私たちは疲労しますと筋力が弱くなりますが、そんな時でも力を振り絞らなければ状況では奥歯を噛みしめたり食いしばって、つまりそしゃく筋を収縮させて力を増強しようとします。ペットボトルの蓋を開ける時、重たい物を持つ時、噛みしめている人は多くいます。
 ところが、これとは反対に噛みしめると力が弱くなってしまう人がいます。そんな方から質問を受けまして、このことは多くの人の参考になるかと思いブログに書くことにしました。

その方は抜歯による歯列矯正を行いました。更に「矯正の時間を短くするために歯茎にクギを刺した」ということです。私はその意味を正確に把握することはできませんが、おそらく固定されたクギを利用して歯を半ば強制的に動かしたということかもしれません。この方の現在の状況は以下の通りです(原文のまま)。

「歯茎を見ると痩せて下がり薄くなっています。
特に奥歯の物を噛んだり噛み締める歯の歯茎を触るとブヨブヨした感触です。
噛む力が普通より大分弱い事に最近気付きました。
あと重い物を持ち上げたりするとき歯と歯が付いていない、噛み締めていません。
瓶の蓋やペットボトルを開けられないことがあるので力が入らないとは感じています。
食べたり、咀嚼筋に力が入っている状態が続くと側頭筋がすぐ凝ってしまい揉むと痛いです。」

 歯茎が弱いことがわかりますが、歯列矯正に限らず歯槽膿漏などで歯茎が弱くなっている人にも共通している状況かもしれません。
 歯茎に限らず筋肉や筋膜や組織は、弱くなって働きが悪い時に負荷が掛かると耐えられなくなりからだの力が弱くなったり他のところにしわ寄せがいって不調を招きます。
 寝苦しかったり、朝起きた時に首肩や背中が張ってしまうのは「枕が合わない」からだと思っている人はたくさんいて、幾つも枕を買い換えている人がいます。ところがその原因は枕が合わないことではなく、首や後頭部の、枕に接する筋膜がゆるんでいることだと思います。ゆるんで働きが悪くなっているところに自分の頭の重さという負荷が掛かりますと、そこが耐えられないために寝苦しく感じたり、首肩、背中にしわ寄せが及び凝ったり張ったりしてしまうのだと思います。ですからこれを解決するためには枕を換えることではなく、自分の筋膜を整えることが必要です。簡単に言ってしまえば、「元気な人はどんな枕で大丈夫」ということになります。
 さて、この方の場合、歯茎が荷重に耐えられない状態ですから、歯茎に負担が掛かるとからだから力が抜けてしまいます。これが重い物を持ち上げる時に歯を合わせない理由だと考えることができます。そして食事をして歯茎に負荷が掛かったり、そしゃく筋を収縮させて(=噛んだ状況を続けて)いるとからだの別の場所=側頭筋(側頭部)がこわばってしまい頭痛を招く仕組みであると考えることができます。

 ここで、この方にとって大きな矛盾が生じます。この方は歯茎以外にも問題を抱えており、からだに力が入らない状態ですので、(全身筋肉の司令塔としての)そしゃく筋の力を借りなければならない状態です。常にそしゃく筋は緊張状態(収縮状態)ですし、寝ている間も噛みしめていることがわかっています。起きている間は歯と歯を合わせないように注意し続けることはできるかもしれませんが、寝ている間は不可能です。ですから少なくとも寝ている間と食事の時は歯茎に負荷が掛かってしまうことになります。歯茎を治癒するためには負担を掛けないようにする必要があるのに、負担を掛けざるを得ない状況という矛盾に直面してしまいます。

 また、この方は表情筋のこわばりという問題も抱えていますが、それも歯茎の弱さと関係があることは確かです。今週末に来店され施術を行いますが、①歯茎を如何に回復させるか、②そしゃく筋の緊張状態を如何に改善するか、というのがこの問題に対するアプローチになりますが、上記の矛盾を超えて忍耐強く取り組まなければならないことだと思います。

 膝の悪い人は、良くなるまでは膝をあまり使って欲しくないのですが、仕事上そういうわけにはいかない。腱鞘炎の人は手を使って欲しくないのですが、赤ちゃんを育てている間はそういうわけにはいかない。このような矛盾の状況はいろいろありますが、忍耐強く取り組んでいればやがて解決の光が差してくると思います。
 私のこれまでの経験ではそうでした。困り果てた状況では、一進一退の状態から抜け出すことがなかなかできないように感じてしまうかもしれませんが、ちょっとの進歩でも、その進歩の方に目を向けて、疑いの心を遠ざけていけば、そう遠くない将来に一気に改善に向かうと思います。精神論のような話になってしまいましたが、これが現実であり真実だと思います。
 この方に関して言えば、まず歯茎を強くすることに集中することだと思います。そのためには硬いものを噛むことは今は避けることです。そして意識を込めてじっくり噛み、一噛みごとに歯茎の筋肉を鍛えるつもりで使って欲しいと思います。筋肉は使わなければ強くなりませんので、言うなれば「痛まない程度に負荷を掛けて鍛えて欲しい」とアドバイスします。