ゆめとわのblog

ホームページとは違った、より臨場感のある情報をお届けしたいと思っています。 また、テーマも整体の枠を飛び出してみたいと思います。 ホームページは以下です。 http://yumetowa.com/ お問い合わせはメッセージ欄でお送りください。

2014年12月

 手のひらに汗をかいてしまい、人と握手するのが恐怖に感じたり、ペンを使うだけでダラダラ汗をかいてしまい非常に辛い思いをしている人がいます。寒い季節でも足裏に汗をかいてしまい、靴下が濡れてそれが冷えとても辛い思いをしている人もいます。最近は十代という若い世代でもこういう人が増えています。
 東洋医学では、手のひらと足裏の汗を虚弱体質の現れとして重要な診断ポイントにしています。実際、このような人たちは持久力や粘り強さに欠けています。

 こういう人たちの体の特徴は、肩や肘、股関節や膝、足首などの関節がゆるんでいることと、呼吸が悪いことと、噛む力が弱いことです。ご飯をあまりよく噛んでいない感じです。
 関節がゆるむというのはイメージしにくいかもしれませんが、腕や脚がグラグラしていて頼りなく、力を入れようとしても力が入りきらない感じがしてしまいます。
 このような人たちは筋肉の連動性や共働性が悪いため、手で何か物を持つ場合、腕の力だけで行わなければならないため普通の人よりも非常に疲れます。普通の人が例えば包丁を使う場合、包丁を握っている手や腕の筋肉だけでなく、足先までの筋肉を働かせて作業を行います。仮に、足が地面に届かない椅子に座った状態で包丁を使うことを想像してみてください。立った状態で作業するようには上手くいかないし、腕や肩に余計な力が入ってしまいます。つまり、足がしっかり地面について踏ん張りながら包丁を使えるので軽やかに作業ができるわけです。足の筋肉も共働して働いているということです。
 関節がグラグラしていますと、この共働性が上手く機能しない状態になります。確かに腕や脚は胴体につながっていて一つの体になっていますが、機能性としては腕と脚と胴体がバラバラになっていて本来の能力を発揮できない状態であるということが言えます。そして手のひらや足裏に汗をかいてしまう人は、このような状態であると考えてよいと思います。

母指と示指・環指の対立筋検査
 私はこういうことが疑わしいと感じたときには最初に筋力テストを行います。人差し指の力と薬指の力を確認します。これはあくまでも私個人の尺度ですが、人差し指は表の力、薬指は芯の力を現していると考えています。手のひらや足裏に汗をかく人、歯ぎしりをする人、階段の下りや下り坂を歩くのが苦手な人、中腰での作業が辛く感じる人、すぐに疲れてしまう人、このような人たちは往々にして人差し指には力が入っても薬指には力が入りません。そして施術に際しては、薬指に力が十分入るようにすることが最初の目標になります。
 ただ、それだけで手のひらや足裏の汗が改善するかというと、実際はそんなに甘くありません。他の要因も絡んでいることがほとんどです。しかしながら、芯の力が高まるようにしなければ状態は改善に進まないと考えています。

 今来ている高校生は、小学校の低学年の頃から手のひらに汗をかくようになり、ずっとその状態が続いているということです。他の症状としては軽いアレルギーと皮膚炎、仰向けで寝ると腰が痛くなる、むくみがあります。いろいろな話を聞くと、体育は大の苦手、数学も苦手、睡眠が悪いということです。私にはうなずけることばかりです。
 この方はまず呼吸の状態が良くありませんでした。汗のことも気になりましたが、それをどうにかする以前に呼吸がちゃんとできる状態にすることが先決だと考えました。ですから初回の施術は呼吸ができて、空気が大きく体の中に入ってこられる状態にすることでした。呼吸運動ができていなければリラックスして眠ることはできないし、脳の血流も良くないので計算問題が苦手になります。計算間違いをよくするということです。
 1週間後に再び来店していただきました。その間の様子を聞くと、呼吸が楽にできていたし、睡眠もまあまあということでした。ただ計算間違いはしてしまったということです。
 今回から本格的に汗の問題に取り組みます。“汗”は水ですから、体内水分の流れ、という観点で体を観察する必要があります。精神的緊張状態とかなどの理由以外では、本来は手のひらや足裏に汗をかくことはありません。乾燥した季節では反対に手のひらの水分が足りないので、手を湿らせたいくらいです。ということは、何らかの理由で体が水の処理を上手く行えていないと考えることができます。一つはリンパや静脈の流れが悪いことが考えられます。この方の下半身はむくんでいます。もう一つは筋肉や筋膜に変調があって皮膚(体表)と深部との間の連絡が悪く上手く水が処理できていないことが考えられます。この方は手のひらも足裏も両側とも筋膜がゆるんでいました。そして観察の結果、右手のひらの筋膜のゆるみが大元の原因であるとわかりました。
 小学生低学年の頃から手汗をかいていたということは、幼い頃に何かがあってそうなってしまったと考えることができます。そしてこの方は右肘がゆるんでいましたので、小さい頃脱臼でもしたのかと思い、母親に尋ねてみました。すると赤ちゃんの頃、歳のはなれたお兄さんに両手を引っ張れブランブランぶら下がる遊びをよくやっていたということです。母親は肩が抜けてしまうのではないかと心配したそうですが、二人は楽しそうにいつもやっていたということです。これでこの方の右肘がゆるんでいる原因がわかりました。脱臼と同じように靱帯が伸びてしまったのだと思います。靱帯が伸びてゆるんでしまった関節を元の状態に戻すためには何回かの施術が必要ですが、それでも施術をしたことによって手のひらは乾いた状態になりました。
 この方は、長年の経験から自分が意志すれば簡単に手のひらから汗を出すことができます。「では、手のひらから汗を出してください。」と言いまして出していただきましたが、会話をしているうちに汗はすぐに引いてしまう状態になりました。“肘の状態を改善すること”、これがこの方の悩みを改善する方向性であると考えることができます。
 さらにこの方が“体育が苦手”なのは、体に思い通り力が入らないからだと考えました。食事の噛み方について質問をすると「餅を食べるのが嫌」という応えが返ってきました。顎が疲れるというのです。今の若い人にありがちな“そしゃく不足”です。普段からそしゃく筋をよく使っていないので、粘り強く噛まなければならない食物は顎が疲れて嫌になってしまうのです。それで、ガムを使って噛み方の練習を行いました。何度か練習を繰り返しているうちに体の筋肉がしっかりしてきました。膝に力が入らなかったものが、しっかりと入るようになりました。そしゃく筋は全身筋肉の司令塔のような役割りをしていますので、ちょっと鍛えるだけで全身がしっかりするようになります。ということは、鍛え方をおろそかにするとすぐに筋肉の働きが悪くなるということでもあります。ですから毎日、しっかりと噛んで食べて欲しいのです。
 2度目の今回は肘を施術し、そしゃく筋の使い方を練習して終えましたが、呼吸の状態もかなり良くなりました。10日後にもう一度来店していただきますが、その時どうなっているか楽しみです。

 手のひらと足裏に汗をかいてしまうケースは一通りのパターンというわけではありませんが、呼吸、そしゃく筋のたるみ、関節のゆるみというのが共通の問題としてあります。人それぞれ治り方の速さは違うと思いますが、原因さえ把握できれば必ず改善することができるはずです。お困りの方は是非一度ご来店ください。

 私の母(76歳)がこのたび緊急入院しましたが、その原因はどうも薬の飲み間違いのようです。彼女は数年前よりリウマチが発症しまして膝が変形膝関節症になっています。都内の病院に通い投薬による治療を続けていますが、その後リウマチの方はかなり良くなっています。
 ところが先月の中旬以降、膝の状態が悪化し歩くとき力が入らなくなってきました。私が施術をして2~3日の間は状態が良くなるのですが、その後また駄目になるという状態を何度か繰り返し、やがて口内炎ができ食事が思うように摂れなくなってしまいました。物忘れが急にひどくなり、口の中から出血が見られるようになり、まったく食べることができなくなってしまいました。「これは単なる体調不良ではないな」と思い近くのクリニックを受診しました。血液検査の数値を見て医師はビックリし、緊急で東海大病院に入院することになりました。白血球の数値が1000ということで非常に感染症を起こしやすい状態で、肺炎にでもなれば死に至ることもあり得る状態だったということです。
 リウマチの治療薬として5種類くらいの薬を服用していましたが、どうも強い薬を飲みすぎてしまったようです。その作用で血球(白血球・赤血球・血小板)が減ってしまい、免疫力が大幅に低下したようです。入院してからはその薬の作用を除去する点滴を行い、今は状態もだいぶ良くなってきましたが、血小板が減っている影響で口の中は常時出血している状態です。

 それまでは膝に不安と痛みが少しあるものの、あとはとても元気に暮らしていた母が急にこのような状態になってしまったわけですが、改めて薬というのは功罪ともに作用が強いものだということがわかりました。飲まないですむものなら飲まない方がいいですし、多くの人たちが薬を服用している今日、みんな気軽に考えてしまいがちですが、もっともっと注意深く考えなければいけないものだというとがわかりました。

 ここに来るお客さんの中には「もう頭痛薬も効かなくなったので来ました」という方がしばしばいらっしゃいます。ということは頭痛薬を毎日のように服用していたということです。いくら副作用のない安全な薬であったとしても、常用していれば薬の成分がちょっとずつでも体の中に蓄積していきます。“塵も積もれば山となる”のことわざ通り、いつか体調に変化をもたらす危険性を排除することはできないはずです。
 また高齢になると寝つきが悪くなるため、睡眠導入剤や睡眠薬を常用している人がたくさんいます。私が調べたところ睡眠薬のほとんどは筋肉の働きを弱めるものです。ですから常用していればやはり日に日に体の力が弱まっていきます。
 確かに私のところでは4700円(60分)掛かりますので、負担が大きいと思われるかもしれませんが、それでもって頭痛薬や睡眠薬の常用を回避することができるならば、そちらの方が良いのではないかと、私は内心いつも思っています。

 顎関節症の症状にもいくつかパターンがありますが、その中で口を開いたり閉じたりするときに顎が左右に揺れてしまう場合について説明します。
 片方の歯ばかりで噛む片噛み癖で、噛む筋肉が強くこわばってしまうとこのような状況になります。あるいは、体の使い方に偏りがあったり、手から肩関節にかけてのケガや過去の脱臼の影響によって顎が歪んでしまい、口がストレートに開閉できなくなることもあります。そして、こちらの方が多いかもしれません。
 一時的に片噛みになることは誰にもあると思います。例えば硬い煎餅やお肉、スルメなどは強い力を使って咀嚼しないと飲み込むことができませんが、きっと多くの人はどちらか片方の奥歯をたくさん使っているのではないでしょうか。そうなりますと、噛んでいる方の咬筋はこわばりますので伸びが悪くなり、顎を大きく開くときにバランスが悪くなり、顎が揺れてしまうことになるかもしれません。しかしながら、これは一時的な状況ですから、その後両方の奥歯で食物を噛むようにしていれば、何日かでこのような状態は解消すると思います。
 ただし、片方の歯で噛みしめてしまったり、歯ぎしりをしてしまう癖を持っていますと、慢性的に顎のバランスが悪い状態になってしまいますので、口を途中まで(食事をとるくらい)開くのは大丈夫でも、大きく開けると違和感を感じたり顎が揺れてしまうような状況かもしれません。これは何日かすれば解消するという状態ではありません。噛みしめて硬くこわばってしまった咬筋をゆるめる必要がありますし、再発しないためには噛みしめてしまう原因を解決する必要があります。顎の不具合を訴えて来られる方の多くはこのような状態ですが、施術をすれば顎の状態は速やかに改善します。
 ところが噛む筋肉だけを施術しても改善しない場合があります。体の歪みが顎関節に影響を与えている場合です。自分の体の歪みを把握することはなかなか難しいことですが、①臍が体の真ん中にあるかどうか、②両肩の位置が同じ状態かどうか、などが顎関節に関わるところなので、鏡に自分の姿を映してみて確認することは可能です。

 例えば、右利きの人が過去に右肘を脱臼したとします。それが何十年も前の幼い頃のものだったとしても、しっかり治していない限り必ず肘に影響が残っています。するとその人は右手の力が十分に発揮できない状態になっています。それでも右利きなので、たくさん右手を使い続けなければなりません。言い換えれば、筋肉の働きが悪い状態なのに、それでも筋肉をたくさん働かせなくてはなりません。すると肘に力が入らないのでそれを補うように、手首や指先の筋肉が酷使される状態になってしまいます。このため手や手先の筋肉に強いこわばりができてしまい、その影響で右腕は左腕に比べていつも硬く張った状態になります。腕のこわばりは肩甲骨を本来の位置より外側にずれさせます。すると肩甲骨から首や頭蓋骨につながっている筋肉もこわばり、頭蓋骨が歪んだり、あるいは首の筋膜が張って下顎骨をずらしたりしてしまいます。こういう経路で顎関節が歪み、口を大きく開閉させると顎が揺れる状況をつくってしまいます。
 さらに下顎骨の右側がいつも右下方に引っ張られているので、口を閉じるとき左側に比べて咬筋に余計力を入れなければなりません。すると必然的に右側顎関節は噛みしめの状態になってしまいます。

 肘を脱臼した例をあげましたが肩の脱臼も同様で、腱鞘炎やバネ指などもしっかり治っていないと、同じような状況になります。仮に利き腕ではない方のケガであれば、それほど筋肉を酷使することもないので顎関節がゆがむほどにはならないかもしれません。しかし、引っ越しとかで重い荷物をたくさん運んだりして両腕を酷使すると、やはり弱い方の側の顎関節がおかしくなるかもしれません。

・顎関節の異常は3つのパターンに分けて考える
①一時的な片噛みによる顎関節の歪み
 これは一時的なものなので、通常の日常生活を続けていれば自己治癒力でやがて解消されると考えられます。
②歯ぎしりや噛みしめの癖による顎関節の不具合
 慢性的なものなので、こわばった咬筋は頑固です。積極的に施術を行わないとなかなか改善しないと思われます。さらに歯ぎしりや噛みしめを起こしてしまう原因まで解消しないと、本当の意味での改善にはつながらないと考えられます。また、歯ぎしりや噛みしめの癖が原因で体が歪んでしまいます。
③体の歪みからくる顎関節の不具合‥これは同時に噛みしめの状況を招く
 体の歪みが原因で筋肉や筋膜が頭蓋骨を歪ませ、変な力がいつも顎関節に加わっているため顎が揺れるように動いてしまいます。こういう人は、口を大きく開かなくてもどちらかの顎関節がカクカクしたり、シャリシャリ音を立ててしまう場合が多いです。また顎関節に不自然な力がいつも働いているため、噛みしめてしまう癖になりやすいです。
 ですから施術の順序としては、まず体の歪みを修整し、その後噛みしめによる顎周辺の筋肉を調整して顎関節がストレートに開閉できるようにします。

 来店されるほとんどの人は、上記の②か③です。平均するとどちらも60分くらいの時間はかかってしまいます。しかし、ほとんどの場合は一度の施術で何とかなります。
 ただ、顎を大きく開くときやその後閉じるときに鳴るクリック音を完全になくすことはなかなか難しい場合が多いです。それは顎関節の中にある軟骨(関節円板)の問題で、軟骨が変形してしまった場合は整体的アプローチでは不可能かもしれないからです。

追記:母親が緊急入院してしまったため時間がとれずブログを更新することができませんでした。今現在も入院中なので、しばらくの間はこれまでのように頻繁に更新することはできないかもしれません。今回は絵無しでわかりづらかったかもしれませんがご了承ください。 

 10日ほど前に「目の下のくま」を改善したいと顔の整体を受けに女性が来ました。くすみは比較的簡単に改善しますが、目の下のくまは内臓からの影響もありますので、そう簡単には改善しない場合が多いです。
 この方は、噛みしめの癖もあって首や肩もガチガチに凝っていました。腰も痛く仰向けで寝ることができません。さらに、お腹がパンパンに張っていて呼吸も良くありません。施術はまず本人の希望通り、顔の整体から始めました。
 噛みしめを取って、顔の骨格を整え、特に目の下のゆるんでいる部分はしっかりするようにしました。施術をしながらいろいろお話しを伺っていくと、もう長い間お腹の調子が良くないとのことです。3~4年前からは消化器科の病院を頻繁に訪れるようになり、それでも胃腸の調子が良くならないので漢方薬やいろいろなサプリメントを試しているとのことです。そしていつも体全体が冷えていて血行が悪いと言っていました。
 目の下のくまは、きっとこのお腹の調子や血行不良と関係しているはずです。お腹の状態は腹筋がとても硬くなっていて、本当はそれほど太っているわけでもないのに、お腹全体が腫れたようになっているので本人も太ってしまったと思っていました。食事を摂ってもすぐに胃が張ってしまい一人前を満足に食べることができないということです。
 私としては“目の下のくま”のことよりも先にお腹の問題を改善するべきだと考え、そのように施術しながら話しました。初回は多くの時間、顔の施術に時間を費やし、お腹への施術は少ししかできませんでしたが、「まずお腹を良い状態にしましょう。そうすれば目の下のくまの問題はだんだん改善されていくはずです。次回はそのつもりで来てください。」と言いました。
 それから3日して「胃と腸が痛くなり、吐き気もしたので病院に行ってきたが、それでも施術はできますか」と連絡が入りました。私は「こちらに来た方が、その痛みや吐き気はすぐによくなると思いますよ」と返事を返して来店していただきました。来店時は胃と下腹部(小腸)のところを手で押さえた状態で、体が真っ直ぐに伸ばせませんでした。胃腸に痛みが出たのは気候が急に寒くなったことが関係あったのかもしれません。とりあえずベッドに仰向けで寝ていただきお腹への施術を始めました。みぞおちのところの腹筋がコチコチに硬くなっていました。この硬さによって胃が圧迫をうけ痛みにつながっているのだと思いました。さらに下腹部全体がパンパンに張っていて呼吸も満足にできない状態です。ともかく痛みと吐き気を取るのが先決です。腹筋への施術を10分くらい続けていると、痛みも取れ体が少し温かくなってきたということです。その後、ホットパックでお腹を温めながら足裏と手のひらの胃と小腸の反射区を揉みほぐしました。それから後はずっとお腹への施術のみを行いました。施術時間は60分でしたが、胃に痛みは少しは感じるが、その他はだいぶ楽になったということで帰られました。
 そして一昨日の朝電話が入り「胃腸の調子はよくなって食事も普通にちかく摂れるようになったが、体がすごく冷たく感じてしまい、喉の調子が悪く咳が出てしまう。」と来店されました。今回の施術もお腹が中心です。相変わらずお腹は張った状態で呼吸の状態も良くありません。施術を始めて15分くらいすると「体が温まってきた」と言い、それから「今まで血行不良が原因で体が冷たく胃腸が悪いのだと思っていましたが、お腹が原因なのですか?」と質問されました。
 私は「だいたいそうです。お腹というより腹筋がこわばってしまい、それによって腕や脚の筋肉もこわばり、肩関節や股関節が詰まってしまい血液循環が悪くなっているのでしょう。こうして腹筋が少し伸びると関節での血行も改善するので全身の血液循環が良くなり体が温まるのだと思います。そして腹筋が伸びやかになると、腹筋の下にある胃や腸の動きもよくなり、そうなることでさらに体が温まるのだと思います。腰の筋肉がガチガチに硬くなってしまうのは腹筋の働きが悪いからで、腹筋の状態が良くなれば自ずと腰の筋肉もゆるんで痛みはなくなります。」と答えました。実際、腹筋の働きが悪いと、体を支えるために腰の筋肉が本来以上に頑張るためとてもこわばります。仰向けで寝られないというのは腹筋に原因がある場合が多いです。

 ところで、筋肉は冷えにとても弱い性質を持っています。今の時期、朝の寒さの中では手先に力が入らず思うように動かせなくなりますが、それは筋肉が冷えに弱いからです。胃や腸といった内臓も筋肉でできています。ですから、お腹が冷えますと当然内臓の働きも悪くなります。さらに腹筋の働きも低下しますが、すると多くの場合、みぞおちの辺りがこわばります。そのこわばりが胃を圧迫し肝臓の働きにも影響を与えると考えられます。胃は痛みや気持ち悪さ、膨満感などで私たちの感覚に訴えますが、肝臓は沈黙の臓器ですので何も訴えてきません。しかしその位置が胃の右側にあることを考えると、みぞおちの硬さは肝臓にも影響を与えていると考えるのが自然です。
 
腹直筋施術

 腹筋の調整方法を言葉にするのは難しいですが、だいたい臍を中心とした部分の少し深めのところに手を当てます。お腹が冷えているときの腹筋は、表面は柔らかいのですが、少し手を深く入れた行きますと、硬い板状のものに突き当たります。それが硬くなって動きの悪くなった腹筋です。施術をしばらく継続していますと腹筋の働きが少しずつ回復してきます。すると、なんとなくお腹が伸びたよう感じになります。そこで止めずにさらに施術を続けていますと徐々にみぞおちのこわばりがゆるんできます。そうなることで胃が動ける状態になり、やがて胃の不調は改善していきます。

 冷え症は手や足の冷えが主な部位ですが、体がガクガクするような寒気や、ふるえるような寒さを感じるのは低体温による冷えです。体が芯から冷えています。この場合、体が普通の状態の人であれば、運動をしたり、暖をとったり、湯船に浸かったりすれば症状はやがて消えていきます。ところが慢性的にお腹が冷えている人は、外から温めたり、温かい食べ物を摂ってもその場限りで、すぐに冷たくなってしまいます。一般的に冷えは体質であったり、血行不良が原因であると考えられているかもしれません。しかし私が施術を通して経験したところでは、腹筋の状態と呼吸の状態が悪いことが原因である場合が多いと思います。どう表現すればよいかわかりませんが、呼吸は大きな波であり、うねりです。呼吸の状態が良い場合は、呼吸のリズムに合わせて体全体がゆったりとしたひとつの波で調和します。ところが呼吸の悪い場合は、お腹だけペコペコ上下に動くだけだったり、あるいは胸だけがハッハッと動くだけだったりで、波にはなりません。そんな場合でも腹筋の状態と胸郭の状態を改善すると、それまでペコペコだったものが、いきなり息が大きく入るようになって呼吸の波が生まれるようになります。するとどんどん血液が回りだすのか顔色も良くなり体が温まってきます。そしてこわばっていた腕や脚の筋肉もゆるんできて、私から見れば「ああ、ちゃんとした体になったな」と感じられるようになります。

 体の冷えや血行不良に対しては、体を温める食物やサプリメントや漢方薬が有効であると思われているようです。それはそれとして大事かもしれませんが、腹筋の働きを良くすることと呼吸で胸郭がちゃんと可動するようにすることの方がよっぽど早く効果が現れると私は考えています。
 冷え対策にテレビや雑誌などで紹介されている方法を試しても、たいして効果が感じられない人は、是非腹筋の働きが良くなるよう調整してみてください。

 いよいよ冬本番という時期になってきました。冷え症の方にとっては辛い季節の始まりです。私は決して冷え症ではありませんが、それでも朝一のお客さんに施術するときは手が冷たく、肩を揉みほぐすのに力が入りませんので、お湯にしばらく手を浸けて温めてから施術に入るようにしています。
 ところで、冷え対策として背中や腰や膝など服で隠れる部分にホカロンを貼って対処する方が多くいます。それはそれで良いことだと思うのですが、ほとんどの人はお腹の冷えを気にしていません。他の場所にはたくさん貼っているのに、お腹にホカロンを張っている人はほとんど見受けられません。ところが「大切なのはお腹です。」とあえて申し上げます。お腹が冷えると内臓の働きが悪くなるだけでなくギックリ腰の危険性も増えますし、筋肉の働きが悪くなるのでいろいろな症状がでます。

 冷え症の場合、手や足の先が氷のように冷たくなりますが、それは体が体表に血液を流さないようにしているという自律神経の正常な働きです。体の表面は外気に触れますので、そこに血液が流れると血液が冷やされてしまいます。すると体温が低下して生理機能に支障がでますので、体温を下げないよう、あえて体の表面に血液が廻らないようにしているのです。
 真冬でも運動をしますと汗をかきます。発汗は基本的には体から熱を放出するためのものです。運動によって筋肉を動かすと筋肉は熱をたくさんつくります。その熱は必要量を超えると生理機能に悪影響を及ぼすので、不要物として外に出されるのです。ですから真冬であっても運動中は手足の冷えが改善されます。しかし運動を止めてちょっとすると、また手足が冷たくなります。私たちの体温調節を司る自律神経は、血管を締めたりゆるめたり、毛細血管への血流を減らしたり増やしたりしながら内臓の温度を厳密に保ってくれています。
 こういう原理で“冷え症”はもたらされますので、冷え症でお困りの方は積極的にお腹(内臓)を温めるべきだと思います。お腹に熱が十分あれば、手足にも血液が廻ってきますから自ずと温まる理屈になります。ですから背中や腰や膝などにホカロンを貼るのは結構ですが、お腹も温めて欲しいのです。

環境温度における体温の変化

 「ビールが好きだから真冬でも毎日ビールを何缶か飲んでいる」という人がいます。ビールはガボガボッと飲まなければ美味しくありませんから、冷たい液が直接胃の中まで入っていきます。すると胃が冷えますので、お腹にある熱は奪われることになります。そんな人はお腹が冷えていて腹筋の働きが悪いのですが、それによって肩こりになったり腰痛になったりします。「ビールは少しにして、少しずつ口に入れる他のお酒に変えられませんか?」と言うときがあります。それができないならば、もっとゆっくり湯船に浸かるとか、何かの手段でお腹を温めるとか工夫をして欲しいものです。おそらく皆さんが想像している以上に、お腹の冷え(深部の低体温)は怖いものだと思います。

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