「オタクですね」とか「マニアックなブログですね」とか、私やこのブログ対する感想をいただきます。私の携わっている仕事は骨とか筋肉といった解剖学的世界ですので、どうしても専門用語を使わないと表現できないことが多くあります。一般の人にもなるべく解りやすく読みやすいようにと心掛けていますが、やっぱり毎回、マニアックな内容になってしまいます。
 そして今回も、マニアックな内容です。

長趾屈筋(ちょうしくっきん)
 私たちのからだの特徴の一つとして、指先の筋肉は最も深いところにあるインナーマッスルである、というのがあります。私が筋肉のことを勉強し始めてこのことを知ったときは驚きました。インナーマッスルは内部の筋肉、深層にある筋肉という意味ですから、からだの最も先端に出ていて頻繁に動かしている筋肉がそうであるとは思えなかったからです。
 一般に“第一関節”と呼ばれる指先は専門的に”末節”と呼びますが、足も手も第一関節を曲げる筋肉と第二関節を曲げる筋肉は異なります。末節である第一関節を曲げる筋肉は深層筋ですが、手指の場合は腕(前腕)から、足趾の場合はふくらはぎ(脛骨と腓骨)から始まり、手首や足首の関節を超えて指先まで繋がっています。

 足の2趾~5趾の末節を曲げる筋肉を長趾屈筋と呼びますが、ふくらはぎのスネの骨(脛骨)の後面内側から出発して足首の内くるぶし(内果)下を通って2趾~5趾の指先に繋がっています。

長趾屈筋02

 O脚の人や、立った時や歩く時に小趾側に重心が掛かってしまう人は、基本的に長趾屈筋を使って踏ん張ったり地面を蹴ったりしています。ですから長趾屈筋がとてもこわばっています。
 また内股の人は、歩くときに小趾側が母趾よりも前に出るような踏み出し(着地)になりますので、やはり長趾屈筋がこわばります。そして何十年も内股で生きている人は、思いの外とても強くこわばっていますので、こわばり状態を解消するのに労力と時間がかかってしまいます。
 歩き方が良くなくて、足を突っ込むように踏み出している人は足の指先が曲がっているのが一つの特徴ですが、それは必要以上に長趾屈筋や長母趾屈筋を使っているということですので、筋肉は当然こわばっています。外反母趾や内反小趾の人はこの傾向がありますが、健康を考えるなら歩き方を改善する必要があると言えます。

 長趾屈筋は足では外側(小趾側)ですが、ふくらはぎでは内側の最深部、太股では内側の筋肉(薄筋)に連動しますので、長趾屈筋がこわばっている人は“下肢の内側が硬い”という感じになります。
 「O脚で脚の外側が張っているのに、内側の筋肉もカチカチ」というのは長趾屈筋のこわばりが原因である可能性が高いです。

長趾屈筋のこわばり① ふくらはぎと足首の捻れ
 O脚にも幾つかのパターンがあります。修正するのに厄介なのは、太股が内側に捻れていて膝小僧が内側を向いており、しかし膝関節のすぐ下は外側に飛び出ていて(腓骨頭が目立つ)、さらに脛骨が足首にかけて内側に捻れている状態です。立った時に重心は小趾側にあるのに足首の内側から内くるぶしにかけて折れ曲がったように沈んでいることがありますが、このような状態を修正するのはなかなか大変です。

O脚_下腿の内旋

 そしてこの脛骨の捻れを生み出している張本人は長趾屈筋の強いこわばりである可能性が高いと思います。
 長期屈筋は膝下の脛骨の裏側から始まりますが、最深部にありますので普通にふくらはぎのマッサージを行っただけでは手や圧が届くことはありません。O脚の人をはじめ、強くこわばっている人が多いのですが、丁寧に粘り強くほぐしていきますと、ふくらはぎの捻れは少しずつ修正されていきます。

長趾屈筋01

 長趾屈筋は上図のところ、足首の上部では容易に触ることができます。但し、足首周辺がスッキリしていない人は表層のむくみが硬くなっていますので、表層を揉みほぐして柔らかくしないと手が届かないかもしれません。

内股_足首の捻れ

 内股やO脚の人に多いのですが、仰向けで寝たとき、あるいは高い椅子などに座り足が浮いている状態の時、足首や足が内側に倒れるように捻れていたり、外くるぶしの方がダラーンと下がっている人がいます。足首内側の長趾屈筋や後脛骨筋のこわばりが原因の一つとして考えられます。そしてこの傾向の人は太股の内側がこわばっていることが多いのですが、その影響が腹部や首や顔に及び、顔に引きつりや突っ張り感をもたらし、眼や鼻の働きに影響を及ぼしている可能性もあります。
 左足は普通なのに右足だけ内側に倒れてしまう人がいましたが、光を見ると右眼から涙が溢れだして止まらなくなってしまうということでした。この人はかつて右膝を脱臼したことがあって右膝の内側に損傷状態が残ったままでした。それが大きな影響となって右長趾屈筋がこわばるような脚の使い方になってしまい足首が内側に捻れた状態になっていました。ふくらはぎのちょうど中間辺りに長趾屈筋の硬い塊(=こわばり)がありましたが、それを弛めることによって足首の捻れが修正され、眼の状態も普通になりました。

長趾屈筋のこわばり② 内転筋~顔のこわばりにつながる
 長趾屈筋は太股の内転筋である薄筋(はくきん)に連動します。薄筋は腸骨筋と連動しますが、小胸筋にも連動し、そしゃく筋の状態にも影響を与えます。ですから長趾屈筋のこわばりが固定化している人は常に顔に緊張感やツッパリ感を感じてしまうかもしれません。実際、内股のきつい人は顎がゆるまないため顔貌に緊張感が漂っていると思います。もちろん見かけだけでなく、自覚としても芯からのリラックス感を味わえないため、常に不快感と共にあるかもしれません。

長趾屈筋と連動する薄筋、腸骨筋、小胸筋

長趾屈筋のセルフケア
 長趾屈筋に限らず、インナーマッスルの変調(こわばったり、ゆるんだり、疲弊したりした状態)期間が長いと、良い状態に戻すのに時間と手間が掛かってしまいます。
 現在、後期高齢者になるまでずっと内股だった人に対して週に一度のペースで施術を行っています。施術を始めて半年になりますが、長趾屈筋のこわばりは取りきれていません。「形状記憶」という言葉を思い浮かべてしまいますが、強い長趾屈筋のこわばりは形状記憶のように、ほぐしても、ほぐしても、一週間後にはまたこわばった状態に戻ってしまいます。歩き方や足の使い方が悪いことも重なって長趾屈筋のこわばりが戻ってしまうのだと思います。使い方が改善しないと筋肉の状態は良くなりませんが、筋肉の状態が良くならないと使い方も改善しません。それは卵と鶏の喩え話のような状況ではありますが、根気強く対応することで、やがて今の状態を抜け出して大きく前に前進できる時が来るのだと考えています。

 「インナーマッスルの変調は手強い」というのが率直な私の思いです。
 四十肩・五十肩で苦しんだ方はうなずけると思いますが、症状をこじらせてしまいますと回復までに相当時間がかかってしまい、長い間苦しみ続けなければなりません。肩周辺のインナーマッスルが疲弊して肩関節を正しい状態に維持できなくなってしまったからです。インナーマッスルはなかなか疲弊しない筋肉ですが、一度疲弊してしまいますと機能回復までに時間がかかってしまいます。
 加齢によって手指の第一関節が腫れ上がり、やがて指先が曲がった状態で固まってしまうヘバーデン結節は、やはりインナーマッスルのこわばりと縮みが原因です。その状態が固定化しますと、元の状態に戻すのは難しくなります。
 足の指先が曲がっている人は長母趾屈筋、長趾屈筋というインナーマッスルがこわばった状態です。つまり修正して素直な状態に戻すのに時間と手間が掛かるということです。そして、こういう人はたくさんいます。
 ですから毎日のセルフケアとして是非、長趾屈筋をほぐす指圧をしてください。

長趾屈筋へのセルフケア

下腿と足の筋肉_背面


 長趾屈筋はふくらはぎの裏面、最も深い部分にある筋肉です。皆さんがふくらはぎの筋肉を触ったときに“太さ”を感じる筋肉は表層にある腓腹筋(ひふくきん)です。その深部にヒラメ筋という丈夫な筋肉があります。普通はここまでしか触れませんし、“ふくらはぎマッサージ”の対象となるのもここまでです。
 しかし、ほぐしたい対象はその奥にあります筋肉です。スネ骨(脛骨)の内側から裏面を触るように手を滑り込ませるようにアプローチしますが、最初は周りの硬い組織やヒラメ筋が邪魔してなかなか長趾屈筋に触れることができません。それでも粘り強く続けていますと、やがてかたくなった筋肉をとらえることができ、それを指圧すると強い痛みを感じると思います。その痛みに耐えながら指圧を続けていますと少しずつ少しずつ柔らかくなり、「イタキモ(痛いが気持ちよさもある)」状態が訪れるようになると思います。
 膝下に近い部分はなかなか難しいかもしれませんが、足首の上、アキレス腱のところでは筋肉を捉えやすいと思います。しかし、そこには脂肪組織をはじめ筋肉以外のものもありますので、「そのさらに奥にある硬いもので押すと痛みを感じる」ものが長趾屈筋です。
 筋肉を捉えたら骨に押しあてるよう指圧するのが効率的かもしれません。この筋肉のこわばり状態が良くなりますと2~5趾先が少し伸びたように感じたり、あるいは温かく感じたりすると思います。日々のセルフケアとしてここまでやっていただきたいと思います。するとある時から変化が現れだし、太股が柔らかくなったり、脚のむくみが良くなったり、上半身の伸びが良くなったことを実感するようになると思います。


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