2年前に頚椎ヘルニアの手術を行った後から肩こりが辛くなり、慢性的な腰痛に悩まされている50代の女性が来店されました。お仕事は和菓子の販売で、長い時間立ちっぱなしで動くこと(歩き回るなど)もあまりないということです。
 
 からだを観察しますと、背面の首~背中~骨盤にかけてピーンと張り詰めた太い筋がありました。強い脊柱起立筋のこわばりなのですが、これが原因で腰を動かすと痛みを発することが一目瞭然です。また、仕事で立ち続けてことだけも腰痛を感じるとのことでしたから、他にも問題があることが予想されました。

手術痕の影響_頚椎ヘルニア

 頚椎ヘルニアの場所は頚椎5番と6番の間で、手術は首の前面を切開して行われていました。
「横に切っているのか‥‥」というのが私の最初の印象でした。手術については全く知りませんので、頚椎ヘルニアでは横に切るしかないのかもしれません。ところが、このブログで何度か説明してきましたとおり、からだの中のエネルギーの流れは原則として縦方向です。横方向にメスを入れることは、大きな幅でエネルギーの流れを弱めてしまうことになります。
 「ちょっと厄介かな」と思いながらも、手術でメスを入れたところを人差し指の腹で隠すように手を当てました。1分くらい手を当ててますと、強く張っていた首筋がゆるみはじめました。そして背中や腰部を確認しますと、同じように最初の時の強いこわばりに変化が起こっておりまして、筋を強く圧してもそれほど痛みを感じなくなっていました。
 それで、手術でメスが入った部分に粘着力の弱い1㎝幅の絆創膏を貼りまして皮膚を補い、エネルギーが少しでも多く流れる状態にしまして、残りの「じっと立ち続けるだけでも腰が痛くなる」問題に取り組みました。

 前回のO脚に関する投稿で「次回は膝関節で膝窩筋がこわばっていることについて」という主旨の予告をさせていただきましたが、この方の膝窩筋もこわばっていまして、その影響が腰痛に反映されていました。

膝窩筋

 私たちのからだには、姿勢のそれぞれで、より効率良く、より楽な状態になれるような仕組みがあります。座った時には骨盤(坐骨)にからだを乗っけることが座った姿勢を楽に保つ仕組みです。そして立った姿勢を楽に保つための仕組みの一つとして“膝がロックしてからだの重さを骨で受け止める”というのがあります。本来、脚(下肢)の骨格は大腿骨と脛骨・腓骨に膝関節で分かれていますが、それを膝関節をロックすることで、あたかも一本の骨のような状態にして、太股やふくらはぎの筋肉の負担を軽減するようにしています。
 例えば床の上に長座して膝関節をを90°くらい曲げた状態にします。そこからゆっくり膝を伸ばしていきますと、床と一直線になる手前で膝下(脛骨)少し外側に廻ります。この脛骨の外旋によって膝がロックされ、大腿骨と脛骨が一直線のようになります。今度は床の上にすっかり伸びた状態の膝関節を浮かすようにして膝を曲げ始めますが、その曲げはじめの最初の段階で脛骨が僅かに内側に捻れます。このちょっとした脛骨の内旋によって膝関節のロックが外れ、膝を曲げることができるようになります。
 そして、この時にロックを外すために働く筋肉が膝窩筋です。膝窩筋は膝を真っ直ぐ伸ばした立位の時には少しゆるんで膝関節のロックを可能にし、膝を曲げるときに収縮して脛骨を内旋させて膝のロックを外し膝関節がスムーズに動くことを可能にしています。歩く動作では、膝が伸びたり曲がったりする度に弛緩したり収縮したりを繰り返しているわけです。
 さて、この膝窩筋がこわばって弛緩しない状態になったとします。すると膝関節がロックされませんので、立位で大腿骨と脛骨の一体化はおこなわれません。見かけ上は膝が真っ直ぐになっているように見えても、実は少し曲がった状態で立っています。太股の筋肉もふくらはぎの筋肉も楽な状態にはなりません。ですから、立ち続けていることは非常に辛いことです。そしてそれが腰痛となって現れたりします。

 この女性が、長時間の立ち仕事が腰痛を招いていしまう原因はここにあります。
 膝窩筋がこわばる理由については小殿筋、棘上筋、肘筋との連動なども考えられますし、他の要因かもしれません。それをじっくり探っている時間はありませんでしたが、足裏の母趾と2趾の間の踵近くがひどくこわばっていまして、それを指圧でゆるめますと膝窩筋もゆるみましたので、立ち続ける動作をそこに力を入れて支えていたのかもしれません。
 
 膝窩筋のことは近いうちに投稿しようと原稿を書き始めています。その中で詳しく説明したいと考えています。
 今回は頚椎ヘルニアの手術を受けて慢性腰痛になってしまった方が来店されましたので、一つの情報としてお知らせしようと思い、臨時的に投稿させていただきました。
 頚椎ヘルニアに限らず、手術をしようかどうかと考えられている人の参考になればと思います。
 また外科の先生の目にとまるのであれば、医学界が無視しているように見受けられる予後の問題の一つとして、「手術痕がからだに及ぼす影響」があることを知っていただき、患者さんの予後についてもっと考えていただきたいと、そう思います。