いよいよ花粉症の時期になりますが、この時期になりますと多くの人の鼻が下がってしまいます。花粉症と鼻が下がることとの因果関係を云々する説はないかもしれませんが、整体的に見て、鼻、つまり鼻骨の下がりと鼻づまりはとても関係が深いように思います。そして鼻呼吸のきめてとなる副鼻腔の状態が悪くなる人も多くなります。花粉症の人は全員一時的な軽い副鼻腔炎になっているのかもしれません。
 インドの伝統医学(アーユルヴェーダ)に未消化物(アーマ)という考え方があります。アーマが体内に溜まると病気になってしまうという見解です。アーマは一般的には、食べたものが消化されず体内に毒素として溜まってしまったものであり、デトックス(排泄)する必要があるというように説明されています。しかし、アーユルヴェーダの本来の考え方に則せば、アーマとは食べたものに限らず体内に取り入れたもの全般を指しているはずです。呼吸によって取り入れる空気、空気中のチリやホコリ、ウイルス、微生物、PM2.5などの有害物質も含めて体内で無毒化できなければアーマになってからだの健康を阻害する要因になるという考え方だと思います。
 有害物質や異物が体内に入ってきたときに、私たちの免疫系がそれらに対処しますが、それらを上手く処理できずに、あるいは免疫系の処理能力を超えて入ってきてしまうため、体内で無毒な物質に変換できないと毒素として蓄積してしまい健康を害してしまうという考え方です。
 花粉症といえば“アレルギー”とすぐに連想できますが、アレルギー反応をもたらすアレルゲン(花粉)を体内に侵入させないようにマスクなどで対応することともに、アーマの考え方を取り入れて私たちの免疫系の力を適切に保ち、なおかつ体内に溜まっている毒素を排泄させることも花粉症対策として大切なことだと私は考えています。

①花粉をなるべく取り入れないようにする
②免疫系の力を増強する
③毒素を排泄する
の3つが花粉症にかぎらず、様々なアレルギー性疾患にたいする必要な対策だと思います。

鼻と副鼻腔と免疫系
 鼻呼吸が良くて口呼吸が悪いとされる根拠の一つは、口呼吸では大気中にあるチリやホコリやバイ菌が気管を通して肺に入ってしまう可能性が高いため健康を害しやすいということです。さらに大気をそのまま口に入れて気管を通過させますので、冷たい空気、乾燥した空気はそのままに近い状態で体内に入ってしまいます。元々水の中で生活していた私たちは(魚だった時代)、エラ呼吸によって水の中に含まれている酸素を取り入れるようにできていました。その名残はヒトである現在も残っていて、肺で空気から酸素を取り出すときにかなりの湿度がなければガス交換(血液中に酸素を入れて、血液中の二酸化炭素を取り出して排泄する)が上手くできません。また私たちの生理活動(化学反応)は酵素の働きによってなされていますので、肺が冷えた状態ではやはりガス交換に支障がでます。
 ですから呼吸によって取り入れる空気は肺に入るまでに、ホコリやチリやバイ菌類が除去され、湿度と温度が調整される必要があります。そしてそのために活躍する器官が鼻(鼻腔)と副鼻腔であり、鼻は匂いを嗅ぐ働きだけではなく免疫系の入口でもあるといえます。
 
 鼻の穴を通して入ってきた空気は粘液に覆われている鼻腔(鼻の奥)に入ります。そこで大きなチリやホコリやバイ菌は粘液にキャッチされ除去されます。鼻汁がでるのは汚れた粘液を排出することを意味します。その後、ある程度きれいになった空気は頬や額の骨にある副鼻腔に入ります。鼻から息を吸ったときに頬や額がひんやりしたりスーッとしたりするのは空気がここを通過しているからです。ここでは鼻腔で除去しきれなかった小さな異物を除去するとともに咽頭や気管を通して肺に送り込む空気の湿度と温度を瞬時に調整します。こうして肺で理想的なガス交換ができる状態に空気がかわります。

副鼻腔

 鼻腔が乾いていて粘液が足りなければ、あるいは副鼻腔炎などで副鼻腔に空気が入らなければ、口呼吸ほどではないとしても肺が負担を強いられることになり、からだに負担がかかってしまうことになってしまいます。
 喘息、気管支炎などの他、集中力の欠如、頭がスッキリしない、思考が働かないなどの脳の酸欠状態の原因として、口呼吸、鼻腔の乾燥やつまり、副鼻腔のつまりや炎症は十分に考えられることです。

鼻が下がってしまう=鼻骨の下がり
 鼻骨は鼻の一番上、額との境のすぐ下にある骨ですが、それを手で軽くつまんで額の方へ押し上げてみてください。鼻の奥(鼻腔)が広がった感じがしたり呼吸がしやすくなるのであれば、あなたの鼻は下がっているということです。
 反対に鼻骨を口の方に下げますと鼻づまりに近い感じで息が入りにくくなると思います。つまり鼻骨がさがると鼻呼吸では間に合わなくなってしまうので、知らず知らずのうちに口呼吸をしてしまう可能性が高まります。スポーツ選手など常に大量の酸素を消費している人たちは鼻呼吸では間に合わないので、口呼吸の人が多いです。口呼吸の人の特徴として上唇が上を向いていて上の歯が見えやすいことがあります。

 鼻骨が下がってしまう原因として考えられることはいくつかあります。
①加齢
②頭蓋骨の歪み
③眼鏡の重み
④お腹の冷え
⑤胸の状態(季節やストレスなど)

①加齢とともに頬がたるみやすくなるのは避けられないことかもしれません。筋力や関節線維の力が衰えてくるので、頬にかぎらず顔全体が下がりやすくなってしまいます。加齢とともに少しずつ顔が変化していくのは自然の流れとも言えます。しかし鼻呼吸のことを考えますと鼻骨の下がりは改善いたいものです。
②前にも記しましたが、鼻骨は後頭骨と深い関係にあって後頭骨が上がりますと鼻骨が下がります。後頭骨が上がってしまうもっとも多い原因は背筋のゆるみです。猫背などで背中を丸める悪い姿勢は背筋をゆるませますので、お尻が下がり後頭部が上にずれてしまいます。
 また、鼻骨は前頭骨と上顎骨に関節していますので、額(前頭骨)や上顎が歪みますとどちらかの鼻骨が下がってしまう可能性が高まります。
③今はかなり軽い眼鏡が普及していますが、それでも重さはあります。ですから長い時間眼鏡をかけ続けている人はどうしても鼻骨が下がってしまいます。しかし対処法はあります。
④腹筋がこわばると肋骨を下に引っ張ります。すると頸の前面、下顎、頬、目なども同様に下に引っ張られますので当然鼻骨も下がってしまいます。
 腹筋がこわばる理由はいくつもありますが、お腹の冷えもその一つです。その他免疫力のことも考えますと、お腹の冷えには十分注意していただきたいと思います。
⑤胸の中心にある胸骨の内側には免疫系の要として研究されつつある胸腺があります。胸腺の重要性はこれからもっともっと言われるようになると思います。
 胸はからだ全体のセンサー的な役割を果たしているようで、しょっちゅう変化しています。ストレスを感じるとすぐに胸を閉ざすように肋骨や胸骨が動きますし、喜ばしくワクワクするようなことがありますと大きく開いて開放的になったりします。そして季節的な影響も受けるようで、この時期は胸骨が凹み気味になる時間が増えるように感じます。鼻骨と胸骨(あるいは胸腺?)の関連性の理屈についてはわかりませんが、胸骨の状態によって鼻骨が上がったり下がったりする現実があります。

頬骨・前頭骨と副鼻腔
 鼻腔を通過した吸気は次に副鼻腔に入りますが、副鼻腔は前頭洞、篩骨洞、蝶形骨洞、上顎洞という名前のとおり骨の中に空いた“洞穴”です。副鼻腔炎はこれらの洞穴の内面(薄い粘膜)が炎症を起こして空気の通りが悪くなった状態です。そして新鮮な空気が通らない状態が続きますと、川の水が流れず澱んで汚くなるのと同様、汚れた粘液が溜まった状態になり不潔になります。この状態が慢性化しますと蓄膿症と呼ばれる病気になってしまいます。
 さて、副鼻腔の通りと頭蓋骨の歪み、表情筋などのこわばりとの関係について考えてみます。
 息を鼻から吸い上げて額の内部に通すイメージで呼吸をしてみてください。鼻腔で取り込んだ空気が前頭骨(額)にある前頭洞に入っていくかどうかがわかります。空気が入っていくのであれば額がひんやりしたり、あるいは何かが通っている感じがすると思います。前頭骨と鼻骨は関節していますので、頭蓋骨が歪んでいたり鼻が下がっていますと前頭洞に空気を通すことが難しくなります。
 同様に目の下の骨(頬骨)の奥には上顎洞、篩骨洞、蝶形骨洞がありますが、鼻から息を吸ってそこに空気を通すことはできますでしょうか。空気がしっかり通るようであれば、同じくひんやりしたり、電気的な何かを感じられると思います。次に、両手を頬骨(目の下の出っ張り)の内側にあてて強めの力で外側に広げるようにして息を吸ってみてください。この時、息が吸いやすくなったり副鼻腔にたくさん空気が通るように感じるのであれば、頬骨の間が狭くなっているために副鼻腔に空気が通りにくい状態になっているということです。
 息を吸ったときに額(前頭洞)にも頬骨の深部にも空気が入って顔面が広がるように感じられる状態になっていることが理想的ですが、どちらかでも空気を通すことができるのであれば、まずまずの状態だといえます。

鼻骨と頬骨を操作

 前頭洞に空気を通すためには、頭蓋骨の歪みをなくす必要があります。勉強や考え事をたくさんする人は前頭葉をフル回転させてたくさんの思考イメージをつくらなければなりません。ですから前頭洞に空気がたくさん通るように頭蓋骨を調整した方が良いと思います。
 頬骨の深部の副鼻腔に空気を通すためには、狭くなっている左右の頬骨間を広げることが一丸簡単な方法です。現代の私たちの暮らしはパソコンやスマホ、書類、家事・台所仕事などなど下を向く機会が上を向いたり遠くを見たりする機会よりはるかに多いです。ですから、目の下の筋肉が非常にこわばっています。また一点を集中して見たり、会話をして口をたくさん動かしたりすることによって鼻の周りの筋肉がたくさん使われこわばってしまうために顔のパーツが中央に寄ってしまいます。5歳の子供と、20歳の人と、50歳の人では、顔の筋肉のバランスがかなり違っています。50歳の人は鼻を中心に顔の中心部の筋肉はカチカチになっているのに対して、顎下ラインや頬の筋肉はたるんでいることがほとんどです。ですから鼻から頬骨にかけてのこわばっている筋肉を持続的な指圧でゆるめ、鼻の周りを広々とさせる必要があります。これだけも頬骨間は広がり副鼻腔に空気が通りやすくなると思います。

免疫力は消化力とも考えられる
 最初の話に戻って“アーマ(未消化物)がからだに蓄積すると病気になってしまう”という考え方に立ちますと、病気に対抗する力、病気にならない力、つまり抵抗力や免疫力はアーマを体内に溜め込まないようにすることと同じ意味になります。
 “消化”といいますと、食べたものを胃で消化して、さらに十二指腸で消化して‥‥というのが連想されると思いまが、もっと細かいレベル、細胞のレベルで考えますと、からだに有害な物質が侵入したとしても、それらを細胞の働きで無害な物質に変換することができれば問題ないことになります。そしてこれは毎日、毎時間、刻々と私たちのからだが自動的に行っていることです。白血球、リンパ球、食細胞‥‥という免疫系の用語はこのことを表しています。
 鼻呼吸によって様々なバイ菌類が鼻腔に侵入したとします。鼻腔や副鼻腔の粘膜はそれらバイ菌類を線毛や粘液でキャッチします。その後、鼻汁としてからだの外に出してしまうか、食細胞のようなリンパ系の細胞がやってきて有毒物を食べてしまい無毒化します。つまり細胞が有毒物を食べて消化が行われたということです。副鼻腔で処理できなければその先の咽頭にあるリンパ節の輪が捉えて、有毒物を消化して無毒化します。
 免疫力(抵抗力)はアレルギー疾患対策のキーワードであり、その他の病気でも、病を改善して健康を維持するためのキーワードです。ところが専門書には難しいことがたくさん書いてあって解りにくいですし、実際のところまだ確かなことは解明されていないようです。

 免疫力の専門的なことは学者や研究者など専門家に任せることにして、今私たちができることで免疫力を高めることを考えてみます。
 花粉症の場合、症状が出るのは主に鼻と眼ですから、鼻腔・副鼻腔と眼の粘膜を快適な状態にすることがまず大切です(口腔や耳の奥も粘膜ですから同様です)。それらの粘膜に花粉はキャッチされますが、それを無害化できないためにアレルギー反応がおこります。あるいは粘膜が機能できない状態にあるので花粉が体内に侵入してアレルギー反応をおこし、その結果が鼻や眼などの粘膜に現れるのかもしれません。いずれにしましても“穴の粘膜の状態”がポイントになります。
 粘膜ですから、
 ①湿っていないと駄目です。鼻孔の渇き、ドライアイ、唇や口腔の渇きなどは良くありません。
 ②適度な粘度が必要です。鼻水や涙で湿っていても、目薬や飲水などで湿らせても、それはちょっと違います。
 ドライアイは血液循環や外眼筋の状態がかなりの影響を与えると考えています。そういう意味でパソコン仕事の多い人、スマホやテレビの画面をたくさん見ていて眼をあまり動かさない人はドライアイになりやすいと思います。
 口腔内の湿り気は唾液の問題になりますが、緊張感の多い人、交感神経ばかり働かせている人、噛みしめる癖のある人、よく噛まない人などは口の中が乾きやすいと言えます。
 鼻腔・副鼻腔内の湿り気には“空気を通すことが必要”ではないかと私は考えています。鼻腔・副鼻腔には線毛と呼ばれる細かい毛があります。空気を通すことで線毛が運動する(揺れる)と電気的な刺激が生まれるはずです。その刺激が粘液の分泌に関係しているように思っています。

 アレルギー反応では粘膜が異物の侵入に対する最前線、つまり免疫力の最前線ですから、花粉に対処しなければならないこれからの時期、鼻腔と副鼻腔、口と唇、眼の粘膜をなるべく良い状態に保つことが花粉症を重症化させないための一つの手段だと思います。
 私自身、若い頃から花粉症でこれからの時期辛い思いをします。昔は飲み薬や点鼻薬、点眼薬に頼って対処していました。ところが薬を使うと渇いてしまい鼻血が出たり、眼を擦って結膜炎になったり、喉の渇きを感じましたので、この20年くらいはよほどでない限り薬は使わないようにしています。
 現在の薬は“渇き”をもたらさないようになっているのかもしれませんが、そうでないとしたら、一方(血液レベル)でアレルギー反応を軽減するようになっているとしても粘膜が渇いて機能が果たせない状態になってしまいますので、免疫という面では片手落ちであると言えます。渇きにくい薬を選んでいただきたいと思います。

整体で対応できること
 最初に、①花粉をからだに入れないようにする、②免疫系の力を増強する、③毒素を排泄する、の三つが花粉症対策として必要なことだと申しましたが、①はマスクをしたり、対策用眼鏡をしたり、鼻腔や眼を洗浄することなどが対処法ですので整体の領域ではありません。
 ②については、頭蓋骨の歪みや顔面の筋肉を整えて鼻腔・副鼻腔と眼と口を良い状態に保つという意味で整体が役に立つところです。とくに鼻骨を上げ、頬骨や周りの筋肉を整えて鼻腔・副鼻腔が力を十分に発揮できるようにするためには整体的な方法しかないように思います。
 そして③の毒素の排泄に関しても整体は役に立ちます。食べて、消化吸収栄養化して、排泄するのは自律神経の副交感神経系の仕事です。ですから非常に大雑把に言いますと、交感神経優位の人はこれらのことが苦手です。つまりいつもストレスでイライラしていたり、起こったり悲しんだり不安を感じたりして感情の起伏が激しい人は交感神経優位の状態であり、体内の毒素を排泄することが得意ではありません。
 排泄といいますと便や尿、その他に発汗や呼気が目に見える現象としてあります。しかし中医学的な見方、つまり“気”や“エネルギー”の観点を加えますと、“邪気”や不要エネルギーの排出というテーマが出てきます。これは言葉ではとても伝えづらいことですが、毎日いろいろな人のからだを見、触って、施術をしていますとなんとなく“気の巡り”みたいなものが感じられるようになってきます。慢性的な不調を抱えている人は気が抜けて出て行かず溜め込んでしまうばかりの状態になっていることがわかります。
 “ストレートに足裏から気が出ていくようにするためには、どこをどう整えれば良いか?”というのが施術の最終的な段階です。気が途中で何処かに停滞してしまったり、足裏から出ては行くけど途中でくねっていたりしますと真のリラックスは達成できません。
 花粉症で言いますと、眼や鼻や副鼻腔に邪気や不要なエネルギーが溜まっています。それを足裏から出ていくようにするためには呼吸を整え、からだの歪みや筋膜の捻れを整え、股関節や膝、足首など気やエネルギーの滞りやすい関節を整えるなどの作業が必要です。そこまでやらずに眼と鼻に直接関係するところだけ整えても排泄が上手くいかないので効果としては不十分になってしまいます。実際、このようにして足裏から出してしまえば鼻の状態、眼の状態がよくなることがほとんどです。
 万全の花粉症対策をしてもなお辛いと感じている人は整体的な方法も選択肢としてお考えいただければと思います。