(ずっとブログばかりを書いてきましたので、ゆめとわのホームページは放置したままになってきました。現在、ホームページを新しく作り始めていますのが、その中に記載する文章ですから、ちょっと固い話題ですが、最後まで読んでいただければ幸いです)

 階段をバタバタバタと駆け降りることはできても、ゆっくり、じっくり降りることのできない人がいます。上り坂はまったく苦にならないけど、下り坂を歩いたり走ったりするのが苦手な人もいます。このような状態の人は膝(太股)の前面にある中間広筋(ちゅうかんこうきん=大腿四頭筋の一つ)の働きが悪い人です。登山で、登りは大丈夫だったのに下山になると膝がカクカクしてしまった経験のある人は多いと思いますが、それは疲労によって中間広筋の働きが悪くなってしまったからです。このように中間広筋は”膝の粘り”に深く関係する筋肉です。


 では、膝に粘りが足りない人は中間広筋が弱いのでしょうか? また、そのような人は中間広筋を鍛えるトレーニングをした方が良いのでしょうか?
 膝にトラブルを抱えた人が整形外科を受診しますと、リハビリとして大腿四頭筋を鍛えるトレーニングを指導されたり勧められたりする場合があるようですが、私は疑問を感じます。

”筋肉の働きが悪い”ことと“筋力が弱い”こと

 例えば、トレーニングジムに通うなどして筋肉を鍛えていて、中間広筋の筋力もバッチリの人が、転んで膝を打撲したとします。すると本来の筋力を発揮することができなくなりますので、階段をゆっくり降りることができなくなってしまいます。膝に力が入らなくなってしまったからです。
 このような状態の人に対して「膝を強くする必要があるので、大腿四頭筋を鍛える運動をしてください」という指導は適切でしょうか? それは「不適切」であると多くの人が思うと思います。まずは打撲の傷を治すことが優先です。傷が癒えれば筋力が発揮できる状態に戻りますので、階段をゆっくり降りることができるようになるからです。鍛える必要があるとすればそれからです。

 上記の例では、打撲の傷によって筋肉がその能力を十分に発揮することのできない状態なりました。それは“筋肉の働きが悪い状態”です。そう考えますと、“筋肉がしっかり働くことのできる状態にする”ことが適切な対処法であるということになります。
 仮に、歩くと膝がカクカクし、階段を普通に降りることができない高齢者が来店されたとします。「ああ、この人は中間広筋の働きが悪いんだな」と私は思います。そして「どうすれば中間広筋の働きが良くなるのかな?」と考えながらからだを観察していきます。
 その後、中間広筋の働きが良くなるように施術を展開していきますが、その上でやはり筋力が不足している判断すれば、中間広筋を鍛えるための簡単なトレーニングをしていただくようアドバイスさせていただきます。「筋肉の働きが良い状態になった上でトレーニングを行えば効率よく筋力をアップさせることができる」と考えるからです。
 筋力を発揮することのできない状態で、筋肉に負荷を掛けるトレーニングは「しごき」であり、苦痛でもあるし、からだを壊すことにつながると私は考えています。仮に中間広筋の筋力がアップしたとしても、どこか別のところがおかしくなってしまうかもしれません。

 お腹が冷えると腹筋の働きが悪くなります。「腹筋の働きが悪くて胸が上がってしまい、うまく息を吐き出すことができないので‥‥」と申し上げますと「では、腹筋を鍛えれば良いのですか?」という反応が返ってきます。ほとんどの人が「働きが悪い」ことの対応策は「鍛えること」と考えてしまうようですが、正解は「働きの良い状態に戻す」ことです。なぜなら筋肉の正常な(本来の)状態は「働きの良い状態」だからです。必要に応じて必要な分だけスムーズに収縮し、必要に応じて必要な分だけスムーズに弛緩伸張できる状態が筋肉の働きが良い状態です。
 筋肉を鍛えることは、筋力を強くすることですので、働きを良くすることとは意味合いが違ってきます。そして筋肉の働きが良くなるためには、あるいは筋肉の働きが良い状態を保つためには、幾つかの必要条件があります。

筋肉がしっかり働くための必要条件

 私たちのからだの筋肉は3つの種類に分けられます。骨格の安定とからだの運動に関わる骨格筋(こっかくきん)と内臓の働きを行っている平滑筋(へいかつきん)と生涯一時も休むことなく働き続ける心臓の筋肉である心筋(しんきん)です。それぞれに特徴がありますが、これらの筋肉がしっかり働いてその役割を十分に果たすためには幾つか必要条件があります。
 まず血液が届かなければ筋肉(筋細胞)は働くことができませんので、動脈に問題がないこと、加えて二酸化炭素(炭酸ガス)や老廃物も去って行かなければなりませんので静脈に問題がないことも必要条件になります。
 心筋や内臓の平滑筋は自律神経によってコントロールされています。また私たちの意志に従って骨格筋は働くわけですが、そのためには神経(随意神経)に問題があってはいけません。ですから中枢神経と末梢神経に問題がないことが必要条件になります。
 冬の寒い朝は、手先がかじかんで思い通りに動かせなくなります。私はこの時期、朝一番のお客さんを迎える前に3分間ほど湯で手を温めています。そうしないと手先に力が入らず施術を行うことができないからです。ですから、筋肉をしっかり働かすための条件として熱エネルギーが必要だということになります。そしてこのことは心筋や内臓の平滑筋にもあてはまりますので、お腹を冷やすと内臓の働きが悪くなって体調を崩したり病気になる確率が高まります。面倒でもちゃんと湯船に浸かってからだを芯から温めてください。
 肩こりや腰痛に効果があるとされているピップエレキバンは磁気エネルギーを利用して筋肉の状態を良くしようとするものです。整形外科や接骨院でかける低周波などの電気治療器は、からだに電気を流して筋肉の状態を良くしようとするものです。何故なら私たちのからだには微弱ながら電気が流れているからです。神経の働きも筋肉の収縮も、細胞内での出来事も、実はすべて電気的な現象です。私たちの肉体が行っている生命現象のすべては電気仕掛けですので、電気エネルギーは必要条件になります。地球が自転していることによって自然と私たちには磁気と電気エネルギーが与えられていますが、その流れがおかしくなりますと筋肉の働きは悪くなります。
 筋肉に損傷がないことは必要条件です。当然と言えば当然ですが、筋肉が打撲したり傷ついたりしますと電気エネルギーの流れが悪くなります。足首を捻挫しますと、炎症が治まり痛みや腫れが引いた後でも足や足首に力が入らず頼りない状況が続きます。それは損傷が治りきっていないということですが、電気エネルギーの流れが悪いために筋肉がしっかり働いてくれない、あるいは筋肉や靱帯がしっかり治ってくれないということです。
 手術などでメスを入れますと、大なり小なりその影響は必ず残ります。そのマイナス要素に対してどう対処して付き合って行くのか、そういう課題が残ります。

 さて、ここからは少し専門的になりますが、「加齢」という言葉でかたづけられ、本人も「そんなものか」と半ば諦めてしまう症状を改善するために、筋肉の持っている能力をしっかり発揮するために必要な条件になります。

・筋肉に変調がないこと

筋肉は使いすぎますと、つまり収縮ばかり行っていますと、しばしば収縮したままの状態になってしまいます。筋肉の中に硬く凝り固まって伸びてくれなくない部分ができてしまいます。それを「筋肉がこわばった状態」「筋肉の中のこわばり」と私は表現しますが、筋肉が変調を起こした一つの状態です。
 またこれとは反対に、使いすぎて疲労してしまい、あるいは伸ばされたまま放っておかれて疲弊してしまい、収縮することができなくなってしまうことがあります。打撲や損傷によってこういう状態になることもありますし、肉離れやギックリ腰などもこの状態です。筋肉が部分的に収縮できなくなってしまった状態を「疲弊した状態」あるいは「ゆるみ過ぎた状態」と表現していますが、日常的にあらゆる筋肉の中に見られる筋肉の変調です。熱が足りなくて、血行が悪くて、神経の働きが悪くて、筋肉がうまく収縮できなくなることがありますが、それもこれとおなじ変調状態だと考えて対処することになります。

・筋膜の状態が良いこと

私たちがイメージする一般的な筋肉は、細い筋線維が薄い筋膜に包まれ、それが幾つか集まって束になり、その束をまた筋膜が包み、さらにそれを束にしたものを更に筋膜が包んだものです。このように筋肉を包む筋膜は筋肉を束ねて名前の付く一つの筋肉にまとめ上げる働きをしています。


 さらに心臓や肺やその他の臓器も膜に包まれていますし、腹腔や胸腔といった体内の体腔も膜に包まれています。これらの仕切りのような膜によって臓器や器官はある程度一定の位置に保たれるようになっていると言います。また皮膚の下にも筋膜(皮下筋膜)があって全身を一枚のシートで覆うような状態にしています。
 骨は骨膜に覆われていますが、骨格筋はその腱が骨膜に繋がることによて骨に繋がっています。
 これらの膜はすべて筋膜と同じものですが、その働きについてはまだまだ解っていないことが多いようです。組織や器官や臓器や骨をガードしたり、体内での位置を決める働きをしているだけでなく何らかの情報をそれらにもたらしている可能性もあるということです。

 たとえば一般的な肩こりは、筋肉の中の水分が溜まったまま抜けていかないので筋肉がコリコリに硬くなった状態ですが、もっと細かく観察しますと、筋線維とそれを包んでいる筋膜との間に水が溜まってしまったものか、あるいは筋膜と筋膜の隙間に水分が溜まったままになっているものかもしれません。そう考えますと「筋膜を整えることで肩こりを改善する」という方法が思いつきますが、現にそのようなやり方を提唱している専門家もいます。
 私の実際の施術では筋膜を施術する割合が高いです。筋肉の変調を整えるためには筋膜にアプローチするのが最も効果的な方法かもしれません。
 体表を覆う皮下筋膜はしばしば捻れを起こしますが、その捻れによってからだが歪んでまったりすることがあります。骨格の歪みを修整することも大事ですが、筋膜の捻れを正すことも整体にとっては重要です。

・協働筋と拮抗筋の状態が整っていること

 ある筋肉を収縮させて動作を行うとき、その筋肉だけが収縮しているわけではありません。その筋肉の収縮を補助したり、動作の効率を上げるために他の複数の筋肉が同時に収縮します。それらの筋肉を共働筋、あるいは協働筋と呼びます。


 また、ある筋肉が収縮して動作をする場合、その筋肉と反対の働きをする筋肉がゆるんで伸びる必要があります。例えば上腕二頭筋を収縮させて肘を曲げるときは、上腕の背面にあります上腕三頭筋がゆるんで伸びなければなりません。もし上腕三頭筋にこわばりがあってうまく伸びることができなければ「肘を曲げたくても曲げられない」という状況になります。このように肘を曲げる働きをする上腕二頭筋に対して、肘を伸ばす働きをする上腕三頭筋を拮抗筋と呼びますが、拮抗筋にこわばりなどの変調がありますと動作がスムーズに自在に行うことができなくなってしまいます。

・付着する骨格が安定していること

 心臓や内臓の臓器や器官は直接骨に接していませんので、心筋と平滑筋は骨や骨格とは関係が薄いと思われるかもしれません。しかし、“からだの歪み”という観点で考えますと、歪みによって心筋や内臓平滑筋の働きも影響を受けますので「骨格の安定はすべての筋肉に対して影響を及ぼす」と言うことができます。そのように前置きした上で骨格筋について説明させていただきます。
 骨格筋は一部顔面の表情筋などを除いて、骨と骨の間にあって、収縮したり弛緩伸張したりすることによって骨を動かし、からだに動作をもたらす働きをしています。


 また肘関節を引き合いに出して説明させていただきますが、肘関節を曲げる働きをする筋肉には先ほど取り上げました上腕二頭筋の他に上腕筋があります。上腕筋は上腕骨と前腕の骨である尺骨を繋いでいますが、収縮することによって尺骨を上腕骨の方へ引き寄せ肘を曲げます。この動作では、上腕骨が土台となって上腕筋が収縮することで尺骨を引き寄せることを行っていますので、上腕筋にとっての土台、あるいは足場である上腕骨が安定している必要があります。もし上腕骨が不安定でグラグラしていますと、上腕筋は正常に、効率よく働くことができなくなります。私たちが平で安定した道路を歩くのと、足場が不安定な沼地のようなところを歩くのでは、緊張感や歩き方が変わってしまうのと同じことです。
 ですから、骨格筋の能力を十分に発揮してもらうためには足場である骨格が安定している必要があります。
 そして骨格を安定させる働きをするのもまた骨格筋であるという現実があります。「骨と骨を繋ぐ短い筋肉が骨格を安定させ、その上で長い筋肉が働いて動作を起こしている」というような感じで捉えていただければよいかと思います。

以上が筋肉がしっかり働くための必要条件になりますが、もう一度整理しますと、以下の通りです。

  • 血流(動脈・静脈)に滞りがない
  • 神経が正常に通っている
  • エネルギー(熱・電気‥‥)が必要量あり、流れに滞りがない
  • 筋に損傷や変調がない
  • 筋膜の状態が良いこと
  • 協働筋と拮抗筋に変調がない
  • 付着する骨が安定している

筋力よりも働きの良い状態が必要

 筋力を強くするためには筋肉に負荷を掛けてたくさん使うこと、つまりトレーニングが有効です。しかし整体的な観点で、あるいは日常的な健康を実現するという観点で考えますと、筋力が強くなることはそれほど好ましいというものでもありません。筋力が弱いよりは強い方が良いかもしれませんが、筋力が強くても変調があって働きが悪ければからだは歪みます。からだが歪みますといろいろな問題を起こしますし、内臓の働きにも悪影響を及ぼす可能性が高まります。
 ですから、日常生活に必要な筋力は確保しなければなりませんが、筋力を強くするよりも筋肉の働きが良くなることを考えていただきたいと思います。毎日5000歩も歩けば足腰に必要な筋力は十分に確保できると思いますし、筋肉連動の原理から、歩くだけでも体幹や手の筋肉もそれなり動きますので、特別に腕や手指を鍛える必要もないと私は思います。それよりも首・肩から力が抜けて腰を中心にからだを動かすことを身につけていただくことの方がよっぽど大切だと思います。そして、そのためには正しい呼吸をしなければなりません。
 正しい呼吸を実現するためにはからだの歪みを改善する必要があり、そのためには筋肉や筋膜の働きが良くなるようにする必要があります。ですから、上記に示した必要条件をよく見直していただきたいと思います。

 からだが冷えますと熱が足りなくなりますし、血流が悪くなりますので内臓の筋肉も含めて筋肉の働きは悪くなります。面倒でも、湯船に浸かってからだを芯から温める習慣を身につけましょう。
 同じ作業を長時間続けていますと筋肉がこわばったり、あるいは疲弊してしまい変調を起こします。ですから使い方のバランスを考えましょう。
 片噛みの癖、目の使い方の偏り、パソコンのしすぎ、スマホの使いすぎ(眼の疲労や下を向いている時間が長くなる)などは、筋肉の働きを悪くし、からだに歪みをもたらします。


 さて、冒頭にとりあげましたような、中間広筋の働きが悪く膝の粘る力が足りないような場合、拮抗筋の問題が原因になっていることが多いようです。中間広筋は大腿四頭筋の一部ですから膝を伸ばす働きをします。ですから一般的に拮抗筋として考えられる筋肉は膝を曲げる働きをする筋肉です。ハムストリングとして知られる太股裏側の筋肉(大腿二頭筋、半腱様筋、半膜様筋)やふくらはぎの腓腹筋がそれに該当します。しかし、実際には同じ大腿四頭筋の中の大腿直筋が中間広筋の拮抗筋となって膝の力に問題をもたらしていることが多いです。

 例えば階段を昇るとき、膝に力を入れて脚を伸ばし、からだを持ち上げますが、その時には大腿直筋と内側広筋が主に働きます。反対に階段を降りるときには、中間広筋と外側広筋が主に働いて軸脚の膝を粘らせ、反対側の足が下の段に着地することを可能にします。「上りは大腿直筋、下りは中間広筋」という合い言葉のように、私の頭の中には記憶されています。
 ですから登山に際して、山頂を目指して山を登っていく時には大腿直筋がたくさん使われます。すると大腿直筋は使い過ぎでこわばりますが、それは拮抗関係にある中間広筋に「ゆるんでうまく収縮できない状態」をもたらします。この状態で山を下りますと膝に力が入りませんのでカクカク、あるいはプルプルした状態を招いてしまいます。

 今は市町村で経営している公的なトレーニングジムも増え、手軽に器具をつかって筋力アップのトレーニングを行うことができます。汗をかいて発散することは、心理的ストレス解消としても、肉体的疲労回復としても、とても有効な手段だと思います。適度な運動は健康を維持するためにも大変役に立つものだと思います。
 しかし、「不具合を筋力アップで克服しよう!」という考え方には、素直にうなずけません。からだの不具合には原因があります。ですから不具合の原因を正し、不具合を直した上でトレーニングを楽しんでいただければと思います。
 私たちのからだには「耐性力」がありますので、不具合があって当初は痛みを感じていたとしても、運動を続けているうちに痛みが消えてしまうことがあります。昔の「根性論」的発想は、この耐性力に根ざしていたのかもしれません。
 あるいは、若く、からだにエネルギーが溢れているような状態であれば、不具合があったとしても他がカバーしてくれますので乗り切ることができるかもしれません。しかし加齢とともに体力が落ち、中年期あたりからカバー力が弱くなりだしますと「昔の古傷が‥‥」と不具合を放っておいたツケが廻ってきたりします。

 筋力を強くすることと、筋肉の働きを良くすることは、まったく別物であることを、皆さんにも知っていただき、健康を維持するために筋肉の働きを良くする環境に暮らしていただきたいと思います。
 先ほども申しましたが、からだを冷やさないこと、良い呼吸をすること、噛み方や目の使い方が偏らないこと、からだに少し負荷を掛ける程度の心地良い運動をおこなうこと、精神的な面を除くとこのようなことが大切ではないかと思います。


足つぼ・整体 ゆめとわ
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