先日お客さんから素朴な疑問として「体の老廃物って何?」と聞かれました。“デトックス”という言葉も流行って、体内に溜まった老廃物を出すことによって健康になり、ダイエットになるというイメージを持っている人も多いと思います。ところで“体の老廃物”とは一体何でしょう?
老廃物について、大辞林の説明は下記の通りです。
「生体内で生成された代謝産物で生体にとって不必要となったもの。二酸化炭素・尿素・尿酸・クレアチニンなどの含窒素有機物,種々の有機酸・無機塩などで,呼気・尿・汗・糞便などに混じって排出される。」
少し難しい言葉が並んでいますので、もう少しわかりやすくしてみたいと思います。
“老廃物を流す”ことを語る上でのキーワードは“水”と“代謝”になろうかと思います。
私たちは油分以外の汚れを流し去るために水道水を使いますが、水が汚れを落としてくれれることは誰にでも理解できるところです。私たちは口を通して水を飲み、汗や尿として排出しますが、それは体内の汚れを流し去るためだというのが主な理由です。ですから汗や尿の出が悪いときは、体内の汚れを外に出すことができないで不調になると考えることができます。
“代謝”、“代謝産物”については、細胞の活動がイメージしやすい例えかもしれません。
私たちの今の体の細胞は1年後にはすっかり入れ替わっていると言います(入れ替わりの周期は器官によって様々)。古い細胞が新しい細胞に入れ替わることを新陳代謝と呼びますが、その方法は自分自身の分身(コピー)を新たにつくり出す細胞分裂です。一つの細胞の中には細胞核があり、その中に遺伝子DNAがあります。細胞分裂のはじめ、DNAが自分とまったく同じDNAをもう一つつくります。それが二つの極に分かれますが、それにともない細胞が二つに分かれるという段階を経て細胞分裂が行われるのですが、その仕事が終わると古い方の細胞は自ら死んで新しい細胞のみその場に残していくという命を繋ぐという営みがなされています。この時、死骸となった古い細胞をつくっていた物質が老廃物となります。
また細胞分裂だけでなく細胞は私たちの体の機能を維持するために様々な活動を行っています。例えば体の活動にとってホルモンはなくてはならないものですが、ストレスに対抗するために欠かすことのできないステロイドホルモンは副腎という器官でつくられます。血液(動脈血)の中には細胞の活動に必要なあらゆる物質が含まれていますが、副腎は脳からの指令(これもホルモンであり、血液中を流れてやって来る)に基づき、血中成分からステロイドホルモンを産生するのに必要な物質を取り入れ細胞内で化学反応を行います。この時、実際には細胞内の酵素がその作業を担当するのですが(代謝)、そこでも作業が終わった後にゴミがでます。日曜大工で材料を削った時に出てしまうゴミと同じようなもので、これも老廃物です。
さらに細胞が活動するためにはエネルギーが必要ですが、そのエネルギーは呼吸によって取り入れた酸素を燃やす(酸化作用)ことによって得ます。酸素が燃焼した後には炭酸ガス(二酸化炭素)ができますが、それも細胞にとっては不要なゴミですので老廃物となります。
ですから体の老廃物とは、①古くなった細胞の死骸、②細胞内の化学反応でできた不要物、③二酸化炭素の3つが主な物であると考えてよいと思います。
老廃物を排泄する経路
動脈の毛細血管から細胞内に取り入れられた水と酸素と材料(栄養)は細胞内で様々に加工され、不要となった二酸化炭素を含めた老廃物(ゴミ)は細胞から出て静脈やリンパの流れに乗って一端心臓に戻ります。その後腎臓に送られ、何度も何度も濾過されます。その過程で再利用できる物質は肝臓に送られ再利用され、不要な物質は分別されて尿となり体外に放出されます。これが体内でできた老廃物(炭酸ガス以外)の排出主要経路ですが、その他には糞便排泄や発汗があります。
糞便は食物繊維など摂取した食物の中で(小腸で)吸収されなかったカスや、大腸内のビフィズス菌などの微生物・細菌類や、腸管から垢となって剥離した細胞の死骸が主な構成物です。
発汗は、そのほとんどが水と塩ですが、尿と同じ成分も微量含まれています。ただ腋窩や会陰にあるアポクリン腺からは臭いも出ますので、その他の物質も含まれていると思われます。
老廃物の停滞
ところで体の老廃物が順調に循環し、排出されていれば問題ないのですが、時に体内に停滞してしまう場合があります。肩こりでパンパンに硬くなってしまうのはその典型的な例ですが、筋肉を使い続けると乳酸がたくさんできて停滞し、ふくらはぎや腕などが硬くなり張ってしまうこともあり余す。
老廃物は静脈やリンパに乗って循環しますので、老廃物が停滞しているということは静脈やリンパの流れが滞っているということです。ですからそのような場合はリンパマッサージや肩こりマッサージなどが有効ですが、マッサージをしてもすぐにまたパンパンになってしまうようであれば、静脈の流れを整える必要があると考えられます。