「娘が学校の検診で側弯症の初期段階だと指摘され、このまま進行すればコルセットが必要になると言われて‥‥。どうにかなりますか?」と、定期的に来院されている方から聞かれました。同様の相談は過去に何件かありましたし、側弯症が進行した状態で成人された方も幾人か来店されました。腰痛や膝痛や五十肩などは“症状”であって病気ではないと一般に思われいるのか、私のようなところで対応できると思われているようですが、側弯症は病気であって病院が取り扱う分野だと思われている人が多いようです。
 ところが病院では「このまま状態が悪化すればコルセットを装着しなければならなくなるし、もっと悪化するようだと手術も考える必要がでてくる。」というようなことを言われ、「で、では、どうすれば状態が改善するのか?」という最も素朴な疑問に対しては明快な回答が得られないようです。

 側弯症が進行した状態で成人しますと、内臓の位置が普通の人に比べかなり偏った状態になると思います。体幹(首下~骨盤)の左側は薄く右側は厚くなって、正面から見ると「C型」に歪んでいる人がいましたが、「内臓はどのように配置されているのだろう?」と素朴に思ったりしました。「今(35歳)からでも側弯症を改善するように日々体操してみてはどうですか?」と言いましたが、本人は「病気なのでそんなことでは治らない」と思い込んでいて、私の助言は聞き流されました。
 また側弯症の影響で坐骨神経痛になっていた若い女性もいました。坐骨神経痛といっても症状としては軽く、太股から足にかけて「だるさを感じる」程度でしたが、側弯症による影響でしたから“常に症状がある”状態でした。この方にも「側弯症が原因なので、それを改善するために、この体操を毎晩寝る前にやってください。」と来店の度に幾度か進言しましたが、「そんなことで直るわけがない」みたいな反応でしたので、助言を止め、施術で側弯症が少しずつでも改善されるようにしていました。月1回程度の頻度で来店されていましたが、2年くらい経過した頃から坐骨神経痛の症状は消えました。その後は背中のハリや肩こりなどの症状で時折来店されましたが、今はすっかり来店されることもなくなりました。

機能性側弯症は“何処から歪み始めたか”を見極めることから
 側湾症には先天的な要因や神経の問題など病気としてもの(構築性側弯症 )と、生活習慣や姿勢などの問題で背骨が曲がってしまう機能性側湾症があるとされています。明らかに病気としての側湾症は、私の担当する領域ではありませんが、機能性側湾症に対してはできることもあります。
 側湾症が発症するのは幼少期から中学性の頃までの成長期がほとんどのようです。つまり関節が柔らかく筋肉や組織が成長している時期に背骨が曲がり始めると、どんどん曲がりが大きくなってしまうと解釈できます。ですから、そうならないように早い時期から対策を講じることが肝要であるということはわかります。しかし、その対策が“コルセット”では、あまり効果が期待できないのではないかと思います。

 背骨が歪んでいる人はたくさんいますが、歪みの程度が大きくなると側弯症と診断されるのであれば、歪みの度合いを軽減していけば良いという理屈になります。私のところに来られる方々のほとんどはからだに歪みを持った方々ですから、歪みを修整するという意味では、側弯症の人もその他の人も私にとっては大して違いはありません。ただ、側弯症の方々のほとんどは歪みが大きく、固定化している場合が多いので修正に時間がかかってしまいます。

 背骨の歪みに対する施術を行う場合、その歪みが何処から始まったのかを見極めることがポイントです。例えば、骨盤上部の腰椎が左側に歪んでいる人は胸椎下部が右側に、胸椎上部や頚椎下部が左側に、そして頚椎上部が右側に歪んでいたりしますが、その歪みは骨盤から始まったのか、それとも頭頚部から始まったのか、あるいは別の場所から始まったのか、それを見誤るといくら施術を繰り返しても改善には結びつきません。

 先日来店された中学2年生の女子は、小学生の頃からソフトボールを始め、現在もソフトボール部に所属しています。座った状態を観察しますと、左側のお尻に体重が乗っています。つまり、右の坐骨に体重を掛けられない状態です。次に立ってもらい片脚立ちをしてもらいましが、日々クラブ活動で鍛えているにもかかわらず、右脚の片脚立ちがしっかりできません。バランスが取れないのです。これは右側の中殿筋が上手く働いていないことの現れですが、過去のケガについて本人と母親に尋ねたところ、小学5年生の時に右足首に強い捻挫をしたが病院や治療院に行くこともなく放って置いたということです。これが中殿筋が機能しない原因でした。
 この女子は小学5年生の頃からおよそ4年間、右側に体重をかけられない状態でしたから、骨盤の左側ばかりにからだを乗せて座っていたということが推察できます。これは明らかに背骨を歪めてしまう原因です。
 また、首の方を観察しますと頚椎の1番が右側に歪んでいました。それは右側ばかりで噛んでいる片噛みによる影響です。お尻の左側に体重を乗せて座っているので腰部は左側に歪みます。するとバランスを取るために首を右側に倒して座るようになります。その状態で食事をするので自然と右側で噛んでしまう片噛み癖になってしまいますが、その積み重ねによって頚椎上部が右側に歪んでしまっているのだと推察できます。
 ですからこの女子の場合、右足首を整えて中殿筋が機能するようにしてまっすぐに座れるようにすることがポイントで、併せて右側の硬くこわばっているそしゃく筋を整えることが施術方針になります。
 初回はこの方法で背骨と首の歪みはかなり良くなりました。しかし成長期という大事な時期ですから、しばらくは月に1回の間隔で来店していただき経過を観察するとともに施術を行っていくことにしました。

 骨格や筋肉に柔軟性のある成長期までの頃は、歪みを改善することもすぐに結果が現れます。ということは反面、悪い姿勢や悪いからだの使い方をしているとすぐにまた歪んでしまうということでもあります。子供さん達の姿勢の変化や噛み癖、目の使い方の癖には十分注意していただきたいと思います。
 そして、この女子のように過去のケガによってからだのバランスが崩れている場合は「ちゃんと座りなさい」「両方の歯で噛みなさい」と注意をしても、からだがそのようにできない状態である、ということもあります。その場合は厳しくしつけるよりも、からだの不具合を直すことを優先させた方が、親子と共にストレスを感じなくてすむと思いますので、そちらを選んでいただきたいと思います。
 
 もう一つの例として、20歳代半ばの女性のケースです。彼女の側湾はそれほど大きなものではありませんでしたが、自覚的には仰向けで寝ると背中の右側は肋骨~腰の上部までがしっかり床に着くのですが、左側はすっかり浮いてしまっているというものでした。うつ伏せになった状態を観察しますと、右側の背筋が棒のように張っているのに対して、左側は凹んだ状態です。フワッとした感じの服を着ていると側弯症であることがわからない程度のものでしたが、常に右脚にだるさを感じていました。本人はむくみが強くてだるくなってしまうのだと思っていましたが、実は側弯症による軽微の坐骨神経痛でした。
 彼女は小学生の頃に側弯症であると指摘されたようですが、病気なので治らないと思っていました。しかし、側弯症が改善しなければ脚のだるさは取れません。ですから、側弯症を少しずつでも改善するための3分程度の体操を教え、「毎晩寝るときにやってください。やり続けていれば必ず良くなるから」とアドバイスしましたが、全然やってくれませんでした。私の助言を馬鹿にしているというよりも、医師から言われた「治りません」の言葉が頭から離れないからかもしれません。

 彼女の側湾は首から始まっていました。首が歪み、胸が歪み、腰が歪み、骨盤が歪んで坐骨神経痛になっているというパターンでした。「どうして首が歪んだのだろう?」というのが当然の疑問です。顎関節の調子も悪かったので、噛みしめや歯ぎしりの影響は十分考えられます。
 そうだとして、では「どうして噛みしめてしまうのだろう?」というのが次の疑問です。
 からだを観察していきますと右手人差し指の先がが捻れているのが気になりました。その捻れを、私が操作して捻れの無い状態に戻しますとベッドを押しつけるようにくっついていた背中の右側が少し浮くようになりました。背骨の歪みが軽減して右側の張りが少し弛んだからです。
 「どうしてこの指先が捻れているのか心当たりはありますか?」と尋ねますと、しばらく記憶をたどった後、「幼稚園児の頃まで人差し指をしゃぶる癖があったからかもしれない」との返答でした。「これが側弯の原因かもしれない」そう私は思いました。
 人差し指の捻れは肋骨の2番目を中心に胸郭を歪ませ、首の筋肉(斜角筋)を緊張させせる傾向があります。斜角筋が緊張することで頚椎は歪みますが、同時にそしゃく筋も緊張させますので本人の意図に反して噛みしめの状態になってしまいます。
 その後来店される度に人差し指の捻れを解消するようにしていきますと、4~5回目くらいの来店時から右脚のだるさを訴えなくなりました。背骨の側弯は残ってはいるものの以前に比べ明らかに改善しています。そして、その後はしばらく来店されることもありませんでした。
 私としましては、もっと側弯が改善されるまで通っていただきたいという思いを持っていましたが、今は結婚をされ遠くに住まわれていますので、たまにご実家に戻られたときに来店される程度です。

 何故か女子に多い側弯症ですが、それが生活習慣や姿勢の問題に由来するものであるならば、改善する可能性はあると考えます。側弯に限らずからだの歪みには必ず最初の原因があります。それを丁寧に探っていけば歪みを改善するための方法は見つかります。
 ほとんどの人が私のような職種よりも医師の言うことの方を信じると思いますが、それはそれで懸命な判断だと思います。ところが「コルセットを付けて、それでも駄目なら手術まで考えなければならない」という診断は私から見ますと治療を放棄しているようにさえ思えます。「悪い兆候はあるけれど、もっと悪くなるまではやりようがない」と言っているのに等しいのではないでしょうか。患者の立場としては、症状が軽微なうちに治したいし、症状を進行させないためにどうすれば良いかを知りたいはずです。
 また“コルセット”という手段も私には解せません。固定して動きに制限をかければ歪みは進行しない、というような考え方はからだの仕組みを知っている人の発想とは思えないからです。「からだはそんな風にできていないのになぁ?」というのが率直な気持ちです。

 私はこの職業に携わってから、背骨が真っ直ぐで理想的な状態の人に出会ったことがありません。大なり小なりすべての人は歪みを持っていると思っています、と言いますか、それが現実です。
 私はその歪みが大きくなってしまったのが機能性側弯症ではないかという考え方をしています。側弯が進行しますとスタイルが悪くなり、さらに進行しますと内臓機能にも影響が及ぶようになってしまいます。それは女性にとって、将来的に苦痛に結び付くことかもしれませんので、なんとか改善していただきたいです。
 現在、側弯症と診断される程歪みが大きくなってしまっている人は、改善までに時間を要すると思います。しかし、元々のきっかけを明らかにし、それを改善することに忍耐強く取り組んでいけば、きっと状態は良くなるはずだと考えています。
 側弯に対する施術は、腰痛や関節痛、頭痛などのように、すぐに変化を実感できるというものではありません。しかし日々の努力で必ず状態は良くなると思いますので、お悩みの方は一度ご来店の上、ご相談ください。