中高年の女性に多く見られる、手指の第一関節が腫れて曲がってしまうヘバーデン結節は学問的に原因がよくわかっていないようです。症状の進行過程においてはかなりの痛みを伴いますが、来店される人たちの話によれば、整形外科では「曲がりきってしまえば痛みは消えるから‥‥」と言われ、改善は半ば諦めるしかないような雰囲気を感じ取るとのことです。
 40歳くらいになりますと、それまでしなやかだった手や手指が次第にゴツゴツし出し、中年の手に変わっていくのは仕方のないことであるかもしれません。しかし、いつまでもしなやかな手でいたいと願う女性心理をもっと汲み取って、医学界はなんとか改善に向け努力していただきたいと思います。

 さて、ヘバーデン結節になってしまった人、あるいはその傾向を持っている人に対し、私が行っている施術について説明させていただきます。
 ところで、私たちは冬場の寒い時期など布団に入っても最初の内は寒いため体を丸めたくなります。縮こまってからだの温度を逃がさないようにしようと無意識に行います。この状態を筋肉にあてはめて考えますと、からだの屈筋(腹側)を縮め、伸筋(背側)を伸ばして体温の放出を防いでいる、となります。夏場の暑い時期は反対に腹側を伸ばして体温を放出しようとします。
 私はからだのこの根本的な原理がヘバーデン結節改善のためのヒントになると考えました。「きっと指が縮みたがっているんだ」と考えたのです。


 ヘバーデン結節は手指の第一関節が腫れたり、痛みを出したり、曲がったりする症状ですが、手指を曲げる筋肉には二つの種類があります。一つは浅指屈筋(せんしくっきん)と言いまして、手指の第二関節を曲げる筋肉です。この筋肉は肘より上の骨(上腕骨)から出発し、途中から腱になって第二関節の先(中節骨)に付着しています。
 もう一つは浅指屈筋の深層にあって、肘より下の骨(橈骨と尺骨)から出発して、腱が第一関節の先(指先=末節骨)に付着しています。母指先を曲げる筋肉を長母指屈筋、その他の四指先を曲げる筋肉を深指屈筋と言います。
 ここで大事なことは、手指を曲げる筋肉は指先(第一関節)を曲げる筋肉と第二関節を曲げる筋肉では別々であって、指先を曲げる方が深い位置、骨に近い位置にあるということです。そして指先を曲げる筋肉はインナーマッスルであり、持久力が強い性質であるとともに、一度不具合を起こすしますとなかなか元に戻りにくい性質を持っています。鉄棒にぶら下がった時、疲れてくると手が弛んできますが、最後は指先だけで何とか引っかけて頑張りますが、それは指先の深指屈筋に持久力があるからです。


 さて、ヘバーデン結節は第一関節が腫れて痛みだし、やがて指先が曲がってしまう症状ですが、それは深指屈筋が縮んだ状態になっているのに浅指屈筋が縮まないために次第に第一関節が詰まってしまうからではないかと私は考えました。詰まり方が激しくなりますと関節で炎症が起こりますので痛くなります。そして詰まり方も限界を超えますと指先は第一関節で曲がった状態になって安定しますので、炎症が治まり痛みが消えるのではないかと思います。
 ですからヘバーデン結節を改善するためには、縮んでしまった深指屈筋が伸びるようにすることです。深指屈筋が伸びれば第一関節の詰まりは解消しますので、痛みが消失するとともにやがて腫れもおさまります。指先がすっかり曲がってしまった場合は、関節の変形という問題も絡んできますので深指屈筋を伸ばすことだけでは解決しませんが、それでもだいぶ楽になることでしょう。関節のこわばりをとる施術をしばらく続けていれば、次第に指が伸びる状態にもっていけると考えています。

お腹の奥(腹筋深部)の冷えが原因になっている可能性

 深指屈筋は体のなかで一番深層の筋肉ですから、同じ深層筋の影響を受けます。これまでの経験で申し上げれば、腹筋の深い奥の部分のこわばりを改善しますと指先の詰まりは改善されます。“あれほど痛かった指先”が15~20分、お腹を施術するだけで解消されるようになります。
 そして、腹筋の深部がこわばってしまう原因としても最も多いのはお腹の冷えですが、寒いとからだを丸めて縮こませてしまうのと同様、冷えると深層屈筋は縮みたがってしまうのです。

 上記の場合以外では、足の指先が曲がっている人は手指先も曲がりやすい傾向があります。
 筋肉は連動しますので、深層筋は深層筋とつながりやすい傾向があります。外反母趾・内反小趾の他、足裏全体で上手く立てない人は足の指に力を入れて(指先を曲げて)からだを支えようとします。その状態が長く続きますと、寝ていても足の指は曲がったままの状態になってしまいます。つまり足指の屈筋が慢性的にこわばった状態になってしまったのです。そしてそのこわばりは連動して、腹筋をこわばらせ、手の深指屈筋をこわばらせてしまう、という可能性も考えられます。

尺骨の歪みが原因になっている場合

 中年の女性が「左手小指の第一関節が腫れて痛い」ということで来店されました。整形外科のレントゲンで確認したところ骨には異常は認められないとのことでしたが、同時に、医師からヘバーデン結節の疑いが濃厚であると言われたようです。小指の第一関節は腫れて小指先が少し曲がっていましたが、中指と薬指の第一関節も詰まった状態で赤くなっていて、確かにヘバーデン結節の初期段階であることが確認できました。
 10年ほど前に、左手小指先を打撲して腫れ上がり、それから指先が曲がってしまったとのことですが、打撲した時を除いて10年間「特に痛みは感じなかった」とのことでした。痛みを感じるようになったのはこの1ヶ月くらいで、症状の原因は思い当たらないとのことでした。

 施術は、まずヘバーデン結節状態を解消することから始めました。ヘバーデン結節の初期段階にある指は中指、薬指、小指ですが、これらの深指屈筋は尺骨側から出ています。ですから、尺骨の状態は関係します。普通の状態であれば、尺骨の手首近くの突出(豆状骨)は小指の延長線上に薄ら膨らんだ感じで存在しています。ところがこの女性の場合、その位置が薬指の延長線上であり、手首から少し離れた場所にあり、更に大きく突出していました。つまり尺骨がかなり捻れた状態になっていました。そして、その原因の一番は、上腕骨の背側にあります上腕三頭筋長頭(じょうわんさんとうきんちょうとう)が強くこわばっていて尺骨を引っ張り上げていることでした。


 上腕三頭筋長頭は仙骨や足の母趾の伸筋(長母趾伸筋(ちょうぼししんきん))と関係していますので、「左足や足首に何かありませんでしたか?」と尋ねてみました。すると、年末(2ヶ月前)に捻挫したとのことでした。さらに3年程前に母趾の先、爪との境辺りに物を落として骨にヒビが入ったことがあったと仰いました。
 「これがヘバーデン結節の大きな原因だ」と私は思いました。そして外くるぶしの後側、捻挫で伸びてしまった靱帯に施術を行い、母趾先の骨折したところに施術を行いますと、上腕三頭筋長頭のこわばりは解消して、尺骨の位置がかなり改善し、中指、薬指、小指の指先の詰まりは改善しました。第一関節部分が赤く腫れぼったい感じだったのですが、それも消失しました。
 そして、それから10年前に打撲して曲がって閉まった小指の第一関節に対して施術を行いました。こちらの方は、一回の施術で解決できる状態ではありませんでしたが、ヘバーデン結節状態が解消されたことで、強く圧しても、動かしても痛みを感じることはありませんでした。
 以上で、この女性が来店された目的は達成したのですが、私はどうしてもこの女性の手や腕の使い方が気になっていました。この人は母指と人差し指を中心にして手を使う状態になっていました。普段、筋トレが好きで軽いバーベルを持ち上げるようなトレーニングもしているとのことですが、傘をバーベルに見立てて、両手で持ち上げる動作を繰り返していただきますと、案の上、母指球側でバーベル(傘)を支えるように動かしていました。このような人は脇を開けた状態で肘の曲げ伸ばしを行いますので、前腕(肘から下)が内側に捻れやすく母指と人差し指を中心に手を使ってしまいます。そして、この癖も尺骨を捻れさせる原因になります。
 このような場合、「小指側を中心に力を使ってバーベルを持ち上げたり、包丁を持ったりするようにしてください」とアドバイスすることで簡単に済ますこともできますが、実際のところ、からだの状態だが狂っていますので、このような使い方しかできない状態になっています。ですから、やはりこの状態も改善しなければなりません。
 「いつ頃からペンの持ち方がおかしくなりましたか?」と質問しました。なかなか思い出せないようですので、「子供の頃からおかしかったですか? それとも大人になってからですか?」と再度尋ねますと、「そういえば三年ほど前に、右脚の太股の裏側を伸ばしたことがあって、それからかなぁ?」と仰いました。
 それで、太股の裏側を確認しますと肉離れ状態が残ったままになっている部分を発見しました。そして、その部分を手当てしますと、自ずと小指側に力が入って物を掴むことができるようになりました。バーベル(傘)の持ち方や上げ方にも変化がでたのを自覚されました。

 この女性は東京の大田区にお住まいですので、2時間半くらいかけて来店されました。当初予約をされた時点では「小指だけのことなので短時間の施術で」ということでしたが、実際には左足の母趾先骨折部分、左足首の捻挫痕、右太股裏の肉離れ痕、の三箇所を施術することになりました。
 たかが小指先のヘバーデン結節のこと、「そんなにたくさん施術することもないだろう」とお考えになるかもしれませんが、いろいろな状況が折り重なってヘバーデン結節状態になっているということがわかるケースでした。


 この女性のケースでは尺骨の状態がおかしくて深指屈筋でも尺骨に関係の深い中指、薬指、小指がヘバーデン結節の初期状態になっていましたが、橈骨の状態がおかしくなった場合などでは、親指や人差し指がヘバーデン結節になる可能性が高くなります。

 

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