兵庫県在住の65歳の女性から問い合わせがありました。その方は強い肩こりを持っていまして、定期的に鍼灸治療院に通っております。なかなか肩こりが軽くならないので昨年10月から中国鍼(長くて太い)の治療院に週一回のペースで10回ほど通ったそうです。そこでの治療は首や肩に何本かの鍼を深めに刺して、少し強めの低周波をかけるというものだったようです。するとやがて頭痛にみまわれるようになり、一時軽くはなったものの年が明けてから耐えられないほどの頭痛になったとのことです。近所のいろいろな治療院や病院を廻ってみても楽になることはなく、そんな時に私のブログ(電気治療器などで損傷することもある)を読まれてお電話をくださいました。
 低周波治療器が影響して頭痛になったということは、どの病院でも治療院でも「あり得ない」と信じなかったようです。本当は近所で治したかったようですが、結局、先週、小田原のホテルに泊まって3日間来店されました。
 来店される日の前の晩は頭痛が激しく一睡もできなかったとのことでした。一人で新幹線に乗り小田原まで来るのは厳しいということでご主人が付き添って来られました。
 来店される前に電話でのお話しを聞いて、首や肩など鍼を刺して電気を流したところがやられてしまって、その影響で強く噛みしめてしまい頭痛になってしまったのではないかと予想しましたが、実際そうでした。
 頭と首と肩甲骨の位置を正常に保つための筋肉には僧帽筋、肩甲挙筋、菱形筋などがありますが、ことごとく全部ゆるんでいて肩甲骨がフワフワとぶら下がったような状態でした。何本かの鍼だけではこんなふうにはならないと思いますので、低周波による影響の方が強かったのかもしれません。
 兵庫県の方にも幾人か知り合いがいますが、皆さん親しみやすく、気さくで、よくお話しになります。ところが最初の施術を始めてからはしばらくは口もききたくないような状態だったと感じました。
 頭痛の直接的な原因は強い噛みしめによるそしゃく筋のこわばりによって頭が締めつけられていることですから、ともかく最初の1時間くらいは噛みしめや側頭部のこわばりを取ることばかりに専念しました。耳と顎のエラがくっついてしまうくらい咬筋がこわばって短くなっていました。
 その後うつ伏せになっていただき、ゆるんでしまった首肩周辺の筋肉や筋膜を修復することに専念しました。その頃から少しずつ会話をするようになり、電話で聞けなかったことをいろいろ伺いました。初回は120分施術でしたが、60分は噛みしめをゆるめること、40分くらいは首肩周りの修復、20分くらいはその他、頭痛の原因となる可能性のところを施術しました。
 初日の施術は以上の通りですが、施術後顔色が少し良くなっていましたので「なんとか今夜は眠れますように!」と祈りました。
 「頭痛が始まったら、もう駄目ですわ。何もできんくなります。おかげで料理がうまくなりましたわ。」というご主人の言葉が印象的でしたが、帰り際は本人もちょっと元気になっていましたので、私も少しホッとしました。

 次の日の夕方に再び来店されましたが、初日の晩は睡眠薬を飲んだもののぐっすり朝まで眠れたようです。まだ頭痛は残っているものの、昼頃から首肩が楽になって温かくなってきたということでした。小田原城址公園の周りをお二人でブラブラされたようです。
 初回の施術ではひどい頭痛をなんとか軽減するためにそしゃく筋をゆるめること主にしましたが、2回目は疲弊している筋肉や筋膜を回復させることが主です。最初に比べれば多少ゆるみは改善されていましたが、私の思いとしては「ともかくこのゆるみを短期間で回復させなければ」という感じでした。ですから最初からうつ伏せになっていただき1時間以上にわたって疲弊してゆるんでいる筋肉や筋膜に手を当てて修復させるだけの施術を行いました。
 その後仰向けになっていただき、元々肩こりだった原因として考えれるところを探しては施術を行いました。“噛みしめる癖があったから肩こりが強かったわけで、その原因はどこだ?”という感じです。今症状が緩和したとしても、噛みしめがなくならなければすぐまた頭痛になってしまうからです。過去のいろいろなことを伺いながら、そして他に気になるところを伺いながら原因探しの見当をつけていきます。その話しの中で、鍼灸が好きで、過去に一度に何十本も鍼を刺す治療院に通っていた経験もあることがわかりました。それはそれでやはり問題だと思いました。話がそれますが、膝痛や五十肩痛で痛み止めの注射を何度も何度も打っている人は、その針の傷が原因で症状が悪化している場合もあります。
 また、昔は力仕事もしていて右手を酷使したために人差し指が詰まったような状態になっていました。そしてその影響で右の咬筋がこわばってもいました。その他にも一通り考えられるところを調整して、頭の筋膜、そしゃく筋のこわばりをゆるめて2回目の施術を終えました。

 3日目はともかく最終日ですので、私自身緊張した気持ちでした。「今日で何とかしなければ‥‥」そんな感じでした。前回の施術後の状態を尋ねますと、私の願いとは違って、それほど眠れなかったようです。明け方3時半くらいまで悶々と過ごし、そのご7時過ぎまでは寝たということです。ただ、少し頭痛はするものの人と会話をしていてもうっとうしく感じることはなくなった、ということでした。精神的に楽になって、肉体的にも改善の兆しが現れ始めたのかもしれないと感じました。
 最後の施術も120分でしたが、総合的に行いました。噛みしめも取り、頭もゆるめ、首肩のゆるみを手当てし、手指を調整しました。そして残りの20分くらいは普段自宅でやって欲しいケアをご主人に教えました。帰りがけの顔が明るくなっていて、ご主人も明るかったので、私にとっては緊張の3日間でしたが、それなりに何とかできたという感じでした。
 「もうお会いすることのないように祈ってます。」と申し上げて見送りました。

 硬くこわばってしまったものをゆるめることは難しいことではありません。短期間ですみます。ところが疲弊して機能しなくなっている筋肉を元の状態に戻すのは時間がかかります。前にも記しましたが、それが点や小さい範囲であればそれほど厄介ではありませんが、電気治療器で疲弊してしまった場合は範囲が広くなります。今回の方の場合もそうです。確かに鍼を刺したのは数カ所かもしれませんが、そこに電気を流すことによって、その周辺全体が損傷状態になっていました。それを数少ない施術ですっかり元の状態に戻すことはとても難しくなってしまいます。(特殊能力を持った人はできるかもしれませんが)
 最初にこの方の筋肉を触ったとき、直感として7~8回の施術が必要かもしれないと感じました。しかし事情が許しませんので、自分なりに気合いを入れて、3回の施術で日常生活が支障なく送れる程度にはしたいと考えました。
 施術を終えてから一週間になろうとしています。その後の状態がどうなのか気になるところですが、それよりも“楽になってほしい”との祈りの方が強いかもしれません。

 これまでこのブログには、来店された方の施術内容についてはあまり細かく触れないようにしてきました。しかし帰り際、「ブログに書いてもいいよ!」と仰いましたので、このような施術日記風な内容になりました。
 この方と同じような悩みを持たれた方が情報の一つとして“参考になれば”という想いから、そう仰ったのかもしれません。

追記(3/12)
 本日午前中、ご本人から電話が入りました。(早速ブログを読んで下さいました。)
 外出なのか外泊なのかは聞きませんでしたが、お嬢さんにところにいらっしゃるということで、私は内心「出かけられる状態なんだ」と一安心しました。
 先週の土曜日(3/5)に兵庫に戻られて一日二日すると首がしっかりしてきたということでした。現在はご主人のケアで順調な経過をたどっているようです。私が施術中でしたので長話はできませんでしたが、とても嬉しかったです。