当店は駅前にあるのですが、玄関前の道路には小田原市水道局の大きなマンホールの蓋が設置されています。その蓋の上をしばしば車が通過していきますが、その時に「ペッコン、ペッコン」と音がします。
 毎週のように来店されている常連の方がいますが、「あの音、なぁに? 気になるわね!」と文句を言いました。毎週のように来店されているので、聞き慣れているはずなのですが、その時に限って不愉快に感じたようです。
 「耳が過敏な状態になっているんですね」と私は応えました。「???」、きっとその方はそう思ったと思います。音がうるさいわけで、自分の耳がおかしいとは想像できなかったのだと思います。

 こういう状況は誰にでもけっこうありまして、耳が過敏な状態になっているので“音に負けてしまう”という現象が起こってしまいます。それを確認するために私は次のテストを行います。
 まず肘を90°に曲げていただき、私が手首辺りを掴んで「肘を伸ばそうと力を加えますので、肘が伸びないように力を入れて肘が曲がった状態を保持してください」と行います。私はその時の反応を観察します。平然と耐え続けられるようであればOKですが、何秒もしないうちにガクガクしたり、顔や別の場所に力を入れて耐えるような仕草をしたり、あるいは力が抜けてしまって耐えることができないようになってしまったら問題有りです。
 まず、ただそのテストだけを行い、状態を確認します。そして次に、テストしながら耳元で音を鳴らします。私がいつも使うのは小さな鐘の音で、「チリーン、チリーン‥‥」という高音の音ですが、それはどんな音でもかまわないと思います。耳が音を聞いたときに、からだから力が抜けてしまうか、平然としていられるかのテストです。
 耳および聴覚系が普通の状態であれば、音があっても無くても、肘の筋力(耐える力)に大きな変化はありません。ところが聴覚系が過敏な状態になっていますと、耳に音が入ッタ瞬間に肘の力を保つことができなくなってしまいます。私は片手で鐘を鳴らしながら、他方の手だけで筋力検査を行わなければならないので肘の力が保持できるかどうかの筋力検査にしていますが、どんな筋力検査でもかまいません。Oリングテストなどに馴染みのある人は、Oリングテストで試してみてください。

 さて、冒頭に取り上げた常連の人は、左耳の検査では大丈夫でしたが、右耳の方は耳元で鐘の音をならした瞬間に肘から力がすっかり抜けてしまい、まったく耐えることができなくなってしまいました。耳がとても過敏になっていることがわかりました。

過敏になっている状態とは?
 春先になりますと多くの人が花粉症で悩まされます。それは純粋に花粉に対して「アレルギー反応を起こしてしまう」ということもありますが、鼻の粘膜が過敏になってしまい、花粉だけでなくハウスダストやその他のものにまでアレルギー反応を起こすようになってしまったり、ちょっとした気温の差や風などに反応するようになってしまったりします。元々の「花粉アレルギー」から鼻や眼が過敏になってしまった「花粉症」という状態になってしまったのだと思われます。
 
 では、「過敏になる」とはどういうことでしょう? 「素肌が過敏ですぐに肌荒れしてしまう」「目が過敏で昼間のまぶしさに耐えられない」そして今回話題の「耳が過敏で、キーーっという金属音に耐えられない」という感覚器官の過敏状態があります。

耳の構造2


 耳(聴覚器)は音を聞き分ける感覚器官ですが、その仕組みを簡単に説明してみます。
 「音」の実態は空気の振動だとされています。ですから耳は空気の振動を感じて反応する器官であるということができます。
 耳は外耳、中耳、内耳の3つの部屋に分かれていますが、耳の穴(外耳道)から入ってきた空気の振動は外耳と中耳の境にある鼓膜を振動させます。すると鼓膜の振動は中耳にあります耳小骨と呼ばれる三つの小骨の振動に変換されます。音がしない(?)のに音を伝える「骨伝導イヤホン」などがありますが、それは鼓膜を介さずに直接中耳に働きかける仕組みになっています。
 中耳の奥には内耳がありますが、そこはリンパ液で満たされた仕組みになっています。かつて海の中で生活していた私たちの遠い祖先(=魚)の面影がそこに残されています。中耳で骨の振動に変換された音は、内耳の水を振動させます。つまり最初は空気の振動だった音が最終的に液体の振動に変換される仕組みになっているわけです。そして内耳の液体振動は、そこにある細かい毛を揺らすのですが、それによって微弱な電流が発生します。その微弱な電流は電気信号として神経(蝸牛神経など)を伝わり脳の中に入っていきます。そして脳内の担当部位で処理されて私たちが「音」として認識できるようになるわけです。

音波の伝わり方


 ですから耳が過敏になる、あるいは難聴状態になるというのは、空気の振動を正確に処理して電気信号として脳に伝え、私たちが音として認識する一連の過程の何処かに不具合や不調があるという理屈になります。
 第一段階は外耳~鼓膜にかけて、第二段階は中耳、第三段階は内耳、第四段階は神経、第五段階は脳という五つの過程のどこに問題があって耳の不調や症状となっているのかを考えることが必要になります。

 さて、「過敏な状態」とはどういうことかを考えてみます。私たちは常にいろいろな外的刺激受け続けているわけですが、その刺激に対して「迅速に、正確に対応できない状態」あるいは「刺激に耐えられない状態」が過敏な状態ではないかと私は考えています。
 例えばパソコンで動画を見るとします。動画は静止画を1秒間に30枚の速度で画面に表示し続けるわけですが、スムーズに再生するためにはパソコンにそれなり処理速度が求められます。十分な処理能力を持っているパソコンであれば快適に動画を見ることができます。ところが10年前、20年前のパソコンを引っ張り出してきて同じ動画を再生しますと、途中で動画が止まってしまったり、あるいはまったく再生できなかったりすることが起こります。それは動画という情報量の大きなデータを正確に処理できる能力をパソコンが持っていないからです。
 通常、私たちはある範囲内(周波数や音量)の音波は正確かつ迅速に処理することができる聴覚器官を持っています。ところが適正範囲を超えるような音波、たとえば大音量の音楽などの刺激には耐えられなくなってその場から離れたくなったりします。そうでなければ上記の五段階プロセスの何処かが傷んでしまうと本能として感じるからだと思います。
 あるいは適正範囲であったとしても自分の体調が悪かったりしますと、処理能力が落ちてしまいますので、音波を正確かつ迅速に処理することができなくなってしまいます。
 「会話の声が頭の中でガンガン響いて頭痛がする」「いつも心地良く聞いている鳥の囀りが気に障る」「自分の声が響いてしまう」‥‥‥これらの不調は音波の処理に関して自分の能力に問題があると考えるのが理にかなっています。「音が気になるから窓を閉めて、音が入らないようにする」「なるべく会話しないようにする」といった方向での対処は、それこそ対処療法であり、解決には至らない方向です。

 ですから「過敏な状態」とは、あるいは「過敏な状態になる」とは下記の二通りではないかと思います。
  1. 自分の処理能力に問題は無いが、刺激が強すぎて正確に処理しきれないため暴走状態になってしまう。
  2. 刺激の強さや量は通常であれば十分にこなせる守備範囲内なのに、自分の処理能力に問題があって正確に処理し蹴れない状態。

 上記2.の場合、問題を解決するためには低下してしまった自分の処理能力を本来の状態に戻すことが必要です。
 冒頭に登場していただいた方は、後頭部右側の後頭下筋群と呼ばれる筋肉が大変強くこわばっていました。その他に右手の親指や人差し指が少し捻れていて強くこわばっていました。これらによって右耳周辺~首筋にかけて強い「張り」がありました。左右の耳の位置を比べますと、右耳は左耳に比べて後方やや下方向にずれた状態でした。
 結論的としては、右手のこわばりや後頭部筋肉のこわばりによって右耳が後下方に引っ張られていたため、外耳道が歪んだ状態になっていて、さらに首筋の筋肉の張りもあって中耳につながる耳管も少し歪んでいたのではないかと思います。耳管は耳の中と外気との気圧を調整する働きをしますが、耳管閉塞症、耳管開放症と呼ばれる症状もありますように、聴覚にかなり影響力を持っています。
 外耳道の歪みは鼓膜の働きに影響を与え、耳管の歪みは中耳の働きに影響を与えますので、それらによって右耳の音波処理能力が低下してしまい、耳が音に対して過敏な状態になってしまっていたと考えられます。
 
 ですから私は右手の手指を整え、後頭下筋群のこわばりを改善して、頭蓋骨の歪みを修整することで右耳の位置を整え、首筋の張りがなくなるように施術を行いました。
 20分くらいの施術時間だったと思いますが、施術後、再び耳元で鐘を鳴らして肘の力がどうなるかのテストを行いました。するとまったく問題の無い状態になりました。そして、玄関外のマンホールの蓋が鳴ってしまう「ペッコン」という音も「さほど気にならない」と仰るようになりました。

 耳も目も鼻の穴も二つありますので、片方が他方を補う仕組みもあって、これら感覚器官の不調は自覚しづらいことではあります。しかしほとんどの人が、二つあるうちの一方を好んで使っている傾向があります。右眼ばかりを使って文字を見ていたり、右の鼻の穴は空気が通るけど左側の穴はほとんど呼吸で使っていなかったり、耳も聞きやすい方で聞いていたりします。両方の耳で受話器を使っている人は少ないと思います。
 不調は自覚しづらいかもしれませんが、実際には存在しているかもしれません。二つあるうちの一つを塞ぐなどして‥‥右の鼻の穴を塞いで鼻の通りを確認したり、眼も片方ずつ見え方を確認したりして不具合や不調の有る無しを確認してみてください。
 見たもの(=見え方)によって心は動かされますし、嗅いだ臭いや聞いた音によって、触れた感触によって感情は動きますので、感覚器官の状態は心を豊かに健やかに保つためにとても重要です。

 もし、「いつもストレスや圧迫感を感じる」とか「すぐにむかついてしまう」「短気をおこしてしまう」「心が塞いでしまう」など内的、心的問題を感じているなら、ご自分の感覚器官をチェックしてみることも必要なことだと思います。「(自分の)外の問題が降りかかっている」と感じていたものが、実は「自分の感覚器官に問題があった」となるかもしれません。それであれば、自分のやり方次第で問題は解決するわけですから、気持ちも楽になるのではないかと思います。


 今回登場していただいたの方は五つあるプロセスの最初の二つ、外耳と中耳の問題を修正しただけですみました。そしてこのような状況の人は「普通に居る」と私は思っています。
 外耳と中耳の問題であれば耳鼻科の医師が担当ですし、素人的な考えでは「それで事足りる」と思ってしまいます。ところが「外耳のズレ」とか「耳管の歪み」「首筋の張り」といった項目は耳鼻科の扱いにはないのかもしれません。
 ご自分の耳の働きに不具合があると認識された方は、一度は耳鼻科に行かれたほうがいいかもしれませんが、解決は期待できないかもしれません。その場合は、筋肉や骨格のことに詳しい治療院や整体院を探して訪れてみてはいかがでしょうか。普通にマッサージや揉みほぐしをしているチェーン店の整体院などでは話も通じないかもしれません。

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