「かけ算が苦手になった」「物事の理解力が弱くなった」「頭がいつもボーッとしている」「思ったことがなかなか言葉にならない」等々、頭の回転(脳の働き)が悪くなったと感じている人は結構いるようです。あるいは“自分は子供の頃から頭が鈍い”、”他者からとろい人だと思われている”、と自覚されている人もいます。
 それが病気、あるいは先天的なものであるならば、整体の出る幕はないかもしれません。しかし後天的な何かの要因で、あるいは”最近なんとなく頭の働きが悪くなった”と感じているようであるならば、整体で良くなる可能性は高いと考えています。

 頭の回転が悪いということは、脳内の血流が悪くなっていると考えることができます。実際、施術で頭を触ると、頭の中が詰まっていて流れが滞っているように感じることがあります。そのような時はいくつか質問をしたり、暗算で九九をしてもらったりします。頭の中で暗算をしている時は内部で血流が活発になるのを感じることができます。ところが状態の悪い人は血流が上がりません。そして九九の途中でつかえてしまったりします。あるいは4の段とか7の段とかになりますと暗算が終わるまでにかなり時間がかかってしまうかもしれません。
 こういう時は思考回路の神経伝達がうまくいっていないと考えることができます。何かを考えようとしても思考回路の働きが悪いために、考えがまとまらなくなり途中で挫折してしまうかもしれません。あるいは頭には思い浮かぶのだけど、いざそれを言葉にしようとしても、その回路の働きが悪いためにうまく言葉にできず、自己嫌悪を感じて人と話すことがものすごいストレスになってしまったり、あげくは自分は鬱なのではないかと疑うようになってしまったりする人もいます。
 小学生のお子さんをお持ちの親御さんは、お子さんが算数をはじめ勉強の成績が悪く、言っていることも支離滅裂で“とろい子”と感じているかもしれませんが、それは単に脳内の血流が悪いだけかもしれません。血液の流れが戻れば“とろい子”から“普通の子”にすぐにでも戻ると思います。
 
脳の働きと蝶形骨の歪み

 脳内の血流が悪くなっている一番の原因は頭蓋骨の歪みになりますが、その他にも片噛みの癖、噛みしめの癖、口呼吸、横寝、目の凝りなども原因としてあげられます。また、呼吸の状態が悪ければ酸欠状態になり当然脳の働きも悪くなります。
 頭蓋骨の中で脳は蝶形骨という骨を台座としておさまっています。ですから蝶形骨の位置が悪くなりますと脳の働きに影響が出ます。(学者やお医者さんは認めないと思いますが)
 脳の血流をアップさせるために私が試みることの第一は蝶形骨の位置を整えることです。蝶形骨は頭蓋骨の内部にあって、外側からは目尻の少し上のところで少し触れることができます。この場所はいわゆる“こめかみ”に相当する部分であるため、目が凝っていると硬く腫れたようになってしまい直に骨を感じることが難しくなる部分でもあります。
 蝶形骨は頭蓋骨の内部で、上顎骨・側頭骨・前頭骨・後頭骨などと接していますし、内部のそしゃく筋(内側翼突筋、外側翼突筋)とつながっていますので、片噛みや噛みしめの癖、顔の歪み、骨盤~背骨の歪み、肩甲骨の歪みなどをはじめ、体の歪みの影響を受けます。蝶形骨をすっかり整えることはおそらく難しいだろうと思いますが、一定の許容範囲内に位置を整え、骨がグラグラしないようにしっかりさせることで頭蓋骨内の血流をアップさせることができますし、そうすることで脳の働きを高めることが可能になります。
 また蝶形骨の歪み以外では、例えば目の使いすぎなどで眼球の働きに関係する筋肉が強くこわばりますと、そこで血流が滞ってしまい、やはり脳内の血流は悪くなります。目は脳の一部が外に飛び出したものですから、目の働きや瞳の輝き具合などを目安に脳の血流状態を把握することもできます。目がかすむ、目が疲れやすい、視力が悪くなった、目の奥が痛む等々、これらは近視や乱視、老眼など一般的に眼球そのものの問題と考えられていますが、脳の血流が悪くなったことが原因である場合もあります。私の顔や頭蓋骨に対する整体の特徴の一つは、施術の後「目がはっきりする」というのがありますが、それは脳の血流が良くなったからではないかと考えています。

噛み合わせの問題で頭の回転が鈍ることもある
 30歳代の、働き盛りの女性がしばしば計算間違いをして、会社の上司から「かけ算できるの?」と言われ少しショックを受けて来店されました。「考え事ができないし、計算していても全然頭が回らなくて‥‥」と仰っていました。「私、馬鹿になってしまったんですかね?」と落ち込んでいました。
 頭を触ると、中身が詰まりきったような感じで、血の流れがほとんど感じ取れませんでした(もちろん生命を維持する血流はしっかりしているのでしょうけど)。それで九九をしてもらいました。3の段を最初に声を出してしていただきましたが、3×8のところでつかえてしまい「答えが出てこない」と言いました。頭蓋骨を確かめますと、右側のこめかみがこわばっていて目が疲れていることの他に、下顎が大きく右側にずれていました。また噛み合わせを確認すると、左側が浮いていて噛み合わない状態でした。左側で噛むことができないため、いつも右側ばかりで噛んでいるので右側の咬筋ばかりがこわばり、さらに噛のみしめの癖もあって頭蓋骨への血液の流れが滞ってしまっていたのだと思います。目も右側ばかりを使っている偏りがあって、それも影響していました。その他には右側の脇の下(前鋸筋)もこわばっていましたが、それも血流を悪くする大きな原因です。思考回路がうまく働かないだけでなく、右耳の聞こえ方も悪く、右目の見え方も悪かったです。
 それらを全部整えましたが、そうしますと頭の中もスッキリしたようで、九九の暗算もスラスラできるようになりました。九九の暗算は脳の働きを確かめる目安になります。脳の働きが快調であれば、スピーディーに答えがどんどん浮かんできますが、働きが鈍いときはスピードがかなり遅くなってしまいます。

頭部が捻れている人は多い
 多くの人が頭が右側に傾いていたり捻れています。見るにしても噛むにしても顔の右半分ばかり使っていることが原因であることが多いのですが、その他にも右手ばかりを使って作業をしているというのもあります。
 自然界は渦を巻きながら成長と維持を行っているのが法則ですから、誰でも多少はねじれを持っています。まったく捻れていないというのは、自然界の法則に反しますので、おそらくあり得ないだろうと思います。しかし、捻れ方が度を越えますと体の働きにいろいろと不都合が現れるようになります。
 頭蓋骨が範囲を越えて捻れますと当然蝶形骨も歪みます。そして最初は目の見え方や疲れ方、耳の聞こえ方などから違和感や症状が感じられるようになるかもしれません。そして状態が進みますと思考回路への影響が自覚されるようになるかもしれません。仕事中にそれまではなかった睡魔が襲ってきたり、集中力がなくなってきたり、何かを考えようとしても面倒に感じるようになったり、という症状が一番先に感じられるのかもしれません。
 転んで顔周辺にケガをしたとか、ムチウチになったりという外傷の後は頭部が歪んでしまっている可能性が高いのですが、それ以外に内臓の不調で頭蓋骨が歪んでしまうこともよくあります。その他には日頃の噛み癖、噛みしめ癖、目の使い癖など感覚器官の使い方の偏りに起因していることが一番多いのですが、イヤホンで音楽をよく聴いているというのも原因になり得ます。
 歪みの原因が外傷か、内臓か、使い癖か、という点をしっかりと把握して適切に対処することが症状改善の要になりますので、施術をご希望の時はそのあたりの情報を正確に教えていただく必要があります。特に内臓の不調と顔の歪みの関係は、多くの人が「まさか‥‥」と思うところですが、胃腸の不調やそれに対する内服薬の影響で顔が歪んでしまうことはよくあることです。
 顔のことを専門用語では「内臓頭蓋」と呼んだりしますが、つまり顔は内臓の延長線上にあるもの、もっと言えば、“内臓が表に飛び出したものが顔”であるとも言えるからです。ですから内臓の調子が悪いときは肌が荒れたり、目の下にクマができたり、噛み合わせが合わなくなったり、舌を噛みやすくなったり、口内炎ができたり、鼻の調子が悪くなったりしますが、それらは顔が歪むことと関連し合っていると私は考えています。私の母は思い込みから鎮痛剤としてエキセドリンを飲むことがよくありますが、すると決まったように翌朝顔が歪んでいて、「頭がスッキリしない」と言い出します。頭の中(思考)では鎮痛剤が自分に良い効果をもたらすと思い込んでいますが、胃や腸はその薬が嫌いなので、小さな子供が体をくねらせて嫌がるのと同じように内臓がくねってしまい、それが顔を歪ませているのではないかと思っています。

呼吸が悪く、頭に酸素が行き渡らない
 口呼吸は頭の回転を鈍らせる原因の一つです。私たちは表向きには肺で呼吸をしています。鼻から取り入れた空気は副鼻腔を通過するときにバイ菌や汚れを除かれ、湿度と温度が調整されて肺に送られます。副鼻腔を通過することによって肺で効率よくガス交換できるようになりますし、肺や気管支がバイ菌類から守られる仕組みになっています。また私の個人的な感じ方としては、空気が副鼻腔を通過するときの電気的な刺激が脳下垂体の活性化に何らかの役割を果たしているのではないかと思っています。(鼻から吸った空気を額の中央部―前頭洞という副鼻腔・眉間の上―まで引き上げると、そこを中心に頭蓋骨に振動のようなものが広がります。)
 口呼吸では、副鼻腔を活用することはできません。口から入った空気は扁桃腺などのリンパ節はあるものの、ほとんど汚れなどが除去されないまま気管支~肺に入ってしまいます。喫煙はしていなくても、汚れた空気は肺に入ってしまうのです。それは体に余計な負担をかける結果を招いてしまいます。口呼吸は何とか改善しなければならない癖です。

 また、肺呼吸ばかりが呼吸ではありません。呼吸の目的は空気中から酸素を取り出して血液の中に溶かし込み、それを全身の細胞に届けて細胞の活動を維持することです。ですから、呼吸運動に合わせて頭~足先まで酸素が届けられるような感覚を感じられるような状態になることが大切です。息を静かに吐いていったとき、頭の天辺まで血液が昇り、足先の血管が拡がるような感覚が得られる状態が理想です。私はお客さんに対して「頭の中に注目してください。息を吐いたときに頭の中が拡がり、血液が巡る感じがしますか?」「目を閉じて心の目で足先をしっかり見ることができますか? そして息を吐いたときに、それが足先までしっかり届けられますか?」などと抽象的な問いかけをしますが、これができているかどうかはとても重要だと思います。

足先まで意識が届くか

 意識が届けば呼吸は届きます。股関節や膝や足首などの何処かに捻れがあると足先まではっきりと意識を届けることはできません。同様に首や頭蓋骨に歪みがあったり、どこかで流れが滞ってしまうところがあると、頭の中が詰まっているように感じられ頭をスッキリさせることはできません。
 頭の中の果てしなく複雑な活動は神経の働きによって行われています。そして神経を活発に働かすためには酸素が必要です。酸素は血液が運びますので、血の巡りが悪くなりますと酸欠状態になってしまい、脳の力を十分に発揮することができなくなってしまうという理屈です。

 誰もが知っていることですが、私たちの生命を維持するために呼吸は何よりも大切です。しかし呼吸は生命維持だけでなく、私たちの感覚器官を正常に、快適に働かすためにもとても重要です。体の器官の中で脳は一番酸素を消費しています。それは各器官の中で一番細胞の働きが活発であり、私たちの感覚の及ばないところで膨大な仕事をこなしているということです。目を働かせる、耳や鼻、口を正常に機能させるために、あるいは思考を巡らすために脳は非常にたくさんの酸素を必要としていますので呼吸の状態が悪くなって酸素が不足気味になりますと、感覚器官の働きが鈍るとともに頭の回転も悪くなってしまいます。ですから毎日を、頭がスッキリとクリアな状態で過ごすためには、体が正しい呼吸ができる状態にある必要があります。

血圧と頭の働き
 血圧は心臓から上、つまり頭部に血液を送るために必要なポンプ(心臓)の圧力であると考えることもできます。高血圧になってしまうのは、首や頭部の血管が硬くなったり細くなったりして血液の通りが悪くなってしまったため、心臓が普通以上に圧力を高めないと頭部に血液が行き渡らなくなってしまうからだとも考えることができます。動脈硬化の他、首や肩の凝りが強くなって血管が筋肉の圧迫を受けて細くなってしまうことも原因の一つとして挙げられます。この場合は、マッサージなどで凝りを解消することで高血圧が改善されます。あるいは血管は交感神経(自律神経)の働きで締まりますので、交感神経の働きを刺激する精神的緊張状態を解除し、リラックスして副交感神経が優位になるようにすることで高血圧の改善を図ることもできます。
 また、“頭になかなか血が届かないから心臓は血圧を上げてしまう”と考えますと、高血圧の人は脳内の血液循環が悪い傾向にあるという結論にいたります。
 低血圧の場合は、程度によりますが、やはり脳への血液供給が不足しやすく酸欠状態になりやすいと考えることができます。通常は120~130の圧力で脳内への血液供給が順調になされているわけですから、血圧が100に満たないような状態では脳貧血状態となってしまい、脳の働きが不十分になってしまうという理屈になってしまいます。低血圧は心臓の働きが弱いということになりますが、私は「もしかしたら心臓が十分に働くことのできない状態なのかもしれない」と考えて低血圧に対処しています。
 心臓は胸郭の下側、中央の少し左側に位置しています。肋骨の籠の中、左右を肺に挟まれ下には横隔膜があります。肺も横隔膜も呼吸の要となる器官ですので“心臓の働きと肋骨”、“心臓の働きと呼吸運動”はともに密接な関係があると考えることができます。
 これまでの経験では、低血圧や不整脈、動悸などは肋骨の状態を修正することで改善されることが多くありました。胸郭が右方向に捻れているため、左側の肋骨が常に心臓を圧迫しており、心臓が十分に働くことができなくて低血圧になっているというのはけっこう多いと感じています。
 本日、会社の健康診断で血圧が90-48という女性が来店されましたが、肋骨の状態を改善し呼吸の状態を改善すると速やかに124-70になりました。脈も弱々しかったものが力強くなりました。(但し、脈搏が健康診断では40そこそこだったようですが、それは施術後も53までしか上がりませんでした。)
 低血圧のため毎朝起き上がることがなかなかできず、さらに頭も一日中ボーッとしたままで楽しくない毎日を送っているような方は肋骨の状態を修正してみる価値は十分にあると思います。

 先日、お客さんから「右脳を使って、絵で記憶すると脳の力を十分に発揮することができて驚くべき状態になる」という話を聞きました。その方はどこかで講習を受けられたようです。記憶に関しては、左脳の百倍以上のポテンシャルが右脳にはあるということです。私は頭の回転が鈍くなっていそうな方には「身近な方の顔を額にイメージしてみてください」とやってもらうことがあります。そして「額のどこにイメージができましたか?」と尋ねます。そのイメージが額の中央であれば問題はないと考えますが、左側だったり、右側だったりするようであれば頭蓋骨を修正する必要があると判断します。これには学術的根拠はありません。ただ私の感覚として額の中心でイメージが展開されるのが本来の状態であると感じているからです。
 九九を暗算すれば答えが次々と額の中心に浮かび上がり、何かを記憶するときには、それが絵としてクリアに額の中心で処理され頭の中に入っていくようになることが理想のように思います。そしてそれは頭蓋骨を整えることで可能だと考えています。