(過去に投稿した記事を修正加筆したものです)

「顔を下げる筋肉」シリーズの今回は大腿四頭筋の中の大腿直筋とその連動筋である腹直筋について説明させていただきます。
 大腿直筋は太股前面の表層にあって大腿四頭筋の中で一番触りやすい筋肉です。大腿四頭は四つの頭(起始)を持ち、それが膝関節のところで一つにまとまり、膝小僧(膝蓋骨)を越えてスネの骨(脛骨)に付着(停止)している筋肉ですが、他の3つの筋肉(内側広筋、外側広筋、中間広筋)が太股の骨から始まるのに対して、大腿直筋は骨盤から始まっているのが特徴の一つです。その構造から膝関節を伸ばす働きをするだけでなく、膝を骨盤の方へ引き寄せる、つまり腿上げをする働きもします。
 そして、膝から下の部分では長母趾屈筋という、歩行時に足の親指(母趾)の先端を曲げて踏ん張り、地面を蹴る動作を行う筋肉に連動します。
 また、腹部・胸部では、多くの人が「これが腹筋だ!」と思っている腹直筋に連動し、大胸筋に連動します。

 立った時に、ふくらはぎの裏側に突っ張り感や重みを感じたり、長く歩くとふくらはぎの裏や外側がつらくなってしまう人は“かかと重心”の傾向にありますが、特徴の一つとして“足の指先が曲がっている”ことがあります。この原因の一つは立った時に重心がかかとに掛かってしまうため、そのままでは後に倒れそうになってしまいますので、「指先を曲げてこらえる」反応が無意識に行われることです。ですから足趾(足指)の先端を曲げる筋肉が常に作動しているような状態になりますので、それらの筋肉がこわばった状態になります。そして、足趾の先端を曲げる筋肉はふくらはぎの裏側にあります(長母指屈筋と長趾屈筋)ので、ふくらはぎの裏側が辛くなります。
 かかと重心ではなく、足底に均等に重心が掛かっている人は立ったときに体重の負荷が指先の方に抜けていくような状態(重みの負担を逃がしている)になりますので、足趾はまっすぐな状態になります。このような人は指先を曲げた状態で立ち続けることはできません。

 さて、母趾の指先が曲がっているということは長母趾屈筋が収縮しっぱなしのこわばった状態にあるということですが、そうなりますと大腿直筋、腹直筋、大胸筋も連動してこわばります。

 腹直筋は恥骨とその周辺(恥骨上肢)から始まり、胸郭の前面に付着していますので、腹直筋がこわばりますと胸郭が下方向に引っ張られます。
 以前に取り上げました”内側広筋のこわばり”は腹直筋のセンターラインに影響を及ぼして胸骨を下方に引っ張りますが、大腿直筋と連動する腹直筋の部分はその外側になりますので、胸骨よりも肋骨を下方に引っ張った状態になります。そしてその引っ張りは首前面の斜め横あたりの筋膜に及び、その流れは口角~頬~目の周辺へと繋がります。ですから右側の大腿直筋がこわばっている人のは、右胸が下がり、右の口角~右頬~右目~右眉といったところが左側に比べて下がった状態になります。そして、左目に比べて右目を開くことに引っ掛かり感や重さを感じ、“心地良くない”と感じるかもしれません。

小指球のこわばりは腹直筋のこわばりにつながる

 手を酷使している人‥‥例えば私の仕事もそうですが‥‥、そのような人は掌の母指球や小指球が硬くこわばっています。
 母指球や小指球が強くこわばっている人の特徴として、指圧しても硬くて奥まで圧がなかなか届きませんので、指圧や揉みほぐしの最初の段階では痛みを感じません。ですからご自分の母指球や小指球がこわばっているとは感じません。ところが、圧し続け、揉みほぐしを続けていますと少しずつ奥に圧が届くようになり、痛みを感じ始めます。そして更に圧を加え続けていきますと、痛みが強くなり、もだえるほどになるかもしれません。

 さて、小指球のこわばりは尺側手根屈筋と呼ばれる小指側ラインの筋肉に連動し、その先は上腕二頭筋(短頭)、大胸筋のこわばりへと連動します。つまり、手を酷使している人は腹直筋~大腿直筋~長母趾屈筋のこわばりを招くという理屈になります。そしてこのような人は実際、大変多いです。
 そのような人に対して、「手のこわばりが原因で、腹筋がこわばり、胸が下がって顔も下がっています」と説明することがありますが、原理は上記の通りです。

腹直筋がこわばる理由

 上記では、かかと重心などの理由で足の指先が曲がっている人(長母指屈筋のこわばっている人)や手の使いすぎで小指球が強くこわばっている人は、筋肉連動のしくみから、腹直筋もこわばり、胸郭を下げ、喉を下げ、顔を下げてしまう、という内容を説明しました。
 これ以外にも腹直筋がこわばってしまい顔が下がってしまう状況があります。

①お腹の冷え
 「冷えは筋肉の働きを悪くする」という説明たくさんしてきました。今の若い人たちはそうではないかもしれませんが、少し前の時代「ヘソ出しルック」が流行っていた頃、「将来この人達は大丈夫かな?」と思っていました。
 湯船に浸かる習慣がない外国の人たちは、少々寒くても半袖で過ごしたりして、民族性としてきっと冷えに強いのだと思います。ところが昔から温泉が好きで、湯船に浸かることが日課のようになっている私たちは、「お腹を冷やしてはいけない」のです。お腹が冷えますと、酵素の働きが低下しますので内臓の働きが弱まります。そしてお腹の筋肉である腹筋も働きが弱まりますが、すると姿勢を保つことができなくなってしまいます。それでは困りますので、腹筋は自らを硬くこわばらせて頑張るようになります。その硬くこわばった部分がみぞおちの辺りになれば、胃や大腸(横行結腸)を圧迫したり呼吸運動を邪魔するようになりますので、慢性的な胃の不調や便秘、息苦しさを感じるようになるかもしれません。
 また想像していただきたいのですが、例えば冬場、布団で寝ていたとします。寒い明け方は気温が一番下がる時間帯ですので、からだから熱が逃げないように横を向いて背中を丸め、お腹をカバーするようになると思います。「大の字」で眠り続けることはできないと思います。つまり、冷えると、私たちは無意識にお腹を冷やさないような姿勢をとるのです。そしてその姿勢は背中を丸め、腹筋を縮める(こわばらせる)姿勢ですが、この自然な行いは私たちだけでなく犬や猫など哺乳動物の本能のようなものだと思います。(反対に夏場はお腹を出して冷やそうとする)
 ですから、「冷えると腹筋はこわばる」という現象が自然に起こると考えることができます。

②鼡径部が下がっている
 太股の付け根には鼡径部があります。場所的に骨盤の一部とも言えますし、股関節の一部とも言えるかもしれませんが、恥骨も含めて、腹筋群の出発点になっている点で重要です。また内臓との関係でも大切な役割をしています。

 下腹部から骨盤にかけて小腸がありますが、鼡径部は小腸が骨盤からはみ出さないように防ぐ働きをしています。さらに体幹から下肢に繋がる動脈、静脈、リンパ管は鼡径部の中を通っていますので、鼡径部の状態が悪くなりますと、血行不良やむくみの問題が起こってきます。

 さて、鼡径部の下がっている人がいます。便秘、下痢、胃腸の調子が悪い、お腹が張る、お尻が落ち着かない、そんな症状を感じているようでしたら、鼡径部が下がっているかもしれません。
 お腹が冷えていなくても、鼡径部が下がっていますと腹筋は緊張状態になりますのでこわばってしまいます。ついどちらかの下腹部に手がいってしまう人は鼡径部が下がっていてお腹(内腹斜筋)が張っているのかもしれません。鼡径部を手で引っ張り上げるとなんとなく安堵感を感じるのであれば、それは間違いありません。
 鼡径部が下がった状態は、顔を引き下げてしまうだけでなく、「なんとなくしっくりこない」という骨盤周りの不安定さにつながり、お腹の不快感や違和感をもたらす可能性があります。

 鼡径部が下がってしまう理由の一つとして、外腹斜筋あるいは内腹斜筋の働きが悪くなって伸びた状態になっていることが考えられます。あるいは恥骨に付着している内転筋がこわばった状態になって恥骨を下方に引っ張り下がってしまう状況も考えられます。また、「出っ尻出っ腹」の体型で骨盤が極端に前傾している場合も考えられます。これらによって腹筋がこわばり、顔を引き下げている状況はしばしば目にします。
 しかしながら、「お腹の調子も悪い」「なんだか落ち着かない」いったことが重なった場合は、足の小趾側の縦アーチが崩れている可能性があります。

 「悪い足」の一例である扁平足は母指側のアーチが崩れた状態ですが、小指側にもアーチがあります。その他に横アーチの崩れによる開張足や甲高の問題もありますが、小趾側の縦アーチの崩れた状態はあまり問題として取り上げられません。しかし、鼡径部の状態、舌の状態と密接な関係があるようです。

 足の小趾アーチにつきましては
足の小趾側アーチと上昇する力」を参照してください。



 今回は「顔を引き下げる筋肉」というテーマで腹直筋及びその関連を取り上げました。実際のところ、ほとんどの人の顔は下がっています。テレビに映る芸能人の方々も顔の下がっている人がたくさんいます。「施術して顔を上げてあげたいなぁ」といつも思ってしまいます。本来は、みなさんもっと顔が上がっていて、目も赤ちゃんのようにパッチリ開くはずなのです。
 

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