顔面神経麻痺を患いますと、表情筋の働きが極端に低下しますので、目が閉じられない、口が閉じられないので食べたり喋ったりすることが困難になる、顔の表情がなくなってしまうので怖い顔になる等々の不便で不快な自覚症状に襲われることになります。私自身、7~8年前に顔面神経麻痺を患いましたので、そのことはよく知っています。

 さて、この度、顔右側の顔面神経麻痺を患った若い女性が来店されました。顔面神経麻痺になって3ヶ月ほど経っているということです。病院では、いろいろな検査を行いましたが原因が特定できず、それでも一応ウイルスが絡んでいるかもしれないとのこと(血液検査でも異常はないとのことだそうですが)で、ストロイドの注射で対応しているとのことです。

 顔面神経は脳神経の一つであり、その問題と整体とはまったく関連性のないことだとほとんどの人が思っていると思います。しかし、けっこう関連性は深いと私は考えています。
 私自身のことで申せば、顔面神経麻痺になったときに耳鼻科などの病院を訪れましたが、結局、ほとんど原因については何もわかりませんでした。そして、決まり事のようにステロイド薬とビタミン剤を処方されて「顔面神経麻痺に間違いありませんね。あとは薬を飲んで様子を見てください。」という言葉だけでした。「これで本当に治療と言えるのだろうか?」と釈然としない思い抱いたわけですが、それも「いつものことだ」と諦めるしかありませんでした。

顔面神経麻痺の原因は?

 顔面神経は顔の表情筋の働きをコントロールする神経ですが、それは脳幹にある脳神経の一つです。ですから、顔面神経の働きが「弱い」とか「鈍い」といった場合は、脳幹の働きが低下している可能性が考えられます。そしてそれは脳幹に血液を供給している椎骨動脈の流れに問題がある可能性が考えられるわけですが、このことにつきましてはこれまでのブログで説明させていただきました。
 寝ていても眼が完全に閉じていない状態、ドライアイ、口の閉じ方が悪い、頬が垂れる、口角が上がりきらない等々は顔面神経の働きが弱い状態ですが、神経麻痺はこれらとは違い「動かない」「動かせない」という症状をもたらします。
 顔面神経麻痺は神経の働きが鈍いとか弱いということではなく、神経がほとんど機能していないということですから緊急事態ではあります。そして原因として考えられる可能性は以下の三つに絞られるのではないかと思います。

 一つ目は神経が病気の状態である可能性です。ウイルスなどはこのカテゴリーに含まれますが、病院で治療することが必須です。手遅れになりますと回復不可能になってしまう可能性がありますので、顔面神経麻痺になったと感じたら先ずは大きな病院で検査されることをお勧めします。そして脳関係の異常の有無も確認する必要があるのかもしれません。

 二つ目は神経管の切断や損傷の可能性です。強い打撲や衝撃、あるいは手術ミスなどで神経管が損傷したり切断した場合は、神経伝達が不可能になります。やはり脳外科など大きな病院で診てもらうことををお勧めします。頭部のケガや打撲、ムチウチなどの後で顔面神経麻痺の症状がでましたら、必ず病院に行ってください。

 三つ目は、神経管が強く圧迫されていることによって神経伝達ができない可能性です。そして、実際にはこれが最も多いのではないかと私は感じています。ヘルニアによるしびれや痛み、坐骨神経痛などもそうですが、神経管が強く圧迫された状態になりますと、神経伝達に異常が現れたり、神経伝達ができなくなったりすることがあります。
 顔面神経の経路の何処かで、神経管が強く圧迫されている状況がありますと、神経伝達がうまくできなくて顔面神経麻痺の状態になる場合がありますが、この状況は病院よりも整体的手法の方が適切に対処できるのだろうと思います。

顔面神経と耳下腺と咬筋(こうきん)

 顔面神経は頭蓋骨の耳穴のすぐ側にある穴を通って外側に現れますが、その後すぐに耳下腺の中を通過しながら枝分かれして顔面全体に広がっていく経路となっています。ですから、神経管を圧迫する可能性が最も高いと考えられますのは耳穴周辺(顎関節など)と耳下腺及び咬筋です。

  咬筋はそしゃく筋の一つですが、歯ぎしりや噛みしめる癖を持っている人は咬筋が硬くこわばっています。筋肉はこわばりますと硬く太くなりますので、耳下腺と咬筋の間を通過する顔面神経の本幹は圧迫を受けることになります。つまり、歯ぎしりや噛みしめの癖を持っている人は顔面神経が圧迫された状態になっているということです。それによって顔面神経の働きが弱くなりますので、瞼が完全に閉じないことでドライアイになっていたり、笑っても心地良い笑顔が作れなかったり、顔がたるんでしまったりという状態になっている可能性があります。
 そして、この状態が酷くなりますと、顔面神経麻痺と診断される状態になってしまうと思われます。

 さて、この度来店された女性は、4ヶ月前に歯科矯正のための外科手術を行いました。上顎骨と下顎骨を途中で切断して噛み合わせを調整しながら骨をつなげる大がかりな手術だったとのことです。そして、退院後間もなく顔面神経麻痺の症状が現れたということで、手術の影響によるものか、あるいは手術に関係してウイルスに感染したのか、いろいろと病院側もチェックしたようですが、そのような原因ではなかったということです。

 私は施術に際して一番最初に顔面神経麻痺のある方(右側)の耳下腺と咬筋を触りました。案の上、耳下腺も咬筋もカチカチの状態でした。また、それ以外に耳周辺や後頭部の右側もかなり硬くなっていました。
 「硬くなっている耳下腺や咬筋をゆるめれば何らかの変化があるかもしれない」と思いまして、そのように施術を始めました。しばらく持続指圧による施術を継続していましたが、なかなかゆるんでくれません。
 「どうしてこんなに硬いのだろう?」と思いながら施術を継続していましたが、顔面神経麻痺になりますと口も閉じられなくなりますので、「きっと無理して口を閉じようとしていたので、右の咬筋を強く収縮させていたからかもしれない。」(咬筋は三叉神経の支配で顔面神経とは直接関係ありません)と思いました。
 また咬筋や耳下腺が硬くなっている以外にも頚椎が歪んでいて、右側の肩こりもかなり強かったのですが、その原因は右目に関係する筋肉にありました。
 「右目(瞼)も閉じられなかったので、無理して閉じようとしていたためにこんなにコメカミも硬くなったしまったのかな?」などと思いながら耳下腺、咬筋、コメカミやその他関係する筋肉を調整して頭蓋骨の歪みもある程度調整しました。
 するとたるんでいた顔面右側の表情筋や皮膚に張りが戻ってきましたので、「これは改善の可能性がある」と感じました。ウイルスによる神経の病気でもなく、神経が損傷したわけでもなく、神経管が圧迫されていることが原因になっている可能性が高いことがわかったわけです。

 次に、核心に迫るために、この女性が一番気にしていました右目(瞼)の閉じ方を観察しながら、改めて咬筋が強くこわばり、耳下腺が硬くなってしまった原因を追及していきました。
 その作業は、私の右手を咬筋に当てながら、左手を使って頭蓋骨をいろいろと触りながら少し動かして、どの状態にすれば咬筋がゆるむかを観察する方法です。
 その過程で、前頭骨の右側が左側に比べ少し上がった状態になっていて、右眉毛の眉間寄りのところが少し浮いたような状態だったのですが、それを少し下に押し込んで前頭骨が水平な状態になるよう操作しましたが、その時にフッと右の咬筋がゆるみました。そして瞼の閉じ方について聞いてみましたところ「閉じている気がする」と仰いました。つまり、それまでは瞼を閉じても閉じた気がしていなかったということです。
 私は他にもいろいろと状態を確認していきましたが、その結果、これ(眉間の右側が浮いた状態)が大きな原因であると結論をだしました。あとは、「どうして、ここ(眉間の右側)が浮いてしまっているのだろう?」の追求です。
 そこで、手術のことを思い出しまして、「おそらく手術の影響で頭蓋骨が歪んでしまっているのだろう」と思いまして確認する作業を行いました。それは、上顎骨の切断したであろうと思われるところに手を当てていき、浮いている眉間の右側が沈むように動くポイントを探し出すという作業です。

 すると、右側上顎骨の中央部分、鼻が収まる穴のところに疑わしいポイントを見つけました。そしてそこに手指を当てますと前頭骨の状態が良くなり、咬筋がゆるみ、瞼の閉じ方も改善する状態になりました。そこで最終的に、この部分の手術の傷がまだ治りきってないことが根本的な原因である可能性が高いと判断しました。

 そして以下のように説明しました。
 「右側の顔面神経麻痺は、顔面神経が通っている耳下腺が硬くなっていることと、咬筋が強くこわばっていることで神経管が強く圧迫されてもたらされていると思います。そして耳下腺が硬くなった理由も、咬筋が常に強くこわばっている理由も頭蓋骨の歪みによるものであり、その歪みは手術によって切断した骨がまだ完全にくっついていないからだと思います。手術後半年はそんな影響が現れても仕方ないのかもしれません。ですから、この部分(上顎骨の穴)をよくケアしてください。それで次第に顔面麻痺は改善されていくと思います。」
 そして、最後にマグレイン金粒を小鼻の部分に貼り、「これを貼ってケアしてください」とマグレインを一袋渡して施術を終えました。
 施術後は、右目の具合も良くなり、顔に表情が戻っていました。まだ右口角の上がり方が十分ではありませんでしたが、一番の悩みであった右瞼の問題は解消された感じでした。

 私自身も顔面神経麻痺を経験しましたので、その不便さと、辛さと、なんとなく情けない気持ちは理解できますし、改善への道筋もイメージできます。そしてビタミン剤がまったく薬に立たないことも知っています。
 もし、顔面神経麻痺やそれに近い症状で悩まれている人がいらっしゃいましたら、是非一度ご相談ください。
 自分の顔が「無表情」「表情が乏しい」「笑顔がつくれない」「(意に反して)なんとなく怖い」などと思われている人は、顔面神経の問題かもしれません。そうであるならば、改善することは十分に可能だと思います。

足つぼ・整体 ゆめとわ
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