(過去に投稿した記事を修正加筆したものです)

 首を回旋したり横に倒したりすると肩上部が張って痛くなったり、じっとしていても常に肩上部に張りを感じてしまうという場合、原因として最も多いのは肩甲骨のずれです。
 首(頚椎および後頭部)から肩甲骨につながっている筋肉には僧帽筋(上部線維)、肩甲挙筋、肩甲舌骨筋があります。肩甲舌骨筋は目立たない筋肉で、専門家の間でもあまり取り上げられない筋肉ですが、肩上部の張りや不具合の原因になっていることがしばしば見受けられます。
 これら3つの筋肉で、僧帽筋と肩甲挙筋は首の後面~肩甲骨にかけての張りをもたらしますが、肩甲舌骨筋は首の前側、喉仏の直上にある舌骨と肩甲骨の上面を結んでいますので、印象としては“首の真横”に張りをもたらし、首を回旋したり横に倒したときに“肩の真上”が痛むといった症状をもたらします。

僧帽筋上部線維と肩甲挙筋

 いわゆる“肩こり”で一番気になり、ついつい手がいってしまうのが僧帽筋上部線維です。肩甲骨を持ち上げたり、腕を挙上したり、頭を後に倒すきに収縮する筋肉です。筋肉をたくさん鍛えているアスリートの首が短く見えてしまうのは、僧帽筋がとても発達しているからです。


 肩甲挙筋は第1~第4頚椎と肩甲骨の内側上面を繋いでいますので、頚椎の歪みと関係する筋肉の一つです。そして、その点が施術においてポイントとなります。また、目を動かす筋肉(外眼筋)と関係性が深いので、“目が凝ってこめかみが張ると、肩甲挙筋が張ってしまう”という状況がになります。
 首を下方に向けたときに首の後面~肩甲骨の内側にかけて張りや痛みを感じる場合は肩甲挙筋の張りが疑われます。

肩甲舌骨筋


 肩甲舌骨筋は一般的にマイナーな筋肉ですが、声楽家など発声に関係する人たちにとっては重要な筋肉であると考えられているようです。第3~第4頚椎の前には宙に浮いた状態で舌骨がありますが、肩甲舌骨筋はこの舌骨と肩甲骨を繋いでいます。また、舌骨は舌(舌筋)の起点になる足場のような存在ですから舌の動きや状態に深く関係します。舌骨が捻れていますと舌を噛みやすくなったり、滑舌が悪くなったり、無呼吸症候群になったりします。
 前述しましたとおり肩甲舌骨筋の張りは首の側面~肩上部の張りや痛みをもたらしますが、その原因として考えられるのは
 ①舌骨がずれていること、
 ②肩甲骨がずれていること、
 ③発声によってこわばってしまったこと
などが主なものです。一般の発声でこわばることは考えにくいですが、声楽家のように大きな声を連続して、かつ微妙な喉や舌の使い方を頻繁にされている人はこわばる可能性が高いかもしれません。大きな声を出すと肩に張りや凝りを感じるようでしたら、肩甲舌骨筋のこわばりが疑われます。

 舌骨がずれることでもたらされる肩甲舌骨筋のこわばりは、
 ①頚椎の捻れ(舌骨が第3頚~第4頚椎の前にあるので)、
 ②噛みしめや片噛み(噛みしめている方に舌骨はずれる)、
 ③物を持ち上げる動作でこの筋肉を使ってしまう、
などが考えられます。

 舌骨にはこの筋肉以外に顎二腹筋、頚突舌骨筋という筋肉がつながっています。噛みしめや片噛みによってこれらの筋肉がこわばりますと、そちらの方に舌骨が引き寄せられますので反対側の肩甲舌骨筋が張ってしまうという現象がおこります。右側ばかりで噛んでいる人は舌骨が右側にずれます。すると左側の肩甲骨と舌骨の距離が少し遠くなりますので、それを結んでいる肩甲舌骨筋が張ってしまうようになります。
 また、例えば四十肩や五十肩になって、あるいは腕や肩に力が入らない状態になって肩関節が上手く使えない状態なのに重い物を持ち上げたり運んだりしなければならない状況になったとき、私たちのからだは肩関節の筋肉ではなく僧帽筋や肩甲挙筋や肩甲舌骨筋や菱形筋を使って肩甲骨そのものを挙げることで動作を行おうとします。これは肩関節周囲炎の状態が悪化した人にとてもよく見られる現象ですが、「腕で持ち上げられないので肩で持ち上げてしまう」という表現があてはまるかもしれません。
 この状態が長く続きますと、僧帽筋、肩甲挙筋、肩甲舌骨筋、菱形筋はとてもこわばってしまいます。常に張りを感じるだけでなく、ちょっと触っただけでも痛みを感じたり、指圧などされたときには耐えられないくらいの痛みを感じるようになるかもしれません。

肩甲骨のずれと首の運動制限

 肩甲骨と首を結んでいる僧帽筋、肩甲挙筋、肩甲舌骨筋は肩甲骨のずれによって影響を受けますので、肩甲骨のずれが原因で首の動きが制限されてしまうことが起きます。
 肩甲骨をずらしてしまう原因には幾つかのパターンがありますが、首の動きを制限する代表的なもの二つを取り上げてみます。

①肩甲骨が外側にずれる場合

 肩甲骨の内側(内縁、背骨と間)には小菱形筋(しょうりょうけいきん)と大菱形筋(だいりょうけいきん)があります。これら二つの筋肉の働きが悪くなってゆるんだり、伸びた状態になりますと肩甲骨は外側にズレた状態になり、肩甲挙筋と僧帽筋は張った状態になりますので、首の運動に支障が出ます。

 また、脇(胸郭の側面)には肋骨と肩甲骨の裏側(腹側)内縁を繋いでいる前鋸筋(ぜんきょきん)という大きく強力な筋肉があります。前鋸筋は収縮することで肩甲骨を外側あるいは前方に出す働きをします。ボクシングのストレートパンチを打つときに肩甲骨も前に出ますが、そのような動作で働きます。棚の奥にある品物を手を大きく伸ばして掴む場合などの場合に活躍します。
 さて、前鋸筋がこわばり(収縮したままの状態)ますと常に肩甲骨が外側前方にずれた状態になります。パソコン業務で手前に書類があり、その先にキーボードやノートパソコンがあって、肘を浮かせたまま作業を行ったりしていますと肩もこりますが前鋸筋もこわばります。あるいは筋肉連動の関係で親指をたくさん使っていますと前鋸筋がこわばります。パソコンやスマホの操作をたくさん行っている人は要注意です。
 自分の肩が前に出ていると感じている人、脇の下の肋骨側が硬くて強めに指圧すると強い痛みを感じるような人は前鋸筋がこわばっている可能性が高いです。そして肩甲骨が外側にずれているわけですから、本来よりも肩幅が広がっていますし、首を動かすと肩上部や首筋に痛みを感じたり、あるいは首が動かしづらい状態になっています。

②肩甲骨が下にずれると肩甲挙筋が張る

 肩甲骨は下や後にずれることもあります。そうなりますと首(頚椎)から肩甲骨に繋がっています肩甲挙筋は張ってしまいます。また後頭部や首から肩甲骨に繋がっています僧帽筋上部線維、背骨と肩甲骨を繋いでいます小菱形筋と大菱形筋も張ってしまいます。そうなりますと「首を動かしたり下を向いたりすると首筋が痛くなり、背中まで痛くなる」という状況になります。

 肩甲骨を下にずらしてしまう主な理由には二つがあります。
 一つは僧帽筋や肩甲骨に関係する筋肉の変調です。僧帽筋は上部線維、中部線維、下部線維の3分けられますが、上部線維が収縮(こわばる)しますと肩甲骨が上に上がり、下部線維が収縮(こわばる)しますと下に下がります。またムチウチなどの影響で上部線維の働きが悪くなりますと肩甲骨は下がってしまいます。その他には菱形筋の働きが悪くなったり、胸にあります小胸筋がこわばっても肩甲骨は下がってしまいます。


 二つ目の理由は骨盤(腸骨)の後傾です。これは臨床的な経験に基づくものですが、腸骨の傾きと肩甲骨の傾は連動関係にあるようです。私たち日本人は骨盤そのものが後傾しやすい傾向にありますので、肩甲骨も理想的な位置よりも後側にある傾向があります。そのために肩上部の筋肉(僧帽筋上部線維や肩甲挙筋)が硬く盛り上がったような状態になりやすいと言えますが、さらに骨盤が後傾しますとそれは明らかな筋肉のこわばりをもたらし、首の運動制限や痛みに繋がります。
 肩甲骨が後方にずれているので骨盤が後傾しているという状況もあります。肩甲骨と鎖骨は一体化しているような関係ですので、鎖骨の存在感が薄い(奥に沈んでいる)人、喉の下(気管と胸骨の境)に圧迫感を感じている人は肩甲骨が後方にずれている可能性が高いです。この状態を改善するためには胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)や大胸筋(だいきょうきん)などを確認する必要があります。



 また骨盤の後傾によって肩甲骨が後方にずれている場合は、内腹斜筋(ないふくしゃきん)、長内転筋(ちょうないてんきん)といった筋肉のこわばりが原因になっている可能性が高いのですが、歩き方や立ち方に問題がある可能性があります。

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