足裏(足底)やカカト(踵)がとても硬くなっている人がたくさんいることは前にもお話ししました。私は、腰痛や下半身に症状を抱えた方はもちろん、頭痛や首・肩のこりの人であってもほとんどの場合、足裏やふくらはぎを施術します。そして、「どうしてこんなに硬くなってしまうのだろう?」と思うことがよくあります。
 そしてたどりついた一つの見解が、“カカト重心の人が多い”ことです。私たちが普段立ったり歩いたりしている地面が硬いコンクリートやアスファルトなので自ずと足底は硬くなってしまうということを以前に記しましたが、それに加え、カカトで立っているためにどうしてもカカトが硬くなってしまうのだと思います。

カカト重心の人の特徴
 カカト重心の人の外見上の特徴があります。(すべてがあてはまるわけではありませんが)

①反り腰
 本人は背筋を伸ばして良い姿勢を保とうとしているのだと思いますが、腰の上部を反らせてしまうとカカトの方に重心が移ってしまいます。

②首が前に出ている
 肩甲骨の位置はカカト重心を改善するための決め手の一つです。肩甲骨が後方にあるとカカト重心になってしまいますが、このような人はバランスを維持するために頭部を前に出すようになってしまいます。「肩甲骨が後ろにあるので顔が前に出る」と言った方が解りやすいかもしれません。肩甲骨は鎖骨と対になっていますので、肩甲骨が後にある人は正面から見た時に鎖骨が埋もれてしまってよく見えないか、存在感が乏しい状態になっていると思います。首が前に出ていて鎖骨がハッキリ見えないような人は、カカト重心である可能性が高いと言えます。

③ガニ股歩き
 立った状態で意図的にカカトに体重を乗せようとしますと(少し後に反ろうとしますと)、膝の内側に力が入らなくなり膝が少し開いた状態になります。この状態で歩きますと、必然的にガニ股歩きになってしまいます。
 カカト重心の人は、常に後方から何かに引っ張られているのと同じ状態ですから、どうしても膝が外に向かってしまうような歩き方になってしまいます。女性の方で、それが気になる人は意図的に膝を締めて歩こうとしますので内股歩きのようになりますが、それはからだに無理を強いることになりますので、カカト重心を是非改善していただきたいと思います。

カカト重心の弊害
 カカトに体重が乗っているということは、後から何かの力で引っ張り続けられているようなものです。ですから前に進むためには普通の状態以上に力が必要になります。それはからだに疲労を蓄積しますし、筋肉に無理を強いる結果を招きます。また、カカトで立っているので、からだはバランスをとるためにいろいろ不自然な状態になります。

カカト重心の人2

 下半身の方から見ていきますと、後に倒れないようにするために腰や下腹部を前に出すようになります(=腹が出る)。そしてその反動として背中を反らせますので腰部や背中の下部にハリや緊張を感じるようになります(=反り腰、慢性的腰痛)。そして肩甲骨が後に位置するようになりますので首や頭が前に出て猫背になってしまいます。(上述の通り)

 足底では、カカトで立っていることは不安定ですから、自然と足の指(足趾)を曲げて足趾に力を入れて、足趾で踏ん張ってからだを支えるようになります。それは足底の筋肉に緊張状態をもたらしますので、カカトだけでなく足底も硬くなってしまいます。また足趾の筋肉はふくらはぎにつながっていますので、ふくらはぎも硬く太くなり血流も悪くなります。この状態は、足の冷えやむくみの原因の一つであると考えられます。

 足趾が曲がる=足趾に力を入れて立ったり歩いたり、あるいは座ったりする状態は、腰痛の原因になります。O脚、外反母趾、内反小趾等々下半身の問題の原因になるだけでなく、顔や首から力が抜けない、呼吸が悪いなどの問題にも絡んできますので、カカト重心は是非改善していただきたいと思います。

カカト重心と、硬いカカト、曲がった足趾との関係性
 「扁平足はからだが疲れやすい」というようなこと聞いたことがある人も多いと思います。足底には縦と横にアーチがあって、立ったり歩いたりする時にクッションのように働いてくれます。この仕組みによって地面からの衝撃は和らぎ、私たちの重み(体重)は分散されるので足をはじめからだの骨格が護られるようになっています。扁平足の人はこのアーチの働きが乏しくなってしまうので、足腰に掛かる負担が増えてしまい、“疲れやすい”、”故障しやすい”となってしまいます。
 ところが、この原理は重心の位置が良いところにある人に通じる理屈だと言えます。カカトに重心のある人の場合、足底のアーチがちゃんとしていたとしてもクッションの役割があまり果たせなくなってしまいます。

足に掛かる重心と足底_1

 重心が良い位置(私は足首の前側、足の甲の出発点くらいだと思っています)にある人の場合、体重の重みによって縦アーチが沈みますが、それによって重みは爪先側とカカト側に分散されます。足底の筋肉は伸ばされ、合わせて足趾も伸びます。重みが掛かることによって足が平たく引き伸ばされるようになります。

足に掛かる重心と足底_2


 一方、カカトに重心がある人の場合、立った時に爪先側が少し浮いたような状態になります。この状態は不安定ですので、自ずとからだは足趾を曲げて立位の安定を保つようになります。誰かに前方から押されて後に倒れそうにバランスを失った時、私たちは足趾をギュッと曲げて倒れないように頑張りますが、これと同じようなことがカカト重心の人には起こっていると考えていただければ解りやすいかもしれません。足趾を曲げることは足底の筋肉を収縮させることと同じですので、足底は硬くこわばった状態になります。また、重心も足底の力もカカトに集まりますので、カカトはとても硬くなってしまいます。

 カカトが硬くなるとどうなるのか? という疑問に全部答えられるわけではありませんが、幾つかの不都合については確認しています。
 カカトの内側にはふくらはぎの深部にある後脛骨筋と長趾屈筋の腱が通っています。また足底の母趾外転筋の出発点でもあります。これらの筋肉は太股の内転筋(長内転筋)と連動関係にありますので、カカト重心の人は太股の内側がコチコチに硬くなるのと同時に骨盤が後に傾きます。腹部では内腹斜筋もこわばってしまいますので、お腹の伸びやかさが失われたり、時には便秘になったりするかもしれません。
 また、カカトの外側には股関節の外側に位置する筋肉(中殿筋、小殿筋、大腿筋膜張筋)と関係の深い部分がありますので、股関節で太股の骨が出っ張ったような体型になったり、股の間が広くなってしまったりすることが考えられます。骨盤から下肢が少しはみ出たような状態です。さらに小殿筋は肩の棘上筋と連動しますので、肩関節の動きが鈍く感じたり、脇が常に開いているような体型になったり、肩に何かをしょい続けているように感じたりするかもしれません。
 その他には、舌が硬くなっていて喋りづらさを感じたり、飲み込み(嚥下動作)が悪く感じたりしているかもしれません。

カカト重心を改善するために
 私が知っていることだけで申し上げれば、カカト重心を改善するための考え方は二つあります。(この先、もっと増えるかもしれませんが)
 一つ目の考え方は、“推進力のあるからだ”にすることです。カカト重心の人は後から何かの力に引かれているとか、向かい風の中に立ち続けているような状態ですから、前に進む力=推進力の乏しい状態です。骨盤は後傾し、お尻も垂れ気味になっています。この状態を克服して推進力のあるからだ、つまり歩いていても「自然に、前に前に脚が進んでいく」状態にするためには仙骨を前傾させて骨盤の後傾を改善することが必要です。
 仙骨の状態を整えることについてはだいぶ前に取り上げましたが、骨盤底の柔軟性やヒラメ筋、半膜様筋というハムストリングを整えることが必要になります。
 二つ目の考え方は、鎖骨を前に出すことです。鎖骨と肩甲骨は腕を動かす土台として一対になっていますが、合わせて上肢帯と呼ばれています。
 鎖骨を前に出すことは肩甲骨を前に出すという意味でもありますが、カカト重心の人のほとんどは肩甲骨あるいは鎖骨が本来の位置よりも後方にある状態ですので、これを改善する必要があります。

鎖骨を出すとかかと重心が改善_1
鎖骨を出すとかかと重心が改善_2

 パソコン作業が増えた今日、肩甲骨が外側に拡がり、肩が巻くように前に出て鎖骨が喉の下の方に埋もれてしまったような状態の人が増えています。猫背とも言えますし、胸が狭く閉じ込められたような状態であるとも言えます。このような状態はカカト重心になりやすい状態ですので、胸を開き(前鋸筋や大胸筋や小胸筋のこわばりを解消し)埋もれた鎖骨を表に出し、肩甲骨の位置を本来の状態に戻すことがカカト重心を改善するためには必要になります。

 普通は以上のように、仙骨のあり方を整え、鎖骨と肩甲骨の位置と状態を整えることで、多くのカカト重心を改善することは可能です。その他に、腰椎の在り方がおかしかったり、膝や足に故障を抱えていることによってカカト重心になっている場合などもありますが、基本としては仙骨と鎖骨・肩甲骨であると今の私は考えています。

 カカト重心にならないように意識的に体重を前に掛けて対応するという方法を思いつかれる方もいると思いますが、その状態はからだの何処かに力を入れて操作しているわけですから不自然な状態です。カカトの高い靴などを履いてもカカト重心を解消することができますが、それはそれで足の何処かに力が入ってしまいますのでやはり不自然な状態です。そうではなく、自然に立った時にカカト重心が克服されている状態になっていることが本道であり、大切です。
 以前に申し上げましたが、私たちが動作を行うということは“重心を移動させる”ことに他なりません。この重心移動がスムーズで上手な人が運動神経が良い人、バランス感覚の良い人であると言ってもよいと思います。
 そのためには、重心のホームポジションがカカトや爪先にあるのではなく、良い場所にくるようにからだを整えていただきたいと思います。ヨガやピラティスやいろんな健康運動によって、しなやかで健康的なからだを作り上げていくことは大切なことだと思いますが、その効率を高めるためにも重心の在り方を気に掛けていただきたいと思います。

 時々、小学生や中学性や高校生など若い人たちが来店されますが、椅子に座った状態でも、足底を床に着けるのではなく足趾を丸めている人たちをけっこう見かけます。これは単に“姿勢が悪い”とか”仕草がおかしい”という言葉で済ませてはいけないことだと思います。その状態が彼女や彼らにとっては自然であり、足裏を地面に着ける状態は不自然なわけですから、“貧乏揺すり”などと同じように、からだの何処かに狂いが生じているのだと考えられます。若い時分からそうであれば、将来的に不具合が表面化する可能性はとても高いと思います。
 ですから、若い人たちをもった親御さんは、“それくらいのことで‥‥”と見逃さないでいただきたいですし、スマホで酷使している親指などは原因になっているかもしれません。鎖骨を前に出す一つの方法は母指先を伸ばすことです。スマホ操作で酷使している指の第一関節はかなりこわばっています。それを伸ばすのはとても痛みを感じますが、それによってカカト重心が改善し、足趾が伸びて足裏で地面を捉えることが自然な状態になる可能性は高いと思います。