湿疹は皮膚の病気ですから、医師の先生が担当される分野です。ところがアトピー性皮膚炎やその他にも、医学でなかなか思うように治癒できない症状があるのも実情です。
 皮膚科では殆どの場合、治療薬を使って対処されるのだと思いますが、薬によっては長期使用による副作用が懸念されたり、あるいは薬の効果が現れない場合などでは次第に強い薬を使うようになってしまう、などという懸念もあります。

 私はだいぶ以前から、アトピー性皮膚炎や皮膚湿疹に対して、整体的なアプローチも補助として有効ではないかと考えていました。しかし、一般的には皮膚と整体は結びつかないものと考えられているでしょうし、皮膚(湿疹)を整えるために来店される人もほとんどいませんので、このブログでも取り上げることはありませんでした。
 ところがこの度、私の娘が首の左側が痒くて、病院で処方された薬を塗っても痒みが治まらないと訴えてきましたので、一つの参考になればと思い、今回投稿させていただきました。
 娘の湿疹はすでに一月以上続いているとのことです。湿疹が慢性化してしまった状態ですね。現在はクリニックで処方された薬はまったく効かないとのことです。彼女は今、花粉症にも苦しんでいるのですが、そういった体質、そして乾燥など季節的な要因もあって湿疹がなかなか治まらないのかもしれませんが、整体的に対処できることもありますので、施術を行ってみました。

皮膚にとっては乾燥が大敵

 感染症や雑菌、ウイルスなどの類によってもたらされた症状を除いて、皮膚の状態が悪化する一番の理由は乾燥であろうかと思います。つまり保湿力の低下です。
 私たちの皮膚の外層には皮脂膜と角質層があります。
 皮脂膜は水と油が混ざったような状態の、つまりクリーム状の膜ですが、弱酸性になっていることで素肌に有益な菌の活動を応援し、アルカリ性を好む有害な菌類が活動しにくい状態にしています。また、その他に角質層の水分が蒸発しにくい状態に保つ働きをしています。
 そして皮脂膜の下層に角質層があります。角質層は、皮膚の新陳代謝によって表面に上がってきて、やがて垢となって剥がれ落ちていく運命の、死んだ細胞がレンガ造りの塀のように積み重なった構造になっています。
 通常、角質層の水分率は15~20%程度あると言われていますが、その水分と死んだ細胞から滲み出た油が手を組んでセラミドなど細胞間脂質を形成しています。細胞間脂質は筆一つの角質細胞を結び付ける糊のような役割をしていますが、それによって微生物やウイルスや雑菌類の皮膚への浸入を食い止める働きをしています。
 つまり、皮脂膜と角質層によって皮膚は外敵の侵入を防御しているわけですが、そのためには弱酸性、保湿力というキーワードが重要になってきます。

 お風呂に入って石けんやボディソープでからだを洗いますと、皮脂膜は汚れと一緒に流されてしまいます。ですから風呂上がりは少し時間が経ちますと素肌に乾燥を感じるようになります。若くて健康な人や子供達は、皮脂膜が洗い流されてもすぐに再形成されますので、一時乾燥状態になってもすぐに元の状態に戻ります。しかし、体調が悪かったり、皮脂の分泌が悪かったり、加齢によって皮脂膜の形成に時間がかかってしまうなどの場合は、乾燥状態が長引き、肌荒れを起こしやすい状態になってしまいます。ですから、乳液やクリームなどで保湿をして水分を補うとともに皮膚表面を弱酸性に整える必要があります。
 角質層の水分が足りなくなった乾燥状態になりますと、皮膚の防御機能が極端に低下してしまうからです。
 そして、石けん類や洗浄剤は基本的にアルカリ性です。食器用洗剤もアルカリ性です。つまりこれら洗浄剤を頻繁に使っていますと、皮膚表面の弱酸性が保持できなくなりますので、皮膚は乾燥状態になって肌荒れをおこすことになります。ですから、洗剤を使った後は速やかに素肌上に洗剤が残らないようにきれいに水で洗い流したり、場合によってはクリームやローション類を塗布して皮膚のpHを整える必要があります。

 さて、以上が肌荒れと肌荒れを防ぐための基本的な仕組みですが、この仕組みを保つためには内的な水と油(皮脂)の供給が必要だということになります。

皮膚と皮下筋膜と湿疹の関係

 娘の湿疹に話を戻しますが、湿疹は帯状に長さが7~8センチ程度で横長にできていました。赤く腫れていて、表面は乾燥してカサカサの状態でした。湿疹が慢性化している特徴が現れています。
 湿疹は皮膚にできますので、皮膚やその下にあります皮下筋膜の状態がおかしくなっている可能性が高いと考えられます。ですから、最初に皮膚と皮下筋膜の状態を確認することから施術を始めます。



 皮膚と皮下筋膜を観察しますと、湿疹部位の上と下とで皮下筋膜のねじれ方が反対方向になっていました。湿疹部位より上の部分の筋膜は顎関節の方向に捻じれた状態になっていて、湿疹部位より下部の皮下筋膜は喉の方向に捻じれていました。そしてその皮下筋膜の捻じれの境目にあたるところに湿疹ができていたのですが、なんとなく地震で生じた断層の亀裂に例えられるように感じました。つまり、断層の上部と下部ではエネルギーの流れ方が反対方向になっているような、そんな感じです。
 「きっと、この捻じれ方の違いによって水(体液、リンパ液)の処理がスムーズに行えず、皮膚への水分供給が不足して湿疹を発症してしまったのではないか」と思いました。
 ですから、まず私が行うことは首の皮下筋膜の捻じれを直すことです。
 そして、捻じれの原因を探していきますと、左顎関節のすぐ下、顎下腺の辺りが硬くこわばっていました。ここに筋膜が強く引き寄せられているために湿疹上部の筋膜が顎関節方向に捻れたのですが、その状況に耐えられなくなって湿疹部位で断層状態が形成され、その下の筋膜が反対方向に捻れてしまったのではないかと推察しました。
 そして、顎下腺部分の硬結をゆるめますと、筋膜の捻れが直りそうな感じがしましたので、次に「なぜ、顎下腺部分がこわばっているのか?」という問題を追及していくことになります。
 頚椎を観察しますと中程(第3~第5頚椎)が右側に引っ張られるように捻れていました。そしてその原因は右肩~右手にかけての問題にありました。右手の使い方に癖があるのは知っていましたが、それが悪影響を及ぼすほどの段階にまでなっていたのです。
 ですから、施術は右手や右腕の骨格の捻れや筋肉の変調を整えることでした。
 施術では湿疹部位を擦ることもしませんし、ストレッチすることも指圧することもしませんでした。ただ、皮下筋膜の状態を確認することと乾燥具合を確認するために時折触れただけです。施術の対象は右腕だけでした。そして、湿疹部位にある程度潤いが戻ってきて、触れても痒みを感じなくなったところで施術を終えました。(写真なのでわかりづらいと思いますが、写真右側の状態です)
 湿疹状態が一月以上経っていますので、皮膚は器質的に変化しています。ですから、湿疹が消えるまでにはまだ少し時間がかかると思います。
 現在、施術してから後3日ほど経っていますが、乾燥状態は気にならず、痒みも感じないとのことです。

水の代謝が重要なポイント

 私たちのからだは70%くらいが水分ですが、その働きは実に精妙で、全容を把握することは不可能かもしれません。
 “むくみ”は水分が停滞してしまったままで抜けていってくれない状態ですが、”乾燥”は水分が足りない状態であり、水分不足は生理機能の低下を招きます。なぜなら、体内で行われる生理機能はすべて電気的現象であり、化学変化であるからです。水は電気的現象や化学変化の舞台(=水の中でなければ電気的現象も化学変化も起こすことは困難)ですから、水分が足りなくなりますと生理機能が正常に働かない状態になっていまいます。

 皮膚の湿疹は部分的に生理機能が働いていない状態である、と考えますと「水分を補う必要がある」とう結論が導かれます。そしてそのためには外から保湿剤やクリームなどを塗布して水分を補うことも必要かもしれませんが、体内からの水分の供給はとても重要です。
 目が乾いてしまうドライアイの場合、点眼で外から補うよりも体内から必要な水分が涙として分泌された方が何倍も何十倍も効果的であるように、皮膚の乾燥に対しても体内からの水の分泌の方が大切です。そして、必要な水分が必要量分泌されるためには皮下筋膜の状態を改善することが重要であると私は考えています。

 外的な何かの影響や刺激物などで被れてしまい、それが湿疹状態にまでなってしまった場合などは、薬が有効であり、切れ味の優れた手段かもしれません。ところが、原因がよくわからなかったり、あるいは今回のように湿疹状態になってかなりの時間が経過して症状が慢性化してしまったような場合は、薬以外にも方法を考えるべきではないかと思います。
 その意味で、整体的なアプローチも薬に立てると考えています。


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