椎骨動脈は頚椎の横突起の中を通って頚部を上り脳の中に入って行きますが、頚椎2番、頚椎1番、後頭骨の関係にズレが生じていますと流れが悪くなり、脳幹や小脳への血流量が減る可能性が考えられる、ということは前回の投稿で申し上げました。
 そして、現代社会環境で暮らす私たちは“下向き加減”の生活を強いられていますので、頭部が頚部に対して前にずれている可能性が高く、それが椎骨動脈の流れを悪くしている大きな要因になっている可能性があると申し上げました。
 実際、猫背気味で首が前にでている人が多いのですが、その姿勢では前に出ている首を支えるために頚長筋(けいちょうきん)が常に作動している状態になっています。つまり頚長筋がこわばっています。そしてこれは肩こりの人がよく指摘される“ストレートネック”の原因でもあります。

環椎後頭関節とその動きに関わる筋肉

 椎骨動脈の流れを考えたときに、最も注目すべき部位は頚椎1番(環椎)と後頭骨との関節である環椎後頭関節です。ここで後頭骨が環椎に対して前方にずれますと椎骨動脈に余計なテンションが掛かりますので椎骨動脈の流れが悪化する可能性があると以前にも記しました。そして、このずれを生じさせる原因の一つとして頭長筋のこわばりが考えられます。

頚長筋と頭長筋のこわばりは後頭下筋群のこわばりにつながる
 ここで、頚長筋と頭長筋のこわばった状況をイメージしてみます。

首が前に出た状態の後頭下筋群、舌骨下筋群、頚長筋、頭長筋

 頚長筋のこわばっている人は首が前にでている人で、その状態で読書や勉強や事務処理などで視線を落とし、顎を少し引いて下向き加減の状態を続けますと頭長筋もこわばります。さらにその状態を保ったまま顎を上げて前方を向きますと、後頭部と頚椎の境(環椎後頭関節)を中心に頭を上げることになりますので、後頭下筋群を使って前を向く姿勢を築いていることになります。
 例えば書類を見ながらその内容をパソコンに入力する作業で、書類をキーボードの手前に置き、背もたれにもたれながら(猫背の姿勢)前方にある画面と書類とを見比べながら作業を続けていたとします。この状態では首が前に出ている状態を保つために頚長筋は常に収縮しています。そして頭を上下させるのは頭長筋と後頭下筋群ですので、どちらの筋肉もこわばります。そして後頭下筋群がこわばりますと首の後側の筋肉(背中から繋がる背筋や脊柱起立筋群)は猫背による影響も加わりゆるんでしまいます。すると首を支えるために頚長筋にはさらなる負担がかかりますので、頚長筋のこわばりはとても強くなってしまいます。

頚椎7を中心に首を動かす

 頚椎は7個あります。本来上を向いたり下を向いたりする動作の支点であり起点となるのは頚椎7番と胸椎1番との関節です。「首のつけ根が動いて首が上下に動く」といった感じが本来の姿であり、そのように動作できていれば背筋が使われますので、背中はしっかりし、座っていても骨盤が立ってきて姿勢が自然と良くなります。頚長筋のこわばりも弛むようになりますので、背が高くなり視線が高くなる印象になると思います。硬くこわばっていた後頭下筋群の状態も良くなり、後頭部の頭痛が改善するかもしれません。

頚長筋と頭長筋のケア
 さて、多くの人の頚長筋と頭長筋はこわばっていると思いますが、それをケアする方法について説明させていただきます。

頚部前面と椎前筋2

 頚長筋も頭長筋も一番深部にある筋肉です。その前面には気道(気管)や喉、食道、そして幾つかの骨格筋がありますのでアプローチがけっこう難しく、触り馴れるまでは正確に捉えることができないかもしれません。またケアを始めたばかりの頃は、気管やその周辺の筋肉も硬くなっていますので、スムーズに手が奥に入っていきません。そのことを承知された上で、最初から「バッチリ決めよう!」とは思わずにケアを行ってください。ケアを行っている間に、少しずつ筋肉や組織が柔らかくなっていきますので、次第に手が深いところに入っていき、目的である頚長筋をと捉えることができるようになります。

 注意事項としては、
①必ず頚動脈を避けてください。
 そのためには、最初に頚動脈がどこにあるのかを確認してください。頚動脈はしっかり脈を打っていますので、その位置は把握しやすいはずです。目的である頚長筋は頚動脈よりも中心寄り、気道(気管)の方にあります。

②強い力で押さないようにしてください。
 気道と、その裏にある食道やその周辺の組織は敏感ですので傷つけないように注意する必要があります。
 要領がつかめないうちは、なかなか手が奥の方に入っていきませんから、ついつい力が入ってしまうかもしれません。そうならないように十分に注意してください。

頚長筋のこわばりを改善するケア
 頚長筋の下部は胸椎3番になりますので鎖骨より下にあります。しかし、そこには手が届きませんので先ずは鎖骨のところ辺りからケアを始めます。

頚長筋へのセルフケア

 鎖骨の上縁の深部を指先で軽く圧しながら中央部(胸骨)から外側にゆっくり辿っていきますと頚動脈の搏動にぶつかります。そこに頚動脈があり、それは垂直に上方に進んでいます。そこは圧しないように確認します。頚動脈より指1本分内側に気道の縁があります。そして気道の裏側に食道と関係する組織があります。目的の頚長筋はその更に奥にありますので、先ずは母指以外の四指の指先を使って気道と食道に関係する組織をグイッと反対側に動かして、決してそれらを圧しないように避けます。

 気道と食道とその周辺の組織を避けた状態で、そのまま四指の指先を少し奥に差し込んでいきますと搏動を感じると思います。それは頚動脈ではなく椎骨動脈の搏動です。椎骨動脈は頚椎の横突起の中を通っていますが、頚長筋の本体はその更に内側、椎体の方にありますので指先を差し込んだままの状態で更に四指を中央の方に移動しますと硬く緊張した頚長筋にぶつかります。こわばりの強い人はかなり痛みを感じるかもしれません。

 頚長筋に指先が当たっていることが確信できましたら、少し圧を増して筋肉を上方に引き上げるようにしてしばらくのあいだ圧を加え続けます。多少椎骨動脈の脈動を感じると思いますが、それはそれほど気にしなくても大丈夫です。
 はじめのうちは、硬い筋肉を圧したときの痛みが強かったかもしれませんが、次第に痛みが弱くなり、少し気持ち良さを感じるようになると思います。
 そうなりましたら、場所を少しずつ上方にずらしていき、同じようにケアを行いします。すると内臓が動き出してお腹が鳴り出したり、目の見え方変わってきたりという変化が現れると思います。椎骨動脈の流れが良くなり、脳神経の働きに変化が現れた現象です。

 ここで注意しなければならないことは、鎖骨近辺から始め、上方にケアするポイントをずらしていきますと胸鎖乳突筋にぶつかりますので、それを避けなければならないことです。胸鎖乳突筋もお構いなしに圧してしまいますと頚長筋を捉えられなくなるばかりでなく、胸鎖乳突筋を傷つける可能性もありますので、上手に避けてください。

頭長筋のこわばりを改善するケア
 頭長筋へのケアは頭部と頚部の関係を改善するためのポイントとなります。ほとんどの人の頭長筋は、程度の差こそあれこわばっていると思います。
 頭長筋は頚長筋の上部にありますが、周囲には胸鎖乳突筋、顎二腹筋、茎突舌骨筋といった骨格筋や咽頭関係の組織がありますのでなかなか直に探り当てることは難しい筋肉です。

頭長筋へのセルフケア

 耳の下部の後頭部側には大きな突起(乳様突起)がありますが、そこと下顎のエラとの間に頚椎1番の横突起があります。その辺りに深めに指先を入れた状態で、軽くうなずいてみます。この時に収縮する筋肉が頭長筋ですが、エラのすぐ後あたりを更に強めに指を入れていきますと、硬く張っていて、うなずく動作に合わせて収縮する頭長筋の筋線維を探り当てることができると思います。けっこう痛みを感じる人も多いのではないかと思いますが、頭長筋へのケアはその張っている筋線維をゆるめることです。
 ゆるめ方は筋線維に指先で圧力をかけたままの状態で少し上方へ引き上げるようにします。筋線維が硬いうちはかなりの痛みを伴うと思いますが、躊躇せずに思い切って上方へ引き伸ばすように持続的に圧をかけ続けることがポイントです。決してグイグイ押したり、揉むようにしたりしないでください。筋線維を傷める危険性があります。
 痛みをこらえながら持続圧を続けていますと、頭長筋が少しずつゆるみだし、頭部と頚部の関係が改善し始めます。すると脳神経の働きが良くなり始めますので、視界が明るくなり目が開くようになったり、迷走神経の働きが良くなって内臓が反応し始めたりする変化が現れると思います。頬のタルミも改善し、フェイスラインがシャープになったりします。
 こういった変化は圧をゆるめると消えてしまったり、あるいは長持ちしなかったりするかもしれません。それは長年頭長筋をこわばらせてきたので、頭長筋が形状記憶のような状態になっているのだと思われます。「ゆるめてもすぐに元の張った状態に戻ってしまう」、「次の朝には元の状態に戻ってしまう」などという状態から始まるかもしれませんが、何日間かケアを続けますと良い状態が長持ちするようになると思います。


 今回取り上げました頭長筋と頚長筋のケアは実際のところ、「簡単にできる」というものではありません。
 現在整体の勉強会に参加されているメンバーに、“筋肉を正確に捉える”訓練の一環として上記の内容を練習してもらっていますが、なかなか上手くできないようです。ですから、技術的には“高度な手技”の部類に入るかもしれません。
 このことをご理解の上、最初から「上手にこなして結果を求めよう」ということにこだわらず、「何度かやっているうちに何となく上手くできるようになってきた」というスタンスで取り組んでいただければと思います。
 くれぐれも組織や筋肉を強く押しすぎて傷めることのないように注意してください。  
 

足つぼ・整体 ゆめとわ
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