少し前に呼吸のついての文章(「うつ症状‥‥呼吸の改善を」)を投稿しましたが、それを読まれて来店されたのか、遠くから若い青年が来店されました。
 現在抱えている主な症状は以下の通りです。
 ①手のひらと足裏の汗
 ②顔と背中の肌荒れ
 ③唾液が出にくい
 ④のぼせ‥‥イライラすると頭に血が上り苦しくなる
 ⑤話しにくい‥‥ボイストレーニングに通っている

 症状の発症はだいたい同じ時期で、中学性の頃ということです。
 現在の仕事では接客の業務も行っているため、手のひら汗が中でも気になるということでした。
 体型は長身で痩せています。
 過去のケガとしましては、中学性の時の左腕(橈骨)の骨折、高校時代の数々の足首周辺の捻挫などです。

 さて、手のひらと足裏に汗をかきやすいという問題は若い人にけっこう多いのですが、根本的な原因として考えられるのは体質の弱さによるエネルギー不足、あるいは体内エネルギーの廻り方が普通ではない、といったところです。
 「エネルギー不足」と言いますと、対策としては、食事やサプリメントを考えて適切な栄養を摂る、あるいは筋トレなどで体を鍛える、といったことを連想されるかもしれませんが、それは違うと私は考えています。現在の私たちに足りないもの、そして若い人や子供さんにとっては特に気をつけていただきたいことの一つに「ご飯をよく噛むこと」がありますが、哺乳動物である私たちにとっては、“そしゃく”は生命力に直結する大切な大切なことです。
 そして脊椎動物としての私たちにとって最も大切なことは“呼吸”です。生命の灯火が消えると同時に呼吸が止まりますが、呼吸の在り方は生命を維持するためだけではなく、健康を増進して快適に生きることに直結します。
 ですからエネルギー不足を改善して体質を強めるためには、よく噛んで、快適な呼吸状態を維持することが必要不可欠であると私は考えています。特定の栄養摂取や筋トレは、そしゃくをしっかり行い、快適な呼吸が実現できている上で、更にからだを強めるために行われる、という順番が大切だと思います。そしゃくと呼吸が軽視された状態でサプリ摂取や筋トレを行っても上手くいかないのではないかと思います。

 「エネルギーの廻り方が普通ではない」という表現は中途半端に聞こえるかもしれませんが、「異常という状態ではないけれど、正しいとは言えない」といったところです。大きな関節での歪みが悪化しますとこのような状態になります。たとえば、体幹と四肢をつなぐ肩関節と股関節の歪みは全身の循環に影響を与えます。それによって本来渇いているはずの手のひらから水分が出てしまったり、反対に常に潤っているはずの鼻腔や口腔が渇いてしまったりすることがあります。
 そして「精神的緊張が強くなると手のひらから汗がにじむ」ということが起こりますが、精神的な要因でエネルギーの廻り方がおかしくなることはあります。

 以上のことから、この青年を施術するに際し、まず呼吸とそしゃく筋の面から観察し始めました。

 ③唾液がでにくい、④のぼせ、といったことから連想されるのは噛みしめによるそしゃく筋のこわばりです。唾液腺の一つ、耳下腺は咬筋のところにありますので咬筋がカチカチに硬くなりますと耳下腺から唾液が出にくくなります。さらにエネルギーの廻り方がおかしい状態では、本来潤っているはずの口腔が渇いたりしますので益々唾液不足の状態になると思います。

耳下腺01

 のぼせは頭蓋骨の動きが悪いことが原因として考えられます。頭蓋骨は本来、息を吸う時に少し(横に)拡がり、息を吐くときに少し縮むように動きます。ところがそしゃく筋の一つである側頭筋が強くこわばっていたり、頭皮が硬くなっていたりしますと頭蓋骨が動かなくなります。さらに呼吸が悪い状態が重なりますと、脳内の血液の動きも悪くなりますので、頭が血で一杯の状態になってしまうと考えることができます。

 呼吸の面では、腹式呼吸の要である横隔膜がほとんど動かない状態でした。胸郭は薄く、横に広がった状態で全部の肋骨が下を向いていました。呼吸をしていても肋骨はほとんど動かない感じで「息が吸えない」といった感じでした。
 「ともかく息がたくさん吸える状態にすることから始めなければ‥‥」というのが私の直感でした。
 「横隔膜が十分に働けるようになるには、どうすれば良いのだろうか?」そんな思いを持ちながら胸郭を触っていきました。すると左側の第4と第5肋骨が胸骨から少し離れた感じになっているのがわかりまして、それを胸骨に近づけるように私の手で動かしてみました。するとその瞬間に、横隔膜が作動し始め胸郭が大きく開らきました。そして、ここが大事なところなのですが、横隔膜が作動して胸郭が自然に開くことから吸気の動作が始まるようになりました。無理に息を吸い込むのではなく、自然に息が気持ちよく入ってくる状態です。
 呼吸に関しては「肋骨のズレに根本的な原因がある」ことが分かった瞬間です。

 次に「どうして左側の肋骨が胸骨から離れた状態になっているのだろう?」という本質的な原因を探すステップになります。いろいろな症状が出始めたのは中学性の頃で、左腕を骨折したのも中学性の頃、という関連性が疑わしく思えてきました。
 「中学性の時の骨折は、具体的には左腕の何処だったのですか?」と質問をしました。すると橈骨の肘付近と手首付近の2箇所という返事でしたので、早速その辺りを探っていきますと確かに骨折した痕のような感じの弱いところが見つかりました。そしてその部分に手をあてがって補助しますと、胸骨から離れていた肋骨が少し戻って十分とは言えませんが、横隔膜が働き出し胸郭が大きく動く呼吸ができるようになりました。
 私が手を当てていたのは5~6分くらいだと思いますが、その間の呼吸が改善されましたので、顔色が良くなり、リラックスして楽な感じになりました。頭の方も“詰まり感”がなくなったようで、「楽になりました。」と仰いました。

 胸郭が下がっていたことで喉が下に引っ張られ、さらに呼吸が悪かったことで声の出も悪かったのですが、それも改善され“地声”が出て言葉がしっかりするようになりました。
 これまでにも発声や滑舌などに問題があってボイストレーニングに通われたりしている人が来店されましたが、整体的観点での問題が解消されないとなかなか成果が現れないという実態があります。

 この青年が訴えていた五つの症状は、それぞれを別に考えて、一つずつ片付けていこうとしますと迷路にはまっていくような感じになると思います。
 実際のところ今回は、呼吸のみにだけ集中して施術を行いました。「呼吸が浅い、呼吸が悪い」というのは訴えられた症状には入っていませんでしたが、私は、すべての症状は呼吸が悪いことから派生したものだろうと判断しました。そして120分のほとんどを、横隔膜がちゃんと機能するように整える時間に費やしましたが、施術が終わったときには本人が一番気にしていた手のひらの汗の問題はほとんど解消されていました。
 このブログでは、しつこいくらいに何度も何度も呼吸に関する話題を取り上げてきましたが、それは私たちの健康にとって呼吸は何よりも大切なことの一つだからです。

 私たちは常に無意識下で呼吸を行っていますので、「今の呼吸が普通の状態」と考えてしまいがちです。ですから「呼吸が良くなったとしても、それがどれくらい効果的なの?」と思っている人が多いと思います。あるいは「ヨガやストレッチやその他の運動で呼吸については訓練しているし‥‥」とか、「毎日深呼吸しているし‥‥」ということで私が話題に出している鼻呼吸、副鼻腔、横隔膜、肋間筋などといったキーワードには興味を抱かれないかもしれません。しかし、「真に快適な呼吸」を経験されますと毎日普通に行っていた自分の呼吸がとても非効率だったことが理解できると思います。

横隔膜と肝臓
 現在、遺伝性の糖尿病で悩んでいる人が定期的に来店されています。糖尿病の段階にもいろいろあるようですが、まだ合併症に苦しんだり、痩せてやつれたようになっている状態ではありません。少し太り気味で、食欲もあり、外見的にはごく普通に見える感じで、本格的な糖尿病になる何歩か手前の状態だと思います。ただ血糖値はかなり高く、尿タンパクも良い状態とは言えませんので、本人は何とか今より少しでも良い状態を保って、本格的な糖尿病にならないようにと当院を利用されています。
 糖尿病といいますと、膵臓からのインシュリン分泌不良、腎臓の働き低下などが連想されると思います。それらは足と手の反射区を利用して施術を行うことで対応するとしまして、私がこの方に対して最も気になってしまうのは呼吸の状態です。
 生きているわけですから、もちろん息はしています。ところが胸郭が殆ど動かないような呼吸で、息を吸うと下腹だけがプーッと膨らみパッと吐いてしまうような呼吸でした。腹式呼吸と言えば、一見そのような感じではありますが、リズムが本来の腹式呼吸はかけ離れていますし、胸郭が動かないのでは横隔膜を効率的に使う腹式呼吸ではありません。

肝臓の働き2

 以前にも申しましたが、胸郭の右側、つまり胃の右側には肝臓があります。肝臓があって、そのすぐ上に横隔膜があり、その上に肺があります。詳細は省きますが、肝臓は静脈系の臓器です。静脈系ということは自身の力では血液を運ぶことができないという側面があります。肝臓には小腸で吸収された影響が静脈血に混じって全部送られます。そして健康を維持するために必要なあらゆる処理が肝臓でおこなわれるわけですが、その処理された血液は心臓に戻らなければなりません。胃は自らの筋肉を収縮させて食物を次の段階(十二指腸)に送ることができますが、肝臓はそのようなことができません。吸気の時に横隔膜が収縮して肝臓を上から圧迫するわけですが、この原理も利用して血液を前に進め、心臓に戻しています。ですから、肝臓の働きが順調に行われるためには横隔膜の収縮と弛緩が必要です。つまり“ちゃんとした呼吸”がとても大切であると私は考えています。

横隔膜の圧迫による肝臓と大腸

 インシュリンはホルモンの一種ですが、ホルモンはアミノ酸の集合体です。そしてアミノ酸は肝臓でつくられます(タンパク質の分解)ので、肝臓が大切です。からだの維持に必要なあらゆる物質が肝臓で合成されます。血液に混じったあらゆる毒物を解毒するのは肝臓です。
 そういうことから、この方に対しては呼吸、呼吸、呼吸、といった感じで、理想的な呼吸ができるように施術を行っています。
 最初の来店から半年が経過していますが、呼吸の状態も「まあまあ」という感じになりました。血糖値は安定して下がっているというわけではありませんが、けっこう良い数値がつづくこともあるとのことです。尿タンパクの方も改善傾向にあるようです。そのような数値のことは私にはよくわかりませんが、立ち姿がスーッして背が高くなったように感じられ、素肌の血色も良くなって、当初の、重力に押しつぶされているような姿がすっかり変化していることが頼もしく思えています。遺伝性の症状(病気)ということで、克服するのはなかなか大変なことだとは思いますが、少しずつでも改善への道を進んでほしいと思っています。

横隔膜が働くために
 腹式呼吸の主役は横隔膜ですから、大概の人の横隔膜は働いています。しかし多くの人の腹式呼吸では、横隔膜の動きは、言わば「後付け」の感じです。これは正確な表現ではありませんが、横隔膜が積極的に働いて呼吸動作を主導している状態が理想的なのですが、そのような人はそれほど多くはありません。
 呼吸を整えるための施術を行いながら、私は実際に、横隔膜が大きく動き出すことから無理のない深い呼吸が始まる瞬間を見ていますし、よく知っています。冒頭に登場していただいた青年は、ただ肋骨を胸骨に近づけただけで「いきなり横隔膜が動き出す」という感じでした。本人の意志とはまったく関係なく、深い腹式呼吸が始まります。「この状態が理想!」と心の中で思いました。
 ですから、すべての人にこの状態になっていただきたいとの思いを込めながら施術を行っています。

 ところでカエルの呼吸を見たことはありますでしょうか? カエルは両生類、つまり水陸両用の要素を持った動物ですが、その呼吸の特徴を首のところがペコペコ膨らませることにあります。(You Tube で見てください。)
 そして私たちの横隔膜は、このカエルの呼吸で膨らむ首の筋肉が胸の下に降りてきたものだと言われています。ですから、横隔膜を動かす神経(横隔神経)は首から出ています。つまり横隔膜の働きに頚部の状態は関係があるということです。そういう意味で、老化により頚椎の状態が悪くなってしまった人や頚椎ヘルニアの疑いがある人は、もしかしたら横隔膜の働きが不十分で呼吸が悪くなっているという面があるのかもしれません。
 さらに、呼吸運動には肋骨を動かす肋間筋や大胸筋、胸郭を引き上げる首の筋肉(斜角筋、胸鎖乳突筋)と胸の筋肉(小胸筋)、息を吐くときに働く腹筋なども関わってきますので、良い呼吸を実現するためにはこれらの筋肉や関係する骨格の状態を整えることが不可欠になってきます。
 また、横隔膜が作動し始める合図となるのは、鼻骨のところに吸気を通すことなのかもしれないと思うようになってきました。鼻骨の上には前頭洞という副鼻腔があります。鼻から息を入れてスーッと前頭洞に通過させるような仕草を行いますと自ずと横隔膜が動きだし、胸郭が開いて肺に空気が入ってきます。鼻から息を入れても副鼻腔を通過させずに喉(咽頭)の方に空気を送ってしまうと胸郭の拡がり方は中途半端になってしまいます。鼻呼吸ではなく口呼吸になってしまいますと、肩で息をするような状態になり、胸は上がりますが反対に横隔膜の動きが制限された状態になってしまいます。息を吸っているのに胸が苦しくなってしまうのです。首や肩に力が入ってしまい、いつも肩こりを感じている人はそうなっていませんでしょうか?

 先ほども申しましたが、呼吸のリズムは生理活動のリズムに繋がります。ゆったりとリラックスして時を過ごしたいと願うのであれば、まず呼吸のリズムがそうなっている必要があると思います。
 だからといって、気合いを入れて「ゆったりした腹式呼吸をしよう」「ヨガで意図的に呼吸のリズムを整えよう」としてみても、その場は快適になるかもしれませんが、常にその快適な状態を保つことはなかなか難しいことです。
 ですから、特別な思いを抱いて取り組んだりするのではなく、ごく普通の状態が、快適な呼吸になるように工夫をしてみてください。そしてなかなか上手くいかないと思われるのであれば、ご来店ください。

 
足つぼ・整体 ゆめとわ
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