかくようになったり、歩き方に安定性がなくなったり、腰が常に重かったりする、といったことは関連性のあることとして考えることができます。それくらい咬筋=そしゃく筋は私たちの体にとって重要なものです。「噛めなくなったらおわり」などと昔の人はよく口にしていました。今となっては乱暴で不適切な言葉遣いかもしれませんが、当を得た表現であると思えてしまいます。

対処方法
 ボトックス注射の効果はかなり長続きするようです。数ヶ月で効果はなくなるという話を聞きますが、その間、細くなり弱くなってしまった筋線維はそう易々とは働きが戻りません。しかし、だからといって対処法がないわけではありません。
 対処法の一つは筋肉を鍛えることです。つまり、そしゃくの回数を増やして痩せてしまった筋線維鍛えて太く強くすることです。口を閉じてモグモグとしっかりかみ続けることです。ボトックスの影響はエラの角の部分が一番あるようですから、その部分に指をあて、モグモグしているときに”力こぶ”がその部分にできるように噛むことです。柔らかいガムやパンなどで、噛み方は柔らかく、しかし、しっかりと、という感じです。最後まで噛まないとエラの角の部分に力こぶはできません。また、口を開けてペチャペチャ噛んではいけません。そのような噛み方ですと力こぶが顎関節のそばにできてしまい目的が達成できません。
 対処法のもう一つは、エネルギーを与えることです。”エネルギーがそこから去って行くので、筋肉が衰える”という考え方をしますと、ボトックス注射は局所的にエネルギーを奪う注射であると考えることができます。
 エネルギーを与えるためにはどうすれば良いか? なかなか方法が思いつかないかもしれませんが、一番手っ取り早いのは手を当てることです。誤解を恐れずに言えば、いわゆる”ハンドパワー”です。細くて頼りなくなってしまったエラ部分の咬筋に、そっと指先をあて、ジワーッと想いを込め続けることです。皮膚の表面ではなく、そこから指先を沈めて筋肉に触ります。咬筋自体はエラの部分から顎関節の側までありますので、指先を深めに入れて下から上まで触っていくと、弱っている部分としっかりしている部分の触り分けができると思います。その弱っている部分にしばらく指先をあててください。指圧のように押してはいけません。またマッサージのように回しても行けないし、強弱をつけてもいけません。ただただジワーッと触り続けるだけです。しばらくすると、それまで弱々しかった部分に少し力感が出始め、ハリのようなしっかりした感じがでると思います。そうしましたら別の弱い部分を見つけて同じことを行います。面倒な根気と時間を要する作業です。しかし、咬筋の働きはそれほど大切なのです。
 実際、私は施術でこれと同じことをしています。何分も、時には何十分もただ触り続けるだけの施術をしたりします。

 以上が対処法です。しかし、ボトックスに対しては即効性は期待できません。一度良くなったと思っても、薬効のおかげで次の日はまた弱くなってしまいます。しかし根気よく続けていると、そのうち、急に筋肉の働きが甦り、それまでの頭痛や顎関節の異常や体のだるさなどが改善されていくようになると思います。

追記
 おでこのシワをなくす目的でボトックス注射を額にすると前頭筋の働きが弱まります。すると瞼を開けたり、口角を上げたりするのも本来以上の力を使うことになります。そのことによって次第に表情筋が硬くなっていき、表情をつくる動作がスムーズにできなくなっていく可能性も出てきます。
 ボトックス注射は“筋肉の働きを弱める”ということを頭に入れていただき、それが全身に及ぼす影響についてもよく考えていただきたいと思います。
 私たちの体はロボットのようにパーツを組み合わせてできているわけではありません。元々は受精卵というたった一つの細胞が発展して拡がっていき現在の体となっています。ですから、手も足も顔も上半身も全部関連し合っています。

 この方は長年建設関係のお仕事に従事され、毎日長時間の肉体労働をしています。だいたい2ヶ月に1度くらいの割合で来店され、全身の揉みほぐしと不調箇所の調整をしています。いつも肩の揉みほぐしから施術を始めるのですが、3分もしないうちに眠りに落ちてしまい施術時間のほとんどを眠った状態で過ごされます。
 そんな方なのですが、今回は「夜中の2時頃に必ずと言っていいほど目が覚めてしまい、それからウトウトするのだが、朝方まで何度も目を覚ましてしまう。それを何とかして欲しい。」ということで来店されました。“こんなにいつも寝入ってしまう人が、実は睡眠障害なのか‥‥”と思いましたが、以前に息子さん(父と同じ仕事)が来店され不眠を訴えていたことを思い出し、なんとなくイメージが湧いてきました。息子さんは20代前半ですが、その後睡眠の調子も良いようで、同じようにして欲しいという要望だと感じました。

 さて、睡眠に関して整体で調整できることの一番は呼吸を整えることです。そして次には頭の血流が良くなるように整えることです。心理的な事柄で眠れなくなることは誰もが経験することですが、直接的にそれをどうにかすることはできなくても、呼吸と血流を整えて頭の中がスッキリするようになれば、意外に心理的な要因での睡眠障害に効果があるかもしれません。

呼吸を整える
 呼吸の調整はなかなか奥深いものがありまして、単に規則正しいリズムで息を吸って吐いているかだけでは不十分です。呼吸は波でありリズムです。そして呼吸の波とリズムが全身に拡がっていくことが、本当の意味でのリラクゼーションだと考えています。ですから呼吸の調整において私が目標とすることは、ゆったりとしたリズムで、あたかも“全身で呼吸をしているような状態”を実現することです。
 呼吸運動において要となるのは横隔膜と胸郭の動きです。肺は自分自身では膨らんだり縮んだりすることができません。横隔膜がお腹の方へ下がることによって、さらに胸郭が拡がることによって肺の中が陰圧になり外気が肺の中に流入する仕組みになっています。
 
横隔膜_呼気吸気

 息を吸う動作では胸と腹の境界となっている横隔膜が腹部の方へ下がりますが、それに連動するように肋骨が上に動き胸郭が拡がります。ですから普通は息を吸う時にお腹が膨れ、それに合わせるように胸が顔の方へ近づきます。ところが実際にそうできている人は多くありません。お腹だけがペコペコ動いていたり、胸だけがハアハアしていたり、という場合が多く見受けられます。呼吸が浅い状態です。これでは全身に拡がるような“波”は生まれません。
 また息を吐き出す時には、胸が下がるとともに膨らんでいたお腹が平に戻ります。そしてこの動作がスムーズに行われるためには腹筋の働きが重要になります。腹直筋、外腹斜筋、内腹斜筋の3つの腹筋が協働して上がっていた胸郭を引き下げますので、仮にこれら腹筋の働きが悪いと胸が下がらない、つまり胸が上がったままの状態になってしまいます。この状態は“息が詰まった状態=過呼吸状態”といえます。
 
呼気に働く腹筋

 ごく自然に、フーーッと長く息を吐き出し続けていくことができれば、そしてこの動作の最後の方で下腹部の腹筋が硬くなる(収縮する)のが確認できるようであれば問題はありませんが、動作が途中までしかできなかったり、あるいはゆっくり吐き出すことができなかったり、途中で一端動作が途切れてスムーズさに欠けるようであれば、腹筋の働きに問題があると考えられます。尚、「息をゆっくり吐き出してください」と言ったとき、深呼吸をするように一度大きく息を吸ってからでないと吐き出せない人がいます。こういう人は過呼吸状態であると考えられますし、腹筋の働きが良くない状態であると考えることができます。
 私たちは緊張したり驚いたりするとき、息を吸った状態で止めてしまうことが多いです。“ハッ”とするという言葉はまさにそれを、つまり息を吸った状態を物語っています。そして体から息を吐き出すとき、緊張感から解放されるとともに“何か”が体中に行き渡ります。この“何か”を“気”と表現してよいかもしれません。
 溜め息は息詰まり状態からの瞬間的な解放、つまり緊張状態からの解放手段です。つまり、息を吐き出すことによって緊張感から解放されるように私たちの体はできているということです。

 “不眠”を呼吸在り方という面で考えるとき、「ゆったり吐き出せているだろうか?」ということが最初の着目点になります。
 そしてそれができていないのはどうしてなのか?
 それは吸気に問題があるのだろうか? つまり胸郭の状態や鼻や喉の状態。
 あるいは、腹筋の働きに問題があるのだろうか?
 といった感じで観察していき、調整していきます。

 (大胸筋や前鋸筋などの)胸をとりまく筋肉のこわばりが肋骨の動きを制限していて吸気の動作が上手く行えない場合があります。あるいは鼻の通りが悪くて、あるいは舌や喉の問題で吸気が上手くできない場合もあります。その他に胸郭自体が閉じていて、つまり胸がふさがっていて息が吸えない場合もあります。
 腹筋の働きが悪くてゆったりと息を吐き出すことができない場合、腹筋自体に問題がある場合もありますが、多くはそれ以外の理由で腹筋の働きが悪くなっています。手や腕の使いすぎで、それらの筋肉がこわばり、その連動性で腹筋の働きが悪いこともあります。足の指先が強くこわばっていて腹筋の働きが悪いということもあります。

 これらの不具合を一つずつ調整していきますと、はじめは胸だけがハアハア動いていたり、お腹だけがペコペコ動いていた呼吸状態が次第にゆったりとしていき、やがて胸から下腹部にかけて呼吸運動の一体感と連動性が生まれるようになります。呼吸運動が波にかわり、全身がそのリズムにあわせて波打つような状態になっていきます。こうなりますと呼吸の影響による不眠の状態は改善されると思います。

 頭部の血流に関しましては、噛みしめや歯ぎしりによるそしゃく筋のこわばりや、目の疲労による影響などが考えられます。頭蓋骨が歪んでいたり首が捻れていて血流が悪くなっていることもあります。

 睡眠に関して、その他に申し上げておきたいことが一つあります。これは理屈だけでは理解できないこと、実際に体験しないと実感できないことですが、胸が開放的であるか、閉鎖的であるか、というのがあります。呼吸とも深く関わりますが、胸が閉じているようなときは、どこか息苦しそうです。眠っていても眉間に縦皺がよっているような感じです。このような場合、それを何とか改善し、胸が環境(自然界)に対し開放的な状態にするのも私の仕事だと思っています。そうなれば、自然界のリズムと体のリズムが通じ合い、安らかな眠りが実現できるのではないでしょうか。

 5分ほど歩くと足が動かなくなり、しばらく休まないと歩き出せない。あるいはひどくなると、10メートルも歩けない、という症状がでる場合があります。「素足では全然普通に歩けるけど、靴を履くとすぐに疲れてしまう」という人もいます。
 「休み休みでないと歩くことができない」という症状の代表的な病名は脊柱管狭窄症ですが、脊柱管狭窄症以外にも同じような症状がでることがあります。それを今回はお話ししたいと思います。
 
足の伸筋腱と屈筋腱

足趾が丸まっている人は靴を履くと疲れやすい
 工場で働いている人は安全靴を履いています。1トンの重さにも耐えられる靴だそうですが、この靴は先が硬く強くなっているほか、長靴のように足先に大きな空間があるようです。その感じは、もしかしたら長靴のようであるかもしれません。私が小学生の頃、雨の日はゴムの長靴を履いて通学していました。すると普段靴のように足にフィットしていませんし、足先の空間が大きいので地面を蹴るときに靴を安定させるため指先を丸めるように力を使わなければなりませんでした。例えば同じ15分の通学路でも、普段靴では苦もないのに、長靴では歩くとことが疲れてしまいます。
 指先に普段以上に力を入れたので疲れるのか? あるいは他の理由で疲れるのか?
 これが今回のテーマになります。

 ところで、指先を丸めることを筋肉の働きに置きかえて考えますと、指先の足底側の筋肉(長母趾屈筋と長趾屈筋)を縮め、指先の甲側の筋肉(長母趾伸筋と長趾伸筋)を伸ばすことになります。15分、あるいは30分や1時間くらい長靴を履いて歩く程度であれば、この状態を続けたとしても少し休めば筋肉に問題が起こることはほとんどないと思います。しかし一日8時間、それが週に5日間ということになりますと、足底側の長母趾屈筋と長趾屈筋はこわばった状態、反対側の長母趾伸筋と長趾伸筋はゆるんだ状態になってしまいます。
 安全靴や長靴だけでなく、おしゃれなサンダルや先細の靴やヒールの高い靴などを愛用している人は、外反母趾になりやすいというのもありますが、指先が丸まった状態、つまり甲側の筋肉がゆるんだ状態になっている可能性が高いと言えます。
 以前に、”枕が合わないのは、後頭部や頸の後ろ側の筋膜がゆるんでいるため”というのを取り上げましたが、靴を履くと長く歩くことができない、疲れやすいというのも同じ理屈があてはまります。

ゆるんでいるところに靴があたると筋肉の働きがおかしくなる
 こわばっている部分に何かがあたると痛みを感じることが多いです。こわばっている部分というのは縮む方向に力が働いているところなので、それを引き伸ばすような刺激や動作に対しては拒否反応を示し痛みを感じやすくなります。これとは反対にゆるんでいる部分に物が接触しますと、その部分は刺激に抵抗する力を持っていませんので、その歪みが他の部分にでるようになります。伸びきった状態のゴムの部分に力を加えるとゴムはその刺激に耐えられなくなるので他の部分に助けを求める、といった感じでしょうか。
 長母趾伸筋(腱)や長趾伸筋(腱)あるいは足の甲の筋膜がゆるんだ状態で、歩く度にその部分に靴と接触する力が加わりますと、その部分ではその力(刺激)を処理しきれずに膝や腰などに負担が及ぶことになります。これが、素足では普通に歩けるが、靴やサンダルを履くと急に腰が重くなり疲れやすくなってしまうことの原理です。(私はそう考えています。)
 この状態が進みますとスリッパを履くことができなくなったりします。靴下を履いているくらいの刺激は大丈夫でも、スリッパに足をくぐらせた瞬間に息苦しくなって足がおぼつかなくなってしまう方もいます。

 「足袋なら軽快に動けるけど、靴を履くと足が上がらなくなってしまう」という建設作業に従事している方もいました。「座ったり、寝たりしているぶんにはどこも痛くないけど、散歩するとすぐに腰が痛くなってしまう」という方もこのような状態だと思います。
 足趾の先(第一関節)が曲がっているような方であれば、その指先を伸ばすようにストレッチして長母趾屈筋、長趾屈筋のこわばりを改善するようにすれば、症状は少しよくなるかもしれません。あるいは足趾先を動かす長母趾屈筋、長趾屈筋、長母趾伸筋、長趾伸筋の本体(筋腹)はふくらはぎの一番深い部分にありますので、ふくらはぎの深い部分をようくマッサージすれば症状が改善するかもしれません。しかし本格的に改善したいと考えるのであれば、ここでの施術をしていただくのが一番だと思います。それが早いです。

下腿の伸筋と屈筋

 病院などで「長く歩けない」「部屋の中では大丈夫だけど、外に出ると歩けなくなる」などと訴えますと、まず脊柱管狭窄症の疑いがかけられ、レントゲンやMRIなどの診断を受けることになるかもしれません。それでも原因がよくわからなければ、いろんな検査を受けなければならなくなるかもしれません。あるいは原因不明として処理されたり、“精神的な問題かも”などと言われてしまうかもしれません。
 私から見ると「ただ足の筋膜や筋肉がゆるんでいるだけです」となります。そしてそのゆるみを解消するだけで症状は大きく改善しますので、そのような悩みをお持ちの方は是非ご来店いただければと思います。

 一度発症するとなかなか治りづらいと思われている症状に坐骨神経痛があります。
 「その足のだるさは、坐骨神経痛と思われます。」と言いますと、ショックを受けてしまう方が多くいます。「神経痛」という響きが“高齢者の病気”であり、“治りにくい”ということを連想させるからかもしれません。足のだるさぐらいでは、もっと気楽に受け取っていただける言葉を選びたいといつも思うのですが、やはり神経痛は神経痛なので、仕方なくそのように説明しています。

 さて坐骨神経痛の軽い症状では、ふくらはぎがだるかったり、太ももやふくらはぎの外側を触ったときに薄皮が一枚挟まっているような、なんとなく他とは違うような感覚異常を感じたりします。多くの人が、むくみによってそのようになっていると考えているようです。むくみの場合は夕方になるとふくらはぎがパンパンになってだるくなるなど、一日の中である時間帯とか、あるいは立ち仕事が続いたなどの作業によって症状がもたらされることが多いのですが、時間帯や作業に限らず一日中だるかったり、あるいは椅子に座るとだるくなるといった場合は坐骨神経痛の可能性が高いです。
 
坐骨神経の走行ライン

 坐骨神経は腰椎の4番、5番、仙骨部から出発し、骨盤(殿部)の梨状筋の隙間を抜けて太ももの中を通り、膝から下ではそのままふくらはぎの裏側を通って足裏まで下るラインと、膝下から外側に出てふくらはぎの外側を下っていくラインの二つがあります。ですから神経痛の症状が進みますと、殿部や太ももの裏側、ふくらはぎの裏側や外側、足先といったところにしびれや痛みが発症します。
 腰椎椎間板ヘルニアでは腰椎4・5番あたりの問題で神経痛になることがほとんどですが、それ以外では骨盤の歪みによる梨状筋のこわばりによって坐骨神経が圧迫されているケースがほとんどです。
 
梨状筋と坐骨神経

 立っていれば大丈夫だけど座るとしびれやだるさが強まる、というのであればまず間違いなく骨盤の歪みが原因であると考えられます。(骨盤に体の重みが掛かると梨状筋のこわばりが強くなる)
 骨盤が歪んでしまう原因はたくさんありますが、坐骨神経痛になってしまうようなものとしては、ギックリ腰をしたことがある、尻餅をついたことがある、ずりっと足を滑らせて太ももの裏側や殿部を伸ばしたことがある、肉離れをしたことがある、などが考えられます。

スリッパがすぐに脱げてしまう、自分の足ではないみたい
 最近来られた女性の方です。坐骨神経痛になってかなり時間が経っていました。病院では脊柱管狭窄症と診断され“手術しか治しようがない”と言われたそうです。手術はしたくなかったので、半ば症状の回復は諦めていたということでした。
 私がみたところ、脊柱管狭窄症ではなく梨状筋のこわばりによる坐骨神経痛でした。太ももからふくらはぎ、そして足先までしびれがあり、足裏がとても硬くなって「自分の足のような気がしない」と言っていました。
 神経痛になってしまった原因を探るため、いろいろお話しを伺ったところ、体操をしていて開脚したとき股関節左側の筋肉を傷めて一時的に動けなくなったことがあるということでした。おそらくこれが元々の出発点だったと思います。それから下半身の使い方のバランスが崩れ、骨盤が歪んで梨状筋がこわばってしまったのだと思います。ですから、施術としては“梨状筋のこわばりをどうやって解消していくか”が最大のポイントです。
 最初は週に2度くらい、それから週に1度のペースで5~6回来店していただきました。まだ完全に良くなったわけではありませんが、お孫さんの出産も重なってこの2週間ほど来店されていません。
 最初の頃は歩くにも、ドスンドスンと足裏全体を上に上げてから降ろすような歩き方でした。足先を上げる、つまり足首を自分の方に曲げる筋肉が作動しなかったのです。(前脛骨筋や長趾伸筋、長母趾伸筋)これは坐骨神経痛に関連する神経障害です。3回目の施術くらいから足首を曲げることができるようになり、歩き方もまぁまぁ見られる状態になりました。神経痛の痛みは改善されていました。ただスリッパを履いて歩くことができませんでした。歩行時に足先を持ち上げたまま保つことができなかったのです。
 直近の施術の後は、それもかろうじてできるようになり、「自分の足のような気がする」と言っていました。それから2週間ほど経った今はそれなりに良くなっているのだと考えています。
 このような事例はまだまだありますが、そのたびに病院での“脊柱管狭窄症”という診断は、あてにならないことが多いとつくづく思います。

たった一回の夜釣りでなってしまった坐骨神経痛
 この方は大工さんです。労働に見合うほど体が強くないので、月に1度か2度来店されてメンテナンスを行っています。ですからこの方の体のことはよく承知しています。ところがいつもとは違うパターンで左側の殿部からふくらはぎにかけての痛みを訴えて来店されました。
 症状的には坐骨神経痛です。しかし、これまで坐骨神経痛になったことはありません。
 「どこか冷たいところに長く座っていたとかありました?」と尋ねました。というのは、お尻の左側の筋肉がたるんでいたからです。殿部の筋肉と骨盤の安定に影響を与える太もも裏側のつけ根にある大内転筋がうまく機能できない状態でした。
 なかなか思い出せないようでしたが、しばらくすると「そういえば、イカ釣りに行った。雨の降る寒い夜で、長い時間ずっと座りっぱなしでやっていた。」ということでした。原因は100%“これだ”と確信しました。大内転筋は骨盤の安定に強い影響を与える大腰筋と連動しますので、お尻の筋肉がゆるんで大内転筋がゆるみ、その連動で大腰筋がゆるんでしまったので骨盤が不安定になり梨状筋がこわばって坐骨神経痛になってしまったという理屈になります。
 ですから施術はひたすらお尻の筋肉や大内転筋の働きを元に戻すことばかりです。話を聞くと4時間ほどずっと座りっぱなしだったということですので、お尻の筋肉はかなりやられています。以前に、真冬に駅のホームでベンチに15分ほど座っていたために坐骨神経痛になっ手しまった人がいました。“こんな些細なことで神経痛になるの?”と思われる人も多いかと思いますが、冷えで筋肉が上手く働けなくなると、骨盤が不安定になり坐骨神経痛や腰痛になってしまうことはよくあることです。
 ちなみにこの大工さんの坐骨神経痛は2度の施術で解決しました。

強い治療を続けたことによって坐骨神経痛が悪化した
 最初はそれほどひどい神経痛ではなく「殿部から太ももにかけツッパリ感や痛みがでる程度でゴルフもできた。」という方が来店されました。
 数ヶ月前に駅のトイレで滑りそうになって踏ん張ったとき「太もも裏の付け根の部分がズリッとなった」というのがきっかけのようです。軽い肉離れを起こしたのだと思います。そしてその後ギックリ腰になり、それから次第に症状が悪化したため整形外科や接骨院での治療を続けていたということです。
 私のところに来店されたときは、右のふくらはぎパンパンで強烈な痛みに鎮痛薬が手放せない状態でした。「この二ヶ月ほど治療を続けていたが、一向に良くならないばかりか痛みが強くなるばかりで‥‥」「腰痛ベルトは効かなくて、今はサラシを巻いて鎮痛薬を飲んで、なんとか仕事ができる状態で。しかし鎮痛薬もこれ以上飲み続けたくないし‥‥」ということでした。
 体をみると、ズリッと伸ばしてしまった右側殿部のつけ根(大内転筋か短内転筋)が機能していない他、右側の太ももや骨盤部、背部まで筋肉がたるみきった状態です。
 「筋肉がみんな疲弊してますけど強い電気治療でも続けましたか?」と尋ねました。すると職場の近くで通っている接骨院では強い痛みをともなうような電気治療を毎回おこなっているということです。電気治療も刺激が強すぎると筋肉を傷めます。以前、家庭用の低周波治療器を太ももにかけてマッサージ代わりにしていた人がいました。刺激を強くすると筋肉がグイーングイーンとなり揉んでいるような状態になるので、毎晩疲れをとるために行っていたようです。そうしたらある日神経痛の症状が現れ、それ以来症状がどんどん悪化したということでした。
 ギックリ腰や肉離れは損傷部分の面積が小さい場合が多いので、改善することはそれほど難しいことではありません。ところが、これらのように太もも全体や腰部や殿部の広い範囲にわたって筋肉が機能しない状態になりますと、回復させるのにとても苦労します。
 この方はゴールデンウィーク中、4日連続で来ていただきましたが、さして施術の効果は見られませんでした。なんとか少しでも良くなって欲しいという思いで施術をするのですが「筋肉がここまでやられてしまうと、そう簡単にはいかない」というのが本音です。
 その後、1日開けて仕事前に来店してもらったとき「なんとなく痛み方が変わってきた」ということです。そして次回、2日開けて来店していただいたときは「鎮痛薬なしでも仕事ができるようになった」ということです。少しずつですが、前に進んでいる実感が本人に感じられるようになったようで希望が見えてきた段階です。(今度は明日3日開けて来店されます)
 “マッサージや指圧をすれば良くなる”、“ほぐせば良くなる”、“刺激を与えれば良くなる”、それは“肩こり”など筋肉が凝った状態の時だけで、筋肉や骨格の状態を正確に把握して適切に対処しなければ逆効果になってしまいます。残念ながら、こういったことで状態を悪化させてしまうことはしばしばあることです。

 坐骨神経痛に対しては、とても神経を使います。なぜなら放っておくと悪化するばかりになってしまうからです。最初は小さな違和感や痛み、軽いしびれから始まりますが、次の段階では明らかな神経痛になり、その状態が進むと足を動かせないほどになってしまうし、じっとしていても耐えられない痛みに襲われるようになります。
 症状が軽いうちに適切な対応をすれば、「神経痛」という響きの印象とは別に、意外に簡単に改善することができます。しかし状態が悪くなってしまいますとブロック注射で痛みを取らなければならない状態になるでしょうし、それは整形外科などの範疇ですので、こういっては何ですが、積極的な治療方法はそこにはないと思いますので、改善までにたくさんの時間がかかってしまうと思います。

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